ルビィ「函館の夜にあったこと」
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ルビィ「ちょっとお手洗い行ってくるね」
理亞「ん。暗いから気を付けて」
ジャァァァ…
ルビィ(はぁ。今日も遅くなっちゃった。毎日こんな時間まで起きてるなんてお姉ちゃんにバレたら怒られちゃう)フキフキ
ルビィ(でも――あと少し。あと少しで、できる。完成するよお姉ちゃん。ルビィたちの曲が――ん?)
「ぐすっ……すーっ、はー……」
ルビィ(? ……なんだろ。すすり泣く、声? こんな夜中に? ……え。そ、それって。お、お化け――!?)
ルビィ「ピギィィィ!?」
「だ、誰!? ――あ。ルビィ、さん」
ルビィ「あ。せ、聖良さん……?」 ルビィ「よ、よかったぁ、お化けじゃなくって。……あれ? じゃあさっきのって」
ルビィ「聖良さん……泣いてる?」
聖良「っ――!」ゴシゴシ
聖良「……――ふふ。すみません、かっこ悪いところ見せちゃいましたね」
ルビィ「……いえ」
聖良「理亞には内緒にしておいてもらえますか。あの子が知ったら、きっとまた落ち込んでしまうから」
ルビィ「……」
聖良「それにしても、毎日遅くまでやってますよね。何をしているかは聞きませんけど体調管理は――、」
ルビィ「聖良さんは」
ルビィ「やっぱり、辛いですか。地区予選のこと」
聖良「……触れてほしくないことを平然と聞いてくれますね」 ルビィ「あっ。……ご、ごめんなさい」
聖良「いえ。そういうの、嫌いじゃありませんよ。でも思ったよりはっきりと言うんですね、ルビィさんは」
聖良「ふむ……そうですね。良ければお茶でもしませんか。座ってください」
ルビィ「……」
聖良「みなさんには感謝しています。みなさんが滞在してから、理亞が楽しそうで」コポコポ…
聖良「あの子はこういうとき、引きずる子だから。立ち直るにはもっと時間がかかるんじゃないかって」チッチッチッ ボゥ…
ルビィ「……」フルフル
ルビィ「まだ、だと思います。きっとそんな簡単じゃ、ないです」
聖良「……そうかもしれませんね」
ルビィ「聖良さんだって」
聖良「くすっ……本当に、はっきりと言う」 ルビィ「このお店に入って、聖良さんに会って、びっくりしました。あんなことがあったのに、すごくいつも通りで」
ルビィ「3年生だから、お姉ちゃんと同い年だから、そういうものなのかなって」
聖良「かっこ付けてるだけですよ。誰だって情けないよりは、立派な自分でいたいでしょう?」
聖良「安いプライドです。本当はもう手遅れなのに」
ルビィ「手遅れ?」 聖良「もう見せちゃいましたから。あの子に、私の情けない姿を」
聖良「一番苦しいのは、自分を許せないのは、あの子のはずなんですけどね。私の姿に誰が一番傷つくかなんて」
聖良「そんなことくらい分かっていた、はずなのに」
ルビィ「聖良さん……」
聖良「――どうぞ。お茶と思いましたがこの時間なのでホットミルクで」コトッ
聖良「砂糖。どうします?」
ルビィ「……ください」 聖良「ずず……ん、まだちょっとぬるかったですかね」
ルビィ「聖良さんは。地区予選のこと、どう思ってるんですか?」
聖良「そう、ですね。今にして思えば、確かに理亞の様子はおかしかった。気付けなかったのは私の落ち度です」
聖良「事前に何か気の利いたことでも言ってあげられれば、違う結果もあったかもしれません」
ルビィ「……悔しい、ですか?」
聖良「もちろん。でも、強がりに聞こえるかもしれませんけど、悔しいだけなら取り乱したりしませんよ、私は」
聖良「悔しい思いなんていくらでもしてきました。ですけど……悔いを残したのは、今回が初めてかも」
ルビィ「……」
聖良「ふふ。ミルク、冷めますよ?」 ルビィ「……ルビィにも、お姉ちゃんがいるんです」
聖良「知っています。黒澤ダイヤさん。華やかで存在感があって。とても素晴らしいスクールアイドルです」
ルビィ「もし、理亞ちゃんがルビィだったら。もし、聖良さんがお姉ちゃんだったら。ルビィたちは、どうなってたかなって」
聖良「……さて。おふたりの関係はよく分かりませんから、なんとも」クピ…
ルビィ「……ですよね。ごめんなさい」
聖良「あ、じょ、冗談です冗談。あまりに大胆な質問が続いたものだから、つい、意地悪を」
聖良「まあ……そうなったら割り切るのは難しいと思いますよ。少なくとも、眠って起きてそれですっきりとは、なかなか」
ルビィ「……はい」 聖良「何も思い残すことは無いように。そう心に決めていたし、そうしなければと今も思う」
聖良「全力で駆け抜けた青春の日々に、しがみ付くなんてしたくない。それはこの1年の想いまで汚すようで――でも」
聖良「そう思うのに……やっぱり、難しいですね」クスッ
ルビィ「どうすれば、割り切れるようになりますか……?」
聖良「どうでしょう。時間が解決してくれるのか、それとも。私がそれを知りたいくらいで。――ただ」
ルビィ「ただ?」
聖良「一番の心残りはあの子です。あの子はスクールアイドルを辞めると言っていますけど」
聖良「出来るならまた踊ってほしい。スクールアイドルをしているあの子は、とても楽しそうにしていたから」
聖良「そして叶うなら置いてきてほしい。私たちの想いを全部、あの、銀世界の海へ――」ウルッ
ルビィ「聖良さん……」 聖良「……ふふ」グシグシ
聖良「我ながら、未練ばっかりですね。かっこ悪いです」
ルビィ「聖良さん……、っ――!」グビッ
ルビィ「んっ、んっ、んっ……ぷはっ!」
聖良「ルビィさん? そんな一気に飲まなくても」
ルビィ「――聖良さん!」
聖良「は、はいっ」
ルビィ「絶対に理亞ちゃんが聖良さんの心残りを何とかします! 聖良さんを、かっこ悪いなんて言わせませんっ!」
ルビィ「だから、だからもう少しだけ理亞ちゃんを信じて――泣かないで待っててください!」
聖良「……ルビィさん」 ルビィ「ミルク、ごちそうさまでしたっ。理亞ちゃんの部屋に戻りますね!」タタッ
聖良「あっ。待ってください、口の――……行っちゃった」
聖良「……あの子を。理亞を信じて……ですか」
ルビィ(うん、うんっ。がんばろう。がんばらなきゃ。ルビィたちが、やらなきゃダメだよ!)トテトテ
ルビィ(がんばルビィ――あれ?)
花丸「ん――お帰りなさいずら、ルビィちゃん。話は終わった?」
ルビィ「花丸ちゃん? どうしたの部屋の前に」
花丸「いやぁ。ちょっと、猛獣が部屋から出ないようにしてて……」
ルビィ「も、猛獣!?」
「――どいてって言ってるでしょ!? 台所に飲み物取りに行くだけなのに!」
「お、落ち着きさないリトルデーモン。今、台所に近づいては駄目……あなたの心の闇に迫る魔女のサバトが」
ルビィ「……ぅゅ?」 「そういうのいいから。ほら、早くどいて善子」
「くっ、こうなったら堕天龍鳳凰縛を使わざるを得ない! あとヨハネよ!」
ルビィ「あのー……何してるの?」ガチャッ
善子「――っと。ルビィ、戻ったのね。助かっ……んん?」
理亞「お帰り。ずいぶん遅かったけど、どうしたの」
ルビィ「あ、うん。ちょっと、いろいろ。――それより、理亞ちゃんっ」
理亞「?」
ルビィ「イベント、絶対、絶対に成功させようね! 聖良さん、きっと喜んでくれるよ!」
ルビィ「ルビィたちは大丈夫だよって。せめてルビィたちのために悔いは残さないでって――言ってあげられるよ!」
理亞「ルビィ……」
花丸「ルビィちゃん……あの」 善子「……ルビィ」 理亞「えっと。口の周り、白いの付いてるけど。それ何、牛乳?」
ルビィ「えっ?」
おしまい これにておしまいです
久しぶりに真面目な聖良さんを書いた気がします おつおつ
聖良さんがルビィさんと言うだけで警戒してしまうのはこの板のせい
ポエマー聖良さん好き 本当に久しぶりに本来の聖良さんを見た気がする
良い 大人びてカッコイイけど相応に弱さもある姉様
成長してカッコイイこと言ってるけど口に牛乳の輪っか作ったままのルビィちゃん ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています