にこ「ほんの少しのきっかけで」
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昔書いてて完結させられなかったssを改めて
ラ板でのスレ立ては初なので至らぬ点あれば教えて下さい ____________________
「もう貴方にはついていけない」
一緒に頑張ってくれる仲間だと思っていた皆からはそのような事を言われ、1人また1人と抜けて行って私は遂に独りぼっちに。それから少しのあいだは私1人でも頑張れた。 でも、やっぱりこのまま人気もなく人も集まってくれない状況で続けるのは厳しくて…私は一人きりの部室でパソコンとにらめっこ。
当然クラスの皆からも腫れ物のように扱われ…いや、腫れ物ですらないわね。もはやクラスでの私は空気。いてもいなくても変わらなかった。 寂しい、でもそんな弱さを見せるわけにはいかない。
私はいつかトップアイドルになってみせるんだから!
そう…心の中では呟いて、現実の私は友達の1人すらできずアイドルの活動なんてしてもいない。 目指すもの…アイドル。でもその為にどんな行動をすればいいのかがわからなかった。だからパソコンでまだ発展途上のスクールアイドルの批評ばっかり。もう自分でも、どうすればいいのかわからなくなっていた。 友達を作りたい。
そう思ったのは、挫折を味わって1年程経ったある日の事だった。 ______________________________
「…。」テクテク
「…でさ〜…」
「あはは!まじで〜?…」ドンッ
「痛っ…」
放課後、帰り道を歩いていた私はチャラついた雰囲気のギャルにぶつかられた。
「おい、ぶつかっておいて謝罪もないわけ?」
私は悪くなかった、相手の不注意だ。
「…すみませんでした。」
でも、謝った。それなのに相手は許してくれない。
「マジふざけんな」だとか、「すいませんで済むわけなくない?」だとか、口の汚い罵倒は続くがもう私の頭に入ってこない。
そんな事どうでもいいくらい惨めだった。悔しかった。
私が何をしたんだろうか。
こんな思いをしなければいけないほど悪い事したの?
家ではきちんと妹や弟の面倒をみてる。
ママが私達の為に働いていて忙しいのはわかってた、だから家事だって私が…
という事を考えてた時だった。
/⌒\__,、. -――- 、,、___/⌒\
/ _ / / \ l _、 \
/' `⌒ヽ./ (・):(・) ヽ _/⌒´ \|
/⌒/ ・・ Y⌒\
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人 l\_ _/ ( \
/ /`¨l  ̄ ̄ ̄ `¨T´\, -\
〈 ⌒ ーァ | /⌒\ , -r一' _/
 ̄了イ ! { } { rく⌒ヽ
〈ニノ_,∧ \_/ ∧ `┐l ノ
 ̄人 \ / `广¨´ 「あの、私見てました」
「は?」
「貴女達が喋っててよそ見してたからその方に自分から当たっていった事に気づいてないだけです」
「はぁ?なによいきなり、知らないくせにでしゃばって来ないで!」
「貴女には恥という物がないんですか?2人で年下であろう高校生の女の子に難癖つけて、しかも自分の非を認めないどころか考えすらしない」
「は?ちょっと調子乗ってるとマジ痛い目みるよ?」
「暴力を振るいたければ振るいなさい。その時は私も容赦しませんし、もう貴女方を人間とは思いません」 「チッ…うっぜぇな、もういこ」
この子の迫力に恐れをなしたのかそう言って去っていく2人組を私はただ呆然と見送るしかなかった。私自身、何が起こってたのか理解できていない。そんなポカンとしてる私に近寄って来るのはさっき助けてくれた女性。
気づいてなかったけどよく見ると…っていうか普通に私と同じ制服を着ていた。
「あの、大丈夫ですか?あなたが同じ学校だと分かったのでどうしても放っておけなくて…」
「ありがとう、ございます」
「見た所私の方が後輩なのでそんなに畏まって頂かなくても大丈夫ですよ。それに…」
「困った時はお互い様、ですし。代わりといってはなんですが、もし同じような状況にあったら味方してあげてください」
「ありがとう…ぁりが、とう…」ボロボロ
久しぶりの他人の暖かさに、年下の子に助けられた情けなさを感じる事もなくただただお礼をいいながら涙を流す事しか出来なかった。 「な、ど、どうして泣いて…?…いや、怖かったですよね、もう大丈夫ですよ」
彼女も泣き出した私に戸惑った様子なのに私を安心させるために抱きしめてくれる。
溢れ出る涙と共に、今までの私の強がりも一緒に流れていく気がした。
そして思ったの、友達が欲しいって。
例えば、好きなアイドルについて話し合える友達がいたらどんなに楽しいか。
でも、別にアイドルが好きじゃなくたっていいの。
辛いことも分け合える友達がいたらどんなに心強いか。
そして涙が出るほど悩んだ時に支えてくれる友達がいたら…どんなに救われるか。
彼女との出会いが、私にそんな事を思わせてくれた。 「…落ち着きましたか?」
泣いていた私の事を抱きしめてくれていた彼女が少し離れて聞いてくる。
今思ったらなかなかに恥ずかしいわねこれ。
「うん、悪かったわね…取り乱しちゃって」
「いえ、それは構いませんが…」
「あ、あと…助けてくれて、ありがと」
「当然の事をしたまでです。あなたはなにも悪い事をしてなかったんですから」
「ごめんね、えーっと…もし良かったら名前を教えてくれない?きちんとお礼したいから…」
「いえ、お礼なんて…ですが自己紹介はしておきましょうか。折角の出会いですし」
そう言うと彼女は言葉を続ける。
「私の名前は園田海未、音ノ木坂の1年です。リボンの色を見るにおそらくあなたの1つ後輩ですね」
「そうだったの、後輩に助けられちゃって…ダメな先輩ね。…私は矢澤にこ、よろしくね」
「
はい、よろしくお願いします矢澤先輩。」
「にこでいいわ、それと先輩も無くていいわよ」
「ですがそれでは…」
「先輩後輩なんて気にしなくていいわ。私がそう呼んで欲しいの」
「わ、わかりました。では私の事も海未とお呼び下さい」
「わかったわ。本当に色々ごめんね、海未」
「いえ、1人友人が増えたんですから安いものです」
と言って笑顔を浮かべる海未。
友人と言える人がほとんどいなかった私にとってその言葉はとっても嬉しくて。
帰ってから私はまた少し泣いた。
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「へ〜、昨日遅かったと思ったらそんなことがあったんだね〜…」
いつもの昼休み。
穂乃果とことりと3人でいつものように教室で、昨日の出来事を話していました。
「すみません、2人との約束に遅れてしまって…」
「全然いいよ♪偉いね〜海未ちゃん!」
「ありがとうございます…それでですね、その方と友人になったんです!」
「おぉ〜!人見知りしちゃう海未ちゃんに先輩の友達が…こんな成長をしてくれて穂乃果嬉しいよ…」
「もう、ふざけないでください!」 「ごめんごめん!だって海未ちゃんが嬉しそうだったんだもん」
「え?そうでしたか?」
「うん、海未ちゃんが嬉しそうだとことりも嬉しいな!」
「そうですか……そうですね、嬉しい、んだと思います」
「と、言うわけで!お昼ご飯たべよ〜!」
「どういう訳ですか…もう、穂乃果は仕方無いで…す………!?」
「どうしたの、海未ちゃん?」
「私とした事が、お弁当を忘れてしまいました…!」 「海未ちゃんが忘れ物なんて珍しいね〜、穂乃果のパン食べる?」
「い、いえ、忘れたのは私ですし我慢します」
「え?でも…」
「穂乃果もことりもありがとうございます。ですが私に気にせず食べて下さい」
「……うん、わかった。じゃあいただきま〜…」
「園田さん、お客さんだよ〜」
「もう!さっきから穂乃果全然食べれないじゃん!」
「私にですか…?誰でしょう……あ!」
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「急にごめんなさい。改めてお礼を言いたくて…」
私に訪ねてくるなんて誰だろうも思っていると、噂をすればというものでしょうか…にこでした。 なんでも1年生という情報しか無かったのでわざわざ私がいる教室を確認して探してくれたみたいです。
「いえ、昨日も言いましたが本当に気にしないでください」
「ありがとう…それでなんだけど、お弁当を作ってきて…」
「え、本当ですか?」
「うん、迷惑かと思ったんだけど、やっぱり何かお礼したくて…これなんだけど、受け取って貰える?」
「ありがとうございます!!」
「え…?よ、喜んで貰えたなら嬉しいわ」
はっ、私とした事が…お弁当を作って頂けた事が嬉しすぎて引かれてしまいました…! 「あ、いや!今日実は丁度お弁当忘れてしまいまして…すごく嬉しくて!」
「あ、そうだったのね。…ふふっ、可愛いとこあるのね」
「も、もう、からかわないで…下さい…///」
「あ、そういえば…」
「なに、どうしたの?」
「やっとにこが笑ってる所を見れました」ニコッ
「んな…!急になにを言い出すのよ!///」
「ふふふっ、これでおあいこですね?」
顔を真っ赤にしてぷんすかと怒っているにこ。
その姿はとても可愛らしく、先輩には見えませんでした。あ、悪い意味じゃないですよ!? 「…海未ちゃんが先輩といちゃいちゃしてる……」 ジトーッ
「「!?」」
「いや、ぜ、全然そんなんじゃなくて!!」
「そ、そうです!変な言い方はやめて下さい!」
「うふふ、冗談だよね〜、穂乃果ちゃん?」
「2人とも必死になりすぎだよ〜!この先輩がさっき話してた…?」
「ごほん…そうです、この方が矢澤にこ先輩です」
「あぁ、えっと…私は矢澤にこ。そちらは海未の友達…よね?」
「うん!海未ちゃんとは小さい頃からの幼馴染なんです!」
「そう、それならこんなに仲がいいのも納得だわ。」
「私は高坂穂乃果っていいます!こっちは南ことりちゃん!」
「よろしくお願いします、にこ先輩♪」
「穂乃果にことりね、よろしくお願いするわ」
「あ、そうだ!にこ先輩も一緒に食べませんか?」
「えっ、私は大丈夫だけど…いいの?」
「はい!海未ちゃんの友達は私達の友達みたいなものだもんねことりちゃん!」
「うん!是非色々話を聞きたいです♪」
「ありがとう…穂乃果、ことり。二人も私に敬語じゃなくていいわよ!…友達、だもんね…」 グスッ
「えっ…にこ先輩泣いて…?!」
「…ぁ、な、泣いてないわよ!…最近涙脆くてダメね…」ボソッ
「とにかく!私と話す時は全然普段通りでいいから。いいわね!」
「「う、うん…」」ポカーン 二人ともにこの剣幕に気圧されポケーっとしてます。
それにしても昨日といい今日といい、涙脆い所があるのかもしれませんね。
「では、お昼にしましょう!…実は先ほどからお腹が減ってしまって…」
「ふふっ、そうだね!」
「あー!穂乃果もお腹減ってたんだった!」
「忘れてたんかい!…じゃあ私もお邪魔するわ!」
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「ごちそうさまでした!」
「にこのお弁当、凄く美味しかったです!」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。」
「ホント、美味しかったよね!にこちゃん、穂乃果にも今度作ってよ〜!」
「あっ、穂乃果ちゃんずるい〜!」
「ふふっ、また今度作ってきてあげるわ」
「「やったぁ!」」
「さ、そろそろ時間だし私はもう教室に戻るわ」
「え〜、もう!?このままにこちゃんも1年生の授業受けていきなよ〜!」
「穂乃果!意味のわからないわがままはやめなさい!」
「うぅ、しょうがない…じゃあにこちゃん、また明日ね!」
「それでいいのです。ではにこ、また明日」
「また明日ね、にこちゃん♪」
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カポーン
「ふぅ……今日は色々あったわね…ふふっ、海未に穂乃果にことり、か…」
また明日…ね。
明日が楽しみになった事なんて、今まであったかしら。
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「おはよう、にこっち。」
「希……おはよう」
「ぇ!にこっちから普通に挨拶が返ってくるなんて…」
「な、なによ!別にいいでしょ!」
「ううん、嬉しいんよ……なにかいい事あった?」
「いい事ね…確かにあったかもね!」ニコッ
「………いますっごくいい笑顔やったね!一瞬ドキッとしちゃったやん?」
「今、笑ってた?」
「うん、とびっきりね!…よし、朝からいいものも見れたしウチもう行くね!」
「あぁ、うん…じゃあね」 希はアイドル研究部の皆がいなくなっちゃって、クラスでも浮いてる私に唯一話しかけてくれてたっけ…
いっつも挨拶もちゃんと返さず悪い事したわね…
「………希!」
私を通り過ぎて先にいった希を呼び止める。
「……ん?」
「えっと…今まで、変に意地張って…ごめん。あと、ずっと声をかけてくれてありがとう。」
「……。」ポカーン
「…はっ!びっくりして声も出んかった!ホントに急にどうしたんにこっち!まさか死んでしまうんやないよね?」
「死なんわ!…まぁ、ちょっと思う所があったのよ…」
「…そっか!まぁ謝ってくれなくても、友達なんだから声かけるのは当たり前やん?」
あんなに素っ気ない態度をとってたのに…
…こんなに近くにも友達がいたのね。
それなのに変に意地を張って、強がって…
「友達……ありがとう、希」
「なんかにこっち、変わったみたいやね!」
「意地を張るのをやめただけよ…」
「ふふっ、あの1年生の子のお陰かな?」
「んなっ!だ、誰の事かわからないわねぇ…」
「隠さないでもいいんよ?」
「隠してないわよ!…もう、先に行くから!」スタスタッ
「いっちゃったか…」
「私も頑張ってたつもりだったんだけど…なぁ……」
_____________________________ 皆さん見て頂いてありがとうございます。
書き溜めてあるのが大分あるので今夜中にかけるだけ書きますね。 ______________________________
「ふぅ…やっと放課後ね……」
今日も疲れた…今日は1日座学だったから腰が痛いわ……
ってなんか年寄り臭いわね。
んじゃ、少し部室に寄ってから帰るとしましょうかね。
「…ん?生徒会室の扉が開いてる……」
いつもならきっちり閉まってるのに、珍しいわね…誰かが扉閉め忘れて帰っちゃったのかしら。
周りにも誰もいないし、閉めていってあげましょ。
「あ、そういえば生徒会室の中って見たこと無かったかも……」
「…あれ、まだ誰か残ってるじゃない」 ______________________________
「ふぅ…やっと放課後ね……」
今日も疲れた…今日は1日座学だったから腰が痛いわ……
ってなんか年寄り臭いわね。
んじゃ、少し部室に寄ってから帰るとしましょうかね。
「…ん?生徒会室の扉が開いてる……」
いつもならきっちり閉まってるのに、珍しいわね…誰かが扉閉め忘れて帰っちゃったのかしら。
周りにも誰もいないし、閉めていってあげましょ。
「あ、そういえば生徒会室の中って見たこと無かったかも……」
「…あれ、まだ誰か残ってるじゃない」 少し気になって中を覗くと、机に突っ伏して眠っている子が。
顔は隠れていてもきらきらの髪の毛を見ればだれかわかる。
生徒会長の絢瀬絵里だ。
ほとんど話したことはないけど、クールであんまりいけ好かない。
「こうやって眠ってたらまだ可愛げがあるものの…」
彼女の白くて綺麗な頬をつんつんとつついてみる。
「…ん…ぅ…」スースー
結構ぐっすりみたいね、あんまり簡単には起きてくれなさそう。
生徒会長が生徒会の中でも、歴代の会長の中でも1番仕事頑張っているって噂はよく聞くし、疲れてたのね。
っていっても、ここで寝るんじゃなくて家で寝た方がいいだろうしそろそろ起こそうかしら。
「ほら、こんな所で寝てると風邪引いても知らないわよ〜…」ユサユサ
「…ん…うぅ…お婆さま…?」ガシッ
「へっ?」
起こそうとして肩を軽く揺さぶると、まだ寝ぼけてるであろう生徒会長がおばあさんと間違えたのか腰の所に抱きついてくる。
なんか意外というか…可愛いところもあるのね。
「………。」
まだ焦点が定まってないような目でこちらを見てくる生徒会長。
必然的に目が合う。
「…………。」ダラダラ
ようやく状況を理解したのか、タダでさえ色白の顔を蒼白にし目に見えて焦り出す。
「よくお眠りだったみたいね?」
「…………本当に、そうみたいね…」
やれやれ…といった感じで額に手を当てため息を吐く生徒会長。
いつもの誰も寄せ付けないようなクールなオーラは心なしか可愛いものに見えた。 「…なんかイメージと違って驚いたわ」
「イメージってなによ…私だって人間だもの、うたたねくらいするわ…」
「そうね、うたたねくらいするわよね…人間だもの…ふふっ」
「待ちなさい、今バカにしたわよね?」
「…………してないんだなぁ…にこを。」ボソッ
「あなたねぇ…!……はぁ、まあいいわ」
「ごめんなさい、ちょっとからかい過ぎたみたいね。ところで…なんで生徒会長さんは1人で寝てたのよ?」
「絢瀬絵里よ」
「へ?」
「あ・や・せ・え・り!私の名前」
「あぁ、悪かったわね…私は矢澤にこ。にこでいいわ」
「そう、じゃあ私の事も絵里でいいわよ。それで、何でここで寝てたのかって話だったかしら?」
「考えてたのよ、どうすればこの高校にもっと入学希望者が増えるのかって」
「そう………でもそんなの絵里が考えないといけないこと?確かに生徒会長だけどそこまで……」
「ねぇ、にこ。この学校についての噂、きいたことない?」
噂?言っちゃいけないかも知れないけど、うちの高校は地味だしなにか噂になる事があるとは思えないけど……
「このまま入学希望者が増えなければ、廃校。」
「え……?」
「その様子じゃ、聞いたことが無いみたいね。前から多くは無かったけど、私達の代から新入生のクラスは減っているのよ」
「それに来年の入学希望者数も、今年の1年生より……大分少ないわ」
そんな噂があったとは知らなかったわ…
別にとりたててこの学校が好きな訳では無いけど、今まで通った学校が無くなってしまうっていうのはなんだか寂しい。
それが自分が生徒会長の時に噂立ったら、なにか力になりたいと思うのも普通なのかもね。 「私は、私のおばあさまも通ったこの学校が潰れてしまうなんて嫌なの。なんとか…なんとかしないと…」
「そう、アンタ…実はいいやつだったのね。自分の学校を守ろうと自主的に活動するなんて、とても立派な事よ」
「成果がでないと意味が無いわ…そう、成果がでないと……」
自身に言い聞かせるようにそう呟いた絵里の顔は焦りからか強ばっていた。
それだけ真剣に考えてるっていうことなんでしょうね。
「実際、問題はなかなか好転していかないの」
「それでも………それでも何もしてない私よりは……何倍も凄いわよ」
「…アイドルの事?」
「っ!?…知ってたのね」
「あれだけ騒がれてたら…ね。でも私は他のクラスメイトとは違って貴女が悪評通りの人間じゃないってわかってるわ」
「他の子たちが帰ってる中、チラシを配ってる貴女の姿を見たわ。貴女1人に色んな事を任せて中途半端にやっていたあの子達の流した悪評なんかより、貴女の行動の方が数十倍信じられる」
まだ1年生だった頃の話、本気でアイドルを目指す仲間が出来たと思っていた私はあの子達にキツい練習を強要してしまった。
それで部活を辞めるだけでなく、私の嫌な噂をあることないこと広めていったあの子達には今でも悪いとは思ってないけど……
見てくれていたのね、誰も見向きもしてくれなかったと思ってたあの時にも…
見てくれる人は…いたんだ… 「…ありがと、もしなにか手伝える事があるならいつでも言って。普段暇な時は部室にいるから…」
「っ!?……ありがとう、にこ」 ニコッ
一瞬驚いたような顔をするが、すぐに優しい笑顔を浮かべる生徒会長、もとい絵里。
…なによ、いつも怒ってるみたいだけど、そんな表情も出来るんじゃない
「それじゃあ今日はもう遅いし帰りましょ?絵里。」
「そうね、また明日ね、にこ。」
「ええ、また明日。」
「あ、そうだ…絵里、アンタはもっと笑顔でいた方がいいわよ。いつもみたいなしかめっ面じゃなくて、さっきみたいな可愛い笑顔。そっちの方が断然似合ってるわ」
「か、かわっ…!?」
「……じゃあねっ///」タタタッ
「もう、自分が照れるくらいなら言わなければいいのに……。…矢澤にこ、か……ふふっ♪」
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最近、授業が終わるのが早く感じる。
これも気持ちの変化のおかげかしら?
今日のお昼はどこで食べようかしら。たまには中庭でもいいかもしれないわね。…あら?あれって………
「…ぁ、にこちゃん……」
「やっぱり、穂乃果じゃない。いつもは3人一緒なのにどうしたの?」
「うん、たまには気分転換もいいかな〜って思って…1人で出てきたんだ。」
「そう…なんか元気無いけど、喧嘩とかじゃないわよね?」
「違う違う!…海未ちゃんともことりちゃんともちゃんと仲良しだよ。」
「ならどうしたの?…私でよかったら話聴くわよ?」
「う〜ん…………うん。じゃあにこちゃんに聞いてもらおうかな。」
「…最近思うんだ。ことりちゃんは頭もよくて可愛くて、それに裁縫とかできて…海未ちゃんも頭がよくて、かっこよくて…武道ができて…」
「小さい頃は泣き虫で穂乃果の後ろに隠れてたくらいの海未ちゃんが、今ではすっごい頼りになって…」
「小さい頃穂乃果について来てくれてたことりちゃんも、最近服飾の夢を話してくれるようになったんだ。」
へぇ…3人にそんな過去があったのね…
海未が泣き虫だったなんて、今の姿からは想像できない。
ことりは裁縫とか得意なのね…いつかアイドルやれる時が来たら、衣装をお願いしようかしら。
「でもね…穂乃果にはな〜んにもないの。」
「頭もよくないし、集中力もない…それに、夢も特技もな〜んにも。」
「なんかね、そう考えてると海未ちゃんとことりちゃんと一緒に居づらいんだ。」
「……バカねぇ。」
「うん…ごめんね…」
「そういう意味じゃないわ、そんな事で悩んでるアンタに言ったの。」ギュッ
「ぁ……」
「知り合ってまだ日は浅いけど、穂乃果のいいところなんて沢山言えるわ。」
「自分のいいところって意外と自分では見えないのよ、きっと。」
「それに穂乃果は自分のより相手のいいところを沢山見つける事ができる優しさがあるじゃない。」
「にこちゃん……」
「私ね、アイドルが好き。なんでかわかる?……アイドルはね、人を笑顔にする仕事なの。」
「知ってる?穂乃果の周りってね、笑顔が溢れてるのよ。」
「それってきっと、才能だと思わない?」
「…うぅ…にこちゃん…に゛こ゛ち゛ゃ〜ん!」ボロボロ
「うわっ、ちょっと鼻水つくからあんまり近くに……あ!こら!私の服で鼻かむな〜!!」
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「ごめんねにこちゃん…服汚しちゃって…」
「もう、本当よ…アンタの涙と鼻水でベタベタじゃない…」
「えへへ……にこちゃん、ありがとう。」
「な、なによいきなり…」
「にこちゃんが皆にモテる理由がわかったよ。…すっごいかっこよかった!///」
「あーはいはい、そうですか…ありがとありがと…」
「むっ、またそうやって適当に……結構本当に好きになっちゃいそうだったんだよ…///」ボソッ
「ん?なんかいった?」
「えへへ、なにも言ってないよ!…じゃあねにこちゃん、今日はありがとう!」
「ううん、いいわ。2人と仲良くね。」
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またある時の昼休み。
たまたま昼ごはんをいつもの部室じゃなくて違う所で食べようかと考えてウロウロとしてた頃に、先日の穂乃果に続き今度は海未が1人でいる所を見つけた。
「おーい、海未!」
「ぁ、にこ……」
その顔は何故か不安げというかなんか泣きそうになってる…?
「どうしたのよ、そんな顔して…折角の可愛い顔が台無しよ?」
「なっ!///そんな…恥ずかしいよ…///」
「え、ホントにどうしたのよ?いつもの敬語はどこにいったの?」
「実は…ほ、穂乃果が…」 ____________________
「海未ちゃん!今日1日敬語禁止!」
「は?急にどうしたのですか?」
「いっつも他人行儀な感じがして寂しいの…今日1日でいいから!!…ダメ?」
「えっ、あっ…うっ……………し、仕方ないですね…」
「ん?仕方ないですね?」
「し、仕方ない…なぁー…///」
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「って事があって……」
「へぇ〜〜、海未が敬語禁止、ねぇ…」
「はい…いや、うん…」
って言っても別に穂乃果と約束しただけなら穂乃果の前でだけやってればいいのに…
ホントに海未はその辺真面目っていうか…
そういう所は天然よね。
「で、今この場にその穂乃果はいない訳だけど…敬語禁止は続けるわけ?」
「あ……………………………………」 「いや!いや違いますよ!決してそれに気付かなかった訳ではなくて…!」
目に見えてあたふたしだす海未。
身振り手振りでなんとか言い訳しようとしてて珍しく幼く見えて可愛い。
「約束を守る事だけに気を取られ過ぎてたみたいね…なにもそこまで律儀に見られてないとこまで禁止にしなくても…」
「うぅ……恥ずかしすぎます…」
「ふふっ…なんか海未のいつもと違う一面が見られて嬉しいわ、たまにはこうしてぶらつくのもありね」
「なっ…//もうずるいですよにこはまたそうやって……」
「ん?今なにか言った?」
「何も言ってません!もう行きます!」スタスタ
「いっちゃった…」
なんで最後怒ってたのかしら…?
まあとりあえず、可愛い海未が見られたって事で得した気分ね! おっと、お昼ご飯食べないと…もう時間もあんまりないし部室でいいかな…
「にこっち〜!」
などと考えていると後ろから希に声をかけられる。
今日のお昼はたくさん人と遭遇するわね。
「希?…って絵里もいたのね、どうしたの?」
振り返ってみるとそこには希と、その隣には絵里もいた。
生徒会が2人揃ってなんの用事かしら?
「ごめんなさい、特に大した用事は無いんだけど…にこがお弁当を手にしてたから、もし良かったら一緒にどうかと思って…」
「あ、そうだったのね。ありがと、でも私も一緒でいいの?」
「勿論やん!皆で食べた方が美味しいもんね、えりち!」
「そうね…それに、にこには前に話を聞いてもらってお世話になったからというか…///く、クッキーを焼いてきたの!」
「へぇ〜、絵里って料理も出来るのね!是非食べさせてくれる?」 「よかった…要らないって言われたらどうしようかと思って…」
「そんな事言わないわよ、折角絵里が作ってきてくれたんだし…ありがとうね」ニコッ
「………///」ポーッ
「にこっち…恐ろしい子…!その笑顔は反則やん?」
「へ?なんか変なこと言った?」
「なんか素直になってから無意識に自覚ない優しさを振りまいてるにこっちが恐ろしいわ…」ブツブツ
「…まぁいいけど、はやくしないと昼休み終わっちゃうからそろそろ行きましょ?」
「そ、そうね!いきましょう、希。」
「そうやね、教室だと賑やか過ぎるから生徒会室でいい?」
「私は全然どこでもいいわよ。」
おっ、またまた珍しい体験が出来てしまうわね…
最近考え方が変わったのか今までと違う事をしてみようと思ったり人の事も場所でも色んな所を見ようとする事が増えたのよね。
でも生徒会室はなかなか入りづらくて前の一回しか入れてないからちょっとだけ楽しみだわ。
______________________________
____________________ 生徒会室の机に3人でお弁当を広げる。
絵里のも希のも彩りがしっかりしていて美味しそうだ。
ただ少し希のは栄養が偏り気味かしら?
「ほぇ〜、にこっちもえりちもそれ自分で作ったん?」
「そうよ。…って希も1人暮らしなんだから自分で作ってるんじゃないの?」
「ううん、うちのはほとんど冷凍さんやから…」
「そう…私の少し食べる?今日亜里沙がお弁当いらないって言ってたの忘れてて少し多いのよ。」
「あ、それなら私のも食べていいわよ。」
「えりち…にこっち…うち涙が出そうや〜…」
そう言って下手な芝居をうつ希。
でもその顔はホントに少し泣きそうで、わざとおどけてるように見えた。 「ところで気になってたんだけど…亜里沙っていうのは誰?」
「あ、ごめんなさい。そういえばにこには言ったこと無かったかもしれないわね…私の妹よ。」
へぇ、絵里にも妹がいたのね。
確かに絵里ってお姉さんっぽいところあるかも。
「そうだったのね…絵里の妹だし、綺麗なんでしょうね。」
「う〜ん…亜里沙ちゃんは綺麗っていうよりかは可愛いって感じかなぁ…」
「へぇ〜…てっきり絵里に似て美人なのかと思ったわ。私にも妹と弟がいてね、毎日お弁当作るの大変よ…」
「び、美人…///」
何故か絵里が顔を赤くして俯く。
…しかもなんかブツブツ言ってる?
なんか怒らせちゃったかしら…
「にこっちにも妹いたんやね!しかも弟も!それは初耳やったよ〜。」
「私とは歳が離れててまだまだ小さいんだけどね。絵里の妹はどれ位なの?」
私がそう聞くとついさっきまで俯いてブツブツ言ってた絵里が復活した。 「今中学2年生よ、あの子も音ノ木坂に入りたいって言ってくれてるの。だからこそもっと頑張らないと……」
「そう…絵里はきっとその亜里沙ちゃん?から随分慕われてるんでしょうね。」
「へっ…?ど、どうしたの急に?」
「だってこんなに妹の事考えてるんだもの。……いいお姉ちゃんね。」ニコッ
「あ、ありがとう……///」
「それなら、きっとにこっちの妹ちゃんや弟くんもそうやろうね!…さっき大変だって言ってたけど、顔はすっごい優しかったから…うちもにこっちやえりちみたいなお姉ちゃんが欲しかったなぁ…」
「希……ありがと。なんなら甘えてくれてもいいわよ?」
「…にこっちお姉ちゃん!」ギューッ
おわぁ!ホントに甘えて来るとは思ってなかった!
しかも飛びついてこられたからこけそうだったわ…
「あ、ずるいわよ希!…私も!」ギューッ
「うわぁぁ!絵里まで!流石に耐えられな………」ズデーン
「いつつつ…もう、絵里まで悪ノリしないでよ…」
「ごめんなさい…」
「ごめーんにこっち!」 「もう、しょうがないわね…この数日で希だけじゃなくて意外と絵里もポンコツなとこがあるって知ったわ…」
「にこ〜…酷いわよ…」
「うちなんてポンコツなのが前提条件みたいに言われてるんやけど…」
「ふふっ……それは仕方ないんじゃない?」
「えりちまで!酷いよ〜うわーん!」
「あははっ…」
この3人でこういう風に笑い合える時が来るなんて思ってもみなかった。
少し自分の気持ちに素直になるだけで、こんなにも毎日が変わるなんて知らなかったわ。
あの時助けてくれた海未に感謝ね… ………………でも。
自分の気持ちに素直になると同時に、自分の気持ちにフタをしている自分もいる。
あれからずっと目を背けてきたけど、もうすぐ私も3年生…最高学年。
憧れのA-RISEと同じスクールアイドルでいられる期間もあと1年しかないの…
そう、あと1年……____________________
「_________にこ?」ポンッ
「…はっ!」
絵里に肩を叩かれる。
どうやらちょっと深く考えすぎたみたいね…
「どうしたん?何回も呼んだけど返事なかったんよ…」
「ごめんごめん、ちょっと考え事してたみたい。」
「そう……何のことかはわからないけど、あんまり怖い顔して考えこんじゃダメやよ…折角の可愛い顔がだいなしやん?」ムニッ
そう言って私の両方のほっぺたをむにむにといじりだす希。
元気づけようとしてくれて……
「………。」ムニムニムニッ
ってなんか趣旨変わってきてない? 「ひょっ、ひょっほのばひふぎじゃない?」
「…あ、ごめんごめん…あまりににこっちのほっぺたがぷにぷにで夢中になっちゃった!」
「もう…まぁでも元気づけてくれようとしてたのはありがとね。」
「そんなの当たり前やん!ねっ、えりち!」
「………。」
「えりち?」
「ぇ…ぁ!そ、そうよね!」
「どうしたん?えりちまで考え事して…流行ってるん?」
「そ、そんな事より!ご飯も食べたしクッキーでもどう?」
「あっ、いいわね。実はずっと絵里のクッキー楽しみにしてたのよ。」
「ふふっ、お口に合うといいけれど…」
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「ごちそうさま!とても美味しかったわ。絵里って何でもできるのね…」
「ううん、できない事も沢山あるわ…」
絵里ができないことなんて無さそうよね…
可愛くて、勉強、運動ができてそれに料理まで…ハイスペックってこの事をいうのね。
「おっと、そろそろ時間ね。じゃあ先に私教室戻るわ。」
「うん、じゃあまたねにこっち!」
「また一緒に食べましょう、にこ?」
「そうね、ありがとう2人とも。楽しかったわ」
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どう考えてもさっきのにこはおかしかった。
3人で笑ってたと思ったらいきなりなにか考えだして……
…覚えようとしたわけではなかったけどあの思い詰めた顔には見覚えがあった。
1年生の時のあの日。
私が見たのは1人で健気に、真剣にチラシを配っている彼女の姿。
凄く素敵な笑顔で配ってたわ、でも私は見てしまった。
皆がすっかり下校した後で、渡しきれなかったチラシを抱えて悲しそうで、悔しそうな表情を浮かべているにこを……
「アイドル…か。」
「ん?どしたんえりち?」
「ううん、なんでもないわ。さっ、私たちも行きましょ?」
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_____________________________ 「うぅ〜…っん!今日も授業終わったわね…」
学校の1番きつい部分が終わったわ…
自然と体を伸ばす。こういう何かが終わった〜って時にしたくなるから不思議なものよね。
今日は久しぶりに2年生の顔でも見に行こうかしら。
「あっ、にこちゃん?」
後ろから声をかけられて振り向いてみると、ふわふわとした雰囲気を浮かべてる美少女…ことりだった。
「あ、ちょうどよかったわ。今からアンタ達に会いに行こうかと思ってたのよ。」
「そうだったんだね〜、でも海未ちゃんも穂乃果ちゃんも帰っちゃって…ことりだけなんだぁ…」
「へぇ、珍しいわね…」
と言った後で気づいたけどなんか最近穂乃果といい海未といい1人でいる時に会うことが多かったわ…
これで2年生コンプリートじゃない。
「穂乃果ちゃんが明日の小テストを忘れちゃってたらしくて…海未ちゃんが引っ張って連れて帰っちゃったんだぁ…」
あはは…と苦笑いを浮かべることり。
その光景が容易に想像出来るのが穂乃果の凄い…いや凄くない所よね…
「ことりは今から帰り?それなら一緒に帰らない?」
「うん!あっ…でも…ちょっと寄りたいところがあって…」
「ことりが寄りたいところっていうと…クレープ?ケーキ屋?」
「あはは…それじゃ穂乃果ちゃんだよ〜…」
「ふふっ、冗談よ。で、どこにいくの?」
「ちょっと、服の生地が欲しくて…」
あっ!そういえば前穂乃果がことりは裁縫ができるって言ってたわね…
それにしても自分で服を作るって事は凄い上手いんじゃないかしら?
「へぇ〜…ことり自分で衣装作れるのね…」
「へ?衣装?」
「あっ、いや服ね!自分で好きな服が作れるといいわよね…」
「うん、にこちゃんに似合う服も作りたいなぁ〜…」
「ありがたいけど、それはちょっと悪いわね。さっ、じゃあ服の生地見に行きましょっか。」
「うんっ♪」
______________________________ 「へぇ…このお店すっごい沢山種類があっていいわね。」
「うん!ここはことりの行きつけなの。あ!あれかわいい〜…♪」
ことりが手に取ったのは淡いミントグリーンの生地。うん、ことりに似合いそう!
「これにこちゃんに絶対似合うと思うんだぁ〜…」
「え、私に?」
「うん!これをベースにしてちょっとピンク色の生地…あ!あれなんかいいかな。あの生地を使って…」
ことりの脳内デザインが止まらない。
凄いわね…これは想像していたよりずっとことりの服飾の技術は高いみたい。
「あ、それならあの生地とかはどう?合わなさそうに見えて意外としっくりくる気がするんだけど…」
「にこちゃん…凄い!そう言われてみるとまたイメージが膨らんじゃいます♪」 ____________________
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「はぁ〜、にこちゃんのおかげですっごい楽しかった!」
「そう言ってくれると嬉しいわ。私もことりのイメージを聞いただけでなんとなく服の想像が出来ていい勉強になったしね。」
「勉強?」
「…私ね、1年の時はスクールアイドルやってたの。…って言ってもうまくいかなかったんだけどね。」
「最初に部活を作った時に、一緒にやるって言ってくれた子達がいたんだけど…イメージが私とは少し違ったみたいで、辛い練習や下積みについてこれなくて…それでみんな辞めちゃった。」
「私も練習を強要したり、強く言いすぎちゃったりしちゃったから悪かったんだけど…辞めた子達にある事ない事言い回られちゃって…そのせいで同級生から嫌われて、つい最近まで同級生には友達はいなくって…」
「でもアイドルになる夢は諦められないの。やっぱり小さい頃からの夢だしね…」
「だからもう一度アイドルやれた時の為の衣装の勉強!もうスクールアイドルでいられるのもちょっとだけだから…」
「にこちゃん…………。ことりね、にこちゃんは強くてかっこよくて、でも可愛くて…弱い所なんて無いと思ってた…」
「でも、だからこそ嬉しいな。にこちゃんが自分から弱い所をことりにみせてくれたから…」
あんまり後輩たちには話さなかったアイドルの話。
だけどことりの雰囲気のせいかポツリ、ポツリと話してしまう。
先輩の情けない弱音に対してもことりは言葉を選んでゆっくりと優しく声をかけてくれる。
「ごめんね…ちょっと弱気になっちゃったけど、私はまだ可能性を捨てたわけじゃないわ!」
「うん、にこちゃんがアイドルをもう一度やる時は、ことりに衣装を作らせて欲しいな!」
「ありがとう、私もことりが作った衣装着てみたいわ。」
「腕によりをかけて作っちゃいます♪」
ことりが可愛すぎる件について問題が発生。
この子ホントに素でアイドルに相応しいじゃない…
それに衣装も自分で作れるとなるととんでもないわね。
「あ、ことり家こっちだからまた明日ねにこちゃん!」
「今日はありがとね、なんか元気貰えた気がするわ。」
ことりと別れ1人家路につく。
今日も色々あったわね…
さっきはことりに強がって言ってみたものの、最近毎日が楽しくてアイドルはもういいんじゃないかって思う時が本当にたまにある。
あんなに可愛い友達や後輩をアイドルに誘えたらいいのに…だけどまた仲間をなくすのは嫌。
憧れと現実の間で揺れている自分がいた。
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昨日はあんまり寝れなかったわ…
少し考え事をしすぎてたみたいね、なかなか寝つけなかった。
……まぁその分午前の授業しっかり寝させて貰ったんだけどね。
「今日は久しぶりに部室でご飯食べようかしらね。最近お昼はあんまり行けてなかったし。」
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「ごちそうさまでした。お粗末様でした。」
って自分で作ったお弁当だからって何ひとりでつまらないことしてるんだか…
久々の1人でのお昼ご飯。
やっぱり少し寂しいけど、まあたまにはいいわね。
コンコン
なんて考えてると珍しく部室がノックされた。
誰かしら?なんて考えているとそのままドアノブが捻られ、見知った顔が入ってくる。
「すみません、突然押し掛けて来てしまって…」
「それは全然構わないんだけど…珍しいわね?海未が私を訪ねてくるなんて。」
「はい…少し話したい事がありまして…」
なんだか少し顔が暗い。
何か悩み事でもあるのかしら…
「私でいいなら聞くわ。そのへんの椅子適当に使っていいわよ。」
「はい、失礼します。」
海未が私の向かいの椅子に座る。けど、なかなか自分から話だせなさそうな様子をしている。
「で、どうしたの?私に話って。」
「…実はですね、最近にこと仲良くさせてもらっている事を快く思っていない方がいるらしく、にこの悪口を書いたような手紙を貰ってしまって…」
…正直予想してた中で1番嫌な展開かもしれないわ。
同級生の中の嫌われ者である私が後輩の中で一番人気って言っても過言じゃない海未と仲良くしてたら私の同級生や、その上の3年生ですら快く思わないに決まってる。
「あ〜…確かに上級生からも人気な海未が私なんかと仲良くしてたらそう思うでしょうね。なんて書いてある手紙だったの?」
「いえ、それは…」
「大丈夫よ、悪口や陰口なんて言われ慣れてるもの。どうせアイドルの事とかでしょ?」
「はい…すみません。」
「なんで海未が謝るのよ…海未にはアイドル目指してた時の事を話した事なかったから余計驚かせちゃったかも知れないわね…ごめんなさい。」
「いえ…悪いとは思ったのですが、その手紙を貰ってことりに相談した時に、ことりから話を聞かせて貰いました。」
「そう…それなら話は大体知ってる訳ね。まあ色々あって私は今でも同級生からあんまり好かれてないの。」
「それで、とにかくどうするか考えないといけないわね。一番手っ取り早いのは海未がもう私に関わらないようにする事かしら…」
でもその方法は嫌ね、今希や絵里と仲良く出来ているのも元を正せばあの時海未が私を助けてくれたからだし…第一海未ともっと仲良くしてたいもの。
…まあ口には出さないけど。 そんな風に考えていると、そんな素振りも見せなかった海未が突然大きな声で反論する。
「それは嫌です!!折角初めて先輩と仲良くなれたのに…にこと、仲良くなれたのに…。こんな事で離れたくありません…」ポロポロ
「ち、ちょっと!そんな泣かないでもいいじゃない!あくまで手っ取り早い手段なだけで私だってそんな方法は嫌よ。」
「うぅ…こんな…あんまりですぅ…!」ポロポロ
「落ち着きなさいって!他にも何とかなる方法はあると思うし、考えましょう!」
「うぅ…うぅぅ……」ポロポロ
なかなか泣き止んでくれない。こんな海未は初めてみたけど、きっとこの手紙を貰ってからずっと悩んでいたんでしょうね…仕方ないわねぇ……
「にっこにっこに〜!!」
何とか海未を元気づけてあげたい、笑顔にしてあげたいと思った結果。
頭に浮かんできたのはやっぱりアイドルだった。
皆を笑顔にする仕事、こんなに大切な友達を笑顔にできなくて務まる訳がない。
「貴方のハートににこにこにー!笑顔を届ける矢澤にこにこ〜!」
「えっ…?」ポロッ
「にこにーって覚えてラブにこ!」
「…………。」ポカーン
「ほ、ほら、泣き止んだ事だしさっさと別の方法考えましょ!」
「にこ……ふふっ…凄いです、涙がどこかにいってしまいました。」
「アイドルはねぇ、お客さんを笑顔にする仕事なの!これくらい出来て当然よ!」
「…それに、あの時海未が私を笑顔にさせてくれたから…そのお返しよ。」
「懐かしいですね…思えばあの時因縁をつけられているにこに出逢わなければ今こうして2人で居ることも叶わなかったんですもんね…」
「…アイドル、ですか……」ボソッ
「なに?なんかいい案でも浮かんだ?」
「いえ、何だかもう気にしないでおけばいいような気がしてきました…」
「…まあ結局現状はそれしかないわよね……私がもっと頼れる先輩ならよかったんだけど。」
「そんな事ないです…にこは私にとって大事な先輩で、友達ですから。…あ!でもそれでにこに危害が加わるようならすぐに言ってください!にこのことだけは絶対に護りますから」ニコッ
…………やばい。
心臓が自分でも驚くくらい高鳴ってるのがわかる。
顔はあかくないかしら、今までの人生で一番大きいであろう心臓の音が海未にまで聞こえてないかしら。
そんな心配をしてしまうくらい今の海未はかっこよかった。
「そ、そんな事言わないでくれる…///私の方が先輩なんだから!///」
「すみません…でも私は本気でそうおもってますよ。」
「もう…バカ!教室戻るわよ!」
「あ、待ってください!途中まで一緒に行きます!」 今日はここまでにしておきます。
また時間のある時にまとめて投下するので、お付き合い頂けたら幸いです。 皆さんありがとうございます
30分くらいから纏めて残りの書き溜めを投下したいと思います もう、海未ったら良く恥ずかしげもなくあんな言葉スラスラと言えるものよね。
それが嬉しくないかって言ったら嘘になるけど…勘違いしちゃう子もいるだろうし誰にでもあんな態度じゃ困るわ。
いや、別に嫉妬とかじゃなくって私は単純に可愛い後輩を心配して…って、誰に言い訳してんのよ私は。
「おーーーい!にこちゃーん!!」モッギュー
「あらにこ、奇遇ね?」
なんて考えていたら、前には絵里。後ろからは穂乃果が走って追いかけてきて抱き着かれる。
珍しい組み合わせ…っていうかこの2人って初めて会うんじゃないかしら?それにしても…!
「だぁーー!穂乃果、いきなり走って来て抱き着いてきたら危ないじゃないの!」
「ご、ごめ〜ん…ってあれ?ごめんね、穂乃果邪魔しちゃった?」
「あら?にこ、その子は?」
「あぁ、絵里は会うの初めてよね、この子は高坂穂乃果。一年の子なんだけど私の大切な友達よ。穂乃果、こっちは生徒会長の絢瀬絵里。お堅いイメージがあるかも知れないけど結構可愛いとこあるのよ?」 「大切な…………///」
「可愛い…………///」
…なによ、せっかくお互いに紹介してあげたのに2人ともボーッとして動かなくなったんですけど。どういう事よ?
「絵里?穂乃果??」
「はっ、や、やだ私ったらごめんなさい…そう、高坂さんっていうのね。今にこから紹介して貰った通り生徒会長をやっている絢瀬絵里よ、よろしくね」
「は、はい!私も今にこちゃんから紹介してもらった通り一年生の高坂穂乃果です、よろしくお願いします!」
へぇ〜、私が普通に友達として接して貰うように頼んでるから忘れてたけどそういえば穂乃果ってちゃんと後輩出来るのね。
いつもの感じとは違ってなんか新鮮。
絵里も流石後輩の扱いには慣れてそう。慕われる先輩って感じね。
「ところで高坂さん?にことは"大切”な友達同士みたいだけどどうなのかしら、普段のにこは」
「穂乃果部活やってないから先輩の友達いないんですけど、にこちゃんとは"特別”仲良くさせて貰ってますよ!普段しっかりしてる絢瀬先輩も"可愛い”所見せるくらいにこちゃんと仲良いんですよね?」
「そうね、友達になったのは最近だけれどにこのことは"よく”知ってるつもりよ?私もにこのことは"特別”頼りにしてるしね」
ってあれ、なんか険悪になってない?なによこの状況。
心無しかお互いに睨み合ってる気がするしバチバチ火花が散ってる様な錯覚さえ見えてきたわ… 「そ、そうなんだ〜、ねぇにこちゃん?やっぱり同級生の方がいいのかな…?」
「ねぇにこ、歳下の方が仲良くしやすいのかしら…?」
つり上がっていた2人の眉がしゅんと垂れ下がったかと思うと不安そうに同じような質問をにこに投げかけてくる。
「はぁ?何よ急に、そんなの上も下も無いわよ。海未も希もことりも皆大切な友達よ、もちろんあんた達もね」
「そ、そうだよね…うん、わかってた……」
「そうよね……はぁ…高坂さん、私達も仲良くしましょう?私の事は絵里って名前で呼んで頂戴」
「そうですね、よろしくお願いします絵里先輩……穂乃果のことも名前で呼んでください!」
な、なによその微妙な反応は…結構恥ずかしいこと言っちゃったのにそんな反応されたら余計居た堪れないじゃない…
対立してたかと思ったら急に握手なんかしてるし、いよいよ訳わかんなくなってきたわ。まぁ、二人が仲良くなったんならいっか。
「あ!そう言えば穂乃果海未ちゃんに呼ばれてるんだった…どうしよ〜っ!絶対また怒られちゃうよ〜!」
「私も希と生徒会の事で話があるんだったわ…!急いで生徒会室に向かわないと…」
「なによ、二人とも大切な用事あったのにわざわざにこに声掛けに来たわけ?無理して話掛けてくれなくってもいいのに…」
「「無理してる訳ないじゃない(ないよ)!!」」
私の悪い癖で素直じゃない言葉をつい口走ってしまうと、穂乃果と絵里は凄い剣幕に食い気味で否定する。
最近私が素直になれてるのはこういう風に皮肉っぽく言うと真剣に捉えられちゃうってのもあるかも知れないわね…でも、ここまで真剣に返して貰えると正直嬉しい。
それにしてもこの二人ここまで声揃えられるなんてやっぱり仲良くなれたってことなのかしら。
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____________ 最近考える事がある。学校生活が楽しくて、幸せすぎて、でもそのせいでこのままでもいいのかなって思ってしまう自分がいるの。
勿論練習は辞めてないし夢をそう簡単に諦められるものでもない。
一年の頃の私ならこの状況なんてチャンスとしか思えなくて皆をアイドルに誘ってる。
だけどそういう訳にはいかないの。私にとってアイドルと友達どっちも大切だから。だからこそ簡単にはいかないのよね…
「はぁ…はぁ…こ、こういう時はきつい練習で気を紛らわすのが、一番よねぇ…」
神田明神に続く階段でのダッシュはいつやってもキツいわね。段数も多いし1本やるだけで息が続かなくなる。ダンスと並行して歌い笑顔も作らなくてはいけないアイドルにとってこれ程身になる練習はないわ。
…この辛い練習について来れなくて辞めていった子の気持ちも分かる。でも必要なの。
…いけない、また暗い考えをしてしまっていたわね。
「あ、あの…大丈夫ですか……?」
「へ?」
「へ?じゃないよ!手を膝について動かなかったら誰でも心配するにゃ!」
「あ、ごめんなさい。今練習中で階段をダッシュしてきた所だったから…って、にゃ??」
「凛ちゃん!出ちゃってるよぉ…!」
「あ、今のなし!凛は何も言ってないよ!」 私を心配して声を掛けてきた二人。一人は引っ込み思案って感じのする眼鏡をかけた子、もう一人はショートカットのボーイッシュな感じの元気な子。
それにしてもにゃ〜って…?
全然誤魔化しきれてもないし……
「そこまではっきり言っといて今更誤魔化しきれないわよ。白状してもらうわよ〜?」
「な、なんの事かわからないな〜?かよちんなにか聞こえたかにゃ?」
「凛ちゃんまた言っちゃってるよぉ……もう正直に言った方がいいんじゃないかな?」
「そうよ、別に変に思ってる訳じゃないし私もそういうのには理解あると思うし。…って心配して声を掛けてくれたっていうのにお礼もまだでごめんなさい。私は矢澤にこ、近くにある音ノ木坂の二年生よ」
「ピャア!音ノ木坂の!?しかも二年生!!?」
「へぇ〜、そうなんだ、てっきり同じ歳くらいだと思ってたにゃ」
「何よ失礼ね、あんた達は?あと、そっちのあんたにはさっきの説明もしてもらうわよ?」
「わ、私は小泉花陽…です。来年から音ノ木坂に通う予定で…って言っても、合格してたらの話なんですけど…今日は凛ちゃんと合格祈願のためにお参りに来てて……」
「凛は星空凛!猫が大好きで、さっきみたいに癖でたまに語尾に出ちゃうんだ〜、かよちんとは幼なじみで凛も一緒に音ノ木坂行く予定だよ!」
なるほどね〜、めちゃくちゃキャラ立ってるじゃないこの子…アイドル向きね。二人とも可愛いし幼なじみならそういう路線で売り出していけば………っといけない、私もついつい癖で変なこと考えちゃったわ。 「凛ちゃん!矢澤先輩はその音ノ木坂の先輩だよ!」
「あ……!です!」
「いやもう遅いわよ…別にそのままでいいわ。先輩ぶるつもりもないし他人行儀なのも好きじゃないから気楽に名前で呼んでくれていいし、別に敬語じゃなくてもいいわよ」
「にこちゃん太っ腹にゃ〜〜!音ノ木坂の先輩に知り合いいなかったから心強いねかよちん!」
「そ、そうだね!よろしくお願いします…にこ、ちゃん?」
思わぬ所で未来の後輩の知り合いが出来てしまったわ。最近色々と運がいいみたいね。
二人に知り合えたのが嬉しくて暗い気持ちもとりあえずはどこかにいってくれたみたい。
「ん、よろしくね花陽、凛。そういえば二人はなんで音ノ木坂に?」
「凛は家から近いからにゃ!かよちんはアイドル好きだからUTXに行ったらどうかって勧めたんだけど、音ノ木坂がいいって」
「へぇ!花陽もアイドル好きなのね!」
「はい!…も、ってことはにこちゃんも好きなんですか?!」
「勿論よ、最近のスクールアイドルはほとんど押さえてるわ。特にさっき凛も言ってたUTXのA-RISEね、グッズも個人的に収集してて我ながら伝伝伝を手に入れたのは苦労したわ……ってやば、にこったら調子に乗って喋り過ぎ…」
「あの伝伝伝を!!?凄い!花陽なんて凛ちゃんに協力して貰ってまで手に入れられなかったネット・店頭共に即完売になったあの伝説のアイドル伝説DVD全巻BOXを持っているなんて…!」
「うぉ、急に圧強っ!花陽って好きな事に関してはこんなはっきりスラスラと話せるのね…」
「凛はこっちのかよちんも好きだよ〜」
「ご、ごめんなさい興奮しちゃって…でも伝伝伝を持っているなんてにこちゃんは只者じゃないですね…花陽はあの中に収録されてるアイドルの中なら〜〜の〜〜が特に〜」
「わかるわ、にこは〜〜の〜〜も要チェックだと思うんだけど…」
「なんだか凛がカヤノソトだにゃ〜……」 __________________
____________
「やるわね、花陽……ここまでにこのアイドル談義に着いてこれる子初めてよ……」ホクホク
「にこちゃんこそ、ここまでの知識量…尊敬です!」ホクホク
「ねぇかよちんそろそろ帰ろうよ〜、もう太陽見えないよ〜!!」
つい花陽と話すのに夢中になってもうこんな時間になってしまったわ…凛は話に入れなくて退屈だったでしょうね……悪いことしちゃったわね。
「はっ!ご、ごめんね凛ちゃん…あまりににこちゃんとのお話が楽しくて……」
「にこも時間を忘れて話しちゃったわ。ごめんなさいね凛。」
「二人が楽しそうに話してるのを聞いてるだけでも楽しかったからいいよ!」
「二人とも、音ノ木坂に合格するのを祈ってるわ。あ、あと私アイドル研究部の部長もしてるからよかったら二人も遊びに来てね?」
「うんうん、かよちんアイドル好きだし入るべきだにゃ!それに可愛いからにこちゃんとスクールアイドルとかやってみたら絶対に人気出るよ!」
「えぇぇ?そんなこと…それを言ったら凛ちゃんの方が……」
「あはは、またまた〜、凛なんかこんなに髪の毛も短いし女の子らしくないから向いてないよ…」 「だーもう!私から言わせてもらえばどっちも可愛いわよ。二人にあと足りないのは自信だけね」
「花陽はアイドルの知識も豊富だしそばに居て安心感があるからアイドルをやるのに充分な素質を秘めてると思うわ。それに凛、猫みたいな言葉が出ちゃうっていう癖もキャラにしたら申し分ないし私は凛のこと女の子らしくてアイドルに向いてると思うわ。」
「「そんなこと……」」
「あるの!!!にこが言うんだから間違いないわ、わかった!?」
「「……。」」ポカーン
「ありがとう……にこちゃんからそう言って貰えたら嬉しいな…」
「凛は自分ではそうは思えないけど…でも、えへへ。ありがとうにこちゃん…」
「かといって素質があるだけじゃ成功しないのがアイドルよ、厳しい世界なのよ…」
「うっ、急にしびあにゃ……」
「ふふっ、まぁなんにせよ、待ってるわ二人とも。」
「うん!絶対に二人で受かるからよろしくね!」
「えぇ、二人ならきっと受かるわ、このにこが言うんだから間違いないわよ!それじゃあ、にこはそろそろ帰るわね」
「うん、またお話してね、にこちゃん…!」
こうしてまた友達が増えた。凛と花陽……二人ともいい子で凛は猫好きなのがキャラとして立ってて私にも普通に使うようになってくれたし、花陽も話してるうちに敬語が抜けてたし仲良くなれたと思う。
来年からの楽しみが増えたわね。
調子に乗って話しすぎてしまったけど、二人とももしかしたらアイドル研究部に入ってくれるかも……そしたら穂乃果とことりと海未も、絵里と希も一緒に……なんてね。
あ〜、悪い癖ね。夢のような話を最近いつも考えてしまう、また同じ失敗を繰り返すのは絶対に嫌。それに…皆の事、本当に大切なの。この関係が壊れてしまうのが怖い。
「だーもう!…考えても仕方ないわね……帰ろ」テクテク ____________
______
「ごめんなさい…お姉さま、折角のおやすみなのにこころが熱を出してしまったせいで病院まで連れてきて貰って……」
「気にしなくていいのよ。こころは大切な妹だもの、これくらいお姉ちゃんに任せておきなさい?」
今日は日曜日、妹のこころが熱を出してしまったのでおぶって病院まで連れて来ている所。
ママが午前出勤で仕事終わりにそのまま向かってくれているから帰りは任せる事になるんだけど、私にとっては全然負担なんかじゃない。
妹たちはいつも私の心の支えになってくれているんだから当たり前よ。
それにしてもこの子は誰に似たのかとっても礼儀正しい子でそれだけに無理をしてしまうのが悪い所ね。
「はい着いたわよ、もうそろそろママも着くみたいだから先に入って順番待ってましょっか?」
「はい…ありがとうございます……」
「もう、そんな顔しないの。可愛い顔が台無しよ?」
そう言って頭を撫でてあげる。不安そうにこちらを見ていたこころの目が安心したかのように潤む。それでよし!っと頭にぽんと手を置くと、一緒に手を繋いで病院に入る。西木野総合病院…相変わらずめちゃくちゃでかいわね。
「お待たせ。ごめんなさいね、にこ。こころを見ててくれてありがとう」
「ううん、お姉ちゃんだもの。当然の事よ」
「…ホントにありがとうね。そうだ、お金渡すから飲み物でも買っていらっしゃい。」
って事で、自動販売機を探している所なんだけど……この病院広すぎて何がどこか分かんないわよ!すっかり迷っちゃったじゃない。 「〜♪」
「ん?」
ふと足を止めると、ピアノの音と…綺麗な歌声が微かに聞こえてくる。
釣られてその音の鳴る方へ歩いていくとひとつの小部屋の中に赤毛の女の子。
その子が着席する椅子の前には大きなグランドピアノ、この子があの曲を弾いていたのね。
演奏がとても上手で、でもどこか悲しそうに弾く姿が印象的だった。
そのせいかにこと同じくらいの年齢には見えないように大人びて見える。
ふふっ、穂乃果だったら部屋の前で全力で拍手とかしちゃうんだろうなって考えて笑っていると、赤毛の子がこっちに気づいたみたいだった。
「ゔぇぇっ?!ちょっと、ここ関係者以外立ち入り禁止になってるはずよ」
「えっ、うそ?!…ごめんなさい、音に釣られて来て全然周り見えて無かったわ……」
「ま、まあいいわ……ところで貴方、患者さんなの?随分と元気そうだけど…」
「妹が熱を出しちゃってね、マ…お母さんが来るまで付き添いで見てたのよ。」
「なるほどね、まぁ…ここで会ったのも何かの縁だし、悪い人でも無さそうね。よかったら演奏でも聞いていって」 病院が混んでてこころの診察までも時間がかかるそうだったから、お言葉に甘えて演奏を聞かせてもらう事にした。演奏の合間合間に少し話を聞いてみると、彼女はこの病院の一人娘の西木野 真姫ちゃんっていうらしい。
年齢は花陽と凛と同じ15歳、それに音ノ木坂志望らしい。私よりも2つも年下?嘘でしょって思ったわ。
「ねぇ、気になったんだけど…なんでそんな微妙な顔してるの?」
「あ〜、そうね…まずホントににこよりも歳下なのかっていう顔。それと………そうね。…ねぇ、真姫ちゃんなにか悩んでることあるでしょ」
「っ!?…どうしてそう思ったの?」
「なんだかピアノを弾いてる姿…音色もね、悲観的な感じがするのよ。って言ってもにこがそう感じるだけなのかも知れないんだけど」
「はぁ……そんなに分かりやすいかしら、私って」
「ん〜、にこが鋭いだけかな〜?ほらにこってば宇宙No.1アイドルだしぃ〜?」
「はぁ?なにそれ…キモチワルイ。でもまぁ……聞いてくれる?」
「気持ち悪いってなによ!…勿論話は聞くわ。将来の可愛い後輩のことだしね」
「かわっ…!もうっ、良いわよそれで」 真姫ちゃんの話はこう。小さい頃からピアノをはじめ音楽が大好きだった。
それが医者になるということの為に生きるせいで終わってしまう、それが真姫ちゃんを悲観的にさせる理由。
大人びているとはいえ15歳、好きな物を奪われてしまう辛さは私にもよく分かるつもり。
完全に弾けなくなる訳じゃなくても目標を失ってしまった真姫ちゃんの音楽はもう終わり。って言うのが本人の談。
「にこね、アイドルが好きなの。自分もそうなりたいって、本気で思えるくらいにね」
「え…?…何よ急に」
「真姫ちゃんが音楽に対して目標を失ってしまったって言うんなら、私の為に曲を作ってみない?今とは違うとびっきり楽しい曲」
「……私は好きにはなれないわ、あんな音楽……でもそうね、たまにはそんな曲を作るっていうのもいいかもね」
「そうでしょ?ふふん、にこの要望は多いわよ〜?勉強が疎かになったって知らないからね」
「頭の出来が違うのよ、にこちゃんとは。……もう、今日初めて会ったって言うのに…色々と余計なことを話し過ぎたせいで初めてって感じがしないわ」
減らず口を叩けるようになったってことはもう大丈夫ね。心無しか表情も明るくなってる気がするし、またまた未来の後輩とも仲良くなれたから楽しみが増えたわね。
曲も作ってくれるって言うんなら私の活動も一歩前に進んだって事かしら。
「っと、そろそろママが心配する頃だと思うからにこはもう戻る事にするわ。それじゃあまたね、真姫ちゃん」
「はいはい、合格なのは間違いないから音ノ木坂で待ってなさい。…最初お母さんって言い直した意味なくなってるわよ、にこちゃん」
し、しまった…………
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「最近ね、穂乃果趣味が増えたんだ〜!っていってもまだまだ駆け出しなんだけど…」
ある日の午後、昼休みに突然穂乃果が口を開きます。
全く穂乃果は前後の話を全く無視して唐突に思いついた事を言うんですから…。
とはいえ、趣味ですか…そう言われたら私にも思い当たる節がありますね。
「そうなんですね、実は私も少し趣味…というか日課にしている事があるんです」
「えぇ〜!凄い凄い、実はことりもあるんだよ♪」
え、ことりも……?こういってはなんですが私達三人はあまりに趣味の話をしないことが多いので三人一緒に趣味が出来るなんて珍しい事もあるものですね……って流石におかしくありませんか…?
「ちょっと待ってください!偶然にしては出来すぎていませんか?」
「えぇ〜?急にどうしたの海未ちゃん!」
「どうもこうもありませんよ、こんな同じ時期に三人一緒になんてどう考えても不自然です」
「そうかな〜、たまたま好きなものが出来るタイミングが被っちゃっただけかも知れないよ?」
「うんうん、ことりも海未ちゃんの考えすぎだと思うな〜」
「では穂乃果、その趣味とはなんですか?言ってみなさい」
「うぇえ!なんかそう言われたら言いづらいよ!海未ちゃんから言ってよ〜!」 この予感は間違いないです。私の思ってる事は当たっているはずです。
推理をするならこのタイミング。
一斉に三人一緒になんてどう考えても不自然。何故今まで共通の趣味がなかった私達に?共通の趣味が一斉に伝播するなんて一つ、人伝てです。
そして私は最近知り合い、影響を受けた共通の知り合いと言われて明らかに思い当たり過ぎる人物がいる。
という事はつまり、私達三人は同じ事が趣味になっている可能性が高い。
以上のことから答えはずばり……!
「アイドル……ですね?」
「「えぇ!なんでわかったの!!?」」
「当たり前です、私達が一斉に影響を受ける人物なんて一人しかいません」
「海未ちゃん凄いねぇ…穂乃果はアイドルの歌を聞いたり映像を見たりするのが最近の趣味なんだ〜、ちょっと恥ずかしいけど、真似して踊ってみたり…//」
「ことりもそうだよ!踊ったりはして無いけどその代わり…実はアイドルみたいな可愛い衣装を考えちゃってるんです♪」
「私もです、二人はびっくりするかも知れませんが恥ずかしながら作詞に挑戦…してみたり…///」
「「…あ〜〜……。」」
取り組み方は三者三様ですがやはり同じ趣味でしたか。
……それにしても私が作詞してると言った時のリアクション薄すぎませんか?もっと驚きますよね普通。 「穂乃果は前ににこちゃんとお話してた時にね、アイドルは人を笑顔にする仕事で、穂乃果の周りには笑顔が溢れてるって、それは才能なんだって言って貰えて、それで興味が湧いてきたんだ〜…」
「ことりは前ににこちゃんに服の生地選びに付き合って貰ったんだけど、その時にスクールアイドルをやってた事を聞いて、にこちゃんがステージに上がってる姿を想像したらイメージがどんどん膨らんで…。」
「いつか実際ににこちゃんの衣装のデザインをしたいなって。そうしたらいつの間にかハマっちゃった♪」
そうなのですね、穂乃果もことりもにことそんな事が…それなら三人一緒に同じ趣味を持った事にも納得がいきます。
「私は……にこが活動を再開する時に私の詞が少しでも足しになればと。はぁ…結局三人ともにこの事を慕っているって事じゃないですか」
「あはは……にこちゃんも罪な女だねぇ……」
「そんなにこちゃんはことりのおやつにしちゃいます♪」
「「ダメです(だよ)!」」
「やぁん…………ごめんなさいぃ……」
「「「………………。…ぷっ…」」」
「「「あははははっ!」」」
うふふ…にこ……ずるいのですね、貴方は。私達三人とも同時に貴方に影響を受ける程に貴方のことを想ってしまっています。
「二人とも、ちょっと相談なのですが……」
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「はぁ…今日はちょっと家を出るのが遅れちゃったわね。」
昨日少し考えすぎて寝不足になってしまったのか寝坊をしてしまって朝から大変だったわ…急いで妹達を起こして準備して…ってあら?前に歩いてるのって……
「あぁ、なんだ。やっぱりアンタ達じゃない、いつもこんな遅い時間に登校してるの?」
「ん?あ、にこちゃん!おはよ〜!」モッギュー
「穂乃果!いきなりなにをしてるんです!…こほん、おはようございます、にこ」
「おはよう、にこちゃん!」
登校中に穂乃果、海未、ことりの幼なじみトリオに会うなんて初めてかも。穂乃果はともかく時間に厳しそうな海未がこのギリギリの時間に登校なんてイメージ無かったけど… 「少し今日は用事がありまして、登校が遅れてしまったんです。いつもはもう少し早い時間に余裕を持って学校に着くようにしてますよ」
「穂乃果ちゃんが待ち合わせに遅れちゃう時もあるけど…」
「うぇ〜!?最近は無いよ!」
「たまにはあるってことね…というか穂乃果、アンタなんか身体熱くない?顔もなんか赤い気がするし…熱でもあるんじゃないの?」オデコピタッ
「へっ…!?わ!わ!だ、大丈夫だよにこちゃん!///」
「そう?…よくみたらアンタ達三人とも顔赤いような気が……例えるんなら運動した後みたいな……」
「き、気の所為じゃないでしょうか?」
「そ、そうよ〜、にこちゃんの気のせいだと思うな?」
何かおかしい。私になにかを隠してる気がする。別に友達だからといって全部隠すなとは言わないけど、少しだけ寂しい。とはいえこの三人が悪意を持って私に隠し事をする様にも思えないし… 「ふむ、これは何かにおうわね……」
「えぇ!穂乃果汗くさい?!ちゃんとお風呂入ってきたよ!?」クンクン
「ばっ…!穂乃果……!」
「いや…穂乃果は普通にいい匂いするけど……なるほどねぇ?」
「えへへ…いい匂い……///」
「ってあれ??」ハッ
と、言ったところで穂乃果が間違いに気づいたらしく固まってる。その傍らで海未は頭に手を置いてやれやれといった表情をしてるし、ことりも苦笑いしてる。
「つまり、運動してお風呂に入ってから来たからこの時間ってわけね」
「穂乃果………」
「穂乃果ちゃん……」
「………えへへ、バレちゃった」 「運動してたとしても別ににこに隠す事ないじゃない?」
「そ、それはその〜…やましい事がある訳ではなくて……ね?海未ちゃん?」
「そ、そうです!…じ、実は穂乃果の体重が増えてしまったので私達もダイエットに付き合って……」
「えぇ!?」
何故か当の本人である穂乃果が一番驚いてる。
「そうなの!穂乃果ちゃんパンの食べ過ぎで凄いことになっちゃって…………」
「えぇえ!?」
凄いことに…?!ていうか穂乃果が凄い顔でことりと私の顔を交互に見てるけど大丈夫なのこれ…? 「そうなんですよ。ね、そうですよね!穂乃果!」
「ぅう〜〜っ……!……………………そうです」ガックシ
さっきみたいになにやら言いたげに私と海未の顔を交互に見たと思ったら諦めたかのように肩を落とす穂乃果。…まぁ、あれよね…誰にだって知られたくない事ってあるわよね……
「穂乃果……これからパンは程々にしなさいね……」
「うぅ……にこちゃんにだけは体重増えたなんて思われたく無かったよ……」ボソッ
「あ、ごめん。そう言えば今日授業の前に部室に寄らなきゃ行けなかったから先いくわね。じゃ、穂乃果、頑張りなさいよ。にこも応援してるから」タッタッタ
「……ふぅ、危ない所でしたね」
「でも完璧にごまかせたよね!」
「完璧じゃないよ〜!なんで穂乃果が太ったなんて事になっちゃったの〜!」
「し、仕方がないじゃないですか!元はと言えば穂乃果が変な事を言うから…!」
「完全ににこちゃんに呆れられちゃったじゃぁん!!も〜海未ちゃんのバカ〜!」
…なんか後ろで言い合ってる声が聞こえた気がするけど、気のせいよね?
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____________ 書き溜めておいた分は以上です。
これからは考えてから投稿になるので少し遅くなるかもしれませんが出来るだけ早めに投稿しますね バイト中に割と書けたので投下します。少しシリアスになるのでつまらない思いをさせるかもしれませんがお付き合い頂けたら幸いです ______
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「ごめんなさいね、呼び出したりして」
「いえ…それで、どういうお話なんでしょうか?」
放課後、今日も生徒会室で仕事をしていた私は突然先生に呼び出される。何事かと思って話を聞いてみる。私の事では無さそうだけど、どうやら言いづらそうにしている所を見るといい話では無さそうね。
「えぇ…その、絢瀬さん最近矢澤さんと随分仲が良いみたいね?」
「はい、にこ……矢澤さんとは仲のいい友人としてお付き合いさせて頂いてますが、それが何か…?」
「少し言いづらいんだけど、矢澤さんが絢瀬さんと仲良くしているのが気に入らない子がいるみたいでね」
「はい?……それがどう私に関係するのでしょうか?」
いけない、少し棘のある言い方になってしまったわね。
でもにこと仲良くしてるのが気に食わないと言われてもにことの関係を絶つつもりなんて一切ないし、先生に言われてもだから何?としかならないのよね… 「ここから本題に入らせて貰うんだけど…さっきも言った通り矢澤さんが絢瀬さんや1年生の園田さんと仲良くしてるのが気に入らない子がいるみたいでね。」
「その子達がアイドル研究部は廃部にするべきだという声を上げていてね…前々から部を辞めた子達からもそういう意見を貰っていたの」
「今までは何とか抑えて来ていたんだけど、今回は人数も多くてどうしても私の力では抑えられなくて…」
「本当に申し訳ないんだけど、このままではアイドル研究部は潰れてしまう。それを生徒会長である貴女の口から矢澤さんに伝えて貰わなくてはいけない状況になってしまったの」
……状況は最悪ね。私や園田さん?って子と仲良くしているのが気に入らない?だからアイドル研究部を…にこの夢を、居場所を奪うって一体その子達はどういう神経をしているの?
頭に血が上っていくのを感じる。先生は悪くない、今まで廃部の話が出た時も何とかしてくれていたのだから。それが自分勝手な人達のせいでどうしようも無くなってしまった。 「少し、時間を下さい」
「その子達の言い分は、一人しかいない部活がある必要が無いっていう事なんですよね?何とかします、私が……」
「絢瀬さん……。貴女、まさか……」
「貴女は生徒会長として充分過ぎるほどやってくれているわ、それがこれまで以上に大変になるのよ?」
にこの居場所を守る為に…いや、本当は私自身もそう望んでいたのかもしれないわね。
希に頼めばきっと形だけでも入部してくれる、だけどそれだけだとにこをよく思っていない連中に対しての抑止力にはならない。だとしたら……
「私が、アイドル研究部に入部します」
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______ 「えぇ!えりちがアイドル研究部に入る?!」
「しー!静かにして希!まったく、誰が聞いてるか分からないんだからね…」
「ごめんごめん、でもホントにびっくりしたんよ?どうしてまた急に?」
「実は……」
翌日、真っ先に希に報告。かなり驚いてたみたいだけど私が経緯を説明すると、納得してくれた様だった。……というか、私よりも頬を真赤に膨らませ怒っていた。
「なんでにこっちがこんな目に遭わないといけないん?……自分勝手な人達…許せんよ…」
「そうね、私も同じ気持ちだわ。それで、希はどうする?」
「へ…?」
「一緒にアイドル研究部に入りましょう?」
「う、うちが?!ダメダメ、うちなんて向いてないよ…」
「どうして?運動神経だっていいし、きっと希ならやっていけるはずよ」
そう伝えると、希は暗い顔を覗かせる。
意外と希ってこういう所あるのよね……自分の事になると積極性が無くなるというか…多分だけど今までもずっと、希はもっとにこの力になりたかったんだと思う。
それでも一歩踏み出すことが出来なかったのは自信が足り無かった事と…それときっと私のせいよね。
それなら今私が希の背中を押すわ。 「希、聞いて。今まで私は廃校を何とか無くす事に精一杯で貴女の支えがなければ立っていられないくらい不安定だったと思う」
「それでもにこに出会って、あの子が笑顔を褒めてくれた時から私は今までのように意地を張るのはやめようって…そう思えたの」
「貴女がずっと長い間にこの事を気にしてたのは知ってる。私が頼りなかったせいで希がにこの力になってあげられなかったことも」
「そ、そんなこと……」
「でも、私はもう大丈夫。廃校問題だってきっと何とかしてみせる。都合のいい考えだって笑われちゃうかもしれないけど、貴女とにこがいれば何とかなるって思ってるの」
「前に希にはバレエの事を言ったことがあったわよね?やっぱり私は踊る事が好きみたい。にこの居場所を守ろうだなんて立派な理由じゃなく、私がやってみたいから。………希はどうしたい?」
「もし希に少しでもやりたい気持ちがあるんなら、やってみればいいじゃない。特に理由なんて必要ない。やりたいからやってみる。本当にやりたいことって、そんな感じに始まるんじゃない?」
「…っ!」
どう言葉にしていいのか戸惑っている様子の希。大丈夫、私はどれだけでも待つわ…貴女を支えるのは、今度は私の番だから。
「うちも……うちもやってみたい。誰かと何か新しい事がしたかった、うちの夢やったんよ」
「希…!」
「あはは、今想像してみたん。えりちと、にこっちと…それにもしかしたらまだ増えるのかもしれない仲間達と…一つの目標に向かって頑張る姿を」
「きっと、楽しい事ばかりじゃない。練習はうちもヒィヒィ言いながら着いていく事になるかも知れない。それでも想像の中のうちは、いつでも笑顔だったんよ」
「今まで一年うち一人じゃ言えなかった。でも、えりちと一緒なら言える。うちもにこっちの力になりたい!」
「ううん、うちもにこっちのような…見てて思わず笑顔になれるアイドルになりたい!」
「決まり、みたいね?」
「うん!」
「後は、にこしだいね」ボソッ
「?」
「ううん、こっちの話よ」
私も意地を張るのをやめて、希も勇気を出してくれた。
……あとは、貴女次第よ? ______
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「覚悟はいいですか?穂乃果、ことり」
「うん、これまで数日間、しっかり準備してきたんだもん」
「ことりも、あの時から覚悟は変わってないよ」
「では、行きましょうか。にこのいる部室へ」
大丈夫、私だって覚悟はしてきたでしょう。あの日から…
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『二人とも、ちょっと相談なのですが……』
『なぁに?海未ちゃん』
『穂乃果、ことり。私はアイドル研究部に入ろうと思っています』
『『えぇ〜?!』』
『それで、貴女達にも一緒に入って欲しいと思っています』
『私はにこに出会って、にこに笑顔にして貰った時から今まで興味の無かったアイドルというものに興味を持ちました。』
『正直人前に出るというのは恥ずかしいです。しかし、二人と一緒なら出来ると思うんです』
『海未ちゃん……。穂乃果も、にこちゃんに自信を貰ったあの時からずっとそう思ってたよ』
『ことりも、衣装を考える時についつい二人に着てもらうならこういう衣装かなって想像してみたり…実は自分の分も……』
『穂乃果…ことり……!!』
『やろう!海未ちゃん!』 ______
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「いざ行こうとなると、緊張するものですね。後は扉を開けるだけなのに…」
「うん…断られたらって思うと怖いよ……」
「もしにこちゃんの事を怒らせちゃったらどうしよう…」
にこの元に入部させて欲しいと伝えに来たはいいものの、あと一歩の所で怖気付いてしまいます。
にこの過去を考えると簡単には伝えられません。どうしても最悪の事ばかり頭に浮かんで来てしまいます。それでも、言い出した私が弱音ばかり吐いているわけにはいけません。
「大丈夫です。やれる事はやって来ました、そうでしょう?」
「うん、大丈夫。海未ちゃん、お願い」
「はい、では開けますよ……」
「あら?貴女達は……」
アイドル研究部の扉に手をかけると、誰かから声をかけられます。誰かと思い振り向くとそこには…… 「絵里先輩?」
あれは……生徒会長と、副会長?穂乃果は知っている様でしたが、知り合いだったのでしょうか。
それより、二人はここになんの用で…?
「あら、穂乃果さん。それに理事長の……」
「そっちは弓道部の園田さんやね?皆もにこっちに何か用事?」
「そう、貴女が園田さん……」
「ご存知でしたか、私は園田海未と申します」
「南ことりです。生徒会長と副会長…ですよね?」
「えぇ、絢瀬絵里よ、よろしくね」
「うちは東條希。初めましてやね」
「副会長さんは初めまして、高坂穂乃果です!絵里先輩はお久しぶりです」
「久しぶりね、貴女達はにこにどんな用事で?」
「あ、実は私達は……」
ひとしきり自己紹介が済んだところでここに来た理由を生徒会長に伝えようとすると、
ガチャ
「部室の前で何やってるの……って何この大人数?!」
扉を開けて、今日私達がここに来た理由でもあるにこが登場しました。 ______
____________
「びっくりしたわ、何か騒がしいと思って扉開けたら勢揃いでいるんだから」
「うちらだってびっくりしたよ、も〜急に開けないでよねにこっち」
「そうだよ〜、穂乃果びっくりして心臓飛び出ちゃうかと思ったんだよ?」
「にこが悪いの!?」
「あはは……にこが悪いとは思ってないけれど、びっくりしたのは確かね?」
「海未ちゃんなんて扉に手をかけてたから腰抜かしちゃうんじゃないかってくらい驚いてたもんね?」
「そこまで驚いてません!大体一番に声を上げたのはことりじゃないですか!」
ここまで私の友達が揃うなんて事初めてじゃないかしら。絵里達と海未達が初対面っぽい所をみると、別の要件なんじゃないかと思うけどこんなタイミングで一体なんの用事なのかしら?
「それで?あんた達なんの用?わざわざ部室まで来るなんてよっぽどの事なんじゃないの?」
にこがそう言うと、今まで和やかに談笑してた皆の口元が急に強ばる。
「えっと……絵里先輩たちの用事からで!穂乃果たちはその後でいいから…」 「……そうね。にこ、これから言う話は少し貴女にとって嫌な話かも知れないわ。穂乃果さん達も同席で大丈夫かしら?」
嫌な話……。そう言われて思い浮かぶ事が無いわけではない。正直一人で聞くのは怖いし海未や穂乃果、ことりにも一緒にいて欲しいと思った。
「いいわ、貴女達はそれでいい?…一緒に聞いていてくれる?」
「はい、にこがいいと言うのでしたら一緒に聞かせて頂きます。二人もそれでいいですか?」
「「うん、もちろんだよ」」
「決まりやね、それじゃあえりちよろしくね」
「それじゃあ早速本題に入らせて貰うわね?……にこ、単刀直入に言うわ。そう遠くない未来、アイドル研究部は…廃部になる」
「「「「っ……!!?」」」」
覚悟はしていた。だけど、それが現実になると知って…それも、大事な友達である絵里から伝えられた事もあって私は自分が立っている感覚すら無くなってしまった。
怖い…怖い。私の唯一の居場所でいて、私の夢の最後の砦、それがここだったの。
「ちょっと待ってください絵里先輩!私達は…」
「海未!!」
「っ!」ビクッ
「絵里、続けて」
海未達にいてもらってよかった、後輩にかっこ悪い所を見せる訳にはいかない。そんな思いがなければ私は今確実に立っていられなかった。 「……きっと、今まで通りなら貴女はこのアイドル研究部で卒業まで過ごす事が出来たの」
「……どういう事?」
「実際貴女に対する嫌がらせは最近増えているはず、なにか思い当たる事はないかしら?」
「…!?ま、まさか…!?」ガタッ
「海未ちゃん?!どうしたの急に…?!」
「園田さん、貴女は気づいたみたいね。そう、このアイドル研究部を廃部にしようとしている大きな原因は…私と、貴女よ」
「そ、そんな……私が、私がにこの大切な居場所を…………」
そうなのね、そういうこと………
つまり、前の海未への嫌がらせの手紙を送ってきたやつらが…… 「落ちこぼれの私が人気者の海未や絵里と仲良くしてる事が気に食わないやつらが、ここを潰そうとしてるって……そういう事なのね?」
「そうよ。……ごめんなさい、にこ。貴女にそんな顔をさせたかった訳じゃないの」
「ご、ごめんなさい……ごめんなさいにこ!私が…私さえいなければ…」
「やめて!海未、私は貴女に助けられた事を後悔した事なんて無いし、これからもする事はないわ」
海未に偶然助けられてから、私は本当に楽しかったの。今までとは比べ物にならないくらいに。意地を張るのをやめて、大切な友達と呼べる人が増えていって……今までの人生でこんなに楽しかった時間はないわ。
「そんな顔しないで海未。この場所が無くなったって私には貴女達がいる。それだけで十分よ」
「…嘘ですよ、にこ。貴女の言う通りならば何故……」
「何故、そんな泣きそうな顔をしているのですか……?」
「……っ!?」
そんな……笑顔を作るのは得意なはずでしょ?
大丈夫だって笑いなさい……笑え、にこ。
「…き…め…くない」
ダメ、これ以上を求めるなんて欲張りが過ぎる。
ダメ、後輩の前で情けない姿なんて見せられない。
ダメよにこ、笑わなきゃ……
「夢を…諦めたくないの……!」ポロポロ ______
____________
『夢を…諦めたくないの……!』
ここが私のせいで潰されてしまうという事に動揺してしまいましたが、にこの表情に、涙に、言葉に。私は覚悟を新たに決めました。
絶対に潰させません、例え私が入部した事によってさらに嫌がらせが増えたとしても、絶対に私がにこを護ります。
「……生徒会長。いや、絵里先輩。話の途中になってしまいますが、私達のここに来た理由を聞いて下さい」
「私はあの日にこと知り合い、笑顔が増えたと思っています。それは穂乃果やことりも一緒で、私達三人毎日が以前よりも楽しかったんです。そしてアイドルというものをにこを通して知りました。」
「そして憧れたんです、にこの姿に。穂乃果やことりも同じ気持ちでした。だから私は…私達は」
ふ、と視線を二人に移します。まるで心の中まで通じあっているようで、妙な高揚感さえ感じます。
「「「アイドル研究部に入部します!!!」」」 「いいの?部長は貴女よ、にこ」
「…………。」
にこは何も答えません。俯いたその表情さえ確認出来ず不安が募ります。
「私から言ってあげる。園田さん、もし貴女が入部したとしたら逆効果になるかもしれないわ。貴女はいいかもしれないけど、穂乃果さんや南さんにまで嫌がらせは及ぶかもしれない」
「覚悟は出来ています。私がさせません。それにもしそういう事があったとしても穂乃果やことりは弱くありません」
「そんなのには絶対負けません!」
「海未ちゃんに守ってもらうんじゃなくて、私達も海未ちゃんを守ります!」
「「「もちろんにこ(ちゃん)も」」」
「あ、あんた達…………」
「んふふ、負けちゃったねえりち?」
「……へ?」
「はぁ……分かりました、私の負けよ。…全く、貴女達もいいタイミングで来るのね?」
「にこっちもつくづく後輩に…いや、仲間に恵まれたみたいやね?」 「ど、どういう事ですか?」
「本当だったら私達が先に言うつもりだったのに…損な役回りよね、希?」
「まったくやね、にこっちに憧れたのは三人だけじゃないんよ?」
「にこ、ごめんなさい。本当ならすぐに言おうとしてたんだけどこの子達の覚悟を試すような真似をしてしまって、貴女には辛い思いをさせてしまった」
「だけど改めて言わせて?私がいるからには貴女に嫌がらせなんて絶対させない。生徒会長として、仲間として。私達は…」
「「アイドル研究部に入部します」」 「言っておくけど、貴女についてこれなかった子達と同じ風に辞めるなんて思わないでね?……貴女に拒否権はありません」
「にこっちがダメって言っても入るつもりやからね」
「皆……!」ポロポロ
「ごめんなさい、今まで誘いたくてもまた失ってしまうのが怖くて誘えなかった。きっと入りたいって言ってくれても突っぱねてたかもしれない」
「それでも言わせて。海未、穂乃果、ことり、絵里、希。貴女達に出会えてよかった。アイドル研究部部長として、皆の入部を歓迎するわ……!」
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「はぁ…緊張するね」
「も〜、そんな事言ってたってしかたないにゃ!入部するって言ったのはかよちんだよ〜?」
「でも〜……ってあれ?」
「何だ、先約がいたのね。貴女達は確か同じクラスの…小泉さんと、星空さん?」
「あ、西木野さん?もしかして、西木野さんもこの部活に?」
「まぁちょっと、およそ先輩とは思えない人との約束があってね」
「なんか凛達と一緒の匂いがするにゃ…」
「あはは……それじゃあ一緒に……」
コンコンッ
ガチャッ
「いらっしゃい、待ってたわよ。……ようこそ、アイドル研究部へ!」 これで一旦終わりです。
設定上一年生組があんまり活躍出来なかったので一年生の活躍を期待してくれていた人がいたらすみません。にこちゃんが何かのきっかけで素直になれていたらというもしものお話でした。 ラブライブ!のss好きなのでこれからも書いていきたいと思ってます。
今後の為にアドバイスや感想等頂けたら嬉しいです。 最後ちょっと駆け足だったけど面白かったよ
乙でした ちなみになんですけど、次書くとしたらどんなカプのssが見たいとかありますか? ことえりとかえりりんみたいな学年違いのカプを見てみたい こういうifストーリー大好き
友達に囲まれて優しくなっていくにこちゃんいい……
一旦終わりということは続きを期待しても? >>135
もし需要があるのであれば少し時間はかかるかもしれませんがこの設定引き継ぎで日常話を書こうと思います >>138
この雰囲気めっちゃ好きです…ご自身で描かれたんですか?? ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています