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【SS】ともり「小林ー！　遊びに来ましたよー！」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ
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0005名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:19:38.32ID:7ALz22QI
こばりるきゃんどる出張版　〜だから愛香よっ！〜


楠木ともりさん
お誕生日＆ソロデビューおめでとうございます

スタッフ一同
0007名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:25:10.50ID:7ALz22QI
　沼津

　小林のマンション

ともり「小林ー！」ﾋﾟﾝﾎﾟﾝﾋﾟﾝﾎﾟﾝﾋﾟﾝﾎﾟﾝ

ともり「おらっ！　開けろ小林！」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ

ｶﾞﾁｬｯ！

「うるさーい！！」

ともり「ごめんなさいっ！？」ﾋﾞｸｯ

善子「朝からうるさいのよ楠木！　こっちは徹夜明けで疲れてんの！」

ともり「ありゃ？　善子ちゃんじゃないですか」

善子「今何時だと思ってんのよ……」

ともり「五時ですね」

善子「五時ですねじゃないわよ」

ともり「もしかしてご迷惑でしたか……？」

善子「ええ、とても迷惑」

ともり「……」ｸﾞｽﾝ

善子「そんな顔しても可愛いだけよ」

ともり「えへへ」

善子「褒めてないわ」

ともり「ありがとうございます♪」

善子「だから褒めてないっての」
0008名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:26:24.54ID:7ALz22QI
ともり「ところで小林はご存命でしょうか？」

善子「たぶんね」

ともり「たぶん、とは？　ときどき死んでるんですか？」

善子「部屋に閉じこもって出てこないのよ」

ともり「年末年始は引きこもるつもりですか。それはいけません、たまに連れ出して日に当ててあげないと」

善子「草みたいに言わないでくれる？」

ともり「草」

善子「ここのところ仕事続きで疲れてるのよ。たまにはゆっくり休ませてあげようかと思って」

ともり「むっ、小林に優しい……？　さては善子ちゃんじゃないな！？」ｸﾞｲｯ

善子「痛たたたた！！！」

ともり「誰ですかあなたは！　そもそもここは小林のマンションですよ！？　善子ちゃんがいるなんておかしいでしょう！」ｸﾞｲｸﾞｲ

善子「離しなさいよ！！」ﾊﾟｼｯ

ともり「あっ……」

善子「痛たた……ほっぺた千切れるかと思ったわ」ﾋﾘﾋﾘ

ともり「……」

善子「で、あんたは何しに来たわけ？　見たところ手ぶらだし、たまたま近くまで来たから寄ってみただけ？」
0009名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:27:10.94ID:7ALz22QI
ともり「いえ、荷物はここに」

ﾄﾞｻｧ

善子「うわぁ！！？　すごい大荷物ね……」

ともり「ラジオの企画で日本一周中なんです」

善子「す、すごい企画ね……」

ともり「嘘ですけど」

善子「嘘！？」

ともり「題して、楠木ともりの泊まりるきゃんどる〜！」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝﾊﾟﾌﾊﾟﾌ

善子「……」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

ともり「はい。この企画はですね、私楠木ともりが小林の部屋に泊まっちゃおう！　という企画なんです」

善子「そのまんまじゃない」

ともり「シンプルイズベスト！　ネーミングは分かりやすく！」

善子「はぁ」

ともり「記念すべき第一回の『りるキャン△』ということでね」

善子「どこかで聞いたことある略し方ね」

ともり「早速、リスナーのみなさんから頂いたお便りを紹介していきたいと思います！」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

善子「……」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ
0010名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:27:58.52ID:7ALz22QI
ともり「まずはテントネーム『T.K』さんから」

ともり「『ともりちゃん、バースデーライブお疲れ様！　とっても輝いてましたよ』」

ともり「ありがとうございます〜♪」

ともり「『ところでともりちゃん』」

ともり「はいはい？」

ともり「『そんなところで立たされて寒くないんですか？』」

ともり「寒いに決まってるじゃないですか〜！！」

善子「分かったわよ！　早く入って！」

ともり「あ、どうぞお気遣いなく」

善子「このまま公開収録されたんじゃ周りに迷惑なのよ」

ともり「そうですかね？　善子ちゃんがどうしてもと言うなら仕方ありません、ここはいったんCMにして……」

善子「もういいから、黙って入って……」ｸｲｯ

ともり「きゃっ……♡」

ﾊﾞﾀﾝ
0012名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:29:00.25ID:7ALz22QI
　リビング

ともり「うぅ〜！　寒いじゃないですか！」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

善子「朝五時よ？　暖房なんて入れてるわけないじゃない」

ともり「早く入れてください、早く」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

善子「はいはい」ﾋﾟｯ

ともり「……」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

善子「こんな寒い中、よくそんな薄着で来たわね？　バカなの？？」

ともり「失礼ですね！　上着もちゃんと持ってきてます。どこに仕舞ったのか分からなくなっちゃいましたけど……」

善子「はぁ……」

ともり「こっちの国は暖かい気候だと聞いていたので、油断しました」

善子「海外から来たの？　そんなわけないわよね」

ともり「あ、実は今、ラジオの企画で世界一周中なんですよ」

善子「日本一周じゃなかった？」

ともり「えーと、その昔、日本では数々の国が天下統一を目指しており……」

善子「そういう設定なの？」

ともり「違います」

善子「……」
0013名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:29:33.49ID:7ALz22QI
ともり「つ、続いてのお便りです。テントネーム『ともりるふぇありる』さんから」

ともり「『何か温かい飲み物を……』」

善子「直接言いなさいよ！　面倒くさいわね」

ともり「いえいえ！　ホットココアだなんて、お構いなく！」

善子「ホットココアね、分かったわ」

ともり「何と！　私が飲みたいものを当てるなんて、善子ちゃんさすがです！」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

善子「何ででしょうねー……」ｽﾀｽﾀ

ともり「……」

ともり「善子ちゃんは優しいなあ。小林とは大違いですよ」

ともり「ってそういえば小林は自分の部屋でしたっけ」ｽﾀｯ

ｽﾀｽﾀ

ともり「ここかな？」ﾄﾝﾄﾝ

ともり「小林ー？」ｶﾞﾁｬ
0014名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:30:22.41ID:7ALz22QI
　トイレ

ともり「小林いないんですかー？」ﾊﾟｶｯ

ともり「……」

ともり「トイレットペーパーは……よし、ダブル」

ともり「お邪魔しましたー」

ﾊﾟﾀﾝ
0015名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:31:06.73ID:7ALz22QI
　リビング

ｽﾀｽﾀ

ともり「あ、ストーブついてる！」ﾀｯﾀｯ

善子「はいホットココア。熱いから気をつけて飲むのよ」ｺﾄｯ

ともり「ありがとうございます」

善子「それと、玄関の外の荷物は早めに入れておいてよね？　通行の邪魔になるから」

ともり「邪魔……」ｶﾞｰﾝ

善子「邪魔って、そりゃ邪魔でしょうよ。他に言い方ある？」

ともり「私も邪魔ですか……？」ｸﾞｽｯ

善子「は？」

ともり「邪魔だから中に入れてくれないんですか！？」

善子「入れてるじゃない。こうして暖房とココアも提供してるわ」

ともり「荷物の話ですよ」

善子「自分の荷物でしょ！？　何で私が入れなきゃなんないのよ」

ともり「テントネーム『トモリ倶楽部』さんからの……」

善子「こ、このっ……！」ｽﾀｯ

ともり「適当にその辺置いといてください」

善子「言われなくたってそうするわよ！」ｽﾀｽﾀ

ともり「あ！　白い小さなカバンは潰さないでくださいよ！　あと……」

善子「自分でやれ！　ほら！　私も手伝うから！」

ともり「面倒くさいですね……」ｽﾀｯ
0017名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:32:46.27ID:7ALz22QI
善子「はぁ、はぁ……。いったい何日泊まる気なのよ」ﾄﾞｻｯ

ともり「心配しなくても明日の朝には帰ります」ｽﾞｽﾞｯ

善子「そう……。にしてはずいぶん多いわね。本当に世界一周でもするのかと」ﾌｰﾌｰ

ともり「そうしたいのは山々なんですが、あいにくスケジュールが詰まってまして」

善子「そうよね。今まさに絶好調だもの」ｽﾞｽﾞｯ

ともり「そうなんですよ！　実はソロデビューも決まったんです」

善子「知ってるわ。すごいじゃない」ﾌｰﾌｰ

ともり「知ってました？　誰にも言ってないんだけどなー？」

善子「いやいやいや、バースデーライブで発表したでしょうが」

ともり「ってことは……？」

善子「見に行ったわよ。当然でしょ」

ともり「……」ﾆﾔﾆﾔ

善子「たまたまチケットが手に入ったの！　他に用事もなかったし、いい暇つぶしになるかと思って」ｽﾞｽﾞｯ

ともり「善子ちゃん大好きー！」ｷﾞｭｰ

善子「あっつ！！　ココア！　ココア飲んでるんだから！」

ともり「それにしても、来てたなら言ってくれればよかったのに。どの辺の席だったんですか？」
0018名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:33:59.81ID:7ALz22QI
善子「端っこの見切れ席よ」

ともり「Oh……」

善子「見られただけよしとするわ」

ともり「今度は関係者席に招待しますね？」

善子「そんなのいいわよ。あくまでいちファンとして、他の人と同じように抽選に参加して当たればラッキーって感じで」

ともり「今何て言いました？」

善子「当たればラッキー」

ともり「ラッキー？」

善子「ラッキー」

ともり「ハッピー？」

善子「まあ、少しは」

ともり「そこは『ハッピー』じゃないんですか。リズム感悪いですね」

善子「何なのよそのノリは」

ともり「善子ちゃんこそ徹夜明けだってのにテンション低くないですか？」

善子「ともりこそちゃんと寝てる？　このウザ絡みしてくる感じ、間違いなく徹夜明け……それも三徹目くらいの」

ともり「ぴょんっ」

善子「ウサギなんて言ってないわ。ウザいって言ったの」

ともり「しゅん……」

善子「……」ｲﾗｲﾗ

ともり「わわっ、そんなに嫌そうな顔しなくても」

善子「もう寝るわ。さすがに疲れた」ｽﾀｯ

ともり「ちょっとー！　お代わりはないんですかー！？」

善子「知らないわよ！　勝手に作って飲めばいいでしょう！？」
0020名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:35:15.22ID:7ALz22QI
　キッチン

ともり「というわけでめでたくお台所の使用許可をいただきました」

ともり「いぇーい！（小声）」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

ともり「ここからは私が朝ごはんを作っていきたいと思います。美味しいエサの匂いがすれば引きこもりの小林も部屋から出てくるに違いない……」ｸｯｸｯ

ともり「わざわざ家まで来てご飯を作ってあげるなんて、私ったら天使すぎますねー」ｱﾊﾊ

ともり「さてまずは冷蔵庫の中身を拝見……」ｶﾞﾁｬｯ

ともり「んー……」

ともり「作れそうなものはないね」ﾊﾟﾀﾝ

ともり「……」

ともり「お酒とつまみしか入ってないなんて女子としてどうなんでしょう」

ともり「まー、こんなこともあろうかと！　私は食材を持ってきたわけですよ！」ｽﾀｽﾀ

ともり「実はメニューも考えてあるんです。リスナーの方から募集した『天使すぎるシェフともりに作ってもらいたい手料理は！？』映えある第四位！」ｶﾞｻｺﾞｿ

ともり「にんじん！　だいこん！　じゃがいもとしらたき！　そして玉ねぎ！」ｻｯ

ともり「調理道具すらないことを想定して準備してきましたカセットコンロ！」

ともり「ふっふっ……」

ともり「もうお分かりですね！？　そう、ズバリ『肉……」

「静かにしてくれるかしら！？」

ともり「ひっ！？」

善子「本当に眠たいの！　疲れてるのよ！」

ともり「す、すみません……」

善子「こんな早くに何しに来たの！？　ラジオの企画なんて嘘よね！？」

善子「私のお正月休みを邪魔しに来たってんなら……！」

ともり「……」ｸﾞｽｯ

善子「……もういいわよ。ごめんなさい、徹夜明けでイライラしてたの。怒鳴って悪かったわ」

ともり「うぅっ……」

善子「何を作るつもり？　私も手伝うわよ……」
0022名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:36:14.31ID:7ALz22QI
ともり「じゃーん！　肉じゃがの完成です！」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

善子「これ、肉じゃがだったの！？」

ともり「えぇ！？　善子ちゃん、もしかして料理とかしたことない人……？」

善子「そんなわけないでしょう。自炊せずにどうやって食べていけばいいのよ」

ともり「でも、冷蔵庫の中身はビールとおつまみしかありませんでした」

善子「それは小林ね」

ともり「まさか善子ちゃん用の冷蔵庫が！？」

善子「いいえ。昨日、冷蔵庫の食材は全て使い切ったわ」

ともり「どうしてそんな極限生活を」

善子「違うわよ。今日、冷蔵庫を洗おうと思って」

ともり「冷蔵庫を洗う……？」

善子「大掃除よ。冷蔵庫って、意外にもカビや雑菌の温床なの」

ともり「まさかー。知らないんですか？　冷蔵や冷凍をしておけば割引のお惣菜もお肉も次の週くらいまで食べられるんですよ」

善子「それはそうかもしれないけど」

ともり「こまめによく絞ったふきんで拭いておけば慌てて大掃除なんてする必要ありません。これだから小林は……」

善子「水拭き掃除はいちばんやっちゃいけない掃除方法ね」

ともり「はい？　じゃあ掃き掃除でもしますか？」

善子「考えてもみなさい。うっかり溢れたお惣菜の汁をふきんで拭くとするわよね」

ともり「私はうっかりなんてそんな間抜けなことしませんけどねー」

善子「すると、綺麗に拭いたつもりが逆に汚れを塗り広げることになるの」

ともり「それはちゃんと拭けてないんですよ」

善子「そんな冷蔵庫を水拭き掃除なんてしたら、庫内全体が雑菌だらけに」

ともり「ストップ。そもそも冷蔵庫は寒すぎて雑菌が繁殖しません」

善子「何にも知らないのね……」ﾊｧ

ともり「何ですって？」
0023名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:37:10.98ID:7ALz22QI
善子「確かに、冷蔵庫みたいな寒い環境では雑菌の活動は抑えられるわ」

ともり「そうですよ。私たち人間と一緒で、寒いと動きたくなくなるんです」

善子「でもそれは抑えられるというだけで活動しないというわけじゃないの」

ともり「ん、まあ私たちもたまにはランニングとかしますしね……私はしませんが」

善子「菌の活動をほとんど完全に止めるには、だいたいマイナス五十度くらいまで冷やす必要があるわ」

ともり「寒すぎて死んじゃいますよ！」

善子「ところでともり、菌の繁殖に必要なのは何だと思う？」

ともり「え？　ふかふかのお布団といい感じの雰囲気ですか？」

善子「いちいち人間に喩えなくていいから」

ともり「えぇ……善子ちゃん、ドン引きです」ﾋｷ

善子「あんたが言ったんでしょ！？」

ともり「『菌が』繁殖するための場所と適度な温度湿度ですよ。そのくらい分かってください」

善子「……その通りよ。基本的に冷蔵庫の中は温度湿度共に低くなっているけれど」

ともり「人が開け閉めをするからそうはいかないんですよね？　知ってますよ」

善子「何だ、分かってるんじゃない」

ともり「暖かくて湿度のある外気が入り込めば結露しますし、そうすると雑菌にとっては好条件になります」

善子「冷蔵庫って何年も、人によっては十年以上使うでしょうから……」

ともり「それだけ寒さや乾燥に強い菌が育っていくわけですね」
0024名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:37:56.31ID:7ALz22QI
善子「ご名答」

ともり「ブリーダーになれますね私たち」

善子「私は遠慮しておくわ」

ともり「何でですか！　一緒に強い菌を育てましょうよ。早いとこ人類を滅ぼして……ふふっ」

善子「……」

ともり「やだ、冗談ですってばぁ」ｱﾊﾊ

善子「そこまで分かっていてよく冷蔵庫を洗わずに居られるわね」

ともり「そんなの気にしてもキリがなくないですか？　それとも無菌室にでも住みます？」

善子「うっ……」

ともり「そんなことよりもっと気にすることがあると思いますけど」

善子「な、何よ」

ともり「さっきの言葉、取り消してください」

善子「さっきの言葉って？」

ともり「私の作った手料理を見て何か失礼なことを言いましたよね？」

善子「えっと……」

『じゃーん！　肉じゃがの完成です！』ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

『これ、肉じゃがだったの！？』

善子「……」ﾎﾟﾜﾎﾟﾜ

ともり「ほら、早く訂正してくださいよ」

善子「それはできないわ」

ともり「何でですか。失礼でしょう？」

善子「よく見てみなさい、この料理……」
0026名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:39:05.54ID:7ALz22QI
ともり「肉が入ってない、そう言いたいんですか」

善子「ええ。肝心の牛肉がないわ」

ともり「肉が入ってないと肉じゃがを名乗ってはいけないんですかね」

善子「肉じゃがなら当然よね」

ともり「……そうですか」

善子「こんなの肉じゃがじゃない……。ただの『じゃが』よ」

ともり「言いたいことはそれだけですか？」

善子「え？　まだ言っていいの？　まず計量スプーンの使い方から間違ってるわ。計量スプーンの『すり切り』は……」

ともり「言いたいことはっ……それだけ……」ｸﾞｽｯ

善子「泣くことないじゃない」

ともり「辞世の句は書き終えましたかって聞いてるんですよ」

善子「は……？」

ともり「これが肉じゃがでないことは認めましょう。少なくとも『今はまだ』」

ともり「肉が入っていることが肉じゃがの定義なら、善子ちゃんがそう仰るのなら、今から入れればいいんですよね？」ｽｯ

善子「ちょちょちょ、包丁なんか持って何……」

ともり「ただの包丁じゃありません。『腸裂き包丁』です」

善子「怖っ！？　名前からして怖い！」

ともり「主に牛の小腸を裂くための包丁です。使い方は先端を小腸に刺し……」ｸｲｯ

善子「悪かったわよ！！　私が悪かったわ！」

ともり「そのまま包丁を動かさず、腸を引くことで連続して腸を裂いていくんです」ｸｲｸｲ

善子「ひぃっ！？　誰か！　助けて殺されるわ！！」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

ともり「殺すなんて人聞きが悪い……。そこまでして肉を入れたかったんでしょう？」ﾌﾌｯ

善子「あ……足が、動かな……」ｶﾞｸｶﾞｸ

ともり「さあ……一緒に肉じゃがを作りましょうよ。ねぇ、リスナーのみんな？」
0028名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:40:14.15ID:7ALz22QI
　リビング

小林「ふわぁ……。トイレトイレ」ﾖﾛﾖﾛ

ともり「あ！　やっと起きてきましたね小林！」ﾀｯﾀｯ

小林「んん……。どうして楠木がここに」

ともり「お腹空いてますよね？　朝ごはん食べませんか？」

小林「この匂い……」ｸﾝｸﾝ

ともり「ほら！　やっぱり小林はエサの匂いに釣られて起きてきたんですね」

小林「いや、トイレに行きたかっただけ」

ともり「あっそう。お腹が空いてないなら、トイレの後また引きこもってください。どうぞどうぞ」

小林「ん……」ｽﾀｽﾀ

ともり「ちょっと！　本当に食べてくれないんですか！？」ｶﾞｼｯ

ﾍﾞﾄｯ

小林「ひぃっ！！？！？」ﾌﾞﾙｯ

ともり「わっ！？　急に大きな声を出さないでください！　びっくりするじゃないっすか」

小林「く、楠木っ！？」

ともり「寝ぼけてんですか？　そうですよ、私ですよ」

小林「血が……」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

ともり「血がどうかしたんですか？」

小林「……」ｷｭｩ

ﾊﾞﾀﾝｯ！

ともり「んもー！　揃いも揃って私を何だと思ってるんですか！」ﾌﾟﾝｽｶ
0030名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:41:14.17ID:7ALz22QI
　東京

せつ菜「……」ﾌﾟﾙﾙ

せつ菜「ともりさん、出ませんね」

せつ菜「沼津へ世界一周してくると書き置きがありましたが、まさか徒歩で行くとは……」

せつ菜「いえ、あれだけの大荷物ですから休まず歩いても三日くらいかかるんじゃないでしょうか」

せつ菜「さながら牛歩のように……」
0033名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:46:19.51ID:7ALz22QI
＊

前回の！

せつ菜『ともりさん、その荷物は？』

ともり『ちょっと世界一周してくるね』

せつ菜『意味分かんないです』

ともり『寂しかったらいつでも連絡して。それじゃ！』
0034名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:47:04.24ID:7ALz22QI
＊

　小林のマンション

ともり「小林ー」ﾄﾝﾄﾝ

小林「」

ともり「食べないんですかー？　冷めちゃいますよー？？」ﾕｻﾕｻ

小林「」ｼｰﾝ

ともり「哀れ……」

小林「んん……？　もう朝……？？」

ともり「朝ですよ。ほら、起きてご飯食べましょう。小林のために作ったんですから」

小林「……」

ともり「小林？」

小林「楠木、手見せて」ｽｯ

ともり「？　はい」ｽｯ

小林「よかった、血塗れじゃない……。夢だったんだぁ」ﾎｯ

ともり「私としたことが夢中になってしまいまして」ｴﾍﾍ

小林「聞いてよ楠木、私ったらすごい怖い夢見ちゃってさ。朝起きたらこうして楠木が家にいて……」

小林「ご飯できましたよーって駆け寄ってくるんだけどさ。その手が血塗れなの。それで私の手を掴むんだ。こう……」ｶﾞｼｯ！

ともり「きゃっ！？」

小林「もう片方の手にはこーんな大っきい包丁が握られてて、エプロンにも血がべっとりついてて……」

小林「部屋中が血の匂いで、台所の隙間からヨハちゃんの足が見えてて……」
0035名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:47:50.94ID:7ALz22QI
足「」

小林「ヨハちゃん？」

ともり「善子ちゃんならキッチンに……」

小林「あ、あの……隙間から見えてるの、ヨハちゃんの足……」

ともり「はい」

小林「……」ｷｭｩ

ともり「っと！！　同じ展開は二度させませんよ！」ﾊﾟｰﾝ

小林「んぶっ！？」ﾋﾘﾋﾘ

ともり「それは怖い夢を見ましたね。私が善子ちゃんと肉じゃがを……いえ、善子ちゃんで肉じゃがを作っていたんでしょう」

小林「違うの？」

ともり「あのですねー、自惚れるのも大概にしてくださいよ。これだから小林は」

小林「自惚れてなんかないけど」

ともり「どうせ私が小林のことを好きすぎて家まで押しかけたら、善子ちゃんに先を越されていて嫉妬心からザクザクっとやってしまった的なアレでしょう？」

小林「ちょっと何言ってるか分かんない」

ともり「私が何のためにわざわざ来たのか、少しは考えて発言してくれませんか？」

小林「んーと、いったん状況を整理させてもらってもいい？」

ともり「許可しましょう」

小林「私がさっき見たのは夢？　それとも現実？」

ともり「さあ？」

小林「あと……今見ているのはどっち？」

ともり「知りませんよ。顔でも洗ってきてください」ｽﾀｯ

小林「えぇ……」
0036名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:48:43.23ID:7ALz22QI
＊

　キッチン

ともり「善子ちゃん、そんなところで寝ていると風邪を引きますよ」

善子「」

ともり「朝ですよー！　起きてください！」ﾕｻﾕｻ

善子「」ﾕｻﾕｻ

ともり「よし」

ともり「起きろーっ！」ﾊﾟｰﾝ！

善子「うわぁっ！？　嫌よ、殺さないで！　お願い！！」ﾋﾞｸｯ

ともり「……」

善子「あ、あれ？」

ともり「よく眠れましたか」

善子「私……生きてる？」

ともり「さあ」

善子「待って……」ｳｰﾝ

善子「なるほど、理解したわ」

ともり「さすが善子ちゃん。小林とは頭の出来が違いますね」

善子「ともり、気づいていないようだから教えてあげるわね。あなたはサイコパスよ」

ともり「はい？」

善子「もちろん、全て嘘偽りのない純度百パーセントの善意だってことは分かる。その気持ちはすごく嬉しいわ」

ともり「……。そういえば小林も嬉しそうじゃありませんでした」

善子「理由はともあれ、私たちに手料理を振る舞ってくれようとしたことには感謝してる。こうしてわざわざ遠くまで来てくれたことにもね」
0037名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:49:25.79ID:7ALz22QI
ともり「どういたしまして」ｴﾍﾍ

善子「だけど……」

善子「人の家まで牛で乗りつけて、キッチンで屠殺するなんて非常識にも程があるわ！！」ﾊﾞﾝｯ！

ともり「ひぃっ！？」ﾋﾞｸｯ

善子「いったいどういう環境で育ったらあんたみたいな人が出来上がるのかしらね！？」

ともり「んん、それは顔が良くて声が良くて歌も作れて歌って踊れてソロデビューまでできちゃうような人という意味でしょうか？」

善子「……」

ともり「その上、家まで押しかけて新鮮な牛肉を使った手料理まで作れちゃうなんて、私って天才すぎますよね……」ﾌﾌｯ

善子「この世界にはもう常識なんてものは存在しないのかもしれないわ」

ともり「だって天使なんだもん♪」ﾃﾍｯ

善子「はぁ……」

ともり「えっ、そのため息はおかしくないかな！？　善子ちゃんだって自称堕天使だよね！？」

善子「そうよね……。あぁ、くらくらしてきたわ」ﾌﾗｯ

ともり「冬の寒さのせいですかね？」

善子「熱いお茶のせいよ、たぶん」
0038名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2019/12/31(火) 23:50:29.83ID:7ALz22QI
＊

　リビング

ともり「いっただきまーす！」ﾊﾟﾁﾝｯ

善子「いただきます……」ﾊﾟﾁ

小林「……」

ともり「こら！　小林、いただきますは？」

小林「何か食欲ないや……」

ともり「毎日引きこもってばかりいるからですよ。こうして美味しいものたくさん食べて、外に出て動けばすぐ元気になります」

小林「……」

善子「小林には理解できないかもしれないわ」

ともり「はー、これだから引きこもりは」

善子「あ、そうじゃなくて……。ともりの思考回路を、よ」

ともり「所詮小林は凡人ですからね。そこで指を咥えて私に憧れていればいいんです」

善子「理解から最も遠いってこと？」

ともり「はい」

小林「あのさ……、お風呂に吊るしてあるハイセンスなオブジェは何かな」

ともり「うし太郎です」

小林「何だって？」
0039名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:51:17.71ID:7ALz22QI
ともり「私をここまで乗せてきてくれました。そして今日から数日間、私たちの生きる糧となる子です」

善子「小林、無理に理解しようとしなくていいわ。頭が痛くなるでしょうから」

小林「そうする……。あれはただのオブジェ、楠木の悪趣味なオブジェ……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

ともり「そんなことより食べましょう、さあ！」

善子「そうね。見たところ食べても大丈夫そうだし」

ともり「いちいち失礼なんですよ」ﾊﾟｸｯ

善子「あむっ」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

小林「……」

ともり「うまー！　さすが私！」ﾊﾟｸﾊﾟｸ

善子「確かに美味しいわね……。いったい何をどう入れたらこうなるのか分からないけれど」

ともり「あっ、間違えた。うしー！」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

小林「ヨハちゃん、こいつはさっきから何を言ってるの？」

善子「たぶん……うし太郎への感謝？　知らないわよ」

ともり「さて、善子ちゃんには改めて弁明の機会を与えます」

善子「ん？」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

ともり「私の作った料理、これはいったい何でしょうか？」

小林「ヨハちゃん、こいつマジで頭……」

ともり「小林は黙っててください。これは私と善子ちゃんの問題です」

善子「これは……」
0040名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:52:21.40ID:7ALz22QI
ともり「にんじん、だいこん、じゃがいもとしらたき。そして玉ねぎ」

ともり「ちょいとうし太郎」

ともり「さあ、この料理の名前は」

小林「そりゃ肉じゃがだよ」

善子「！？」

ともり「こ、小林……」

小林「肉じゃがだよね？　大根は意味不明だけどまあ許そう」

ともり「料理をしない小林には分かりませんか？　だいこんにはお肉を柔らかくする効能があるんですよ」

小林「温泉みたいに言われましても」

ともり「さらにだいこんに含まれる数々の消化酵素が……」

小林「あれ？　ヨハちゃん、確か大根の消化酵素って熱に弱いんじゃ……」

ともり「え？　だいこんを生で食べたい？？　仕方ないなあ、今持ってくるんで頭から食べてくださいね」ｽﾀｯ

ｽﾀｽﾀ

善子「小林、よく聞いて。ともりは善意でやっているのよ……。信じがたいかもしれないけれど」

小林「お風呂にオブジェを飾ることも？」

善子「適当な置き場所がなかったんでしょう。リビングに置かれたら四六時中血の匂いを嗅ぐことになるし」

小林「……。今日からお風呂は銭湯でも行こうかなあ」

善子「ええ」

ｽﾀｽﾀ

ともり「全く小林は頭が弱くて困っちゃいますね。顎の弱い現代人の代表みたいな小林のために、少しでも工夫してあげたというのに」ｽﾀｯ

小林「大根……」

ともり「頭から食べますか？　それとも口から？」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

ともり「そういえば私、バッティングセンターにこれで行ったことがあるんですよ」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

小林「とりあえず下ろしてもらっていい？　まだ死にたくないの」
0041名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:53:12.45ID:7ALz22QI
＊

善子「ご飯に大根おろしは最高よね……♡」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

ともり「はい♡」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

小林「分かる……♡」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

ともり「あ、さすがの小林でもこのくらいは分かるんですね。すごいです」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

小林「こんなの全人類が知っとるわ！」

ともり「統計調査でもしたんですか」

小林「……日本人の、大人の、三分の一くらいは知ってると思う。私の個人的な感想」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

ともり「素直でよろしい」

善子「ふふっ……」

小林「何笑ってんの？」

ともり「美味しい食事は人を笑顔にするんです。残念ながら小林は人でなしなので笑顔になりませんでしたが」

小林「誰が人でなしじゃ！」

ともり「そんなに不味かったですか……？」

小林「えっ、いやその……そんなことないけど」

ともり「不味くはなかったけどさして美味しくもなかったと」

小林「そんなこともないかな」

ともり「どっちなんですか？」

小林「う……」
0042名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:53:57.13ID:7ALz22QI
善子「素直に認めた方がいいと思うわよ」

ともり「そうですよ。私の手料理があまりにも美味しすぎて、明日からも家に居てほしいって土下座して頼むなら考えてあげなくもないですよ」

小林「いや、それだけは願い下げです……」

ともり「何でですか！？」

小林「え、その……ねぇ？　ヨハちゃんからも何とか言ってよ」

善子「私は素直に認めるわ。今まで食べたあらゆる物の中でともりの料理がいちばん美味しい」

善子「たかだか十五、六年しか生きてない私でも間違いなく断言できる……ともりの手料理は世界一だと」

ともり「こちらこそよろしくお願いします♡」ｷｭﾝ

小林「んん！？　何か論理の飛躍があったよね！？」

ともり「実質プロポーズですよね今の」

善子「いつか私に料理を教えてくれないかしら？」

ともり「それは私のお味噌汁を毎日飲みたいということでしょうか？」

善子「味噌汁に限らず……」

ともり「まあ♡」ｳﾌﾌ

小林「……この茶番はいつまで続くんだ？」ｲﾗｲﾗ
0043名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:54:27.69ID:7ALz22QI
ともり「という冗談はさておき」

善子「えっ、料理教えてくれないの……？」

ともり「気が向いたときに教えます。私は弟子を取らない主義なもので」ﾌｯ

善子「か、カッコいい……」ｼﾞｰﾝ

小林「そうかな！？　私にはただの面倒くさがりにしか見えないけど」

ともり「私のこの料理の名前を言ってください。そんなに引っ張ることじゃないでしょう」

小林「ん、楠木こそそんなにこだわるとこじゃなくない？」

善子「この料理は……」

善子「肉じゃが、ではないわ」
0044名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:55:25.74ID:7ALz22QI
＊

ともり「……」

善子「確かに美味しいわよ、ものすごく。百人中、二百人くらいは美味しいと言うでしょう。でも」

善子「これは肉じゃがではないわ」

ともり「どうしてでしょう？」

小林「いや……もうよくない？　既存の肉じゃがを超えた料理ってことでしょ？」

善子「材料がほとんど同じということくらいしか共通点がないからよ」

ともり「……」

善子「『にんじんとだいこんとじゃがいも、しらたきに玉ねぎ、そして牛肉の煮付け』のめっちゃ美味しいやつ」

善子「ってとこかしらね」

小林「それを縮めて肉じゃがって言うんじゃない？　世間一般では大根は入れないと思うけど」

ともり「本気で言ってるんですか？」

小林「統計調査なんてしてないよ。でも、この材料から作ってたら肉じゃがだよ」

ともり「あ、小林の感想は聞いてないです」

小林「あれおかしいな？　私、楠木の味方をしてるんだけどなー？？」
0045名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:56:17.71ID:7ALz22QI
善子「この料理を『肉じゃが』と呼んでしまったら、過去と未来、全ての並行世界の同じ材料を元にした料理のことを私たちは二度と言葉では表せなくなるのよ」

小林「どれも肉じゃがだよ」

ともり「その必要はありませんよ。私の作った『肉じゃが』こそが全宇宙、全時間軸の『それに類似する何か』にとってオリジナルとなるだけです」

善子「っ！？　そんな暴挙が許されるとでも思っているの！？」ﾊﾞﾝｯ！

ともり「私はそれに値する存在だと思いますが？」

善子「くっ……。神を、運命までを愚弄しその上これまでに受け継がれてきた家庭の味さえもコピーだと、『それに類似する何か』だとでも言うつもり！？」

ともり「もう一度言います。私はそれに値する存在です」

小林「暇を持て余した神々のー」ﾊﾅﾎｼﾞ

善子「うっさいわね！　遊びじゃないの！　こっちは真剣なのよ！」
0046名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:56:54.71ID:7ALz22QI
ともり「なぜ私が自分でも驚くような数々の才能を持ち合わせていると思いますか？」

善子「そんなの、ご両親の愛の賜物に決まって……」

ともり「そう、その答えはとっくに出ているんです」ｽｯ

善子「て、『天使すぎる声優』……？」

ともり「はい。言い換えるなら『声優すぎる天使』。果たして私は声優なんでしょうか？　それとも本当は天使なんでしょうか？」

小林「あっ、分かった。二人とも徹夜明けだったんだ」

善子「そう……。楠木ともり、あなたが天使、いや大天使『トモリエル』なのね」

ともり「はい。堕天使ヨハネよ、ようやく記憶を取り戻しましたか」

善子「私は……天使ヨハネは大天使様の天命を受け、地上へ『肉じゃが』の概念を伝えるべく堕天使としてここに」

ともり「その通りです。さあ、天使ヨハネよ。今こそ天命を果たしなさい。『肉じゃが』を、本来あるべき姿へ正すのです」

善子「……」ｺﾞｸﾘ

小林「何かおもろいテレビやってないかなー」

善子「これは……」

善子「この料理は……」

善子「ううん、やっぱり私にはできない」
0047名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:57:42.17ID:7ALz22QI
＊

ともり「……そうですか。あなたには失望しました」

善子「おあいにくさま。それでも私はこの世界の肉じゃがが好きなの。この『何か』がどれだけ美味しかろうともね」

ともり「先ほどからなぜあなたがこのような聞き分けのない子どもに成り下がってしまったのか考えていました」

善子「誰が聞き分けのない子どもよ！」

ともり「すべての元凶は……」ｽｯ

小林「夕方からは『絶対に笑ってはいけないラブライブ！』かなー」ﾍﾟﾗｯ

善子「小林がどうかしたの？」

ともり「感じませんか？　小林から漂う邪悪なオーラを」

小林「こうしてテレビ欄を見て今年はどの番組にしようか考えてるときがいちばん『年末』って気がするー」ｱﾊﾊ

善子「た、確かに……！　齢二十五にしてこのオッサンぶり！　冷蔵庫を開けば酒とつまみ！　本当に今をときめくアイドル声優なのかしら！？」

小林「私の悪口はやめい！」

ともり「そなたにもう一度だけチャンスを与えましょう。ここを引き払って私の部屋に来なさい」

善子「わ、私がともりと……？」

ともり「はい。全身の毒が抜け切ったら、そのときは私が料理というものを教えます」

善子「……」ｺﾞｸﾘ
0048名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:58:19.16ID:7ALz22QI
小林「東京から沼津の高校に通うの？　大変だねー」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

善子「あ、それは嫌ね。やめとくわ」

ともり「ちょっと！　最後までやってくださいよ！」

善子「だって嫌だもの。毎朝満員電車に乗るなんて死んでもごめんだわ」

ともり「くっ、小林め……余計なことを」

小林「はいはい」

善子「でも私も楽しかったわ。みんな『ごっこ遊び』だとバカにして、付き合ってくれる人は少ないもの」

ともり「善子ちゃん、前から思ってましたけどなかなか役者の才能ありますよね」

小林「だよね！？　それは私も思う！」

善子「そんなことないわよ」

ともり「もしよかったら、本気で考えてみませんか？　東京の学校に通うという手もありますし」

小林「んなっ、ヨハちゃんに変なこと吹き込まないでよ」

善子「……」

ともり「よかったら肉じゃがの作り方も教えますよ？」

善子「本当！？　って違う！　これは違うから！」
0050名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2019/12/31(火) 23:59:24.82ID:7ALz22QI
＊

　深夜

　宝石店　RED GEM WINK

怪盗ともり『この店にある金目の物は全て頂くわ！』ｼﾞｬｷｯ

店主善子『来たわね、怪盗ともり。残念だけどこの店はすでに警察に包囲されているわ……』ﾌﾌｯ

ともり『包囲？　私が見たときには全員居眠りしてましたけど』ｱﾊﾊ

善子『んなっ！？　それじゃ警察は一人もいないの！？』

刑事小林『ふん、残念だったわね楠木。今日がお前の「大晦日」だ』ｼﾞｬｷｯ

ともり『っ……！？』

怪盗ともり、大ピンチ！
このまま正義の鉄槌が下されてしまうのか……！？
0051名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 00:00:06.48ID:qmKTwVtQ
ﾎﾞﾌｯ！

小林『げほっ！？　何この煙！　胸が！』ﾃｨｳﾝﾃｨｳﾝ

？？『まったくともりさんは、肝心なところで詰めが甘いんですから』ｼﾞｬｷｯ

善子『くっ……せつ菜、生きていたのね』


次回、『時空探偵ヨハネ　紅の瞳』
第445話　ヨハネ、昇天

ジュエルスタンバイ！
0056名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 00:10:50.37ID:qmKTwVtQ
くそっ
どこまで書き込めてるのか分かんないの腹立つ

書き込みテストああああ
お姉ちゃんおめでとうゅ、、、
0057名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/01(水) 00:12:49.88ID:qmKTwVtQ
回線の調子が悪いようなのでここまでにします
残っていたらまた書きます

読んでいただいた方
代行してくださった>>1さん
ありがとうございました
0060名無しで叶える物語(SB-iPhone)
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2020/01/01(水) 07:14:14.59ID:Mcd1Y8pc
こんな気色の悪いSSを代行させてまで書くような人間は今年も図々しく生きていけるだろう
よかったな
0063名無しで叶える物語(SIM)
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2020/01/01(水) 11:16:19.19ID:xy6RReGb
わざわざ代行…w
0067名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:12:05.04ID:QXwTq9J9
＊

前回の！


小林『さてビールでも飲みながら年越すか……』ﾌﾟｼｭｯ

善子『飲み過ぎには気をつけなさいよ。お酒弱いんだから』

小林『はーい』ｺﾞｸｺﾞｸ

善子『それ、お酒が飲みたくて飲んでるの？　それとも酔いたくて飲んでるの？』

小林『えっ、そ、それは』

ともり『中身をマキロンに入れ替えておきましたよ小林』

小林『意味分かんない！』ﾌﾞﾊｯ！

善子『味で分からなかったの！？　これだから小林は……』ﾋﾞﾁｬﾋﾞﾁｬ

ともり『あーあ、もうめちゃくちゃですよ……』ﾌｷﾌｷ
0068名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/01(水) 20:13:18.43ID:QXwTq9J9
＊

　数日前　都内某所

スタッフ「ともりちゃん、もうすぐ時間よ」

ともり「……」

スタッフ「ともりちゃん？　聞いてる？」

ともり「あっ、スタッフさん。どうかしたんですか？」

スタッフ「もしかして緊張してるの？　もうすぐ開演時間よ。準備して」

ともり「分かりました」

スタッフ「確認だけど……ケーキはなしでよかったのよね？」

ともり「はい。ダイエット中なので」

スタッフ「そう」

ともり「私、そんなに甘いもの好きじゃないんですよね。生クリームとか、お腹いっぱい食べられないですもん」

スタッフ「まあ、無理にとは言わないけれど」

ともり「もしかして用意しちゃいました？」

スタッフ「えっ……う、ううん。いらないって聞いていたから」

ともり「スタッフさんたちで食べてください。私は気持ちだけで十分です」ｽﾀｯ

スタッフ「……」

ともり「行ってきます。最高のイベントにしてみせますよ」ﾆｺｯ

スタッフ「行ってらっしゃい」ﾌﾌｯ
0069名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:14:33.36ID:QXwTq9J9
＊

　イベント後

せつ菜「うぐっ……と、ともりさぁん……」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

ともり「うわっ！？　せつ菜ちゃん、どうしたのその顔」

せつ菜「最高すぎてぇ……涙が」ｸﾞｽｯ

ともり「女子としてヤバい顔してるよ？　ほら、鏡」ｽｯ

せつ菜「きゃあっ！？」ﾋﾞｸｯ

ともり「ハンカチ、いる？」

せつ菜「いります」ﾁｰﾝ！

せつ菜「んぐっ、はぁはぁ……」

ともり「あ……返さなくていいからね。記念にあげる」

せつ菜「洗って返します」

ともり「いらないよ」

せつ菜「で、でも！　私一人にプレゼントなんて、他の方が聞いたら怒るのでは？」

ともり「プレゼントじゃないから大丈夫」

せつ菜「そうですか……」
0070名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:15:06.74ID:QXwTq9J9
ともり「私、ちゃんと笑えてたかな？」

せつ菜「はい。とっても素敵な笑顔でした。見ているみなさんも楽しそうで……」

ともり「そう。ならいいんだ」ﾌﾌｯ

せつ菜「……」

ともり「あ、私この後スタッフさんたちと打ち上げがあるから……一人で帰れるよね？」

せつ菜「当然です。子ども扱いはやめてください」

ともり「ご飯、これで適当に食べてきて」ｽｯ

せつ菜「いらないです。自分で出せますから」

ともり「まあまあそう言わずに。来てくれたことへのお礼だと思ってさ」ｽｯ

せつ菜「……」

ともり「今日はありがとう。客席でせつ菜ちゃんが見ていてくれていたから頑張れたんだよ」

せつ菜「……はい」ｷｭｯ

ともり「じゃ、またね！　気をつけて帰……うぉおっ！？」ｶﾞｯ

ともり「危ねぇ！　誰だマイクスタンド倒しといたやつ！？　私か！」

せつ菜「あ、あはは」

ともり「打ち上げの時間まで少ししかない……急がないと」ﾀｯﾀｯ

せつ菜「……」
0071名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:16:04.62ID:QXwTq9J9
＊

　イベント会場　外

せつ菜「はぁ……」

「ん？　せつ菜じゃない。どうしたの？」

せつ菜「あ、善子さん。こんなところで会うなんて」

善子「涙の跡がすごいわ。何かあった？」

せつ菜「そ、そんなことないです」ｺﾞｼｺﾞｼ

善子「……」

せつ菜「もしかして、善子さんも見に来てくれたんですか」

善子「ええ、まあ」

せつ菜「遠くからわざわざありがとうございます」ﾍﾟｺﾘ

善子「小林が仕事で来られなくなっちゃってね。チケットがもったいないから代わりに来たのよ」

せつ菜「そうだったんですか」

善子「今日のともり、何だか寂しそうだったわよね」

せつ菜「！！　やっぱり……」

善子「私もハタチになるときは寂しいものなのかしら」

せつ菜「……」

善子「なんて、こんなこと言ったら失礼よね。ともりはとっても輝いていたわ」
0072名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:16:40.75ID:QXwTq9J9
せつ菜「誰かを探しているようにも見えました」

善子「そう？」

せつ菜「私の気のせいかもしれませんけど」

善子「知り合いが来てたのかしら」

せつ菜「あるいはその逆か……」

善子「ねぇ、せっかくだから一緒にご飯食べに行きましょうよ。感想とか、早く誰かと話したくて仕方ないの」

せつ菜「えっ？　私とですか？」

善子「他に誰がいんのよ。周りみんな大人の人ばっかりで私たちみたいな子少なかったじゃない」

せつ菜「そうでしたっけ」

善子「何よ、せつ菜もいたのよね？　まさか居眠りでもしてたの？」

せつ菜「いえ、そんなことは」

善子「それとも、先客がいるのかしら？　それなら無理にとは言わないわ」

せつ菜「そういうわけでは……」

善子「この辺初めてで詳しくないのよ。このままだとコンビニで買って帰りの電車で食べることになりそうだわ」

せつ菜「分かりました。善子さんのお口に合うか分かりませんけど、おすすめのお店があります」

善子「やったわ♪　ちょうどラーメンが食べたかったのよねぇ」

せつ菜「んん、どうしてラーメン屋さんって分かったんですか」

善子「何となくよ。食べたかったから」

せつ菜「……」

善子「あ、別にラーメンじゃなくてもいいわ。せつ菜は何が食べたいの？」

せつ菜「ラーメンです。イベントの後は、いつもラーメン……」ｼｭﾝ
0073名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:17:25.76ID:QXwTq9J9
＊

　麺屋『星空家』

店員「いらっしゃいませー！　お一人ですか？」

善子「二人よ」

店員「おや……？」

せつ菜「な、何でしょう」

店員「失礼、知り合いによく似てまして」

せつ菜「……」

善子「それで、席は……」ｷｮﾛｷｮﾛ

店員「ええと、こちらにお名前を書いていただいて少々お待ちを」ｽｯ

せつ菜「……」ｶｷｶｷ

善子「中川？」

せつ菜「えと、ラーメン屋なので何となく」

善子「それ、ラーメン屋の名前じゃなくて芸人の名前よ」

せつ菜「ラーメン屋っぽいのでいいんです」

善子「ふぅん」
0074名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:17:53.87ID:QXwTq9J9
せつ菜「善子さんは、こういうとき本名を書くことに抵抗はないんですか」

善子「ないわね。どうせ仮の名だし」

せつ菜「本名なのに仮の名とは？」

善子「話すと長くなるからいいわよ。それに、変に偽名なんか使うとまるでやましいことでもあるみたいじゃない」

せつ菜「……」

善子「あるの？」

せつ菜「別に……」ｹｼｹｼ

善子「何で書き直す！？」

せつ菜「……」ｶｷｶｷ

善子「小林って」

せつ菜「何となく思いついたので」

善子「えーと、やましいことがあるのね。詳しくは聞かないけど」

せつ菜「そ、そんなこと言ってません」

善子「……」

せつ菜「ないですよ。本当に」

善子「分かったわ。小林さん」

せつ菜「……」

店員「えーと、二名様でお待ちの小林様ー」

善子「はい」ﾉｼ

店員「こちらのお席へどうぞー」

善子「どうも」

せつ菜「……」

善子「何ボーッとしてるのよ。呼ばれたわよ小林さん」

せつ菜「あ、はい」ｽﾀｯ
0075名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:18:42.09ID:QXwTq9J9
＊

店員「当店のメニューについてはご存知でしょうか？」

善子「何か変わった仕組みなの？」

店員「初見の方には玉ねぎとニラのどちらかを食べていただいたおります」

善子「えっ、なぜその二択……？」

店員「自信作なもので」

善子「んーと、じゃあ一つずつください」

店員「かしこまりました」

せつ菜「じゃあ、私は醤油ラーメンでお願いします」

店員「玉ねぎ、ニラ、醤油ですね。他にご注文は？」ｶｷｶｷ

善子「あっ、そうだったわね。せつ菜は初見じゃないのよね」

せつ菜「ライスと半チャーハン、それから餃子を二皿」

善子「あ、すみません。玉ねぎとニラはどちらか一つでいいです」

店員「ライスと半チャーハン、餃子をそれぞれ二人前ずつ」ｶｷｶｷ

善子「一人前ずつよ」

店員「他にはございますか？」

せつ菜「わかめスープと茶碗蒸し、それと寒天ゼリーを食後に」

店員「わかめスープ、茶碗蒸し、寒天ゼリーを食後……」ｶｷｶｷ

善子「わかめスープと茶碗蒸しは食後じゃなくていいのよ？　分かってるとは思うけど」
0076名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:19:13.36ID:QXwTq9J9
店員「以上でよろしいですか？」

せつ菜「タンメン野菜増し増しで」

善子「まだ頼むの！？」

せつ菜「善子さんは玉ねぎとニラだけで大丈夫ですか？」

善子「えっ、いや……ニラはキャンセル、玉ねぎだけでいいわ」

店員「……？」

善子「えーと」

せつ菜「食べてみて追加するのでもいいと思います。以上で」

店員「かしこまりました」ﾍﾟｺﾘ

善子「……」

せつ菜「ふふ、変わったシステムですよね」

善子「言葉が通じなかっただけのような」

せつ菜「言い忘れましたが、ここは量がかなり多いので初めはハーフにした方がいいですよ」

善子「何で言い忘れたの！？　重要なところよね！？」

せつ菜「え？　聞かれませんでしたので」

善子「えぇ……」

せつ菜「あ、飲み物を頼み忘れました。何か飲みます？」

善子「いいわよ、何か余計なものまで頼まされそうだし」

せつ菜「はぁ」
0077名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:19:46.41ID:QXwTq9J9
＊

せつ菜「はふはふ……」

善子「……」

せつ菜「もぐもぐ……」

善子「……」

せつ菜「ごくんっ」

善子「……」

せつ菜「食べないと麺が伸びちゃいますよ？」

善子「あっ、そ、そうよね」ｽﾞｽﾞｯ

善子「あっつ！！」

せつ菜「熱いもの苦手なんですか？」

善子「冷まして食べるから平気よ」ﾌｰﾌｰ

せつ菜「熱いのダメなのにラーメンはお好きなんですね。変な人……」ﾊﾑｯ

善子「わ、悪かったわねぇ」ﾌｰﾌｰ

せつ菜「もぐもぐ……」

善子「熱っ、これはしばらく冷めそうにないわね」ﾌｰﾌｰ
0078名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:20:17.98ID:QXwTq9J9
＊

せつ菜「ふー♪　満足です」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ

善子「どうして……」

せつ菜「まだ食べ足りないんですか？　そういえば替え玉頼んだんですね」

善子「頼んでない。頼んでないのに最初より麺が増えているような気がする……」ｳﾌﾟｯ

せつ菜「あー、もう麺がすっかり伸びちゃってるじゃないですか。伸びきった麺が好きな人も稀にいますけど」

善子「そ、そうなの。私、実は伸びきった麺が何より大好物で」

せつ菜「変わった趣味してますね。生きづらくないですか？」

善子「そこまで言われるのね……」

せつ菜「仕方ありません。私が半分食べてあげますよ」ｽｯ

善子「いいの？」

せつ菜「ただし、この貸しは高くつきますからね」

善子「うっ……。借りたくない……借りちゃいけない気がする」

せつ菜「はむっ……」
0079名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:21:09.40ID:QXwTq9J9
＊

　外

善子「うぅ……きもちわるい」ﾌﾗﾌﾗ

せつ菜「ごめんなさい。お口に合いませんでしたか」

善子「そうじゃないの、ただ量が多すぎただけよ……」

せつ菜「私が言い忘れなければこんなことには」

善子「次からハーフにするわよ」

せつ菜「具材とスープが半分になっちゃいますけど、麺は同じ量入っているので安心してください」

善子「それハーフの意味ある！？」

せつ菜「お値段もほとんど変わらないので、わざわざ頼むメリットはほぼないと思います」

善子「デカ盛りならデカ盛りって看板にでも書いときなさいよね」

せつ菜「お店の名前、見なかったんですか？」

善子「んん、麺屋『星空家』だったかしら」

せつ菜「『ミルキーウェイ』って読むんですよ」

善子「キラキラネームが過ぎる」

せつ菜「宇宙のような胃袋を持つ人向けのお店です」

善子「持ち合わせてないわね……」
0080名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:21:40.98ID:QXwTq9J9
せつ菜「何かのストレスを発散したいときにはぴったりのお店でしょう？」

善子「食べて発散するタイプの人にはちょうどいいかも」

せつ菜「善子さんは違うんですか？」

善子「違うわよ、見ての通り」

せつ菜「人は見かけによりませんからね」

善子「その言葉そのままお返しするわ」

せつ菜「ともりさんもああ見えてガッツリ食べる方で、いつも体重を気にしているんです」

善子「才能お化けにも弱点はあったか」

せつ菜「大切なのはセルフコントロール、ってどこかの歌で聞きましたよね」

善子「それができないからみんな苦労してるんでしょうに」

せつ菜「ともりさん曰く、次の日までに戻せばセルフコントロールらしいですよ」

善子「食べても吐けばカロリーゼロみたいなこと言わないで」

せつ菜「え？　ともりさんに限ってそんなことは……ないと思いますが」

善子「あっちゃ困るわよ」

せつ菜「……」

善子「ないわよね！？」

せつ菜「たぶん、ないと思います」

善子「何か心配になってきたわ。確かにあそこまでみんなの期待を背負わされたら、ストレスで胃に穴が空きそう……」
0081名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:22:13.88ID:QXwTq9J9
せつ菜「それがブラックホールですか」

善子「違うところに漏れてるじゃない！」

せつ菜「黒と白は常に表裏一体なんですよ善子さん」

善子「えっと……別の場所にホワイトホールがあると？」

せつ菜「はい。それがああいうステージなんじゃないでしょうか」

善子「ん？」

せつ菜「みんなに元気を振りまく、つまりステージとはカロリーを振りまくことと同義です」

善子「異議あり。それならライブの前に食べまくっているはずよ」

せつ菜「異議を却下します」

善子「ぬゎ」

せつ菜「とにかく、ともりさんはすごい人なんです。コンビを組んでいる私が言うんだから間違いありません」

善子「コンビ？　まあ、私と小林も似たようなものか……」

せつ菜「善子さんと小林は……コンビというより主従関係では？」

善子「せつ菜からもそう見えるのね」ﾌﾌｯ

せつ菜「ちょっと羨ましいですよ」

善子「飼われたいの？」

せつ菜「そうは言ってません」

善子「じゃあ、ともりの飼い主になりたいと」

せつ菜「違います！　目と目で通じ合えるような、強い絆で結ばれた関係になりたいんです」
0082名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:22:48.62ID:QXwTq9J9
善子「言うほど私と小林って通じ合ってるかしら？」

せつ菜「息ぴったりですよ。一心同体と言ってもいいかもしれません」

善子「そうかしらね」

せつ菜「ひょっとして心臓を共有していたりしませんか？」

善子「ないわよ」

せつ菜「そうですか。善子さんを消せば小林も消えてくれたり……しませんよね」ﾊｧ

善子「と、ときどき怖いこと言わないでくれる！？」

せつ菜「ほら、ゲームではよくあるでしょう？　ボスが二体いて、同時にとどめを刺さないと復活しちゃうやつです」

善子「あー、ソロプレイヤー殺しね」

せつ菜「この場合はその逆で」

善子「私か小林のどちらかを倒せばいいってことね？」

せつ菜「はい」

善子「だからはいじゃなくて」

せつ菜「ちなみに、ズバリお聞きしちゃいます。どっちを倒すのが楽でしょう？」

善子「えっと……ゲームの話？」

せつ菜「そういう設定だとして」

善子「せつ菜がプレイヤーなら、私じゃない？」

せつ菜「ふむ、意外ですね」

善子「ほら、私とせつ菜ってまあまあ仲いいし……私もこうして丸腰なわけだし？」
0083名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:23:45.46ID:QXwTq9J9
せつ菜「本当に丸腰ですか？　拳銃とか隠し持ってません？」

善子「持ってるわけないでしょう？　銃刀法違反じゃないの」

せつ菜「そうですか。もし私が隠し持っているナイフで善子さんの心臓を突き刺したら……」ｽｯ

善子「」ﾋﾞｸｯ

せつ菜「善子さんは抵抗しそうですね。やめときます」

善子「あ、あの……仮定の話よね？」

せつ菜「もちろんです」

善子「……」

せつ菜「ナイフなんて持ってませんってば！」

善子「ど、どうかしらね……」

せつ菜「疑うんですか。いいですよ、確かめてみます？」

善子「いいわよ、本当に持っていたら怖いし」

せつ菜「信用ないんですね私……」

善子「そういう問題じゃないでしょ？　本人の目の前で殺意を仄めかすようなことを言うからよ」

せつ菜「そんなつもりは毛頭ありませんが……未必の故意ってやつでしょうか」

善子「……」

せつ菜「密室の恋ではありませんよ？」

善子「分かってるわよ」
0084名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:24:22.35ID:QXwTq9J9
せつ菜「まあそれも悪くない気はしますけどね……」ﾌﾌｯ

善子「あんたって子がだんだん分からなくなってきたわ」

せつ菜「そうですか？　私はだんだん善子さんのことが分かってきましたよ」

善子「……」

せつ菜「今の心境を当てて見せましょうか」ｼﾞｯ

善子「っ……」ｺﾞｸﾘ

せつ菜「『あれ……？　この子近くで見るとかわ』」

善子「ないわよ」

せつ菜「がーん！　今のは傷つきました」

善子「はぁ……」
0085名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:25:04.94ID:QXwTq9J9
< りるりる〜♪

せつ菜「おや、電話ですね。失礼します」ｺﾞｿｺﾞｿ

善子「どうぞ」

せつ菜「ともりさんからだ。何の用ですかね」ﾋﾟｯ

せつ菜「はい、もしもし」

ともり『せつ菜ちゃん？　今家にいる？』

せつ菜「いえ。まだ外ですけど」

ともり『そうなんだ。夕飯は食べられた？』

せつ菜「はい。善子さんとご一緒しました」

ともり『善子さんって、善子ちゃんのこと？』

せつ菜「善子さんもイベントに来ていたみたいで、すごく楽しかったと言っていましたよ」

ともり『えっ！？　そうなんだ、気づかなくてごめんなさい……』

善子「いいわよ、どうせ見切れ席だし」

せつ菜「打ち上げ、間に合いましたか？」

ともり『うん。心配してくれてありがと』

善子「打ち上げって近くでやってるのかしら」

せつ菜「どうなんでしょう。関係者以外は知らないはずなので」

ともり『一応ね。ファンの方とかと会わないように、ちょっと離れたところでやってるよ』
0086名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:25:47.60ID:QXwTq9J9
善子「そうよね」ﾌﾌｯ

せつ菜「えっ、もしかして善子さんストーカー……」

善子「そんなわけないでしょ。ただ気になっただけ」

せつ菜「……何でそんなこと気になるんですか？　やっぱりスト」

善子「違うってば。心配しただけよ」

せつ菜「心配なんですか？　どうして？」

善子「『どうして』？　そんなもの、ただ心配だからに決まってるじゃない」

せつ菜「……」ﾋｷ

善子「だから違うっての！　何でそう変に勘繰るのよ。私、そんなにおかしなこと言っているかしら？」

ともり『あのー、何か揉めてる？』

せつ菜「いいですかともりさん、真っ直ぐ家に帰ってはダメです。出来るだけ遠回りして、何ならスタッフさんに泊めてもらってください」

善子「はぁ！？」

せつ菜「何か問題でも？」

ともり『えっと……』

せつ菜「後でかけ直します。いったん切らせてください」ﾋﾟｯ

善子「ちょ……！」

せつ菜「……」ﾌｩ

善子「何なのよ！」

せつ菜「私としたことが、他の人の前でともりさんと通話するなんてうっかりしていました」

善子「……」

せつ菜「すみませんが、今日はこれで帰ります。ありがとうございました」ﾍﾟｺﾘ
0087名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:26:08.29ID:QXwTq9J9
善子「あっそ……」

せつ菜「気を悪くされたら謝ります。できれば、これからも変わらぬお付き合いを……」

善子「誰が、あんたなんかと」ﾌﾝｯ

せつ菜「……」

善子「これ、ラーメン代。美味しかったわ」ﾊﾟｼｯ

せつ菜「いりませんよ。ともりさんからお金は貰っています」

善子「いいから受け取りなさい。いらなければ募金箱にでも突っ込んで」ｸﾞｲｯ

せつ菜「あ……」

善子「さようなら」ｸﾙｯ

ｽﾀｽﾀ

せつ菜「……」
0088名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:26:34.54ID:QXwTq9J9
＊

　せつ菜の部屋

せつ菜「善子さんに悪いことしちゃったな……」

せつ菜「……」ｽｯｽｯ

せつ菜：今日はすみませんでした。善子さんがストーカーなわけないのに、私ったら

せつ菜：でも、ともりさんの身を守るためなんです。分かってください

せつ菜：あの通話を誰かが盗み聞きしていたかもしれませんし、それに

せつ菜：善子さんのこと、私は好きですよ

せつ菜「……」

せつ菜「だから、これからも仲良くしてくださいね？」

せつ菜「じゃないと私……」

せつ菜「……」
0090名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/01(水) 20:39:33.83ID:QXwTq9J9
＊

　深夜

　宝石店　RED GEM WINK

善子『くっ……せつ菜、生きていたのね』

せつ菜『もちろん。私がともりさんを残して死ぬわけないじゃないですか♪』ﾌﾌｯ

ともり『これで二対二ね。いえ……』

小林『ヨハちゃん……私はもうダメみたい』ﾊﾞﾀﾝｯ

善子『小林っ！？』ﾀｯ

ﾊﾟｧﾝｯ！

せつ菜『おっと、動かないでくださいよ……』

善子『そんな、小林……しっかりして！』

ともり『せつ菜ちゃん。小林は私が』ｼﾞｬｷｯ

せつ菜『はい。では私は善子さんを』ｼﾞｬｷｯ

善子『あんた達っ……！？』

次回、『時空探偵ヨハネ　紅の瞳』

第5884話『二つの心臓』
0093名無しで叶える物語(SIM)
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2020/01/01(水) 21:00:48.40ID:zzSTdudt
しうまいがせつ菜ちゃん呼びさせてるからそれが流行ってるけどともりるはどのメディアでもほぼせつ菜は呼び捨てなんだよなぁ
0094名無しで叶える物語(SB-iPhone)
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2020/01/02(木) 01:49:25.68ID:LPj6OyDY
こばりるスレ建ててるやつとか全員愛され小林厨だからともりるのこと全然知らないのは当たり前だろ
0102名無しで叶える物語(SB-iPhone)
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2020/01/03(金) 10:30:14.83ID:Nvo/QbEm
小林に彼氏おるの知ってから一気に減ったのほんと草生えた
これからが勝負って所のともりるの足引っ張るのマジでやめてくれ
0106名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:16:19.69ID:ralD0KMN
＊

前回の！

小林『ふぅー、もう食べられない』ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ

店員『お会計、五千と七百円になります』

小林『りるペイで』ｽｯ

ﾘﾙﾝｯ♪

小林『ちっ……、ついに電子マネーまであいつの声とは』

店員『そういえば小林さん。今日、小林さんという方は三組目なんですよ』

小林『えっ？　そ、そうなんですか』

店員『午前中に一人、つい先ほど二人、そして今、あなたです』

小林『……』

店員『ありがとうございました。外は寒いのでお気をつけて……』

小林『は、はぁ』

ｶﾞﾗｶﾞﾗ　ｽﾄﾝｯ

小林『小林なんて名字、いくらでもいると思うけどな……』
0107名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:17:24.30ID:ralD0KMN
＊

　一月一日　朝

　小林のマンション　リビング

小林「んふ……♡」ﾑﾆｬﾑﾆｬ

ｻﾞｰ　ｶﾁｬｶﾁｬ　ｻﾞｻﾞｰ……

善子「ふわぁ……よく寝たわ」ｽﾀｽﾀ

善子「ん？　キッチンに誰か……」


　キッチン

ｻﾞｰ

ともり「ふんふーん♪」ｶﾁｬｶﾁｬ

善子「あっ、そうだったわね。ともりが泊まりに来ていたんだったわ」

ともり「あ、善子ちゃんおはよう。よく眠れた？」

善子「ええ。洗い物、すっかり忘れていてごめんなさい。食べるだけ食べて、そのまま寝ちゃうなんて」

ともり「いいの。私が好きでやっていることだから」ｶﾁｬｶﾁｬ

善子「そう……」
0108名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:18:12.35ID:ralD0KMN
ともり「それより、美味しかった？　私の手料理」

善子「ええ、あんなに美味しい料理を食べたのは初めてよ。特に肉じゃがは絶品だったわ……」ﾌﾌｯ

ともり「」ﾂﾙｯ

ｶﾞﾁｬﾝ！

善子「わっ、大丈夫！？」

ともり「ど、どどどうしよう！？　お皿割っちゃいました」

善子「大変、怪我は！？」

ともり「私は大丈夫です……」

善子「そう。ならいいわ」ﾎｯ

ともり「ごめんなさい、私ったらまた余計なことを」

善子「大丈夫よ。片付けておくから、ともりは休んでて」

ともり「やります！　自分の後始末くらい、自分で……」

善子「手、怪我したら大変でしょ？　いいから、ともりは休んでて」

ともり「あ……」

善子「私も居候の身よ？　少しくらい働かないとね」

ともり「……」
0109名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:19:01.38ID:ralD0KMN
リビング

ともり「はぁ……」

小林「うへへ……♡」ﾑﾆｬﾑﾆｬ

ともり「いいですね小林は。こうやってバカみたいな顔して寝ている間に、身の回りのことは全部善子ちゃんがやってくれるんですから」

小林「ん……」ｽﾔｧ

ともり「言っておきますが、私は暇じゃないんですよ。忙しい中、わざわざ休みを作って沼津まで来たんですからね」

ともり「そもそも、何で沼津なんかに引っ越したんですか。あのまま子ども部屋おばさんになっていればよかったんですよ」

小林「せつ菜ちゃん……」

ともり「そうすれば、こんなに遠くまで来なくたって……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

小林「せつ菜ちゃん……？」

ともり「せつ菜が何ですか。新年早々、幸せそうな夢ですね」
0110名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:19:53.64ID:ralD0KMN
小林「私じゃないよ……私はともりのこと、そんな風に」

ともり「」ﾋﾞｸｯ

小林「待って、そのナイフ……」

ともり「今、馴れ馴れしく下の名前で呼びませんでした？」ｲﾗｯ

小林「やめて！　私は違う！　いやぁあああ！！？！？」ﾊﾞｻｯ！

ともり「きゃああっ！？」ﾋﾞｸｯ

小林「はぁ、はぁ……！　ゆ、夢か」ｾﾞｪｾﾞｪ

ともり「いきなり大声出さないでくださいよ！」ﾊﾞｼｯ！

小林「あいてっ！？　楠木……」

ともり「おはようございます。楽しそうな夢でしたね」ﾆｺﾆｺ

小林「えっ？　う、うん……」

ともり「どんな夢でしたか？　覚えているうちに詳しく聞かせてください」ﾆｺﾆｺ

小林「えっと……少し前の話なんだけどね。夕飯を食べて、お店の外に出たらせつ菜ちゃんがいて」

ともり「ふむ」
0111名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:20:23.95ID:ralD0KMN
「『小林、あなただったんですね』って……」

小林「ナイフでめった刺しにされる夢を見ました」

ともり「ぎゃはは！　めった刺しって！　せつ菜に何したんですか小林！」ｹﾞﾗｹﾞﾗ

小林「何もしてないよ！　あぁ、怖かった……」ﾌﾞﾙｯ

ともり「酔っ払って手ぇ出したとか？」

小林「バカ、そんなわけないでしょ」

ともり「どうですかねー。小林は酔うと見境なくなるので」ｱﾊﾊ

小林「私がいつ泥酔して我を忘れたって？」

ともり「覚えてないんですか？　これだから小林は……」

善子「ふぅ……。やっと起きたのね小林」

小林「あ、ヨハちゃん」

善子「ともりが朝ごはん作ってくれたみたいよ」

小林「えぇ？　また肉料理か……。これで何食目かな」

ともり「文句があるなら自分で作ればいいじゃないですか」

善子「まあまあ。美味しいんだからいいじゃない。それに、正月といえばお肉でしょ」
0112名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:20:46.23ID:ralD0KMN
小林「肉なんてその辺のスーパーで売ってるじゃんかー」

善子「うーん、それはそうだけど」

ともり「小林は味覚がお子ちゃまランチだから仕方ないですよ。A5ランク黒毛和牛の味も分からないとは」

善子「一頭いくらすんのよ……」

ともり「末端価格ではウン百万円ですかね」

小林「危ないクスリみたいな言い方しないで」

ともり「失礼ですね。金塊とかでも末端価格という言い方はしますよ」

善子「他にも銃とか、密輸品はね……」

小林「……」

ともり「あぁそうですか。とびきり美味しい煮込みハンバーグを作ったんですが誰も食べたくないようですね。一人で食べますよ」ﾌﾟｲｯ
0113名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:21:32.97ID:ralD0KMN
＊

　ダイニング

ともり「はふはふ！　あー美味しいよ、うし太郎！」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

善子「……」

小林「……」

ともり「いらないんですよね？　あっち行っててください」ｼｯｼｯ

善子「いや、その……命への感謝はいいことだとは思うわよ？」

ともり「当然です。三日三晩寝ずに旅をしたかけがえのない親友ですからね」

小林「……」

ともり「私とあの大荷物を載せてここまでのっしのっしと歩いてやって来たんですから」

善子「えっと……トラックか何かで運べばよかったのでは？」

ともり「それはダメです。共に旅をし、困難や苦難を乗り越えて来たからこそ、心の底から命に感謝できるんですよ」

ともり「それなのに、トラックで運ぶぅ？　寝言は寝て言ってください」ﾌﾝｯ

善子「えと……ともりは寝た方がいいわ」

ともり「正確には丸一日と少しですけどね。途中からはスムーズに行けたので予定より早く着きました」

小林「そ、そうなんだすごいね」

善子「ともり、あんたがナンバーワンよ」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

ともり「あっ、また私のこと誤解してますね！？　私だってずいぶん心を痛めたんですから！」

善子「……ま、じゃあその『うし太郎』さんへの感謝を込めていただくとするわ」

小林「そうだね。匂い嗅いでたらお腹空いてきちゃった」

ともり「どうぞ召し上がれ。神に感謝を」
0114名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:22:15.64ID:ralD0KMN
＊

せつ菜「……」

せつ菜「ともりさん、そろそろ沼津に着いた頃でしょうか……」

せつ菜「連絡してみましょう」ｽｯ

ﾌﾟﾙﾙ

せつ菜「……」

せつ菜「出ませんね。まだ着いていないんでしょうか」

せつ菜「それとも、道中で何か……」

せつ菜「……」

せつ菜「いえ、そんなはずありません。『金の子牛』がお供なら、悪い人たちからともりさんを守ってくれるはず」
0115名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:22:47.95ID:ralD0KMN
ﾋﾟｺﾝｯ

せつ菜「！！」ﾊﾞｯ

ともり：せつ菜ちゃん元気ー？

せつ菜「と、とととともりさん！　元気です！　はい！」

ともり：もう少ししたら帰るけど、お土産とか欲しいものあったら言ってね

せつ菜「お土産っ！？　ええと……」

せつ菜：おはようございます。沼津には無事に着きましたか？

ともり：え？　うん。もうすぐ帰るよ

せつ菜「ん？？　三日かけて行ったのに、何もせずまた三日かけて戻ってくるつもりなんでしょうか……」

ともり：お土産は？　遠慮しなくていいからねー

せつ菜「はっ！？　ええと……」

せつ菜：ともりさんが気に入ったものをください。何でも構いません

せつ菜「って、何でもいいはいちばん困るパターンですよね。どうしようかな」

せつ菜：ストラップとか、ボールペンとか、そんな感じのでいいですよ

ともり：ストラップ？　うーん、そのくらいなら作れるかも。じゃ、またね

せつ菜「手作りするんですかね……」

せつ菜：無事に帰ってきてくれたら、それだけで十分です

せつ菜「……」

せつ菜「それだけで十分です。今は」
0116名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:23:53.58ID:ralD0KMN
＊

　沼津

　小林のマンション

ともり「それでは、お世話になりました」

小林「気をつけて帰んなよ」

ともり「言われなくても気をつけます」

善子「えっと、その荷物……全部持って帰るの？」

ともり「はい」

善子「宅急便で送るとかは？」

小林「そうだよ。あ、でもその量なら引っ越し業者を呼んだ方が安いかも……」

善子「ちょっと待って。今調べるから」ｽｯｽｯ

ともり「大丈夫ですよ」

小林「そんな荷物が多いんじゃ電車にも乗れないよ。まさか歩いて帰るとか言わないよね？」

ともり「さすがに走るのは無理ですからね。歩くしかありません」

善子「あった。引っ越し……うわっ！？　年末年始は休みなのね」

小林「私も探してみる。えっと、引っ越し引っ越し……」ｽｯｽｯ
0117名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:24:28.43ID:ralD0KMN
ともり「自分が引っ越したらどうなんですか」

小林「え？」

ともり「何でもありません。それじゃ……」ｽﾞｲｯ

ｽﾞｼｯ　ｽﾞｼｯ……

善子「まさか本当に……」

小林「んなわけないでしょ。きっと下にトラックを呼んであるはずだよ」

善子「そうよね。ともりのことだもの、そのくらいは考えてあるでしょう」ﾌﾌｯ

ﾄﾞｼﾝｯ！

ｶﾞﾗｶﾞﾗｯ！　ｶﾞｯｼｬｰﾝ！！

小林「楠木っ！！？！？」ﾀﾞｯ

善子「階段から落ちたんじゃない！？　ねぇ！！」ﾀﾞｯ
0118名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:25:11.70ID:ralD0KMN
＊

ともり「あいたた……」ﾎﾞﾛｯ

小林「楠木っ！！　大丈夫っ！？」

善子「きゅ、救急車……」ｽｯ

ともり「平気ですって！　荷物の上に落ちたので、ケガはしてません」

小林「バカ！　ともりに何かあったら、私……！」

善子「そうよ！　私たちが悪かったわ、無理やりにでも引き留めていれば……」

ともり「そうですよ！！」ﾊﾞﾝｯ

ともり「何で引き留めてくれなかったんですか！」

小林「え……？」

ともり「だいたい、わざわざ沼津まで来て、たった一日で帰らなきゃならないなんて……そんなのあんまりです！！」

善子「えと、仕事があるんじゃないの？」

ともり「休みましたよ！！　全部！」
0119名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:25:45.44ID:ralD0KMN
「……」

善子「言ってくれればよかったのに」

ともり「言ったら『じゃあゆっくりして行きなよ』って言ってくれましたか！？」

小林「うん」

善子「断る理由もないわよね」

ともり「そんなっ……！」ｸﾞｽｯ

小林「元々そのつもりだったんじゃないの？　じゃなかったら、そんな大荷物いらないでしょ」

善子「本当に世界一周なんてしてるわけないものね……」

ともり「酷すぎます……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

小林「と、とりあえず荷物片付けよっか。こりゃ大変そうだなー」ｶﾁｬｶﾁｬ

善子「ちょっと、ともりを放っておくつもり！？」

小林「楠木はっ……、ヨハちゃんに任せた。よろしく」ｶﾁｬｶﾁｬ

善子「はぁ……？？」

ともり「小林は本当に薄情者ですね……」ｸﾞｽｯ

善子「えと、立てる……？」ｽｯ

ともり「はい……、痛っ！？」ｽﾞｷｯ

善子「うわ、足……」

ともり「だ、大丈夫です。ちょっと挫いただけですから」
0120名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:26:24.97ID:ralD0KMN
善子「……」

ともり「荷物は二人の言う通り、トラックで運ぶことにしますよ……」

善子「ったく、仕方ないわね……掴まって。ほら」ｽｯ

ともり「いいですってば。少し休めば歩けます」

善子「変なとこで意地張ってどうすんの。ほら、早く」ｸﾞｲｯ

ともり「ん……」

善子「ちょっと我慢してなさいよ。それっ！」

ともり「きゃっ！？」

善子「っとと……」ﾌﾗﾌﾗ

ともり「あの、善子ちゃん？　下ろして……」

善子「重すぎて無理ね」ﾊｧ

ともり「何ですって！？　誰が重いんですか！　このくらい余裕でしょう！？」ｹﾞｼｯ

善子「小林ー！　手伝って、ともりを部屋まで運ぶから」

小林「えー？　はいはい……」
0121名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:27:08.34ID:ralD0KMN
ともり「いいですってば！　自分で階段くらい登れます」

善子「いいから、けが人は大人しくしてなさいよ」

小林「そうだよ。無理して仕事に支障でも……」ｽﾀｽﾀ

ﾍﾞﾁｮｯ

小林「うわっ！？　何これ……カバンの中から、んん……？？」

ともり「あ！！！」

善子「生クリーム……？」

ともり「白い小さなカバンは潰さないでって言いませんでしたか！！？」

小林「聞いてないよ！　あと、潰したのは楠木……」

ともり「もういいですから！　お二人は部屋に戻ってください！」ｸﾞｲｯ

善子「えっ、ちょっと……」

小林「楠木っ」
0122名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:27:36.69ID:ralD0KMN
ともり「余計なお世話なんですよ！！　私はもう子どもじゃないんです！　自分の面倒くらい自分で見られるんです！！」

小林「……」

ともり「小林とは違うんです！　私は……」ｸﾞｽｯ

善子「ともりっ……！」ﾀｯ

ｶﾞｼｯ

小林「ヨハちゃん。もういいよ、こんなやつ放っておこう」

善子「はぁ！？　ケガしてんでしょうが！」

小林「子どもじゃないんだからさ。助けて欲しかったら助けてって言うよ」

善子「あんたバカ！？　それとも本当に薄情者なの！？」

小林「子どもじゃないんだって！！　楠木が自分で言ったんだよ」

ともり「そうですよ、私は大人です。救急車だって、引っ越し屋さんだって、必要なら自分で呼べます」

善子「……」

小林「ヨハちゃん行こう。さぁ」ｸﾞｲｯ

善子「あっ、ちょっと……」
0123名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:28:44.17ID:ralD0KMN
＊

ともり「……」ｸﾞｽｯ

ともり「こんなものっ……！！」ﾌﾞﾝｯ

ｸﾞｼｬｯ！

ともり「ケーキなんて大っ嫌い！！」

ともり「小林も！　善子ちゃんも！　みんな嫌い！！」

ともり「誰も私のことなんか分かってくれない！」

ともり「料理を作れば嫌な顔をして！」

ともり「肉が入ってないだのあれこれケチをつけて！」

ともり「何なんですかみんなして！！」

ともり「そんなに私のこと嫌いですか！？　だったらそう言えばいいじゃないですか！」

ともり「私だってねぇ……！　好きでこんなことしてんじゃないんですよ！！」

ともり「誕生日なんて……っ！！」

ともり「こんな世界なんてっっ……！！！」
0124名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:29:23.11ID:ralD0KMN
ｶｯ！

ともり「ふふ……！！」

ともり「そうですよ、私は天才なんです。何だってできるんですよ……！」

ｺﾞｺﾞｺﾞ……

ともり「こんな世界、簡単になかったことにできるんですからねぇ！！」

ともり「さぁ！　死にたくなかったら命乞いでもしてみろってんですよ！」

ともり「その無力な体で！　『助けて』って……！！」

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞ……

ｼｭﾊﾞｯ！！

「まったく、私がいないと本当にダメですねあなたは」
0126名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:31:04.12ID:ralD0KMN
＊

　宝石店　RED GEM WINK

善子『待って！　二人の目的は何！？　私たちを殺すことなの！？』

ともり『邪魔をする者には容赦しませんよ。それが私たちのやり方です』

小林『私は死んでもいいから……ヨハちゃんは、ヨハちゃんだけはどうか』ｶﾞｸｶﾞｸ

ともり『うるさいですね……。まだ生きていたんですか』

ﾊﾟｧﾝｯ！

せつ菜『ともりさんっ！？』

善子『小林っ！？』

小林『』ｶﾞｸｯ

ともり『私たちの目的は……伝説のジュエル、レッドジェムウィンクを手に入れること』

ともり『善子さん、大人しく差し出してくれますか。嫌と言うならあなたを殺してから自分で探しますが……』

善子『分かったわ。渡せばいいんでしょう……』ｽｯ

ともり『最初から素直に私の言うことを聞けばよかったんですよ。そうすればこんなふうに無駄に命を捨てることもなかった』ｸﾞｲｯ

小林『』ｺﾞﾛｯ

せつ菜『っ……』

善子『ふんっ！』ｸﾞｻｯ

ｻﾞｸｻﾞｸｯ　ﾎﾞﾄｯ！
0127名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 13:31:31.00ID:ralD0KMN
せつ菜『きゃああっ！？　何してるんですか！』

善子『ふぅ、ふぅ……。ヨハネの左目、これがレッドジェムウィンクよ』ﾎﾞﾀﾎﾞﾀ

ともり『なるほど。これが伝説の』ﾆﾔﾘ

せつ菜『善子さん、血が……！』

善子『くっ……！　行きなさいよ、これが目当てだったんでしょう……』ﾌﾗｯ

せつ菜『善子さん！』

善子『小林……ごめんなさい、約束を守れなくて』ﾌﾗﾌﾗ

善子『あの本物の悪魔にこれを渡すことになるなんてね……』ﾌﾗｯ

ﾄﾞｻｯ

せつ菜『善子さんっ！？　しっかり！』

ともり『見て、せつ菜。この透き通った輝きを。これから私は神になるの……』ﾌﾌｯ


次回、『時空探偵ヨハネ　紅の瞳』

第666話『天上の輝き、そして』
0129名無しで叶える物語(茸)
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2020/01/03(金) 15:03:56.75ID:ylor+Rj1
次回、『朝鮮人桜内梨子』

第666話『殺人犯桜内梨子、セブンイレブン東日本橋一丁目店の一家を自殺に追い込む』
0131名無しで叶える物語(ネオジパング)
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2020/01/03(金) 21:30:18.52ID:HOHI6EYy
＊

ともり「その声は……せつ菜っ？」

せつ菜「はい。呼ばれたので来ちゃいました」ｴﾍﾍ

ともり「ど、どうしてここに！？　あと今の聞いてた！？」

せつ菜「え？」

ともり「あ、お芝居の練習だから！　今のはそういう役で……」

せつ菜「何言ってるんですか。ともりさんが呼んだんでしょう？　『助けて』って」

ともり「よ、呼んでない！　あれは私に命乞いしろって意味で……」

せつ菜「はいはい。見た感じ、階段から落ちたんですね。気をつけてくださいよ」

ともり「落ちてないし！　そういうシーンがあるの！」

せつ菜「分かりましたって。足、大丈夫ですか？」

ともり「ん、これもこういう演技……」

せつ菜「はぁ……」

ともり「嘘です。落ちました」

せつ菜「これだけの荷物、一人で持って降りようとしたんですか。数回にわけて運ぶという発想は？」
0132名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:30:50.63ID:ralD0KMN
＊

ともり「その声は……せつ菜っ？」

せつ菜「はい。呼ばれたので来ちゃいました」ｴﾍﾍ

ともり「ど、どうしてここに！？　あと今の聞いてた！？」

せつ菜「え？」

ともり「あ、お芝居の練習だから！　今のはそういう役で……」

せつ菜「何言ってるんですか。ともりさんが呼んだんでしょう？　『助けて』って」

ともり「よ、呼んでない！　あれは私に命乞いしろって意味で……」

せつ菜「はいはい。見た感じ、階段から落ちたんですね。気をつけてくださいよ」

ともり「落ちてないし！　そういうシーンがあるの！」

せつ菜「分かりましたって。足、大丈夫ですか？」

ともり「ん、これもこういう演技……」

せつ菜「はぁ……」

ともり「嘘です。落ちました」

せつ菜「これだけの荷物、一人で持って降りようとしたんですか。数回にわけて運ぶという発想は？」
0133名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:31:22.91ID:ralD0KMN
ともり「えっと……自分の限界に挑戦してみたくて」

せつ菜「……」

ともり「私もちょっと意地になってたというか、その……」

ともり「たった一泊でこんなに持ってきたのは間違いだったよ。それは認める」

せつ菜「そうですか。意地でも認めないんですね」

ともり「それ以外に何を認めろと」

せつ菜「ともりさんが訳の分からないことを言い出すのはいつものことだからよしとしても」

ともり「酷い！」

せつ菜「金の子牛はどこです？　姿が見えませんが……」ｷｮﾛｷｮﾛ

ともり「あー、うし太郎ちゃんね。えっと」

せつ菜「うし太郎？」

ともり「うん。可愛いでしょ。最初は全然いうこと聞いてくれなかったんだけど、旅をするうちに心が通じ合ったのかな？」

ともり「最後は進んで鍋の材料に……じゃなかった、ええとね」
0134名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:31:50.13ID:ralD0KMN
せつ菜「……まさか」

ともり「よ、よかったらせつ菜ちゃんも食べる？　美味しいよ」

せつ菜「ともりさん、自分で言ってませんでした？　借りてきた牛だから無事に返さないとって」

ともり「あー、えっと……そうでしたっけ？」

せつ菜「何やってるんですか！！？」

ともり「善子ちゃんにお肉が入ってないって言われちゃったから、仕方なく……」

せつ菜「善子さんに言われたんですか？」

ともり「えっと……うん。言われた」

せつ菜「酷すぎます！　上にいるんですよね？　私っ……！！」ﾀﾞｯ

ﾀｯﾀｯ

ともり「嘘は言ってないよね？」ｱﾊﾊ
0135名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:32:33.95ID:ralD0KMN
＊

せつ菜「善子さん！　善子さーん！」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ！

せつ菜「出てきてくださいよ！」ﾋﾟﾝﾎﾟﾝﾋﾟﾝﾎﾟﾝﾋﾟﾝﾎﾟﾝ

「だーっ！　うるさいわよ楠木！！」ｶﾞﾁｬｯ！

せつ菜「きゃっ！？」ﾋﾞｸｯ

善子「あ、あれ？　せつ菜じゃない。どうしたのよ」

せつ菜「どうしたもこうしたもありません！　あの牛、どうして鍋になんてしたんですか！」

善子「えぇ！？　私に言われても……」

せつ菜「ともりさんから聞きましたよ！　善子さんの指示で！　大好きなうし太郎を屠殺させられたと！」

善子「……」

せつ菜「あなたそれでも人間ですか！？　よくもそんな酷いことを……！」ｸﾞｽｯ

善子「と、とりあえず落ち着きましょう。ねぇ？」

せつ菜「酷いです、あんまりですよぅ……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

善子「うぇっ！？　な、泣かないでよ。私が気絶している間に全部終わってたんだもの、止めるにも止めようがないでしょ」
0136名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/03(金) 21:33:06.87ID:ralD0KMN
せつ菜「開き直るつもりですか！？　あなたは最低です！！」ﾌﾞﾝｯ！

善子「ちょぉーっ！？　危ない！」ｽｶｯ

ﾊﾞﾁｰﾝ！

善子「何でっ！？　確かに避けたはず……！」ﾋﾘﾋﾘ

せつ菜「返してくださいよ！　ともりさんのかけがえのない友人を！」

せつ菜「じゃなかった、友牛を！」ﾌﾞﾝｯ！

善子「うわぁぁーーっ！！？」

「ストップ！　ストーーップ！！」

せつ菜「ひゃいっ！？」ﾋﾟﾀｯ

小林「どうしたの！？　って、せつ菜ちゃんがなぜここに……」

せつ菜「それはいったん置いときましょう」

善子「何でよ。答えてあげればいいじゃない」

せつ菜「んん、そうですかね……。まあ、いきなり押しかけておいて質問に答えないというのも失礼かもしれません」

小林「えっと……楠木の迎え？　じゃないよね」

せつ菜「助けを呼ぶ声が聞こえたんです」

善子「ん？　たまたま近くまで来てたの？」

せつ菜「はい」

善子「……」

小林「そ、そうなんだ。偶然だねぇ」
0137名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:34:59.96ID:ralD0KMN
せつ菜「それより、答えてください。うし太郎の屠殺は善子さんの指示ですか！？」

善子「だから違うってば！」

せつ菜「小林に聞いているんです！」

小林「えっと……せめて『さん』をつけようか？　呼び捨て、よくないと思う」

善子「あと、私だと決めつけた聞き方もやめてもらえると助かるわ」

せつ菜「そ、そうですよね！　私としたことが、感情的になってしまいました」

せつ菜「それでは改めてお聞きします。うし太郎さんの屠殺は、善子さんの指示ではないんですね？」

善子「ええ、そうよ」

せつ菜「小林に聞いているんです」

小林「私だよ！　私にさんをつけようよ！」

せつ菜「え……？　小林が指示したんですか」

善子「せつ菜、勘違いよ。その頃小林は寝ていたもの」

せつ菜「でも今、自白しましたよ」

小林「誤解だよ！　楠木が自らやったんだよ！」

小林「そうだよね、ヨハちゃん」

善子「ええ。私も自分の目と耳を疑ったわ……」

せつ菜「つまり、ともりさんが何らかの理由で気が狂ってしまい、親友を手にかけたと」

小林「んん、そこまで酷い言い方はしてないけど……だいたい合ってるかな」
0138名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:35:26.07ID:ralD0KMN
せつ菜「どうなんですか？」

善子「気が狂ったというか、元々というか……」

せつ菜「酷い！　よくもそんなこと平然と言えますね」

善子「待って、違うの。せつ菜も心当たりがあるでしょう？　ともりは常人と思考回路が違うみたいで……」

せつ菜「確かにともりさんはときどき……いえ、頻繁に突拍子もないことを言い始めますが」

善子「そう。それよ」

せつ菜「それはともりさんが天才だからです。私たち凡人には理解できないような発想をすることだってあるでしょう」

善子「うん。まさにそれだわ」

せつ菜「だとしても……いくら何でも信じられません」

小林「どうする？　ヨハちゃん、お風呂のオブジェでも見せる？」

善子「バカ言わないで。せつ菜の気が狂ったらあんたのせいよ」

せつ菜「はて、どうしたものでしょうか……」

善子「とりあえず、ともりに話を聞くのがいちばんじゃない？」

小林「そうそう。それがいいと思う」

せつ菜「仕方ありません、そうしましょう」
0139名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:35:58.23ID:ralD0KMN
＊

ともり「……」

ともり「あの、誰か助けてくれませんかー……」

ともり「私、歩けないんですけど……」

ﾀｯﾀｯ

「ともりさん！」

ともり「あ、せつ菜ちゃん。どうだった？」

せつ菜「二人とも酷いんです。まるでともりさんがサイコパスみたいに言うんですよ」

ともり「それは酷いね。私も傷つくよ……」ｼｭﾝ

せつ菜「ほら！　ともりさん泣いてるじゃないですか！　謝ってください！」

小林「サイコパスは言い過ぎだよ。いくら何でもそんな酷いこと言うわけないでしょ」

善子「……言ったわ」

せつ菜「本当に言ったんですか！？　土下座して謝ってください！　ともりさん号泣してるじゃないですか！」

ともり「えっ？　あぁ……」

せつ菜「ほら！　あんなに悲しそう！」

ともり「うぇーん！　悲しいよう、悲しいよう！」ｸﾞｽｯ
0140名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:36:30.30ID:ralD0KMN
小林「……演技下手すぎない？」

ともり「ちょっ、えっ……今のガチで傷つきました！　声優に向かって何ですかそれ！」

小林「いくら何でもわざとらしすぎるよ……」

ともり「……」ｸﾞｽｯ

善子「と、ともり？」

ともり「小林より仕事たくさん貰ってますけど！？　そりゃあ芸歴は浅いし？　まだCDだって出してませんけど！」

小林「あ、ヨハちゃんから聞いたよ。ソロデビュー決まったんだってね」

ともり「んなっ……！？」

小林「おめでとう。元々歌が上手かったし、楠木なら順当かなって感じだけど」

ともり「そ、そそそそんなこと言って！」

小林「あと、これも言い忘れてたかな……」


『ハッピーバースデー、楠木！』
0143名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:37:51.82ID:ralD0KMN
＊

　小林のマンション

　リビング

ともり「……」ﾕﾗｯﾕﾗｯ

小林「……」ｸｲｯｸｲｯ

せつ菜「！！　本当に美味しいですねこれ！」ﾊﾟｧｱｱ

善子「でしょう！？　ともり、本当に料理上手よね！」

せつ菜「と、当然です。ともりさんはすごいんですから」

善子「せつ菜にもあの肉じゃがを食べさせたかったわ……」ﾌﾌｯ

小林「そういえば、アレは肉じゃがってことで決着したんだね？」

ともり「ええ。もう宇宙の摂理は書き換えられました」

せつ菜「すごいです！　さすがともりさん！」ｷﾗｷﾗ

ともり「ふん」ﾄﾞﾔｧ

小林「っ……」ｲﾗｯ

善子「ほら、ビーフシチューもあるわよ」

せつ菜「ありがとうございます。実は朝ごはんを食べ損ねてしまったので助かりました」

善子「よかった。あまりにもすごい量を作るもんだから、捨てることになったらどうしようかと思っていたのよ」
0144名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/03(金) 21:38:33.42ID:ralD0KMN
せつ菜「ともりさん、まさか私がここにくることも予想していたんですか……？」

ともり「当然」

小林「その顔やめて。むかつく」

ともり「どの顔ですか？　これ？　それともこれ？？」

小林「一連の変顔をやめろ！」

ともり「酷い……。せつ菜ちゃん、小林がいじめるよー」ｸﾞｽｯ

せつ菜「……！！」ｶﾞﾀｯ

善子「す、座って食べましょう？　ねぇ。小林を殴るのは食べ終えてからでもいいじゃない」

せつ菜「……。食べている最中に人を殴るのはマナー違反ですもんね」ｽﾄﾝｯ

小林「何か私の知ってるマナーと違う」

善子「殴られたくなかったら黙ってなさい」

小林「はい」

せつ菜「わぁ、善子さんって人を脅すのも上手なんですね。尊敬します」

善子「えっ？　脅したのはあんたじゃ……」
0145名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:39:10.98ID:ralD0KMN
ともり「せつ菜ちゃんはちょっぴり天然入ってるから気をつけてねー」ﾕﾗｯﾕﾗｯ

小林「楠木と一緒にいたらダメなタイプじゃんそれ」ｸｲｯｸｲｯ

せつ菜「そんなぁ！？」ｶﾞｰﾝ

善子「小林」

小林「あっ、一緒にいちゃいけないって言ってるわけじゃないよ。ただ……」

ともり「失礼なことを言ったら蹴りますよ小林」

小林「えっと……そのピュアさは罪だよね」ｱﾊﾊ

せつ菜「……」

善子「確かに」ﾌﾌｯ

せつ菜「えっ、待ってください。そんなに褒められると恥ずかしいんですけど……」ｶｧｱｱ

ともり「うんうん、そのピュアさを大切にしてね。小林みたいになったらお終いだよ」

小林「何で私を引き合いに出すの！？」

善子「でも、たまには人を疑った方がいいわよ。特にともりの言うことは何でも正しいなんて思い込んでいるといつか痛い目を見るかも」

せつ菜「あ、脅しのテクニックですね。痛い目を見たくなければ……」ﾌﾌｯ

善子「えっ、んん、そんなとこ」

せつ菜「……」ﾆｺﾆｺ

善子「……」ﾁﾗ

小林「めちゃくちゃやりづらそう……」
0146名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:40:01.34ID:ralD0KMN
ともり「それもこれも私が天使すぎるせいですかねー？　せつ菜ちゃんのピュアさに磨きがかかっていくというか？」

小林「楠木といてそのピュアさを保てることに驚きだよ」

ともり「どういう意味ですかそれ！」ｹﾞｼｯ

小林「ほら！　せつ菜ちゃん、今の見たでしょ。こいつすぐ暴力振るうんだよ」

せつ菜「え？　ごめんなさい、食べるのに夢中で」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

小林「あ、そうですか……」

善子「ふふ、それ食べ終えたら何して遊びましょうか？」

せつ菜「はい！　私、初詣に行きたいです！」

ともり「え……」

小林「楠木はお留守番だね」ｱﾊﾊ

善子「あ、あのー、できれば家の中でできることに……」

せつ菜「どうしてですか？　せっかく来たんですから、ついでに観光させてくださいよ」

ともり「……」

せつ菜「あっ、もしかして小林の引きこもりが善子さんにまで……！」

善子「ともり、足傷めてるじゃない？　だから、その……」

せつ菜「あっ……」

ともり「いいよいいよ、私のことは気にせず行ってきなよ」
0147名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:41:42.34ID:ralD0KMN
せつ菜「あぁっ！？　私ったらごめんなさい！　そんなつもりで言ったんじゃ……！」

ともり「えーと……」

小林「ほら。そこでやりづらく感じるってことは、楠木もこっち側の人間なんだよ」

せつ菜「あっ、ここに神社を作りましょう！　それなら家にいながら初詣できますよ」

善子「何を言い出すのあんたは」

せつ菜「観光名所も作りましょうよ！　ええと、『自堕落な生活を送る平成人の住居』……」

小林「うわっ、楠木節が出た」

ともり「何ですか楠木節って。いい香りしそうですね」

小林「やっぱり楠木の悪影響を受けてるじゃん」

ともり「どこがですか。ここを的確に表していたでしょうに」

せつ菜「そうと決まればホームセンターに買い出しを……」ｽﾀｯ

善子「と、とりあえず食べ終わってからにしたら？」

せつ菜「……食事中に神社の木材を買いに行くのはマナー違反ですよね。反省します」ｽﾄﾝｯ

小林「さ、さっきからマナーの勉強になるなあ……」
0148名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/03(金) 21:42:02.74ID:ralD0KMN
ともり「真面目すぎちゃうのもねー、せつ菜ちゃんのいいところでもあり、悪いところでもあり」

せつ菜「いけませんか……？」

ともり「いやっ、そうじゃないんだけど」

小林「楠木はこっち側なんだよ。認めなよ」

せつ菜「悪いところは直したいので、遠慮なく言ってください」

ともり「う……。せつ菜、君は正しいよ！　私みたいな大人になっちゃダメだぞ！」

善子「認めたわね」

ともり「認めるとか認めないじゃないでしょう、良心の呵責ですよ」

小林「楠木にも良心なんてものがあったか」

ともり「だからどういう意味ですかそれ！」ｹﾞｼｯ

小林「これ！！　せつ菜ちゃん今の！　これ！！」

せつ菜「はい？」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

小林「って見てないし！　もういいよ！」
0150名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/03(金) 21:43:03.52ID:ralD0KMN
＊

　宝石店　RED GEM WINK

ともり『感じる……感じるわ！　体中が闇の魔力で満ちていく！　これが神の力……！！』

善子『あぁ……世界が終わるのね。ついに悪魔の手にアレが渡ってしまった』

せつ菜『ど、どどどどうしましょう！？　善子さん、ともりさんを止めないと』

善子『え……？　あんたたち、アレの魔力が目的だったんじゃないの？』

せつ菜『違いますよ！　転売して一獲千金……あっ！』

せつ菜『ともりさん！　使わずに売ればお金になります！　テレホンカードと同じですよ！』

善子『例えが古いわね……』

ともり『お金？』

せつ菜『そうです！　ともりさんが何より大好きなお金です！』

ともり『そんなもの、神の力の前では無意味！　所詮お金なんて何かを得るための手段でしかないわ！』
0151名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/03(金) 21:43:37.20ID:ralD0KMN
せつ菜『くっ……！　正論すぎて言い返せません』

善子『負けちゃダメよせつ菜！　お金は素晴らしいわ。誰かを自分の言いなりにしたいとき、神の力で従わせるよりも札束でビンタする方が征服欲が満たされるでしょう！？』

せつ菜『そんなこと言われてもやったことないから分かりませんよ！』

善子『ほ、ほら……これ渡すから、とりあえず誰か引っ叩いてみなさい』

せつ菜『……』ﾍﾟﾁｰﾝ

善子『わ、私じゃなくて！』

せつ菜『私の言うことを聞けますか？』ﾍﾟﾁｰﾝ

善子『だから、私じゃなくて……』

せつ菜『聞けますね？？？』ﾍﾟﾁｰﾝ

善子『……はい』

せつ菜『やりました！　ともりさんやりましたよ！』ﾊﾟｧｱｱ


次回、『時空探偵ヨハネ　紅の瞳』

第100万話『神の力　vs.　金の力』
0155名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/04(土) 14:51:53.05ID:WfL3HdJV
どんな話が読みたいか言ってよ
わざわざ読みに来てるってことは全く興味ないわけじゃないんだろうし
それか好きに書いてくれてもいい
0156名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2020/01/04(土) 17:37:06.10ID:c+Q8wspl
今まではともりるがどんな子なのか知らない人が多かったからこばりるが成立してたけど
ANNとかでどんな子なのかわかっちゃったからね

たぶんこばりるネタが流行ることはもうないと思うよ
0157名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/04(土) 17:45:40.58ID:WfL3HdJV
>>156
ありがとう
個人的には寂しいけど理解した
専スレがない時点でお察しかもね

だいたい書きたいことは書いちゃったし
正直ネタ切れなので終わりにします

読んでくれた方と>>1に感謝
0158名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/04(土) 18:25:49.97ID:DBJ2ODoi
何処を着地点にしてたのか気になる
単純に短編を続ける感じだったんだろうか
0159名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/04(土) 19:25:05.66ID:WfL3HdJV
あんまり考えずに勢いで書いて設定は後付けしてた
時系列が前後したりシーン丸ごと飛んでるのはそのせい
読みづらくて申し訳ない


書きたかったのは誕生日後からバースデーライブまでの数日間（ほぼ書けてない）

実年齢としては大人でもともりるとしてはまだその覚悟が固まらず、
バースデーライブでファンにお祝いしてもらうのが怖かった
（だからイベントではケーキを断っている）
（階段から落ちたあと持参したケーキを壁に叩きつけているのは大人になることへの拒絶）

イベント前日、いちばんの理解者であるせつ菜ちゃんに相談する
↓
せつ菜ちゃんは持ち前のピュアさからともりるを勇気づけようとするが、
ともりるはそんなせつ菜ちゃんを失望させるのが怖くて本音を言えない
（小林の「そのピュアさは罪」発言）
↓
イベント失敗の危機

という流れ

書けなかった理由は
・仮にもお祝いSSなのにイベントが失敗しかける描写ってどうなの？
・ともりるとせつ菜ちゃんの対立描写が必要、これも読んでて楽しくはない


着地点としては

ともりる「私はせつ菜ちゃんが思うほど完璧でも天才でもない」
せつ菜「本気で完璧だなんて思ってない、そういうところも含めて好き」
↓
こばりるよしせつで手作りケーキを囲んで
ハッピーバースデーEND

こんな感じ
0160名無しで叶える物語(はんぺん)
垢版 |
2020/01/04(土) 19:29:03.54ID:i5xiKcFF
なるほどー
こばりるっていうかせつりるが軸だったか
更新楽しみにしてたから残念だけど考えがわかってよかったよ
0161名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/04(土) 19:37:05.62ID:WfL3HdJV
要約すると
こばよしの信頼関係に憧れるせつ菜ちゃんがともりるとケンカして仲直りして真の理解者になる話

上手い人なら20〜30レスくらいでまとめられると思う
0163名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/04(土) 21:09:01.41ID:WfL3HdJV
＊

スタッフ「『時空探偵ヨハネ　紅の瞳』これにてクランクアップでーす！　お疲れ様でした！」

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

せつ菜「つ、疲れました……」ｸﾀｸﾀ

善子「頑張ったわね。初めてにしては上出来だったと思うわ」

せつ菜「そうですかね？　みなさんの足を引っ張らないように必死で」

善子「何言ってるの。ともりのほっぺたを札束で全力ビンタするシーンなんて鳥肌ものだったわよ」

せつ菜「ともりさん本気で涙目になってましたもんね。後で謝っておかないと」

善子「そういえばともりは……？」ｷｮﾛｷｮﾛ

ともり「私の言うことが聞けないんですか！？　このっ！」ﾍﾟﾁｰﾝﾍﾟﾁｰﾝ！

小林「痛っ、地味に痛いからやめろ！」ﾋﾘﾋﾘ

せつ菜「ふふ、楽しそうですね」

善子「仲良いわよね」ｸｽｸｽ
0164名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/04(土) 21:09:50.32ID:WfL3HdJV
せつ菜「善子さんには本当、何から何までお世話になっちゃいました。ありがとうございます」ﾍﾟｺﾘ

善子「そんなことないわよ。私、ただ文句言ってるだけだったし……」

せつ菜「善子さんのおかげで、ともりさんと以前より深く分かり合えた気がします」

善子「そう？　それならよかったわ」

せつ菜「ともりさんとケンカしたとき、善子さんが引き留めてくれなかったら私……」

善子「あんなの引き留めてって言ってるのと同じよ？　意外と意地っ張りなんだからせつ菜は」

せつ菜「うぅ……気をつけます」

善子「それと、ずっと気になっていたんだけど」

せつ菜「何でしょう？」

善子「せつ菜の方が私より先輩よね？」

せつ菜「え？」

善子「私が一年生でせつ菜は二年生……」

善子「これだと、他の人が見たら逆だと思うんじゃないかしら」

せつ菜「そんなに子どもっぽく見えますか！？」ｶﾞｰﾝ

善子「あっ、違う！　違うわ。そうじゃなくて……」

せつ菜「自分でも気にしてるんですから、あんまり言わないでください……」ﾎﾞｿﾎﾞｿ
0165名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/04(土) 21:10:25.13ID:WfL3HdJV
善子「怒ってない？」

せつ菜「何をですか？」

善子「その、私すごく偉そうに……先輩ヅラしちゃったって言うか？」

善子「だから、一応謝っておくわ。それだけよ」ﾌﾟｲｯ

せつ菜「え……」

善子「何？　許さないつもり？」

せつ菜「善子さんってそういう気遣いができる人だったんですね。驚きました」

善子「んなっ！？　どういう意味よ！」

せつ菜「善子さんって三年生にもタメ口じゃないですか。いつもすごいなーって思ってました」

善子「んん、確かに」

せつ菜「ともりさんにもタメ口だし、ともりって呼び捨てにするし……」

せつ菜「ちょっと羨ましいなって思ったり、思わなかったりして」ｴﾍﾍ
0166名無しで叶える物語(悠久の苑)
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2020/01/04(土) 21:11:13.03ID:WfL3HdJV
善子「せつ菜も呼び捨てにしてみたら？　さっき、前より深く理解しあえたって言ってたじゃない」

せつ菜「そうですね！　やってみます」

ともり「せつ菜ちゃん見て！　小林を完全に服従させたよ」ﾆｺﾆｺ

小林「……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

ともり「ほら小林、挨拶して」ﾍﾟﾁｰﾝ！

小林「はい、ともり様……って誰が楠木の下僕なんかに！　この悪魔め！」

ともり「何ですってぇ！？」ﾍﾟﾁｰﾝﾍﾟﾁｰﾝ！

せつ菜「ともり！！！」

ともり「ひゃいっ！？」

せつ菜「暴力はよくないです、暴力は」

ともり「暴力じゃないですよね？　小林」

小林「これが暴力じゃなかったら何なんだろうね」ﾋﾘﾋﾘ

せつ菜「って、私もともりさんのこと思いっきり引っ叩いちゃったんですけど……」

善子「それはそういう演技でしょ」

せつ菜「そうです。私は演技でしたけど、ともりさ……ともりは暴力じゃないですか！！」

ともり「あ、あれ？　いつの間にかせつ菜に呼び捨てにされてる……？」
0167名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/04(土) 21:12:08.82ID:WfL3HdJV
せつ菜「とにかく、暴力は禁止です！」

ともり「で、でも小林だよ？」

せつ菜「小林でもダメです」

ともり「本気でやってるわけじゃないよ？　小林だって喜んでるし」

小林「喜んでないわ」

せつ菜「いいですか、これは私からの命令ですよ」

ともり「っ……」

せつ菜「いえ、お願いです。暴力はやめましょう？」

ともり「……わ、分かったよ」ﾎﾟｲ

小林「……」ｷｬｯﾁ

せつ菜「分かっていただけたようで何よりです」ﾌﾌｯ

小林「せつ菜ちゃん、ありがとう……！」ｸﾞｽｯ

善子「やればできるじゃない」ｸｽｸｽ
0168名無しで叶える物語(悠久の苑)
垢版 |
2020/01/04(土) 21:12:31.17ID:WfL3HdJV
ともり「ちょっと善子ちゃん？　せつ菜に何か吹き込んだわね？」

善子「えーと、親しみを込めて呼び捨てにしてみるってのはどう？　って提案しただけよ」

せつ菜「はい。だからこれからはともりさ……ともりのことは呼び捨てにします」

ともり「そういうこと言うなら私もせつ菜ちゃ……せつ菜のこと呼び捨てにするけど？」

せつ菜「はい！　それでいきましょう」ｷﾗｷﾗ

善子「ともりはせつ菜のこと、ちょくちょく呼び捨てで呼んでたような……？」

せつ菜「善子さん、私は先輩ですよ」

善子「……」

せつ菜「そうですよね？」

善子「はい」

小林「ピュアなせつ菜ちゃんを返して……」


終
0171名無しで叶える物語(もこりん)
垢版 |
2020/01/05(日) 22:04:29.60ID:ZXSFvWzg
ともり「小林ー！うどん食べに行きましょう」

小林「うん、いいよ」

ともり「ふぅ店に着きましたね、小林は何にしますか？」

小林「うーん私はナマショウユウドンにする」

ともり「まったく小林は胸も薄ければ知識も薄いですね」

ともり「それはキジョウユウドンと読むんですよ」

小林「ふーんそうなんだ、知らなかった」

店員「ご注文はお決まりでしょうか」

小林「えーとキジョウユウドン下さい」

店員「はいナマショウユウドンですね」

小林「ちょっとあんた！またからかおうと思って嘘教えたわね！」

ともり「・・・」
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