あの日に悪魔との契約を結ぶも、失敗してしまった……そして、元いた世界へは戻れずこの知らぬ街へと飛ばされ……いや、飛ばされたんじゃない。

街ごと飛ばされてしまい、街が入れ替わってしまっていたのだ。

千歌「内浦じゃない……でも、家はそのままだ」

そう、私の家は無事にそのまま残っている。
だけど、その周りにあるものが違うのだ。

千歌「学校に行かないと……」

この世界に来てからもう数日は経つだろうか。
学校から海では無くて湖が見え、海の潮の香りは漂って来ない。
今まで居た世界から削がれて、私の中にあるものの何かが犇いている気がするのだ。

そして、あの時の施術の失敗の後遺症が私たちにも及んでいた。

花丸「善子ちゃん、今日はどこ行く?」

善子「もう、善子言うな!」

千歌「ねえ……沼津にいた時の事、覚えてる?」

花丸「沼津?それってどこ?」

善子「訳の分からない事を言うのね」

千歌「えへへ……ごめんね……」


そう、今までの記憶が消え去ってしまっていたのだ……私を除いて。