梨子「ペルソナ?」
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ほう……これはまた、変わった定めをお持ちの方がいらしたようだ……フフ 私の名は、イゴール。 ……お初にお目にかかります。 ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所…… 本来は、何かの形で"契約"を果たされた方のみが訪れる部屋…… 貴方には、近くそうした未来が待ち受けているのやも知れませんな どれ……まずは、お名前をうかがっておくと致しましょうか 「……桜内梨子、です」 ラブライブ!サンシャイン!!によるペルソナ4ベースのペルソナパロディ この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、地名、事件などとは一切関係がありません。 ◇4月 秋葉原 電光掲示板『面倒なのも〜我慢するのも〜にこにはムリ!キライ!シンドスギ!この夏は爽やかにスリム、ケロリーマジック!』 『今もっともホットなスクールアイドル──』 梨子(この街とも、今日でお別れだね) 「春から始まる、スクールアイドル部でーす!」 「よろしくお願いしまーす!」 『まもなく、終点、熱海、熱海』 『東海道線三島、沼津方面はお乗り換えです』 「あなたみたいな可愛い子に、ぜひ!」ピト 「ぴ、ピギャアアアァ〜!!」 「……ルビィちゃんは究極の人見知りずら」 『次は、沼津です』 【SNS】 お母さん>一人で来れる? >大丈夫だよ 『まもなく、沼津、沼津。お出口は右側です』 「どうしてです?」 「私が生徒会長でいるかぎり、スクールアイドル部は認めないからです!」 「そ、そんなぁ〜」 ピー 梨子「あれ、なんで改札通れないの!?」 梨子「そっか、Supica使えないんだ……」 「え、よーちゃん知ってたの!?」 「ごめん!」 「先に言ってよ〜……」 『次は、伊豆・三津シーパラダイス』 ピンポーン 『次、停まります』 『ご乗車、ありがとうございました』 梨子「……やっと着いた」 ◇夕方 三津浜 梨子「わあ……!」 梨子(海、綺麗……それに、家からこんなに近いなんて) 梨子(ちょっとだけ入ってみよう、かな。靴を脱いでっと)ヌギヌギ 梨子「よし……冷たっ!」 「待って、だめー!死んじゃだめだよ!」 梨子「きゃあーっ!え?え!?何!?」 ──────────────────── ──────────────────── 「なんだ勘違いか〜、ごめんね」 梨子「いいえ。私こそ、何かごめんなさい……」 「まあ今の時期に海に入る女の子は、果南ちゃんくらいかなあ……」 「まだ4月だよ?沖縄じゃないんだから」 梨子「そうですね、すっごく冷たくて……」 「えっと、ここら辺の高校?それとも旅行?」 梨子「うーん、東京から……?」 「東京!?わざわざ!?」 梨子「わざわざっていうか、ちょうど引っ越して――」 「そうだ!じゃあ誰かスクールアイドル知ってる?」 >知ってる 知らない 梨子(知識が足りないみたい……) 知ってる >知らない 梨子「……知らないです」 「へ?まさか知らないの?スクールアイドルだよ!?」 梨子「えっと……ぅ」フラリ 「わわ、大丈夫?」 梨子「ごめんなさい、ちょっと目眩が……」 「うーん、東京から来たから疲れてるのかも」 梨子「そうかも……あ、それにそろそろ行かないと」 「そっかー、じゃあ気をつけて!」 梨子「はい、ありがとうございます」 ◇夜 自宅 梨子母「今日はごめんね、予定が会わないからって迎えにも行けなくて」 梨子「ううん、大丈夫。バスには慣れておきたかったから」 梨子母「それに、お父さんの仕事の都合で急に田舎に引っ越すことになっちゃって……」 梨子「もう、何度も言ってるよ?私は大丈夫だって」 梨子「明日から学校だし、今日はもう寝るね」 梨子母「わかったわ、お休みなさい」 ◇自室 梨子(今日会った子には、悪いことしちゃった) 梨子(それにもっと話を聞いてあげれば、お友達になれたかもしれないのに) 梨子(今日からこの町、内浦で暮らしていくことになる) 梨子「……上手くやっていけるかな」 梨子(明日から学校だし、早く寝よう) ──────────────────── 梨子(ここはどこ……?夢?) 辺りは暗闇に覆われている。 目を凝らすと、左右を壁のように鏡が囲っていた。 梨子(あれは……光?) 遥か遠くには、小さな一筋の光。 その輝きを目指して、歩き始める。 梨子(歩いても、全然追いつけない……) 「なるほど、面白い素養ですね」 どこからともなく、声が語りかけてくる。 「ですが、あなたにたどり着けますか?」 光を追って、走り出す。 しかしどれだけ走っても、小さな光はより遠退いていく。 輝きは消えかかり、視界が徐々に漆黒に飲み込まれる。 梨子「待って!!」 「……いつかまた会いましょう、こことは違う場所で。期待していますよ」 梨子「え、きゃあ──」 硬質な音をたてて、足元の鏡が砕け散る。 身体と意識が、深い闇の底へと落ちていった── ──────────────────── ◇朝 梨子母「梨子ちゃーん、朝ご飯できたわよー」 梨子「ぅーん……」 梨子(なんだか悪い夢を見た気がする……) 梨子(今日から学校だし、起きないと) ◇通学路 梨子(バスに乗ったあと、さらにミカン山を上らないといけないなんて) 梨子(長い坂を上るのは慣れてるけど……ん?) 「〜♪、きゃっ」 梨子(ミカンの皮で滑って転んだ……) 「うぅ、いたたた」 梨子(……そっとしておいてあげよう) 「もう、これだからミカンは嫌いなのよ……ああっ!CDが……」 ◇浦の星女学院 校門前 梨子(ここが、これから過ごす学校……) 梨子(高校2年になってからの転校なんて……輪に入れるかな) 梨子(ううん、どうせ美術室に籠ってるだけだよ) 梨子(でも、ずっとひとりぼっちも嫌だな……) 梨子「はあ……」 梨子(ここで悩んでても仕方がない、行かなきゃ) ◇教室 「作曲ができる人なんて、一人もいない……生徒会長が言う通りだ」 「大変なんだね、スクールアイドル始めるのも」 担任「はーい、皆さん、し・ず・か・に♡」 担任「不本意だけど転校生を紹介するわ」 担任「爛れた都会から辺鄙な田舎へやって来た、可哀想な子よ」 担任「謂わば都落ちレズね」 梨子(!?!?) 担任「じゃあ桜内さん、簡単に自己紹介して」 よろしくお願いします >誰が都落ちレズですか 梨子(勇気が足りないよ……) >よろしくお願いします 誰が都落ちレズですか 梨子「桜内梨子です。よろしくお願いします」 「せんせー! 転校生の席、ここでいいですか!」 担任「空いているなら構わないわよ。どうぞ、桜内さん」 「すごい、奇跡だよー!」ヒソヒソ 梨子「あなたは昨日の!」ヒソヒソ 「これからよろしくね!それと、あとでスクールアイドルのことたーっくさん教えてあげるから!」 梨子「う、うん、よろしくね」 担任「それじゃあ出席を取るわよー」 梨子(周りから噂話が聞こえる……) 「東京からだって〜確かにかわいいね」ヒソヒソ 「都落ち?とか言ってたけど、どんな子なんだろう」ヒソヒソ 梨子(上手くやっていけるのかな……)ナミダメ 今までのサンシャインのペルソナパロ全部エタってるよね しかも超序盤でしかも大抵梨子主人公 μ'sが4ベースでAQUASが3ベースのやつも無かった? >>36 覚えてるのだとたしか 梨子「ペルソナ♡」チュッ みたいな感じの >>40 検索したらこんなの出てきた ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1548907381/ これは完結している模様 ◇放課後 「梨子ちゃ〜ん!」 梨子「ごめんなさい、お名前が……」 千歌「ああそっか、私は高海千歌!で、こっちが幼馴染の曜ちゃん!」 曜「いきなりでごめんね?よろしく、梨子ちゃん」 梨子「ううん、よろしくね」 千歌「よーちゃん謝らないでよ〜千歌が失礼な人みたいじゃん」 曜「あはは、ごめんごめん。梨子ちゃんにちょっと話があって」 「あ、あのー高海さん」 千歌「あ、善子ちゃん!もしかしてスクールアイドル始める気になってくれた!?」 善子「いいえ、この前借りたCDを返そうと思って」 善子「すごいよかった。魂を打ち震わす素晴らしい曲だったわ」 善子「」ペコリ 善子「ごめんなさい!事故だったの!お小遣い入るまで待って!!」 千歌「ああっ、特装限定版のCDにヒビがぁ〜!」 善子「本当にごめんなさい!何でもするから」 千歌「じゃあ一緒にスクールアイドルやって!」 善子「それとこれとは別よ!」 千歌「え〜」 ※善子も2年生、同じクラスです 梨子「スクールアイドル……高海さんって、いつもこんな感じなの?」 曜「千歌ちゃん、先月から急にスクールアイドル始めたいって」 曜「私も協力してあげたいんだけど、部として認めてもらうには人数が足らなくて」 梨子「もしかして話ってそういう……」 曜「そういうことであります!」 曜「特に作曲ができる人を探してて──」 千歌「くぅ〜また善子ちゃんに逃げられた、でも諦めないぞー」 千歌「そうだ梨子ちゃん!梨子ちゃんもスクールアイドル始めよう!」 梨子「私?私なんて地味で、踊ったりなんて全然……」 千歌「えー、梨子ちゃん大人っぽいし、そんなことないよ〜」 曜「まあまあ、転校してきていきなり言われても、梨子ちゃん困っちゃうだろうし」 千歌「ぐぬぬ、確かにそうかも」 曜「梨子ちゃんの話も聞きたいし、とりあえず今日は一緒に帰らない?」 ◇バス 千歌「東京と違ってこっちはなーんにもないでしょ」 曜「沼津のほうに出れば、一応いろいろ揃いはするんだけどね」 千歌「でもミカンとか、水族館とか、あとやっぱり海は自慢できるよ」 梨子「うん、海岸からの景色がほんと綺麗」 曜「それと、千歌ちゃんちの旅館も自慢の名所だよ!」 千歌「べ、別に、古いだけだよ〜」 曜「有名な作家さんにゆかりのある、立派な旅館なんだ」 曜「千歌ちゃんはそこの三姉妹の末っ子でさ、美人三姉妹なんだよ」 千歌「ちょっとよーちゃん、恥ずかしいからやめて……」 梨子「もしかして、お隣さん?」 千歌「最近隣に引っ越してきたのって、梨子ちゃん!?」 曜「え、ほんと!?」 梨子「すごい偶然だね」 千歌「やったやった、お隣さんだー♪」 曜「そう言えば、梨子ちゃんは何で東京から転校してきたの?」 梨子「お父さんの仕事の都合で」 千歌「東京から来たってだけあって、おしゃれだよねー」 梨子「そうかな、同じ制服だよ?」 曜「うんうん、同じ制服なのにとっても可愛く見えるよ」 梨子「そ、そんなことないよ//」 曜「前の学校はなんて高校?東京のどのあたり?」 梨子「秋葉原の、音ノ木坂学院っていうところだよ」 千歌「音ノ木坂!?μ'sと一緒じゃん!!」 梨子「ミューズ……名前だけ聞いたことがある、かも」 千歌「すごいすごい、やっぱり奇跡だよ!」 曜「あ、千歌ちゃんたちそろそろ着くよ」 千歌「えー、話し足りないよ〜」 梨子「渡辺さんは?」 曜「私が住んでるのは沼津のほうなんだ」 梨子「わざわざ向こうから、毎朝?」 曜「あはは、もう慣れちゃったけどね」 千歌「小さい頃はこっちに住んでたんだけど、引っ越しちゃったんだ」 曜「じゃあ二人とも、また明日!今日はありがとうね、梨子ちゃん」 梨子「こちらこそありがとう。また明日」 千歌「よーちゃんまたねー」 ◇十千万旅館前 千歌「ここがうちの旅館です!梨子ちゃんのおうちは?」 梨子「私の家はそっちだよ」 千歌「おー、本当にお隣さんなんだ!」 梨子「こんな立派な旅館がお家なんて、うらやましいな」 千歌「そんなことないよ〜、お手伝いとか結構頼まれるし」 梨子「お手伝い?」 千歌「お掃除とか、たまにお料理運んだりもするし」 千歌「時期によっては忙しくて困っちゃう」 梨子「そうなんだ、旅館がお家っていうのも大変なんだね」 千歌「ただいましいたけ、いい子にしてた〜?」 梨子「え、わわ、ワンちゃん!?あの高海さん、このワンちゃんって」 千歌「うちで飼ってるしいたけだよ」 しいたけ「……」ジーッ 梨子「」ビクッ しいたけ「ワンッ」 梨子「ひぃっ!!ごめんなさーい!また明日ー!」 千歌「あ、梨子ちゃーん……こらしいたけ、ビックリさせちゃだめだよ」 しいたけ「……」 ◇翌日 朝 通学路 梨子(あ、昨日の子……確か同じクラスだったよね) 善子「〜♪、わっ」 梨子(またミカンの皮で転んだ) 梨子(しかもポリバケツに頭から突っ込んでる) 善子「だ、ダレカタスケテ……」 梨子(……助けたほうが良さそう) ──────────────────── 善子「ふー助かったわ、ありがとう」 梨子「大丈夫?怪我はない?」 善子「ええ、問題ないわ」 善子「あなた転校生ね。桜内梨子さん」 善子「同じクラスの津島善子よ、よろしく」 梨子「うん、よろしく」 善子「やばっ、もうこんな時間!」 梨子「え、嘘!」 善子「急ぐわよ!!」 ◇放課後 教室 善子「朝はありがとう、桜内さん」 梨子「ううん、どういたしまして」 善子「どう?この町にはもう慣れたかしら?」 梨子「うーん、さすがにまだ慣れないかな」 善子「まあそうよね、来たばっかりで知り合いも少ないでしょうし。私も人のことは言えないけど」 梨子「津島さんも転校生?」 善子「別にそういうわけじゃないけど……近いものがあるというか」 梨子「そうなんだ……?」 善子「内浦、何もない田舎なのよね〜。ミカンが名産だけど、不幸にも私の嫌いな食べ物だし」 梨子「ミカンの皮で転ぶ人は、私初めて見たかも」 善子「……沼津のほうには、美味しいケーキ屋とか喫茶店が結構あるのよ」 善子「よかったら一緒に行かない?奢るわよ、今朝助けてもらったお礼に」 千歌「お、二人が揃ってる!チャンスだよーちゃん!」 善子「うっ、出たわねミカンの化身」 曜「ごめん千歌ちゃん、今日はどうしても水泳部のほうに顔出さないといけなくて」 曜「千歌ちゃん、梨子ちゃん善子ちゃんも、また明日!」 千歌「あ、曜ちゃん……」 梨子「渡辺さんって水泳もやってるの?」 善子「そうね、学校の有名人。飛び込みで全国レベルって話よ」 千歌「やっぱり曜ちゃんも忙しいのかな」シュン 善子「……仕方ないわね、あなたもケーキ食べに行くわよ」 千歌「え、いいの?」 善子「奢るわよ、CDのお詫び」 ◇沼津 Grandma 千歌「紅茶で乾杯するの?」カンパーイ 善子「別にいいじゃない、歓迎の印よ」カンパーイ 梨子「うん、ありがとう」カンパーイ 千歌「それでは早速。んっんー……」 千歌「善子ちゃん梨子ちゃん、スクールアイドルやりませんか?」 善子「またそれなの……」 千歌「だって人数足りないんだもん」 善子「だからって私じゃなくてもいいじゃない」 千歌「でも二人ともすっごく可愛いし」 千歌「それに善子ちゃん前に堕天使を名乗ってて――」 善子「その話はやめてっ!」 梨子「」ビクッ 千歌「ご、ごめん……」 善子「……私こそ、ごめんなさい」 千歌「……」 善子「……」 梨子(堕天使?) 善子「桜内さんは?スクールアイドル」 梨子「えっ私?私も人前で踊ったりとかは……」 千歌「そこを何とか!やってみたら絶対楽しいと思うし、ライブの動画を見ればきっと好きに──」 「マジムカつくよね〜」 「そうだよね〜」 善子「!」 梨子「どうかしたの?」 善子「ううん、何でも──」 「あ、中学のとき一緒だった」 「堕天使ヨハネちゃんだっけ」 「生放送まだやってるのかな?」 善子「っ」ガタン 千歌「善子ちゃん!?出ていっちゃった……」 梨子「お、追いかけよう?」 善子「はあ、やってしまった……」 千歌「善子ちゃん、どうしたの?」 梨子「知り合い、みたいだったけれど」 善子「ごめんなさい……何でもないから」 梨子「でも……」 善子「大丈夫だってば。忘れてちょうだい」 千歌「そうだ、悩める善子ちゃんにイイコトを教えてしんぜよう」 善子「いいこと?」 千歌「スクールアイドルの間で話題のおまじないだよ」 善子「何言い出すかと思えば……馬鹿馬鹿しい」 千歌「バカって言った!?人にバカって言う方がバカなんだよ?」 梨子「まあまあ……でも私も信じられないかも」 千歌「え〜そんなぁ、最近流行ってるんだよ?」 善子「はぁ〜……そもそも、あなたは試したの?」 千歌「そう言えば、やったことないかも……」 善子「自分もやったことないのに人に勧めたの……」 千歌「むー、じゃあ今夜それぞれやってみよう!梨子ちゃんもね!」 梨子「え、私も?」 千歌「にっこにっこに〜♪って、絶対だよ!」 善子「まったく……まあ一応覚えておくわ」 >>64 ミス、こっちが先 千歌「まず大きめの鏡の前に一人で立ちます」 千歌「そしてμ'sの矢澤にこさんの真似をするんだって。にっこにっこに〜♪って」 千歌「するとなんと、その人にとって理想の自分の姿が鏡に映る」 千歌「しかも、見つめているとアドバイスをくれるんだって!」 ◇夜 自室 梨子「化粧台の鏡、あんまり大きくないけど大丈夫かな」 梨子「指はこうだっけ」 ニッコニッコニー! ユビマチガエタカナ、モウイッカイ ニッコニッコニー!ニッコニッコニー!! ウッサイバカチカ!!! 梨子「……外に聞こないよう気をつけよう//」 梨子(鏡の前で一人、スクールアイドルだったことで有名な矢澤にこさんの真似をする) 梨子(すると、なりたい自分の姿が鏡に映る) 梨子(なりたい自分……将来の夢ってことかな) 梨子(私の夢……うーん、何なんだろう?) 梨子「そもそも映るわけない、か」 梨子(でも約束したし、一応やらないとね) 梨子「よし──」 梨子「にっこにっこに〜♪」 梨子「……」 鏡『メイσ_σリ』 梨子「やっぱり何も──」 鏡『メノ^ノ。^リ』 梨子「!?頭が、痛っ……!」 「我は汝……汝は我……汝、扉を開く者……」 梨子「はあ、はあ……何だったの、今の……」 梨子(今はもう普通だけど……) 梨子は確かめるように、指先で鏡に触れる。 するとまるで水面のように、映る景色が波で歪む。 梨子(もしかして、入れる……?) もう一度ゆっくりと手で触れると、鏡の中へ指先が飲み込まれて行く。 梨子「どうなって……きゃあっ!?」 何かが梨子の手をつかみ、鏡の中へと引っ張る。 梨子「は、離して!」 引き込まれないように抵抗していると、掴まれていた手が急に離される。 バランスを崩した梨子は、後ろに大きく倒れ込む。 ゴツンッ 梨子「いった〜〜っ!」 コンコン 梨子母「梨子ちゃん大丈夫?すごい音したけど」 梨子「へ、平気だよー……」 梨子(……さっきのは何だったんだろう) 梨子(鏡の中の私は、笑ってた。理想の姿かはわからないけど) 梨子(それでも十分不思議なのに、さらに、鏡の中に手が……) 梨子(鏡を見るのが、少し怖い……) 梨子(とりあえず、明日みんなに話してみよう) 今日はここまで 今更ですが戦闘描写などに地の文を使います 明日P5R発売おめでとうございます ◇翌日 放課後 梨子「ねえ、二人とも」 曜「あ、梨子ちゃん。もしかして、スクールアイドルやる気になってくれた?」 梨子「ううん、そうじゃなくて──」 千歌「ごめん、今日は旅館の手伝いしないといけないから先に帰るね!」 曜「珍しいね、こんな時期に」 千歌「昨日の夜ちょーっぴりやらかしちゃって」 梨子「私の部屋にも聞こえたよ」 曜「聞こえた?」 梨子「うん、千歌ちゃんの物真似が」 曜「あはは、あのおまじない、千歌ちゃん試したんだ」 千歌「梨子ちゃんにも聞こえてたんだ、恥ずかしい……」 千歌「早く行かないとまた怒られる、じゃあね!」 梨子「うん、また明日」 曜「頑張ってねー」 梨子「うーん、また今度にしようかな」 曜「何の話?」 梨子「さっきのおまじないの話なんだけれど」 梨子「昨日津島さんと3人で、夜にそれぞれ試そうってことになってて」 曜「なるほど。善子ちゃーん!!」 善子「なによ、帰るとこだったんだけど」 曜「梨子ちゃんが話があるんだって」 曜「鏡に映っていた自分が笑って?」 善子「しかも鏡の中に手が入った?」 梨子「うん、そうなの」 曜「梨子ちゃん引っ越してきたばかりで、疲れすぎてるんじゃ」 善子「忠告よ、もうそういうオカルトからは卒業なさい」 梨子「嘘じゃないってば!」 善子「そんなこと言われても、信じられるわけないじゃない」 梨子「そうかもしれないけれど、本当なの」 曜「うーん、じゃあさ、もう1回試してみる?」 ◇体育館 梨子「どうして体育館に?」 曜「こっちこっち、この部屋だよ」 善子「何なのよ、もう」 曜「この部屋今は倉庫として使われてるんだけど、大きな鏡があるんだ」 梨子「鍵はかかってないの?」 善子「……なんで貴方まで乗り気なのよ」 梨子「だって二人とも信じてくれないんだもの」 ガラガラ 梨子「開いてる……」 曜「ちっちゃな学校だからね、結構いい加減なんだよ」 善子「はあ……あの生徒会長とかに見つからないといいけど」 曜「大丈夫大丈夫、部活休みだし今日は誰も来ないって」 曜「まあでも、万が一見つかる前に中に入ろっか」 梨子「お、お邪魔します」 善子「うう、汚いし、埃っぽい……」 梨子「えっと、鏡ってこれかな?」 曜「布を外してっと」 善子「大きな姿見……全身が映るわね」 曜「じゃあ早速試してみよっか!」 善子「試すって言っても、どうするの?」 曜「とりあえず梨子ちゃんが物真似してみればいいんじゃないかな」 梨子「私がやるの?そんな、恥ずかしいよ//」 善子「いや当然でしょ……」 梨子「考えてなかった……」 善子「はあ……そもそも例のおまじないって、こんな風に人集めてやるものじゃないわよ」 曜「あー、たしか一人でやらないとだめって聞いた気が」 梨子「そっか、じゃあやっぱり試せないね、うん」 曜「それなら私たち部屋の外で待ってるよ。梨子ちゃんの話気になるし!」 善子「それもそうね。ここまで来たんだから、一応やってもらわないと」 梨子「えー……//」 曜「終わったら呼んでねー」 ガラガラ リコチャン、ダイジョウブカナ ケッコウカワッタヒトネ 梨子(見られはしないけど、声聞こえてるよ//) 梨子「はあ……とりあえず、試してみないと」 梨子「にっこにっこに〜//」 鏡『メイσ_σリ』 梨子(何も起きない……) ニッコニッコニ~ 曜(かわいい) 善子(かわいい) ガラガラ 曜「どうだった?梨子ちゃん」 梨子「ううん、何にも……」 善子「当然でしょ。そんなオカルトじみたこと、起こるわけないじゃない」 梨子「でも、昨日はこうやって手を──」 梨子は姿見にゆっくりと触れる。 すると像が揺れ、手首まで鏡の中に飲み込まれる。 善子「はあ!?」 曜「手がささってる!?!?」 梨子「ほら、ほら!」 善子「まじなの!?すごい、どんなイリュージョン!?タネは!?」 梨子「マジックじゃないよ、本当に中に入れるみたい」グイッ 曜「腕まで!?すごいすごい!」 善子「裏側突き抜けてないわよね!?どうなってるのよ!?」 「どなたかいらっしゃるのですか?」 善子「今の声って」 曜「生徒会長だよ、見つかったら怒られる!」 梨子「ど、どうしよう?」 善子「そんなことより、ここに腕が鏡に刺さった人いんのよ!?」 曜「ど、ど、どうしよ!?」 善子「こうなったら……ごめんなさい桜内さん!」グイッ 梨子「きゃっ、え、え!?押さないでよ!」 曜「善子ちゃん!?」 善子「早くしないと見つかるってば!」グイグイッ 梨子「うそ、ちょっと待って──」スッ 善子「いいから早く──」スッ 曜「二人とも、鏡に入っちゃった……私も、全速前進!」コツン 曜「あれ?」ツンツン 「一人で何をしていらっしゃるのですか?渡辺さん」 曜「あ、あはは……」 梨子「きゃあっ」ドサ 善子「うわわ」ドサッ 梨子「いたた……もう、押し込まないでよ」 善子「あの状況じゃ仕方がないでしょ。それより、ここって」 梨子「同じ部屋?」 善子「いいえ、全部反対向きになってる……」 梨子「鏡に映っていたのと同じ向き、だね……」 善子「それじゃあ私たち!?」 梨子「本当に鏡の中に!?」 ◇鏡の世界 善子「夢、かしら?」 梨子「ゆ、夢じゃないかな、こんなのあり得るわけ……」 善子「そうね、夢よね……ちょっとほっぺた貸して」ツネリ 梨子「いひゃ、ちょっと!」 善子「……どうやら現実みたいね」 梨子「うう、もう……でも、鏡の中に入れるって、どうなってるの?」 善子「私が聞きたいわよ。鏡の反対側にもうひとつ世界があるなんて、それこそおとぎ話じゃない」 善子「あなたは何か知らないの?手が入ってたわけだし」 梨子「ううん、私にも何にも……」 善子「はぁ、まあ反応を見る限りそうよね」 梨子「あの、私たち、戻れるよね……?」 善子「えっそれは……知らない……」 梨子「だ、大丈夫なの!?」 善子「入ってこれたんだから、出れるに決まってるでしょ!……多分」 梨子「うーん……入ってきた鏡は一応そこにあるけど」 曜『こ、こんにちは!』 『こんにちは。それで、この部屋で何をしていらっしゃるのですか?』 曜『ちょっと部で必要な用具を探しに』 『今日は水泳部も休みのはずですが』 曜『休みだからこそ、ですよ』 『そうですか……ところで、この部屋の鍵は──』 曜『!、えっと、それももちろん借りてきてて』 『……今、私が持っているのですが』 曜『うぇっ!?うう、ごめんなさい……』 『謝るなら最初からそうなさい』 『無断で入って、万一怪我をしたらどうするのですか?それに──』 梨子「渡辺さん、叱られてるね。あの人が生徒会長?」 善子「そう、生徒会長の黒澤ダイヤ。ここらじゃ有名よ」 梨子「珍しい名前だね……あ、渡辺さんこっち見てる」 善子「もしかして、私たち見えてる!?」 梨子「生徒会長は私たちに気づいてないみたいだよ」 善子「よかった、向こう側からこっちは見えないってことかしら」 梨子「でもどうしよう……出て行くわけにもいかないし」 善子「ふっふっふ、ならやるべきことは1つ、探索よ!」 善子「鏡の中に入れるなんて前代未聞だし、どうなってるか気になるじゃない」 梨子「あ、危なくないかな」 善子「でも今、生徒会長のお説教中でしょ?」 善子「うちの生徒会長のお説教は長いことで有名よ。その間暇じゃない」 梨子「そうかもしれないけど……」 善子「それに私一人でも行くわよ。こんな機会、またあるかわからないし」 梨子「え、津島さん!?待って、置いていかないで!」 ◇鏡の世界 体育館 梨子「何なの、これ」 善子「すごいっ、なんて大きな魔方陣!」 梨子「体育館の床一面に書かれてる……誰が、何のために……?」 善子「現世から秘匿されし空間にて、悪魔を復活させんとする儀式を執り行ってる、とか」 梨子「あ、悪魔!?」 善子「ふふっ、冗談よ」 梨子「怖いんだから脅かさないでよ」 善子「異世界にこんなものがあるなんて、テンション上がるわね!」 梨子「私は不安でいっぱいだよ……」 善子「見なさい、魔法陣の蝋燭に火がついてる」 梨子「えっと、それがどうかしたの?」 善子「見た限り、あまり蝋は溶けていない。つまり、誰かが少し前に火を灯したってことよ!」 梨子「……まさか、その人を探すなんて言わないよね?」 善子「私たち以外に誰かいるのかもってだけよ」 善子「まあ鏡の中で、こんな推理に意味があるかはわからないけど」 梨子「そっか、じゃあこれ以上は行かないんだね」 善子「そうは言ってないでしょ」 梨子「もう……でも他に何があるかわからないし、本当に危ないんじゃ」 善子「所詮学校なんだし、危険なようならすぐ戻れば大丈夫よ」 善子「とりあえず校舎のほうまで行きましょ。嫌なら待ってていいわよ」テクテク 梨子「そんなぁ〜」ナミダメ 梨子「うぅ、一人はもっと嫌だよ……」テクテク ◇鏡の世界 渡り廊下 梨子「スマホは圏外……まあそうだよね」 善子「か、かっこいい!」 梨子「これは何?ハエの石像?」 善子「ベルゼブブね、悪魔の帝王よ」 梨子「悪魔!?元はマリア様の像があった場所なのに……」 善子「そしてこっちの絵はベリアルね!」 梨子「津島さん、こういうの詳しいの?」 善子「そ、そんなことないわ!一般教養よ、一般教養!」 梨子「そうなんだ……?」 善子「魔法陣に悪魔像。ほんとに悪魔復活の儀式でもしてるのかしら」 梨子「鏡の中に悪魔だなんて、不気味」 善子「鏡に手を入れた時点で相当気味悪いわよ」 梨子「そう言われると、確かにその通り……」 善子「とにかく、今のところは謎が深まるばかりね」 梨子「うーん、そもそも何で鏡の中に入れたんだろう?」 善子「そんなの考えたってわかりっこないわよ。さて、他には何があるかしらね〜」 ◇鏡の世界 校舎 1F 梨子「誰もいない……やっぱり気味が悪いよ……」 善子「クックックッ、静寂が心地よい」 梨子「津島さんは怖くないの?」 善子「そんなわけないでしょう、この堕天使……何でもない!」 梨子「……?」 善子「それにしても本当に静かね」 梨子「うん、教室の中にも誰もいないみたい。外に出たときも思ったけど、なんだか雰囲気もおかしいよ……」 善子「せめて何かこの世界についての手がかりでもあればいいんだけど」 梨子「もしかして、教室全部回るの?」 善子「決まってるでしょ。まだ何もわかってないじゃない」 梨子「もう生徒会長もいないだろうし、とりあえず一旦戻ってもいいんじゃ」 善子「ここまで来たのよ?また来れるかわからないんだし、もうちょっとだけ──」 ……サマ~、……ネサマ~ 善子「!、ちょっと待って、声がしない?」 善子「上の階かしら?行ってみましょう!」 梨子「ちょっと!……ん?」 梨子(掲示板、変な掲示物ばかり……) 「天界堕天条例 その713──」 「堕天の儀 毎週金曜日 体育館にて」 「リトルデーモンの歌 リトリトリットーリットールー♪」 梨子(何これ、意味が分からない……) 善子「ほら、早くしないと置いて行っちゃうわよ!」 梨子「あ、待ってよ、津島さん!」 ◇鏡の世界 校舎 2F 梨子「ここって、私たちの教室だよね?」 善子「反対向きだけど、そのはずね」 梨子「中に誰かいるみたいだけど……」 「ヨハネ様〜」 「ヨハネちゃん、占って〜!」 「ヨハネ様、一緒に儀式してください!」 善子「……」 梨子「……ヨハネ様?」 善子「っ……誰なの!」 善子は教室の扉に手をかけ、勢いよく開け放つ。 教室の中には、一人の少女を取り囲むように群がる、不気味な仮面をつけた少女たち。 その中心にいたのは、黒い衣装を纏った、善子と瓜二つの少女だった。 善子「なっ」 梨子「双子?」 善子「いないわよ!あんた誰!?」 善子?「クックックッ、よく来ましたね、“私”」 善子「わ、私?何言ってるの?」 善子?「我が名は堕天使ヨハネ」 善子?「ここで貴女を待っていたのです、リトルデーモン達と共に」 もう一人の善子は、仰々しく腕を広げる。 仮面の少女たちの感情のない視線が、一斉に善子へと向けられる。 善子「っ!?」 梨子(周りの子たち、血が通ってないというか……本物の人間じゃ、ない?) 善子?「さあ、次は皆で占いをしましょうか」 「占ってヨハネ様〜」 「ヨハネちゃん、私も〜」 善子「な、何なのあんたたち、タチの悪いドッキリ?誰だか知らないけど、人のこと馬鹿にしないで!」 善子?「ドッキリ?何を言っているのかしら」 もう一人の善子の鈍い金色の瞳が、善子をギラリと捉える。 善子?「堕天使としてリトルデーモンを従える。それは貴女の望みでしょう、ヨハネ」 善子「な、なによ……そんなの、とっくの昔に……」 梨子(堕天使って、確かこの前高海さんも言ってた……) 善子?「いいえ、貴方は今でも望んでいる。この瞳はすべて見通しているのです」 善子「う、うっさい!あんたに何がわかるのよ!!」 善子?「はぁ〜……ノリが悪いわねえ、少し遊びましょうか」 善子?「鬼ごっこでもしましょう?リトルデーモン!」 もう一人の善子は指をパチンと鳴らす。 その合図に応じて、少女の一人が一歩前へと踏み出した。 少女は一瞬震えると、ぐちゃりと音を立てながら、黒いヘドロへとその形を失っていく。 善子「ひっ」 梨子「!?」 ヘドロは梨子たちの背丈ほどの球体となり、宙へと浮き上がる。 球体がくるりと向きを変えると、そこには巨大な口と真っ黒な舌が形作られていた。 善子?「さあ、リトルデーモン達と遊びましょう?」 善子「何なの、こいつら……」 梨子「に、逃げよう!」 善子の手を引いて、梨子は教室を飛び出す。 廊下を駆け出した二人を、数体の怪物が追いかけてくる。 善子「何なのよ、あの化け物!」 梨子「わからない!」 善子「それに、私そっくりのやつがもう一人!」 梨子「だからわからないってば!とにかく逃げるの!」 ◇鏡の世界 体育館 善子「はあ、はあ……」 梨子「あとちょっとだよ、早く鏡に……っ!」 何とか怪物を撒きつつ、体育館へと駆け込む。 しかし姿見のある倉庫の前には、すでに球体の怪物が待ち構えていた。 善子「なんでここにもいるのよ!」 梨子「待ち伏せされてたのかも……」 背後からも、梨子たちを追いかけてきた怪物が現れる。 合わせて3体の怪物たちは舌舐めずりをしながら、二人を体育館の中央へと追い詰める。 善子「ここで、殺されるの?」 梨子「……っ」 善子「い、嫌……、誰か、たすけて……」 梨子(なんとかしないと……でも、どうすれば……っ!) 梨子(あ、頭が、痛いっ!?) 梨子(これって、あの時と同じ──) 割れるような頭痛と耳鳴りが梨子を襲う。 今度ははっきりと、頭の中に少女の声が響く。 「我は汝……汝は我……」 「今こそ、扉を開くとき……」 梨子(──!) いつの間にか、梨子の右手には一枚のカードが握られていた。 青く淡い光を放つカードと、カードに描かれた桜色の少女。 それを見た梨子はニヤリと笑みを浮かべ、そして呟いた。 梨子「ペ、ル、ソ、ナ……!」 カードは青い炎をまとい、より一層輝き出す。 梨子は力を込めて、カードを握りつぶした。 パリンッ!! 梨子「はぁーーーっ!!」 炎が全身を包み、旋風が巻き起こる。 青い炎の渦流の中から、少女が現れる。 赤いツインテールに、白い水玉模様があしらわれた桜色のドレス。 背中の不釣り合いに大きな斧と銀の靴が、冷たい輝きを放っている。 「我は汝……汝は我……」 「我は汝の心の海より出でし者……夢幻の旅人『ドロシー』」 梨子「行くよ、ドロシー!」 怪物の1体が、梨子たちを噛み砕こうと向かってくる。 梨子はただ右手を前へと伸ばす。 ドロシーはその動きとシンクロするように、手を前へ突き出す。 すると背中の斧がひとりでに弧を描き、飛び掛かってきた怪物を叩き斬った。 梨子「ふふっ」 善子「な、何が起こってるの……」 真っ二つに斬られた怪物は、黒い塵となって消え去っていった。 反撃とばかりに、2体の怪物がドロシーへと突撃する。 連続した攻撃を避けきれずに、怪物の突進がドロシーを突き飛ばす。 体当たりを受けたドロシーのダメージは、梨子へと伝わる。 梨子「うっ……このっ!」 怪物の1体を宙に浮いた斧が捉え、斬り裂く。 もう1体をドロシーが銀の靴で蹴り飛ばした。 梨子「ドロシー!!」カッ ドロシーは右手から水の弾を放つ。 水弾は蹴りで怯んだ怪物に着弾すると、しぶきを上げて炸裂する。 水擊を喰らった怪物は破裂して消えていった。 梨子「はあ、はあ……やった……!」 善子「す、すっご……」 役目を終えたドロシーは、青い光とともに姿を消した。 梨子「“ペルソナ”……これが私の、力……」 すみません、今日ともしかしたら明日も更新できないです 現在梨子ちゃんの人間パラメータは次のようになってます 知識 1 芸術一筋 魅力 1 目立たない 勇気 1 はわわ 伝達力 1 ひかえめ 女子力 1 普通 善子「すっごい……な、何なの、今の?」 善子「“ペルソナ”って言ってたわよね、あれってどういう」 善子「というか一体何したの?ねえ、私も出せたりしないの!?」 梨子「え、えっと、私にも何が何だか」 パチパチパチ 善子?「我が僕を退けるとは、誉めて遣わしましょう」 善子「あ、あんた!」 善子?「それに比べて私は、泣いて助けを乞うだけなんて。情けないわねえ」 善子「っ……」 善子?「でも仕方がないわよね。黒魔術?悪魔召喚?そんなの貴方には使えっこないんだから」 梨子「あなた、何者なの?」 善子「そ、そうよ、さっきから“私”って、ふざけんじゃないわよ」 善子「それに黒魔術とか、私にはもう関係ない!」 善子?「自分を偽るのはやめなさい、堕天使ヨハネよ」 善子?「今の姿は人の世に溶け込むための仮初の姿」 善子?「自分のありたいように自由に振る舞って、特別な存在として皆に愛されたい」 善子?「それの何がいけないというの?」 善子「な、何言って……私はそんなこと……」 善子?「いいえ、貴女はそう願っている。私こそが、貴女の“理想”の姿なのだから」 梨子「理想の姿……?」 善子?「現実では誰も私を受け入れてはくれなかった」 善子?「だからわざわざ田舎の学校に通って、自分を捻じ曲げて過ごしてる。そうでしょう?」 善子「っ、やめて……!」 善子?「でもね、私の“夢”は、ここでなら叶えられる」 善子?「さっきの子たちも、リトルデーモンとしていつでも皆私を慕ってくれる」 善子?「儀式だって誰も咎めはしない」 善子?「“こちら側”では、誰もあなたを否定したりしないのよ」 梨子「そっか、だから学校に魔法陣や石像があったんだ……」 善子?「私を受け入れなさい、ヨハネ」 善子?「そうすればここで永遠に、ありのままの自分として過ごせるわ」 梨子「ちょっと待って、永遠にって、戻れないってこと?」 善子?「わざわざ退屈な現実に戻る意味などないでしょう?ここで楽しく暮らせるのだから」 梨子「そんな……」 善子「違う……」 善子「私は……私はそんなこと、望んでない!」 善子「私はただ、普通の子として過ごせればそれでいいの」 善子「堕天使なんて、私はそんなものいらない!」 梨子「津島さん……」 善子?「クックックッ、あーはっはっはっ!!」 善子?「ええそうね、私にも貴女のようなか弱き存在は不要。だから──」 もう一人の善子は漆黒の闇を纏い、巨大な繭のように彼女を包み込む。 繭が弾けて消え去ると、巨大な黒と赤のドレスを着た、翼の生えた怪物へと変容していた。 善子の影「我は影、真なる我……」 影「理想の自分のために、死んでくれるかしら?」 女王のような出で立ちの影は、手にした王笏を善子に向かって振り抜く。 梨子はとっさに善子を抱えて転がり、なんとか攻撃を避ける。 梨子「大丈夫、津島さん?」 善子「なんなのよアイツ、好き勝手言って……」 梨子「あなたの本心、じゃないの?」 善子「違う、あんなの私じゃない!」 梨子「でも……」 梨子(きっとあの子は、津島さんの内面から生まれた、理想の姿……) 梨子(とりあえず、どうにかして止めないと) 梨子(もう一度、ペルソナを……) 梨子が念じると、手のひらに再びカードが現れる。 梨子「来て、ドロシー!」パリンッ!! 梨子は念を込めて、カードを砕く。 すると青い光の中からドロシーが召喚される。 ドロシーは宙に浮く斧を、影に向かって振り下ろす。 しかしその一撃は王笏によって防がれてしまう。 影は斧を弾き飛ばし、王笏をドロシーへと振り下ろす。 ドロシーは後ろへ飛び退いて攻撃を避ける。 そのまま振り抜かれた王笏は床を砕いて、穴を開けた。 影「堕天使なんていらない?どの口が言うのかしら」 影「未練がましくて、小物も飾りも、結局捨てられてないくせに」 善子「っ……」 影「こちら側に来てから、楽しかったでしょう?」 影「魔法陣だって、人前では書けないけど、心の中ではいつも書きたがってるんだもの」 善子「違う、私は、もうそんなの……」 ドロシーは影に向かって数発水弾を撃ち出す。 影は背中の黒い翼をはためかせ、漆黒の風を作り出す。 風は水弾を打ち消し、黒い羽根と水しぶきがあたりに舞い散る。 影「ここに来たのだって、退屈な日常にウンザリしてたから」 影「こんな摩訶不思議、普段味わえないものね!」 影は翼を大きく羽ばたかせる。 羽ばたきは黒い強烈な旋風となり、梨子と善子を吹き飛ばす。 善子「うあぁー!」 梨子「きゃあーっ!」 梨子「うぅ……」 善子「いたた……」 梨子(ふらふら、する……) 梨子は立ち上がろうとするが、床へと崩れ落ちてしまう。 その姿を見て、影はニヤリと笑みを浮かべた。 影「無邪気だった頃は楽しかったわね」 影「堕天使、黒魔術……何をやっても、皆と楽しく過ごせてた」 影「だけどいつからか、周りの子は私を奇異の目で見てきた」 影「誰も私のことを理解してくれなかった」 影「その子だって、きっとそう」 影は梨子を指差して、金色の瞳で睨みつける。 影「本当の私を知ったら、どうせ気持ち悪がるに決まってる」 善子「やめて……」 影は善子へと歩み寄りながら、言葉を続ける。 影「仕方ないわよね、一人は寂しくて怖いんだもの」 影「嫌われたくない、いつだって皆に囲まれていたい」 善子「私は、そんなこと思ってない……」 影「そのために、外面を取り繕って、適当に会話にうなずいて」 影「言いたいことも言えずに、ただ周りに溶け込もうと自分を殺すの」 善子「違う、もうやめて!」 影「そんなんだったら……いっそ消えちゃいなさい!」 影は杖を振り上げ、善子へ叩きつけようと構える。 梨子「……だめっ、ドロシー!」 間一髪のところで、ドロシーの蹴りが影を捉えて退ける。 善子「私は、堕天使なんて……」 梨子「好きなんだよね?堕天使」 善子「……高校生にもなって、そんなの通じるわけないじゃない」 梨子「通じるかどうかじゃない、好きかどうかだよ」 善子「!、好きか、どうか……うん、好き。嫌いになんかなれない」 善子「……でも、いいの?変なこと言うかもしれないし、時々儀式とかするかもよ?」 梨子「こんなところに一緒に来てるんだもの、それくらい私は我慢するよ」 梨子「それが本当の津島さんなんでしょう?」 善子「……そうね」 善子「私は傷つくことが怖くて、逃げていただけ」 善子「誰かに否定されることを恐れて、自分自身を否定してた」 善子「でも、もうそんなのはやめる」 影「その言葉を待っていたわ……私を受け入れなさい?」 善子「でもね──やっぱりあんたは、私の理想の姿なんかじゃない!」 影「っ!?」 梨子「え!?」 善子「私の友達を……リトルデーモンを傷つけるようなやつは、堕天使失格よ!」 梨子「津島さん……」 影「っ、黙りなさい!」 梨子「させないっ!」 善子に向かって振り下ろされた杖を、ドロシーの斧が受け止める。 善子「夢が叶えられるとか言ってたけどね、リアルこそが正義なのよ」 善子「私にはリトルデーモンを増やし、地上にその名を轟かすという崇高なる使命があるの」 善子「使命を果たすためには、こんな世界に一人で引きこもってる暇はない!」 影「うるさい!黙れ!」 善子の言葉に、影は頭を抱えて苦しみだす。 梨子(様子がおかしい……今なら!) 梨子「ドロシー!」カッ!! ドロシーは影へと一際大きな水弾を放つ。 炸裂した弾は巨大な水の奔流を作り出し、影を飲み込む。 影「きゃあーーーっ!」 水撃に影は倒れると、翼を散らしながら元の姿へと戻っていった。 善子はもう一人の自分の元へと歩み寄る。 影「……」 善子「……自分と向き合うって、恥ずかしいわね」 善子「ずっと忘れようとしてた。堕天使こそが私のアイデンティティだって」 善子「あなたも怖かったのよね、自分に否定されるのが」 善子「でも、もう見失わない」 影「」コクリ 善子の言葉に影が頷くと、その姿が青い光に包まれる。 影は姿を変え、紺色のドレスを纏った金髪の少女となった。 自分の夢を追いかける強い心が、“力”へと変わる…… 善子は困難に立ち向かうための人格の鎧、ペルソナ“アリス”を手に入れた! アリスは青いカードへと姿を変える。 くるくると回りながら善子の手の平へと収まると、淡い光を放ち消えていった。 善子「これが私の“ペルソナ”……」 善子「……疲れた」ヘナヘナ 梨子「大丈夫、津島さん?」 善子「……ヨハネ」 梨子「?」 善子「我が名は堕天使ヨハネ。だからヨハネと呼んで」 梨子「ええっ、急にそれは、ちょっと……」 善子「そこはOKするとこじゃないの!?」 梨子「でもいきなりは恥ずかしいよ……うーん、“よっちゃん”じゃだめかな?」 善子(渾名……悪くないわね//) 善子「し、仕方がないわね、特別よ」 梨子「ふふっ、ありがとう、よっちゃん」 善子「こちらこそ、貴女がいてくれて助かったわ。ありがとう……梨子」 梨子「うん!じゃあ帰ろっか」 善子「そうね、このままいたら何が出てくるかわかったもんじゃないし」 ◇体育館 梨子「入った鏡から出られてよかったね」 善子「そうね……って、うわ、もうこんな時間!?」 曜「梨子ちゃん!善子ちゃん!」 梨子「渡辺さん、待っててくれたの?」 曜「当然だよ!全然戻ってこないし、すっごく心配したんだよ!」 梨子「ごめんなさい。えっと、色々あって」 梨子「渡辺さんは大丈夫だった?」 曜「あー、うん……叱られたけど、悪いことしてたのは事実だしね」 曜「それで、鏡の中ってどうなってた?」 梨子「えーっと……」 善子「そんなことより終バスよ、終バス!急ぎなさい!」 梨子「あ、待ってよ、よっちゃん!」 曜「よっちゃん……?」 曜「というか私も急がないと!よーし、全速前進、ヨーソロー!」 #1 Fin. Next #2 If you love her... 保守していただいた方ありがとうございました 次の話はちゃんと書き溜めてから、#2としてスレ立てて書きます >>1 乙 まさか善子ちゃんがアリスとは 即死技使いそう おつおつ ヨハネの設定が上手いこと書かれててよかった >>35 梨子主人公なのは大体ペルソナ主人公転校生だからじゃない? 特に梨子は4パターンかな ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
read.cgi ver 07.5.1 2024/04/28 Walang Kapalit ★ | Donguri System Team 5ちゃんねる