ことり「絵里ちゃんもバイトしたいの?」絵里「ええ……でも、私って接客業は出来ないと思うの」
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ことり「そんなことないんじゃないかなぁ」
絵里「許容範囲を越えた出来事があると回りが見えなくなってしまうところがあるのよ」
ことり「テンパっちゃうってこと?」
絵里「そうね、ことりたちがμ'sを立ち上げたからの付き合いで分かっているとは思うけれど」
ことり「うーん、確かに一人で突っ走るところはあるかも」
絵里「だから、メイド喫茶とか、まあそれは別の理由もあってしたくないけれど、出来れば自分一人で完結するようなお仕事が望ましいのよ」 ことり「……あっ、そうだ!そういうミスをしても帳消しになるお仕事がひとつだけあるよ!」
絵里「えっ!?そんな都合のいいものが?」
ことり「でも、あ〜、やっぱりダメだよぉ!これは無し!」
絵里「えぇ……一度言い出したのだからせめて話くらいは聞かせてもらえないかしら」
ことり「う〜ん……」 絵里「どうしても教えてもらえないの?」
ことり「……絵里ちゃんはいくらくらいのお金が欲しいのかな?」
絵里「高校生活最後の思い出に、自室をまるっとリフォームしたいと思ったんだけど、出来れば自力で済ませたいのよね」
ことり「家具や家電も買い換えたり、壁紙も張り替えたり?」
絵里「そうよ!だから……ざっと10万円から20万円もあれば済むとは考えているわ、卒業までの期間バイトをすれば十分貯まるわよね?」 ことり「100万円」
絵里「え?そんなに掛かるかしら……?」
ことり「違うよ、一回のお仕事で100万円、それが絵里ちゃんに教える仕事の単価だよ」
絵里「え……?そんなにはいらないわよ」
ことり「いらなくても貰えるんだよ、この5億年ボタンを押せば」
絵里「……え?」 ことり「5億年ボタンの話は当然知ってるよね?」
絵里「いや、全然初耳よ、5億年なんて単位も恐竜図鑑でしか目にしたこと無いわ」
ことり「このボタンを押すと絵里ちゃんは何もない空間に飛ばされて、一人で5億年の時を過ごすことになるの、そして5億年後に今この場所へ戻ってくる」
絵里「……?」
ことり「実質的に一瞬で100万円手に入るんだよ!」 絵里「……?」
ことり「5億年を過ごす間、寝ることも死ぬこともなく、ただ過ごすだけなの」
ことり「5億年間、意識もハッキリしたまま、ただただ孤独に何もない空間で5億年暮らすんだよ」
絵里「どうしてそれで100万円も貰えるのかしら」
ことり「どうして日本の最低賃金は900円程度なんだと思う?」
絵里「特に理由は無いのでは?だから毎年10円20円ずつ上昇しているのでしょうし」
ことり「そういうことなの」
絵里「……?」 ことり「このボタンを押せば、100万円手に入る、それでいいと思うな、どうしてとか誰のお陰でとか、そういうことじゃないと思う」
絵里「……?」
ことり「押す?」
絵里「いや、仮に押したとして、私は5億年分の年をとることになるの?その間の記憶はどうなっているのよ」
ことり「押した瞬間の時間に戻ってくるから、5億年分の記憶は全部無くなるし、年も今のままだよ!」
絵里「ことりは何でそんなボタンを持っているの?自分で押したことはある?」 ことり「これは拾ったの、説明書と一緒に落ちてて、海未ちゃんで何度か試したから効果も本物だよ!μ'sの活動資金の大半もそこから出てるんだぁ!」
絵里「え……?」
ことり「押す?」
絵里「5億年って相当長いわよね?」
ことり「気の遠くなる長さのはずだけど、海未ちゃんはいっつも一瞬で100万円を手にするし、全然苦しそうでもないよ、記憶が無くなってるから」
絵里「……まあ、一度くらいなら、物は試しに」 ことり「じゃあまずは説明書に書かれたQRコードをスマートフォンで読み取ってみて?」
絵里「……あっ、ユーチューブに繋がったわ!……へえ……やっぱり辛そうね、あっ、でも戻ってきたら平然としてる!」
ことり「ことりは怖いから押したことないけど、5億年の間、本当にこんなことを思うのかは気になるの」
絵里「それを確かめるために押すだけでも価値がありそうね、ちょっと気になってきたわ」
ことり「珍しい体験が出来るのはちょっと羨ましいよ」
絵里「お金とか抜きに押してみようかしら…」
ことり「だったら半分の50万円貰ってもいい……?ことりがこのボタン教えてあげたんだし……」
絵里「う〜ん、まあいいわ」 絵里「じゃあ押すわね」
ことり「……いいよ!」
絵里「どうしてことりが目を瞑るのよ……はい、押しt」 絵里(わっ!動画で見たのと同じ空間!)
絵里(手始めに走ってみようかしら!)
絵里(……)
絵里(あっ、すごい、何か思ったよりも全然疲れない……そっか、疲れたら眠くなるからかしら)
絵里(本当にぼーっとするしかやることがない……) 絵里(……)
絵里(……親に連れられてよく知らない地方の旅館に泊まったときの気分だわ)
絵里(本当にこれから5億年も過ごすのよね……)
絵里(動画だと数百万年だか数千万年だか過ぎてからもボタンを押した日のことを思い返していたけれど、絶対に忘れるわよね、普通に考えたら)
絵里(もう1週間くらい経ったかしら……1億年くらい過ぎたかもしれないわ) 絵里(残念、まだ10分くらいでした〜、まだ覚えてます、さすがエリーチカ、賢い)
絵里(……暇ね)
絵里(もう一回走ろうかしら)
絵里(……)
絵里(……やっぱり大して疲れない)
絵里(お昼寝……は、出来ない、まあ説明通り眠気もないのだけれど) 絵里(あっ、そうだ!出口がないのかも確認してみましょう!)
絵里(……)
絵里(……そもそも壁すらないわね)
絵里(壁も天井も無いのに真っ暗で、それなのに床は結構先まで見えるなんて不思議な空間だわ)
絵里(確か動画だと家族や友人のことを考えていたけれど、どうせことりと話したあの場所へ帰るのだからそんなことに思いを馳せる意味はないわね) 絵里(……間違いなく数日か数週間は経ったわね)
絵里(全然お腹が空かないし苦しさもないわ、これも説明された通り……) 絵里(……数ヵ月経ったかしら)
絵里(5億年って、数ヵ月、数年、そんな規模じゃ無いってことは分かっていたけれど、これは想像以上に長いわ)
絵里(想像しなかったと言えば、全く想定外の出来事もいくつかある……) 絵里(まず、意識はハッキリしたまま、という説明通り、本当にハッキリしている)
絵里(気が触れてしまいそうになる、というようなことが書かれていたわよね)
絵里(気が触れては意識がハッキリしていることにはならないせいか、全く発狂する気配もない)
絵里(確か動画の彼は妄想ワールドで過ごしていたけれど、妄想に浸ろうとしても謎のストップが掛かるわ)
絵里(リアリティのある妄想は、例えばタルパと言うのかしら、目に見えて触れることの出来るような妄想の類いは)
絵里(そうしたものは夢と判断されるのかしら、寝ていることになるからダメみたいね) 絵里(5億年の長さを思うと不安に押し潰されそうになるけれど、ある程度のストレスが掛かると急に意識が覚醒してハッキリする……)
絵里(意識がハッキリしたまま、という第一の制約の力が強すぎる……)
絵里(全然辛さが実感できない……!) 絵里(ことりに教えてあげたいわ、何の辛さもなく5億年過ごせるわよ、って)
絵里(5億年が長い、という認識以外、特にこの空間に対して思うことが無い……)
絵里(退屈だなぁ、と考える頃には意識がハッキリしてくる……)
絵里(食事を摂らなくても肉体の健康が維持されてるせいか、病気になる気配もない)
絵里(寝なくても疲れがとれる、というかそもそも疲れが溜まらない) 絵里(例えるなら、常に、そう……μ'sに加入させてもらえたあの日の、明るい気分に立ち戻れる感じね……)
絵里(ずっと晴れやかな心地よさに包まれたまま、時間だけが過ぎて行くわ)
絵里(ここでの過ごし方に馴れると、悩みを抱いた瞬間に、かえって強く脳にストレスを掛けるように考え続けると、たちまち不安が消え去る……)
絵里(試しに動画のように、自分の歯を抜いて遠くへ投げて探しにいくという遊びをしてみたら、この空間に対して意識を向かせるためか、痛みまで無くなってしまった……) 絵里「……あっ、100万円!」
ことり「すごい!やっぱりボタンを押した瞬間にお金が出てきた!」
絵里「凄いわね、これ!」
ことり「本当に何も覚えてないの!?」
絵里「その質問の意味が分からない程度に何も覚えていないわ!本当に私はボタンを押しただけなのよ!」
ことり「……すごい!」
絵里「ことりも押してみたらどう?」 ことり「ううん、ことりは絵里ちゃんから50万円貰ったらそれで満足だから……このボタンの先に何があるのか知りたいだなんて、そんな高望みはしないよ……ことりには贅沢だよ、そんなの……」
絵里「う、うん、そうね、そうだったわ……はいどうぞ」
ことり「ありがとう、絵里ちゃん、ボタンを押したくなったらいつでもことりに声を掛けてね、ことり、μ'sのみんなのお役に立つことが何よりの喜びだから!」
絵里「え、ええ、ではまた、リフォームが終わったら部屋に招待するわね」 辛いと思わないどころか多幸感にただ包まれて過ごすなら最高じゃん
なにそのオプション聞いてないんだけど ことり「……追加でボタン押さなくて大丈夫?50万円で足りる?」
絵里「足りるとは思うけれど……でも本当に一瞬で100万円出てきたものね」
ことり「ことりが勤めてるメイド喫茶、椅子一脚が12万円するみたいなの、北欧家具?っていうのかな、そういうのお部屋に飾らなくて大丈夫……?」
絵里「……上を見るとキリがないわ」
ことり「下を見てもキリはないよ、ホームレスだって生きてるし、飲み水が汚染された国の子供だっているんだよ?」
絵里「そう言われるとそうね」 ことり「上を見ようよ、絵里ちゃん、自分の中に自分で壁を作っちゃダメ、ことり、μ'sでそういうことを学んできたよ?」
絵里「私だってそうよ?」
ことり「絵里ちゃん、もう一回押そ……?」 このことりちゃんが糞だと分かるというか感じることは出来るのだが何が糞なのかは説明が出来ない 言ってることが滅茶苦茶だからだと思う
5億年の体験が出来るのは羨ましい→自分が望むには贅沢
高望みしたくない→自分の中に壁を作ってはいけない
何がなんでも絵里ちゃんを陥れようとする邪悪さを感じる 滅茶苦茶な理屈なのにそれっぽいこと言って丸め込んでしまう話術に恐怖すら覚えますよことり エリチカは5億年の世界でもことりやμ'sのことを考えてるのに鳥は金のことしか見てないの草 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています