栞子「付き合ってほしい?」2スレ目
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栞子「...やっぱり見られながら寝るのは恥ずかしい?」
栞子「寝てしまえば同じですよ」
栞子「ほら、目をつむって下さい」
栞子「しばらくすれば自然に眠れますよ」
栞子「陽が当たってこんなに気持ち良いんですから」
栞子「はい、お休みなさい」 栞子「......」
栞子「寝てしまいましたね」
栞子「起きてる時に言ったら拗ねてしまいそうですが...」
栞子「可愛い寝顔です」 栞子「もう数十年この人と一緒にいますが...」
栞子「いつも振り回されっぱなしですね」
栞子「でも、最近は私の方がわがままを言う事の方が多くなったかもしれません」
栞子「せっかくなのでこれからは私の方がこの人の事を振り回してあげましょうか」
栞子「今までのお返しです」 栞子「......」
栞子「でも...」
栞子「こんな日々も、もしかしたらもう長くは続かないのかもしれません」 栞子「お互いにもう体が弱り始めてます」
栞子「ある日突然、なんて事もあるかもしれません」
栞子「もし私を残してこの人が先に旅立ってしまったら...」 栞子「...っと」
栞子「いけませんね。こんな事を考えるなんて」
栞子「まだこの人には元気にいてもらわなければいけません」
栞子「...ですがもし、別れる時が来るならば...」
栞子「願わくば私の方が先に...」 栞子「......」
栞子「そろそろ起こした方が良さそうですね」
栞子「起きて下さい」
栞子「もう少しで紬子が孫を連れてくる時間になりますよ」 栞子「準備などがあるんですからあなたも手伝って下さい」
栞子「えぇ。今日は御飯を作る手伝いをして頂きます」
栞子「ほら、寝ぼけてないでしゃきっとして下さい」 栞子「......」
栞子「あっ、いえ、ごめんなさい」
栞子「特に何かあるわけではないのですが...」
栞子「明日は二人でどこかに行きませんか?」 栞子「近くの公園でも良いですし、日帰りの旅行でも良いです」
栞子「ただ、あなたと何処かに出かけたいなと思いましたので...」
栞子「はい、ありがとうございます」
栞子「楽しみです。とても」 -------------------------------------
病院
栞子「あっ、お疲れ様です」
栞子「待っていました」
栞子「えぇ、今日は大分調子が良いです」
栞子「食欲もいつもよりあったのでお昼御飯も全部食べてしまいました」
栞子「この調子でしたらもう少しで退院できるかもしれません」 栞子「...いえ、それ程は寂しくありません」
栞子「あなたもほとんど毎日来てくれますし、娘たちも孫を連れてお見舞いに来てくれるんです」
栞子「何だかんだで賑やかなので大丈夫です」 栞子「...今?」
栞子「あぁ、ちょうど本を読んでいたところです」
栞子「最近はこの詩集を読むのが日課になっているんです」
栞子「昔の人が歌った短歌を集めた内容で、読んでみると色々と考えさせてくれるものがあって面白いんですよ」
栞子「でも今日はあなたが来てくれたんですから他の事がしたいです」 栞子「...したい事、ですか?」
栞子「そうですね...」
栞子「久しぶりに二人で散歩をしたいです」 栞子「入院してから一緒に外で歩くことなんてありませんでしたので...」
栞子「大丈夫ですよ。今日は調子が良いんですから」
栞子「お願いします」 ...........................
栞子「風が気持ち良いです」
栞子「ずっと部屋にこもってベッドにいたので変に体がなまってしまってます」
栞子「...そんなに心配ないで下さい」
栞子「先程も今日は調子が良いと言ったでしょう」
栞子「普段は病室でじっとしてるだけなんですから今日くらいは大目に見て下さい」 栞子「あ、あそこ見て下さい」
栞子「桜が咲いています」
栞子「せっかくなので近くに行きましょう」 栞子「満開ですね。散り始めている花びらが綺麗です」
栞子「今年はこんな風に見れないと思っていたので良かったです」
栞子「来年も見られると良いですね」 栞子「...何だか最近はあなたに迷惑かけっぱなしですね」
栞子「...そうですね。いきなり倒れた時は皆を驚かせてしまいましたので...」
栞子「私も目が覚めた時、病院にいたので驚きました」
栞子「そしたらあなたが泣きながら私を抱きしめてきたんですから何がなんだかよく分からなくて混乱しました」
栞子「...でも久しぶりにあなたの泣き顔を見たので少しだけ得したような気がします」
栞子「...ふふっ」 栞子「でも、あの時は本当に心配をかけてしまって申し訳ないです」
栞子「早く元気になって、また二人で一緒に過ごしましょう」
栞子「...っ!」クラッ 栞子「ご、ごめんなさい。少しめまいが...」
栞子「大丈夫です...少し...休めば...げん...き...に...」 ..........................
栞子「...!」バッ
栞子「...病室?」
栞子「それに...もう夕方になって...」 栞子「...確かあの人と外へ散歩をしに行って...それで...」
栞子「!」
栞子「...もう」
栞子「椅子に座りながらでは寝づらいでしょう...」 栞子「本当に...お疲れ様です」
栞子「起こすのはもう少し後にしてあげましょう」
栞子「多分、ずっと私が眠っていた間はずっと付きっ切りでいてくれたみたいですし...」 栞子「...また、心配をさせてしまいましたね...」
栞子「......」
栞子「先程は早く退院すると言いましたが...」
栞子「おそらく、それは実現できそうに無いですね...」
栞子「自分の身体なんですから、何となく分かります」
栞子「あなたには少しばかり哀しい思いをさせてしまうと思います...」 栞子「...ただ」
栞子「これで私の願いは叶いそうですね」
栞子「私の方が残されることはなさそうです」
栞子「...凄く意地の悪い人間ですね、私」 栞子「でも...」
栞子「あなたと出会って何十年も共に生きてきました」
栞子「楽しいことも、辛いことも、哀しいことも、嬉しいことも一緒に味わってきました」
栞子「もう思い残すことはありません」
栞子「だから、あなたと別れる事になっても私は辛くありません」 栞子「......」
栞子「嘘です」
栞子「やっぱり、あなたと別れるなんて嫌です...」
栞子「このままずっと生きて、娘や孫たちと、あなたと一緒に過ごしたいです...」 栞子「...でも」
栞子「そんな事はどうあがいても無理です」
栞子「...だから、私に残されている時間をあなたと一緒に過ごすことに使います」
栞子「その僅かな時間で、私の中にある思い残りを全部あなたにぶつけます」 栞子「ですから、あなたも最後に少しだけ私に付き合ってほしいです」
栞子「......」
栞子「幸せです。私」 栞子「...そういえば」
栞子「確か小物入れに...」ガサガサ
栞子「あっ、ありました...!」 栞子「髪留め...」
栞子「あなたに初めて買って頂いたものです」
栞子「古くなっている上に、今の私には似合いませんが...」
栞子「とても大切なものなんです」 栞子「あの頃の私はまったく素直ではなかったでしたね」
栞子「あなたに対して無愛想な態度ばかり取っていました」
栞子「懐かしいです」 栞子「...と、外ももう暗いですし寒くなってきましたね」
栞子「こんなところで寝ていては風邪を引いてしまいます」
栞子「起きて下さい」 栞子「もう夜になりかけてますよ」
栞子「...どうしました?」
栞子「...わっ!」
栞子「い、いきなり抱きしめるのは止めて下さい...」 栞子「ごめんなさい、また心配をかけてしまって...」
栞子「はい、もう大丈夫です」
栞子「だから大丈夫です。少し疲れが溜まっていただけですよ」 栞子「それよりも、あなたと初めて出会った頃の事を思い出していたんです」
栞子「えぇ、いきなり私に告白してきた時の事を覚えてます?」
栞子「ふふっ、若気の至りでしたね」
栞子「そうです。その後はずっと私と一緒にいて...」
栞子「はい、それで...」
............................. 髪飾りの回見返してきた
オムライスデートのときだったか… -------------------------------
栞子「そろそろ、お別れですね...」
栞子「そんなに泣かないで下さい。私の方も泣いてしまいそうです」
栞子「...でも、もう泣く気力もありませんね...」 栞子「大丈夫です。紬子達がいるじゃありませんか」
栞子「私がいなくても、あなたなら最後まで楽しく生きることが出来ると思います」 栞子「...でも、嬉しいです」
栞子「あなたがこうして私の為に泣いてくれること...」
栞子「大切に思われていることが感じられるんです...」 栞子「視界が...ぼやけてきました...」
栞子「...最後に、お願いがあります...」
栞子「笑って頂けませんか...?」
栞子「えぇ、最後にあなたの笑顔を見てお別れをしたいです」
栞子「お願いします...」 栞子「......」
栞子「ふふっ」
栞子「すごいくしゃくしゃな笑顔...」
栞子「ありがとうございます。最後に良いものが見れました」 栞子「これで思い残すことはありません...」
栞子「楽しかったです。良い人生でした」 これでおしまいです。
最後が少し寂しい感じになってしまったので
明日か明後日に短い話を書いて終わりにしたいと思います。 こういう時どんな書き込みをすればいいのかわからない
乙 乙
アフターケアまで考えてくれてるなんてあなたは神か 乙
本当に良かった…
このSSのおかげで栞子ちゃんを好きになれた
ありがとう ----------------------------------
栞子「お待たせしました」
栞子「...待ちました?」
栞子「すみません。浴衣の着付けに思っていたより時間がかかってしまって...」 栞子「......」
栞子「それで...どうですか?」
栞子「似合いますか?」
栞子「......」
栞子「うなじが綺麗って...」
栞子「もっとちゃんとした褒め方は無いんですか...?」 栞子「...いつもよりも大人っぽい...」
栞子「そうです。この髪型だって今日初めて結ってみたんですから」 栞子「...駄目です」
栞子「触ったら崩れてしまうかもしれません」
栞子「結構結うのが難しかったんですよ」
栞子「それよりも早く行きましょう」
栞子「花火が上がるまでまだ時間がありますが...」
栞子「今日は色んな屋台を回ってみたいんです」 ..................................
栞子「...人だかりが凄いですね」
栞子「歩くのも難しいです」
栞子「...そうですね。離れ離れにならないよう手を...」ギュッ 栞子「屋台、沢山ありますね」
栞子「何処に行きましょう?」
栞子「...?」
栞子「どうしました?」 栞子「...匂い?」
栞子「たしかに...何やら甘くて香ばしい匂いがします」
栞子「あっ、あの屋台ではないでしょうか?」 栞子「ベビーカステラ、ですね」
栞子「こういった縁日やお祭りとかではよく見かけますが...」
栞子「私、食べたことが無いです」
栞子「...良いですか?」
栞子「!」
栞子「えぇ、行きましょう...!」 栞子「屋台のおじさんに一個サービスしてもらいました」
栞子「ありがたいです」
栞子「...ではさっそく」 パクッ
栞子「!」
栞子「はふっ...!」
栞子「あふいれす...!」 栞子「......」モグモグ
栞子「すみません。意地汚い所を見せてしまいました」
栞子「中の方が思っていたよりも熱かったです」
栞子「でも...」
栞子「素朴な甘さがあって美味しいです」
栞子「あなたも食べますか?」 栞子「はい、どうぞ」
栞子「熱いから気をつけて下さいね」
栞子「......」
栞子「ほら、私が言ったそばから...」 栞子「口の中に火傷とかは...」
栞子「...そうですか。お互い大丈夫そうですね」
栞子「冷めるまで少し待ちましょう」 栞子「次は何処に行きます?」
栞子「あなたの方で特に無ければ行ってみたい所があるんです」
栞子「えぇ、そこの屋台にしましょう」 ................................
栞子「やってみたかったんです。金魚すくい」
栞子「子供の頃に一度やったきりなので...」
栞子「その時はすくい棒がすぐに破れてしまったんです」
栞子「でも、流石にあの時よりは上手くいくと思います」
栞子「はい、ではさっそく...」 栞子「......」
栞子「金魚が...思ったよりも素早いですね」
栞子「それでは端の方で止まっているのを...」
栞子「あっ...!」
栞子「棒を近づけたら逃げてしまいました...」
栞子「これは意外と...」 栞子「あ、また...」
栞子「ではこうして...」
栞子「...あぅ」
栞子「破れてしまいました...」
栞子「結局一匹も取れませんでした...」 栞子「はぁ...」
栞子「...?どうしました?」
栞子「今度はあなたが...?」
栞子「...なるほど、昔取ったことがあるんですか」
栞子「それでしたら...」
栞子「はい、頑張って下さい」 ................................
栞子「すごいですね」
栞子「まさか一回で取ってしまうとは...」
栞子「久しぶりに見直しました」
栞子「えぇ、久しぶりです」 栞子「その金魚は家で飼うんですか?」
栞子「...?私に?」
栞子「良いんですか?」
栞子「...それなら」
栞子「ありがとうございます」
栞子「大切に育てますね」 栞子「......」
栞子「それにしても...」
栞子「この金魚、随分間の抜けた表情をしてますね」
栞子「あなたにそっくりです」
栞子「...ふふっ、怒っても怖くないですよ」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています