(梨子ちゃんになってしまった)
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「梨子ちゃん!おはよー!!」
(今日も千歌ちゃんは元気に明るく笑う)
(いつもの部屋のいつもの時間、窓から午後の西陽が射し込み、真白い壁を眩しく照らす)
「今日もあっついねー!梨子ちゃん!!」
(空調のよく効いた部屋の中はバス停から海沿いの国道を20分ほど歩いてきた私にはかなり涼しく感じられるが)
(輝く小さな太陽のような千歌ちゃんの笑顔に釣られ、私はついつい、そうだね、暑いね、と彼女に話を合わせてしまう)
「あー!梨子ちゃんまたそうやって軽く流すんだから!!傷つくんだからね?そういうの!!」
(ぷぅ、とむくれてみせる千歌ちゃん)
(こんな時、「私」はなんと答えてあげたら良いのだろう)
(そう言われても私には、ははっ、と乾いた笑いを返すことしかできない) 「ね、ね、学校はどう?なにか変わったこととかあった?」
(目を輝かせ、身を乗り出さんばかりに千歌ちゃんの問い掛け、これもいつもの質問だ)
「やだな千歌ちゃん、まだ夏休みだよ」
(反応に困った私はいつもの通り、必要な事だけを彼女に伝える)
「え?あぁ、そっかー。いやぁー、こんなところにズッといると、時間とか曜日の間隔がおかしくなっちゃってさー。もうすっかりボケ老人だよ、徘徊老人だよ。おいバァさん、飯はまだですかねェ?」
(おどける千歌ちゃん)
(無理もないな、と私は思う)
(千歌ちゃんがこの部屋に入ってからもう大分経つし、私がここへ来るときはいつも学校の制服だからだ、彼女が勘違いしているのも無理はない)
「徘徊しちゃうの?」
(私が尋ね返したのは単純に、その部分を面白いと感じたからだ)
(他意のない言葉ではあったのだが、明るく輝いていた千歌ちゃんの顔はたちまちに、夕立のように曇ってしまう) 「…早く退院したいな…」
(寂しげに千歌ちゃんは窓の外を見る)
「私ね、ボケたおじいちゃんやおばあちゃんが徘徊しちゃうの、なんだかわかる気がするんだ」
「ズッとこの部屋の中にいるとね」
「変化が無さすぎて、自分だけが取り残されているうちに、みんな変わって、いなくなっちゃうんじゃないか、って不安で不安で仕方なくなるの」
「外に出て、なんでも良いから情報を得たい。変わったことが起きていないか、自分の目で確認したい。そう思って、じっとしていられなくなるんじゃないか、って」
(千歌ちゃんはずっと窓の外を見ている)
(「私」は何を言ってあげたら良いのだろう。何と答えてあげたら良いのだろう)
「大丈夫だよ」
(ようやく出てきた言葉はそれだが、何が大丈夫だと言うのだろう) 「あ〜あ!何がダメなのかなあ?何が問題なのかあ?こんなに元気なのに」
「ね、梨子ちゃん。私…退院したらさ、前に言ってたスクールアイドルのハナシ、本格的にやってみようと思うんだ!一生懸命練習して、梨子ちゃんのピアノに負けない歌を歌えるようになる!!」
「梨子ちゃんのコンテストが終わる頃には私きっと退院できるから、次は二人で一緒に頑張ろう?ね、いいよね?梨子ちゃん!!」
(千歌ちゃんが私の手を握る)
(訴えるような千歌ちゃんの目)
(私は内心の動揺を悟られぬよう、微笑みを作り手を握り返す) 「楽しみだね!あ〜あ!早く練習したいのになあ。このままじゃ私、あっという間にボケおばあちゃんになっちゃうよ…」
(楽しい未来への期待と現在の自分への不安)
(眼を潤ませた泣き笑い)
(最近の千歌ちゃんは弱気な言葉が目に見えて増えた)
(やりたいことも始められず、やりたいことに何も出来ず、ベッドの上で暮らす日々)
(明るく活発な千歌ちゃんの心は憂鬱の虫の喰い跡が増え、次第に脆くなってきている) (確かに千歌ちゃんは元気だ、元気過ぎる病人だ)
(私たちの住む港町の外れ、丘の上に建つ学校、そこからさらに奥に進んだ、バス停もない、人も来ない、町から隔絶されたような病院)
(病室に居るのが不思議なくらい、千歌ちゃんは相変わらず、今日も元気だ)
(季節は既に秋近く、とっくに夏休みは終わっているし)
(私がここに来るのはいつも学校の帰りなんだけど、そんなことはたいした問題じゃない)
(元気過ぎる千歌ちゃんの声は病室で話すには少し大きすぎるけど、そんなこともたいした問題じゃない)
(では、何が問題なのだろう)
(それは…私が梨子ちゃんじゃないということだ) (静岡県のはずれ、寂れた漁港)
(変わることない寂れた漁港、私たちには変わらぬ故郷)
(私と千歌ちゃんはこの町に育った)
(いつも明るく活発な千歌ちゃんと、私は会ってすぐに仲良しになった)
(毎日一緒に遊んで、学校に行って、悪戯をして叱られて、喧嘩をして、仲直りして、喧嘩して、仲直りして、喧嘩して、仲直りして)
(何回も何回も喧嘩したけど、それでも必ず仲直りした)
(嬉しいことも、楽しいことも、辛いことも、悲しいことも、ずっと一緒に経験してきた)
(いつでも二人で一緒だった) (梨子ちゃんがこの町に来たのは高校2年の春のこと、そう、今年の春のこと)
(家の前の浜辺で、4月の海に飛び込もうとしていた)
(梨子ちゃんを千歌ちゃんが慌ててとめた事が出会い、だったそうだ)
(遠い東京という都会から来たという転校生)
(好奇心旺盛な千歌ちゃんはすぐに梨子ちゃんに夢中になった)
「梨子ちゃん、東京ではなんでタピオカが流行るの?」
「梨子ちゃん、飛行機はなんで空を飛べるの?」
「梨子ちゃん、無重力状態って本当に体が浮くの?」
「梨子ちゃん、梨子ちゃん、梨子ちゃん」
(物静かで控えめな梨子ちゃんはいつも、困ったように微笑んでいた) 「ごめんね、千歌ちゃんはいつもこうだから」
(私は千歌ちゃんの替わりに謝っていたが、彼女は困ったように微笑んでいた)
「梨子ちゃん、梨子ちゃんって変わった名前だね!!」
(千歌ちゃんがそう言った時も梨子ちゃんはちょっとだけ眉をしかめて、でも、困ったように微笑んでいた)
(梨子ちゃんのお父さんは大きな印刷関連機器の会社の偉い人で)
(社名にちなんで娘に「梨子」と名前をつけた、のだそうだ)
「かっこいいね!!」
(目を輝かせる千歌ちゃんに)
「そうかな、あんまり名前、誉められたことないから…」
(言葉少なに返す彼女は、やっぱり困ったように微笑んでいた) (梨子ちゃんは病気がちで、学校をよく休んでいた)
(そんな日には千歌ちゃんは決まって、学校帰りにお見舞いに行った)
(私たちの学校の丘のバス停から、歩いてだいたい20分、町のはずれのまたはずれ、そこだけ世界から切り取られた白い病院)
(梨子ちゃんはその一室で、いつも窓から外を見ていた)
「梨子ちゃん、今日、学校でね!」
「梨子ちゃん、あの先生ったらね!」
「梨子ちゃん!」
「梨子ちゃん!」
(病室で話すには大きすぎる声の千歌ちゃんの話を、梨子ちゃんはいつも、そうね、そうなの、と軽く流して聴いている)
(私は二人の話す姿を、この病室でいつも見ていた) (梨子ちゃんがピアノが弾けると知った時も、千歌ちゃんはすぐに飛びついた)
「そんな、弾ける、なんてものじゃないよ」
(謙遜する梨子ちゃんには聴く耳を持たず)
(どこから仕入れてきたのか、梨子ちゃんが東京では天才美少女ピアニストと呼ばれていたこと)
(今は病気でピアノが弾けないこと)
(病気の療養のため空気の綺麗なこの町へ来たことをあっという間に突き止めてきた)
(千歌ちゃんは目を輝かせ「すごいね!すごいね!すごいね!」と、梨子ちゃんを憧れの目で見た) 捜査情報漏洩 収賄容疑で巡査長を再逮捕 京都府警(産経新聞) - Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191005-00000571-san-soci
京都府警の警察官による捜査情報の漏洩(ろうえい)事件で、捜査情報を教える見返りに知人から現金を受け取ったとして、京都府警は5日、
収賄容疑で府警東山署刑事課の巡査長、池田大助被告(40)=地方公務員法(守秘義務)違反罪で起訴=を、また、現金を渡したとして、
贈賄容疑で会社社長、高橋俊行被告(49)=同法違反(唆し)罪で起訴=をそれぞれ再逮捕した。 「実はね!私もね、私もね、スクールアイドルになりたいんだ!ずっと、やってみたいと思ってたんだ!」
「ね、この出会いって奇跡だよ、絶対、運命の出会いだよ!梨子ちゃん、私と組もう?私が歌って、梨子ちゃんがピアノを弾くの!二人で曲を作ったり、二人で歌詞を書いたりして、それってすごく素敵じゃない?」
「ね、やろう!絶対やろう!約束だよ、絶対、約束!!」
(強引な千歌ちゃんを無下にも出来ず)
(梨子ちゃんは今は病気の治療があるから、私の病気が治ったらね?と、いつも困って答えていた)
「いつ?ね、いつごろ治る?」
(子どもみたいな無茶を言う千歌ちゃんに)
「夏休み終わった頃にね」
(いつも彼女は答えていた) (梨子ちゃんが東京に帰ったのは夏休みももう終わりになる頃)
(梨子ちゃんのいる東京の空を、千歌ちゃんはいつまでも見つめていた)
(梨子ちゃんは東京へ還った)
(そして)
(二度と戻ってこなかった) 「梨子ちゃん!梨子ちゃん!」
(千歌ちゃんは今日も元気に明るく笑う)
(千歌ちゃんの目の前にいる私は、彼女には誰に見えているのだろう)
(千歌ちゃんの中では目の前の私は、いったいどこにいるのだろう)
(この頃の私には千歌ちゃんの無邪気な笑顔が、ひどく無機質な、無表情なものに見え始めている)
(彼女に私はどう見えているのだろう) 「あー!梨子ちゃん、またちゃんと聴いてなかったでしょー?」
(ぷぅ、とむくれてみせる千歌ちゃん)
(確かに聴いてはいなかったが)
(それは聴きたくなくて聴かなかったんじゃない)
(この頃の私には千歌ちゃんの言葉が、意味のある言葉として伝わらないんだ)
(彼女の発する言葉はわかる、言葉の意味はわかるんだ)
(だけど、千歌ちゃんが何を言いたいのか、私に何を伝えたいのか、それが私にはわかっていない)
「もー!傷つくんだからね、そういうの。寂しい年寄りをひとりぼっちにしないでおくれよ…」
(そんな風におどけられても)
(私には、そんな年じゃないでしょ、同い年だよ。そう答えて、困ったように微笑むのが精一杯だ)
(千歌ちゃんは誰と話しているのだろう)
(ひとりぼっちの千歌ちゃんの中では、ここには何人の人がいるのだろう)
(千歌ちゃんの世界の中で、いま、私はどこにいるのか。私には千歌ちゃんがもうわからない) 「ね。」
(千歌ちゃんが身を乗り出して迫る)
「梨子ちゃん、今夜、空いてる?今夜、抜け出すことできる?」
(ずいずいと千歌ちゃんの笑顔が迫る)
(目をきらきらと輝かせ、これから起きる「素敵なこと」への、期待で頭がいっぱいの、有無を言わせぬいつもの顔だ)
「ヨシ!決まりだからね、今夜!絶対だよ?約束だよ!あー!楽しみだなぁ!!」
(千歌ちゃんは窓の外へと目を遣っている)
(彼女の決めた「素敵なこと」、彼女にしかわからない「素敵なこと」)
(言い出したら聞かない強引な千歌ちゃん、子供の頃から何度も見てきた、いつもの明るく元気な千歌ちゃん)
(彼女は窓の外に彼女にしか見えない未来を見ている)
(私はなんと答えてあげたら良いのだろう)
(子供の頃のあの日のように、千歌ちゃんと同じ未来を見て、目を輝かせてあげればいいのか)
(私にはもう見えてないのに)
(私はただ)
(困ったように、微笑むだけだ) (どこに行くの?と問う私に「いいから!いいから!」と笑う千歌ちゃん)
(深夜の国道、千歌ちゃんの漕ぐ私の自転車、二人乗り)
(病院を抜け出してきた千歌ちゃんは、元気過ぎる脚で自転車を漕ぐ)
(生暖かい夜の潮風、頬を撫でるのを振り切って進む)
(ふん、ふん、とペダルを踏む千歌ちゃん、私の自転車、二人乗り)
(丘の坂道進まぬ自転車、元気な病人が力を込める)
「ついたー!!」
(誇らしげに手を広げる彼女)
(深夜の学校、音楽室、窓から射し込む月灯り)
(青白く浮かんだグランドピアノ、期待できらきら輝く目) 「考えてみたら私さー、梨子ちゃんのピアノ、ちゃんと聴かせてもらったこと、一度もなかったな、て思って」
「ね、お願い!コンテスト出る前に。東京にいっちゃう前に1回だけ、私にピアノ聴かせてよ。ちょっとだけでいいから…ね?」
(上目遣いの千歌ちゃんの目、彼女は誰を見ているのだろう)
(私が弾くの?私がピアノ…弾かなきゃいけないの?)
「ね、約束、覚えてるよね!夏休み終わったら二人で曲作って、二人で一緒に歌おうって!私ね、梨子ちゃんがコンテストで弾く曲…梨子ちゃんが優勝する曲で歌いたい!梨子ちゃんが東京から帰ってくるまでに、曲に歌詞を付けておくから!」
「ね、そしたら二人で歌えるでしょ?だから…お願い?」
(千歌ちゃんはじっと私を見ている、有無を言わせぬいつもの顔)
(人の話を聴かない千歌ちゃん、逃げるように泳がせた目にピアノが映り、背中にゾクリと悪寒が走る)
(私が弾くの?無理だよ、弾けるわけないよ)
(怖々と伸ばした私の指が、震えながら鍵盤に触れる)
ピン
(たった一音、ピアノの硬質な高い音、夜の校舎の静寂に消える) 「?」
(鍵盤に指を置いた姿勢のそのまま、動きの止まったままの私を、不思議そうな目で千歌ちゃんが見ている)
(沈黙)
(バク、バク、と鼓動が速まり、食道が意図せずに痙攣を起こす)
おうっえ。
(胃から一気にせりあがったものが私の口中いっぱいに広がり、栗鼠のように頬袋を膨らませる)
(慌てて両手で口を押さえるも間に合わず、私の意志に従わない身体、ビチャビチャビチャと足元に私の吐いた胃液が拡がる)
(立ちのぼる不快な異臭)
(臭い)
(自分の吐いたものでも胃液は臭いんだ) 「梨子ちゃん!?え!?え!?」
(動揺した千歌ちゃんが信じられないものを見る目で私を見ている)
(駄目、見ないで、私を見ないで)
(失望の目で私を見ないで)
(千歌ちゃんの目を意識したとたん、私の内臓はぐるぐると鳴り)
(お腹を押さえてしゃがみ込むと同時に唸りを上げて動く大腸)
ブボッブビッブビバッ
(気体と固体と液体の、同時に身体から漏れ出ていく音)
(モコモコモコと、下着とお尻の間が膨らむ)
(数秒遅れて溢れ出てきた、じんわりと温かい水たまりに私の脚が浸かっていき、ピチャ、ピチャリと水音を立てる) あ、あ、あ
(解放の悦びと羞恥心、人間としての尊厳が粉々に打ち砕かれた快感)
あぁーっ!!!
(恍惚の中で絶頂を迎えた私の身体が、びくんびくんと幾度も跳ねる)
「梨子…ちゃん?ね、どうしちゃったの…?大丈夫なの…?」
(あまりのことに千歌ちゃんは言葉を失い、涙を浮かべてガタガタと震えている)
(駄目、失望しないで、私に失望しないで) 「知らなかった!!私、梨子ちゃんの病気がこんなに酷かったなんて知らなかったの!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
(千歌ちゃんは何度も何度も頭を下げる)
(駄目、そんな事を言わないで、優しい言葉をかけないで、憐れみの目で私を見ないで)
(震える指が鍵盤に伸びる)
ダン
(僅かに触れた指先が、重く低い音を響かせる)
ざわ、ざわ、ざわ
(波打つように指先から、音の残滓が這い昇ってくる
むっげぇええええええええええええ!!!!!
(数千の虫が肌歩き回るような劇烈な痒み)
(私は首筋を掻きむしり、掻きむしり、指に血が滲んでも飽きたらずガリガリガリと掻きむしり、それでも止まらずに転げ回る) あがっ!あっ!あがっ!!
(足元で無様に転がる私を、千歌ちゃんが激しく揺さぶっている)
「もういい!もういいよ梨子ちゃん!私が悪かったの!私が悪かったから!!もうやめよう?ね、お願い、もうやめようよ!!」
(駄目、期待、期待に応えなきゃ)
(私は期待に応えナきゃ)
(コンテストニ出るの、優勝スルの、千歌ちゃんに聴かせルの、ぴあの)
(曲…)
(力の入らない脚でふらふらと、私は漆黒のピアノへと向かう)
(私は誰なんだろう、私は何を考えているんだろう、私は何をやっているんだろう)
(千歌ちゃん、梨子ちゃん、私は誰なの?) (ずるりと滑る間隔のあと、私の身体から重力が消える)
(自分の吐瀉物と排泄物に足を取られた私の身体は宙に浮かんだ勢いのまま、鍵盤の海へ飛び込んでいく)
ダララポン
(不協和音と同時に火花、衝撃が脳を噴火させる)
(激痛と悔しさと情けなさと、ただ、かなしいという感情)
「梨子ちゃん!ひ、額が割れてる!!血が出てるよ!梨子ちゃん!!」
(千歌ちゃんの声が遠く聴こえる)
(私はどこにいるんだろう)
(私はどうすれば良かったのかな) 「…落ち着いた?」
(千歌ちゃんが私に声をかける)
(深夜の浜辺、体育座りで並んだ二人、波音は静かに繰り返している)
「…ごめんね…。怒ってるよね…?」
(顔を上げずに千歌ちゃんが言う、俯き肩を震わせている)
(私はなんと答えてあげたら良いのだろう、相変わらず言葉は出てこない)
「また…。また…駄目なの?」
(涙声)
(しゃくりあげながら千歌ちゃんが言う)
「ね、また、駄目なの?ねえ、やり直しても、もう、無理なの?」
(え)
(思わず顔を上げた私と、千歌ちゃんの目が正面に向き合う) 「梨子ちゃんなんでしょ!?」
(千歌ちゃんが叫ぶ)
「私、わかってるよ?梨子ちゃんなんだよね?私、戻ってきてくれたんだってすぐにわかった!私との約束を守るために、戻ってきてくれたんだってすぐにわかった!やり直せるんだって思ってたのに!!!」
(千歌ちゃんの目は絶望に染まり、身体は怒りに震えている)
(ああ、そうか)
(私はもうどこにもいないんだ)
(千歌ちゃんの中に私はもう、この町のどこにもいないんだ)
(私のどこにもいない世界で、千歌ちゃんはずっと生きていたんだ) 怒ってるよ
(自然と言葉が口を衝いた)
あなたはわかっているの?弾けないのに、弾きたくても弾けなくなって、弾きたくなくなって、弾けなくなって
それでも期待の目を向けられて、弾けないピアノの前に座らされる私の気持ちが
小さい頃ちょっとだけみんなより出来た、それだけなのに、お父さんもお母さんも学校の先生もピアノの先生も、みんな、みんな、勝手にその気になって思い込んで、無理な期待を私に被せて
私は天才なんかじゃない、ちょっとやってすぐにわかった
私に才能なんてなかった、なんとかみんなの期待に応えるため、みんなを失望させないため、それだけのことで精一杯、すぐに才能の限界がきた
みんなを裏切りたくなくて、期待の目に応えたくて、出来ないとわかっているのにずっと、ずっと、必死で無駄な努力をして
それでも応えられなくて、失望の目を向けられる、コンテストで入賞を逃すたび向けられる憐れみの視線が、「次は頑張ろう」という言葉が、どれだけ私を傷つけてきたかあなたにわかる? 名前だってそう、梨子?なにそれ、人の名前なの?
会社の名前にちなんだ…って
私知ってた、お父さんは本当は男の子が欲しかったんだって
女の子の私が生まれた時に、ああ、コレはナシだって笑って、ナシ子、梨子って名付けたって
私はピアノで注目を浴びることしかお父さんにとって価値のない子なんだって
私は全然正常なのに、ピアノが弾けなくなった途端に病気扱いされて、こんな田舎に送られて、精神病院に閉じ込められて
悔しくて、情けなくて、ただ、かなしくて ピアノに触っただけで嘔吐して大小便漏らして自分のうんことおしっこの中を転げ回る私を見るのは楽しかった?
自分のうんこを踏んづけて無様に転んで頭を割った私はどんな気持ちだったと思う?
死にたかったわ、だから死んだの
この浜辺から、内浦の海に飛び込んで、泳げないから溺れて死んだの
あなたのお母さんは私が東京に帰って交通事故で死んだってあなたに伝えたみたいだけど、あなた以外はみんな知ってる
私は東京に帰らなかった、内浦の海で自殺したの、悔しくて情けなくて悲しくて、あなたを恨みながらここで死んだの
死体はすぐに見つかったそうよ、げろとうんことおしっこまみれで、それは酷いものだったらしいわ。
(ああ)
(私は何を言っているんだろう)
(私はいったい誰なんだろう) (千歌ちゃんは震えながら私を見ている)
(千歌ちゃん、私は梨子ちゃんじゃないよ、梨子ちゃんも私じゃない)
(梨子ちゃんはもうどこにもいない、私ももうどこにもいない)
(だから)
(一緒にいこう)
(千歌ちゃんも一緒にいこうよ)
(私たちはずっと一緒だった、小さい頃から一緒だった)
(私は絶対千歌ちゃんを離さないから)
(私たちはずっと一緒だから)
(だから)
(お願い千歌ちゃん、一緒にいこう)
(もう、これでおしまいにしよう)
(私たちの世界をおしまいにしよう) (腕の中で千歌ちゃんが頷く)
「うん…一緒に行く。」
「私たちずっと一緒だよ。」
「ね。」
「梨子ちゃん。」
潮騒。 「…娘さんは身体のダメージもありますが…精神的な負担も相当なものと思います。立て続けに二人もお友達を失っては。しばらくは…その、お友達の事は伏せておいた方が」
「その。お友達…残念、でした」
「いえ…娘のこと、ありがとうございました、千歌ちゃんの事は私からうまく話しておきます。」
(お医者様の先生と、お母さんが何か話している)
(病院、白い壁、白い天井、窓から午後の西陽が射し込む)
(私は死ななかった、死ねなかった)
(内浦の海で育った私の身体が、水の中で死ぬことを許さなかった)
(絶対に離さないから、ずっと一緒だから)
(そう誓った手はあっさりとほどけ、大切なものはすり抜けていった)
(私が大切に抱きしめたのは、結局自分の命だった) (頭が重くて、沈みそうで、思わず身体を持ち上げる)
(お母さんが驚いた顔で私を見ている)
「聴いていたの?そう…千歌ちゃん、亡くなったの」
「でも、あなたはそうして生きられた…辛いと思うけど、あなたは千歌ちゃんの分まで、しっかり生きていかなきゃ駄目、気をしっかり持つのよ」
(うん、わかってる)
(わかってるよ)
(大丈夫だよ)
(私、わかってるから)
(大丈夫だよ)
(ね)
(千歌ちゃん) 「曜…?」
「動揺されているようです、今は少し、そっとしておいてあげた方が」
(お医者様の先生に促され、千歌ちゃんは病室を出ていく)
(振り返り、振り返り、心配そうに私を見ている)
(心配しなくても大丈夫だよ)
(私、ちゃんとわかってるから)
(戻ってきてくれたんだよね?)
(これからやり直せるんだよね?)
(私)
(すぐにわかったよ)
(ね)
(千歌ちゃん) (この前のカボスのせいでまた脱糞スキーかと思ってしまった) 脱糞スキーではないが俺の書く梨子ちゃんはそういえばいつもゲロを吐いている気がしてきた
許してくれとは言わない 千歌「よーちゃん!おはよー!」
曜「おはよーソロー!!」ブゥリッ
曜「あ…」
千歌「やだもうよーちゃんたら!!」
曜「あはは、ごめんごめん!YOYO!あーさから全開♪」ブゥッブリブリブリッ
千歌「…よーちゃん…」
曜「ち、ちが…!なんかお腹の調子悪くて!その…!!」ブビィッブビィッガンバブビィッ
曜「……!!」ブゥンブゥーンブゥンブゥーンパパラパパラパパラ
千歌「よー、…ちゃん…」グスッグスッグスッ
曜「あ…あ…あ…」ニネンブゥリデェスカ 前略
突然「へ」が止まらなくなった渡辺曜であった
曜「どうしよう…」ブルブルブリビィッ
曜「…ッ!!」
曜「このままじゃ千歌ちゃんに嫌われちゃう…」ブッビビッビッビィー
曜「ッ!!」
曜「(『あの人』に相談するしかないか…)」ブービビービビィ♪
らぶらいブゥッ!サンシャイン!! ダイヤさん「…それで曜さん、この黒澤ダイヤに折り入ってご相談とは?」
曜「ダイヤさん…じ、実はその、私…」
ダイヤさん「なんなりと」
ダイヤさん「(あぁ!いつも元気で活発な曜さんがこんなにしょんぼりとしたお顔なさって、私を頼ってくださっている!!この私を!曜さんが!!)」
曜「…さっきから「へ」がとまらないんです…」ブリブリブリィッ
ダイヤさん「…は?」 ダイヤさん「…曜さん」
ダイヤさん「私がその類いの冗談を好まないことはご存知かと思いますが…?」
曜「ち、ちが…ッ!」ビブリオッ
曜「クッ…!」
曜「私、本気で悩んで…こんなこと、他の人には相談できないし、ダイヤさんならきっと真面目に聴いてくれると思って…!!」
曜「………」ブゥッ!デスワ
ダイヤさん「……今のは?」
曜「あ…いやその」 ダイヤさん「曜さん、たしかに私はaqoursの中でも曜さんとはあまり親しくありませんし…鞠莉さんや果南さんのように気さくに接することもできていないと思います」
ダイヤさん「ですが…この私になにかおっしゃりたいこと、不満に思うことがおありなのでしたら、はっきり言って頂きたいですわ」
曜「そんな…私、そんなつもりじゃ…」ブゥッ!ブゥーッ!デスワ
曜「!?」ブゥッ!ブゥッ!ブゥーッ!デスワ
ダイヤさん「…成る程、曜さんのおっしゃりたいことはよくわかりました」
ダイヤさん「お前はぶっぶーの専門家だから、「へ」の相談でも受けていろと…「へ」で会話するのがお似合いだと…」
ダイヤ「…生まれ落ちて齢18、この黒澤ダイヤ、これ程までの侮辱を受けたのは初めてでsyわ」
曜「待ってください!本当に違うんです!コレは別に他意があってやってる訳では…」
ブッブッブー♪ブッブッブブー
ブッブッブー♪ブッブッブブゥー
ブッブッブゥー!ブッブッブブゥー!!
ダイヤさん「このガキャァアー!!」プチーン 曜「(どうしよう…ダイヤさんが一番まともに相談に乗ってくれそうだったのに…)」
曜「(…千歌ちゃんけっこう容赦ないから、今頃きっと「へこきむし」とかあだ名つけて面白おかしく梨子ちゃんに言いふらしてるよね…)」
曜「…………」ブリブリブリィッ
曜「(…私の高校生活が終了してしまう…)」ブウッウ
果南「おーい誰?廊下でさっきからとんでもない勢いで「へ」してるのー」
鞠莉「ソーベリーバッドマナー…スメルぷんぷんブッブファイヤーデース♪」
曜「!!!!!」ブリブリブリィッ
曜「(一番会いたくなかった奴らが来やがった!!)」ブッブゥゥウ! 果南「あっはっはっはっはっはっは!で?で?ダイヤキレちゃったの?ぶっぶーですわ馬鹿にすんなって?あはははははは!見たかった!超見たかったそれ!!」
曜「笑いすぎだよ!!私にとっては笑い事じゃないんだから!!」 ブリブリブリィッ
曜「クッ…!」ブブブブゥ
鞠莉「………」
パーン!
曜「!?」ブゥッ
果南「鞠莉!なにしてんの!?」
鞠莉「…とりあえず百万円でひっぱたいてみまシタ」
曜「…?」ブゥッ
果南「…??」
鞠莉「ンー、カネの力で解決できないなら、マリーには対処インポッシブルデース♪ソーリー☆」
曜「(……駄目だコイツ!!)」ブブブブゥ! 果南「ちょっと鞠莉…いくらなんでも今のは酷いよ?」
曜「(果南ちゃん…)」ブリブリブリィッ!
鞠莉「オーでは果南ならいったい、この事態をどう解決するとデェスかァ?」
果南「んー…」
曜「……」ブブブゥッ!
果南「ワ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ッ !!」
曜「!?」ブゥッ!
鞠莉「!?」
果南「あはは、びっくりさせれば「へ」も止まるかと思ったんだけど…駄目?」
鞠莉「(み、耳が…鼓膜が…)」キーン
曜「(何も聴こえないであります…)」ブリブリブリッ
果南「あ、二人とも鼓膜破れちゃってるから聴こえないか…まあこれで「へ」の音も聴こえないだろうし…うん、解決?」
鞠莉「(ファッデム…)」キーン
曜「(ダメだ…コイツら全然ダメだ…)」ブブブゥッ 曜「(三年生はダメだ…そうなると…)」ブビビビィッ
曜「クッ!!」ブゥッ!
曜「(あ、何故か都合よくルビィちゃんが一人で歩いてる…)」ブビィッ!
ルビィ「?」
ルビィ「いま誰かに呼ばれたような…」
曜「……」ブビィッ!
ルビィ「??」
ルビィ「あ、曜さん!いまルビィのこと呼びましたか?」
曜「い、いやあのね?実はわt『ブビィッ!!』し」
曜「…!!」ブビィッ!ブビィッ!
ルビィ「…「へ」で人のことを呼ばないでください」
曜「ち、ちが!ルb『ブビィッ!』ちゃ」
ルビィ「…ルビィ怒りますよ」
曜「……」ガンバブビィッ!
ルビィ「サイテー」
曜「あ!待って!!ルb『ブビィッ!』ちゃ……!!」
曜「あ…あ…」フンバブビィッ! 曜「もう嫌だ…帰ろう…」ブビビビィッ
善子「バス!バス!バス!良かった!まだいる!!」
プシュー ブロロロロロロロ
善子「ギリセーフ!ラッキー!あー、あぶなかったぁ〜!」
善子「…?」
善子「あれ、バス動いてない…」
ブロロロロロロロロロロロロロ
善子「??」
曜「………」ブロロロロロロロ
善子「曜!?あんたいったい「へ」で何やって…!?その意図するところがまったくわからないわ!?」
曜「……ッ!!」ダッ ブロロロロロロロ
善子「逃げた!!」
善子「ていうかこのバスいつ動くの!?逆にアンラッキーなんだけど!?」 曜「(どうしよう…闇雲に走ってるうちにこんな山の中に来ちゃった…)」
曜「(ここ…どこ?)」ブビビビィッ!
曜「クッ!!」
曜「(もういっそこのままここで野生のへこきむしとして暮らそうかな…)」 ブビィ↓
ガサガサ ガサガサ
曜「!!」ブゥッ!
曜「何…?熊…!?」ブビッ ブビッ
ガサガサ ガサガサ
ガサガサ ガサガサ
花丸「ずらぁ〜?」 花丸「こんな山の中で思い切り「へ」をこいてる奴がいるからマルてっきりたぬきでもいるのかと思ったずらが…曜さんだったずら?」
曜「……!」ブビビビィッ
花丸「ここは内浦の中でもわりと人跡未踏の山奥ずらが…曜さんはなんでこんなところで1人わびしく「へ」をこいてるずら?」
曜「………」ブビィ↓
花丸「…「へ」で返事をするのは人としてどうかと思うずら」
曜「ご、ごめん…」ブビビビィッ 花丸「なるほど…今朝から突然「へ」が止まらなくなった、と」
曜「………」ブブブブゥ↓
花丸「曜さん、ちょっと服を脱ぐずら」
曜「え!?」ブゥッ!?
花丸「いいから…どうせここにはマルと夕飯のたぬきしかいないずら」
曜「(いつの間にか捕まえて〆てるし…)」ブビィッ
花丸「ふーぅーむ?」
曜「どう…?」ブビッ
花丸「マルチョップ」ドゲシ
曜「!?」ブビィッ! 曜「何するの!?普通に痛いよよ!?」
花丸「「へ」が止まったずら?」
曜「へ?」
曜「………」シーン
曜「…ホントだ…なんで…?」
花丸「屁門を閉じたずら」
曜「屁門??」
花丸「頭頂部にある108の経絡破孔のひとつで、文字通り「へ」をコントロールする破孔ずら。ここを強く刺激されるといまの曜さんのように「へ」が止まらなくなるずら」
曜「経絡破孔って…花丸ちゃんなんでそんなもの知って…?」
花丸「じいちゃんの倉にあった本で前に読んだことがあるずら」
曜「………」
花丸「ちなみにインポを治す破孔にマルがついてたずら」
曜「………!!」 曜「ところで私を脱がせた意味は?」
花丸「無駄に辱しめを与えてみたずら。それより曜さん、最近誰かに頭を刺激されなかったずらか?」
曜「頭…?」
ポワポワポワーン(←想像の音)
???「曜ちゃん肩ガッチガチだよ?女の子なんだから…トレーニングだけじゃなくて身体のケアもちゃんとしなくちゃ、ね?」
曜「あ、いいっ、そこっ、そこっ、アッ」
???「ふふっ!気持ち良さそう…じゃあ今日は大サービスでヘッドスパもしてあげちゃうわ、ほーらぐりぐりぐりー」
曜「アッ!いやっダメッあっ!なんか変な気持ちに…」
曜「ダメぇッ梨子ちゃん!アッー!!」
ポワポワポワーン(←想像の音)
曜「桜…内ィ…ッ!!」ギリリィッ 前略
ついに渡辺曜の経絡破孔を突いた黒幕が判明したのであった
千歌「梨子ちゃん♪梨子ちゃん♪ねえねえ、なんで飛行機は空を飛べるの?鉄の塊が空を飛ぶなんて狂ってるのだ!」
梨子「ふふっ!千歌ちゃんは本当におバカなんだから…じゃあ今日はジェットエンジンの話をしようか!」
ドッドッドッドッドッドッドッドッガラッ!バァン!
千歌「!?」
梨子「!?」
曜「桜…内ィイッッッ!!」ハーッハーッギロッ
千歌「…いいところでへこきむしが帰ってきやがったのだ…チッ」
梨子「へこきむしの渡辺曜ちゃん、血相かえてどうしたのかな?」
曜「クッ…」ギリッ
花丸「笑ってられるのもそこまでずら。桜内、曜さんの変化に気がつかないずらか?」
梨子「?」
曜「………」ニヤリ
梨子「(!!「へ」をして…いない…!!?)」 花丸「桜内梨子!私利私欲にかまけ、門外不出の経絡破孔をこの上なくくだらないことに使ったその罪許し難し…その身を以て償って頂くずら!!」
曜「(インポ治すのに使うのはいいのかなあ…?)」
梨子「国木田花丸…とんだ伏兵がいたものね。まさかこんなド田舎に経絡破孔を知るものがいたとは…!!」
千歌「なんだなんだなんなのだ!!チカのわかんない話で勝手に盛り上がるななのだ!!あと桜内はサラッと内浦をディスるな!!」
曜「大丈夫…千歌ちゃん、すぐに全部終わるから…」ズィ
梨子「く…!!」
花丸「桜内!年貢の納め時ずら!!」
梨子「ふふ…」
曜「!?」
花丸「!?」
梨子「あっはっはっはっは!!!」
千歌「…!?」 梨子「年貢の納め時?私が?ふふっ!曜ちゃんたちはすっかり私に勝てる気でいるつもりのようだけど…!」
梨子「いくら曜ちゃんとはいえそんな、極限まで「へ」をこいて衰弱しきった体で、北斗琉拳をマスターしたこの私に勝てるのかしら?」
花丸「…!!」
梨子「千歌ちゃん、安心して?こんな誰得なバトル展開すぐに全部終わらせて、微エロティックロマンの続きをたっぷ」
曜「マルチョップ」ゴスッ
花丸「………」
千歌「………」
梨子「………」
シ ――――――――― ン
梨子「真剣白刃取り!」パンッ
千歌「遅ッッッせえのだ!!?」 梨子「みみみ見えない!まったく見えない!そんな馬鹿な!!」
千歌「いやそーいう次元じゃねえのだ!戦闘力のレベル差が根本的におかしいのだ!!」
梨子「…!!」
梨子「かくなる上は…!!」
梨子「あっはっはっはっは!取った!どう?曜ちゃん、これ以上私に危害を加えるつもりなら…あなたの大切千歌ちゃんの屁門をぐりぐり刺激しちゃうわよ!?」
千歌「な…!!」
曜「!!」
梨子「ふふっ…ブリブリと「へ」を垂れながら「こんちかー!」と元気いっぱい登場する千歌ちゃんの勇姿をどうしても見たいというならやってあげてもいいけどね…?」
花丸「ひ、卑怯ずら桜内!!」
千歌「そうなのだ!なんかわからんけどチカを巻き込まずにさっさとやられろなのだ!!」
曜「…それはそれで見たい」
千歌「おいこら渡辺ェーッッ!!」 梨子「さあ!どうするの?まさか曜ちゃん、本気で大好きな親友の千歌ちゃんを見捨てる気なの?」
曜「………」
梨子「ふふっ!そうだよね?曜ちゃんが大好きな千歌ちゃんを見捨てるなんて、出来るわけないもんね?」
曜「………」
梨子「曜ちゃん、そこから一歩も動かないでね?曜ちゃんが抵抗さえしなければ千歌ちゃんは無事に帰してあげる…その代わり、そうね…曜ちゃんには私のピアノになってもらおうかな?」
曜「………」
梨子「曜ちゃんが無様に泣きながらどんな音色の「へ」を奏でるか…私、とっても楽しみ!さあ、どの破孔から突いてあげようかな…?」
曜「…ふふっ」
梨子「?」
曜「梨子ちゃん…その体で破孔が突けるの?自分のお腹の音をよ〜く聴いてごらん?」
梨子「んな…?な〜な……」 〜桜内の体内〜
肛門「何用か!!?」
屁「屁です」
肛門「よし通れ!!」
ブッピピピィ〜キュルキュルキュルキュル
ブリュ
肛門「あ」
梨子「あ…あ…」ブリュ ブリュ
千歌「り、梨子、ちゃん…まさか…」
梨子「あぁ〜っ!!」ブリュブリュモコモコモコ
千歌「(知らなかった!梨子ちゃんのトラウマがこんなに酷かったなんてチカ知らなかったのだ!!)」ガタガタガタ 曜「括約筋という破孔を突いた…貴様の肛門はもはや壊れたゴムパッキンに過ぎん!!」
梨子「あ…あ…」キュルキュルキュルキュルブピィ
千歌「さ、サクラウチが…クソモラシになったのだ!!クソモラシ梨子!!東京からきたクソモラシ梨子!!」
花丸「(…この人まじで容赦ねえずら)」
梨子「と、止めてお願い!「へ」を止めて!!」
曜「…自分で破孔を突いて止めてみれば?」
梨子「はっ!!」
曜「あうんこさっせろーだかーらうんこさっせろー♪」
梨子「ぐぅぎぃ!!」キュルキュルキュルキュルブブブ
花丸「便意があっては破孔は突けんずらか…」
曜「北斗琉拳奥義懴悔責糞拳!貴様の腹は下り続けるのみ!己の罪の重さを踏みしめながらトイレまで歩いてゆくがよい!」
梨子「ち…」
梨子「ち…」
梨子「ちっくしょおぉぉおおおおおおおおおおおおおぉぉおおお!!!」ダッダー!
梨子「あ」ブブブピィブリュ 花丸「(さすが曜さん…マルチョップを一度くらっただけで北斗琉拳を完璧にマスターしたずら…さて…)」
曜「千歌…ちゃん…」
千歌「よー…ちゃん…」
曜「千歌ちゃあん!!」ダッ
千歌「………」ぱしっ
曜「!!!?」
千歌「…さっきチカが人質にとられたとき、なんかふざけたこと言ってたのチカ忘れてねーのだ」
曜「…!!!」 曜「………」ショボーン
千歌「………」
千歌「(へこきむしとか言って悪かったのだ)」ボソッ
曜「え?」
千歌「…だっ、だから!よーちゃんはこれまで以上にチカに忠誠を誓って、何でも言うことをきくのだ!あ、いなのはチカと忠誠を誓うのチカをかけたダジャレでね!?だから!これからも仲良くするのだ!!」
曜「うん!千歌ちゃん大好き!!」
千歌「やめるのだ!くっつくななのだ!「へ」のにおいが残っているのだ!!」
曜「いいの!!」
千歌「よくないのだ!!」
曜「いいのぉ!!」
花丸「(まあ…この二人はきっとこれがベストな関係ずら)」
花丸「(めでたしめでたしで一件落着って事でヨシとするずらか…)」 エンディングテーマ「ユメ語るよりユメ歌おう」
渡辺曜(斎藤朱夏)
桜内梨子(逢田梨香子)
ユメオカタルゥ〜コートバカラーブッブゥ!
ユメオカタルゥ〜ウターガーウマーレルーンダネーブッブゥ!
ヒロガールーコーノーオモイワーブピィ 果南「誰〜?学校のトイレで遠慮なくブリブリ爆音かましてる奴〜?www」ドガッ ドガッ
鞠莉「ウンコマ〜ン♪ウンコマ〜♪スメルぷんぷんウンコファイヤ〜♪キャハハハハハハwww」ドガッ ドガッ
梨子「(殺す…コイツら後で絶対殺…あっ)」ブブブピピィブリュブリュブリュ
おしまい ルビィ「(うゅ…)」ソローリ
ルビィ「うゆチョッ」
ダイヤさん「真剣白刃取り」パッシ
ルビィ「ピギィッ!」
ダイヤさん「フッ…その程度でこの私の経絡破孔を突こうなぞとは…片腹いたい片腹いたいですわ!!」
ルビィ「うゅう〜!!」ギリッ
ルビィ「あ!空飛ぶ抹茶プリン!」→
ダイヤさん「え!?」→
ルビィ「うゆチョップ」ゴスッ
ダイヤさん「あ」
ダイヤさん「あぁ〜!!」
おやすみ 小ネタ
「だんすなう」
「だんすなう」
ワー ワー パチパチパチパチ
聖良さん「理亞、今日のステージも素晴らしい出来上がりでした」
理亞「本当!?姉様!!」
聖良さん「ええ…今までのステージの中でも最高峰、まさに完璧、私の見たところ百点満点で二百万点といったところですね」
理亞「嬉しい…!!」
聖良さん「ところで理亞」
理亞「うん」
聖良さん「先ほど、曲の合間に私のことを『聖良』と呼んでいたようですが」
理亞「………」
理亞『聖良!カモン!!』
理亞「………ッ!!」
聖良さん「私の知る限り、理亞が私のことをそのような呼び方で呼んだことは今まで1度もなかったと思うのですが」
理亞「………ッ!!」ドッドッドッド
聖良さん「今までの練習でもステージでも、曲のあそこで私を呼び捨てにする演出なんてなかったと思うのですが」
理亞「〜〜〜〜ッ!!!!」 理亞「ご、ごめんなさい!許して…姉様許して!!私、姉様と一緒に歌えるのが嬉しくて、ついテンションが上がってしまって…!!」
聖良さん「ほう」
聖良さん「いいですか理亞」
理亞「ゴクリ」
聖良さん「その昔、新日本プロレスの竹村がメキシコから帰国した折…」
理亞「予想外のエピソード引っ張ってきた!!」 聖良さん「ヒールターンしてまさに売り出し中の若手の竹村をリーダーに、ベテランレスラーの邪道・外道を加えた6人タッグ、その試合のさなか」
聖良さん「コーナーの邪道・外道にカットを要請した竹村はテンションが上がってしまっっていたのでしょう、思わず叫んでしまいました」
聖良さん「『邪外ーッ!!』…と」
聖良さん「…………」
理亞「…………」
聖良さん「わかりますか?」
理亞「(…さっぱりわからない!!!!)」 聖良さん「竹村はその後、自身のブログであの時はついテンションが上がってしまって…邪道・外道のお二人のことを普段から『邪外』とお呼びしたかったわけではないんです、すいませんでしたと謝罪しました」
聖良さん「…わかりますね」
理亞「わからない!!!」
理亞「姉様が何を言いたいのかもさっぱりわからないし!!なんで急にそんな15年前くらいのプロレスの話をし始めたのかもわからないし!!」
聖良さん「ほう」
理亞「姉様今までプロレスの話なんてしたことなかったじゃない!!?」 聖良さん「…ではその昔、新日本プロレスの天山がバイクでバスに衝突事故を起こした時の事です」
理亞「姉様を呼び捨てにしたことなら謝るからプロレスから離れてよ!!」
聖良さん「天山は自力で歩いて病院に行き、診察のあとすぐに会見を開いて『バスを壊してすいませんでした』と謝罪しました」
理亞「ごめんなさい!謝るから、ちゃんと謝るから!!私に悪いところがあったなら直すから!!」
聖良さん「ほう」
聖良「…ではその昔、タイガージェットシンが伊勢丹の前でアントニオ猪木を襲撃した時の事です」
理亞「姉様!許して姉様!!嫌!こんなプロレスの話を延々と続ける姉様嫌ァーッ!!!」 小ネタ
聖良さん「より良いパフォーマンスを目指すため、今一度わたしたちSaintSnowの在り方を見直しましょう」
理亞「ダンスなう」
聖良さん「わたしたちは姉妹チームですが、パフォーマンスの上ではあくまで同等…理亞、気になる事があったら遠慮なく言ってください」
理亞「ダンスなう」
聖良さん「さあ、忌憚のない意見というやつをお願いします」
理亞「うん、じゃあ…」
理亞「私、前から思ってたんだけど、『ダンスなう』ってあんまりカッコ良くないと思うんだ」
理亞「ネットとかでもなんかバカにされてるし…」
理亞「あと、なんか『イエッサー!』みたいなノリで『ダンスなう』って答えるのもできればやめたい」
理亞「姉様…」
聖良「え?何か言いましたか?」
理亞「ッ!!!」 聖良さん「では今度は私からですね」
理亞「………」
聖良さん「理亞発案のキメのポーズ、あの『太陽拳』みたいなあれですが、曲の〆としては少々弱いというか…」
聖良さん「ぶっちゃけダサいと思います、インターネットとかでも馬鹿にされてますし」
理亞「ッ!!!」
聖良さん「私としては『かめはめ波』のポーズの方がカッコいいと思いますよ」
聖良さん「忌憚のない意見というやつです」
理亞「…………」
聖良さん「返事」
理亞「………ダンスなぅ…」 千歌「まさか聖良さんたちが予選で敗けるなんて…」
花丸「勝負の世界は何が起こるかわからないずら」
おしまい
1話目の歪んだ心理描写好きだし2話目のノリも面白かったよ
かなりテイスト違うけど同じ人が書いてたの? はい
ちなみにウンコブリブリブシャーみたいな方が普段のノリであります そうなのか、このノリで梨子ちゃんがいつも吐いてる……?
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