【安価SS】私の死神
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死神「…………!」
二日後、私は感心していた。
管理記録の線が、最初とほとんど正反対を向くようにして伸びていたからだ。
どうやらうんうんと考え込んでいたことはそれなりの実になったらしい。
これが進みたくて進んでいる方向なのかは知らないが、この動きを続けるのならば、予め決まっていた『大運命』とは違った結末を迎えることになるだろう。
ここまではっきり意思を持って行動しているのなら、もしや私に呼び掛けてくることがあるだろうか。
私は少し楽しみにしていた。 死神の力。
職務上使用することは許されているが、おいそれと使い放題で『運命』を好きにいじくっていいというわけではない。
身勝手に使えば私自身の存在を削ることにるが、管理対象(今回は黒澤ダイヤ)の求めに応じて、あるいは管理対象の意志・目的の助けとなることが明確な場合、力を使い手を貸すことをよしとされている。
もちろん私達も慈善事業でやってはいないし人間を超人に仕立てあげたいのでもない。
そうして力を使うたび、管理対象を最も強く想う者の生命力を頂くことになる。
自分の『運命』ばかりに気を取られて私達を頼りにし過ぎた挙げ句、全く想定していなかった形で『運命』の幕を下ろして絶望する者達だってたくさん見てきた。
さて、この黒澤ダイヤは── ダイヤ「わたくしに力を貸してください」
来た。
三日目の終わりに、とうとう。
どうしても恋人の元へ駆け付けたい状況にあったようで、相当に悩んだ末、苦虫を噛み潰したような面持ちで私へそう願った。
私は喜んで力を貸したし、そのおかげで刹那の希望は叶えられたようだったが──
ダイヤ「果南さん!」
彼女の友人が力の肩代わりを受けて倒れた。
使った力もそう強くはなかったし、初回だったこともあって、数分立てない程度のことで済んだが。
ここから黒澤ダイヤが超能力に取り憑かれ私へ願えば願うたび、友人は衰弱していき、やがて何度目かには器がもたずに死を迎える。
今からもう四日後に迫る『運命』の時と、さて、どちらが早いだろうか──なんて、胸を躍らせていたのだが。 なんと、黒澤ダイヤは気づいたのだ。
私に力を使わせたことと友人が倒れたことの因果に、たった一回で、自分の思考だけで。
それから彼女の態度は目に見えて変わった。
たまに私が傍にいるのだろうと踏んで漏らしていたような弱音を一切吐かなくなり、頭の中の考えを全く口にしなくなった。
私には黒澤ダイヤの心中を知る術がなくなり、ただ客観的な事実によって伸びていく管理記録の線だけを眺めていた。
そして── ダイヤ「別れましょう。わたくし達」
黒澤ダイヤと恋人は、別れを選んだ。
管理記録の線が鋭角に折れたときから綿密に敷かれてきた布石の影響か、恋人は暴れることもなく逆上することもなく、静かに頷いた。
私には、その時点で、はっきりとわかっていた。
『運命』が完全に変わったことが。
これまで殺人課で仕事をしてきて初めてのことだった。
こんな結末もあるのだと、ミスしてしまったことを自覚していながらも私はどこか感心すらしていたように思う。 黒澤ダイヤの元を去るとき、数日ぶりに彼女は私に話しかけた。
こちらを向いてはいなかったが、きっと私に話しかけたのだろう。
ダイヤ「この胸は苦しいけれど、彼女をひどく傷つけてしまったけれど、これでよかったのですよね」
ダイヤ「わたくしは誰かの強い想いの犠牲になることを恐れはしませんが、必ずその経験は当人を最期の瞬間まで苦しめるでしょう」
ダイヤ「そんな地獄を歩くことだけは、どうしてもさけてほしかったから。いつかの再会を笑顔で迎えられるよう、この痛みを大切に抱えていきますわ」
ダイヤ「ねえ」
ダイヤ「彼女──鞠莉さんはね、明日、イタリアへと発ってしまうのですよ」
その言葉を最後に聞いて、私は自分の職場へと戻ったのだった。 死神「次の案件は、明後日からでしたっけ。明日はなにをしましょうかね…」
死神「────」
死神「『大運命』は何度も変わるのを見てきたけれど、『運命』が変わることもあるんですね。『黒澤ダイヤが恋人に殺される大運命』と、それに伴う──
『黒澤ダイヤの周りで誰か一人が死ぬ運命』
ははは…『死の管理』で行ったのに、まさか誰一人死なないとは。こんなミスは初めてですね」
死神「どのくらい怒られるのか、想像もつきませんね…怖い怖い…」
そんな風に悠長に笑っていられたのも束の間で、私は、今──── 上司「これ、死神くんの分ね」
ドサッ
上司「向こう三ヶ月分くらいあるから。他のみんなと調整するなりして、適当に片付けてね」
死神「…はい」
ペラ…ペラ…
死神 (同じような案件ばかり…)
事故死課の仕事は退屈だった。
『死の管理』、それそのものに変わりはないのに、なぜだろう。
上司も同僚もどこかやる気がなくて、ただただ回ってくる案件を事務的に片付ける日々。
何件こなそうが評価される気配は一向になく、私は完全に出世レースと無縁の畑に居着いてしまった。 死神「お疲れ様でしたー」ススス…
明日からまた下界して退屈な『死の管理』。
まじめに取り組もうがさぼって観光していようが変わらない、こんなのはもう「仕事」と呼べるものですらないはずだ。
♪
死神「ん?同期さんから、呑みのお誘いかな?明日下界だから早めに切り上げるならいいけど──」
死神「………!」
死神 タタタッ 死神「はぁっ…はぁっ……」
『 神事通達
同期 殿
××××付で 殺人課 への異動を命ずる。
神事部』
死神 ハァ……ハァ……
『同期さん:聞いてくれ!』
『同期さん:殺人課に異動になったんだ!』
『同期さん:今日呑みにいかないか!?』
死神 ギリリ…
『すみません、明日下界で早くて。殺人課への異動、おめでとうございます!戻ってきたら行きましょう』 それからしばらくして──
同僚「死神さん、なんか面白い案件持ってません?」ギッ
死神「同僚くん。持ってませんよ、いつもと変わらないような案件ばかりです」
同僚「見てもいっスか?」
死神「どうぞ。欲しいのがあったらいくらでもあげますよ」バサッ
同僚「オレのも見ていっスよ、なんかあったら交換しましょう!」ペラペラ…
死神 (欲しい案件なんか。事故死課の仕事の中にあるわけないでしょう) ペラ…
死神 (これも、これも、これも。前にやったやつとなにが違うのかわからないくらい在り来たりで。はあもう、いっそのこと辞めてしまってもいいくらいだ──) ペラ………
死神「………っ!!」 『管理対象:黒澤ルビィ』
『直因:事故死』
死神「黒澤…ルビィ…!それにこの住所、家族構成にあるこの名前も……間違いない…!」
同僚「ん?あ、それはだめっスよ!オレ海の近く行くの初めてなんスから!それにもう出張申請出しちゃった案件ですし、あげまられせんよ」
死神「た──」
死神「頼む!これ譲ってくれ!」ガタッ
同僚「うわっ!?や、だから、これはあげないって…」
死神「頼むよ!これを譲ってくれるなら他のなんだってやる!どんなことも手伝う!だから──だから──っ!」
同僚「な…なんでそんなに…」タジ…
同僚「わ、わかりましたよ。上司さんに聞いてきますけど…出張申請やり直すの面倒くさいからイヤなんスよね〜」ハー <上司さん、いいですか?この案件なんですけど…
<同僚くん、出張申請終わってるやつでしょ
<や、なんか死神さんがどうしても譲れって…雰囲気やばくて…
<はあ…?
遠巻きに交わされるそんなやり取りは耳に入らず、私はただ震えていた。
彼女の──黒澤ダイヤの傍に行ける──!
私をこんな窓際へ追いやったあの少女の傍に。最も近いところに。
今度こそ──今度こそ──…っ! 同僚「死神さん、案件交代していいですって。すぐ出張申請出すようにって」
死神「ああ…ありがとうございます」
同僚「こんな無茶言って、上司さんすげー不審がってましたよ。これでミスでもしてきたら大変なことになりますよ、気をつけてくださいね」
死神「ああ………絶対にしくじりませんよ…」ニタァ
同僚 (うっ…なんだこの雰囲気……こわ…)
死神「ふふふ…どうするのがベストでしょうか。どうすれば、彼女を──黒澤ダイヤを──………!」
こうして、私は二年越しにあの少女の元へと戻ることになった。
最も濃厚に『運命』の範囲内にいるあなたを、今度こそ取り逃しはしない。
これは私の──復讐ですよ──
本編 >>1 に続く… ってな感じで、せっかくなので冗談めかしてSS風にしてみましたが、要点は
・ダイヤを恨んでいた
・死神の力を使うことでダイヤの命を削り切りたかった
の二点でした。 ひとまず能動的なネタバレや解説として考えたものはこれくらいですが、なにか質問などありますか? なるほど、1だと仕事を完遂、2だとクビ、3もクビ、4だとクビにはなるけど復讐は出来たのか
まあ部署的に無さそうだけど、積極的に運命に介入してる時点で1パターンでもクビになりそうだが 死神が力を使うことに関しては何かルールとかありますか?
このスレの場合だと、善子に死神のことを話そうとすると決まって口封じを仕掛けてきたけど、それ以外だと何故干渉しなかったのか(極論、強制介入を続ければそれでダイヤは◯せたはず)
と言うか、死神のルールは本人の希望した場合のみなのに、無理やり使わせてる時点で理不尽も良いとかじゃねーかw ただダイヤが嘘に気付いてぶっ倒れたとき、ルビィはなにで力を使ってたんだろ? あとはED2の場合、死神がなりふり構わずルビィを狙ったけど、何故ダイヤの方にしなかったのか?
復讐<職、だったのかな?(笑) あとは、最後の分岐(シャワーor仮眠)からだと、どう言った流れにいくと各endに行きますか?
お泊り会が予定されてることを考えると、死神の力を使わなかった場合は1濃厚?
あとはダイヤが倒れないで死神が嘘をついたことに気づく手段はありますか?
また、仮に死神の嘘に気づかずに、2ルートに行くことは可能ですか? >>707
>死神の力。
>職務上使用することは許されているが、おいそれと使い放題で『運命』を好きにいじくっていいというわけではない。
>身勝手に使えば私自身の存在を削ることにるが、
>>690より、無理やりでもいいので『ルビィのため』という大義名分がなければ死神自身の存在が削られるためです >>709
>>349のことをおっしゃっているのだとすれば、>>324の安価で能動的な選択をしなかったために死神に関与する余地を与え、結果>>326で使われた力の肩代わりを受けて倒れました。
わかりづらいですが、ほぼ同じタイミングの出来事です >>712 逆に言えば拡大解釈が可能な限りは好き勝手に力を使えるのか...
あー、だからend4の条件の一つが、死神が介入する余地を作る、なんだ
ってことはスーパー死神タイムを使いたいと宣言してのこのこ来た所にあなたの力は借りない、と言えればend4は基本回避出来たのか 死神が嘘をついていることをどうやったら花丸に認めさせられる?
ゲーム中の感じだと全く聞く耳なさそうなんだけど >>710
「冷静じゃなかった」とだけ。
正直に言えば、私もここでダイヤを狙わないのは変だろうと思っていたのですが、ちょっとあんまりな展開になっちゃうのでやめました
なりふり構っていられなくて元々の職務を全うすることにしか頭がいかなかった、的な感じで納得しておいてほしいです… ちなみにスーパー死神タイムはダイヤの生命力のどれくらいつかうはずでした?
たちくらみがする程度か、熱が出て早退レベルか、意識不明にまで一発で向かわせるのか
...っていうかダイヤちゃん、その死神の力のコストのことは事前に話して欲しかったよ >>711
あそこの分岐は、
シャワー…帰宅したお父さんと病院に行く
仮眠…お父さんが帰宅するもルビィが寝てるので一人で病院に行っちゃう
という流れになる予定でした
仮眠だとそのままお泊まりにいってED1方向に大きく寄っていたはずですが、かと言ってそこで死んでいたかは怪しいです
というのも、パラメータがあまりにED3方向に近かったので…
何度か安価を出して、段階的にED1へ近づく or お泊まりは乗り切る、という展開になっていたと思います
シャワー→病院、だとダイヤと話ができてアイテムを手に入れる予定でした
そこから先の展開はまだあまり考えていませんでした
>あとはダイヤが倒れないで死神が嘘をついたことに気づく手段はありますか?
これは全体的な舵取りの話になりますが、そもそもED2方向に大きく寄っている状態であれば、死神の力(スーパー死神タイム含む)の影響はそこまで大きく出ません
今回はED2方向に行く機会が少なく、実質的なダイヤの体力がかつかつだったのが大きな敗因だと思います
>仮に死神の嘘に気づかずに、2ルートに行くことは可能ですか?
書いてみないとなんともですが、可不可というよりはED2に近づく過程で当然に判明する(ダイヤの口から)んじゃないかと思います
そもそも、実はダイヤが死神の嘘に気づいたのは時報的なイベントのつもりでした。たまたまぶっ倒れるタイミングと被ったのは運が悪かったとしか言えません… >>715
すごく無責任なことを言いますが、考えてませんでした
基本大筋しか考えてなくて細部は書きながら考えていたので、そのシーンになってみないとどんな会話で認めさせるのかわかりません
ただあまりハードルを高くするつもりはなく、わかりやすい安価か、二回話せばオッケーくらいの感じでいくつもりでした >>717
使っても方眼四マス分の予定でした
ED4方向に近ければ近いほど、また死神の力の発動回数が多ければ多いほど、負担の描写は大きくなりますが、必ず意識不明にまで陥るかというとそんな予定ではありませんでした ん?じゃあ果南との会話イベントは何が目的だったんですか?
ただの情報整理、運良く正解に近づけば果南の説得が出来たってところですか?
ちなみに...2年生がMORE! DEBAN!なのは仕様ですか?(笑) >>721
ルート変動イベントではないと伝えたような気はしますが(伝えましたっけ?)、本当にただの情報収集イベントでした
場合によってはあそこで前回の死神について(というよりは前回の死神時のダイヤの様子について)描写するつもりでした
「正解は果南だった」と言いましたが、最も適当に情報収集できる相手が果南だったということで、他の人でもなにがしかの展開があったかもしれません(ふわふわしててすみません)
二年生については仕様です
単純にあまりキャラクターを出し過ぎても上手くコントロールできる自信がなかっただけです
進行によっては出る場合もあったと思います 了解しました、>>1乙です
死神が完全に敵だったなぁ
いやまぁ、味方とは思ってなかったが
いつかはリベンジがしたいですね 長いことお付き合いいただきありがとうございました
ガバい部分も多かったと思いますが、書いてる方としては楽しかったです
いつかまた似たようなものをやるときにはぜひお付き合いください 偽名を使った校内放送の呼び出しは本当に死神がやったことなの?
もしそうなら、ルビィが望んでない介入に見えるけど、これは「死神の力の行使」に該当しない? >>727
あれはメタ的なジャミングのつもりで置いたのですが、
なんというか…
やったのは本当に死神です
ただ運命を直接ねじ曲げる形で力を使ったわけではなく、自分の姿を変えて放送室に乗り込んだだけなので、職務上使ったというよりは一人で勝手に遊んでただけ(と言い張る)…みたいなイメージでした
すみません、あれが大きな混乱を招いていたとしたら、周回が効かない中で安易にやることではありませんでした ん?だとしたらあそこはなんでダイヤちゃんが早退したんだ?死神の力を使ってないならダイヤちゃんの生命力は奪われていないはず
狙って善子に死神のこと話す邪魔したようにも思えるけど... もんじゃは悪くないでしょ。どちらかというと初めから読み込んでる人以外がリタイアせざるを得なくなったSSの構成が問題だったんじゃないか?その結果残ったのがもんじゃだけだったって話で ちゃんと読んでいたし考察もしていたけど、責任逃れのチキンだから書き込みできませんでした 最終日は気付いたら終わってたww
考察が楽しかったから終わってから荒れてる方が残念 安価の件については途中からそんな単純なものじゃなくなっていったから仕方ないとは思うだからこそ色々と意表を突かれたわけだし
ssの構成についての問題も安価の選択次第でどう転んでいくのか分からない面白さがあったから一概に駄目とは言えないのがね…そこは難しい気がする
何にせよ最後まで楽しめました、乙です 乙です
見てる分にはTRPGみたいで面白かったわよ、ヘタレなので安価には参加しなかったけど
安価だけに これまたすごい安価SS
ED4を迎えるところゾクっとするね、こういう仕掛けがちゃんと考えられてる話好き
次があれば安価も参加してみたい ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています