穂乃果「グラウンドを駆け抜けろ!」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
穂乃果「ふわぁ」
穂乃果(私は高坂穂乃果)
穂乃果(音ノ木坂学院に通う高校生)
穂乃果(これでも野球少女で、強豪クラブチームに所属している選手)
海未「穂乃果、欠伸をするときはちゃんと手で口を塞ぐ」
穂乃果「はーい」
穂乃果(今日は幼馴染の海未ちゃんと二人で朝から練習をしていた)
穂乃果(日課だから『今日は』という表現は違うかもだけど)
穂乃果(慣れていても疲れるものは疲れるし)
穂乃果(学校へ向かう今だって、眠たくて仕方ない) 海未「今日は全校集会なんです」
海未「そんな態度ではことりのお母さまに怒られてしまいますよ」
穂乃果「分かってるよ〜」
穂乃果(ことりちゃん、もう一人の幼馴染)
穂乃果(中学の途中までは一緒に野球をやってた)
穂乃果(だけど『運動はあんまり得意じゃないから』って辞めちゃって)
穂乃果(ことりちゃんなりの良さだって、あったのに)
穂乃果(まあ、ユニフォームに装飾して怒られるようなタイプだし)
穂乃果(服飾系の活動に夢中な今の方が、楽しそうなのも事実だけど) 海未「それにしても、緊急の全校集会」
海未「珍しい、というか驚きましたね」
穂乃果「だよね」
海未「どんな事情なのでしょうか」
穂乃果「あれかな、お昼寝タイムの導入とか!」
海未「……どこのヤンキー校ですか、それは」
穂乃果「だって、授業中いつも眠いんだもん!」
海未「校外で練習をしている私たちの勝手な事情です」 穂乃果「だけどさー」
海未「そもそも、私はきちんと起きて授業を受けています」
穂乃果「ぐっ」
海未「平然と寝て、試験で酷い点数を量産する穂乃果に問題があるのでは?」
穂乃果「そ、そう言われると……」
海未「部活ではないから赤点で出場停止にはなりませんが」
海未「あまり続くと留年してしまいますよ」
穂乃果「そ、そこまで酷くはないもん!」 ことり「穂乃果ちゃん、おはよう」
穂乃果「あっ、ことりちゃん!」ダッ
海未「ことり、おはようございます」
ことり「海未ちゃんも、おはよう」
穂乃果「聞いてよ! 朝から海未ちゃん酷いんだよ!」
ことり「ど、どうしたの?」
海未「たいしたことではありません」
海未「ただ授業中に寝ないよう注意しただけです」 穂乃果「でもさ〜」
ことり「ほ、穂乃果ちゃんも練習頑張ってるし」
海未「それはそれ、これはこれです!」
ことり「あ、あはは」
海未「そういえばことり」
ことり「なあに?」
海未「今日の全校集会、内容は知っていますか?」
ことり「分からないの」 ことり「だけどお母さん、少し様子が変だった」
穂乃果「変?」
ことり「なんかね、緊張している? みたいな感じで」
海未「やはり重要な話なのでしょうか……」
ことり「かも……」
穂乃果「うーん」
穂乃果(もしかして、先生が辞めたとか、誰かが事件でも起こしたとか?)
穂乃果(校則とか厳しくなったら嫌だな〜) ―
――
―――
穂乃果(そんな感じで呑気に考えていた)
穂乃果(なのに――)
【廃校 廃校 廃校 廃校 廃校 廃校 廃校 廃校】
海未「……この張り紙は、ふざけている?」
ことり「先生たち、ノリノリで貼ってたよね」
海未「自棄になってしまったのでしょうか……」 穂乃果「だけど、廃校……」
ことり「まさかこんなことになるなんて……」
海未「確かに生徒数は減っていました」
海未「国立の、都心の真ん中にある学校が……」
ことり「なにかの、間違い?」
穂乃果「ドッキリとか?」
海未「……今年の1年生は、1クラス分しかいないのは事実」
海未「そう考えると……」 穂乃果「……廃校」
穂乃果「そうなると、困るよね」
海未「ええ……」
ことり「穂乃果ちゃん、真剣な目……」
穂乃果「どうしよう」
穂乃果「野球推薦とか、転校する時でもあるかな?」
海未「はい?」 穂乃果「だって私、勉強できないし」
穂乃果「高校受験は頑張れたけど、その後野球漬け」
穂乃果「今さら勉強なんて……」
海未「……穂乃果」
穂乃果「な、なに」
海未「少なくとも、卒業まで学校は残る」
海未「又は統合される先の学校へ自動的に転校になるはずです」 穂乃果「そ、そうなの?」
ことり「う、うん。たぶん」
穂乃果「なんだー、心配して損した」
海未「やれやれ、穂乃果らしいですね」
ことり「うん、穂乃果ちゃんらしいね」
穂乃果「本当にビックリしたんだよ、もー」
海未「はいはい」 穂乃果「けどそうなると」
穂乃果「廃校問題は気にしても仕方ないのかな」
海未「そうですね」
海未「私たちに解決できる問題ではないですし」
ことり「……うん」
穂乃果「…………」
穂乃果(本当は嫌だけど)
穂乃果(この大好きな学校が、なくなっちゃうのは)
穂乃果(けど廃校を救う方法なんて、思いつかないし) ※
穂乃果「ただいまー」
高坂母「あら、お帰り」
高坂母「今日は練習休み?」
穂乃果「うん」
高坂母「おやつ、居間に置いてあるから」
穂乃果「はーい」 穂乃果「ゆきほー」
雪穂「あ、おかえりー」
穂乃果「おやつは?」
雪穂「はい」
穂乃果「これは?」
雪穂「どう見てもお饅頭」
穂乃果「……あんこ」
雪穂「エネルギー効率がいいんだよ」 穂乃果「分かってるけど……」
雪穂「お茶、淹れてきてあげるから」
穂乃果「あんこ飽きたよ〜」
雪穂「お母さんに聞かれたら怒られるよ」
穂乃果「むー」
穂乃果(たまにはチョコとか食べたいよ)
穂乃果(雪穂、よく文句言わずに食べるよね) 穂乃果「ん?」ピラッ
穂乃果(なんだろ、この冊子)
穂乃果(学校の、パンフレット?)
穂乃果(UTX学園)
穂乃果(近くにある高校だっけ)
穂乃果(確か大きなビルが校舎の)
穂乃果(写真からして、古いうちとは全然違う) 穂乃果(だけど、あれ?)
穂乃果(これを雪穂が見てたってことは)
雪穂「お姉ちゃん、お茶入れてきた――」
穂乃果「雪穂、オトノキはいらないの!?」
雪穂「わっ」
雪穂「お茶こぼれちゃうじゃんもう」
穂乃果「ご、ごめん」 穂乃果「だけど、このパンフレット」
雪穂「ああ」
穂乃果「どうして他の学校の?」
穂乃果「うちはおばあちゃんの代からずっと音ノ木坂なのに」
雪穂「だって、廃校になるから」
穂乃果「えっ」
雪穂「もう噂になってるよ」
雪穂「事実なんでしょ」
穂乃果「そ、それはそうだけど」 雪穂「それに廃校がなくても」
雪穂「UTXは、高校野球をやるのに最適な学校だし」
穂乃果「そっか、学生野球やりたいんだもんね」
雪穂「うん」
雪穂「そもそもさ」
雪穂「音ノ木坂に入ってもお姉ちゃんと野球ができない」
雪穂「部活に入ってるわけじゃないし……」
穂乃果「それは……」 雪穂「だから私は、こっちに入るよ」
穂乃果「UTX……」
雪穂「近代的な学校ってだけじゃない」
雪穂「女子野球の名門」
雪穂「近年圧倒的な成績を残している」
雪穂「女子高校野球は世間でもちょっとしたブームなんだよ」
雪穂「ここがアイドル的な人気を誇っているおかげでね」
穂乃果「ふえー」 雪穂「都心にありながら、環境、設備、指導者は最高の物を揃えている」
雪穂「ここを目指さない女子球児はいないよ」
穂乃果「音ノ木坂は、まともに野球部すらないからね」
雪穂「でしょ」
雪穂「だからそもそも、あり得ない選択肢なの」
穂乃果「そっか……」 雪穂「それにしても、UTXを知らないなんて」
雪穂「野球をやってるのに、信じられない」
穂乃果「あ、あはは」
雪穂「だけどまあ、納得はしてくれたでしょ」
穂乃果「う、うん」
雪穂「私だって、本当は音ノ木坂へいきたかったんだよ」
穂乃果「そう、だよね」 穂乃果(棚に飾ってある写真)
穂乃果(昔、音ノ木坂に野球部が存在した時代)
穂乃果(優勝記念のメダルと、ガッツポーズをするユニフォーム姿のお母さんの写真)
穂乃果(本人は『まともに出場校も居なかったし、制度もまともじゃなかった時代よ』なんて謙遜するけど)
穂乃果(私たちはそれに憧れていた)
穂乃果(いつか音ノ木坂で、お母さんみたいに全国優勝する)
穂乃果(笑顔で夢を語っていた時代もあった) 穂乃果(だけどいつしか時は過ぎて)
穂乃果(音ノ木坂に入っても野球部は存在せず)
穂乃果(私の想いも薄れて)
穂乃果(そもそも妹は学校に入ることさえできず)
穂乃果「野球部……」
雪穂「お姉ちゃん?」
穂乃果「……私、決めたよ」
雪穂「な、なにを?」 ―翌朝・教室―
穂乃果「おはよう!」
ことり「あっ、穂乃果ちゃん」
海未「遅いですよ。待ち合わせ場所にも来ないし――」
穂乃果「海未ちゃん!」
海未「穂乃果?」
穂乃果「穂乃果たちで、野球部を作ろう!」 海未「野球部?」
穂乃果「そうだよ! 野球部!」
海未「……廃校阻止のため?」
穂乃果「えっ」
ことり「『どうしてわかったの!』だね」
穂乃果「う、うん」
海未「昨日の今日です、分かりますよ」 穂乃果「でもそれなら話は早い!」
穂乃果「昨日、雪穂と話していて思いついたんだ」
穂乃果「野球で知名度を上げて、廃校から救えばいいって!」
海未「……部員の当てはあるのですか?」
穂乃果「部員?」
海未「人数が足りなければ、大会どころか試合さえできませんよ」
穂乃果「ぐっ」 海未「野球部のないこの学校に、野球経験者は当然少ない」
海未「少なくとも2年生以上で部活を変える人はまずいない」
海未「帰宅部の生徒に、運動経験のある人間がいる可能性も低い」
穂乃果「そ、それでも私が27人から三振を取ってホームランを打てばいい」
穂乃果「野球漫画の主人公も言ってたもん!」
海未「……現役の経験者とは思えないセリフですね」
ことり「そ、そうだよ」
ことり「流石に難しいよ、穂乃果ちゃん」 海未「その無茶な過程を実行する以前に」
海未「穂乃果の球を捕れる本職の捕手もいないのです」
海未「いくらなんでも、現実的ではありません」
海未「なにより、東京地区にはUTX高校がある」
海未「あなたと私だけで、あの名門校に勝てると思いますか?」
穂乃果「そんなの、やってみないと……」
海未「無理です」
穂乃果「どうして、言い切れるの」 海未「……私も、穂乃果と同じことを考えました」
穂乃果「海未ちゃんも?」
海未「はい」
海未「私が捕手でバッテリーを組む」
海未「2人で点を取れればそれなりには勝てるかもしれないと」
穂乃果「……経験者とは思えない考えだね」
海未「貴女には、それだけの能力がありますから」 海未「しかし、UTXは明らかにレベルが違う」
海未「映像や資料を見て考えが変わりました」
海未「ですよね、ことり」
ことり「う、うん」
ことり「一緒に集めてみたんだけど……」
海未「穂乃果の球は速いですが、実質ストレートしか球種がない」
海未「おそらくそれでは、彼女たちを抑えられません」
穂乃果「そんなに凄いの?」 海未「彼女たち――特に上位の3人はプロを含めてもトップクラスの実力の持ち主」
海未「小柄な体格で長打を打つパワーはない分、6割を超える打率を残すリードオフマン」
海未「あらゆるシチュエーションに沿った打撃を完ぺきにこなす中距離砲」
海未「打率は2人に劣るものの、女子離れした圧倒的な長打力を誇る大砲」
海未「3人とも、現時点で日本代表の主力級」
海未「穂乃果が今まで対戦したことのないクラスの選手です」
穂乃果「そこまで……」 海未「しかもその三人は、それぞれトップクラスの投手でもある」
海未「全員のMaxが125を超える球速」
海未「それに加えて、素晴らしい決め球や能力も持っている」
海未「穂乃果と同格かそれ以上の選手が3人、しかも捕手も一流」
海未「これでは素人を集めて挑むなど、現実的ではありません」
穂乃果「そっか」
穂乃果「やっぱり、難しいかな」
海未「はい」
海未「少なくとも奇跡的に」
海未「野球やスポーツの経験者を9人集められない限りは」 穂乃果「それなら――ことりちゃん!」
ことり「ふぇ?」
穂乃果「野球部に入って!」
ことり「えっ、私?」
穂乃果「貴重な経験者なんだよ! お願い!」
ことり「ほ、穂乃果ちゃんのお願いなら、入ってもいいけど」
穂乃果「本当!?」
ことり「うん」 穂乃果「わーい!」ダキッ
ことり「わっ」
穂乃果「ことりちゃんありがとう! 大好き!」
ことり「ほ、穂乃果ちゃん」テレテレ
海未「やれやれ……」
海未「諦める気はないと」
穂乃果「もちろんだよ!」
海未「ふふ、それでこそ穂乃果です」 穂乃果「だけど残り、あと6人はどうしようかな……」
ことり「えっとね、一応調べておいたの」
穂乃果「なにを?」
ことり「野球経験のある人、この学校にいないか」
ことり「お母さんにこっそりお願いして」
穂乃果「凄い! けど、どうして?」
ことり「穂乃果ちゃんなら絶対に野球部を作るって言いだす気がして」
穂乃果「そこまでお見通しかー」 ことり「まず1人目は、生徒会長の絢瀬さん」
穂乃果「知ってる! 他のチームに所属している」
ことり「そうそう」
ことり「クラブチームの主力だから難しいかもだけど」
ことり「来年からプロ志望って話もあるし」
ことり「2人目、3年生の矢澤さん」
ことり「女子野球研究会って同好会の部長さん」
ことり「部員が1人しかいないらしいから、上手くいけば入ってくれるかも」
穂乃果「ふむふむ」 ことり「3人目、これまた3年生の東條さん」
穂乃果「東條――どこかで聞いたことあるような」
ことり「絢瀬さんと同じチームに所属しているらしいよ」
穂乃果「あっ、あのセクハラの人!」
ことり「セクハラ?」
穂乃果「『ワシワシ〜』とか言って胸を揉んでくるの」
ことり「あ、あはは、それは」 穂乃果「だけど結構話しやすい人だよ」
ことり「うーん、でもこの人もクラブチーム所属」
ことり「絢瀬さんほどじゃないけど、引き抜きは難しいかも」
ことり「それで4人目」
ことり「この子で最後なんだけど」
ことり「1年生の西木野真姫ちゃん」
穂乃果「西木野さん?」
ことり「うん」
穂乃果「知らない子だなぁ」 ことり「上手な子らしいけどね、家庭の事情で野球を辞めたらしいの」
穂乃果「へえ」
ことり「うちとお母さん同士が仲良しらしいから、事情を聴いたけど」
ことり「結構、複雑みたいで」
海未「西木野といえば、大病院の……」
穂乃果「じゃあ、お嬢様だ!」
ことり「だからこそ、入部は現実的じゃないみたい」
海未「しかし貴重な経験者」
海未「接触する価値はあるでしょう」 穂乃果「とにかく、その4人だね」
ことり「うん」
海未「今日はもう少し情報を集めて」
海未「明日から手分けをして勧誘してみましょう」
海未「できるだけ早く、部員を集めて動き出さなければ」
ことり「うん」
穂乃果「そうだね!」 ―夜・高坂家―
穂乃果「勧誘かぁ」
雪穂「なんか、悩んでるみたいだね」
穂乃果「やー、野球部を作る事になってさ」
雪穂「なにそれ」
穂乃果「野球で有名になって、廃校を阻止するの」
雪穂「また突拍子のない……」
穂乃果「むー、みんなそんな反応をする」 雪穂「その手に持ってる紙は?」
穂乃果「ああ」
穂乃果「これ、経験者のリストなんだけど」
雪穂「あー、絵里さん」
穂乃果「知ってるの?」
雪穂「うん」
雪穂「亜里沙――絵里さんの妹と友達だから」
穂乃果「へぇ、じゃあそっち方面で話をすればいけるかな」 雪穂「あとこの東條さんも」
雪穂「2人は割とセットなイメージだから」
雪穂「絵里さん口説ければ入ってくれるんじゃない?」
穂乃果「ふむふむ」
雪穂「矢澤さんは、知らないなぁ」
雪穂「少なくとも、名前が売れた存在じゃなさそう」
穂乃果「うーん、流石に有名人はポンポン出てこないよね」
雪穂「あとは――えっ!?」 穂乃果「ど、どうしたの。急に大きな声出して」
雪穂「西木野真姫!」
穂乃果「う、うん、そうだね」
穂乃果「お嬢様」
穂乃果「1年生の、西木野真姫ちゃん」
雪穂「有名人だよ! 天才野球少女!」
穂乃果「そうなの?」
雪穂「うん!」 雪穂「一度だけ対戦したことがある」
雪穂「とんでもない変化球に抜群の制球力」
雪穂「手も足も出なかった」
雪穂「中学日本代表にも入ってたけど、お姉ちゃんとは世代がずれてるかも」
穂乃果「へぇ」
雪穂「突然姿を消して、話題になってたんだよね」
雪穂「まさか音ノ木坂にいるなんて……」 穂乃果「だけど、この子の入部は難しいらしいんだよ」
雪穂「ありゃ、それは残念だね」
穂乃果「他の人も、苦戦しそうで」
雪穂「だけどさ、もし全員揃ったら」
雪穂「結構強いチームになるんじゃない?」
穂乃果「そうかな」
雪穂「投手はお姉ちゃんも含めて2人いる」
雪穂「捕手はいないけど海未さんがなんとかしてくれる」
雪穂「選手層の薄さを除けば、強いチームっぽくなるよ」 穂乃果(確かに、並べると……)
穂乃果(結構、頑張れそう?)
穂乃果「……うん」
穂乃果「なんだか希望が見えてきたね!」
雪穂「まあ頑張りなよ」
雪穂「私も、期待してるから」
穂乃果「うん!」 こんな感じで時間のある時に投稿していきます
長めの話になる予定ですが、最後までよろしくお願いします >>53訂正
野球ものは好きです。楽しみにしてます。 ―翌日放課後・1年生教室前―
穂乃果(とりあえず1年生)
穂乃果(『何か粗相があってはマズい』って)
穂乃果(海未ちゃんが生徒会の2人の説得へは行ってくれた)
穂乃果(矢澤先輩も、ことりちゃんが)
穂乃果(せめて、下級生ぐらいは穂乃果の手で落とさないと)
穂乃果(……でも一番難易度高い子なんだよね) 穂乃果(教室の中)
穂乃果(初々しい子、いっぱいいるなー)
穂乃果(さて、肝心の西木野さんは――)
?「なにしてるんですかー」
穂乃果「わっ」ビクッ
?「あはは、ビックリした?」
??「駄目だよ凛ちゃん先輩に――ご、ごめんなさい」
穂乃果「い、いや、声かけられただけ」 凛「何か御用ですか〜?」
穂乃果「えっと、探している人が」
凛「探し人?」
穂乃果「西木野さんって子なんだけど」
凛「あー、その子はいないです」
穂乃果「いないの?」
凛「はい」 凛「いつも真っ先に帰るし」
凛「休み時間になるとすぐに消えちゃうんで」
穂乃果「そ、そうなんだ」
穂乃果(孤高を貫く! みたいなタイプ?)
穂乃果(それじゃあ、居場所分からないような――)
??「え、えっと」
穂乃果「ん?」
穂乃果(大人しそうな方の子)
??「きっと、視聴覚室です」
穂乃果「視聴覚室?」
花陽「時間があると、いつも籠っているらしくて……」 穂乃果「へえ、そうなんだ」
??「きっと放課後もいる筈なんで、その時なら」
穂乃果「捕まるかも?」
??「は、はい」
穂乃果「そっか、ありがとう」
穂乃果(今から行ってもいるかな) ??「あ、あの!」
穂乃果「うん?」
??「高坂先輩、ですよね」
穂乃果「そうだよ! よく分かったね!」
??「私、小泉花陽っていう名前で」
花陽「その、先輩のファンなんです」
穂乃果「ファン?」 凛「凄い人なの?」
花陽「当たり前だよ!」
花陽「女子野球界では世界でもトップクラスの球速を持つ天才だよ」
穂乃果「い、いや、そんなたいしたものでは」
花陽「あっ、ご、ごめんなさい」
穂乃果(この子、急にキャラが変わったな)
花陽「だけど、その、だから」
花陽「野球部――頑張ってください!」
花陽「応援、してますから」
穂乃果「――うん、ありがとう!」 ―視聴覚室―
穂乃果「さて」
穂乃果(ここ、だよね)
ワーワー
穂乃果(あれ、音漏れ?)
穂乃果(ドア、開いてる)
穂乃果(案外そそっかしい子なのかな) 穂乃果(ドアの隙間から、そーっと)
穂乃果「あれは……」
『バッターアウト!』
穂乃果(野球の、映像?)
穂乃果(映っているのは)
??「ふふふ」
穂乃果(笑いながら画面を見ている子と同一人物)
穂乃果(たぶん、西木野真姫ちゃん) 『バッターアウト!』
真姫「ふふふ、流石私」
真姫「いつ見ても美しく、完璧ね……」
穂乃果(う、うわぁ)
穂乃果(大画面で自分の映像みて、悦に浸ってる)
穂乃果(結構痛い子、っぽい) 穂乃果(だけど、投球内容は)
『バッターアウト!』
穂乃果(バットにかすりもしない)
穂乃果(綺麗なフォームから、完ぺきな投球)
穂乃果(引き込まれる)
『キャー、真姫ちゃん完全試合よ!』 穂乃果「わぁ……」ガタッ
真姫「!」
穂乃果「あっ」
穂乃果(音、立てちゃった)
真姫「だ、誰――」
穂乃果「ご、ごめん」
穂乃果「のぞき見する気はなかったんだけど」
真姫「貴女は?」
穂乃果「えっと……」 真姫「い、今の、見てた?」
穂乃果「今の――」
穂乃果(そう、映像)
穂乃果(完全試合、した場面)
穂乃果「凄いね、凄い凄い!」
真姫「ヴェ?」
穂乃果「凄いよ! 格好ピッチングだったよ!」
真姫「ふ、ふふん。当たり前でしょ」 穂乃果「私、完全試合なんて一度もしたことないのに」
真姫「それは仕方ないわね」
真姫「その栄冠を得られるのは、特別な人間だけ」
真姫「私はその特別」
真姫「天才、西木野真姫ちゃんなんだから」
穂乃果(やっぱりこの子)
穂乃果(例の、西木野真姫ちゃん)」 穂乃果(可愛い)
穂乃果(実力もありそう)
穂乃果(だけどやっぱり、痛い?)
真姫「なによ?」
穂乃果「ううん、なんでも」
穂乃果(だけど、嫌いじゃないかな)
穂乃果(ところどころ、可愛げが飛び出してるし) 真姫「ところで、用件は?」
穂乃果「ふぇ」
真姫「ここに来たのは、理由があるんじゃないんですか」
穂乃果「あ、そうだ」
穂乃果(忘れるところだった)
穂乃果「あのね、今ちょうど野球部の部員を探していて――」
真姫「……します」
穂乃果「へっ」
真姫「お断りします!」 前にAqoursで女子野球書いてた人と同じ作者か? ―屋上―
穂乃果「お断りしますって、あんな言い方……」
穂乃果(でも急に豹変した態度)
穂乃果(触れちゃいけない部分、だったのかな)
海未「穂乃果」
穂乃果「海未ちゃん!」
ことり「穂乃果ちゃん」
穂乃果「ことりちゃんも!」 穂乃果「どうだった?」
海未「副会長は一応」
海未「人数が足りなければ、試合には出てくれるようです」
海未「掛け持ちも可能ですし、学校を存続させるための活動をしたいと考えていたようなので」
海未「会長は、なすすべもなく」
海未「一応部員を5人集めれば部として承認」
海未「その点だけは、了承をいただけましたが」 穂乃果「1人確保、なのかな」
海未「入部は、あまり前向きではないようですが」
穂乃果「うーん、だけど上々な成果?」
海未「そうですね、まだ説得は続けられますから」
穂乃果「ことりちゃんは?」
ことり「ごめん」
ことり「部の場所は分かったんだけど」
ことり「矢澤先輩が見つからなくて」
穂乃果「そっか、何か用事でもあったのかな」 海未「穂乃果の方は――駄目でしたか」
穂乃果「分かる?」
海未「ええ」
穂乃果「……あんまり期待してなかったでしょ」
海未「簡単に落とせる相手ではない」
海未「という話だったでしょう」
穂乃果「そうだけどさ」 海未「穂乃果」
海未「貴女は特別です」
穂乃果「海未ちゃん……」
海未「その持ち前の図々しさ」
海未「そしてしつこさを持ってすれば」
海未「難攻不落の相手も攻略できる可能性がある」
海未「私はそう、期待してるのですよ」 穂乃果「……褒められている気、全然しないけど」
海未「半分は褒めていますよ」
穂乃果「もうっ、海未ちゃん!」
ことり「あはは」
穂乃果「ことりちゃんも笑ってないで慰めてよー」
ことり「はいはい」ナデナデ
海未「駄目ですよ、甘やかしては」
ことり「海未ちゃんも、してほしかった?」
海未「ち、違います!」 海未「とにかく勧誘を続けましょう」
海未「他にも入ってくれそうな当てを探して」
穂乃果「当てか……」
穂乃果(そういえば)
穂乃果(1年生の教室で会った2人)
穂乃果(はなよちゃん? の方は野球好きだったはずだよね)
穂乃果(友だちっぽいし、誘えば2人とも) ?「あー、またフライングしちゃったよ」
穂乃果「ん?」
穂乃果(グラウンドの方から聴こえるの)
教師「星空、集中しろ」
凛「……はーい」
穂乃果(噂をすれば、なんとやら)
穂乃果(例のりんちゃん? の方だ) ことり「どうしたの、穂乃果ちゃん」
穂乃果「えっとね――」
凛「いっくにゃー!」
ビュッ
穂乃果「わっ」
穂乃果(足、速い!)
ことり「凄いスピードだね」
海未「穂乃果、知り合いですか?」
穂乃果「う、うん、一応」 ことり「あの足、野球部でも即戦力かな」
海未「ただ陸上部に入っているようですね」
海未「もっと早く気づけば、スカウトしたのですが」
穂乃果「だね」
穂乃果(きっとはなよちゃんも友だちだから陸上部)
穂乃果(今年は数が少ない分、争奪戦激しかったらしいし)
穂乃果(新入生は、殆ど部活に入っちゃってるよね)
穂乃果(うーん、難しいな) 海未「とにかく必要なのは根気です」
海未「今は頑張って、ターゲットを説得していきましょう」
穂乃果「うん」
ことり「そうだね」
海未「穂乃果」
海未「特に西木野さんは貴重な下級生」
海未「よろしくお願いしますね」
穂乃果「了解!」 >>73
そうです
>>74
申し訳ないのですが、勉強不足でその高校を知らなくて……
野球の名門校か何かでしょうか? >>90
里ヶ浜高校
八月のシンデレラナインって作品らしい ―数日後・視聴覚室―
穂乃果「真姫ちゃん!」
真姫「……また来たのね」
穂乃果「よしっ、今日は拒否られなかった!」
真姫「呆れて折れただけよ」
穂乃果「なら作戦成功だね!」
真姫「……まあ、そうね」 穂乃果「今日はどんな映像みてるの?」
真姫「1試合19奪三振を奪った試合の映像よ」
真姫「7イニングでの記録だから、奪いそこなったのは2人だけ」
穂乃果「おー」
穂乃果「真姫ちゃん、色んな記録持ってるよね」
真姫「当然」
穂乃果「いいなー」
穂乃果「私もノーノ―はやったことあるけど、それ以外は全然」 真姫「穂乃果も、結構いい選手なのよね」
穂乃果「たぶん」
穂乃果「一応実績はそれなりにあるよ」
真姫「へえ」
真姫「それなら、穂乃果が投げてる映像も観たいわね」
穂乃果「だけど真姫ちゃんほどじゃないし」
穂乃果「ビデオとかも全然残ってないから」 真姫「どうして?」
穂乃果「うち、妹も野球やっててね」
穂乃果「チームも違うから、基本お母さんはそっち優先」
穂乃果「そもそも自営業で休みも取りにくいし、まあ」
真姫「そうなの……」
穂乃果「おっと、そんな顔しないでもいいよ」
穂乃果「それが普通だし、私も来ない方が気楽だなって思ってるもん」
真姫「べ、別に気にしてないわよ」
穂乃果「真姫ちゃんはいい子だね〜」
真姫「う、うっさい」 穂乃果「だけど、少し羨ましいな」
真姫「なにがよ」
穂乃果「だって真姫ちゃんはさ」
穂乃果「いつもお母さんが応援に来てくれてるでしょ」
穂乃果「私も一度は経験してみたいんだよね」
穂乃果「ちょっとだけ、憧れるもあるし」
真姫「……そう」 穂乃果「だけど今度は高校野球」
穂乃果「学生野球で、一番の晴れ舞台」
穂乃果「きっとお母さんも、応援に来ると思うんだよね」
穂乃果「私が面倒だからって断っても、無理やり」
真姫「ふふっ、そうかもね」
穂乃果「そういう意味でもやっぱり」
穂乃果「私は野球部を作りたい」
真姫「……」 穂乃果「真姫ちゃんだって、野球好きなんでしょ」
穂乃果「前みたいに、お母さんに応援してもらいたいでしょ」
穂乃果「だからさ」
穂乃果「一緒に野球――」
真姫「……無理よ」
穂乃果「どうして?」
穂乃果「やっぱり、家庭の事情?」
真姫「……知ってたのね」
穂乃果「うん」 穂乃果「だけど、真姫ちゃんは野球が好きなんでしょ」
穂乃果「こんな未練がましく、昔の映像を見返しちゃうくらい」
穂乃果「私や他のみんなでご両親は説得するから」
穂乃果「だから」
真姫「違うの」
真姫「理由はそれだけじゃないの」
穂乃果「え?」 真姫「これ、見れば分かる」
穂乃果(別のDVD?)
穂乃果(きっと試合のもの)
穂乃果(それをセットする手が)
穂乃果(少し震えている?)
穂乃果「真姫ちゃん?」
真姫「……いいから、見て」 穂乃果(映し出される映像)
穂乃果(試合の途中?)
穂乃果(画面に映る、少女の姿)
穂乃果(不思議と小さく見えてしまう)
穂乃果(そんな姿)
穂乃果(ところどころぶれる映像)
穂乃果(すすり泣くような音声)
穂乃果(きっと撮影していたお母さんのもの) 真姫「これはね。最後の映像」
真姫「私が登板した、最後の試合の」
穂乃果(震えている)
穂乃果(必死に顔を前に向けるけど、今にも泣きだしそうな顔をしながら)
穂乃果「ね、ねえ、無理しなくても」
真姫「いいから」
穂乃果「だけど」
真姫「いいから、最後まで」 穂乃果(強い意志)
穂乃果(それに逆らうことができずに、流れ続ける映像)
穂乃果(アウトなんて取れない)
穂乃果(最後はストライクを取ることもできず)
穂乃果(真姫ちゃんはマウンドを降りたところで、映像は終わった)
真姫「ねえ、分かったでしょ」
穂乃果「……」
真姫「これが今の、私の姿よ」 真姫「かつて天才と呼ばれた私は、この世に存在しない」
真姫「私ね、イップスなの」
穂乃果「イップス……」
真姫「流石に説明はいらないみたいね」
穂乃果(スポーツ選手なら誰もが知り、恐れる精神的な病気)
穂乃果(当たり前の動作ができなくなる)
穂乃果(それで競技を諦めた人も知っている) 真姫「原因は分かっているの」
真姫「ずっと板挟みだった」
真姫「野球を辞めて勉強に集中するように圧力をかける親と」
真姫「どうしても大好きな野球を諦めきれない私」
真姫「野球から遠ざける為、嫌がらせみたいなこともされた」
真姫「それでも、結果が出ている内は」
真姫「まだ続けられた」
真姫「一番である限り、続けることを認めてくれた」 真姫「だけどそれは、少しでも駄目になったら」
真姫「一番じゃなくなったら」
真姫「野球を二度とできなくなる」
真姫「そんな事実も裏にあって」
真姫「どんどん心が追い詰められて」
真姫「怪我をしても隠して投げて」
真姫「誰にも弱さを見せられなくて」
真姫「次第に耐え切れなくなった」
真姫「心も身体も」 真姫「どうしてそんな程度でイップスになるのか不思議かしら」
穂乃果「そんなこと……」
真姫「私はね、大雑把な貴女と違って繊細なの」
穂乃果「そんなこと――」
真姫「あるでしょ!」
真姫「パパにもママにも言われた!」
真姫「そんなやわな神経な時点でアスリート向きじゃないって!」
真姫「弱い私は野球に向いてないって!」 穂乃果「真姫ちゃん……」
真姫「……ごめん」
真姫「今日はもう、帰って」
穂乃果「……うん、ごめんね」
真姫「……嬉しかったわよ」
真姫「誘ってくれたこと」
真姫「だけど、認めてくれないの」
真姫「親も、私の心も」
真姫「なにもかも、全部が」 >>91
ありがとうございます
アニメはあまり見ないのでその作品について勉強して出すのは難しいかもしれないです、申し訳ない。 Aqoursの方は野球ssで一番好きだった
μ'sも期待 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています