真姫「私の知らない世界」
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凛「真姫ちゃんは何を飲む?」
真姫「じゃあ、エスプレッソを」
絵里「私も同じのにしようかな」
花陽の家を出て穂乃果の家に行くつもりだったのらしいけど道中で凛から連絡があったので先に会う事になった。
凛「それで?急に連絡貰ってビックリしたけど今日はどうしたの?」
絵里「うん。たまたま、真姫と休みが合ってね。たまには昔の仲間の元を訪ねてみようかなって」
凛「ああ…μ'sの?」
絵里「うん」
凛は少し苦い顔をしていた。 凛「μ'sか…。私はまだ整理が出来てないんだよね。もう何年も前の事なのにね」
真姫「整理?」
凛「逃げる様に陸上をまた始めてさ。オリンピックを目指すなんか息巻いてそれも結局ダメで。忙しいなんて言い訳してロクに集まりにも顔を出さないで。合わす顔をがないって言うか。今日だって本当は…」
絵里「凛…私はそんな話をする為に会いに来たんじゃないわ」
凛「ごめん、そうだよね。いつまでも引きずってたって仕方ないしね。本当は前に進まなきゃいけないってのは分かっているんだ」
凛が何の話をしてるのか私には分からなかったけど過去に何かあってそれを私も知っているていで話は進んでいる。
きっと知っている筈なんだろうけど今日の私は何だかんだおかしくて、聞く事全てが初耳に感じる。 凛「あの…皆んな…元気なの?」
真姫「誰とも…会ってないの?」
凛「かよちんとは会ったりしてるよ。でも、他の皆んなは…真姫ちゃんも会うのは久しぶりだもんね。でも、テレビでは見かけてたから久し振りって感じは余りしないけどね」
私も久し振りには感じなかったけど。
絵里「皆んなそれなりに元気よ」
凛「あの…穂乃果ちゃんとは会ったりしてるの?」
絵里「うん。相変わらず元気が有り余って仕方ないみたい。凛にも会いたいってよく言ってるわ」
それを聞いて凛は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
凛「そっか、良かった。…穂乃果ちゃんが元気で良かったよ。ずっと…ずっと…」 一瞬間があいて凛は続けた
凛「たまに…夢を見るんだ」
絵里「夢?」
凛「うん、高校の時の夢。μ'sの夢。ラブライブで優勝を目指していた時の夢を。あの屋上で皆んなで練習をしてる。海未ちゃんと絵里ちゃんが指揮を取ってさ。穂乃果ちゃんも踊ってて」
絵里「うん」
凛「それで目が覚めて夢だって自覚するんだ」
そう。目が覚めたら自覚するものなのに。
凛「きっと、本当は昔の様にまた…」
絵里「ねえ?この後、穂乃果にも会いに行くの」
凛「穂乃果ちゃんに?」 絵里「凛が来てくれれば穂乃果もきっと喜ぶわ。ねえ?」
凛「そうかな?」
絵里「もちろんよ」
凛「でも、ごめん。今日は…」
絵里「そう…」
凛「必ず会いに行くよ。今日は無理でも必ず」
絵里「うん」
凛「今日は会えて良かったよ、真姫ちゃん」
真姫「私?私は何もしてない」
凛「ううん。そんな事ないよ。真姫ちゃんが会いに来てくれたのが嬉しかった。またここからやり直せる気がする。だから…あの…真姫ちゃんも…」
私も? 私と絵里は引き続き喫茶店でエスプレッソを飲んでいた。
真姫「もう来るの?」
絵里「ええ。今保育園を出たって言うから」
真姫「そう」
保育園をか。花陽と言いいつの間に。
なんて言っていたらお店の入り口の方から見覚えのある髪型が目に入った。
ことり「お待たせ」
随分大人びた見た目に落ち着いた声。まるでことりのお母さんである音ノ木坂学院の理事長を見ているよう。 ことり「ごめんね。随分待ったよね」
絵里「大丈夫よ。ツバメちゃんは?」
ことり「お母さんに預けて来たの」
ツバメちゃん?って思ったけどことりの子供だろう。私はことりが出産した際に駆けつけている。記憶の中にはある。けど、何故か初めて聞いた様な気がしてしまう。と言うよりも聞くまで全く思い出せなかった。
ことり「元気だった?」
真姫「うん。ことりは?」
ことり「私の方はだいぶ落ち着いたよ」
落ち着いた? 真姫「落ち着いたって?仕事?」
ことり「うん、仕事もね。派遣だけど理解もしてくれるし。とは言っても両親にも甘えっぱなしなんだけどね。夜も働きながらだけどなんとかやっていけてるよ」
真姫「あの…デザイナーの仕事は?」
ことり「うん。働きながら少しずつ勉強していこうかなと思ってたけどね。世の中そんなに甘くないよね。今はあの子の為に生きていくって決めたから」
真姫「そう…なんだ」
ことり「二人は?真姫ちゃんはテレビでよく見かけるけど。その…」
真姫「え?」
ことり「ううん」 ことりは何かを聞きたかったらしいけど何故か躊躇してやめた。
絵里「私は相変わらずよ。仕事して帰って来て一人で食事して…みたいな?」
すかさず、そして自然に絵里が話をし始めてしばらくその話が続いた。
ことり「凛ちゃんにも会って来たんだ」
絵里「うん。ことりに会う前にね」
ことり「元気だった?」
絵里「元気だった。今度、穂乃果にも会いに行くって言ってたわ」
ことり「そっか。良かった…良かったよ」
絵里「ずっと気にしてたものね。凛の事」
ことり「当時は私も子供だったし、どうすれば良いかも分からなかったから。何も出来なかったし。見当違いに恨んだ事もあったし悩んだりもしたけど」
ことりは胸につかえていた物を吐き出す様に喋り続けた。
ことり「ごめんね。久し振りに会ったのにこんな話ばかりで」
絵里「ううん。ことりがずっと悩んでいた事も知っていたから」 絵里の言葉にことりは静かに頷いた。そして、私の目を見て口を開いた。
ことり「時間が解決してくれる事ってあるし私の場合それも大きかったのかなって思う所もあるんだ。でもね、真姫ちゃん。それに頼ってばっかりじゃ…ダメなんだろうね。きっと、気が付いたらおばあちゃんになってるかも」
真姫「うん…」
ことり「元々は二人共μ'sの…私達の為に立ち上がってくれたんだもん。そんな二人なんだもん…絶対に…」
ことりの言葉に私は困惑を隠せず、絵里が私を訝しげに見て来た。 穂乃果の家に向かう途中の道で街のショーウィンドウに映る女が目に入った。一瞬、ママの様に見えたけどそれは確かに私だった。
真姫「ねえ…絵里?私達って…どうして定期的に集まったりしなかったの?」
絵里「どうしてって…」
過去に私達の間になにかあったのは確かでそれは今現在にも影を落としている。皆んなの元を訪ねている時に絵里だけが明るく振る舞う姿が時々痛々しく見える事さえあった。
絵里はずっと必死でμ'sの絆を繋ぎとめようと必死だったのだと感じた。
真姫「ねえ…私達の間に何があったの?」
絵里「何がって…」
真姫「教えて」
絵里「直にわかるわ」
真姫「そう」
私はまたショーウィンドウの中の私を見つめる。
真姫「え?」
一瞬、いつもの私と何かが映った様な気がした。 穂乃果の家に着いた。
真姫「穂むら…そりゃあそうよね」
絵里「真姫は久しぶり?それとも…」
久しぶりなのだろうか?こないだ来た様に思えるのはまだ今朝の夢のせいか。何故、絵里はそんな事を聞くのだろう。
なんて思っていると道の向こう側から声を掛けられた。
「あれ?絵里さん?」
絵里「あら!」
どこかで見た事のある女性と…
「絵里ちゃん、それに…真姫ちゃん!!!会いに来てくれたんだ!」
私は言葉が出てこなかった。 髪が伸びて長くなっていた。少女の様なあどけなさは影を潜め大人っぽくなった。落ち着きのない喋り方は変わらないけど声が低くなった様な気がする。
穂乃果「会いたかったよ、真姫ちゃん。いつもテレビの前で応援しているよ」
真姫「穂乃果…」
穂乃果「ん?どうしたの?」
何がどうなってるの?怪我をしている様子もないのに。
穂乃果「雪穂、後はもう大丈夫。自分で出来るから」
雪穂「そう。じゃあ、絵里さん、真姫さん。ごゆっくり」
そんな…どうして…どうして、穂乃果が車椅子姿に…。 私達は家の中に通された。一部バリアフリー仕様になっているのは穂乃果の為だろう。
穂乃果「いや〜、ちょうど夕方のお散歩の時間だったんだよ。店番ばっかりしてると息が詰まっちゃうしさ。外に出ればステキな出会いがあるかもしれないし」
真姫「そうなの…」
穂乃果「どう?真姫ちゃんは彼氏出来た?」
真姫「へ?いや…」
穂乃果「あはは、アイドルは恋愛禁止だもんね」
私は返す言葉が出てこない。彼氏がいるかどうかも正直分からない。
絵里「さっきね、凛の所に行って来たわ」
穂乃果「凛ちゃんの?本当に!!」 穂乃果の目が見開いた。
絵里「今度、穂乃果に会いに来るって言ってたわ」
穂乃果「本当!!ずっと会えてなかったから…ふふっ、嬉しい。もしかして、私の事でずっと気にしてるのかなって。こうなったのは私がドジなのがいけないのに」
真姫「待って」
穂乃果「ん?」
真姫「ごめん。私、何がなんだか…」
穂乃果「私の足がこうなった事で、凛ちゃんが自分の事を責めてるんじゃないかって」
真姫「凛が?」 思わず聞き返した私に絵里が口を開く。
絵里「第2回ラブライブの最終予選でパフォーマンス中に凛が足を滑らせて、それに気を取られた穂乃果まで足を滑らせて舞台から転落して…」
穂乃果「あの日は雪が降ってたし、凛ちゃんのせいじゃないのに」
そんな事があったなんて。
真姫「それから、凛に会ってないの?」
穂乃果「ううん。お見舞いにだって来てくれたし学校でも会ってたよ。でも、ずっと元気はないし」 穂乃果「だからね…凛ちゃんがそうやって言ってくれるって、本当にさ…」
真姫「穂乃果は…その後どうしてたの?」
穂乃果「どうしてたって?怪我をしてから?」
真姫「うん」
穂乃果「真姫ちゃんの知ってる通りだよ。皆んなのお陰で学校にも復学出来てさ」
真姫「μ'sは?」
穂乃果「この足じゃスクールアイドルは無理だし。そもそもラブライブ自体無くなっちゃったからね。それでも…私抜きでもμ'sは続けて欲しかったけど」
気が付いたら私は泣いていた。
穂乃果「ま、真姫ちゃん?ど、どうしたの?」
ショックだった。
真姫「だって…あんまりじゃない。学校が大好きで歌う事が大好きで踊るのが大好きで…スクールアイドルが…μ'sが大好きなのに。なのに…なのに…あんまりじゃない。こんなのないよ」
穂乃果「泣かないで。もう昔の事だよ」
真姫「昔じゃない。昨日まで…昨日まで確かに…」
穂乃果「え?」
絵里「もう…行きましょうか。ごめん、穂乃果。また来るわ。今日はもう帰るわね」
穂乃果「うん…ありがとう」 絵里「さあ、立って」
自分が座り込んで泣いている事にも気づかなかった私は絵里に支えられながら立ち上がった。
絵里「それじゃあ」
穂乃果「真姫ちゃん」
穂乃果が私の背中に話しかける。
穂乃果「私は嬉しかったよ。真姫ちゃんとにこちゃんがμ'sの為にって立ち上がってくれた時」
私とにこちゃんが?
穂乃果「私は歩けなくなったけど…けどね真姫ちゃん、私歌えるよ」
真姫「穂乃果…」
私と絵里は穂むらを後にした。 外はすっかり暗くなっていた。日中の暖かさが嘘の様に肌寒く今が冬に差し掛かる途中なのだと理解した。
絵里「ショックだった?」
歩くのをやめ絵里が口を開いた。
絵里「穂乃果の事。ショックだった?」
真姫「うん」
絵里「そうよね。私も"当時"はショックだったわ。さっきのあなたと同じよ」
絵里が何を言いたいのか私は直ぐに理解が出来た。私の一連の行動が今現在その場に相応しくない物だったと絵里は言いたいのだと思う。
絵里「真姫。私も思う所があるんだけど。まだ、確信ではないの。だから…もしかしたら辛い思いをするかも知れないけど」
絵里は再び歩き始めた。 絵里「はい、コーヒー。真姫はブラックで良かったわよね?」
真姫「ありがと」
絵里「いいえ。もしかしたら結構待つ事になるかもしれないから」
真姫「ここは…?誰を待ってるの?」
絵里は何も答えなかった。私達は少し古めのビルの前に居る。どうやら、誰かを待っているらしい。なんて、分からない様な言い方をしたけど本当は何となく検討は付いていた。
絵里「冷えるわね。すっかり日が暮れるのも早くなったし。早いものね、一年が過ぎるのも」
沈黙を埋める様に絵里がたわいも無い話を始める。
私は適当に絵里の言葉に相槌を打ち続ける。
絵里「それで…あっ!?」
絵里が何かに気が付いた。
「急に連絡なんかしてきて」
やっぱり、私の予想は当たっていた。
「何か様な訳?」
待っている相手はにこちゃんだった。 絵里「悪いわね、にこ。忙しいのに」
にこ「本当よ。しかも…」
にこちゃんは私を一瞥して、その後の言葉の続きは何も言わなかった。
にこ「それで?何なのよ?」
絵里「真姫」
真姫「え?」
私? 何を言えば…。
にこ「はっ…何よ?騙した訳?」
絵里「騙したなんて。積もる話もあるでしょ?」
にこ「そんなの何もないわよ。嫌でも毎週の様に会うんだし。お陰で今日は天国だったわ」 絵里の口振りから良い予感はしてなかった。
にこ「何もないなら帰るから。明日も早いのよ。そいつだって話したい事もないみたいだし」
そいつ?そいつって私の事?
にこ「何よ?何か言いたい事でもある訳?」
にこちゃんは素直じゃないし口が悪い部分もあった。けど、友達の事をそいつなんて呼ぶ事は一度もなかった。
にこ「はあ…。人を呼び出しておいて。もういい、帰る」
絵里「にこ!待って!」
にこ「何なのよ?」
にこちゃんは心底ウンザリした様に言う。 真姫「あの…にこちゃん」
私が名前を呼んだ時、にこちゃんの表情が変わった。
にこ「今さら…今さらそんな呼び方しないで」
真姫「え?」
にこ「虫酸が走るから」
絵里「真姫!」
私はその場から走り出していた。 どれだけ走っただろう
真姫「はあ…はあ…うぐっ…ううっ…」
気持ち悪い。色々な感情と共に胃から何かが込み上げて来そう。汗や涙や鼻水やらで顔もぐちゃぐちゃになってる。
絵里「真姫!待って!」
真姫「うっ…ううっ…」
絵里が私に近づき背中をさすってくれた。
絵里「ごめんね。立て続きに辛い思いをさせてしまって」
真姫「はあ…はあ…はあ…」
絵里「今、水を買って来るから。ここで待ってて」 絵里が近くの自販機で水を買って来てくれた。
絵里「落ち着いた?」
真姫「うん」
絵里「キッカケと呼べるものは無かったのかもしれない。同じ夢を追う仲間から仕事の相棒になって。仕事に対する姿勢や考え方にズレが生じて気が付いた時には険悪な仲になってたって」
真姫「私とにこちゃんの話?」
絵里「うん。にこがね前に言ってたの。子供の頃、友達と一緒に仕事してずっと一緒に居れたらきっと毎日楽しんだろうなって思ったって」
真姫「にこちゃんが?」
絵里「私はにことも会っていたから。もし、別の他の道があったなら自分と真姫は友達のままでいられたのかなって」 絵里の話を聞いている最中、また何かが込み上げて来そうだった。
絵里「皮肉よね。あなた達が二人でアイドルになったのはμ'sを思っての事だったのに」
真姫「μ'sの?」
絵里「穂乃果があんな事になってμ'sも解散して。海未も花陽もことりもずっと悩んでたし凛も離れていって。それでも、二人はμ'sをなかった事にしたくないって。
皆んなの為にも穂乃果の為にも嫌な思い出にしたくないって。スクールアイドルを続けて卒業してもプロのアイドルとして歌い続けて。なのにね…」 なのに?なのになんなの?
絵里「友達思いの二人がどうしてこんな事になるんだろうって。本当に皮肉だわ」
真姫「嘘よ。嘘に決まってわよ。私とにこちゃんが険悪になるなんて。あり得ない、あり得ない。そんなのあり得ないわよ」
絵里「事実なの」
真姫「だいたい…何もかもおかしいわ。私は昨日までいつも通り…」
絵里「事実なのよ、真姫。この世界ではこれが事実なの」
真姫「この…世界では?」
どう言う事よ?絵里は何が言いたいの?
絵里「私も実際の所は半信半疑なんだけど。でも、真姫の様子を見て有り得ない事ではないのかなって思ってる」
真姫「なんの話?」
絵里「多分…信じられないかもしれないけどね」
希「なんや?こんな所におったんや。待ち合わせ場所と随分違うやん」
真姫「え?希?」
なんの前触れもなく本当に唐突に希が現れた。少し関西弁が上手くなっている様な気がした。 希の登場で問題は一気に解決していく。納得も理解も出来ないけど。
希「要するに真姫ちゃんはこの世界の住人じゃないんやな」
真姫「この世界の住人?」
希「そう。妖怪の仕業やね」
真姫「妖怪?」
絵里「ね?にわかには信じ難いでしょう?」
信じ難いなんて物じゃない。妖怪って…。
希「妖怪なんてって思ったやろ?」
真姫「そりゃあ…」
希「ウチはな…実は大学院の研究所でオカルトの研究をしてるんよ」
実はって言う程意外でもないけど。 希「まっ、色々割愛するけど。そこの教授がすんごい変わり者で、ウチはそこで妖怪や幽霊の存在、あと正しい関西弁を教わったって訳や」
変に割愛するから結局全然分からない。
希「で、本題に入るけど。真姫ちゃんに憑いている妖怪はウチの見立てやと枕返しかな?」
真姫「枕返し?」
絵里「話を聞いただけで分かるのね」
希「散々聞かされてるからなぁ」
真姫「それは一体どう言う」
希「枕返しが現れたのは江戸時代だって言われてるんや。当時の日本では夢を見ている間は魂が肉体から抜け出ている状態だと言われていてね。その時に枕を返すと帰る肉体が見つからなくなってしまうって言われてたんよ」
えっと…どう言う事? 希「つまり、枕返しって言うのはその伝承から生まれた妖怪って事や」
真姫「生まれた?」
希「うん。妖怪や神様って言うのは信仰する人ありきの物やからね。思う人がいる限り存在するもの。ある種の言霊やね」
全然言っている事が分からない。
絵里「つまり、真姫は元の世界に戻るにはどうすればいいの?」
希「それは簡単。真姫ちゃんに憑いている枕返しを見つければええんよ」
真姫「見つける?そんな簡単に行くの?」 希「鏡ある?」
絵里「ええ。持ってるけど。何に使うの?」
希「鏡って言うのは時に目には見えない物も写すからね。真姫ちゃんの困った姿を見て楽しむのが目的やろうからね」
そう言って希は私の体を鏡越しに見回した。
希「ほら!見つけた!」
鏡の中の私の肩に鬼の様なモノが乗っかっていた。
真姫「い、いやぁ」
絵里「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」
怖くて悲鳴を上げそうになったけど絵里が余りにも大きな悲鳴をあげるものだから私の悲鳴は引っ込んでしまった。
希「姿が見えればこっちのもんや!」 枕返しは希が払ってくれた。そこにいる事さえ分かれば念仏を唱えて払う事が出来るとの事だった。
絵里「ねえ?仮に妖怪を払う事が出来たとして…真姫はそのままじゃない」
希「そりゃあね、元凶を払っただけやから」
確かにその通りだ。
絵里「じゃあ、真姫はどうやって元の世界に戻ればいいの?」
希「そんなの簡単やん。枕返しと同じ事をすればええんよ。つまり真姫ちゃんが寝ている時に枕を返えすって事やね」
絵里「そ、そんな事で…可能なの?」
希「言ったやろ?妖怪は信じる事で生まれるって。それと同じや。ウチ等はもう枕返しを一度見てるんやから」 そう言う訳で私は今家のベッドに入って寝ようとしている。
真姫「見られてると…寝にくい」
希「そっか。じゃあ、寝る前に一つだけええかな?」
真姫「何?」
希「どうして枕返しに憑かれたと思う?」
真姫「さあ?」 希「枕返しが付け入る隙があったんやない?」
心当たりはあった。μ'sの皆んなといる時間がとても楽しくてずっと続けば良いと思ってた。それが、いつかバラバラになってしまう日が来るのではないかと言う不安も生んでいた。
希「それやな。そこに付け入って真姫ちゃんが困惑している様子を楽しんでたんやろ。悪趣味な妖怪やな」
真姫「そうね」
希「それじゃあ、もうそろそろ」
絵里「そうね」
真姫「ねえ…」
絵里「どうしたの?まだ何かある?」 真姫「凛や穂乃果…にこちゃんの事」
希「真姫ちゃん?さっき、真姫ちゃんはいつかみんなバラバラになってしまう日が来るかもしれないって。それが不安だったって言ってたやろ?」
真姫「うん」
希「でもな、未来がまだ決まってないって事は不安かもしれないけど。それは希望でもあるって事だとウチは思うんよ」
真姫「希望?」
希「そう。だから、まだやり直せるとウチは思ってるよ。だから、後の事はウチ等に任せて真姫ちゃんは真姫ちゃんの世界で悔いのない様に過ごすんや」
真姫「うん」
絵里「真姫、元気でね。あと…ラブライブ頑張ってね」
真姫「うん」
数分後私は深い眠りについた。 ちゅん ちゅん
ん…んん…朝?なんだか頭がぼーっとする。なんだか長い夢を見ている様だった。
洗面所へ行って顔を洗う。鏡の中にはいつもの私が居た。
真姫「行ってきます」
朝練があるので登校時間よりも随分と早く家を出て歩いている。 学校に到着し部室の扉を開けると穂乃果と凛が飛び出して来た。
穂乃果「おっと。真姫ちゃんおはよう!凛ちゃーん。早く〜置いていくよ?」
凛「穂乃果ちゃん待つにゃ〜」
それを呆れた様に海未達が見ていた。
海未「全く。たまに早起きをしたと思えば」
ことり「二人共元気が良いね」
絵里「良すぎて困るけどね」
グゥゥゥ
花陽「あっ…」
希「お腹空いたん?」
花陽「うん…」
絵里「朝ごはん。食べて来たんでしょ?」
いつも通りの日常だ。 なんだろう。安心する。
にこ「ちょっと。何ぼけっとしてんのよ」
真姫「何でもないわ」
にこ「あっそ。ならいいけど」
真姫「ねえ。にこちゃん」
にこ「何よ?」
真姫「私達…この先もずっと友達よね?」
にこ「……さあ?未来の事は分からないし」
にこ「けど、後にも先にもμ's以上の仲間を私は見つけられない様な気がするわ。だから、大丈夫じゃない?」
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