X



善子「ねぇ、運命ってあると思う?」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:03:20.68ID:F46Alvxe
睡魔に負けて昨日書ききれなかったやつ
0002名無しで叶える物語(SB-iPhone)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:04:21.38ID:7eSyMIyK
はよ書け
0004名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:05:58.90ID:F46Alvxe
花丸「急にどうしたずら」

ルビィ「占い? 黒魔術?」

善子「ふと思ったのよ」

花丸(そうつぶやいた善子ちゃんは)

花丸(少し気怠そうに突っ伏していた体を起こして、ぐっと伸ばす)

善子「恋愛の話になると、運命の相手って言葉が出てくることがあるし」

善子「感動系の生死に関わることにも、これは運命だから。みたいなことって偶にあるでしょ?」

花丸「うん」

善子「でもさ、運命ってどこからが実際に運命なんだろうって思ったわけ」

ルビィ「?」

花丸(難しい話だと察したのか)

花丸(少し顔を曇らせながらルビィちゃんは首をかしげる)

花丸(それを見て、善子ちゃんは例えば……と返されたばかりの小テストを見せてきた)
0005名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:07:00.26ID:F46Alvxe
ルビィ「わぁっ48点っ!」

花丸「………」

花丸(50点満点の小テストで、48点)

花丸(実際のテストに近い内容で行われる小テストと言うだけあって、その点数は十分に良い部類で)

花丸(それの自慢がしたかったのかな。と、何となく思って目を逸らす)

花丸(……マルは、40点だった)

花丸「それがどうしたずら?」

善子「このテストに運命を当てはめるとしたら?」

花丸「絶対に間違える運命とか?」

ルビィ「良く分からないけど、花丸ちゃんと同じ……かな」

善子「本当に?」

善子「じゃぁ、私がこのテストを受けるのを避けたら?」

善子「運命であるはずの「テスト結果は絶対に間違える」から、0点になると思わない?」
0006名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:07:51.39ID:F46Alvxe
ルビィ「た、確かに……」

花丸「でも、小テストを受けなかった理由にもよるけど」

花丸「放課後に再テストを受けさせられることがあるずら」

花丸「もしもテスト結果を間違えることに収束するのだとしたら」

花丸「善子ちゃんは再テストを受けることになって、そこで間違えるんじゃないかな?」

善子「……なるほどね」

善子「結果が運命であるなら、私の行動に関わらずテストを受けることになって」

善子「私はそこで失敗することになるってわけね」

ルビィ「???」

善子「じゃぁ、間違えるという結果を知っているうえでその対策をしていたらどうなる?」

善子「それでもテストを間違えるって結果は変わらない?」
0008名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:12:45.00ID:F46Alvxe
花丸「変わらない」

花丸「だって、それを知っていて勉強を頑張ったとしても」

花丸「時間切れでの回答不足、誤字脱字」

花丸「間違える。というものではないにしても、満点を取れないと言う結果に収束することは出来る」

善子「でもそれだと間違える運命ではなくなるんじゃないの?」

花丸「そもそも間違える運命ではなく、満点を取れないという運命かもしれないずら」

花丸「……今みたいな思い込みが、その結果に収束する可能性もあるずらよ?」

善子「何よ。脅してんの?」

花丸「別に」

花丸(マルよりも点数の高い小テストをひらひらと振った善子ちゃんは)

花丸(にやっと笑って、ため息をついた)

善子「本題に戻るけど、ずら丸はどこからが運命だと思う?」

花丸「テストで考えるなら、テストを受ける。という過程からかな」
0009名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:13:44.92ID:F46Alvxe
花丸「テストを受けるっている前提がなければ」

花丸「テストで満点を取れない。という結果に収束することは出来なくなっちゃうからね」

善子「まぁ、そうでしょうね」

花丸(善子ちゃんはなぜか不満そうで)

花丸(話についていけないからと)

花丸(机に突っ伏したルビィちゃんを一瞥する)

善子「じゃぁルビィがこれからダイヤに怒られることになる運命だとして」

ルビィ「えっ!?」

善子「それを回避する方法ってあると思う?」

花丸「怒られる理由は?」

善子「んーそれは不明」

善子「ただ、テストのように”怒られる”という結果に収束する」
0010名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:15:06.60ID:F46Alvxe
ルビィ「それじゃ情報が少ないよぉ」

花丸「これから起こることなら、漠然としていても仕方がないずら」

花丸「むしろ、”怒られる”結果があるという前提で考えられることを有利に考えたほうが良いよ」

花丸「怒られることは結果だけど、それは未来だから結果なのであって」

花丸「過去のマル達が考えるのなら、それは前提条件として考えの材料にすることが出来る」

ルビィ「も、もう少し分かりやすく……」

善子「プリンを食べることに変わりはないけど、プリンが食べられる。という未来を知ってる感じ」

ルビィ「それは嬉しいねっ!」

花丸(ニコニコとするルビィちゃん)

花丸(ちらっと見るとわくわくしてるのが分かって、思わずほころんでしまう)

花丸「怒られる結果が分かってるなら、怒られない結果を用意するのはどうずら?」
0011名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:15:39.31ID:F46Alvxe
花丸「例えば、怒られる理由を考えて」

花丸「思い当たる点を正直に話して、お詫びの気持ちを用意する」

善子「無理ね」

善子「思い当たる点を口にした結果、そんなこともしていたの? という流れがうまれて」

善子「それによって”怒られる”という結果に収束するはずよ」

花丸「確かに」

ルビィ「ルビィはそこまで悪いことしてないよっ!?」

花丸「そうずらね」

善子「でも、些細なことで怒られるかもしれないでしょ」

善子「例えば、ダイヤが少し不機嫌で癇に障ったりしてね」

ルビィ「お姉ちゃんはそんな短気じゃないもん」

花丸「あくまで例えだよ。例え」
0012名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:20:00.44ID:F46Alvxe
花丸「善子ちゃんは何を知りたいの?」

花丸「運命が何を過程として結果に収束しようとするのか?」

花丸「それとも運命を避ける方法?」

善子「両方」

善子「でも、気になってるのはどこを起点としてその運命が生じるのか」

善子「ずら丸が言うように、テストという過程がなければ、満点を取れないと言う結果は必然的に生まれないわけだけど」

善子「じゃぁ、その満点を取れないという運命はいつ定まって、テストを受けるという過程を欲するんだと思う?」

花丸「難しい問題ずら」

花丸「……うーん」

花丸「大雑把に捉えていいのなら、学生を経験する。という根本的かつ必然的な事象」

花丸「マル達は高校生で、義務教育を過ぎてるからそれは確定ではないけれど」

花丸「義務教育と同等であると考えられておかしくない高校生でのテストと言うのは」

花丸「マル達が生きていく上での運命だととらえてもいいと思うずら」
0013名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:22:00.59ID:F46Alvxe
善子「スケールが大きすぎるんじゃないの?」

花丸「そう?」

花丸「マルは逆に、そのスケールの大きさこそが運命だと言えるって思う」

花丸「絶対に避けることのできない原因と結果」

花丸「その避けようのない収束を運命とすることで」

花丸「それが悪いことであるのなら、諦めるための条件にするずら」

花丸「抗うことのできない絶対的な不幸」

善子「そこで私を見ないでよ」

善子「でも……」

善子「まぁ、そんなものかぁ」

花丸(少し難しい顔をして)

花丸(どこか納得がいかないと言うような雰囲気で)

花丸(善子ちゃんは諦めたように笑う)

善子「でもそういう絶対に無理だってものに抗ってみたいとか思わない?」

花丸「犯罪でも犯すつもりずら?」

善子「まさか」
0014名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:22:49.20ID:F46Alvxe
善子「ヨハネ的には、そういう大きな――」

花丸「はいはい」

善子「何よその反応っ!」

花丸「凄いずらねぇ〜」

善子「赤ちゃんに話すような言い方止めてっ!」

花丸(よしよしと、何もない場所を撫でる素振りをすると)

花丸(善子ちゃんは怒ったように言う)

花丸(難しい話だとポヤポヤしていたルビィちゃんも)

花丸(怒っているようで怒っていない善子ちゃんの反応には、嬉しそうだった)

善子「今に見てなさいよ」

善子「このヨハネが大いなる偉業を成し遂げて見せるんだから」
0015名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:27:22.11ID:F46Alvxe
ルビィ「悪いことはしちゃだめだよ?」

善子「だから犯罪はやらないってばっ!」

花丸「せっかく練習お休みなんだから、早く帰るずら」

善子「……あぁ」

善子「せっかく練習休みなら、明日土曜日だし家に来ない?」

花丸「え?」

花丸(さりげなく)

花丸(席を立ちながらの自然な誘いに、思わず聞き返してしまう)

花丸(明日休みだから、今日来ないか)

花丸(その前提あっての誘いは……)

花丸(嬉しいけど)

花丸「今日は用事があるから無理ずら」

善子「……そっ」

善子「用事があるなら仕方がないわね」
0016名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:34:53.35ID:F46Alvxe
ルビィ「花丸ちゃんおうちの手伝いがあるんだよね?」

ルビィ「ルビィ達も手伝えたら良かったんだけど……」

善子「ルビィ聞いてたの?」

ルビィ「えっ? 聞いてなかったの?」

花丸「善子ちゃん忙しそうだから話してなかったずら」

善子「ちょっあんたっ!」

花丸「は、話してても手伝いは断るずらっ」

花丸(妙に迫力のある剣幕で寄ってくる善子ちゃんに首を振って)

花丸(慌てて、体を押し返す)

花丸「さすがにそんな迷惑はかけられないし檀家さん達もいるから大丈夫」

花丸(申し訳なさそうなルビィちゃんに首を振る)

花丸(お寺であるマルの家には、仏像などが置いてあって)

花丸(毎日手入れしているとはいっても)

花丸(日に日に痛んでいくから、手入れをしようという話になって……)

花丸(でもさすがに、ルビィちゃんたちの手は借りられない)

花丸「その気持ちだけで嬉しいずら」
0017名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:44:40.06ID:F46Alvxe
善子「そういうこと、言ってるわけじゃないんだけど」

善子「……まぁ、そっか」

花丸「?」

善子「――ずら丸」

花丸(善子ちゃんは少し口元を絞めると)

花丸(マルのことを見て、はにかむ)

花丸(言いたくても言えないことがあると示す谷の眉に目が移る)

善子「さっきの話の続きなんだけど」

花丸「運命の話?」

善子「それ」

善子「ずら丸は運命って、信じてたりする?」

花丸「さぁ? どうだろう」

花丸「あると思っているし、ないとも思ってるずら」

花丸「だって、本当に運命というものがあるのなら、”今の”マル達にそれを認識することは出来ないはずだから」
0018名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:46:01.65ID:F46Alvxe
ルビィ「あるのにないの?」

花丸「うん」

花丸「だって、運命は過去ではなく、未来のことに当てはめるものだから」

花丸「”今の”マル達が運命だって言えるのは返された小テストや、善子ちゃんが筆箱を忘れたことに対してしかない」

花丸「つまりは、過去の事象にのみ、あれは運命だったんだ。と言える」

花丸「善子ちゃんが最初に言ってたことだけど」

花丸「感動系の”運命なんだ”や、恋愛物の”運命の出会い”はあくまで、起きた結果に対してそう捉えただけ」

花丸「未来におこることに関しては”推測”であって、”運命”じゃない」

ルビィ「えっと、うん?」

花丸「つまり、”結果として確定していない事象”は、運命と断定することは出来ないってことずら」

ルビィ「でも、お姉ちゃんが怒るって話は?」

善子「あれはあくまでたとえ話よ。私達がその結果を知っているという前提での話」

善子「結果を知ってる……つまり認識してると言う仮定で、運命であるとしてただけ」

善子「つまり、花丸は運命を信じてないってことで良い?」
0019名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:46:36.79ID:F46Alvxe
花丸(なぜか食い下がる)

花丸(その善子ちゃんからはごり押しするような空気が感じられた)

花丸(運命があると言わせない。そんな雰囲気)

花丸(だからあえて……首を振る)

花丸「あると思ってるずら」

花丸「善子ちゃんの不運は、もはや運命レベルだから」

善子「っ」

善子「……まぁ、そうかもしれないわ」

花丸「?」

花丸(不服そうに)

花丸(でも、善子ちゃんは反論することなく頷く)

花丸(振り返る背中からは、少しだけ失望が感じられた気がした)
0020名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:48:01.34ID:F46Alvxe
――――――
―――


花丸(運命を気にする善子ちゃんのことが少し気がかりなまま、吸う時間)

花丸(おうちの手伝いもひと段落して、戻ってきた部屋で一息つく)

花丸(善子ちゃんと違って)

花丸(雑学と言うべきか、専門書と言うべきか)

花丸(今読みたいオカルト関連のような話題の載っている本は手元にない)

花丸(仕方がなく、なんとか繋がる携帯で検索する)

花丸「……運命」

花丸(運命:人間の意志にかかわらず、身にめぐって来る吉凶禍福。めぐり合わせ。転じて単に、将来)

花丸(検索してすぐ出てくる一文に目を通す)

花丸(運命とは天命であり、人間の抗える領域には存在しない確定した事象)

花丸(避けることも変えることも叶わず、絶対に通らなければならない)

花丸(線路が人生、電車が自分)

花丸(運命は電車の停まる駅のようなもの)
0021名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 17:52:27.27ID:F46Alvxe
花丸(いろんな人の意見や、考え)

花丸(色々めぐって、考えてみて)

花丸(偶像的な運命の存在に、頭が痛くなっていく)

花丸「つまりどういうこと。って、言いたくなるずら」

花丸(話についてきていなかったルビィちゃん)

花丸(何となくその気持ちが分かったと)

花丸(ちょっぴり申し訳なく思って、携帯の電源ボタンを軽く押す)

花丸(暗くなった板のような携帯をベッドにほっぽって、一息)

花丸「考えるのはやめた」

花丸(ここから先は泥沼だと)

花丸(嫌な予感がして考えを振り払ってベッドから起き上がる)

花丸「……でも」

花丸「善子ちゃんがあそこまで気にするのは、気になる」
0022名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 18:16:11.30ID:F46Alvxe
花丸「運命の出会いでもあったのかな」

花丸(感動もの……つまり、人の死に関わる物語での運命と)

花丸(恋愛もの……つまり、恋の話に関わる運命)

花丸(その二つを善子ちゃんは並べてきた)

花丸(善子ちゃんの目的はどっちだったんだろう?)

花丸「恋か、死か」

花丸「未来に起きる結果であり、それを観測して初めて運命だと口にできるのであれば」

花丸「………ない、よね?」

花丸(人の死の運命について知りたかった場合、善子ちゃんは誰かのその結果を知ってることになる)

花丸「つまり……善子ちゃんが病気か。お母さんが病気か」

花丸(少なくとも、身内の誰かの不幸ということになる)

花丸「ないないないっ」

花丸「でも、だとしたら……恋?」

花丸「善子ちゃんに運命の相手っ!?」
0023名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 18:33:51.83ID:F46Alvxe
花丸(気になる……)

花丸(さすがにいんたーねっとの配信動画の人じゃないだろうし)

花丸(声をかけられたからと言って”気があるかも”なんて勘違いするはずがないし)

花丸(でも)

花丸(そういうのをすっ飛ばしちゃう運命だとしたら?)

花丸「誰かの努力も、苦労も、苦悩も」

花丸「何もかもを無に帰してしまう強制力がある運命なら」

花丸「きっと、一冊の本に触れて知っただけの恋のように」

花丸「簡単に落ちちゃったのかもしれない」

花丸「……そっか」

花丸「善子ちゃんが恋。かぁ」

ガチャ

花丸「?」

花丸「あの――」

花丸(不意の訪問者)

花丸(その満面の笑みは、まさしく運命のように思えた)
0024名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 18:53:35.87ID:F46Alvxe
――――――
―――




花丸「けほっけほっ」

花丸(喉が痛い……)

花丸(目を覚ますと猛烈なのどの痛みを感じて咳き込む)

花丸(昨日、何か余計なことをしたかと考えを巡らせる)

花丸(いや、普通の日曜日だった)

花丸「学校……」

花丸(うー)

花丸(体を起こそうとして、数センチ)

花丸(すぐに倒れこんで息を吐く)

花丸「喉だけじゃなくて、体も痛い」

花丸「水曜日までには間に合うかな」
0025名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 18:59:11.42ID:F46Alvxe
花丸「水曜日のテスト、受けないと……」

花丸(病欠の場合、考慮して貰えるから再テストになるだろうけど)

花丸(放課後の練習時間がつぶれたり、午前の授業で終わる土曜日の午後に行わされることもある)

花丸「それは、嫌だけど……」

花丸(少なくとも今日は無理)

花丸(今日は休もう)

花丸(目を瞑れば今にも意識が飛びそうで)

花丸(すぐそばでちかちかと主張する携帯を手に取る)

花丸「……善子ちゃん?」

花丸(連絡は善子ちゃんからで、大丈夫? と、心配するような内容だった)
0026名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 19:18:21.87ID:F46Alvxe
花丸「……風邪っぽいから、お休み、する」

花丸(一先ず連絡を返して、一息つく)

花丸(連絡をするだけでも辛くて)

花丸(ぽとりと落とした携帯が震える)

花丸(おばあちゃんたちにも、言わないと……)

花丸(起きて、体調を伝えて、お休みするって、言わないと)

花丸「心配、かけちゃう……」

花丸(起きてこないこと)

花丸(うんともすんとも言わないこと)

花丸「あぁ、でも……」

花丸「もう、無理」

花丸(ふっと、体の力が一気に抜けて)

花丸(耐えようとする暇すらなく、意識は途絶えてしまった)
0027名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/29(土) 19:18:57.06ID:F46Alvxe
一先ずここまで
昨日の分と少し
0028名無しで叶える物語(しまむら)
垢版 |
2019/06/29(土) 19:34:12.76ID:6dN/TCqF
善子ちゃんにはこういうのが似合う
0029名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/06/29(土) 19:40:50.77ID:yIt/wi4s
よしりこだと思ったら今のところ違うのね
でもなかなか興味深い話だな、期待
0030名無しで叶える物語(なっとう)
垢版 |
2019/06/29(土) 19:45:15.32ID:KuieC8xb
0032名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/30(日) 06:27:49.27ID:tWVBmR7V
――――――
―――


花丸(混濁して、ふわふわした五感)

花丸(何も見えない暗闇の中)

花丸(押しつぶされるような喉の痛みと)

花丸(焼き尽くされるような体の熱だけが嫌に鮮明で)

花丸(助けてと。そう、言いたいのに言えなくて)

花丸(動かない体の中、魂だけが必死にもがいて――)

――ギュッ

花丸(ぁ……)

花丸(唐突に、冷たい何かが触れてくれた感覚が伝わってきた)

花丸(それはあまりにも冷たいのか)

花丸(それとも、前触れのない夕立のように驚かされたのか)

花丸(マルの体を貫くように流れて)

花丸(落ちていく意識を巻き取って……引っ張り上げてくれた)
0033名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/30(日) 06:39:04.08ID:tWVBmR7V
花丸「ぅ……」

善子「あ、ごめん。起こした?」

花丸「……?」

花丸「ぁー……」

花丸(善子ちゃん? そう聞いたはずの声は、酷く握っていて言葉にはなっていなくて)

花丸(申し訳なさそうな顔をする善子ちゃんは)

花丸(なぜだか、辛そうな顔をして、今にも泣いてしまいそうな顔をして)

花丸(切なさを感じるうっすらとした笑みを浮かべた)

善子「いつもこんなことはなかったのに」

善子「風邪って言うから、来ちゃった」

善子「……喉、辛そうね」

花丸「ん……ごほっこほっ」

花丸「学校、は?」

善子「そんなことより、今はアンタのことよ。花丸」
0034名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/30(日) 06:58:32.72ID:tWVBmR7V
花丸「……ずる休み」

善子「無理して言うことか」

善子「ったく……あんたのじっちゃんばっちゃんがとろいのよ」

善子「私が連絡しなきゃ気付かなかったのよ? 起きてこないんだから見に行くべきでしょ」

花丸「……悪く、言わない」

善子「分かってるわよ……ごめん」

善子「………」

善子「あー……その、ただの風邪、なのよね?」

花丸「こほっこほっ……んっんん゛」

花丸「うん、昨日は何もなかったし普通だったし……けほっ」

花丸「ただの風邪、ずら」

善子「そう……まぁ、明日は大事を取って病院行きましょ。私もついて行ってあげる」

花丸「いいよ……お祖母ちゃんたちがいる」

善子「ダメ、私も一緒に行く」
0035名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/30(日) 07:27:04.79ID:tWVBmR7V
花丸(なぜか強情な善子ちゃんは)

花丸(ただただずる休みをしたいという感じではなく)

花丸(邪まなものを感じない善子ちゃんの目は、悲しそうだった)

花丸「……どうして?」

善子「今の時代、頭に水タオルなんて古いことしてんのよ?」

善子「任せてられないわよ」

花丸「………」

花丸「行くのは、病院だよ」

花丸「……大丈夫」

善子「どうだか」

花丸(ため息交じりに言う善子ちゃんは)

花丸(マルのことをじっと見つめたまま)

花丸(ふと、切り替わったように笑いだした)

善子「ま、そうね」

善子「ちょっとバカみたいよね」

善子「ごめん、明日はやっぱ普通に学校行くわ」
0036名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/30(日) 07:48:34.03ID:tWVBmR7V
善子「ねぇ、ずら丸」

善子「運命ってあると思う?」

花丸「……?」

善子「私はあると思う」

善子「抗いようのない強大な強制力」

善子「何をしても、どうやってもその結果に収束していく。それが運命」

花丸「どういうこと?」

善子「あんたが、今週の小テストで私に負けるのは運命だってこと」

花丸「……むっ」

善子「ふふっ」

善子「勝ちたきゃさっさと治しなさいよ」

花丸「ん……」

善子「……あぁ、そう」

善子「あんた、今週って何か用事あったりする?」

花丸「?」

善子「ほら、仏像の手入れとか」
0037名無しで叶える物語(なっとう)
垢版 |
2019/06/30(日) 08:16:33.72ID:b+ClVrSd
0038名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/30(日) 08:20:17.63ID:tWVBmR7V
花丸「ない、けど」

善子「そっか」

善子「そう……なるほどね」

善子「なら、小テストで私が勝ったらちょっと付き合って」

善子「水曜日のやつ、結果返ってくるの金曜日だし」

善子「久しぶりに家に来なさいよ」

花丸「……狡い」

善子「大丈夫なんでしょ?」

花丸「それとこれとは違う……こほっ」

花丸(狡いことを求めてきた善子ちゃんは)

花丸(なぜか満面の笑みで)

花丸(狡いと思いながらも、駄目とは言えなくて)

花丸(別にそんな約束がなくても付き合ってあげるのになぁ……なんて)

花丸(休んでまでお見舞いに来てくれた優しさに、寄り添う)
0040名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/30(日) 11:39:17.44ID:tWVBmR7V
花丸「マルに」

花丸「………」

花丸「マルに、ね。もしも……運命があるのだとしたら」

花丸「それはきっと……善子ちゃんに会えたこと。だよ」

善子「はっ!?」

花丸「……えへへっ」

花丸(悲しそうな顔、辛そうな顔)

花丸(笑っても切なさの滲む善子ちゃんの顔がようやく、色づく)

花丸(冗談半分の勢い任せの言葉は、割と効果的で)

花丸(普段は襲い掛かってくる言葉の反動も、熱っぽさの前では平伏してしまう)

善子「……何言ってんのよ」

善子「熱で頭やられてんじゃないの?」

花丸「そう、かも? こほっこほっ」
0041名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/06/30(日) 11:55:25.11ID:tWVBmR7V
花丸(こんなにも優しい友人)

花丸(もちろん、ルビィちゃんたちに出会えたことだって運命かもしれない)

花丸(みんな優しくて、温かくて)

花丸(マルが普通に生きていたらきっと、関わることなんてなかったような人もいて)

花丸(それはとても、運命的な出会いで)

花丸「……ありがとう」

善子「なんか……別れる台詞っぽくて好きじゃない」

花丸「熱、だから」

善子「本当にただの体調不良なんでしょうね……」

花丸(心配そうな善子ちゃんに微笑んで、目を瞑る)

花丸(怖さを感じるはずの暗闇は、なぜだか心地よくて)

花丸(すぐそばの優しい空気に甘んじて、眠ることにした)
0042名無しで叶える物語(たこやき)
垢版 |
2019/06/30(日) 23:49:38.70ID:q8OJDNsk
期待
ヨハネとマルちゃんって哲学的な話が妙にしっくりくるよね
0043名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/01(月) 04:47:57.64ID:TQMyWixH
花丸「……ん」

花丸(かすかな痛みを感じる頭のぼうっとした感覚)

花丸(首を振ればゴトリと落ちてしまいそうな恐怖を感じる)

花丸(ゆっくり、慎重に瞼を上げていく)

花丸(カーテンの隙間から入り込む光は薄暗い橙色)

花丸(もう夕方なのかと思う頭に届くマルしかいないはずの部屋に混ざる小さな寝息)

善子「すー……すー……」

花丸「善子ちゃん……」

花丸(マルは風邪ひいてるのに、移っちゃうよ)

花丸(そう思いながら、傍に居てくれた安心感を喜ぶ自分に苦笑いする)

花丸「どうして、そんなに心配してくれるの?」
0044名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/01(月) 05:00:37.03ID:TQMyWixH
花丸(普段の善子ちゃんも優しい)

花丸(でも、学校を休んでまで来るほどじゃなかったはずだ)

花丸(学校が終わって、練習をお休みしてきてくれるというくらいだった)

花丸(それで、ルビィちゃんたちと一緒に来る)

花丸(お腹出して寝るからだとか、寝相が悪いんじゃないのか。とか)

花丸(根も葉もないこと言ってからかってくる)

花丸(でも今日は、心配そうだった)

花丸(悲しそうで、申し訳なさそうだった)

花丸「運命……」

花丸(今週の、テストを模した半分本気の小テストが云々と善子ちゃんは言ってたけど)

花丸(冷静になった今は少し、不自然だと思う)

花丸(怖い夢でも、見たのかな?)

花丸「……マルは平気ずら」
0045名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/01(月) 05:13:18.58ID:TQMyWixH
花丸(マルが病気で死んじゃう夢でも見たのかな)

花丸(それとも、善子ちゃん自身が病気で倒れる夢を見たのかな?)

花丸(それで不安になっちゃったのかな)

花丸(そういえば、朝から”大丈夫?”なんて連絡して来たっけ)

花丸「ふふっ」

花丸(ちょっと不謹慎だけど)

花丸(夢で不安になって、本気で心配してくれる)

花丸(そんな善子ちゃんの優しさは堕天使なんかとは不釣り合いで、笑ってしまう)

花丸(でもだからこそ、神様もそれに甘んじて善子ちゃんに悪戯するのかな)

花丸(善子ちゃんならちょっぴり不幸でも許してくれるだろうって)

花丸「ありがとう。善子ちゃん」

善子「んっ」

花丸「ぁっ」

善子「……?」

花丸(静かに呟いたはずなのに、善子ちゃんは目を覚ましてしまった)

善子「あぁ……ずら丸。起きたのね」

花丸「あはは……ごめん、起こしちゃって」

善子「良いわよ別に、ほんとは寝るつもりなんてなかったし」
0046名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/01(月) 06:09:52.16ID:TQMyWixH
花丸「ずっと見ててくれたの?」

善子「学校休んだし、まぁ……どうせならって思って」

花丸「ありがと」

善子「……別に、何かしてたわけじゃないわよ」

花丸(ただそこにいただけ)

花丸(それも、居眠りまでしちゃったし。と、善子ちゃんは茶化すように笑う)

花丸(けど、一瞬の沈黙)

花丸(そこに闇を感じたのは、気のせいだろうか)

花丸「ねぇ善子ちゃん。今日はどうしたずら?」

善子「なにが?」

花丸「ほら、マルが風邪だって連絡したのも善子ちゃんから連絡着たからだったよね?」

花丸「その時点で、”大丈夫?”って心配してたから」

善子「あぁ……そうだっけ」

花丸(善子ちゃんはどこか達観した様子で薄く笑うと)

花丸(マルに目を合わせないまま、息を吐く)

花丸(自分自身に呆れているかのような、細いため息だった)

善子「変な夢を、見ちゃってね。ま、大したことじゃないんだけど」

善子「学校に行ったらずら丸がいなくて、ルビィに聞いたら”誰?”って聞き返されるのよ」

善子「そんなわけ分からない夢を見て、起きてすぐにスマホを握ってた。多分その時ね」

花丸(笑っちゃうでしょ?)

花丸(そう笑った善子ちゃんは全然、笑えていなかった)
0047名無しで叶える物語(たこやき)
垢版 |
2019/07/01(月) 22:27:47.72ID:KEAezfSJ
伏線っぽい描写がけっこうあるな、おもしろい
0048名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/01(月) 22:47:24.44ID:TQMyWixH
花丸「笑わないよ」

花丸「笑わない、マルは、笑わないよ」

花丸(喜んでも、笑顔になっても、それを笑うことなんてしない)

花丸(ただの夢で、たったそれだけで)

花丸(一日中傍に居てくれようとする優しさをからかうような心は持っていない)

花丸(それはきっと、ルビィちゃん達もみんなそう)

花丸「嬉しかった」

善子「!」

善子「っ……」

花丸「?」

花丸(善子ちゃんは凄く驚いて)

花丸(何かを堪えるように唇を歪ませた)

善子「……あんた、チョロいんじゃないの?」

花丸「チョロい?」

善子「惚れやすいってこと」

善子「ちょっと優しくしたくらいで好きになってくれそう」

花丸「むっ」

善子「くくっ、冗談よ」
0049名無しで叶える物語(しまむら)
垢版 |
2019/07/02(火) 02:41:40.45ID:v2yPAz3z
花丸ちゃんは本や寺関係で死生観とか運命とかを知り、善子ちゃんは厨二病的なところから入って興味持って詳しくなる感じだから考え方が少し違うよね
0050名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/02(火) 04:42:56.83ID:at4R7R3a
善子「……それじゃ、そろそろ帰るわ」

花丸「ぁ、うん……善子ちゃん、あり――」

善子「だからそれは良いって」

善子「お礼を言われるようなことなんてしてない」

花丸「でも、傍に居てくれて嬉しかったずら」

善子「……それだけでしょ」

花丸(それだけでも、お礼をするには十分なのに)

花丸(善子ちゃんは頑なにお礼を拒んで)

花丸(お大事に。とだけ言って出て行ってしまった)

花丸「恥ずかしかったのかな?」

花丸(悪いことじゃなくて、良いことしてくれたのに)

花丸(堕天使にとっては、善行を行ってしまった羞恥心があったりして)

花丸(一人になってしまったけれど)

花丸(善子ちゃんのことを考えていると、ちょっぴり温かくなれた)
0051名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/02(火) 04:58:10.25ID:at4R7R3a
――――――
―――


水曜日 朝


花丸「おはよう、ルビィちゃん」

ルビィ「花丸ちゃんっ」

花丸「わわっ」

花丸(おはようっ! と元気な声で、ルビィちゃんが抱き着いてくる)

花丸(二日間会えなかった分の距離を詰めるような勢いを何とか踏み留めて一息)

花丸(善子ちゃんに言われたように大事を取って休み、病院に行った昨日)

花丸(特に問題もなかった)

善子「おはよ」

花丸「おはよう、善子ちゃん」

ルビィ「善子ちゃん嬉しくないの?」

ルビィ「花丸ちゃんが戻ってきたのに」

善子「別に留学とか長い入院とかじゃないんだから、そこまで喜ぶことじゃないでしょ」

善子「まぁ、何もなくてよかったとは思うけど」
0052名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/02(火) 05:03:55.82ID:at4R7R3a
花丸(机に肘をついて素っ気なく見せる善子ちゃんは)

花丸(おもむろに椅子を下げると、マル達の方に悪い顔を向けてきた)

善子「小テスト、勉強してきた?」

花丸「昨日はその対策してきたずら」

花丸「マルが勝ったら、マルのお願聞いてくれるってことで良いんだよね?」

善子「は……?」

善子「あー……そりゃそうか」

善子「そうね、私が勝ったら私に付き合う」

花丸「マルが勝ったらマルに付き合う」

ルビィ「え? えっ?」

善子「どうせ私が勝つから、100個くらい、お願い聞くってことにしておいてあげてもいいわよ?」
0053名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/02(火) 05:18:06.25ID:at4R7R3a
花丸「マルだってちゃんと勉強してきたんだよ?」

花丸「足をすくわれても知らないずら」

善子「ずら丸が私に勝つことは出来ないわよ」

善子「出来るとしたら、満点を取るくらいね」

花丸「満点を取る自信があるずら?」

ルビィ「花丸ちゃん、善子ちゃん、急にどうしたの?」

ルビィ「月曜日に何かあった?」

善子「ちょっとね」

善子「ただ遊ぶ話だけど、賭けた方が面白いと思ったし」

善子「そういうことがあればずら丸は本気になるでしょ?」

花丸(善子ちゃんはそれなら。と)

花丸(遠くを見るような優しい目でマル達を見て、苦笑する)

花丸(期待しているのに、期待していないような)

花丸(半々の表情)

善子「勝てるものなら勝って見せて」

善子「あんたが負ける運命を、その意思で打ち破って見せて」
0054名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/02(火) 05:34:03.97ID:at4R7R3a
ルビィ「善子ちゃん、運命って言葉がブームみたいなんだ」

ルビィ「昨日もね、部活の時に運命ってあると思う? ってお姉ちゃん達と話してたんだよ」

花丸「不幸云々の話の延長線上?」

善子「……まぁ、そういうならそうなのかもね」

ルビィ「また果南ちゃんにかっこつけちゃって。とか言われちゃうよ?」

花丸(昨日もあったやり取りなのかもしれない)

花丸(困り顔のルビィちゃんに対し、善子ちゃんは普段通りで)

花丸(机に突っ伏すようにしながらの含み笑いはいつもの堕天使ヨハネぽかった)

善子「運命、ディスティニー、そう。私にとってディスティニーとは単なる拘束具に過ぎないのです」

善子「いわば、高貴なるヨハネが下界にて活動すべく課せられたハンデ」

善子「ゆえに――」

花丸「運命かぁ、ダイヤさん達はなんて言ってたの?」

ルビィ「あると言えばあるかもしれないけど、だからって何かを諦めることはない」

ルビィ「何か失敗した時、それが運命かどうかは関係ない。大事なのは、それを”経験”とするか”不可能”とするかだって」

善子「でも、繰り返し過ぎた失敗を諦めるなって言うのも酷だと思わない?」

花丸(急に素に戻った善子ちゃんは)

花丸(退屈そうに言うと、ほんと私って不幸だわ。と、つぶやいた)
0055名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/02(火) 06:39:56.91ID:at4R7R3a
善子「世界一傘を飛ばされた人でギネスに乗れそうな気がする」

花丸「審査員がいないよ」

善子「分かってるわよ……現実主義者ね。あんたは」

善子「でも、その現実主義者国木田丸でも運命を信じてるんでしょ?」

花丸「マルは漁船か何かずら?」

花丸「でも、運命はあくまで運なんだよ?」

善子「えっ?」

花丸「運命は確かに人それぞれにとって大小あって、大きく感じるかもしれない」

花丸「でも、あくまでその人の努力に"上乗せされるもの”というだけ」

花丸「もし、努力も何も寄せ付けない絶対的な何かがあるとしたら、それは宿命と呼ばれるずら」

善子「宿命……?」

善子「あんた、そんなことは一度も」

花丸「?」

善子「いや……でも、そうなのかもしれないじゃない」

善子「運命だと思っていたものが宿命だったと言うだけで、不可能は不可能じゃない」

花丸「善子ちゃん?」

花丸(なぜか、怒ったように言い捨てた善子ちゃんは)

花丸(気づいたように目を見開いてマルとルビィちゃんを見ると)

花丸(気まずそうにごめん。と言い残してそっぽを向いた)
0056名無しで叶える物語(SIM)
垢版 |
2019/07/02(火) 21:51:03.20ID:2rPb3II8
わくわく
0057名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/03(水) 06:31:36.97ID:02tqddtx
花丸「ルビィちゃん、昨日の善子ちゃんってどんな感じだった?」

ルビィ「昨日……?」

花丸「ダイヤさん達に運命のことについて聞いてた以外で」

ルビィ「えっと……うーん」

ルビィ「普通だった。と、思う……よ?」

花丸(マルの質問も良くなかったかもしれない)

花丸(考えながらの答えは途切れ途切れで)

花丸(困惑気味のルビィちゃんは、ん〜。と可愛らしく唸る)

花丸「変なことじゃなくてもいいずら」

花丸「普通に、どんな風にしてたとか、誰と話してたとか」

ルビィ「……徹夜して寝不足だからって言ってたけど、少し疲れてるような感じはしたかな」

ルビィ「そのせいかもしれないけど、授業はすっごく面倒くさそうにしてた」

花丸「えぇ……」

ルビィ「でもねでもねっ!」

ルビィ「そのせいで先生に答えさせられることが多かったんだけど、完璧だったんだよっ」
0058名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/03(水) 06:40:02.20ID:02tqddtx
ルビィ「音読箇所とか、問題の答えとかちゃんとしてて」

ルビィ「面倒くさそうにしてたけどちゃんと聞いてたみたい」

花丸「そっか」

花丸(今日も寝不足なのか、怠いのか)

花丸(善子ちゃんはいつの間にか、机に伏せっていた)

ルビィ「話した人は、放課後のお姉ちゃん達くらいだったと思う」

ルビィ「教室にいるときは寝てたような気がする」

ルビィ「お姉ちゃんは寝不足なら帰ってもいいって言ってたんだけど」

ルビィ「参加はするって……あっ」

ルビィ「そうだっ」

花丸(勢いよく椅子を揺らしたルビィちゃんは)

花丸(乗り出し気味に聞いて聞いて。と可愛らしく迫る)

ルビィ「ダンスの時に足をひねりかけた鞠莉ちゃんを助けてね」

ルビィ「それがえっと……くるくるしてる、なんか、ああいう」

花丸「ワルツ?」

ルビィ「そうそれ! そんな感じでぐるって助けてねっなんか似合ってた!」
0060名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/03(水) 20:37:46.98ID:02tqddtx
ルビィ「やっぱり善子ちゃんって綺麗だよね」

ルビィ「堕天使さんで芸人さんみたいな感じがあったりするけど」

ルビィ「でも、やっぱり女優さんみたいだなぁって思うっ」

ルビィ「スラっとしてて、髪も――」

花丸「ルビィちゃんはほんと、善子ちゃんが好きだね」

ルビィ「うんっ」

花丸(躊躇のない、満面の笑み)

花丸(純真すぎる白さは少し眩しくて)

花丸(笑うに隠れて目を細める)

ルビィ「もちろん、花丸ちゃんも好きだよっ」

花丸「マルも好きずら〜」

ルビィ「えへへ〜」

花丸(とりあえず、ルビィちゃんが純粋なのはわかっ……じゃない)

花丸(善子ちゃんは殆どいつも通りだったっていうのは分かった)
0061名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/03(水) 21:41:37.61ID:02tqddtx
――――――
―――


放課後


花丸(結果を考えたくない小テストも終わって、放課後)

花丸(二日間も休んだからか大事を取って部活も休むべきだと言われたけれど)

花丸(体調面には何の問題もないから。と、軽い合わせ練習だけでも行うことにした)

ダイヤ「花丸さん、辛くなったらすぐに言ってくださいね」

果南「無理は禁物だよ?」

花丸「はーい」

花丸(体調を気遣わないマルと気遣ってくれるみんな)

花丸(普段よりも二回りほど優しい練習メニューは)

花丸(二日間のブランクを感じさせないくらいに、すんなりと終わっていく)

曜「っ、はっ、はっ、よっ」

善子「曜! そこ違う、こう、こうやって……こうっ!」

曜「あっそうだった!」

善子「もう一回!」

花丸(……善子ちゃんは、なんか凄い)
0062名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/04(木) 05:12:13.56ID:P+r65qmH
千歌「善子ちゃんすごーいっ」

千歌「みんなのパートも覚えてるの?」

善子「見てた時に何となく覚えただけよ」

梨子「それはそれで凄いと思うんだけど……」

善子「別に完璧に覚えてるわけじゃないし普通でしょ」

善子「どうせ、覚えてたところで使うことはないし」

千歌「その経験は大事だよっ!」

善子「そうかもね」

善子「……はぁ」

花丸(梨子ちゃんの言う通りだとマルは思う)

花丸(もともと意外と動ける善子ちゃんだから普通なのかもしれないけど)

花丸(見てるだけで動けるようになるのは、やっぱりすごい)

花丸(陰でみんなの部分持って練習してるなら別だけど)

花丸(善子ちゃんに限ってそれはないだろうし)
0063名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/04(木) 05:28:55.61ID:P+r65qmH
善子「花丸」

花丸「ゎっ」

善子「……ぼーっとしてた?」

善子「まだ調子よくないんじゃないの?」

花丸「ちょっと驚いただけずら」

花丸(確かにぼーっとしちゃってたかもしれない)

花丸(今までとはどこか違う善子ちゃん)

花丸(その姿を何の気もなく、ただただ見ていて)

花丸(そして”ずら丸”ではなく”花丸”と口にした声の穏やかさに少し驚いた)

善子「本当に何もなかったんでしょうね」

善子「なんか重い病気とかそういうやつじゃないんでしょ?」

花丸「そんなことあったら、マルはここに居られる自信がないよ」

花丸「学校にすら来てないと思う」

花丸「きっと凄く落ち込んで、ふさぎ込んで」

花丸「会いに来てくれた善子ちゃんに泣きつくと思うずら」

善子「……どうだか」

善子「ずら丸のことだから、死に際にだって私のこと心配して”ごめんね”とかいうんじゃない?」

善子「心配させて、迷惑かけて、困らせて」

善子「そんな理由をつけて、謝ってくるのよ」

花丸(そういうの止めてよね。なんて、善子ちゃんは困ったように笑った)
0064名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/04(木) 06:25:28.34ID:P+r65qmH
善子「ずら丸は何かしたいことってある?」

善子「将来こうしたいっていうのもそうなんだけど」

善子「今頑張ったり、お金さえあれば出来る。そんな範囲のやつ」

花丸「また変なこと言い出して……今度は何の影響ずら?」

善子「なんだっていいでしょ」

善子「何かないの?」

花丸「うーん……」

花丸(頑張れば出来ること、お金があればできること)

花丸(その中で、マルがしたいこと)

花丸(急に言われて浮かぶのは、好みののっぽパンを食べつくしてみたいとか)

花丸(とりあえず、たくさんの本に囲まれてみたいとか)

花丸(叶えて貰った後で、やっぱり別のお願いにしておけばよかった。となりそうなものばかりで)

花丸(少し考えて、ふっと沸いた悪い考えを捕まえる)

花丸「善子ちゃんが堕天使やらないで、マルを”花丸”って呼んでくれればそれでいいずら」
0065名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/04(木) 06:31:28.94ID:P+r65qmH
善子「……そ」

善子「まぁ、そうよね……そうなるか」

善子「花丸はともかく、堕天使については控えてるんだけど」

善子「一応、花丸が体調崩してからはやってないわよ?」

花丸「それでも」

善子「堕天使を控えて、花丸って呼べって?」

善子「意地悪のつもりなんでしょ?」

花丸「ずらっ!?」

花丸(魂胆を見抜かれて思わず声を上げてしまったマルに)

花丸(善子ちゃんはニヤリとして、分かりやすいのよ。と、楽しげに笑う)

善子「ま、いいわよ」

善子「ずら丸は止めて、花丸って呼んであげる」

善子「偶に呼ぶかもしれないけど、癖だから。その辺りは許しなさいよ?」
0066名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/04(木) 06:37:37.51ID:P+r65qmH
花丸「ただ聞きたかっただけじゃないの?」

善子「聞くだけなんて言ってないでしょ」

善子「それに、あんたがそうして欲しいっていうなら……っと、ごめん」

善子「花丸がそうして欲しいならそうするわよ」

善子「……体調崩したばっかりだし、まぁ、優しくしておこうと思って」

花丸「ただの風邪なのに」

善子「風邪は風邪。でも、軽んじるなってことよ」

花丸(ビシッと指をさしてくる善子ちゃん)

花丸(いつもと変わらないはずなのに)

花丸(その優しさはなんだか、怖く感じさせられる何かがあった)

花丸(それは多分、善子ちゃんの瞳に宿る感情が)

花丸(目に見えるものとは別のように感じたからかもしれない)

花丸「……ねぇ、善子ちゃん」

花丸「どうして、そんな悲しそうな目をしてるずら?」

花丸(だから、聞く)

花丸(寄り添ってくれる優しさへの、恩返しをしたくて)
0068名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/04(木) 22:16:03.74ID:P+r65qmH
善子「悲しそう……? 私が?」

善子「ふっ」

善子「……別に、いつも通りでしょ」

花丸(鼻で笑う)

花丸(その仕草がもう、いつもとは違っている)

花丸(困り顔から目を逸らせずにいるマルを、その悲しそうな眼は真っ直ぐ見ていた)

善子「言ったじゃない? もしもあるとしたら宿命だって」

善子「実際、そうなのかもしれないって思ったのよ」

善子「今まで、大事なものを守れたためしがなかった」

善子可愛いスカートは引っ掛けて、新しい靴は転んで、お気に入りの傘は飛ばされて」

善子「大切にしようと思ったものが、その次の瞬間には壊れてしまう」

善子「そんなことばっかりで、私は何も守ることが出来ない宿命なんじゃないかって思った」

善子「だとしたら、ルビィとか、花丸とか、Aqoursとか」

善子「そういうのも無くなるんじゃないかって思えて……少し、怖くなったのかもね」

善子「今こうしていられるのが最期かもしれない。そんな風に、悪いこと考えちゃうのよ」
0069名無しで叶える物語(関西地方)
垢版 |
2019/07/05(金) 02:31:50.50ID:C7DGWdaS
保守
0070名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/05(金) 06:41:21.85ID:djVPFZMP
花丸「悪い夢の続き?」

善子「そうね……そういう感じ」

花丸「小テストであんな約束取り付けてきたのもそれが理由だったりするずら?」

花丸「心配だから一緒に居たいとかそういうやつだったりする?」

花丸(善子ちゃんは、軽く笑った)

花丸(バレちゃったか。とでも言いたそうな笑い方)

花丸(でも、まだ隠し切れない悲しげな雰囲気は残っていて)

花丸(追及していきそうな勢いを飲み込む)

花丸「良いよ」

花丸「金曜日でも、土曜日でも、木曜日でも」

花丸「善子ちゃんがそれで安心できるなら、一緒にいる」

善子「花丸……」

花丸「風邪をひいたときに一緒にいてくれたお礼だよ」
0072名無しで叶える物語(光)
垢版 |
2019/07/05(金) 17:07:17.18ID:w9zeBSon
よしまる需要ないんだから書くのやめたら?現に誰も読んでないみたいだし。
0073名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2019/07/05(金) 19:25:28.04ID:Dlr0lptd
俺が読んでる
続き待ってるよ
0076名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/05(金) 22:52:11.97ID:djVPFZMP
善子「……金曜日」

善子「金曜日だけ、一緒にいてくれればそれでいいのよ」

花丸「良いよ」

花丸「多分、何の用事もないから」

花丸(月火と体調不良で休んでいたのに)

花丸(金曜日にはもう、友達と遊ぶ)

花丸(ちょっとだけ悪いことをしている気分にはなるけれど)

花丸(善子ちゃんのためだから)

花丸「じーちゃんたちに話しておくね」

善子「悪いわね」

花丸("金曜日")

花丸(善子ちゃんが悲しそうな顔をする理由がそこにはあるのだろうか)

花丸(金曜日になれば分かる)

花丸(でもなぜか、金曜日は待ち遠しいよりも、恐ろしく感じた)
0078名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/06(土) 20:55:29.58ID:6hkjJCq+
――――――
―――


花丸(そして、あっという間に金曜日はやってきた)

「それじゃー水曜日のテストを返すぞー」

花丸(水曜日に受けた小テストの返却)

花丸(中間や学期末に行われるものではないとはいえ)

花丸(平均点以下は取りたくないと言う心持があったからだろう)

花丸(実際のテストでは80点相当の40点以下を取ってしまった一部の人の悲鳴が聞こえる中)

花丸(返された40点のテストに目を覆う)

善子「ん〜? どうしたのよ。ん? ねぇ?」

ルビィ「止めて善子ちゃん、その煽りは花丸ちゃんに効いちゃうっ」

善子「私の勝ちね。ま、この勝利に価値はないけど」

花丸(冗談を言いながら、善子ちゃんはひらひらとテストを見せる)

花丸(50点満点中、48点のテスト)

ルビィ「わぁっ、48点っ!」

善子「っ」

花丸「……?」

ルビィ「凄いなぁ……ルビィなんて30点もいかなかったのに」
0079名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/06(土) 22:56:01.77ID:6hkjJCq+
善子「あんたは勉強が足りないのよ」

善子「ダイヤにでも頼めば?」

善子「喜んで教えてくれるでしょうよ」

ルビィ「でも、お姉ちゃん厳しいから……」

善子「厳しくてもちゃんと教えてくれるわよ。あの人は」

善子「それに、頑張れば頑張った分のことをしてくれる」

善子「例えば、ちょっと良いアイスを買ってくれたりとかね」

ルビィ「えぇっ!?」

花丸(善子ちゃんは楽しそうに語る)

花丸(ダイヤさんの最も近くにいるルビィちゃんが嘘だと言わないくらいに信じさせる表情で)

善子「だから、今度は勉強教えてもらいましょ」

善子「……花丸。あんたも一緒に」

花丸「マルも?」

善子「そっ。花丸も」
0080名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/07(日) 00:22:06.79ID:3Ww97iGZ
花丸(なぜか善子ちゃんは申し訳なさそうに言った)

花丸(ダイヤさんに迷惑をかけるから?)

花丸(ううん、"ダイヤさんは喜んで教えてくれる"と言った)

花丸(ならどうして?)

花丸(今日が金曜日だから?)

花丸(………)

花丸「……ねぇ、運命ってあると思う?」

善子「!」

ルビィ「花丸ちゃんまで占いにはまったの?」

花丸「ううん。ふと思ったずら」

花丸(善子ちゃんはマルが小テストで負けることが運命だと言っていた)

花丸(もし、"運命"が善子ちゃんの悲しさのキーであるのなら)

花丸「ラブストーリー……恋愛の話になると、運命の相手って言葉が出てくることがあるし」

善子「何言ってんの、急に」

花丸「感動系の生死に関わることにも、これは運命だから。みたいなことって偶にあるよね?」

善子「いきなりどうしたのよ。花丸?」

花丸「その運命ってどこからが実際に運命なんだろうって思ったんだ」

花丸(少し、揺さぶってみよう)
0081名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/07(日) 09:20:09.51ID:3Ww97iGZ
花丸(マルと善子ちゃんは勝負をする約束をして)

花丸(その約束をしたときに、善子ちゃんは"負ける運命"って言ってた)

花丸(だから……)

花丸「例えばこの小テスト」

花丸「これに運命を当てはめるとしたら?」

ルビィ「えっと……絶対に間違えるーとか、勝てないーとか?」

花丸「じゃぁ、マルが月曜日みたいに体調不良でテストを受けられなかったら?」

ルビィ「うーん……あっ、"受けないことは不可能"だよっ」

ルビィ「だって、体調不良なら再テストを受けさせられる」

花丸「そうずら。マルはテストを受けることになると思う」

花丸「だから、ここで本題に戻るずら」

花丸「マルのこのテストに関わる運命はどこから始まってどこで終わりを迎えているのか」

花丸(善子ちゃんはだんまり)

花丸(少し不機嫌そうにしていて、さっきまでの明るさが嘘のよう)

花丸("運命"それが、善子ちゃんはそんなに不愉快?)

ルビィ「ん? 前に花丸ちゃん言ってなかったっけ?」

ルビィ「運命は過程から始まる。前提条件があってこそ結果への収束ができるんだよって」

花丸「えっ?」

善子「は?」

ルビィ「あれ? 言ってなかった?」

花丸(きょとんとするルビィちゃんの隣で、善子ちゃんは何とも言えない表情で)

花丸(ルビィちゃんを睨むように見つめていた)
0082名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2019/07/07(日) 11:45:31.27ID:dP2qXsId
追いついたわくわく
0083名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/07(日) 11:58:12.30ID:3Ww97iGZ
花丸「言ってないよ?」

ルビィ「あれぇ?」

ルビィ「どこかで聞いたんだけど……う〜ん」

善子「どこかってどこ」

ルビィ「へ?」

善子「どこで聞いたのよルビィ!」

ルビィ「わぁぁっ!?」

花丸「善子ちゃんっ!?」

花丸(不意にルビィちゃんの肩を掴んだ善子ちゃんはなぜか怒鳴って)

花丸(慌てて腕を掴んだマルを煩わしそうに見て……目を見開いた)

花丸「ルビィちゃんを放すずら!」

善子「あ……」

ルビィ「っ……よ、善子、ちゃん?」

善子「くっ」

善子「……ごめん」
0084名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/07(日) 12:08:24.14ID:3Ww97iGZ
花丸(ルビィちゃんの肩を放して、謝る)

花丸(申し訳なさそうな善子ちゃんは複雑な表情で目を逸らす)

花丸(やっぱり、"運命"がキーなんだ)

花丸(またルビィちゃんが巻き込まれるのもかわいそうだし)

花丸(続きは、放課後にしたほうが良いかな)

花丸(……ルビィちゃん、ごめんね)

ルビィ「善子ちゃん、大丈夫?」

善子「なんでルビィが謝んのよ……悪いのは私でしょ」

善子「……最近、運命についていろいろ聞いてたのは今のルビィの話が聞きたかったからなのよ」

花丸(ん?)

善子「その答えをくれた人を、知りたかったのよ」

ルビィ「運命は過程から始まるって話?」

善子「そっ。それ」

善子「だからつい興奮しちゃって……悪かったわね」

ルビィ「ううん、良いよ」

ルビィ「ルビィも思いだせなくてごめんね」

善子「ううん、それは仕方がないことだから」

花丸(まただ)

花丸(また、善子ちゃんは悲しそうに笑ってる)
0085名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/07(日) 12:24:47.16ID:3Ww97iGZ
――――――
―――


善子「今度、ルビィにアイスでも買ってあげないと」

花丸「今度だとルビィちゃんは忘れちゃってそうだけどね」

善子「そうだけど、だからってやっちゃったことに変わりはないし」

善子「…………」

花丸「…………」

花丸(約束の付き合い)

花丸(二人で並んで座るバスの中で、善子ちゃんは申し訳なさそうに笑う)

花丸(どうして、なぜ)

花丸(その答えは、この付き合いの中で得られるのかな)

花丸(……なんて。目論んでるのは悪い子だ)

善子「ほんとはさ……"運命なんて信じたくない"のよ」

花丸「えっ?」

善子「私はそれを認めたいとか、知りたいとか。そう考えてるわけじゃない」

善子「ただ、"運命の法則"があるのだとしたら、それを知ることでどうにかできるんじゃないかって思ったの」
0086名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/07(日) 12:34:00.28ID:3Ww97iGZ
善子「でも、残念だったわ」

善子「運命には”結果と過程”があるってルビィは言ってたけど」

善子「過程と言うよりは、”前提と結果”なのよ」

善子「定まった前提、そこから続いている過程の中でいくら変化をもたらそうと」

善子「運命によって定められた結果への収束は免れない」

善子「例えば、小テスト」

善子「私は花丸に負けることは運命だと伝えた上で勝負を挑んだわ」

善子「当然、負けたくないって努力する」

善子「だけど、結果は変わらない」

善子「私は満点を取ることは出来ないし、花丸は私に勝つことは出来ない」

善子「花丸が風邪をひいたときは驚いた」

善子「でも、すでに前提の用意されている運命の中での"過程"では、無意味だったのよ」
0087名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/07(日) 13:14:08.19ID:3Ww97iGZ
花丸「善子ちゃん……?」

花丸(善子ちゃんは何を言ってるの?)

花丸(何を考えてるの?)

花丸(考えて、考えて……善子ちゃんはどうしてそんなに――)

善子「ねぇ花丸。私達の運命はどこで定められたの?」

善子「どこに"前提"があるの?」

花丸(バスが停まる音がする)

花丸(浦女と沼津駅、その途中にあるほとんど人が降りることも乗ることないバス停)

善子「……分からない、か」

善子「でも、ちゃんと見つけるから」

善子「……ごめん花丸。また来週」

花丸「えっ?」

花丸「待っ――痛っ!?」

花丸(バスを降りる善子ちゃん)

花丸(追いかけようとしたマルを、座席のどこかに挟まった髪が止める)

花丸「待って善子ちゃんっ、善子ちゃんっ!」

花丸(バスは非情な音とともに扉を閉めて、動き出す)

花丸(時間厳守)

花丸(動き出したバスは、"運命に従って"走り出した)

花丸「善子ちゃん!」

花丸(バス停で佇んで、ごめんなさいと頭を下げる善子ちゃんを残して)

花丸(バスは――)
0088名無しで叶える物語(公衆)
垢版 |
2019/07/07(日) 15:32:29.12ID:+UV5VWgm
花丸(動き出したバスは、"運命に従って"走り出した)

花丸「善子ちゃん!」

花丸(バス停で佇んで、ごめんなさいと頭を下げる善子ちゃんを残して)

花丸(バスは――)

ミリィッ

ミリミリミリ

バキバキバキ

花丸「!?!?!?!?」

果南「国木田花丸は五体引き裂かれて内蔵引き千切られて血反吐撒き散らしてのたうち回って死に晒せ!!!!!!!!!!!!!」

グワバアアアアア!!!!!!!!!!!!!

花丸「────」

ドッバシャアアアアアア!!!!!!!!!!!

ビチャビチャビチャ!!!!!!!

果南「こんな、腟内部から股割きなんてエグい真似はさぁ、鞠莉にはとても出来ないね」

鞠莉「Oh!花丸の身体が縦に真っ二つね!!!ミラクル!イッツ・ミラクルよ!!!マイ・ダーリン!!!!!」
0089名無しで叶える物語(公衆)
垢版 |
2019/07/07(日) 15:33:48.09ID:+UV5VWgm
果南「まぁ、離れさせる、って話だったからね」

果南「ちゃんと言った通り、右半身と左半身離れさせたよ」

鞠莉「有言実行ね、ダーリン♪」

鞠莉「にしても、凄い怪力ね。今の衝撃で、花丸の腸を打ち止めておいた釘もぶっとんだわ」

果南「お蔭で花丸の腸がそこらに飛び跳ねちゃったねえ。あー汚い汚い」

鞠莉「本当、汚い景色。でも、花丸には相手が出来てよかったんじゃない?」

果南「ああ、そうか。右半身と左半身で一人カプできるようになったね。ようやく全員カプが成立した訳だ」ゲラゲラ

鞠莉「皆にとって幸せな結末ね♪」

ちゃんちゃん♪
0090名無しで叶える物語(公衆)
垢版 |
2019/07/07(日) 15:34:59.66ID:+UV5VWgm
こうして花丸は五体引き裂かれて内蔵引き千切られて血反吐撒き散らしてのたうち回って死晒したので
キャラdisをする者は居なくなりましたとさ

果南「キャラdisはしちゃいけないよ?」

鞠莉「こわぁい恋人が居るかもしれないわよぉ?」

果南「さっ。汚い血も浴びちゃったし。鞠莉とのセックスで身体を清めようかねぇ」

鞠莉「ふふっ。かなぁんたら、そればっかり」

鞠莉「あっ、この挽肉工場みたいな風景の処理を依頼しとかないと」

果南「それが終わってからでいいよ。私は花丸みたいにキャラdisが趣味の食べることばかり考えてるような煩悩まみれの俗物じゃないんだ」

果南「但し、たっぷりと楽しませてもらうからね」

鞠莉「勿論よ、果南。私だって、身体を清めたいんだから」

かなまり「さて、退場の前に一言」

繰り返すがネタと称してキャラdisを繰り返す
国木田花丸は五体引き裂かれて内蔵引き千切られて血反吐撒き散らしてのたうち回って死に晒せ


お終い♪
0091名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/07(日) 16:27:41.57ID:3Ww97iGZ
>>87続き

――――――
―――





花丸「……はぁ」

花丸(月曜日の朝)

花丸(なぜだが疲弊しきっているように感じて、ため息をつく)

花丸(体が重い、辛い)

花丸(学校に行きたくない……なんて、思ってしまう)

花丸「?」

花丸(チカチカと光る携帯)

花丸「……善子ちゃん?」

花丸(連絡は善子ちゃんからで、大丈夫? と、心配するような内容だった)

花丸「どうしたんだろ」

花丸「……大、じょう……ぶ」

花丸(変に心配させてもと正直に連絡を返す)

花丸(さて起きようかと体を起こしたところで)

花丸(また、善子ちゃんからの連絡が来た)

花丸「……え?」

花丸(迎えに行くから一緒に行こう)

花丸(思ってもみなかったそんな誘いに返事を返す前に、善子ちゃんはマルの家へと――来てしまうのだった)
0092名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/07/07(日) 16:39:00.71ID:cyzM2Bko
>>91の続き

果南「オラァ」

ゲシッ

花丸「がはぁっ」

ドシャッゴロゴロ

花丸「」ピクピク

鞠莉「まだ生きてる。よく保つわねぇ」

鞠莉(果南に20分以上殴られ続けて意識保ってるなんて、やるじゃない)

鞠莉(でももう虫の息ね。体中痙攣してるし、内蔵や筋肉、骨の損傷も大きい)

鞠莉「そろそろ終わり、かな」

花丸「うう……痛いズラ、痛いズラ」ポロポロ

花丸「善子ちゃん……助けて、助けて」ポロポロ
0093名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/07/07(日) 16:40:03.99ID:cyzM2Bko
果南「善子が助けに来る訳ないだろう?あんた畜生丸とか言って毒ばっかり吐いて嫌われてるんだから」

花丸「そんなっ」

果南「だーから梨子に獲られたんだろうが」

花丸「うう」

果南「それでちょっと優しくしてくれたら、鞠莉に擦り寄るんだからさぁ。頭来ちゃうよね」

ゴスッ

グジュリッ

花丸「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!」

鞠莉「傷口の上に抉るような一撃!」

鞠莉(これは痛いわねぇ)

鞠莉(もんどりうっちゃって面白い)くすくす

果南「おや?鞠莉今のウけたかい?」

鞠莉「GOODよ、かなぁん」
0094名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/07/07(日) 16:41:19.09ID:cyzM2Bko
果南「じゃ、今度はこっちの太ももの傷にっと」

果南「おっ、手頃な石発見」

鞠莉(沼津のこの辺は岩礁だから小さな岩がすぐに見つかる)

鞠莉(あんな栗のイガみたいな小岩だって手頃に転がってるわ)

花丸「え?何?何するズラ?」ガクガク

果南「ようし、この岩を太ももの傷にそえて」

花丸「これ以上は、痛いの嫌ズラ、助けるズラ」ブルブル

果南「おらぁ、松浦家秘伝!寒風摩擦!!」

ゴリゴリゴリゴリゴリ!!!

花丸「うわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!!!!」ジタバタジタバタ

花丸「やめるズラ!痛いズラああああ!!!!!やだあ゛あ゛あ゛!!!!」

果南「がっはっは!上半身エビみたいに仰け反らせちゃって!面白いねぇ」

鞠莉「くすくすくすwwwwwシャイニー、面白いわぁ」
0095名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/07(日) 18:49:27.24ID:3Ww97iGZ
>>91の続き

花丸「善子ちゃんにしては積極的ずら」

花丸「何か、あったの?」

善子「いや……何もなかった」

善子「何の進展もなかった」

花丸「善子ちゃん?」

花丸(善子ちゃんはなぜかとても悲しそうに言う)

花丸(土曜日は普通だった)

花丸(でも、日曜日の善子ちゃんをマルは知らない)

花丸(その時に何かあったのかな)

花丸(誰か、好きな人でもできたのかな)

花丸(そんなことを考えて、首を振る)

花丸「善子ちゃん、学校行こう?」

花丸(マルは悩みの理由を知らない)

花丸(その答えを持ち合わせているかもわからない)

花丸(だから、無理に聞くのは避ける)

花丸(それが良い方向に進んでくれるのか……分からないから)
0096名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/07/07(日) 19:56:55.08ID:cyzM2Bko
>>95の続き

果南「さぁて。どんどん傷口に摩擦を加えていってやろうねぇ」

鞠莉「面白いものね」

花丸「いや、いや、やめて、もうやめるズラ」ポロポロ

果南「やーだね」





花丸「」ピクピク

果南「ズルムケだねぇ。全身包茎卒業かい?」

鞠莉「岩で擦りすぎて地肌露呈しちゃって。真っ赤でなんかアジの開きみたいね」

花丸「」ピクピク

果南「当の本人も泣き叫ぶ気力もないのか痙攣してるだけだし」

鞠莉「もうお終い?」

果南「まさか。やっとここからが本番さ」

果南(くっくっく。辛いのはここからだよぉ、キャラdisを繰り返した報いを受けろ)ニヤリ

花丸「」ヒクヒク
0097名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/07/07(日) 19:57:49.48ID:cyzM2Bko
鞠莉「どうするの?」

果南「簡単さ。すぐそばに海水があるだろう?」

鞠莉「あ!」

果南「そうさ。この全身ズルムケのアジの開きみたいな身体を海水に浸すと」

ジャブン

花丸「!!!!!!」

花丸「あげぇっ!?ひぎぃぃぃ!!!!」

果南「がっはっは!塩水の気付けは効いたかい?声もすっかり戻ったねぇ」

鞠莉(塩分が皮下組織を浸潤して神経を侵したのね)

鞠莉(これは地獄よぉ)

花丸「あっあぁあああ」ジタバタ

鞠莉(海の中で逃げ道もないものね)

鞠莉(皮膚がないんじゃ、塩分も防げない)

果南「くくっ。いい感じに塩が神経をズタズタにしてくれてるんじゃないのかい?」
0100名無しで叶える物語(関西地方)
垢版 |
2019/07/08(月) 03:00:23.38ID:IcHlai3P
気にせず書いてください
続き楽しみに待ってます
0101名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/08(月) 06:39:27.34ID:GLengWQ1
>>95の続き


善子「………」

花丸「………」

花丸(善子ちゃんは話そうとはせず、ただマルの傍を歩いて)

花丸(何かにおびえるように周りを見て、青信号でも車が完全に止まるまで渡ろうとしなかったり)

花丸(不運が許容範囲を超えるのを心配して慎重になってるのかなと思った矢先)

花丸(見えてきたバス停の前で、善子ちゃんは急に声をかけてきた)

善子「水曜日にさ、小テストあるじゃない?」

花丸「え? あっ、あぁ……うん。あるずら」

善子「補習こそないけど点数低すぎると内申に影響するそうだし勉強しない?」

花丸「べん……きょう……?」

善子「ありえないみたいな顔すんなっ」

善子「私だって勉強くらいするわよ」

花丸(ちょっと怒ったような言い方)

花丸(なのに善子ちゃんは悲しそうに笑っていて)

善子「ダイヤなら喜んで教えてくれると思うし、どう?」

花丸「わざわざダイヤさんに頼まなくてもいいんじゃないかな?」

善子「ルビィも誘う予定だし、どうせなら力を借りて完璧な点数取ってみたいじゃない?」

花丸「まぁ……うん、良いよ」

花丸(そう答えると、善子ちゃんは"ありがとう"と言った)

花丸(なぜか申し訳なさそうに見えるその顔は強く、目に焼き付いた)
0102名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/08(月) 21:19:24.75ID:GLengWQ1
善子「ねぇ花丸」

花丸「なに?」

善子「ちょっと、まじめな話」

花丸(いつものずら丸ではなく、"花丸"と呼んだ善子ちゃんは神妙な顔つきで)

花丸(少し躊躇ったのかもしれない)

花丸(唇をくっっと噛むのが見えた)

花丸「バカにしたりしないよ?」

善子「ん……?」

善子「あぁ……別に、してくれてもいいけど」

花丸(善子ちゃんは苦笑いを浮かべる)

花丸(疲れを感じるその笑顔は、きっと、何かを隠してる)

善子「例えばさ、これから来るバスが事故るとする」

善子「それって、"運命"と"宿命"どっちだと思う?」
0103名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/08(月) 22:08:02.01ID:GLengWQ1
花丸「また突拍子もないことを……」

花丸(しかも不謹慎)

花丸(周りに同じバス待ちの人たちがいないことを幸運に思いつつ)

花丸(善子ちゃんの質問を考える)

花丸(”運命”と"宿命"そこにある違いは何だろうか)

花丸(運命は人々の廻り合わせであり、誕生ののちに定められるものであることから可変的なものであると言われる一方で)

花丸(宿命は誕生する以前から定められている不変的なものであると言われてる)

花丸(仏教の観点から言えば、運命や宿命というよりも輪廻転生が出てくるけど……善子ちゃんが聞きたいのはそこじゃない)

花丸「どちらかと言えば運命。だと思うずら」

善子「……どうして?」

花丸「極端なことを言うと、命のないバスに"運命も宿命もない"ずら」

花丸「であれば、バスに乗る人たちの"運命"か"宿命"になる」

花丸「それなら、その日その時間そのバスに乗った"廻り合わせ"が死を招くと考えれば"運命"が正しいんじゃないかな?」
0107名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/10(水) 22:08:57.83ID:KJxAitWF
善子「待って」

善子「"廻り合わせ"が死因であるって根拠はどこにある?」

善子「もしかしたらそこにいる全員が死ぬことが"宿命"だったかもしれないじゃない」

花丸「複数人がいるからこそ。かな」

花丸「例えばマルと善子ちゃんが今ここで車に轢かれて死んじゃうとする」

花丸「どちらかの死が"宿命"だとしても、もう一人に関してはたまたまそこにいただけの"運命"かもしれない」

花丸「善子ちゃんの言うバスの乗客」

花丸「その中の誰かが"宿命"を担っていたとしても」

花丸「それ以外の人たちは"宿命"に引き寄せられる"運命"の人たちって考えるのが妥当だと思う」

花丸(正直、観測できることではないから)

花丸(推測や机上のものになっちゃうけど)

花丸「元も子もないこと言えば、"運命"か"宿命"かはシュレディンガーの猫だよ」

花丸「その時になるまではどちらなのかは分からない」

花丸「ん〜……悪魔の証明の方が近い。かな?」

花丸「とにかく、それを立証することは不可能ずら」
0108名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/10(水) 22:25:50.17ID:KJxAitWF
善子「じゃぁ例えばの話」

善子「私が次に乗るバスで事故に遭って、それがきっかけで過去に戻っていたとする」

善子「当然、バスの事故を避けるために徒歩通学したとするでしょ?」

善子「でも、それでも同じ時間に事故あるいは事件に巻き込まれて死んじゃう場合」

善子「私の死は"運命"それとも"宿命"?」

花丸「それってつまり事故や事件は原因ではなく、理由に過ぎないんだよね?」

花丸「死という結果への収束、そのための前提条件」

花丸「もしそうなら、”宿命”である可能性は高い」

善子「……やっぱり」

花丸「ただ、"宿命"は逃れられないと言うけど、マルはそう思わない」

花丸(持論だけど、望みすぎた希望だけど)

花丸「宿命はあくまで個人が担うものだから、運命による廻り合わせによって回避できるんじゃないかなって思う」

花丸「事故から守って、事件から守って」

花丸「宿命づけられたその死を乗り越えさせる」

善子「なにそれ出来るわけないでしょ」

花丸(善子ちゃんは呆れたように吐き捨てる)

善子「―――――」

花丸(バスが来て、大きな音がその後に続いた言葉をかき消してしまう)

花丸(けれど、"だったらいいわね"と、言っていたように感じた)
0109名無しで叶える物語(SIM)
垢版 |
2019/07/11(木) 02:00:19.17ID:V0Gpt7mt
ちょっとずつ話が見えてきたような
わくわく
0111名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/12(金) 06:10:31.24ID:fniLBaxp
――――――
―――


放課後

花丸(放課後になって、朝話していた小テスト勉強を手伝って貰えないか。と頼みに行くと)

花丸(ダイヤさんは少し考える素振りを見せて、頷いてくれた)

ダイヤ「……なるほど、構いませんわ」

善子「よっし! これで満点取れるわ!」

ルビィ「そうかなぁ?」

善子「元々クラス2位になれる自信はあるのよ」

善子「そこに万全に万全を期して満点確実になったってわけ」

花丸(妄言とかじゃないわよ。と)

花丸(善子ちゃんは自信たっぷりに笑う)

花丸(良い笑顔、普通の笑顔)

花丸(気にしすぎ……だったかな?)

ルビィ「花丸ちゃん?」

花丸「ふぇっ?」

ルビィ「どうかしたの?」
0112名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/12(金) 06:29:04.59ID:fniLBaxp
花丸「どうかって……」

花丸(善子ちゃんと、ダイヤさんの視線までもがマルに集まる)

花丸(ほんの数秒間の思考だったはずなのに)

花丸(思っていた以上に考えていたらしい)

善子「もしかして、用事とかあった?」

善子「もしそれなら……いや、出来ればそれでも……」

花丸「いやっ、いやっ、用事とかはないずらっ!」

花丸(何か大ごとになりそうな空気を感じて、否定する)

花丸(焦ったせいか嘘くさくてぎこちなさが出ちゃったけど)

花丸「ただ、善子ちゃんが珍しく本気で」

花丸「昔とは違うんだなぁ……って」

ルビィ「そうだったんだ」

ルビィ「ごめんね? 変に気をかけちゃって」
0113名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/12(金) 06:35:50.61ID:fniLBaxp
ダイヤ「場所はどうしますか?」

ダイヤ「わ――」

善子「ダイヤの部屋!」

ダイヤ「っ!?」

善子「あっ、ごめん」

ダイヤ「いえ……それは、別に」

花丸(勢い付いた善子ちゃんの進言)

花丸(驚きを見せたダイヤさんは気がかりな表情で善子ちゃんを見ると)

花丸(何も言わずに、優しい笑顔を見せた)

ダイヤ「では、それでいい?」

ルビィ「ルビィは平気だよ」

花丸「マルもそれで」

ダイヤ「ならわたくしの部屋にいたしましょうか」

花丸(ダイヤさんとルビィちゃんの家ではなく)

花丸(ダイヤさんの部屋)

花丸(その言い方が、なんだか気になって)

善子「…………」

花丸(黙り込む善子ちゃんにはやっぱり何かあるのだと思った)
0115名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/13(土) 01:56:42.19ID:z/cnplHS
花丸(ダイヤさんに勉強会のお願いをしていたせいか)

花丸(いつもとは違うバスの中)

花丸(珍しい混雑に席を離れることになったマル達)

花丸(隣には、ダイヤさんがいる)

花丸(いつも違う、偶然)

花丸(ダイヤさんがいる、偶然)

花丸(これがもしも、"廻り合わせ"だと言うのなら)

花丸「ダイヤさん」

ダイヤ「はい?」

花丸「善子ちゃんのことで、相談したいずら」

ダイヤ「……ええ、先ほどの善子さんは尋常ではなかった」

ダイヤ「ただわたくしの私室に興味があるだけならば構いませんが」

ダイヤ「きっと、そうではないのでしょう」

花丸(何かがある)

花丸(ダイヤさんはあえてそう言わなかった)

ダイヤ「花丸さん、その相談を聞かせてください」
0117名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/13(土) 14:26:36.54ID:z/cnplHS
花丸「まずひとつに今日、善子ちゃんはマルを一度も"ずら丸"と呼んでない」

花丸「次に、常に何かを警戒していて悲しそうな顔ばかりしてる」

花丸「そして……善子ちゃんは"運命と宿命"を気にしてる」

花丸「……どうしてだと思う?」

ダイヤ「後者二つでも大方の推測は出来ますわね」

ダイヤ「もちろん、それが演技や悪ふざけではないのであれば……という大前提がありますが」

ダイヤ「しかし、その場合は想像したくない推測になってしまう」

花丸「でもだからこそ……善子ちゃんがそんな悪ふざけを続けるわけがない」

ダイヤ「ええ、そう思います」

ダイヤ「ですがそれはあまりにも非現実的では?」

ダイヤ「仮に……そう、仮にです」

ダイヤ「善子さんの黒魔術とやらでそれが可能だったとしましょう」

ダイヤ「どうしてそれを正直に話さないのでしょう?」

ダイヤ「善子さんあるいは花丸さんの身に何かが起こるのであれば」

ダイヤ「それを話し、回避しようとするのでは?」
0118名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/13(土) 14:56:01.86ID:z/cnplHS
花丸「それが出来ないあるいは、したくないのかもしれないずら」

花丸「それを話すことで黒魔術の効果が消えて過去に戻れなくなるかもしれない」

花丸「もしくは、"話さないことで過程を固定させる"目的があるのかもしれない」

ダイヤ「過程を固定させる?」

花丸「例えば死ぬことが"運命"だとして、死は結果だよね?」

花丸「その死に繋がる原因は、事故、事件、病気……いくつもの可能性がある」

花丸「マル達がそれを避けようとした場合、何になると思う?」

ダイヤ「……もしも避けられない"運命"であるなら、死因は病気になりますわね」

ダイヤ「唐突に訪れる病死には何の努力も意味をなさない」

ダイヤ「それゆえに、あえて事件や事故での死の流れに固定し、回避することで終結させようと言うわけですか」

花丸(悪ふざけだとか冗談だとかそういった考えをせずに真剣に考えてくれる)

花丸(ダイヤさんなら……と言っていた善子ちゃんの信頼の強さ)

花丸(それが良く、分かった気がする)
0119名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/13(土) 15:10:07.34ID:z/cnplHS
ダイヤ「…………」

花丸(ダイヤさんはマルから目を放した)

花丸(きっと、話しているうちに気付いたんだと思う)

花丸(善子ちゃんにも"死の運命"があるのなら、善子ちゃんが知っていることと行動していることは致命的)

花丸(つまり、"善子ちゃん以外の別の誰かが死ぬ"または"善子ちゃん以外にも死ぬ人がいる"から)

花丸(誰にも話すことなく、一人で奮闘しようとしている)

花丸(その誰かは……きっと)

花丸「!」

ダイヤ「……ご心配なく」

花丸「ダイヤさん……」

花丸(ダイヤさんは空いている手で、マルの手を握ってくれた)

花丸(傍に誰かがいると言う安心感)

花丸(たとえ絶望することになるとしても引っ張り上げてくれるような力を感じる)

ダイヤ「善子さんのことはわたくしに任せてください」

ダイヤ「この後話してみます」

花丸「でもっ」

ダイヤ「大丈夫、手札はあります」

花丸(そう言って見せてくれた笑顔はとても、真剣だった)
0120名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/14(日) 12:30:27.28ID:i2ewv20Q
花丸(勉強会は何の問題もなく進んだ)

花丸(勉強会を進言した善子ちゃんは)

花丸(進言した側だからなのか教わるよりも教える側で)

花丸(教えてもらうマルとルビィに対して教えるダイヤさんと善子ちゃんと言う構図は)

花丸(瞬く間に、時間を加速させた)

花丸(善子ちゃんはマルが間違えそうなところを先んじて注意してくれて)

花丸(なぜか"ここは出ない"と自信に満ちて言う)

花丸(善子ちゃんが例えに使い、マル達が前提として話した"過去戻り"という条件)

花丸(それの信憑性が増したような気がして……心が揺れる)

花丸(過去に戻っているのが事実だとしたら)

花丸(命を救うための戦いをしているのだとしたら)

花丸(善子ちゃんは何度、マルの死に立ち会ってきたのだろう)

善子「……花丸?」

花丸「善子ちゃん……マルは……」

善子「どうしたのよ。そんな顔して」

花丸(駄目だと分かっているのに、ダイヤさんが任せてと言ってくれたのに)

花丸(マルの運命について話したくなってしまう)

花丸「なん、でも……ないずら」
0121名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/14(日) 13:05:30.88ID:i2ewv20Q
善子「なんでもないなんて、そんな」

花丸「何でもないずら。本当、ただ……善子ちゃんが珍しく"ずら丸"って呼ばないから」

善子「そんなこと……ずら丸より花丸って呼ばれる方がいいんじゃないの?」

花丸「それはそうだけど、急に変わったから何かあったんじゃないかって思って」

善子「あぁ……」

花丸(まただ)

花丸(またその、悲しそうな笑い方)

花丸(だから、気にしちゃうんだよ?)

善子「別に何もないわよ」

善子「強いて言うならそういう気分だったってだけ」

花丸(でも、ヨハネにはならない)

花丸(堕天使はどこに行ったの? その余裕も、無くなっちゃったの?)

ダイヤ「……善子さん、少しよろしいかしら」

善子「ん?」

ダイヤ「今後のことで少しお話があります」

善子「今後のことなら……いや、良いわ。分かった」

花丸(善子ちゃんはダイヤさんの顔を見て、察したように答える)

花丸(きっと以前にも、ダイヤさんの力を借りたんだ)

花丸(それでもきっと、マルは死んだんだ)

花丸「善子ちゃん……」

花丸(もういいよ。そう言ってしまいたいと思う心を、頑張って、飲み込んだ)
0122名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2019/07/15(月) 02:53:57.62ID:Yo5VvAka
ダイヤさん頼もしくてカッコいいな
さてどうなる……
0123名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/15(月) 19:15:25.18ID:lI5bedeF
ルビィ「今後の話って何だろう?」

ルビィ「生徒会……とかじゃないだろうし」

ルビィ「様子がおかしかったからかな?」

花丸「ルビィちゃんも?」

ルビィ「うん。善子ちゃん全然違う感じがした」

ルビィ「うまく言えないけど、善子ちゃんじゃない善子ちゃんが善子ちゃんを頑張っているみたいな……」

花丸「いつも通りを演じようとしてる。みたいな感じだよね」

ルビィ「そう、そんな感じだった」

ルビィ「勉強会を言い出したことも驚いたけど」

ルビィ「一番はお姉ちゃんを頼ろうとしたことと、お姉ちゃんの部屋って大きい声出したこと」

ルビィ「お姉ちゃん、こういうことには真面目だし厳しいから」

ルビィ「お姉ちゃんの手を借りたりなんてしないと思ってた」

ルビィ「……花丸ちゃん、何か知ってる?」

花丸(ルビィちゃんは違和感を覚えてて)

花丸(それでも、何も言わずについてきてくれたんだね)

花丸(話して、おくべきかもしれない)
0124名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/15(月) 19:41:15.02ID:lI5bedeF
花丸(ダイヤさんに話したこととほとんど同じことを、ルビィちゃんにも話した)

花丸(ただ、マルが死ぬかもしれないことや、善子ちゃんが過去戻りしているようなことは除く)

花丸(ルビィちゃんは何が何でも)

花丸(それこそ自分を犠牲にしてでもマル達を助けてくれる)

花丸(そんな気がしたからだ)

ルビィ「善子ちゃん達の運命かぁ……」

ルビィ「黒魔術で占いでもしたのかな?」

花丸「うん、そうみたい」

花丸「で、あの善子ちゃんのことだから良くない結果だったずら」

ルビィ「あははっ、善子ちゃんらしいねっ」

花丸(ルビィちゃんは愛らしく笑う)

花丸(今の状況を、マルの運命を)

花丸(何もかもをくだらないと思わせてくれそうな純粋な笑顔)

ルビィ「ルビィは?」

花丸「?」

ルビィ「ルビィの運命はどうだったのかなっ」

ルビィ「国民的アイドルとかかなっ」

花丸「それは運命じゃなく将来ずら」

ルビィ「えへへっ……そうだねっ」
0125名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/15(月) 20:08:06.22ID:lI5bedeF
花丸(ルビィちゃんと話していると、日常を感じる)

花丸(かの人は言った)

花丸(この世の生きる喜びの一つは人間の純粋な心に触れることである。と)

花丸(だとしたらマルは今、幸福と言えるのかもしれない)

花丸(だから、死ぬのかな)

花丸(お前は幸せだ。幸福だ。故に死ねと)

花丸(でも不思議と、死にたくないとは思わない)

花丸(きっと。きっと……そうなんだ)

花丸(マルが"別に死んでもいい"と考えるから善子ちゃんは話さないんだ)

花丸「……マルはルビィちゃんと出会えたことが運命かなぁ」

ルビィ「それなら幼馴染の善子ちゃんが運命じゃないのかな」

花丸「う〜ん」

花丸「みんなに逢えたことが運命ずらっ」

ルビィ「わわっ」

花丸(ルビィちゃんの華奢な体に飛びつく)

花丸(受け止めようとして、受け止めきれずに倒れていく)

花丸(その頼りなさがそれっぽくて、マルは思わず嬉しくなってしまう)

花丸(善子ちゃん達が戻ってくるまでの数十分間、マルはルビィちゃんとじゃれあい続けた)
0126名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/16(火) 05:23:26.49ID:Lp7BxkVf
――――――
――――
――

ダイヤ「んっ」

花丸(ぐっと体を伸ばすダイヤさん)

花丸(纏う衣服は今はなく、決して平凡ではない裸体が躊躇なく晒される)

花丸(羞恥がないのは自信があるからか、それとも恥じる相手ではないと言う信頼か)

花丸(いや、信頼よりも関係か。と、雫の滴る天井を見上げる)

花丸(よくよく目の保養だなんだと小説では描かれるけれど)

花丸(案の定、心が癒えるものではない)

ダイヤ「どうかしました?」

花丸「マルが男の子だったらダイヤさんを押し倒してただろうなって」

ダイヤ「ふふっ男の子だったらこの場には居なかったわ」

ダイヤ「けれど、貴女は女の子だった。私も女の子だった」

ダイヤ「そして出会う……それもまた"運命"なのでしょう」

花丸(ダイヤさんが動くと湯面の波紋が体にぶつかる)

花丸(自宅の風呂でも正しく髪をまとめるダイヤさんの首筋が目に入った)

花丸「どうして、泊まるように言ったずら?」

花丸「普段のダイヤさんなら何の準備もしていないマル達を泊めることはないはず」

ダイヤ「時間も時間だったでしょう? 帰すにはいささか不安もあったのよ」

花丸「つまり」

ダイヤ「ええ……そう」

ダイヤ「具体的には言わないけれど、花丸さんなら分かりますわね」

花丸「そっか」

花丸(死の宣告……けれど落ち着いているのは、分かっていたからかもしれない)
0127名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/16(火) 06:11:14.33ID:Lp7BxkVf
花丸「善子ちゃん、泣いたよね」

ダイヤ「さて、どうだったかしら」

花丸「見てれば分かるずら」

花丸「嫌なことあったんだな、良いことあったんだな、はしゃいでたんだな、泣いてたんだな」

花丸「善子ちゃんは意外と顔に出やすくて、誤魔化そうとしても誤魔化せない」

花丸「悪ぶってても結局、優しさに負ける堕天使さんだから」

ダイヤ「……花丸さん」

ダイヤ「善子さんには言わないように言われたことがいくつかあります」

ダイヤ「ですがきっと、貴女はそれにたどり着く」

ダイヤ「聞きますか? 聞きませんか?」

花丸「聞いたらマルはどうなるずら?」

花丸「善子ちゃんが言わないでって言ったのは、マルが傷つくからなのかな? それとも、受け入れちゃうからなのかな」

ダイヤ「受け入れるから。でしょう」

花丸「だったらもう遅いずら」

花丸(不思議と、笑える)

花丸(貴女は死ぬ運命です。そう言われているようなものなのに)

花丸(小説に描かれる余命宣告よりも鮮明で精密で、確実なのに)

花丸(泣き崩れるような様子は微塵もない)

花丸「教えて、ダイヤさん」
0128名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/16(火) 06:25:11.51ID:Lp7BxkVf
ダイヤ「なるほど、覚悟はあると」

花丸「善子ちゃんをこれ以上苦しませたくないから」

ダイヤ「そうですか……」

花丸(ダイヤさんは悲しそうに言うと)

花丸(ちゃぽん。と音を立てて湯船から手を出す)

花丸(しなやかで、汚れなく、まさしく乙女の手)

花丸(掬われたお湯は零れを知らない)

ダイヤ「善子さんは言っていましたわ」

ダイヤ「何が覚悟を決めた。よ。ばーかっ」

花丸「はっ?」

ダイヤ「こちとら我儘でやってんのよ覚悟なんて知ったことか!」

花丸「わぶっ!?」

花丸(ばしゃんっとお湯をかけられ、思わず反応が遅れる)

花丸(遅れてやってくる困惑、追いつかない思考の前にある微笑むダイヤさん)

ダイヤ「以上、花丸さんが覚悟を決めてなければ言わないで。と言われたことです」

花丸「ずらぁっ!」

花丸「そっ、そんなことであんな重大な何かがあるみたいな聞き方してきたずらか!?」

花丸「聞きますか? 聞きませんか? 何がずらっ!」
0129名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/16(火) 06:35:41.34ID:Lp7BxkVf
ダイヤ「ふふっふふふっ」

ダイヤ「ごめんなさい」

花丸「謝ったって許さないずら!」

花丸「マルは――」

花丸(ダイヤさんの体を強く押さえつける)

花丸(ばしゃんばしゃんとお湯が溢れて飛び出していく)

花丸(ダイヤさんは抵抗しない)

花丸(ただ、受け入れてくれた)

ダイヤ「死ぬ覚悟を決めたのに。ですか?」

花丸「そうずら」

花丸「善子ちゃんはマルを助けようとしてくれる」

花丸「そのたびにマルの死に立ち会って、それを覚えて……ずっと背負っていく」

花丸「そんなの、マルは嫌だ」

ダイヤ「ですが、救うと決めた彼女の心が挫折してしまったら花丸さんの後を追うのでは?」

花丸「っ」

ダイヤ「相手を想うだけでは救うことなどできない」

ダイヤ「花丸さんも、善子さんも」

ダイヤ「互いを想うがゆえに行動し、結果相手を傷つけてしまう」

ダイヤ「なんと理不尽なことか」

花丸「だとしてもっ」

ダイヤ「だからこそ」

花丸「!」

ダイヤ「これで終わりにいたしましょう」

花丸(ダイヤさんの温まった素肌がマルを包む)

花丸(ルビィちゃんとは違う、大人の抱擁)

花丸(癒されるのではなく、宥められる)

花丸(慌ただしくなっていた心を落ち着かされるような優しさ)

ダイヤ「わたくしはお二人を、救いたいので」
0133名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/07/16(火) 19:25:52.09ID:dKaATo6D
非日常的思考になった理由は>>117じゃね?
つーか冗長って言いたくなるくらい丁寧だぞこの話
それでわからんとかマジか
0134名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/16(火) 22:01:28.26ID:Lp7BxkVf
花丸「その算段が、ダイヤさんにはあるずらか?」

ダイヤ「……ええ。一つ、考えがあります」

花丸「何をするの?」

ダイヤ「すみませんが、話してしまうと運命に絡まれそうなので秘密にさせてください」

花丸「善子ちゃんは知ってる?」

ダイヤ「善子さんにもお話していませんわ」

ダイヤ「わたくしが考えるに善子さんは"観測者"としての役割があると思うのです」

花丸「マル達はリセットされるのに、善子ちゃんだけが引き継ぐからずらね」

花丸(善子ちゃんの悪ふざけじゃなければ……だけど)

花丸(ダイヤさんまで巻き込んだんだ、もう、嘘や冗談なんて考えは甘えだ)

ダイヤ「ええ、そうです」

ダイヤ「繰り返す要因として黒魔術が作用している場合」

ダイヤ「その術者である善子さんが"観測者"になるのは必然でしょう」

花丸「でも、それと何か関係があるずらか?」

ダイヤ「もしかしたら、善子さんに観測されること自体が間違いである可能性があるのです」
0135名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/16(火) 22:18:20.71ID:Lp7BxkVf
ダイヤ「花丸さんであれば、シュレディンガーの猫については言わずとも通じることでしょう?」

花丸「うん、小説にも出てくることはあるずら」

花丸(誤用も多いし、マル自身それを正しく理解できてるとは思ってないけど)

花丸(どちらかといえば、知ってる)

ダイヤ「結果は観測されるまで結果ではなく可能性のまま進行していく」

ダイヤ「それゆえに、"運命と宿命における結果の観測"が必要不可欠です」

ダイヤ「善子さんは繰り返しの間、常に花丸さんの傍に居ました」

ダイヤ「それもそうでしょう。花丸さんが亡くなったことで繰り返しを始めたのだから」

ダイヤ「しかし、それによって"死という結果"が観測され続けているのではないか。と、わたくしは思うのです」

花丸「善子ちゃんが避けようとしている結果を、善子ちゃん自身が招いてるってこと?」

ダイヤ「ええ」

花丸(どうだろう)

花丸(本当にそうなのかな)

花丸(善子ちゃんが"観測者"なのは疑う余地もないかもしれない)

花丸(でも、善子ちゃんが傍に居ないときに死ななかったとは思えない)

花丸(見ないだけで済むなら、きっと、善子ちゃんはすでに確かめてるはず)

花丸「いや、善子ちゃんならそのくらいは考えられるはずずら」

ダイヤ「…………」

花丸「いつかのダイヤさんにお願いしてマルの結果を見なかった。違う?」

花丸(確証はない)

花丸(でも、あの信頼の強さはきっと、マルの結果の観測を担い合ったからこそである可能性はある)
0136名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/17(水) 05:39:42.20ID:D/OdFFH6
ダイヤ「善子さんは任せるわ。と、ただ一言述べただけでした」

花丸「それって……」

ダイヤ「そうです。花丸さんの問いへの答えは得られていません」

ダイヤ「ですがきっと、そうなのでしょう」

ダイヤ「繰り返す中で同じようにわたくしの協力を得て、結果は失敗だった」

花丸(ダイヤさんは悲しそうに言うと)

花丸(申し訳ありません。と、言う)

ダイヤ「今の話は、花丸さんの推測を聞きたいがため」

ダイヤ「なぜ、花丸さんが死ななければいけないのか」

ダイヤ「それが善子さんによる観測の結果であるならば対処のしようもあると思ったのですが」

ダイヤ「なかなかどうして……簡単にはいかないものですわね」

花丸「でもっ、マル達がそう考えているだけで」

花丸「善子ちゃんが本当に観測しなかったかは分からないずら」

ダイヤ「……では、試してみますか?」

ダイヤ「善子さんの手を離れ、わたくしと過ごしてみますか?」
0137名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/17(水) 06:42:12.81ID:D/OdFFH6
花丸「……勝機はある?」

ダイヤ「少なくとも、花丸さんを救うことは出来るかと」

花丸「善子ちゃんの経験してきた中でやってないこと?」

ダイヤ「伺った感じでは、なさそうです」

ダイヤ「詳細を語れないのが、難しい所ですが」

花丸(多方面に警戒しなければならないこともあって)

花丸(うかつに相談もできない)

花丸(マルの死が病死になった場合、防ぐのは不可能になっちゃうから)

花丸(でも、それなら)

花丸(ダイヤさんには悪いけど、病死なら諦めもついてくれないかな……なんて)

花丸「分かった」

花丸「ダイヤさんに付き合う」

花丸「……これからは、マルとダイヤさんは恋人ずらね」

ダイヤ「ふふっ、何言っているんですか」

ダイヤ「まったく、こんな状況でそんなこと言う余裕があるなんて」

花丸(ダイヤさんは奇麗に微笑む)

花丸(たった二年、されど二年の大人びた笑みだった)
0138名無しで叶える物語(関西地方)
垢版 |
2019/07/17(水) 23:02:52.39ID:oj7FAMrX
花丸ちゃんをループで救うヨハネの構図かと思いきやダイヤさんがガッツリ関わってきたな
楽しみだ
0139名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/18(木) 06:25:24.63ID:tfZSuP1C
――――
―――
――

ルビィ「えーっみんなで寝ないの!?」

ダイヤ「個人のベッドでは二人が限界ですから」

善子「布団敷けばいいじゃない」

善子「三枚横に並べれば四人で寝るくらいのことは出来るでしょ」

花丸「マルの家ではよくやってたよね」

ダイヤ「しかし……いえ、そうしましょうか」

ダイヤ「布団を借りてきます」

善子「私も行くわ。一人じゃ辛いでしょ」

ルビィ「それならルビィもっ」

善子「力不足はお留守番してなさいよ」

花丸(茶化すような善子ちゃんの制止)

花丸(むーっと言いながら、お願い。とルビィちゃんが答える)

花丸(周りの状況を静観し、その都度作られる結果)

花丸(第三者としての立場からそれを観測する)

花丸(これが"観測者"なのかな)
0140名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/18(木) 06:32:50.02ID:tfZSuP1C
ルビィ「のぼせてなくてよかった」

花丸「え?」

ルビィ「お風呂、長かったから」

花丸「あぁ、うん」

花丸「ダイヤさんの体綺麗だから、男の子だったら危ないだろうなぁとは思ったずらね」

花丸(しみじみと、白々しく)

花丸(まぁ実際に思ったことだから嘘をついてるわけじゃないけど)

花丸(ルビィちゃんの質問には答えていない)

花丸「ルビィちゃんはダイヤさんとお風呂入ったりしないの?」

ルビィ「たまに入ることもあるよ」

ルビィ「練習で疲れたときとか、さっさとお風呂入りたいときとか」

ルビィ「どっちが待つとかもあれだからって」

花丸「マルはいつも一人だから、少しうらやましいずら」

ルビィ「でも、慣れてくると妬ましくなるよ」
0141名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/18(木) 06:40:01.76ID:tfZSuP1C
ルビィ「黒くて長い髪」

ルビィ「胸だってちゃんと膨らんでるし、すらっとしてる」

ルビィ「たった二歳で、お姉ちゃんていうだけなのに空気が違う」

ルビィ「大人なんだな。って、思わされる」

ルビィ「だから……ちょっと嫉妬する」

花丸「ダイヤさんは三年生で、ルビィちゃんは一年生だから」

花丸(でも、まぁ……分かる)

花丸「ただ、マルもダイヤさんの笑顔を見てると、その佇まいを見てると」

花丸「たった二年で自分が追い付けるのかなぁって思うことはあるずら」

花丸「背負ってるものからして、違うのかもしれない」

ルビィ「お姉ちゃんは黒澤家を背負う長女だから……かな」

花丸「そうかもね」

ルビィ「…………」

ルビィ「……だから、善子ちゃんも縋るのかな」

花丸「気づいた?」

ルビィ「泣いたんだろうなぁ……ってことくらいは」
0143名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/18(木) 20:57:16.55ID:tfZSuP1C
ルビィ「見てれば分かるよ」

ルビィ「善子ちゃん、分かりやすいから」

花丸「分かる」

ルビィ「花丸ちゃんも、だけどね」

花丸「えっ」

ルビィ「多分、ルビィも」

ルビィ「みんな多分分かりやすいんだよ」

ルビィ「だから、お姉ちゃんがみんなの真ん中に立とうとしてるんだと思う」

花丸(まるで全部分かっているとでも言いたげな話だけど)

花丸(マルが勘違いしてなければ、本質をとらえているだけで外までは分かり切ってない)

花丸(……本質をとらえてるだけで十分凄いんだけど)

花丸「ダイヤさんが生徒会長だからじゃないかな」

花丸「在校生はそんなに多くないけど、でもそれをまとめてきたリーダーのような人だから」

花丸「だからきっと十人十色の判別が出来て、陰りも見える」
0144名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/18(木) 21:51:01.67ID:tfZSuP1C
ルビィ「……ルビィは手伝わなくて平気?」

ルビィ「さっきまでは別に言われるまで良いかなって、思ってたけど」

ルビィ「善子ちゃんもお姉ちゃんも……」

花丸(余裕がない)

花丸(ルビィちゃんの途切れた言葉を補完すると、きっとそう続く)

花丸(マルの目で見ても善子ちゃんに余裕はないように見えるけど)

花丸(ダイヤさんはまだ、そういう感じはしなかった)

花丸(でも、一番ダイヤさんを見てきたルビィちゃんだからこそ)

花丸(ダイヤさんの余裕のなさを感じ取れたのかもしれない)

花丸(かといって、協力を求めて何がある。何ができる?)

花丸(ルビィちゃんには荷が重い)

花丸(馬鹿にしてるわけじゃない、信じられないわけじゃない)

花丸(……いや、違う)

花丸(ルビィちゃんにまで嫌な思いをさせたくないだけだ。ただの我儘、それ一つ)

花丸(思考は保身に走る。だからこそ迷走するのに)

花丸(大丈夫。マルのその無責任な一言は、ルビィちゃんを未来で傷つける)

花丸(……死にさえ、しなければ)

花丸(そんな希望的観測なんて、"死ぬフラグ"でしかない)
0146名無しで叶える物語(SIM)
垢版 |
2019/07/20(土) 03:21:05.58ID:HSDus4vk
保守
0147名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/07/20(土) 11:36:06.81ID:G1l7ptlr
京都アニメーションでの甚大な被害を受け
当SSの人の死を扱う内容は不適切だと思いました
ですのでここで打ち切りとさせていただきます
0153名無しで叶える物語(しうまい)
垢版 |
2019/07/21(日) 03:57:46.72ID:3DiT5+iD
よくわからんけど続き読みたい
保守
0154名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/21(日) 10:01:44.52ID:m9me8lDl
ルビィ「………」

花丸(あぁ、駄目だ)

花丸(失敗した)

花丸(逡巡と言うにはあまりにも長いと、ルビィちゃんの目を見て気付く)

花丸(ううん、気付いた時点で遅いんだ)

花丸「ルビィちゃ」

ルビィ「大丈夫だよ。花丸ちゃん」

ルビィ「花丸ちゃんが優しいって、ルビィは知ってるから」

花丸(笑う。ルビィちゃんはいつもの愛らしさではなく、優しさで微笑む)

花丸(それはきっと無意識で、ただ、マルのことを想ってくれているだけで)

花丸(だからこそ、心に一番届く)

ルビィ「花丸ちゃん達が意地悪で除け者にするわけがない」

ルビィ「もしも冗談なら、花丸ちゃんがそんなに悩むはずがない」

ルビィ「花丸ちゃんはルビィを傷つけたくないんだよね」

花丸「っ!」

ルビィ「だから、傷つかない言い訳を頑張って考えようとしてくれて」

ルビィ「何かわからないけど、きっと大変なことに巻き込まないようにしようとしてくれてるんだよね」

ルビィ「だから、終わったら、大丈夫になったら、聞かせてね」

ルビィ「約束だよ?」

花丸「ル――」

花丸(言葉の始まりに、扉が開いて口が閉じる)

善子「お待たせ」

ダイヤ「善子さんそこで降ろさないでくださいっ」

ルビィ「あっ、手伝うよっ」

花丸(ルビィちゃんはいつもと変わらない無邪気な様子でダイヤさんに歩み寄る)

花丸(横顔に見える半分の笑顔は本物だった)
0155名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/07/21(日) 10:22:38.93ID:m9me8lDl
善子「良いわよ私は残った場所で」

ルビィ「えーっ、やろうよババ抜き」

善子「場所取りに興味はないの」

善子「ルビィ達が好きな場所にしなさいよ」

ルビィ「じゃぁ、善子ちゃんの上」

善子「は?」

ルビィ「やってくれないなら善子ちゃんの上で寝るもん」

ルビィ「逃げても寝相で追いかけるからねっ」

善子「それは寝相って言わないわよっ」

花丸(悪態をつきながらもババ抜き強制参加を承諾する善子ちゃんと、嬉しそうなルビィちゃん)

花丸(それを楽しそうに"観測"するダイヤさん)

花丸(ルビィちゃんに話しておけばよかったと思う反面)

花丸(話さなかったからこそ得られた時間なのだと思うと、分からなくなってくる)

花丸(この場の和みは"運命"なのか、"選択"なのか)

花丸(これも死を与えられる"宿命"であるマルの六文の手向けだとしたら、喜べない)

ルビィ「はいっ、花丸ちゃんの分」

花丸「……あ、うん」

善子「花丸が眠いって言ってる。止め止め」

花丸「大丈夫、一回くらいなら出来るよ」

善子「眠いって言いなさいよ……ったく一回だけだからね」

花丸(これは"選択"だ)

花丸(マルの"運命"なんかじゃない、マルが自分で選んだ"選択"だ)
0156名無しで叶える物語(関西地方)
垢版 |
2019/07/22(月) 01:01:19.51ID:QdDbvfkq
おお、ちゃんと続き来てる
頑張って
0166名無しで叶える物語(わんこそば)
垢版 |
2019/07/28(日) 17:06:12.43ID:UJ9VUtSX
0187名無しで叶える物語(なっとう)
垢版 |
2019/08/05(月) 22:33:35.43ID:wi2d3fJm
書いてくれー
0199名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/11(日) 23:52:27.07ID:McnsY9id
花丸(ババ抜きとは、ジョーカーを最期まで持っていた人が負けとなるトランプの遊び)

花丸(ペアの片割れがそろわないジジ抜きも似たようなルールだけど)

花丸(どちらかといえば……)

花丸「また、マルの負けずらね」

花丸(三回だ)

花丸(三回、マルはババを引いた)

花丸(いや、ババを"与えられた"?)

花丸(そんなことは考えたくない……でも、二人は考えてる)

花丸(マルが、今回もダメなのだと)

善子「あんた、逆に強いわ」

ダイヤ「jokerを三度も手に持ち続けるとは」

ルビィ「引かなかったルビィの運が良かったのかな」

ダイヤ「そうですわね。そう、きっとそうでしょうね」

花丸(そうであって欲しい)

花丸(願うようなダイヤさんの声は、恐怖に纏わりつかれている)
0202名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/12(月) 19:19:24.64ID:jq7tw/X4
ルビィ「場所変えてもう一回――」

花丸「いや、もういいずら」

花丸「これ以上は夜更かしになっちゃうから」

花丸「潔く負けを認めるずら」

ダイヤ「ですが」

花丸「大丈夫」

花丸(ここで食い下がっても、結果が出るとは思えない)

花丸(ダイヤさんの希望は分かる。でも、無駄だ)

花丸「ルビィちゃん、トランプ」

ルビィ「?」

花丸「………」

花丸(ルビィちゃんが回収したトランプの山から一枚引く)

花丸(端に描かれているのは数字ではなく、人は嘲笑の笑みを浮かべている)

善子「ジョーカーじゃなくてストーカーじゃないの? それ」

花丸(この道化師はマルを見ている。マルに張り付いている)

花丸(耳を済ませれば、その息遣いが聞こえてきそうなほどに)

花丸「だから今日はおしまい」

花丸(善子ちゃん達はマルの手の中にある一枚を見て、頷く)

花丸(少しだけ……反抗心を削いでしまったように感じた)
0206名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/14(水) 20:39:30.00ID:hMsI3u70
花丸(善子ちゃんとダイヤさんに挟まれるような位置になったのは、二人がマルのことを考えてだと思う)

花丸(もしここに殺人鬼がやってきたとしても)

花丸(……いや、そうなったら全滅かな)

花丸(目を開けると、部屋は少しだけ明かりがついている)

花丸(何かがあったときのため)

花丸(そう言っていた善子ちゃんは隣で……多分、まだ起きてる)

花丸(昨今良くある物語なら、寝てる? とでも声をかけるかもしれないけど)

花丸(話すようなことが思い浮かばない)

花丸(ジョーカーを4回も手にできたせいか)

花丸(あれ以降の空気が悪かった)

花丸(生き返るというか、過去に戻る)

花丸(善子ちゃんの言っていたそれが事実なら、マルは死んでも死んだことを忘れて月曜日を迎える)

花丸(何度も何度も、繰り返す)

花丸(神様が苦しめたいのは、マルか、善子ちゃんか)

花丸(……いや)

花丸(いや……違う)

花丸(それは、考えちゃだめだ)
0209名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/16(金) 06:29:15.89ID:LMt9BaE3
花丸(火曜日の朝は鬱屈とした曇り空だった)

花丸(何かがあると恐れさせるようなことはないけど)

花丸(何かがあると不安にさせるようなひしひしとした歩み寄り)

花丸(どっちの方が悪意あるように感じるかと言うなら、後者だ)

花丸(前者は警告、後者は……)

花丸「はぁ……」

善子「ため息つくと幸せ逃げるらしいわよ」

花丸「善子ちゃんに言われてもなぁ」

善子「どういう意味よ」

花丸「ため息ついてなくても、逃げてるから」

善子「……まぁ、否定は出来ないけど」

花丸(善子ちゃんはいつも通り……のように見える)

花丸(ルビィちゃん達がいるから。だと思う)

花丸「天気が悪いから、雨降ったら嫌だなぁって」

ルビィ「降水確率は70%だって〜」

花丸「それは降るのか降らないのか」

善子「降らないでしょ」

花丸「………」

花丸「善子ちゃんもこう言ってるし、傘持っていこっか」

善子「ん?」

花丸「善子ちゃんの逆が正解だから」

善子「何よ花丸、私のこと嫌いなの?」

花丸「信じてるからだよ」

善子「まったく嬉しくない信頼やめて」
0210名無しで叶える物語(わたあめ)
垢版 |
2019/08/16(金) 13:05:47.10ID:5/BBUyU2
果南「オラァ」

ゲシッ

花丸「がはぁっ」

ドシャッゴロゴロ

花丸「」ピクピク

鞠莉「まだ生きてる。よく保つわねぇ」

鞠莉(果南に20分以上殴られ続けて意識保ってるなんて、やるじゃない)

鞠莉(でももう虫の息ね。体中痙攣してるし、内蔵や筋肉、骨の損傷も大きい)

鞠莉「そろそろ終わり、かな」

花丸「うう……痛いズラ、痛いズラ」ポロポロ

花丸「善子ちゃん……助けて、助けて」ポロポロ
0211名無しで叶える物語(わたあめ)
垢版 |
2019/08/16(金) 13:06:48.69ID:5/BBUyU2
果南「善子が助けに来る訳ないだろう?あんた畜生丸とか言って毒ばっかり吐いて嫌われてるんだから」

花丸「そんなっ」

果南「だーから梨子に獲られたんだろうが」

花丸「うう」

果南「それでちょっと優しくしてくれたら、鞠莉に擦り寄るんだからさぁ。頭来ちゃうよね」

ゴスッ

グジュリッ プシャアアアア

花丸「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!」

鞠莉「傷口の上に抉るような一撃!」

鞠莉(これは痛いわねぇ)

鞠莉(もんどりうっちゃって面白い)くすくす

果南「おや?鞠莉今のウけたかい?」

鞠莉「GOODよ、かなぁん」
0213名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/16(金) 21:31:17.38ID:LMt9BaE3
ダイヤ「車を出していただくことも可能ですが、どうします?」

善子「さすが黒澤家」

ダイヤ「善子さんは徒歩でどうぞ」

花丸(にっこりと)

花丸(冗談を言うダイヤさんは楽しそうな笑みを浮かべる)

花丸(嵐が来ているわけでもないのに、車を出すかどうかという話が出たのは)

花丸(通学路を心配してるから)

花丸(でもマルの生死を切り出すことはなかっただろうし)

花丸(マル達がいるから送っては貰えないだろうか。という考えかな)

花丸(気持ちはありがたい……というか凄く助かる。けど)

花丸(それは良くない)

花丸(いや、どう、かな)

花丸(思考が二転三転してしまう)

花丸(みんなと登校する以上、巻き込む可能性を孕む)

花丸(車で行くか、徒歩とバスで行くか)

花丸(いずれにしても過程が違うだけで結果は同じ)

花丸(であれば、逃れることは出来ないと思う)

ルビィ「花丸ちゃん? 大丈夫?」
0214名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/16(金) 22:16:49.32ID:LMt9BaE3
花丸(呼ばれて、はっとする)

花丸(みんなの目がマルを見てた)

花丸(心配と、不安と、恐れ)

花丸(それぞれの色がある……なんて)

花丸「大丈夫だよルビィちゃん」

花丸「どっちの方が良いかなって、考えただけだから」

花丸(客観的になりすぎてる)

花丸(まるで、死ぬのは自分ではないと思っているかのような感覚)

花丸(信じてない?)

花丸(ううん、そうじゃないはず)

花丸(信じてないならここまで真剣にはならない)

花丸(毒……だったかな)

花丸「善子ちゃんはどっちがいい?」

善子「どっちでも。車もバスも似たようなもんでしょ」

ルビィ「座れるよっ」
0216名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/17(土) 19:32:06.66ID:jSerJ12s
ルビィ「座れるよ、善子ちゃん」

善子「バスでも座れるでしょ」

善子「まぁ、距離で言えば車の方がいいか」

花丸(善子ちゃんは考え込む)

花丸(さっきのあっさりした返しを考えれば)

花丸(マルがこの移動方法の差違で死ぬことはないということだ)

花丸(なら、悩むのは?)

花丸(それが結果にどんな影響を及ぼすのかが分からないから)

花丸(些細な違い、蹴飛ばせるような小石のような)

花丸(でも……そう、"バタフライエフェクト"だ)

花丸(善子ちゃんの言うような堕天使に関係するものではないけど、善子ちゃんでも興味を持ちそうな話)

花丸(善子ちゃんはそれを気にしてる)

花丸(善子ちゃんがマルを気にかけることで)

花丸(ダイヤさんを巻き込んだことで)

花丸(塵が積もる可能性も無きにしも非ず)

花丸「大丈夫、じゃないかな」

善子「花丸……」

花丸「どっちでも一緒だからね」

花丸(気にするには致命的に遅いと思う。なんて)

花丸(嫌味が過ぎる)
0217名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/17(土) 20:30:50.91ID:jSerJ12s
花丸(通学は結局車で行うことになった)

花丸(道中の安全性も踏まえれば、車の方が安全だからということらしい)

花丸(結果、マル達は無事に学校に着いた)

善子「ダイヤも1年の教室来ない?」

ダイヤ「どこに行ける理由があると?」

善子「生徒会長権限?」

ダイヤ「鞠莉さんじゃあるまいし」

ダイヤ「いえ、さすがに鞠莉さんでもそこまでの職権乱用はしませんわ」

ルビィ「………」

花丸(談笑する二人、それを見るルビィいちゃんは)

花丸(何やら楽しそうに、むふふと笑う)

ルビィ「なんだか、善子ちゃんとお姉ちゃん仲良くなったね」

ダイヤ「そうですか?」

善子「…………」

花丸(本当に。ただ……)

花丸(少し嬉しそうに微笑むダイヤさんの一方で)

花丸(善子ちゃんが悲しそうな笑い方をしていたのは、見間違いじゃない)

花丸(戻ってしまう関係なら)

花丸(喜べるようなことは、何もないのかもしれない)

花丸(でもそれは……)
0218名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/17(土) 21:58:32.88ID:jSerJ12s
花丸(授業を片耳に通しながら、ペンは合間合間に半分の思考でいたずら書きを続ける)

花丸(マルが死ぬのは金曜か、土曜か、日曜日か)

花丸(そして、それはその日にその原因と結果があるのか)

花丸(ある地点で原因が起こり、その結果として週末に死ぬことはないのか)

花丸「………」

花丸("シュレディンガーの猫"、"バタフライエフェクト")

花丸(死と生の可能性の衝突、道端の小石)

花丸(国木田花丸が死ぬという結果、死ぬ原因)

花丸(死ななければならない理由は?)

花丸「運命?」

「何が運命なんだ?」

花丸「へ……ずらっ!?」

花丸(気づかないうちに目の前に来ていた先生は)

花丸(悪戯の勢力が勝ったノートを一瞥すると困ったような顔をする)

花丸(やっちゃった)

「津島に毒されたんじゃないか?」

善子「飛び火!?」

花丸(授業中には珍しく、花火のような喧騒が広がる)

花丸(マルがこういうことをするのは珍しいからか、一言の注意で問題は収まった)

花丸(なんで私がと困惑する善子ちゃんにごめんねとジェスチャー一つ)

花丸(考えるのは、休み時間だけにすることにした)
0219名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2019/08/18(日) 09:30:36.98ID:X0yBrv0Z
やっと追いついた!
期待
0220名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/18(日) 14:50:51.12ID:6oGX/sXQ
善子「あんたねぇ」

花丸「ごめんずら」

善子「ごめんで済んだら警察いらないってのっ」

花丸「えぅっ」

花丸(こつんと頭が叩かれた)

花丸(いろいろな思いがある中で、怒りだけが欠けたそれは、とても優しい力だった)

善子「で? 何考えてたのよ」

花丸「運命について」

善子「昨日の続き?」

花丸「うん。ちょっと気になっちゃって」

善子「……いつもの花丸なら、バカバカしいって切り捨てることだと思ってたけど」

花丸「マルもさすがにそこまで薄情じゃないずら」

花丸「それに、少し気になることもあるから」

善子「気になる? 何が?」

花丸「今はルビィちゃんいないから、誤魔化しは必要ないよ」

善子「………」

善子「……誤魔化すようなことはないわよ。どうせ、ダイヤから聞いたんでしょ?」
0221名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/18(日) 17:02:56.40ID:6oGX/sXQ
善子「……なるほどね」

花丸("シュレディンガーの猫"と"バタフライエフェクト"について)

花丸(悩んでいるのかという問いに、善子ちゃんは鼻で笑った)

善子「確かに私は移動方法で悩んだけど」

善子「別に、"バタフライエフェクト"を気にしたわけじゃない」

善子「考えても見なさいよ」

善子「もし、私が小さな切っ掛けが大きな代償を孕むことに悩んでいるんだとしたら」

善子「ダイヤを巻き込んだりなんてしないでしょ?」

善子「はっきり言って、ダイヤの介入は些細なことというには大きすぎる」

花丸(善子ちゃんらしくない、生真面目な答え)

花丸(体は過去でも心は未来に生きているってことなのかもしれない)

善子「それでもダイヤを巻き込んだのには理由がある」

花丸「過去に、失敗していたとしてもずらか?」

善子「……そんな話、したっけ?」

花丸「推測」

善子「そっ……まぁ、そうね。ダイヤは花丸を救えなかった」

善子「目の前で殺され、黒澤ダイヤという人間は壊れた」

花丸「だったらっ」

善子「だからこそ」

花丸(ダイヤさんも言った、だからこそ。という言葉)

花丸(同じ言葉でも、まったく違うように聞こえるのは使った人の違いだ)

善子「だからこそ、ダイヤを巻き込んでみようと思った」

善子「あの時、ダイヤは限りなく強いものがあったはず」

善子「それが未来から過去へと戻る時間への反逆行為による喪失にさえも抗う力を持っているのか確かめたくなった」

花丸「違う。善子ちゃんはそれに縋ろうとしてるだけ」

善子「否定はしない」
0222名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/18(日) 17:29:44.05ID:6oGX/sXQ
善子「花丸なら私がどういう人間かはもう、分かってるわよね?」

善子「ダイヤが壊れるのを見た」

善子「あの黒澤ダイヤが砕けるのを知った」

善子「にもかかわらず、壊れる方向に誘い込んだ」

善子「たった一つの実験の為に」

善子「客観的に、お前に人の心はあるのか。と言いたい」

花丸(善子ちゃんは自分に向けての嘲笑の笑みを見せる)

花丸(それはまだ"傷つく心"がある人の行いだと、マルは思う)

花丸(善子ちゃんはマルに自分がどれだけの存在かを知らしめるために話しているのかもしれないけど)

花丸(私の頭に残るのは、"それでも救えない後悔"だ)

花丸「善子ちゃんは、ダイヤさんを巻き込みたくなかった。違う?」

善子「……さっきと言葉を変えてきたわね」

善子「残念だけど、不正解」

善子「……どうせ無駄だと、思ってた」

善子「最低でしょ?」
0224名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/19(月) 21:14:52.99ID:7rwE2p03
花丸(最低?)

花丸(そんな悔いた表情を見せる人が?)

花丸(そんなに辛そうな雰囲気を纏う人が?)

花丸(違う。善子ちゃんは卑下することで傷つきたくないだけだ)

花丸(ありのままに傷つくことを受け入れてしまえば、壊れてしまうから)

花丸(限りなく低く見積もることで、その痛みを諦めようとしてる)

花丸(そうしなければ、国木田花丸の死を見続けることが出来ない)

花丸(だけど。)

花丸(だけどだよ、善子ちゃん)

花丸(それは)

花丸「それは、諦めでしかないずら」

善子「っ」

花丸「善子ちゃんはマルを救うことは出来ないと諦めてる」

善子「そんなことないッ!」

花丸「怒らなくても、マルは責めるつもりはないよ」

善子「花丸!」

花丸「運命だから、宿命だから」

花丸「人間の抗える領域ではないのなら、"諦める"のではなく、"受け入れる"べきずら」
0225名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/19(月) 22:04:10.25ID:7rwE2p03
善子「やめて!」

花丸「!」

花丸(胸倉を掴まれて、押しのけられるように下がった背中が壁にぶつかる)

花丸(ここがみんなのいる教室ではなく、人の来ない空き教室で良かった)

花丸(ずきりとした痛み、押し付けられる拳の硬さが心を打つ)

花丸(苛立ちと焦りが入り混じる善子ちゃんの目が、マルの瞳に入り込む)

花丸(分かる。善子ちゃんがとても優しいのが)

花丸(見える。国木田花丸を喪った善子ちゃんの悲しさが)

花丸(善子ちゃんにとって、マルの一言は残酷な一言だったかもしれない)

花丸(過去から……いや、未来から過去へと下るにあたって、人柱となった善子ちゃん達のしがらみだ)

善子「私は諦めてない、諦めるつもりなんてない!」

善子「ただ……ただ、すでにやったことだから無駄だと思ってるだけで」

善子「私は……」

花丸「だったら、ダイヤさんと仲良くなれたのに悲しそうな顔をしてたのはどうしてずら?」

花丸「善子ちゃんなら否定することはあっても、悲しむことはない」

花丸「でも、善子ちゃんは悲しんだ」

花丸「"どうせ消えてしまうんだろう"そう考えたからじゃないずら?」

善子「……だとしても」

花丸(だからこそ)

花丸(今のマルには、それを口にすることは出来ない)

花丸(それができるのは、死ぬ直前か)

花丸(それとも、"死んだあと"かな?)

善子「花丸を諦める理由にはならない」

善子「私は何度だって絶望する。だとしても、またあんたに会えるから」

善子「そのたびに、私は救うべきだと、立ち直ることが出来るから」
0227名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/20(火) 06:38:26.65ID:znPntjm5
花丸「それはダメだよ……善子ちゃん」

花丸(心が耐えられるわけがない)

花丸(やり直せるのは覚えていないマル達だけだ)

花丸(擦りむいた膝から血が流れるように)

花丸(流した涙がなかったことになるわけじゃない)

花丸(その怪我が治るのだとしても、その痛みを忘れたわけじゃない)

花丸「マルが覚えてないから?」

花丸「だから、そんな無茶苦茶なことをしてるずらか?」

善子「違うっ!」

花丸「その顔は、違わない顔だよ」

善子「っ」

花丸(胸倉を掴んでいた手から力が抜けていく)

花丸(いつかのマルが同じことを言ったんだろうと、何となく思った)

花丸(だから、善子ちゃんはマルに直接的に死ぬことを伝えるのを避けようとしたんだ)

花丸(善子ちゃんを苦しませるくらいなら受け入れる。今の国木田花丸がそう考えるなら、過去も同じだ)
0228名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/20(火) 21:05:38.14ID:znPntjm5
善子「花丸なら分かってるでしょ」

善子「"諦め"と"容認"は同じだって」

善子「だから私は受け入れない、受け入れるわけにはいかない」

善子「花丸……あんたに"ごめんね"と言われた時に、私はそう決めたのよ」

花丸(一度目の国木田花丸じゃない、二度目の国木田花丸だ)

花丸(善子ちゃんの性格から考えれば、一番初めに失ったマルの教訓から)

花丸(善子ちゃんは全力でマルを助けようとしてくれたはずだ)

花丸(それこそ、まっすぐに……言い換えれば、愚直に)

花丸(だからこそ、国木田花丸は視たはずだ)

花丸(善子ちゃんの優しさを)

花丸(それを突き放す絶望を)

花丸(そして知っただろう)

花丸(その原因が自分にあることに)

花丸(だからきっと……)

善子「!」

花丸(善子ちゃんの頬に触れると、善子ちゃんは穏やかではない表情を見せる)

花丸(だからきっと……マルは言ったんだ)

花丸(ごめんね。と)

花丸(痛い、苦しい、辛い、死にたくない。それよりもまず、心に大きな痛みを伴うことになってしまった親友に、ごめんねと)

花丸「そのマルは、どうしようもなく考えなしだったずらね」

善子「違う……」

花丸「それを口にしてしまえば、十字架に張り付けられたキリストを見せられた人々の心ように、強く刻まれちゃうのに」
0232名無しで叶える物語(関西地方)
垢版 |
2019/08/21(水) 17:35:22.41ID:yZ9xF+ad
哲学的だったりファンタジー・SFチックな会話が似合う2人だと思うよ
ちょっと物語が込み入ってきたから読み返してくるわ
0234名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/21(水) 21:42:26.18ID:B5z1Ha09
善子「花丸を悪く言わないで」

花丸「その花丸が、言ってるんだよ?」

花丸「……ごめん。それは、意地悪ずらね」

花丸(善子ちゃんが言ってるのは、想像通りなら二度目のマル)

花丸(マルが言っているのは、今ここにいる自分)

花丸(善子ちゃんには今の言葉を否定は出来ない。でも、認められない)

花丸(だから、意地悪だ)

花丸「でも、マルがごめんねって言ったのは間違いだったずら」

花丸「マルのそれが、善子ちゃんを縛った」

花丸「どれだけ絶望することになっても、マルを救うために理を破ることを誓ってしまった」

花丸「善子ちゃんが抱えてる問題はマルの死が運命か否かじゃない、それを認められないことずら」
0235名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/21(水) 21:54:55.94ID:B5z1Ha09
花丸(努めて明るく切り出す)

花丸(いかにしてマルが死なない未来を作り出すか)

花丸(それじゃ、駄目なんだ)

花丸(マルの死は確かに、運命か否かの問題はある)

花丸(でも、善子ちゃんが絶望を繰り返すことの理由ではあっても、原因じゃない)

花丸(原因は……認められないこと)

善子「ふざけんじゃないわよ、花丸」

善子「認められない? 何を?」

善子「出来るわけないでしょ……そんなこと」

花丸「でも――」

善子「逆の立場だったら。なんて言わないで」

善子「それは、諸刃の剣でしょ」
0236名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/21(水) 22:05:27.66ID:B5z1Ha09
花丸(悲しそうに言う善子ちゃんは、冷静だった)

花丸(ついさっきまでの気の高ぶりが鎮まった反動というよりは)

花丸(あらかじめ想定していたことだから。というような余裕とは違う心構えのようなものが感じられた)

花丸(確かにそう。"逆の立場だったらどう思うか"それは茨の冠だ)

花丸(被らされる人も、被らせる人も、傷ついてしまう)

花丸(だって、もしも善子ちゃんが死ぬ運命を避けられるかもしれない蜘蛛の糸が垂れ下がっていたとしたら)

花丸(それに縋りつかない自信はない)

花丸「あぁ……」

花丸(そうか)

花丸(そうだったのかな、"私"は)

花丸(逆の立場であることを考えたからこそのごめんね。だったのかな)

花丸(自分の死を見せてしまったからではなく、それを認めることが出来ずに生涯をかけてしまうと分かっていたから)

花丸(ごめんねと、言ったのかな)

花丸「でも」

花丸(……だとしても、間違いだ)

花丸「善子ちゃんには、受け入れて欲しい」
0237名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/21(水) 22:19:22.71ID:B5z1Ha09
花丸(手を貸してくれると言ったダイヤさんには、悪いと思う)

花丸(けど、駄目だ。良く分かった)

花丸(これは、マルと善子ちゃんが受け入れなければならないことなんだ)

花丸「死にたくない、生きたい。それを否定するつもりはないずら」

花丸「だけどそれで善子ちゃんの心が擦り切れちゃうのなら、マルは死んでもいい」

善子「救えるのなら、心はいらない」

花丸「心が無くなったら、救った意味さえも無くなっちゃうずら」

花丸(国木田花丸は生きていける。でも、そうじゃない)

花丸(善子ちゃんにとっての意味がなくなってしまう)

花丸(それは結局、マルか、いつの日か"奪われた国木田花丸"が、"ごめんね"と、口にすることになるから)

花丸「善子ちゃんは、マルに"ごめんね"を繰り返させたいずらか?」

善子「っ……それは」

花丸「意地悪。だとしても」

花丸(想定とは違う。でも、言わないといけない)

花丸「言ったことが間違いだったって、分かってるから」

花丸「言わせた後悔を、未来に残したくない」
0239名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/22(木) 22:00:44.26ID:0uurUqq3
花丸(善子ちゃんはしばらく何も言わなかった)

花丸(絶句した。わけじゃないのは顔を見れば明らかだ)

花丸(語り部は同じ、ある意味では、異口同音)

花丸(そんなことも善子ちゃんの経験の中にはあったのだろう)

花丸(それに対する"答え"はなくても、"言葉"があって)

花丸(きっと、その二人のやり取りは繰り返しになる)

花丸(善子ちゃんの表情は、それを悟っている顔だ)

善子「悪いけど、それでも私は受け入れない」

善子「死人に口なし、権利なし」

善子「ダメだって言うなら止めてみなさいよ」

善子「何も難しいことじゃない」

善子「月曜日、私は学校に行かないから」

善子「迎えに来てくれればいい」

善子「たったそれだけ」

善子「……出来るでしょ?」
0240名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/22(木) 22:25:03.92ID:0uurUqq3
善子「それとも、一緒に死ぬ?」

花丸「!」

善子「別にいいわよ。私」

善子「一緒に死んでも良いって言うなら、死ぬわ」

花丸「そんなこと、何があっても言わない」

花丸(マルが死んでと求めるのなら。ではなく)

花丸(その許可をくれるのなら。という善子ちゃんの言葉は、危険だ)

花丸(覚悟も用意もできていて、ただ、自分を支えてくれる何かがそこにあるから生きているだけ)

花丸(投げやりじゃない気楽さを感じる)

善子「でしょうね」

花丸「………」

花丸(言ってくれてもいいのに。そう続きそうな笑顔を見せた善子ちゃんは)

花丸(恐ろしいほどにいつも通りの表情の中、少しばかり疲れた空気を身に纏う)

善子「ルビィに勘繰られても嫌だし、戻りましょ」

花丸「勘繰られたことがあるずらか?」

善子「ルビィは……まぁ、そう」

善子「ああ見えて、意外と察しが良い」

善子「油断するとね。顔を覗き込んでるのよ」

善子「大丈夫? 疲れてない? 何かあった? そう言ってくるわけじゃないのに」

善子「なんか、こう……耐えられなくなるような感じ」

善子「曖昧だけど、曖昧なのがルビィなのよ。良く言えば……そう。包容力があるのかもね」
0241名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/23(金) 06:42:25.28ID:c4aK81uu
善子「さっさと戻るわよ」

花丸「そう……ずらね」

花丸(教室を出ると、別の世界に来たかのように明るい声に満たされる)

花丸(どこかのクラス、どこかの誰か)

花丸(休み時間を余分なく使いやすい尽くそうとしているかのような喧騒)

花丸(でも、前を歩く善子ちゃんはそれとは一線を引いているように見える)

花丸「善子ちゃんは、さっきみたいな話何回もしてる?」

善子「ん……? 数える程度にしかしてないけど、なんで?」

花丸「全然、動じてないから」

花丸(実は見えているだけでそこには居ない、ぱそこんとか、最近聞くようになったぶいあーるみたいな感じかなと、投げた声)

花丸(善子ちゃんはちゃんとそこにいるらしく、反応はしっかりとしてる)

花丸(……雰囲気が、世界から切り離されているように感じるんだ)

善子「花丸に話した時点で、ああいう話することになるとは思ってたから」

善子「それに」

花丸(善子ちゃんは足を止めると、振り返る)

善子「あの話で動じるような奴が、何度も繰り返せると思う?」

花丸(顰めた顔、笑っているようにも見える唇)

花丸(その困った表情は、何に対してなんだろう)
0245名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/24(土) 20:43:02.96ID:wa7bHoSq
善子「もっとも、いくら花丸自身でも、花丸のことを馬鹿にするなら怒るくらいはするけどね」

花丸「……そうだったけど」

花丸(言いたいのはそうじゃない)

花丸(けど、善子ちゃんはそうでもないと言いたげな笑い方をすると、外を見る)

花丸(特に何かを考えてるわけじゃない……のかな?)

花丸(違う。涼しい顔してるけど、それは悟ってるだけだ)

善子「私も、自分の言ってることが我儘だってことは理解してる」

花丸「善子ちゃん……」

善子「でもさ、絶対に捨てられない我儘……というか、拘りってあるじゃない?」

善子「私には、私にとっては……それが今なのよ」

善子「だから予め、もう一度釘を刺しとく」

花丸(そういった善子ちゃんは、マルのことも見ずに、言う)

善子「何を言おうが、私は繰り返し続けるわよ」

花丸(絶対に)

花丸(絞り出されたように感じたその言葉こそがもっとも、善子ちゃんの力が込められていた)
0247名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/26(月) 06:39:44.33ID:QTbAwVD+
花丸(今日、死ぬことはないからという理由で、練習は普通に行った)

花丸(レッスンの最中、マルの一つ一つの動きを見守るダイヤさんに対して)

花丸(絶対に何もないと言う確信を持っている善子ちゃんは特に気にするような様子もなく、曜ちゃん達と話したりしてる)

花丸(今まで、マルは途中の原因によって、死んだことはないのかも)

花丸(だとしたら、今ここで屋上から飛び降りたとしても死なないのか)

花丸(それとも、飛び降りの怪我が原因となって死ぬことになるのか)

花丸(試してみる価値は――)

花丸「っ」

千歌「わわっ!?」

花丸(考えに集中しすぎて、ずれていた足が千歌ちゃんに絡んでバランスが崩れる)

花丸(離れるはずだったマルと、留まるはずだった千歌ちゃん)

花丸(受け身が取りにくい状態でマルが倒れるのは、半ば必然だったかもしれない)

花丸(けれど……偶然にも、助けを求めるように動いた手を、ダイヤさんが掴んだ)

ダイヤ「くっ」

花丸(前のめりな体勢。無理だとすぐに悟った)

花丸(それでも、ダイヤさんは限りある力でマルのことを引くと)

花丸(引ききれないと見るや自分の体を投げ出すように差し込んで、受け止めてくれる)

花丸(そして、ダイヤさんは私の下敷きになった)
0248名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/26(月) 19:38:22.12ID:QTbAwVD+
果南「ダイヤ! 花丸ちゃん!」

鞠莉「ちょっと! 大丈夫!?」

ダイヤ「っ……けほっ」

ダイヤ「ええ、わたくしは大丈夫」

花丸「ま、マルも大丈夫ずら」

花丸「ごめんなさい、つい余計なこと考えちゃって」

ダイヤ「大丈夫……今日はもう、休んでいたほうが良いですわ」

花丸「でも――」

曜「ダイヤさんも休んだ方がいいよ」

曜「さっき、頭は打たなかったけど、肩ぶつけてたし」

ダイヤ「………」

鞠莉「ハブアブレイク、ダイヤ。少しゆっくりしたほうが良いわ」

ダイヤ「そう、させていただきますわ」
0249名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/26(月) 20:30:21.36ID:QTbAwVD+
花丸(……不注意だった。あまりにも)

花丸(善子ちゃんを苦しませないために死ぬことを決めたのなら)

花丸(運命がどうやってマルを殺そうとするのかなんて、考える必要なんてない)

花丸(結局、マルは覚悟をしなければ死ぬことが出来ないんだ)

花丸(理不尽に殺されるのは、堪えられない)

ダイヤ「……経験したことのないわたくしには、それがどういうものなのかを語る言葉はありません」

花丸「え?」

ダイヤ「ですが、それでもあえて言うのであれば……それはきっと、底なしの沼のように広く深い、深淵なのだと思います」

花丸「……マルの頭を覗くのは止めて欲しいずら」

ダイヤ「これはあくまで、"推測"ですわ」

花丸(ちょっとだけ意地悪な笑顔を見せたダイヤさんは)

花丸(練習を続けるみんなの方へと、目を向ける)

花丸(死ぬつもりだと、ダイヤさんは分かってるのかな)

花丸(分かってそう……ダイヤさんだし)

花丸(頼ったくせに)

花丸(二転三転、最低だって言われても仕方がないかな)
0251名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/28(水) 06:28:35.86ID:s8E6DYGb
ダイヤ「善子さんは、いつも通りですわね」

花丸「……うん」

ダイヤ「何回目なのか。それは教えて頂けませんでしたが」

ダイヤ「数回程度では、なさそうな気がします」

ダイヤ「それでも、善子さんはいつも通り」

ダイヤ「なぜでしょう?」

花丸「マルがいるからだよ」

花丸「もっと言えば、マル達が誰も覚えていないからずら」

花丸「誰も覚えてないから、自分さえいつもい通りなら何も変わらない」

花丸「変わらないから、みんなを不安にさせたりしないようにって気遣って、自分だけで何とかしようとしてる」

花丸「ううん、してた。かな」

ダイヤ「……善子さんと何か?」

花丸「………」
0252名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/28(水) 06:43:18.82ID:s8E6DYGb
花丸(聞かれてすぐには答えずに、ダイヤさんを見る)

花丸(みんなを見ていた顔が、マルに向いていた)

花丸(優しい表情)

花丸(でも、心配も不安も感じない)

花丸(気遣いを感じない)

ダイヤ「そんな見つめていても、わたくしには何もありませんわ」

ダイヤ「善子さんがそうであるように、花丸さんにも、考えがある」

ダイヤ「わたくしも言いましたが、それを口にすることで運命にからめとられてしまう可能性もある」

ダイヤ「ですから」

ダイヤ「無理に聞こうとは思いませんし、花丸さんの考えなら、決して悪い考えではないと思っています」

花丸「でも、正しい考えとは言えないかもしれないずら」

ダイヤ「だからこそ、わがまま。なのでは?」

花丸「え?」

ダイヤ「まったくもって理知的ではなく、善悪などそこにはなく、ただただ自分の思い、自分の感情が言葉という形をとっただけ」

ダイヤ「花丸さんが善子さんに、善子さんが花丸さんに。そして、わたくしがお二人に」

ダイヤ「行おうとしていることは、言ってしまえば"わがまま"なのだと、思っています」

ダイヤ「互いが互いを思うがゆえに、傷つけあうことになってしまうわがまま」

ダイヤ「相手から見れば、それは嫌なこと。第三者に言わせれば、それは間違っている」

ダイヤ「ですが、死という別たれる結末を前にして、どうして正否を気にすることが出来るのでしょう?」

ダイヤ「互いに失いたくないのであれば、正否も理性も知ったことではない」

ダイヤ「なにがなんでも、相手を救いたい。ただ、それだけですから」
0254名無しで叶える物語(すだち)
垢版 |
2019/08/29(木) 01:14:09.74ID:/1o8s1fA
追いついた
すげー久しぶりにここまで考えられた良作に出会った。
頑張ってくれ。楽しみにしてる。
0255名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/29(木) 06:37:22.58ID:/E929VlM
花丸「……マルは、死ぬ」

ダイヤ「それを起因に繰り返しをしているのなら、解決はしないのでは?」

花丸「受け入れて。とは、言ったけど」

花丸「ダイヤさんの言う通り、善子ちゃんは絶対にやめないって言ってた」

花丸(膝を引き上げて、抱く)

花丸(頭を乗せるのにちょうどいい位置に来る前に胸がつっかえて)

花丸(少し、不格好な隠れ方になってしまう)

花丸「でも、これ以上善子ちゃんに嫌な思いをして欲しくない」

花丸「大丈夫、平気、戻れば生きてくれてるから」

花丸「それじゃ、善子ちゃんの心だけがすり減っていっちゃうずら」

花丸「一人だけ、どんどんどんどん……見えなくなっちゃうくらいに先に行っちゃう」

ダイヤ「だから、友人の死を受け入れろ。と?」

花丸「繰り返すことが出来るだけ。それが、それさえなければ……誰にでも起こり得る別れになるずら」

花丸「繰り返す方法を知ってはいけなかった。使ってはいけなかった」

花丸「過去に戻れることが分かってしまえば、過去に囚われてしまう」

花丸「ダイヤさんだって、そう思うはずずら」

ダイヤ「つまり、善子さんからその技術。あるいは文献を喪失させるつもりですか?」

花丸「……できれば」

花丸(善子ちゃんはもう、その方法を覚えてるかもしれない)

花丸(そうなったら、無駄だ)
0256名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/29(木) 21:38:09.36ID:/E929VlM
ダイヤ「なるほど」

ダイヤ「その方法が分からなければ、諦める……と?」

花丸「うん」

ダイヤ「本当に、彼女が諦めることが可能だと?」

花丸「………」

ダイヤ「花丸さんは、分かっているのでは?」

ダイヤ「善子さんは"諦めない"のではなく、"諦めることが出来ない"ということが」

ダイヤ「花丸さんが先ほど言われた通り、"知ってしまった"んです」

ダイヤ「手段があると分かってしまった以上、それに蓋をすることは難しい」

ダイヤ「方法があったのだから。例え、その手段を記した書物が失われていようと」

ダイヤ「それが行われた過去があるのならば、行えぬ道理はないと、生涯をかける事さえも厭わないでしょう」

花丸「でも、だからって、ずっとつらい思いをさせるずらか?」

花丸「救いようのない停滞を善子ちゃんに味わわせるずら?」

花丸「そんなこと、させたくない」

ダイヤ「やはり、花丸さんの考えにも理はあります。が、現実的ではない」

ダイヤ「死ぬことを受け入れろ。そう、口にするだけで納得ができますか? 出来るはずがない」

花丸「だったら」

花丸(どうしろって言うのかと、声を荒げそうになったマルに対して)

花丸(ダイヤさんは、自分の口元に人差し指を当てて、みんなを横目に注意を促す)

ダイヤ「思いを綴った手紙を、遺すんです」

ダイヤ「戻る方法があるとしても、それを取らないほどに強い願いと想いを遺し、前を向かせるのです」
0258名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/29(木) 22:06:58.12ID:/E929VlM
花丸「それってつまり、遺書を書く?」

ダイヤ「端的に言ってしまえば、そういうことになります」

ダイヤ「善子さんは諦めない。花丸さんがいなくなれば善子さんは間違いなく繰り返そうとするでしょう」

ダイヤ「死んだ後に相手に思いを届けるには、それしかありませんわ」

ダイヤ「ちなみにですが、わたくしはルビィの為に遺書を用意してあります」

花丸「えっ!?」

ダイヤ「わたくしが亡き後、ルビィがどのような思いを抱くのか、どのような生き方を選ぶのか」

ダイヤ「絶対にとは言い切れないのが口惜しくはありますが、察しがついていますから」

ダイヤ「何があるのか分からないこの人生、杞憂であれと願いながらもすべきことであると思っています」

花丸(ダイヤさんは、笑顔だった)

花丸(遺書……死ぬかもしれない、ルビィちゃんの未来)

花丸(不安になることで、恐れるべきことで)

花丸(なぜだか、笑顔だった)

ダイヤ「必ず手に渡るであろう生徒手帳に挟んであるんです。用意は念入りに。ね?」
0259名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/30(金) 06:25:03.06ID:7c8jKRXN
ダイヤ「このことはくれぐれも内密にお願いします」

ダイヤ「生前に知られてしまうと、確実に咎められるので」

花丸(まるで冗談を言っているかのような)

花丸(単なる談笑の一端でしかないような)

花丸(そんな雰囲気で、ダイヤさんは微笑む)

花丸(まだ、高校生なのに遺書)

花丸(……早すぎる)

花丸(でも、確かに死んだあとに善子ちゃんを止めるには必要なことかもしれない)

花丸「ダイヤさんは、善子ちゃんを止める気はないずらか?」

ダイヤ「愚問です」

ダイヤ「わたくしも花丸さんには生きていて欲しいと思っていますわ」

花丸「そっか」
0260名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/30(金) 06:44:11.65ID:7c8jKRXN
花丸(確かに、愚問だった)

花丸(マルを助けるって、昨日言ってくれたばっかりだったのに)

花丸(……だめ、だね)

ダイヤ「ところで、なぜ月曜日に戻るのか。という話は聞きましたか?」

花丸「?」

ダイヤ「その様子だと、伺っていませんわね」

花丸(ダイヤさんは少し考える素振りを見せながら)

花丸(大したことはないとあらかじめ否定して、微笑む)

花丸(正直、今のダイヤさんの笑顔は信用できない)

ダイヤ「善子さんは、"わからない"と言っていました」

ダイヤ「その黒魔術には、日時を指定するような機能は見られずそのような道具を扱ってもいないと」

花丸「黒魔術は不完全? もしくは、完全だけど、一週間限定のものとか?」

ダイヤ「古き伝承の技術である以上、不完全だというのが仮定ですが、後者もあり得ないわけではありません」

ダイヤ「ですが、後者であると仮定するならばこの話は終わるので、あくまで、まだ可能性の残る不完全を仮定とさせてください」

花丸「分かったずら」

ダイヤ「さて、ここで問題になるのが"なぜ月曜日が起点なのか"というところです」

ダイヤ「善子さん曰く、文献に期日も何も書かれてはいなかった」

ダイヤ「つまり、月曜日が起点となる何らかの要因がある可能性があります」

ダイヤ「そして……もし、それが真に黒魔術に関するものであるならば」

ダイヤ「花丸さん。貴女の命を奪うことになってしまっている可能性がある」

花丸「………」

ダイヤ「日曜日、何か特別なことはありませんでしたか?」

ダイヤ「それが記録され、日曜日の翌日、月曜日が黒魔術の効果が発揮される起点となっているかもしれません」
0262名無しで叶える物語(調整中)
垢版 |
2019/08/30(金) 21:33:37.31ID:ciW7hjRt
>>261
あの人か
あの作品もめっちゃ好き
pixivとかやってないのかな
0264名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/31(土) 20:04:13.54ID:qeXHyo+l
花丸「日曜日……」

花丸(何か特別なことがあったかな)

花丸(何もなかった……うん、特に何も)

花丸(善子ちゃんと関わったわけでもない)

ダイヤ「その様子だと、身に覚えはありませんのね」

花丸「うん……普通の日曜日だったと思う」

ダイヤ「そうですか」

ダイヤ「ただの推測も、真っ向から誤りだと否定されると少し恥ずかしいものですわね」

ダイヤ「では……」

花丸(ダイヤさんは気恥ずかしいと言いつつ、笑うことはなく)

花丸(力強い目を細めて、考えているような雰囲気に沈んでいく)

花丸(アクアマリンに近い、青緑色の瞳)

花丸(ルビィちゃんと同じ、でも、経験の深みが違う)

花丸(その目はきっと、”諦めること”を知っている)

花丸(だからこそ、"諦めないこと"を選んでいる)

花丸(善子ちゃんはそれが砕けたと言った)

花丸(なら、砕けることを"知っている"それは、砕けるのだろうか)

花丸(……善子ちゃんとは別のベクトルで、ダイヤさんは諦めない)

花丸(巻き込むべきじゃ、なかった)
0265名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/31(土) 20:54:24.80ID:qeXHyo+l
花丸(練習を終えて、解散)

花丸(ダイヤさんと善子ちゃんは、マルと一緒に家にまで来てくれた)

花丸(家についても、どっちかは一緒にという話になって)

花丸(善子ちゃんが一緒にいてくれることになった)

善子「ダイヤと何か話した?」

花丸「うん、話したよ」

花丸「……善子ちゃんを止める手伝いは出来ないって」

善子「それはそうでしょ」

善子「花丸を助ける協力をするって相手が、助けない協力をするわけがないじゃない」

花丸(自慢気な言葉)

花丸(でも、善子ちゃんの表情は暗いままだ)

花丸「あと、日曜日」

花丸「それがキーになるんじゃないかっていう話」

善子「……そ。で、何かあった?」

花丸「日曜日は何もなかった……普通の日だったずら」

善子「………」

花丸(善子ちゃんは分かり切ったことだったかのように反応せず)

花丸(ダイヤさんがしていたのと似た目をする)

善子「じゃぁ、世界五分前仮設の話もした?」

花丸「え?」

善子「……してないの?」
0266名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/08/31(土) 21:44:25.78ID:qeXHyo+l
善子「してないのね……ダイヤ」

花丸(善子ちゃんはなんでしてないのよ。と不満そうに言う)

花丸(あの時、ダイヤさんが考えてたのはそれなのかな……)

花丸(だとしたら、否定された後に否定できない仮説……思考実験は負け惜しみだと思ったのだろうか?)

花丸(いや、ダイヤさんはそんな矮小な人じゃない)

花丸(何か理由があったんだ)

花丸「世界五分前仮説は、マルも聞いたことがあるずら」

花丸(日曜日になにもないと聞いてからその話をするということは)

花丸「ダイヤさんは、マル達の一週間がそのたびに作り替えられてるかもしれないって、考えてるずらか?」

善子「あくまで仮説だけどね」

善子「一週目の花丸に何かがあったけど」

善子「私の繰り返しによってその記憶は消え、効果だけが残り今に至ってる可能性がある」

花丸「……なるほど」

花丸「月曜日の午前0時に、マル達の世界が作られている」

花丸(そうか……だからダイヤさんは"記録されている"と言ったんだ)

花丸「マルの手元にある何かがそこまでの世界を記録し」

花丸「善子ちゃんの黒魔術が、そこまでの世界を再生する」

花丸「ただ、マルがそれを実行しないことでマルからそれの記憶が消えた」

花丸「これは、否定できる仮説じゃない」

善子「察しが良くて助かるけど、ダイヤは何も言わなかったんでしょ?」

花丸「うん」

善子「なら、なんでダイヤが言わなかったかを考えましょ」

善子「聞いてもきっと、ダイヤは答えてくれないから……暴いてやろうじゃない?」
0267名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/01(日) 11:27:01.66ID:zjUavY4p
花丸(善子ちゃんは悪い笑顔を見せる)

花丸(悩み事なんて全くないかのような、純粋ではない笑顔)

花丸(もしかしたら、一週間かけた冗談じゃないかとさえ、思いたくなる)

花丸(そうだったらどんなにか……)

善子「花丸?」

花丸「あっ、うん……でも、ダイヤさんの考えがマル達に分かるずらか?」

善子「いくらダイヤでも、そこまで超人的な頭してないでしょ」

花丸「知識に差があるずら」

善子「オカルト研究会を舐めて貰っちゃ困るわね」

花丸「そんなものないずら」

花丸「……まったく」

花丸(冗談ばかり)

花丸(元気づけようとしてくれてるのか、マルの覚悟を受けて)

花丸(今回だけは、精一杯の人生にしようとしてくれているのか)

花丸(マルが、望んだとおりに死んだら……また、次に行くんだろう)
0268名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/01(日) 11:44:07.14ID:zjUavY4p
善子「ダイヤが知ってるのはそんなにないはずなのよ」

善子「1つ、私が繰り返してること」

善子「2つ、ダイヤは一度失敗してること」

善子「3つ、この黒魔術の効果は、日曜日に実行し、月曜日の朝に始まること」

花丸「質問、黒魔術をそれ以外の曜日で実行した場合は?」

善子「それが4つ目」

善子「どの曜日で実行しようが、始まるのは月曜日」

善子「ちなみに、それと全く同じ質問をダイヤはしてきたわ」

善子「5つ、黒魔術に曜日を指定するような効果はなく、そんな道具もないこと」

善子「6つ、花丸の死因は一つではなく、その時その時によって差があること」

善子「私かダイヤがここに残るって話になったのも、それが理由」

花丸「……それ以外は?」

善子「そこまで。あとは、二人で考察した程度」

花丸「そんな時間あった?」

善子「文明の利器」

花丸(そういった善子ちゃんは、携帯電話……すまほとかアイフォンだとかを見せて笑う)

花丸(マルが勝ってもらった時にも登録を促された、連絡用のあぷりけーしょんかな)

花丸(二人きりで連絡を取り合ってたってことなんだろう)
0269名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/01(日) 11:58:19.78ID:zjUavY4p
善子「そこで、日曜日に何かあって、それが効果を限定的にしてるんじゃないかって話が出た」

花丸「善子ちゃんはその時何て言ったの?」

善子「それは考えたことなかったって」

善子「何かあるとは思ってたけど、それに花丸が関与してるとは考えてなかったし」

善子「それが花丸を殺してるなんて考えもしてなかった」

善子「だけど、言われてみれば不自然というか……確かに。って思ったわ」

花丸「だけど、ダイヤさんはマルにそこまで詳しくは言わなかった」

花丸「日曜日になにかあったんじゃないかとは聞いてきたけど、それだけだった」

善子「……その仮説を否定されたからって感じに思えるけど、どう思う?」

花丸「ダイヤさんなら、確証を持てないから無駄な期待させないようにって言わなかった可能性はある」

花丸(ダイヤさんならというマル達の考えが)

花丸(実際よりも高望みした思考を持たせてしまっている可能性はある)

花丸(無理だと言う"諦め"が、可能性さえも見えないほど盲目にしてしまうように)

花丸「案外、ダイヤさんはそこで行き詰ってるから何も言わなかっただけかもしれないずら」

花丸「マルの記憶が黒魔術によって引き継がれていない」

花丸「もしもそうなったら」

善子「花丸を救うことが、不可能になる?」

花丸「……うん。そうなるね」
0270名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/01(日) 14:26:28.83ID:zjUavY4p
善子「原因の解決が出来ない以上、花丸は死ぬ」

善子「でも、花丸が繰り返さなかったことで、原因は闇の中」

善子「っ……誰よ。誰がそんなこと!」

花丸「誰か。とは、限らないずら」

花丸「善子ちゃんじゃないけど、この世界には呪術と言うものが存在する」

花丸「何らかの理由でそれの宿ったものに、マルが触れてしまった可能性もある」

花丸「ここは、お寺だから」

花丸「善も、悪も。ここには集まってくる」

善子「それこそ、くそくらえな話じゃない」

善子「誰のものかもわからない恨みとか僻みで花丸が殺されてるの?」

善子「何度も、何度も……こっちの思いなんか無関係に、殺されてるっていうわけ?」

善子「……ふざけんな」

花丸「でも、だからこそ。解決は難しい」

花丸「善子ちゃん、諦めるつもりはないかな」

花丸「マルが死ねば――」

善子「今度は、関わった私達に来るかもね」

花丸「それはっ」

善子「ま、いいんじゃない? みんなで三途の川でもわたってやろうじゃないの」

善子「で、呪ってきたやつをぶん殴りましょ」
0272名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/02(月) 06:30:39.06ID:N5Cv63Jr
花丸「善子ちゃんは、死にたいずらか?」

善子「死にたいかどうかで言えば、死にたくないわよ」

善子「まだまだやりたいことはあるし、見てみたいことだって、それこそ」

善子「食べてみたい物とかだってあるし、悔いを上げればきりがないわ」

善子「でも」

善子「花丸を守れないなら、死んでもいいとは思ってる」

花丸「それは、残る人たちに失礼だよ」

善子「私は、そんなに強い人間じゃない」

善子「言い合いするし、喧嘩みたいなことだってするし」

善子「嫌な奴だって思ったことがないと言えば嘘になる」

善子「けど、それでも。それでもよ。花丸」

善子「私にとって、国木田花丸は大切な友達なのよ」

善子「天寿を全うするならわかる。でも、そうじゃない」

善子「あまりにも理不尽じゃない。運命って何よ。呪いってなによ」

善子「ふざけんな」

善子「ふざけんなッ!」

善子「そんな得体のしれないものに奪われて、のうのうと生きてられるわけないじゃないッ!」
0273名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/02(月) 06:41:30.75ID:N5Cv63Jr
善子「私はそんなに強くない」

善子「救えたかもしれないのに」

善子「一緒に高校を卒業できたかもしれないのに」

善子「どこの大学行くのとか、受験勉強とか」

善子「私の適当なことに呆れながら突っ込んできたりとか」

善子「私と、ルビィと、花丸と」

善子「それができたかもしれない世界を諦めながら生きていけるほど、私は……強くない」

善子「だから、"死んでもいい"の」

善子「花丸を諦めるくらいなら、死んでもいい」

善子「だって、分かるでしょ?」

善子「生きていけるほど強くない私が、この世界に残ったって」

善子「生きてるなんて言えない」

花丸「善子ちゃん……その気持ちを共有できる人が、いる」

花丸「支えあって生きて行けばいいずら」

花丸「縋ったって良い。きっと、ダイヤさんは受け止めてくれる」

花丸「ルビィちゃんだって、ほかのみんなだって、きっと」

花丸(自分がどれほど大きい存在かだなんて)

花丸(自分では、はかることなんて出来ないけれど)

花丸「その悲しさを、抱きしめてくれるから」

善子「だとしても」

善子「そこに、花丸がいないのなら……私は、その後悔を一生し続ける」
0275名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/02(月) 22:19:46.77ID:N5Cv63Jr
花丸「筋金入りずらね」

善子「筋金入りなら、折れる心なんてないわよ」

花丸(善子ちゃんは、馬鹿ね。と、笑う)

花丸「屁理屈言わないで」

善子「くくっ、違いない」

花丸(細めた瞼に瞳は隠れていて)

花丸(それは、まるで本心を覆ってしまっているかのように)

花丸(悪戯な笑顔は、いつもの善子ちゃんだった)

善子「花丸。今回駄目でも、次は必ずあんたを助けるわ」

善子「ダイヤが、凄い考えてくれてるのよ……あの人は、無理だと思ってない」

善子「ほんと、過去を見て壊れるだなんて考えが馬鹿みたいに思えるくらいに、熱心なのよ」

善子「失敗を"知ってる"ただそれだけ。でも、"たったそれだけのこと"が、大事なのかもしれない」

花丸「……それでも、次なんだね」

善子「もちろん、そうならなければいいと思ってる」

善子「だけど、可能性が広がっても答えが見えてこない」

善子「なにより、当の本人が死ぬ気じゃね。どうしようもない」

善子「だから、次」

善子「次は、花丸には黙っておくことにするわ」
0276名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/03(火) 06:28:29.14ID:6A+ZS+VD
花丸「話さなくても、マルは気付くよ」

花丸「だって、いつもの善子ちゃんとは違うから」

花丸「どこかに違和感があるから」

花丸「"今まで通り"を演じても、"いつも通り"とは限らない」

善子「……客観的視点が足りてない?」

花丸「うん。残念ながら」

花丸(善子ちゃんはいつも、そうあろうと意識しているわけじゃない)

花丸(その時の善子ちゃんが、その善子ちゃんであるだけ)

花丸(それを模倣しようとしたとき、他人からの印象が不足すると歪になってしまう)

花丸(だって、演じるということは、"その人の外"だということだから)

花丸「そこまで関わりのない人なら、気付かないかもしれない」

花丸「けど、マルは気付くよ」

善子「そっか」

花丸「それに、善子ちゃんは今までのマルを大切にしすぎてる」

花丸「ずら丸と呼ばない善子ちゃんは、なんだかちょっと、違う気がする」

善子「嫌がってるのは花丸でしょうに」

花丸「そう、なんだけどね」

花丸「でも、こんな形では……嫌かな」
0277名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/03(火) 06:37:22.82ID:6A+ZS+VD
善子「我儘ばっかり」

花丸「遺言と思ってよ」

善子「………」

花丸「………」

善子「……ねぇ」

花丸「うん?」

善子「どっかいかない? 学校さぼって」

善子「東京でも、沖縄でも、北海道でも」

善子「どこでも、良いから」

善子「どうせなら、全力で楽しんで、終わりたいって思わない?」

花丸「そこまでの金銭的な余裕はないずら」

善子「私が何とかする」

善子「カメラとか、本とか。全部うっぱらってでも資金調達する」

花丸「ありがと」

花丸「でも、マルはみんなと一緒が良いずら」

花丸「特別じゃなくていい」

花丸「学校行って、部活して、帰りにちょっと寄り道」

花丸「ふざけあったりして、一日が終わって……また、おはようって」

花丸「普通で良いんだよ。普通が、良いんだよ」

花丸「本ばかりだったマルにとって、そんな人との関わりは……普通なのに、特別だった」

花丸「だから、ね?」
0278名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/03(火) 06:41:19.56ID:6A+ZS+VD
善子「………」

善子「狡い」

花丸「………」

善子「でも」

善子「そっか……花丸は、そうなのね」

花丸「ごめんね」

善子「謝らなくていいわよ」

花丸「うん」

善子「でも、それでも私は嫌よ」

善子「たとえ、花丸が笑っていなくなるとしても」

善子「私は、嫌」

花丸「そっか」

善子「うん」

花丸「……我儘ばっかり」

花丸(遺書、ちゃんと書けば……何とかなるかな)
0279名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/09/03(火) 08:45:12.60ID:OEYqwTLd
長い台詞からの短い台詞と善子の「我儘ばっかり」から花丸の「我儘ばっかり」
こういうのなんか好き(語彙力なし)
0281名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/04(水) 06:44:52.78ID:7G6xyJtI
花丸「善子ちゃん」

善子「ん?」

花丸(善子ちゃんは、マルを大切な友達だって、思ってくれてる)

花丸(死が関わっているせいか、おかげか)

花丸(その気持ちは本当だって、良く分かる)

花丸(でもマルだって、善子ちゃんのことは大切な友達だって……思ってるんだよ?)

花丸(嫌な思いも、辛い思いも、出来るならして欲しくない)

花丸(人は、いつか死ぬんだ)

花丸(唐突に、当たり前に)

花丸(だから、この"繰り返し"は不必要だと、思う)

花丸(だから、だからね。善子ちゃん)

花丸(もう、苦しむのは止めよう?)

花丸(これで最後にしよう?)

花丸(善子ちゃんの幸せに協力するから)

花丸(だから……ごめんね)

花丸(善子ちゃんが一番嫌な言葉を、言うよ)

花丸「……もう、これ以上。マルを殺さないで欲しいずら」
0284名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/04(水) 22:47:37.26ID:7G6xyJtI
善子「……は?」

善子「なにそれ、本気で言ってんの?」

花丸「ごめん」

善子「ごめんじゃなくて」

善子「あのさ、私……諦めないって、言ってるわよね?」

花丸「だからだよ」

花丸「だから"殺さないで"って、言ってる」

善子「……冗談、きつい」

善子「だって、そうしなきゃ……花丸、これから」

善子「読みたい本があるって、やりたいことあるって」

善子「なのに……」

花丸「…………」

善子「なんで、そんなこと言うのよ……死なせないで。そう、言ってくれれば、考える必要もないのに」

花丸("死なせないで”という救いを求める言葉ではなく)

花丸("殺さないで"と、拒絶する言葉を使う)

花丸(それは、また出会えるから立ち直れる。そういった善子ちゃんは"見て見ぬふり"をしているわけじゃないからだ)

花丸(今までの国木田花丸のすべてを覚え、抱き、足を引き摺っている)

花丸(だからこそ、"殺さないで"という呪詛を囁く)

善子「い……っ」

花丸(自分ではない、運命に似た何かによる謀殺。でも、いくつもの国木田花丸が死んだのは善子ちゃんが繰り返しているからこそ)

花丸(それを自覚してしまったら、嫌とはもう言えない)
0285名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/05(木) 06:42:25.79ID:Wl8wX1qJ
善子「……そんな言葉まで使うのね」

善子「そっか、うん、そう」

善子「………」

花丸(見開きそうだった瞼は普段通りの戻って)

花丸(大声も出せそうだった口は小さくなる)

花丸(静かに消えていくろうそくの火のように、ゆっくりと善子ちゃんの感情が鎮まっていく)

善子「それは、嫌。とは言えない」

善子「だからこそ"ごめん"と言うわ」

花丸「そうなる?」

善子「やり遂げなきゃ、殺してきた意味がない」

善子「花丸の痛みとか、苦しさとか、絶望とか」

善子「巻き込んだダイヤの叫び声がさ、ずっとね。聞こえるのよ」

花丸(善子ちゃんは苦しそうに胸を押さえて、悲しそうな笑顔を見せる)

善子「だから、ごめん。私の後ろに、もう引き返す道なんてない」
0286名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/09/05(木) 09:23:04.29ID:DD4k98cY
頑張ってくれ
0288名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/06(金) 06:40:47.71ID:SP03NFt9
花丸(軽率、軽薄……侮蔑は梅雨の時期の湿気た空気に対する不快感のようなものはなく)

花丸(降り出した雨への諦念に似たものがあった)

花丸(あまりにも。あまりにもだよ)

花丸(予想していたことだし、近いことを言われるとは思っていた)

花丸("だとしても"殺さないでという最も強い言葉を使えば)

花丸(嫌われながらも考えを変えてくれるのではないかという願いがあった……いや)

花丸(願いじゃない、希望的観測だ)

花丸(嫌い、軽蔑し、もういいと見捨てる)

花丸(善子ちゃんがそんな軽々しい人なんかじゃないって、分かっていたのに)

花丸「そっか」

善子「そんな顔しないで」

善子「繰り返すせいでまた死ぬんだから、殺さないでって思うのは当然よ」

善子「むしろ、どうして、なんで平然としてんのかって怒鳴られてもおかしくない」

善子「でも、花丸は自分のためじゃなくて、私の為にそう言ってくれる」

善子「だからこそ、私は見捨てることも諦めることもしたくなくて」

善子「どう頑張っても、引き返せないとこにまで来て」

善子「それは結局、花丸を殺すし、悩ませるし、悲しませるし」

善子「なんていうか、もっとこう……人生って、うまくいってくれないのかな」

善子「……死兆星の下に生まれた私だけど、少しくらい願いを叶えてくれてもいいじゃない。ねぇ?」

善子「まぁ、"別れたくない"そう思える友達ができた時点で恵まれてたのかもしれない」

善子「けど、それも神様にとってはお遊びだったのかもね。あいつ、どれだけ頑張るのか賭けようぜ。とか、嘲笑ってたりして」
0291名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/06(金) 22:03:20.72ID:SP03NFt9
花丸「……マルは、別に死ぬ気があるわけじゃない」

花丸「善子ちゃんがさっき言ったように、今回で救われるのならそれが一番だって思ってるよ」

善子「考え直してくれたってわけ?」

花丸「元からだよ。死にたいわけじゃない」

花丸「ただ、これ以上繰り返してほしくないだけ」

花丸「今回で救われなかったらもう終わりにして欲しいってだけ」

善子「ま、それは初めから言ってたことよね」

花丸「うん」

善子「私も、花丸も」

善子「黒澤家の地下に核も呪いも防ぐシェルターの一つでもないのかしら」

花丸「黒澤家を何だと思ってるずら」

善子「地元の有力血族」

花丸「違いないけどね。それは、ないずらね」
0292名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/06(金) 23:05:20.67ID:SP03NFt9
花丸「それにしても、ルビィちゃん達を巻き込むつもりは本当にないの?」

花丸「ダイヤさん一人でも十分な知恵は得られてると思う」

花丸「でも、パズルは一人じゃ出来ない」

善子「パズルはね。でもこれ、トランプタワーでしょ」

花丸「ジェンガじゃなくて?」

善子「………」

花丸「………」

善子「なんにせよ、ほかを巻き込みたくないわ」

善子「分かるでしょ?」

花丸「うん、まぁ。なりふり構っていられなくても、越えられない一線はあるずら」

花丸「それでも、助ける気があるなら」

善子「………」

善子「分かるでしょ」

花丸(繰り返される同意の言葉)

花丸(確かに同意はするし、理解もする)

花丸(けれど、それじゃ……救えるものも救えない)

花丸(マルの言葉で届くだろうか)

花丸(今回で最期にしよう。そんなことを考えてるマルが)

花丸「分かるけどね」

花丸(踏ん切りがつかない)

花丸(嫌な思いをさせたくない。その根本的な部分が折れない限り)
0295名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/07(土) 22:08:17.90ID:1xbYHkPr
花丸(水曜日、週の半分と言われる分岐点)

花丸(学校で小テストが行われる)

花丸(繰り返し受けてきたであろう善子ちゃんは満点を取れるんじゃないか)

花丸(そのやっかみを、善子ちゃんは笑って受け流した)

善子「最後の問題。それがね。いっつも違うのよ」

花丸「いつもって……え?」

花丸(本来、同じ世界を繰り返しているのなら)

花丸(先生が作る問題に変化はないはず)

花丸(いや、1から100まで同じことを繰り返すような繰り返し系の物語があるだろうか?)

花丸(でも、それはあくまで架空の物語だから)

花丸(現実で……とは思うけど、そもそも繰り返してることが異質だった)

花丸「つまり、あの先生が――」

善子「関わってるなんてことはないわよ」

善子「別に普通の人だったわ」

善子「最後の問題は点数配分で余ったから気分で決めてるって言ってた」

善子「いくつか考えた中でのランダムみたい」
0296名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/08(日) 00:07:54.05ID:9e7YR3pI
花丸「じゃぁ、今回も違うのかな」

善子「問題を使い切ってなければ」

花丸(とはいうけれど、本当にただランダムなだけで毎回変わるかな?)

花丸(気分に任せてると言うことは、運に頼っているのと似たようなこと)

花丸(運は通常、人の手に余ることで、神々の存在を是とするのなら)

花丸(それは神様の気分次第であり、マル達にとっての必然のようなもの)

花丸(もちろん、非とするにしても自分の考えに基づかないのであれば)

花丸(世界的に見て、それは必然と言えるはず)

花丸(なら、どうして善子ちゃんが見てきた問題は常に違うのか)

花丸(……なんだろう。こう、何か。引っかかりを感じる)

花丸「ねぇ、善子ちゃん」

善子「ん?」

花丸「テストの後、その問題がいつかと同じだったか、違うか。教えてくれないかな」

善子「良いけど……意味ある?」

花丸「喉元まで出かかった疑問を吐き出したい」

善子「分かったわ。窒息されても困るし、後でね」

花丸(疑問を抱えたまま、マル達は学校に向かう)

花丸(そして、テストを受けた)
0297名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/08(日) 08:41:26.19ID:9e7YR3pI
ルビィ「全然できなかった……」

善子「ダイヤに教えてもらったのに」

ルビィ「教えてもらったところは出来たよ。でもっ」

花丸(もちろん、すべてが網羅されてるわけじゃない)

花丸(自力での勉強も限界があっただろうし)

花丸(それは、マルも同じ)

花丸(なにより、最後の問題……)

花丸「善子ちゃん、どうだった?」

善子「まぁ、いつも通りだったわ」

ルビィ「いつも通り……? 善子ちゃんできたの!?」

善子「それなりにはね」

ルビィ「さすがだねぇ」

花丸(羨望のまなざしを受け、ちょっぴり照れくさそうな笑顔を見せる一方で)

花丸(横目にちらりと向けてきた視線が、"いつも通り"と答える)

花丸(つまり、今回も問題は違っていた)

花丸(なんで? どうして、そんなにも変化があるのだろう)

花丸(あと少し。あとちょっとで、何か答えが出てきそうなのに)

「国木田さ〜ん」

花丸「っえっ、なに!?」

花丸(考え込んでいた体にクラスメイトからの大声は思った以上に響いて、変な声が出る)

「ごめん、驚かせて」

「生徒会長、直々のお呼出し。だよ」

花丸「あっ」

ダイヤ「………」

花丸(ダイヤさんはにこりと微笑んで、手招きする)

花丸(悪いことがあったわけではないと、クラスのみんなが感じる優しい雰囲気だ)
0298名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/08(日) 09:40:11.27ID:9e7YR3pI
ダイヤ「急に申し訳ないですわ」

ダイヤ「お昼、ご一緒できますか?」

ダイヤ「……二人で」

花丸「えっ」

花丸(二人……二人きり)

花丸(ダイヤさんのその要求もそうだけど)

花丸(何よりも驚いたのは、"たったそれだけの用事"で、わざわざクラスにまで来たこと)

ダイヤ「嫌ですか?」

花丸「そんなことないずら。ぜひ」

花丸(どこか安堵した表情が物語る)

花丸(ダイヤさんは、マルの顔を見に来たんだ)

花丸(昨日、そして今日)

花丸(何か嫌なことはなかったか、悩ませられることがなかったか)

ダイヤ「では、お昼にまた」

花丸「う、うんっ」

花丸(ダイヤさんの背中を見送りながら、教室の中から聞こえてくるあらぬ噂に辟易する)

花丸(生徒会長と国木田さんが付き合ってる。なんて、どう考えれば出てくるのか)

花丸(確かに、ダイヤさんは生徒会長というよりは、黒澤先輩という穏やかな雰囲気だった)

花丸(微笑みはマルだけに向けられたもので、二人きりのお昼休みというのも、特別感はあったと思う)

花丸(けど、噂されているようなことはない)

花丸(それはまぁ、ダイヤさんが男の人だったら声に甘みも増すかもしれないけど)

花丸(そうなったらそうなったで、王子様と村娘だから……心頭滅却火もまた涼し。関係ないかな)
0299名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/09/08(日) 10:21:06.17ID:uLvMTIKY
面白い
0300名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/08(日) 14:33:54.47ID:9e7YR3pI
花丸(昼休みは、あっという間にやってきた)

花丸(楽しみにしていた……からではなく)

花丸(周りの奇異の視線に当てられていたからだ)

花丸(昼休みになる数分前から)

花丸(いよいよかな。と、ひそひそと話し合う声が聞こえていた)

花丸(ルビィちゃんは困った顔で、善子ちゃんは特に変わらず)

花丸(もっとも、"やりなれた"授業に集中している時点で)

花丸(善子ちゃんも心中穏やかではなかったように思う)

花丸(みんなの俗語に興じるなら、マルとダイヤさんの逢瀬が気になるからかな)

花丸(ここまで深く関わったからの変化。だとすれば、運命の湾曲も叶うだろうか)

花丸「行ってくるずら」

善子「ん。何かあったらすぐに言いなさいよ。もしあったら生徒会長だろうと……ね」

ルビィ「お姉ちゃんはさすがに変なことしないと思うけど……」

花丸「善子ちゃん、わざと言ってるよね?」

花丸(もしかして津島さんも。なんて声が聞こえたのを横目に聞くと)

花丸(善子ちゃんはニヤリと笑ってまぁね。と言った)

花丸「……行ってくる」

花丸(自分のクラスの肩身の狭さ。まぁ、憎悪も嫌悪もないただただ好奇の目なら、別段息苦しくもないけれど)

花丸(いつまでもいると、ダイヤさんが迎えに来るし、賑わいそうだからと)

花丸(足早に、教室を出ていく)
0302名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 06:10:55.33ID:5R/0Z6sC
花丸(三年生の教室に向かう階段の途中でダイヤさんと合流し)

花丸(本当はダメなのですが。というダイヤさんに連れられて、生徒会室に入る)

花丸(昼休みという時間もあって、人払いには最適らしい)

ダイヤ「せっかくの昼休みに連れ出して申し訳ないですわ」

花丸「大丈夫ずら」

花丸「善子ちゃんとルビィちゃんの三人で食べるだけだったし」

花丸「たまには、ほかの人とっていうのも、悪くないずら」

花丸「それに、マルのことを心配してくれてるから。だよね?」

ダイヤ「……ええ」

ダイヤ「今しばらく問題ないと言うのは善子さんから伺っています」

ダイヤ「しかし、何が起こるか分からない以上、油断すべきではないと思いまして」

花丸(ダイヤさんは考える素振りを見せて、マルを見る)

花丸(何かなかったか。それを見抜こうとしている瞳は、いつもと違って見えた)
0303名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 06:40:53.93ID:5R/0Z6sC
花丸「特に問題は起きてないずら」

花丸「ただ、善子ちゃんに聞いた話」

花丸「今日受けた小テストの最後の問題だけが、繰り返しの中で常に変化してるみたい」

ダイヤ「なるほど……」

花丸「マルの死因も変動してるし、似たようなものとは思うけど――」

ダイヤ「いえ、そうとは限りませんわ」

花丸「そう、ずら?」

ダイヤ「勝手な推測ではあるけれど、花丸さんの死は繰り返しにおいて重要な事象です」

ダイヤ「それゆえに、救いたいという願いと救わせまいという運命が干渉しあい」

ダイヤ「花丸さんの死因が常に変動していると言う可能性は十分あり得ることでしょう」

ダイヤ「しかし、テストの内容はそこまで重要な要素だとは思えません」

花丸「そうは、そうなんだけど」

花丸(そう、問題はそこ)

花丸(どうして、そんな部分が運命の収束に囚われることなく可変的に決まるのか)

花丸(しばらく考えこんでいたダイヤさんはおもむろに顔を上げた)

ダイヤ「……花丸さん、とんでもないことを言っても?」

花丸「そんな言い方をするって言うことは、尋常なことじゃないずらね」

花丸「聞きたいずら」

ダイヤ「………」

ダイヤ「この世界、もしかすると、神様……つまり運命が存在していない世界なのではないでしょうか?」

花丸「………」

花丸「……えっ!?」
0304名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 07:45:39.24ID:5R/0Z6sC
花丸「まっ……つ、待て、待って、待ってダイヤさん」

花丸(尋常ではないと予想はした)

花丸(けれどそれはあまりに、異常だ)

花丸「神様がいないと言うことは、運命に囚われることもない」

花丸「それなら、善子ちゃんが何度も失敗している説明がつかないずらっ」

ダイヤ「ええ、そうです」

ダイヤ「ですが、もしもその死が運命などではなく、この繰り返しの舞台装置であるとしたらどうでしょう?」

ダイヤ「黒魔術による現世との隔離、その輪の中での可変であり不変な事象」

ダイヤ「死という結果を絶対的な結末かつ始点とすることで永久的な命を獲得する」

花丸「そこに何の意味があるずら?」

ダイヤ「永久的な別れ。しかし、永久的な存続でもあります」

ダイヤ「運命による生命の剥奪から逃れるために生み出された、救いのない停滞。それが、この黒魔術の効果なのではないかと」

花丸「でも、それでもマルはどちらにしろ死ぬと言うことになるずら」

ダイヤ「黒魔術による拘束。それゆえの確実な死であるならば、黒魔術の発動を中断し、運命に打ち勝てばいい」

花丸「……出来ると?」

ダイヤ「それは分かりませんが、手は尽くすつもりです」

ダイヤ「そもそも……始まりが運命なのか、黒魔術の発動か。そこが分かりませんから、確証は持てません」

ダイヤ「力説……と言っていいのでしょうか。力強く述べはしましたが」

ダイヤ「あくまで推測の域を出ない、極論と言われてしまえばそれまでの発言です」
0305名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 08:38:32.04ID:5R/0Z6sC
ダイヤ「……とりあえず、座ってお昼にしましょう」

花丸「あっ」

花丸(言われてようやく、自分が椅子を蹴飛ばしていることに気付く)

花丸(驚いたという言葉では軽いくらいに、動転していたのだと、戸惑う手を見て感じる)

ダイヤ「私としては、黒魔術が先であることを願うばかりです」

花丸「うん。気持ちは分かるずら」

花丸(少しずつ食べながら、軽く話を進めていく)

花丸(下手な推測は口にせず、ちょっとした希望を言ってみる)

花丸「黒魔術なら、それを止めれば終わるから」

ダイヤ「そうですね」

花丸「………」

ダイヤ「………」

花丸(会話の途切れた沈黙)

花丸(もくもくと食べる音が静寂だけは阻止する)

花丸(一つ一つ、丁寧な所作で食べ進めていくダイヤさんは)

花丸(悩みごとのせいか、愁いを帯びた雰囲気を感じさせ)

花丸(艶のある黒い髪はさらりと流れて、お弁当へと下る青緑色の瞳が柔らかく揺れる)

花丸(噂はともかく、評判に納得は行く)

花丸(こんな人と二人きり。しかも呼び出しとなれば、噂もしたくなる)

花丸「……そういえば、ダイヤさんが呼び出しに来たから、ちょっとだけ噂になったずら」

ダイヤ「噂?」

花丸「黒澤生徒会長と、国木田さんが付き合ってるんじゃないかって」

ダイヤ「また、根も葉もない噂を作るものですわね」

ダイヤ「呼び出すことなんて、少なからずあることでしょうに」
0306名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 08:48:35.39ID:5R/0Z6sC
花丸(ダイヤさんはこれと言って動揺するようなことはなく)

花丸(話すときだけ手を止める。何ら変わりのない様子で、マルを見た)

花丸(噂が本当にあるのかどうか疑っているのかとも思ったけど)

花丸(それで、マルが何か迷惑を被ったのではないかと伺っているのだとすぐに察した)

花丸「別に、マルはどうともしてないずら」

花丸「ダイヤさんの真意が分からないならともかく、話す内容も何も分かっていたし」

花丸「そんなことがないことくらい、分かってたから」

花丸「みんなだって、噂をすることはあってもそれでどうこうするようなことはなかった」

花丸(物語であれ、現実であれ)

花丸(学校の人気者をしがない一般生徒が占有しようものなら、陰湿な悪意の掃き溜めにでもされるだろうけれど)

花丸(ここにおいて、そんなことをする人がいるわけもなく)

花丸「結構、狭いから……みんなそういう話に飢えてるんだなって、思ったずら」

花丸(実際、噂を楽しみ好奇の目を向けてきたけど、それで糾弾されるなんてことはなかった)

花丸(もし、クラスに戻ってノートや教科書が汚れていたら)

花丸(ダイヤさんに泣きついて、果南ちゃんと鞠莉ちゃんの力を借りて復讐の限りを尽くしてあげよう)

花丸(……なんて。する必要もない)
0307名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 09:04:27.15ID:5R/0Z6sC
ダイヤ「そうですわね」

ダイヤ「確かに、高校生にもなるとそういった浮いた話がないかと話題に上がることも増えてきます」

ダイヤ「どこのお店でバイトしている人がどうとか、だれだれのお兄さん、弟さんだとか」

ダイヤ「すでにお付き合いのある人には出会いを聞き、自分もと興味津々に伺う人も多いですわ」

ダイヤ「人によっては、婚約などもあるのでは? と、羨まれることもあるそうで」

ダイヤ「ふふっ」

ダイヤ「当の本人は、そんなこと望んでいないのに。と、疲れたように零して机に伏せっていたり」

ダイヤ「ですが、そうですか」

ダイヤ「わたくしと花丸さんとは。なりふり構っていませんわね」

花丸「ダイヤさんも、婚約があったりするずら?」

ダイヤ「……さて」

ダイヤ「あるかもしれませんし、ないかもしれません」

ダイヤ「このまま男性とのお付き合いとしての縁がないのであれば、どこかの殿方を紹介されることもあるでしょうね」

ダイヤ「花丸さんだって、そういった話にまったく縁がないこともないのでしょう?」

花丸「……どうして、そうおもうずら?」

ダイヤ「人付き合いが絶えない家の者であれば、まったく無縁とは言えない話ですから」
0308名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 09:29:06.61ID:5R/0Z6sC
花丸「……そっか」

花丸「うん、確かに。マルもそういう話を聞いていないと言えば、嘘になる」

花丸「別に、お寺を継ぐことを強制されてるとか、そういったことはない」

花丸「だけど、継がないのなら継がないで、お寺は人の手に渡ってしまうこともあるかもしれない」

花丸「そうなったとき……というか、そうなる場合。かな」

花丸「相手の人が、その家の女であるマルを求めないとは限らないって」

花丸「もちろん、断っちゃいけないわけじゃない」

花丸「だけど」

花丸「じっちゃんもばっちゃもどんどん衰えていくずら」

花丸「別にいいよ。って、言ってくれてる」

花丸「気にしなくていいからね、って、笑ってる」

花丸「でも……今までわがままを許してくれて、あんまり恩を返せていないのに」

花丸「遺されていくお寺すら放り出して自分の好きに生きていくのは……どんなに、不孝なんだろうって」

ダイヤ「……花丸さんは、優しいのね」

花丸「違うっ」

花丸「優しいなら、優しいなら迷わずに受け入れてるずらっ」

ダイヤ「いいえ、優しいからこそ悩むものですわ」

花丸「っ」

ダイヤ「一度きりの人生を他者の願いに寄り添わせることができるのは、相手を想う優しさがあるからこそです」

ダイヤ「しかし、我を捨てその道を行くのならばそれはただの自棄でしかありません」

ダイヤ「育てて頂いた自分を大事に思い、受けた愛情を大切に感じて、返すべきであると思っているからこそ」

ダイヤ「自分の幸か、親の幸かを悩むのです」

ダイヤ「どちらが最も、親の幸福であるかを考えてしまうから」
0309名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 10:10:16.61ID:5R/0Z6sC
ダイヤ「花丸さんはまだ、一年生」

ダイヤ「存分に悩んでください。気が済むまで、問い続けてください」

花丸「っ」

ダイヤ「………」

花丸(優しい。そうとしか言えない抱擁に包まれる)

花丸(姉がいたら、兄がいたら)

花丸(こういう風に抱いてもらえたのだろうかと、熱くなる)

花丸「こんなところ見られたら、噂だけではすまないずら」

ダイヤ「構いませんわ。疚しいことなどないのだから、堂々としていればいいのです」

花丸「………」

ダイヤ「………」

花丸(ダイヤさんは抱いてくれる)

花丸(限りなく優しい力で抱きしめて、そっと頭に手を置いてくれた)

花丸(大丈夫。そう言われているようで)

花丸(ちっぽけな自分が縋ってもいい、大きな人がいると感じさせられるようで)

花丸(何の気なしに手を回すと、ダイヤさんは何も言わずに受け止めてくれる)

花丸(これも、消えちゃうのかな)

花丸(この暖かさも、優しさも、思い出も)

ダイヤ「……ごめんなさい」

花丸「マルの方こそ、ごめんなさい」

花丸(ダイヤさんがなぜ謝るのか。訳も分からずに、ただ、そう返した)
0311名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 15:35:28.20ID:5R/0Z6sC
花丸(放課後にはもう、ダイヤさんと二人きりによる噂は霧散していた)

花丸(結局、女の子の女の子による女の子のための愉快なお噺でしかなかったのだろう)

花丸(それは別にいいのだけど)

花丸(マルとしては少し、寂しい気持ちにもなる)

花丸(ダイヤさんとの関係が男女の恋中のようなものに発展したいとは)

花丸(あんなことがあった今も別に思うわけではないけれど)

花丸(あの温もりを、あのほほえみを)

花丸(国木田花丸が失ってしまうのは惜しい。そう、思った)

善子「なにぼーっとしてるのよ」

花丸「そんな、呆けた顔してた?」

善子「間抜けずらではなかったわよ。ずらだけに」

花丸「大丈夫?」

善子「心配そうな顔すんな!」

善子「心ない顔してるから、冗談言ってあげただけよ」

花丸「言いたいことは分かるけど、ここにあらず。って、ちゃんと言ってよ」

善子「そうね……言い返せるなら良いわ」
0312名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/09(月) 16:01:43.72ID:5R/0Z6sC
善子「昼休み、戻ってきてからちょっと……わけありな顔してたから」

花丸「え゛」

善子「言ったでしょ、心ここにあらずって」

善子「結構深刻そうに見えたから」

善子「さすがに、みんなも茶化したりしなかったのよ」

善子「別れ話とか、振った振られたとかそういうあれって感じでもなかったから」

善子「例の話が関係してるって思って……」

花丸「あぁ」

花丸(気づけば、誰もいない)

花丸(さすがに、噂のこともあってか)

花丸(今日はダイヤさんがいないみたいだった)

花丸「心配させた?」

善子「ダイヤの胸倉掴んで壁に叩きつけてやろうかと思った」

花丸「できもしないこと言っちゃって」

善子「やろうと思えばできるわよ。そう思わないだけで」

花丸(手のひらを見せた善子ちゃんは)

花丸(本当にできてしまいそうな余裕の笑顔を見せる)
0314名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/10(火) 06:42:03.69ID:CtD5rN9G
花丸「これはあくまで推測というのを念頭に聞いて欲しいずら」

善子「そんな物々しい話ってわけ?」

花丸「認識の相違を避けるためだよ」

花丸(実際に暗い顔していたのは、別の理由だけど)

花丸(関係ないと切り捨てるのは事実ではあれ、辛辣だし)

花丸(一応、繰り返しの件で話したこともあるし、その連携はしておく方がいい)

花丸「ダイヤさん曰く、この繰り返しには神様が関わっていない可能性があるって」

花丸「テストの内容の変動率から見て、運命による収束が行われてるとは思えないみたい」

善子「私が絶対に満点を取ることが出来ないって運命に収束してる可能性は?」

花丸「問題を変えたところで、善子ちゃんが正解できないとは限らない」

花丸「テスト範囲と全く関係ない部分から出題されるならともかく」

花丸「見た限りでは、テストの範囲内だったよね? つまり、正解は不可能ではない。と、言えると思う」

善子「……一理ある」

花丸「だから、この点に関しては、運命の関与がない。ただし、ここで一つ問題がある」

花丸「なぜ、こんな"観測者の関わらない出題"が、常に変動するようになっているのか」

善子「運命による収束の影響を受けていない。つまり、神による介入が行われていない?」

花丸「うん。そう考えられる」

善子「確かに、観測者による介入であるならともかく、まったく意図していないところでの絶対的な変化は不自然だと言えるわね」

善子「それも、同じ一週間を繰り返してるのなら、なおさら」

善子「もっとも、これがただの繰り返しではなく時間軸。あるいは世界軸レベルでの推移であるのだとしたら、不思議ではないかもしれないけどね」
0315名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/09/10(火) 07:19:37.95ID:3oAihgjv
保守
0317名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/10(火) 21:33:47.38ID:CtD5rN9G
花丸「繰り返しの規模かぁ……」

花丸「可能性を考えると、キリがないずら」

善子「そう。そこが問題なのよ」

善子「今回の黒魔術に関して、どの程度の規模で行われるか」

善子「ちょっとこれ見て」

善子「"鼠を食い殺す牛、偽りの輝きを持って、天へと昇る"」

花丸(何かを言いながら、善子ちゃんはメモを一枚、見せてきた)

花丸「……詠唱?」

善子「方法。この黒魔術の」

善子「まぁ、ある意味では詠唱ともいえるかもね」

花丸「善子ちゃんは、自分でこの方法を解いたの?」

善子「色々黒魔術をあさってれば分かるわよ」

善子「花丸だって、このくらいの謎解きは簡単でしょ?」

善子「特に、これに限っては日本式」

善子「分かりやすく言えば、黒魔術というよりも呪術」

花丸("鼠を食い殺す牛"、"偽りの輝きを持って"、"天へと昇る")

花丸(正直、時を繰り返すことには何の関与もなさそうな呪術に思える)

花丸(でも、ただ文字通りにとってわかるようなことじゃないんだろうなぁ)
0319名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/09/11(水) 19:11:23.82ID:1xsreszl
どう読んでも黒魔術でしょ
昇るじゃなく昇れで終わってライトニングブルスピアとか雷系統の魔法
0320名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/11(水) 22:29:18.67ID:KjAt0zrb
花丸(鼠を食い殺す牛……はなんだろう?)

花丸(鼠と牛が関わっていて、日本式の呪術)

花丸(呪術で牛と言えば、丑の刻参りが有名かな)

花丸(十二時辰、ねーうしとらうーたつみー……)

花丸(丑の刻と来て、鼠なら子の刻だろうし、牛が鼠を食い殺す……重なるのは1時)

花丸(偽りの輝きは、何かな?)

花丸(偽りがキーポイントなら、人工灯の可能性もあるけど、呪術においてそれはない)

花丸(だとすれば、自然的な輝きでありながら、偽りの輝きということになる)

花丸(深夜一時での自然発生する輝きと言えば、星か月)

花丸(それが偽りかどうかはともかくとして、それ自身の輝きではないことを意味するのなら、月明かり)

花丸(天へと昇る)

花丸(時間の逆光の呪術なら、すでに過去の時間1時を食い殺すという逆転は起きてるけれど)

花丸(天がもしも時であるなら、時を昇っていくと言う意味になるのか)

花丸(天は天じゃなく転じる。という可能性もあるけど)

善子「別にそんな深く考えるようなことじゃないわよ」

善子「鼠と牛は子丑の食い合う時間、1時ちょうどに、外の出来る限り高い場所。まぁ、屋上ね」

善子「そこで、鼠を食い殺した牛を焼くのよ。もちろん、牛は置物で可」

善子「そんな感じの、ほんと、簡単な呪術……なんだけどね」

花丸(思ったより効果は重かった。と、善子ちゃんは困ったように笑う)
0321名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/12(木) 06:42:49.17ID:Hi7tZxFC
花丸「これ、善子ちゃんは初めから時間に関する呪術だって知ってたの?」

善子「いや、色々あさってたら出てきただけだから……でも、これしかないって、直観的? 本能的にそう思ったのよ」

善子「で、実際に一週間前に戻ってきた」

善子「気になって詳しく調べても情報は出てこない」

善子「ま、そうよね。下手な暗号みたいな形で伝承されてる繰り返し呪術だし」

花丸「ダイヤさん曰く、"永遠の停滞"なのではって話だよ」

花丸「死を迎える人、あるいはその親類縁者が別れを惜しんで、死ぬけど死なない時を繰り返す」

善子「……だとすれば、死ぬ人間が記憶を引き継がないのも理由はある。か」

善子「逆に、この場合は呪術師が正しいかしら? その人は、記憶を引き継がなければならない」

善子「繰り返しのペナルティ……そう。同じ時を生きることは出来ず、死を記憶し続けなければならない。的な」

花丸「うん、確かね」

善子「……ただ、そうなると花丸がどうあがいても死ぬってことにならない?」

花丸「そこが問題だってマルも思ったし、ダイヤさんも考えた」

花丸「そこで提案されたのが、呪術の中断ずら」

善子「……まだ、やってないのに?」

花丸「ううん、繰り返しの起点を日曜日の夜中に設定してる何らかの黒魔術あるいは、呪術が機能してるかもしれない」

花丸「それを、中断するずら」
0322名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/09/12(木) 07:24:30.37ID:HurZOEpj
保守
0324名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/13(金) 06:23:43.70ID:eRSzShPF
善子「でも、それが何なのかは分かってないんでしょ?」

花丸「うん……だから、それを突き止めるのが先決だと思う」

善子「そうは言ったって……」

花丸(善子ちゃんは神妙な顔つきで呟いて、はっとしたように首を振る)

花丸(次で救うための情報集め)

花丸(そうやって割り切ればいいと考えるのと、もう殺したくないという足枷の摩擦感)

花丸(マルの我儘のせいだ)

善子「今日はもう夕方。絞り出しても半日」

善子「木曜日と、金曜日……でも」

花丸「マルが死ぬのは、いつ?」

善子「………」

花丸(それを聞いてしまえば、現実味が増す)

花丸(その瞬間が怖くて、何もできなくなったっておかしくはない)

花丸(大丈夫という意志をよそに、体は恐怖に正直だから)

花丸(だからかもしれないし、また、別の理由かもしれないけれど)

花丸(善子ちゃんもダイヤさんもマルに"今週末の死"であることくらいしか、知る権利はくれていない)

花丸(だけど、ここまで来たのなら。知らなければいけないこともある)

花丸「教えて、善子ちゃん」

善子「……覚悟は出来てるってやつ?」

善子「私にも覚悟するくらいの時間……なんて、そんなのはいくらでもあったか」

花丸(嘲笑。善子ちゃんの表情はそれ以外に形容できないほどに複雑で単純だった)

善子「金曜日よ。金曜の放課後……時間は結構ばらばらだけど、基本的に夜まで生きてることはなかったと思う」
0325名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/13(金) 06:33:44.81ID:eRSzShPF
花丸「金曜……」

花丸(あまりにも、近い)

花丸(金曜日である可能性も考慮はしていたけれど)

花丸(覚悟が出来ていたわけじゃない)

花丸(死ぬまでの時間が明確化して、その、あまりの余裕のなさに焦りが滲む)

善子「一度、目の届かないところで殺されたことがある」

善子「でも、それでも多分金曜日中だったはず」

花丸「そっかぁ……思っていた以上に、早いね」

善子「……ダイヤには一応、話してある」

善子「だからね。今日からしばらく部活を休むって」

花丸「マルは日常を謳歌したいんだけどなぁ」

善子「我儘でしょ。みんな」

花丸「そうだね」

花丸(咎める理由はあっても権利はないか)

花丸(今から生きたいと叫んで、それで善子ちゃん達が救うことが出来なかったら)

花丸(それはどれだけ、心を抉るのか)

花丸("生きたい"も"助けて"も。死んでも言うわけにはいかないね)
0326名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/13(金) 06:42:37.25ID:eRSzShPF
花丸「とにかく、マルが触れてしまった"呪術"を調べる方がいいと思う」

花丸「時間はないけど、やれることはやっておきたいと思うし」

善子「……達観したこと言って」

花丸「マルは、善子ちゃんに後悔して欲しいわけじゃないから」

花丸「だから、全力で取り組んで、それでもだめだったから。そんな、妥協をして欲しい」

善子「出来るわけないでしょ。そんなこと」

善子「して良いことと、しちゃダメなことがある」

善子「善悪も関係ない。それは、生きる上で諦めちゃいけないことなのよ」

花丸「マルと善子ちゃんは、結局他人なのに」

善子「だったら、今からでも恋人になる?」

善子「よくあるでしょ。恋をした相手を救うためならうんぬんかんぬん」

善子「大義名分が必要なら、作るわ」

花丸「なりふり構ってないずらね」

花丸(冗談みたいな口ぶり。でも、善子ちゃんが本気なのが伝わってくる)

花丸(恋人がどうとかじゃない。マルを救いたい。その一心なんだって)

花丸(そのための手段、理由として必要なら、自分の貞操だって捨てる覚悟もあるのかもしれない)

花丸(その本気。こんな状況じゃなければ嬉しいことなのに)

花丸(今は、胸が苦しくなるだけだ)
0327名無しで叶える物語(しうまい)
垢版 |
2019/09/13(金) 07:38:44.45ID:qclue2ZP
俺「運命はあるんだヨハネ」
ヨハネ「よ、よ、善子ちゃんよぉ〜」笑瓶兄風に
0329名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/13(金) 23:46:33.05ID:eRSzShPF
花丸「気持ちは嬉しいけど、恋人にはなれない」

花丸「特に、そんな投げやりな交際は嫌ずら」

花丸(どうせなら)

花丸(死の間際、川に流れる短冊のような願いではあるけれど)

花丸(どうせなら、格好良く救って、これからも一緒に。と、決めて欲しい)

花丸(もちろん、それを口にすることはないけれど)

花丸「善子ちゃん、今日もうちに来るずらか?」

善子「告白断っておいてそう来るか」

善子「なんか、友達でいたいって言われた気分だわ」

花丸「そんな大それたことだなんて、思ってないくせに」

花丸(動揺、してないかな)

花丸(いつも通りでいられてるかな)

花丸「帰ろっか」

善子「ん。練習いかないの?」

花丸「調べもの。したいでしょ?」

善子「まぁ……させてくれるなら喜んでいくけど」

花丸(思ってたよりも近い死の刻限)

花丸(あぁ、死ぬんだな……と、実感湧く心の喧騒が耳に届きませんようにと、鞄を抱く)
0330名無しで叶える物語(SB-iPhone)
垢版 |
2019/09/14(土) 00:03:24.97ID:7uIzFfI6
保守
惹き込まれるなあ
0331名無しで叶える物語(しうまい)
垢版 |
2019/09/14(土) 00:18:16.83ID:HIDC9Lkt
俺「あるよ運命は。ほらあれ。」
花丸「このお弁当うんめいずら〜♪」
善子「それかい!」
0332名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/14(土) 00:26:05.83ID:Fa4RJjrJ
花丸「ただいまー」

「おーお帰り〜」

花丸(ばーちゃんの少し間延びした返事にもう一度ただいまを繰り返す)

花丸(昨日も来たからか、お帰りと言われた善子ちゃんもただいまと、苦笑する)

善子「……母親は義母だけど、お祖母ちゃんも義祖母ってなるの?」

花丸「なぜそんなことを?」

善子「なんとなく?」

花丸(ニコニコする善子ちゃんと一緒に部屋へと向かおうとした矢先)

花丸(ばーちゃんはそうそう。と、思い出したように台所の方から顔を覗かせた)

「少し前に、黒澤さんが来てただよ〜」

善子「黒澤……さん?」

花丸「ダイヤさんずら」

花丸(ルビィちゃんなら、ルビィちゃん)

花丸(ばーちゃんが黒澤さんって言うなら、ダイヤさんのことだ)

花丸「ダイヤさん、何しに来たずら?」

「"特別なことなかったか〜"って聞いてきたっけなぁ」

花丸(いつもとあまり変わらなかったって答えたらしいけど)

花丸(ダイヤさんは出来れば日曜日にあったこと教えて欲しいと言っていたと、ばーちゃんは不思議そうに言った)
0333名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/14(土) 08:22:35.91ID:Fa4RJjrJ
善子「ダイヤ、練習休んでこっちに来てたのね」

善子「あの話を調べてるのかしら」

花丸「たぶん」

花丸(日曜日に何か特別なことがなかったか)

花丸(そもそも、何があったのか)

花丸(ダイヤさんとしては、日曜日の何かがマルを呪術に引き込んだ可能性があると考えていて)

花丸(それは、マルが直接的ではなく、間接的にかかわったものである可能性も含まれているのかもしれない)

花丸「元々、このお寺にあったものである可能性もあるずら」

善子「それね……」

善子「元々家にあった何かが、外因的な理由によって効果を発揮した」

善子「確かに、ありえない話じゃないわね」

花丸(善子ちゃんは考え込みながら)

花丸(いつもよりもトーンの落ちた声で呟く)

善子「黒魔術もそうだけど、術は行使するためにそれなりの要素が必要なのよ」

善子「魔法陣しかり、人形や式神、動物を模したモニュメントしかり」

善子「時間、日付、月の満ち欠け……まぁ、色々とね」

善子「それがたまたま重なり合った。ってのは」

善子「呪術は深く知らないけど、そういう曰く付きのアイテムが集まってくるって場所には起こりやすい」

善子「特に、ここってお寺でしょ? 供養のための人形とかがあるんじゃない?」

花丸「うん、その通り……うちには供養の為に持ち込まれたものがたくさんあるずら」
0334名無しで叶える物語(すだち)
垢版 |
2019/09/15(日) 01:54:17.49ID:RcfGue+G
保守
0336名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/15(日) 23:36:07.48ID:iyXmFQU6
善子「……蔵を見せて貰うことって出来る?」

花丸「頼めば、多分」

善子「なら悪いけど、お願いしたいわ」

善子「絶対に解明できるとは思えないけど」

善子「情報を集められるなら、集めたい」

花丸「了解」

善子「ただ、一つ教えてくれない?」

花丸「なにずら?」

善子「日曜日、蔵に入った?」

花丸「そんな覚えはないずら」

善子「そっか……消えたのか、無関係か」

善子「選択肢が増えただけだわ」

花丸「諦める?」

善子「わけ、ないでしょ?」

花丸(絶望的)

花丸(けれど笑みを浮かべる善子ちゃんの気持ちは)

花丸(その立場になる可能性のある丸にとっては、嫌なほどに分かってしまう)

花丸(そうしていなければ、泣き出しちゃうからだ)
0337名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/16(月) 09:31:05.43ID:jtMLFiRf
花丸(じーちゃんばーちゃんは危ないからと入る許可はくれなかった)

花丸(供養されているものが、一般人的にはただの人形や道具であったとしても)

花丸(曰くつきの建物での肝試しが、何らかの影響を外界に与えるのと同様に)

花丸(曰くつきの人形や道具たちが、外界に影響を与えないとは限らない)

花丸(要するに、最初の国木田花丸が蔵へ入ったと言うのは考えにくい)

花丸(とはいえ、善子ちゃんが言うように)

花丸(蔵自体が、呪術における要素を満たしていて)

花丸(マルの何らかの行動がその力を引き出してしまった可能性は捨てきれない)

善子「無理に押し入る必要はないわよ」

花丸「でも」

善子「それをしたところで、どうにかなるものでもないでしょ」

善子「だったら、入れなかったってことにして考えたほうが良い」

善子「あの日の花丸がカギを盗んで入ったならともかくね」

善子「全部を知ってるわけじゃない。けど、そんなことできるような奴じゃないわよ。花丸は」
0338名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/16(月) 10:51:14.08ID:jtMLFiRf
花丸「じゃぁ、どうするずら?」

花丸「蔵に入らなかった。それで?」

花丸「マルが呪術に関わった可能性はどうなる?」

花丸「情報がまた一つ減る。金曜日、なんだよね?」

花丸「どうにかなるずらか?」

花丸(言ったって、どうしようもない)

花丸(そもそも、死ぬ覚悟が出来てるんじゃなかった?)

花丸「………」

花丸(……震えてる)

花丸(手を背中に隠して善子ちゃんを見ると、善子ちゃんはマルを見てはいなかった)

善子「……約束は出来ない」

善子「でも、なんとかしたいわ。どうにかしたい」

花丸(絞り出される声が震えているのは、怒りか、焦りか)

花丸(マルと違って、しっかりとした手をした善子ちゃんは)

花丸(強く握った拳を自分の口元へと押し付けながら、ため息をつく)

善子「自分の使った黒魔術について調べてみる」

善子「明日からは、私の代わりに一緒にいてくれるようダイヤに頼んでみるから」

善子「花丸はダイヤと一緒にいて」

花丸「明日からって言っても、もう、一日半だけどね」

善子「…そうだけど」

花丸「ごめん、嫌なこと言った」

善子「いや、言っちゃう気持ちは分かるから謝らなくていい」

善子「私だって、きっと同じこと言うし」

善子「むしろ、そんなすぐに罪悪感で謝ったりできないから」

善子「その気持ちだけで充分よ」
0340名無しで叶える物語(すだち)
垢版 |
2019/09/17(火) 19:38:30.09ID:hTe2a+eK
ほし
0341名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/09/17(火) 19:42:03.18ID:J+7FmjK5
保守
0342名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/17(火) 20:58:21.56ID:/r9qYj8z
花丸(あっという間に、木曜日)

花丸(昨日から見ればたった数時間後のことだから)

花丸(当たり前と言えば、当たり前のこと)

花丸(だけど)

花丸(遠足前の小学生、修学旅行前夜の中学生)

花丸(そんな気分ではないのだから、こぼれ落ちていくような時間の速さであって欲しくない)

花丸(だけど、嫌がることだという共通点がある以上)

花丸(早送りで消えていく過去も致し方ないのかもしれない)

花丸(そんな考えを持っちゃうのは、すでに諦念があるから。なのかな)

花丸「はぁ……」

ダイヤ「花丸さん」

花丸「っ!」

ダイヤ「……大丈夫、ですか?」

花丸「ダイ、ヤ……さん?」

ダイヤ「はい、黒澤ダイヤです」

花丸(いつものバス停、隣にいる善子ちゃんはすまーとふぉん?を弄っていて)

花丸(いつ来たのか、ダイヤさんがマルを見ていた)
0343名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/17(火) 22:13:32.16ID:/r9qYj8z
花丸「ど、い、いつのまに?」

ダイヤ「つい先ほどです」

ダイヤ「ちょうど、足元の小石を見つめて動かなくなったあたり。ですわ」

花丸「………」

花丸(俯いてから。というのは分かったけれど)

花丸(自分がいつ俯いたのかは、分からない)

花丸(不意に名前を呼ばれてはっとした時に顔を上げたから)

花丸(俯いていたのは、多分そうだ)

ダイヤ「善子さん、携帯ばかり弄っていると目を悪くしますわ」

ダイヤ「何より、学校では本来不要であることを、お忘れではありませんわよね?」

善子「ん……ごめん」

花丸「ダイヤさん、マルは――」

ダイヤ「……はい」

花丸「っ」

ダイヤ「大丈夫、わたくしが……絶対に守ります」
0345名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/18(水) 21:52:21.85ID:rwVwizsX
花丸(ダイヤさんはマルを抱いてくれる)

花丸(強く温かく)

花丸(駄目だ……だめだ、だめだ、だめだっ)

花丸「っ」

ダイヤ「………」

花丸「!」

花丸(体と体の間に入れた手は、あまりにも軽い力で伸びていく)

花丸(救うなんて言葉が嘘みたいに)

花丸(だけど、ダイヤさんの顔に諦めはない)

花丸(ただただ、優しさだけが満ちる)

ダイヤ「想像は出来ても、理解は出来ない。第三者であるが故の欠点」

ダイヤ「ですから、無理強いはしませんわ」

花丸(本当は生きたい)

花丸(死にたくなんてない)

花丸(ダイヤさんはそれを……きっと……)
0346名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/19(木) 06:44:29.90ID:tRp0CujL
善子「昨日、花丸の家に行って収穫はあった?」

ダイヤ「いえ、特には」

ダイヤ「おそらく"今の花丸さんには関係がない"のかと」

花丸「今のマル?」

ダイヤ「ええ。言ってしまえば、今の花丸さんは最初の花丸さんとは別の……そうですね。別の個体。と言いましょうか」

ダイヤ「同じではあるけれど、同じではない存在なのかと思います」

善子「要するに、記憶だったり過去だったりに差違があるってことでしょ?」

ダイヤ「簡単に言えばそうですわ」

善子「本来なら関わっている部分に関わっていなかったせいで中途半端」

善子「引き継がれるべき記憶部分が置き去りになった状態……だから、別個体」

ダイヤ「つまり、その記憶が何なのか。そこで何があったのかを解明できれば」

ダイヤ「解決の糸口がつかめるのではないかと思います」

善子「……なるほど。で、方法は見つかった?」

ダイヤ「手は打ちますが、うまくいくかはその時にならなければ分からないのが現状です」

ダイヤ「不安はありますが、やるほかないかと」

善子「詳しく話せる?」

ダイヤ「いえ、知られると何があるか分からないので……すみません」

善子「良いわよ。任せる」

ダイヤ「ありがとうございます」
0347名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/09/19(木) 07:02:38.24ID:dQ5ipVFo
ほし
0349名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/19(木) 20:35:09.89ID:tRp0CujL
花丸「黒魔術の行使に中途半端にかかわったから記憶を引き継げなかったって話じゃなかったずらか?」

花丸「なのに、マルが本来のマルとは違うって、言われても……」

ダイヤ「すみません、最適な説明が思いつかなくて」

ダイヤ「あくまで、便宜上別個体という形で説明したと思ってください」

ダイヤ「花丸さんは現在、本来あるべき記憶がない」

ダイヤ「しかし、本来あるべき記憶を持った花丸さんも存在しているはずなんです」

ダイヤ「だから、二人の花丸さんがいると仮定してるだけで」

ダイヤ「花丸さんが偽物というわけでは……いえ、申し訳ありません」

花丸(ダイヤさんは説明をしながら、唇をかむように俯く)

ダイヤ「そのような説明になってしまったのは否定しようがない事実です」

花丸「………」

ダイヤ「謝罪の意味も込めて……とは言いませんが、なんでもいたしますわ」
0350名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/19(木) 22:04:13.94ID:tRp0CujL
花丸「……なら、一緒にいて欲しい」

花丸「通学路も、授業中も、お昼も、帰りも、夜も、明日も……」

善子「花丸?」

花丸「ずっと、一緒にいて欲しいずら」

善子「いや、さすがに授業中は私に任せなさいよ」

善子「二年生ならともかく、三年生だし無理でしょ」

花丸(無理なことなんて、百も承知だ)

花丸(でも、本当に助けてくれるなら)

花丸(絶対に守ってくれると言うなら……と、思う)

花丸(悪いことだと分かってはいても)

花丸(どうせ死ぬんだからという諦念があるせいか、我儘は、収まりを知らない)

花丸(なのに、なのに……)

ダイヤ「そうですわね……無理かもしれませんが、やれるだけやってみましょう」

花丸(ダイヤさんは少し考えただけで、出来ないとは言わなかった)
0351名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/20(金) 06:43:42.94ID:J/ieBKf1
「……と、いうことで、今日と明日は後ろに生徒会長の黒澤さんがいるけれど、あまり気にせず授業に集中してくださいね」

善子「……マジ?」

ルビィ「冗談じゃ、ない……」

花丸(先生の説明にざわつく教室)

花丸(気にせずと言われても無理な話で、クラス中の視線が一点に集中する)

花丸(先生曰く、浦の星女学院最後の生徒会長として、各学年の授業風景などを記念として記録しておきたいから。という話だけど)

花丸(生徒会長黒澤ダイヤ、どんな手を使ったのかは闇の中……の方が良いのだろう)

花丸(ダイヤさんは特別に用意された机と椅子を借りて、一番後ろに自分の席を作っていた)

花丸「……本当に」

ダイヤ「………」

花丸「っ」

花丸(マルが振り返ると、ダイヤさんはすぐに気づいて微笑む)

花丸(マルに向けられたものだと、マルと善子ちゃんだけが察する中)

花丸(それが自分のものではないかと、黄色い声がどこからともなく)

花丸(思い込みは相も変わらず視野を狭めるものだなぁ。なんて、逃避しようと考えた)
0352名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/09/20(金) 07:20:11.91ID:Sl33ZoWG
いいですぞ〜
0354名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/20(金) 20:45:17.17ID:J/ieBKf1
花丸(授業の合間の休息時間)

花丸(瞬く間もなく広まったダイヤさんの話のせいか)

花丸(絶え間なく、教室を覗きに来る女の子達の山)

花丸(生徒会長という肩書、黒澤という姓、三年生という憧れ)

花丸(積み上がる人の希望にも似た象徴は)

花丸(学生という未成熟な中で、とりわけ中立に位置する高校生にはやっぱり、魅惑的なのかもしれない)

花丸(それが華々しい太陽だとすれば、マルはきっと、陰だ)

花丸(月にすら届かず、見上げる亀ですらなく)

花丸(そこに何かがあるからという理由で生まれ、気に留められることなく踏み躙られて、失われたからと消え去る)

花丸(生きる意味は? 守られる価値は?)

花丸(みんなから慕われている黒澤ダイヤという存在が)

花丸(みんなを思う優しさを持っている津島善子という存在が)

花丸(心砕かれることを分かっていながら、関わり続けるほどの何かを、マルは応えられるのだろうか)

花丸「……無理ずら」

花丸(それほど大それたものが、自分にあるとは思えない)
0355名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/20(金) 21:29:56.62ID:J/ieBKf1
花丸(マルは、ただの読書が好きな女の子のはずだった)

花丸(友人も作らずただ一人ひっそりとしているのではなく)

花丸(適度に友人を作って、適度に関わりを持って)

花丸(いようがいまいが関係なく)

花丸(入学、卒業、入社、退社)

花丸(人生の節目節目で、ふと、"あぁ、そういえばそんな人がいたっけな"と)

花丸(ちらりと見かけた12ロールのトイレットペーパーを見て、そういえばもうなかったかなと思い出す程度の)

花丸(本当の意味で、物語の中でのモブとして終わるはずだった)

花丸(だけど、マルはそうならなかった)

花丸(千歌ちゃんの作ったAqoursというスクールアイドルに関わってしまったことで)

花丸(思えば、あれは重要な分岐点だったのかもしれない)

花丸(関わるか否か。黒澤ルビィという友人を作ってしまった時点で、半ば強制的に定められた分岐)

花丸(明るい道か、暗い道か。本能的に選ばざるを得ない前者を選んでしまった)

花丸(陰が陽に当たればどうなるか)

花丸(分かり切っていたその結末を、もしかしたらなどと空想して)

花丸(結局のところ、国木田花丸というモブは"もしかしたら選ばれるかもしれない"と恋願う主人公の取り巻きだったのだ)

花丸「………」

花丸(……なーんて)

ダイヤ「それは――………?」

花丸(目を向ければ、まるで未来を知っているかのようにダイヤさんはマルに微笑む)

花丸(ここにいるから大丈夫。ちゃんと見ているから。貴女のことを守るから)

花丸(それを語る青緑色の輝きは、今のマルにとっては、目の毒だ)
0357名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/21(土) 23:22:34.16ID:8yWoUlz+
善子「生徒会長の権力強すぎるんじゃないの?」

ダイヤ「本来なら、こんな強引な手は使えませんわ」

ダイヤ「廃校する。というキーがあってこそです」

善子「だからって、ちょっとやりすぎなんじゃないの?」

花丸(昼休み、二年生のところに逃げてしまったルビィちゃんを除いた三人で、空き教室を占拠する)

花丸(わざわざ空き教室にまで出てくることになったのは、)

花丸(ダイヤさんがずっと一緒にいたからだ)

ダイヤ「何でもすると。そう、言いましたから」

花丸「どうして……って、聞いても同じずらか?」

ダイヤ「そうですわね」

ダイヤ「でも、あえて言葉を変えるのなら……花丸さんを救うため。と」

花丸「マルが死ぬのは明日ずら」

花丸「別に、今日は放っておかれても死なないよ」

善子「……ねぇ、花丸あんた――」

ダイヤ「希望を持たされるのが、嫌ですか?」
0358名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/21(土) 23:45:52.50ID:8yWoUlz+
花丸「嫌ずら」

花丸「死なない方法があるなんて言われたら、マルは喜んでそれに飛びつくよ」

花丸「でも、それが出来る?」

花丸「運命レベルで殺し来るこの世界で、このマルの命を、救う方法がある?」

ダイヤ「ありますわ」

花丸「っ……」

花丸(断言)

花丸(逡巡さえ必要としなかった言葉は)

花丸(反射的な言葉とは思えない自信を感じる)

花丸(きっと、話すことのできない"打つ手"が、それなのだろう)

ダイヤ「あります」

花丸「なら、教えて」

ダイヤ「それは出来かねます」

花丸「じゃぁ、嘘ずら」

ダイヤ「ええ、嘘だと思って戴いてもかまいません」

ダイヤ「ですが、わたくしが救いたいと思っていることだけは信じてください」

花丸「思いだけで何が出来るずら!」
0359名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 00:02:33.28ID:O2ZpZTMS
花丸(勢いよく立つと、膝が蹴り上げた机が揺れて、弁当箱が跳ねる)

花丸(机から離れたそれは真っ逆さまに床へと砕けて……飛び散っていく)

花丸「善子ちゃんは凄く頑張ったずら」

花丸「何回繰り返したのかは教えてくれてない。でも……マルの知らない善子ちゃんになっちゃうくらいに頑張ってくれた」

善子「………」

花丸「それに、思いが籠ってなかったって?」

花丸「そんなわけがない……そんなはずがないっ!」

花丸「それでも、それでもマルは死んだ」

花丸「なのに……黒澤ダイヤ一人の介入で、何が変えられるずら!」

ダイヤ「…………」

善子「花丸!」

ダイヤ「善子さん、良いんです」

ダイヤ「花丸さんの言う通りですわ」
0360名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 00:20:13.89ID:O2ZpZTMS
ダイヤ「善子さんがどれほどの思いを抱き、繰り返してきたのか」

ダイヤ「わたくしの想像にないほどの大きなものでしょう」

ダイヤ「当然ながら、わたくし一人の思い如きを同列に並べるべきではないはずです」

ダイヤ「必然的に、わたくしが変えられる運命など、微々たるものでしょう」

花丸「だったらっ!」

ダイヤ「だとしても」

花丸「!」

ダイヤ「だとしても。ですわ。花丸さん」

ダイヤ「その微々たるものが未来を変えぬと誰が口にしたんですか」

ダイヤ「その小さな羽ばたきが、運命を変えられないとどうして言い切れますか」

ダイヤ「打つ手がありながら、なにゆえ諦めることが出来るのでしょうか」

ダイヤ「期待しなくて結構、信頼しなくて結構。羽虫のさざめきであると見下して結構」

ダイヤ「ですが」

ダイヤ「貴女の命を諦めろとは言わないでください」
0361名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 00:57:42.21ID:O2ZpZTMS
花丸「…………」

善子「……ほんと。それよ」

善子「私が死ぬ日を言ったのは、花丸に諦めて欲しいからじゃない」

善子「希望もないし、時間もない」

善子「だけど、それでもまだ何とかなる可能性はあるんだって」

善子「そう、思ってほしかったから」

善子「なのに花丸、あんたは……」

花丸「………」

花丸(半歩下がって、椅子にぶつかった膝が折れて、席につく)

花丸(充満する弁当の匂い、まとわりつく外の世界の喧騒と)

花丸(嗚咽に近づきつつある善子ちゃんの小さな声)

花丸(目を逸らせない現実があるのに、二人はどうして諦めないのか)

花丸(それを聞くのは、それこそ、繰り返しにしかならない)

花丸「ダイヤさん、断言したずら」

ダイヤ「ええ」

花丸「本当に、それができる確証があるずらか?」

ダイヤ「頷くには心許ないですが、確実性は高いと思っています」

花丸「なら……ごめん」

ダイヤ「いえ、気持ちを吐き出したくなるのも無理はありませんわ」

ダイヤ「わたくしで良ければ、どうぞ。ご自由に」

花丸(そういったダイヤさんはやっぱり、笑顔だった)
0362名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 11:22:44.06ID:O2ZpZTMS
花丸(放課後、千歌ちゃん達に今日と明日の二日間休むことを話した)

花丸(ダイヤさんに続いてマル達のお休み)

花丸(何か企んでいるのではと千歌ちゃん達に訝し気な目をされたけど、仕方がない)

花丸(死ぬか生きるかの瀬戸際なのだから……)

花丸(ダイヤさんに怒鳴り散らしていなければ、呑気な三人組に怒鳴っていたかもしれない)

花丸(余裕がない、気が急いてる。時間の流れが奇妙なほどに早く感じる)

花丸(時計の針が十倍……百倍にも感じる)

ダイヤ「善子さんは図書館に行くそうですが、花丸さんは?」

花丸「ダイヤさんは、何か調べたいこととかないずらか?」

ダイヤ「調べものは善子さんに委ねますわ」

ダイヤ「今日明日は、花丸さんの思いのままに」

花丸(笑顔。余裕。でも、なんでか少し……大丈夫な気がしてしまう)

花丸(既知か否かでこれほどに違うのかな)

花丸「じゃぁ、帰る」
0363名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 11:56:33.98ID:O2ZpZTMS
ダイヤ「ルビィには、少し嫌な思いをさせたかしら」

花丸「お姉ちゃんが授業中もずっといたら、授業参観みたいで気が気じゃないと思う」

花丸(その状況を作らせたマルが言うことじゃないけど)

ダイヤ「お母様に恥は欠かせまいと、身が引き締まる思い……には、なりませんか?」

花丸「そんな孝行な高校生は世界広しと言えどそこまで多くないと思うずら」

花丸(基本的には、自分が恥をかきたくないよね)

花丸「………」

ダイヤ「………」

花丸(明日、自分g死ぬとは思えないほどに、普通の放課後)

花丸(周りの人も、行き交う車や自転車も)

花丸(何もかもが、ごく当たり前の動きをし続けている)

花丸(だけど、死ぬ)

花丸(マルは……死ぬんだ)

ダイヤ「可能性はありますわ」

花丸「え?」

ダイヤ「一つ、重要なことをお話しておきましょう」
0364名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 12:10:05.32ID:O2ZpZTMS
花丸「重要なこと……?」

花丸「それを話して、影響はないずらか?」

ダイヤ「大丈夫です。これについては、花丸さんも既知の事象ですから」

花丸「………」

ダイヤ「善子さんはきっと、最後の問題を間違えます」

花丸「え?」

ダイヤ「明日返されると言う、テスト。昨日の小テストです」

ダイヤ「善子さんは今回も間違えて、満点は取れない」

ダイヤ「しかし間違えた問題は、同じ問題ではない」

花丸「それはそうずら。毎回毎回、問題が違うんだから」

ダイヤ「ええ、そう」

ダイヤ「そういうことなんです」

花丸「……なにが、言いたいずらか?」

ダイヤ「どうぞ悩んでみてください」

ダイヤ「死ぬか生きるかで頭を痛めるより、黒澤ダイヤの意地悪な問で、悩んでください」
0366名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 18:33:29.74ID:O2ZpZTMS
花丸(意地悪なダイヤさんは、昨日の善子ちゃんと比べてこれと言って観察するようなこともなく)

花丸(マルの部屋にある適当な文庫本を読んでいる)

花丸(文学少女などと自称する気はないけど、どちらかと言えばその傾向にあるマルよりも)

花丸(ダイヤさんの方が似合っているように感じる)

花丸「ダイヤさん、怒ってないずらか?」

ダイヤ「いえ、まったく」

花丸「失礼なことをしたのに?」

ダイヤ「状況を鑑みれば、致し方ないかと」

花丸「……それでも、言い返すくらいはしてもいいのに」

ダイヤ「いえ……」

花丸(ダイヤさんは呼んでいた単行本を閉じると)

花丸(ゆっくりと、目を向けてきた)

ダイヤ「わたくしも花丸さんを怒らせてしまうでしょうから」

花丸(また、笑顔)

花丸(だけど、何かいつもと違う。そんな気がして)

花丸(その理由がわからなくて、もどかしくなる)

花丸(でも、もどかしいで終わらせてはいけなかった)
0367名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/09/22(日) 18:40:01.57ID:lpKd95J7
冗長か?花丸の心理的変化としては重要な場面だと思うが
SSとしてで言えば長いなもう少し短くて良い
0368名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 18:46:53.26ID:O2ZpZTMS
花丸(金曜日は、いつもと変わらなかった)

花丸(祖母ちゃんのつくる朝食、ちょっと曇った空、鳴く鳥の声と、風の音)

花丸(いつも通りと言えないのは、隣にダイヤさんがいることくらい)

花丸(本当に死ぬのか)

花丸(本当の本当はただの冗談なんじゃないかと思えてくるような日常感)

花丸「ダイヤさん、普通に学校に行くずらか?」

ダイヤ「花丸さんはどうしますか?」

花丸(正直、本当に死ぬなら学校なんて行かなくてもいいんじゃないかと思う)

花丸(だけど……)

花丸「行く。みんなに、会いたいずら」

ダイヤ「ではそうしましょうか」

花丸(死ぬのは放課後以降)

花丸(それまでは普通の生活がしたいと、思ったから)
0369名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 19:18:27.56ID:O2ZpZTMS
花丸「……忘れてた」

ダイヤ「ふふっ」

ルビィ「うぅ」

花丸(ダイヤさんは今日も、マル達のクラスにいる)

花丸(ふつうはいないから、普通じゃない)

花丸(全然いつも通りなんかじゃない)

花丸(でも、それはマルがお願いしたからで……)

花丸(本来、ありえないこと……なんだよね)

善子「来たのね、花丸」

花丸「うん……来たよ」

善子「前のあんたは、来なかったわ」

花丸「………」

善子「ねぇ花丸」

善子「ダイヤ、何か言ってなかった?」

花丸「善子ちゃんは満点を取れない。だけど、間違えた問題は同じ問題じゃない」

花丸「どう思う?」

善子「……そうねぇ」

善子「結果は変わらない。かしら」
0370名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/22(日) 20:07:54.73ID:O2ZpZTMS
善子「満点を取れない結果は変わらないけど、間違える問題は変わる」

善子「ただ、それだけのことでしょ」

花丸「ダイヤさんは重要だって言ったよ」

善子「……そう」

善子「つまり、今回も私は満点取れないってわけか」

善子「最悪じゃない」

花丸「諦める?」

善子「いや、まだ結果は出てないから」

ルビィ「何の話?」

花丸「今日帰ってくるテストの話」

ルビィ「あぁ……うん、そういえば、そんなのあったねぇ」

花丸(ルビィちゃんは話す間にも意気消沈して頭を抱えていく)

花丸(ダイヤさんがいるせいなのは明白で)

花丸(今までなかったであろうダイヤさんがいるテスト返却という状況に)

花丸(善子ちゃんも少し、困った顔をしていた)
0372名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 15:58:28.06ID:RkvQCuhj
花丸「………」

花丸(おめでとう、クラス一番だ。という声をかけられた善子ちゃんは)

花丸(返されたテストの点数を一瞥して、苦笑いを浮かべた)

花丸(満点だったらきっと、周りの目なんて気にせずに喜ぶはず)

花丸(……満点は取れなかったんだ)

花丸(クラスのみんなは凄いと言うけれど、事情を知ってるマルは、何も言えない)

花丸(ダイヤさんも同じく察してか、静かに見守る)

花丸(その真剣なまなざしを感じてか)

花丸(ルビィちゃんは気が気じゃない表情を見せるや否や、机に伏せってしまった)

花丸「……で、マルは」

花丸(45点)

花丸(点数は高い方だけど、満点じゃない)

花丸(最後の問題だって、間違えた)

花丸(運命は、決まってしまったのかもしれない)
0373名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 17:02:33.53ID:RkvQCuhj
ルビィ「うぅ……が、頑張ったんだよ!」

ルビィ「がん、ばったけど……」

ダイヤ「赤点回避しただけ、良かったですわ」

ルビィ「へっ?」

ダイヤ「実際のテストであるならいざ知らず」

ダイヤ「小テストの50点満点で30点台なら……まぁ及第点と致しましょう」

ルビィ「え……」

ダイヤ「あら。叱ったほうが良い?」

ルビィ「ううんううん! そんなことないっ」

善子「ねぇ、ダイヤ」

ダイヤ「なんでしょう?」

善子「ダイヤは、その……」

ダイヤ「…………」

花丸(善子ちゃんの目が、一瞬だけマルを見て)

花丸(それを追いかけるように流れてきたダイヤさんと目が合う)

ダイヤ「わたくしと花丸さんが何か?」

ダイヤ「まさか、恋仲にあるのでは。とでも?」

花丸「!?」

ルビィ「えぇぇっ!?」
0374名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 17:38:17.03ID:RkvQCuhj
善子「いやいや、何言ってんのよ」

ダイヤ「冗談ですわ」

ダイヤ「もっとも、少々要らない噂をたてようとした人が、二年生にはいたみたいですが」

花丸「二年生……?」

ダイヤ「高海の千歌さんです。もしかして、などと大声で話していたと」

ダイヤ「梨子さんから」

ルビィ「そういえば、お姉ちゃんと花丸ちゃんと善子ちゃんで何か云々って話してた気がする」

ルビィ「その時は付き合ってるとかそういうのはなかったけど」

花丸「少し仲良くしてるだけでこれずらか」

花丸(もっとも、仲良くしてるだけというには、少しばかり密接な関係になりすぎてる感じはあるけど)

花丸(死が二人を分かつまで。なら、まだ物足りないかもしれない)

花丸「まったく、千歌ちゃんも物好きずらね」

花丸「……マルとダイヤさんが付き合ってるなんて、そんなことありえないのに」

ダイヤ「なら、ありえさせてみますか?」

花丸「えっ」

花丸(グィッと、手が引かれる)

花丸(自分と同じソープの香りに、少し大人びた色香の混じった匂い)

花丸(温かいのと、柔らかいのと)

花丸(自分の胸がもっと小さければよかったのにと、妬まれる悩みを覚える)

ダイヤ「"不可能と絶対"が同一ではないことを、教えて差し上げますわ」
0375名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2019/09/23(月) 17:40:43.45ID:xq78U5Dl
宝生永夢「そうたの運命は俺が変える!」
0377名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 18:05:59.67ID:RkvQCuhj
ルビィ「おぉねっぉねっった」

花丸「ダ、ダイ……ヤ、さん?」

ダイヤ「どうしますか?」

花丸(ざわつくクラスメイト)

花丸(黄色い声に集まる他クラスと広がる噂)

花丸(慌てすぎて舌を噛んで泣くルビィちゃんと、宥める善子ちゃん)

花丸(渦中の人物のくせして、余裕そうな顔のダイヤさんは)

花丸(その表情とは裏腹に、まじめな表情)

花丸(マルに何でも付き合おうとしてくれてるのは……そういうことずらか)

花丸(授業中も一緒にいる、マルと付き合う)

花丸(不可能なんて覆せると、そう……)

花丸「付き合ったって、どうにもできないずら」

ダイヤ「一緒にいる口実にはなるかと」

ダイヤ「変に勘繰られるよりも堂々としていたほうが良いのでは?」

花丸「どうせあと半日ずら」

ダイヤ「だからこそ。してみたくはありませんか?」

ダイヤ「殿方でないのは申し訳なく思いますが、エスコート。させてください」
0378名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 18:17:23.57ID:RkvQCuhj
ルビィ「お姉ちゃん?」

ダイヤ「………」

花丸(ルビィちゃんの不思議そうな声に押し黙ったダイヤさんは)

花丸(これ以上密な話に流れていくのも。と、誤魔化すように離れていく)

ダイヤ「どうせ噂されているのなら、楽しんでみるのも一興ですわ」

ダイヤ「鞠莉さんと付き合う上では重要な諦めです」

善子「諦めって」

花丸(ルビィちゃん達は巻き込まない)

花丸(それがマル達の決めたルール)

花丸(なら、付き合うことにしたほうが、余計な邪魔も入らなくなるだろうか?)

花丸(いや、好奇心旺盛な尾行が絶対にある)

花丸「嬉しいけど止めておくずら」

花丸「それはまた、今度」

ダイヤ「その言葉、信じていいですか?」

花丸「好きにして良いずら」

花丸(ルビィちゃんがいるのにと思いながら)

花丸(やや素っ気ない対応をすると、ダイヤさんは苦笑しながら"すみません"と口にする)

花丸(雰囲気が変わったのを感じ取られたせいか、ルビィちゃんのきょとんとした視線が向けられた)
0379名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 18:31:28.60ID:RkvQCuhj
ルビィ「大丈夫?」

花丸「……うん」

花丸「注目されるのは、あんまり得意じゃないだけずら」

花丸(スクールアイドルやっておいて何を言ってるのかと思うけれど)

花丸(元が図書室にこもる性分だからか)

花丸(ルビィちゃんもクラスメイトも)

花丸(何も言わずに、注視を止めてくれた)

善子「ルビィ、今日は千歌達のところ行かないの?」

ルビィ「あぁ……うん、行ってこようかな」

ルビィ「お姉ちゃん」

ダイヤ「なに?」

ルビィ「花丸ちゃんをよろしくね」

ダイヤ「フラれましたが」

ルビィ「うん、そうだね」

花丸(ルビィちゃんは駆け足気味に教室を出ていく)

花丸(詳細を分かっていなくても何かがあることは分かってる)

花丸(だからきっと、"自分はここに必要ない"、"お姉ちゃんが何とかしてくれる"そう思ったのだろう)

花丸(初めからルビィちゃんに話していたら……なんて)

花丸(もう、遅い)
0380名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 19:17:21.30ID:RkvQCuhj
善子「いくら何でも積極的過ぎるんじゃないの?」

花丸(ルビィちゃんがいなくなって、周りが配慮し始めたのを皮切りに)

花丸(善子ちゃんは訝しそうに切り出す)

善子「花丸に詰め寄りすぎだわ。ルビィでも察するくらいに」

ダイヤ「どうせあと、半日ですから」

善子「本気で言ってるの?」

ダイヤ「結果が出るまで。という話ですわ」

ダイヤ「何が出るかはお楽しみ、開けてびっくり玉手箱」

善子「ダッ……っ」

花丸(怒鳴ろうとした善子ちゃんの勢いは)

花丸(ダイヤさんの目と、周囲の人の多さが鎮圧する)

花丸(それでも歯ぎしりが聞こえた)

善子「あと半日なら、はぐらかさずに教えてくれてもいいんじゃないの?」

善子「運命にからめとられるなんて、どうせ建前なんでしょ?」

ダイヤ「いいえ、方便ですわ」

ダイヤ「……運命にからめとられると言うのは、可能性の一つです」

ダイヤ「ですが、それ一つですら馬鹿にできないのが貴女達では?」

善子「………」

ダイヤ「善子さんはどうせ、次を目指すのでしょう?」

ダイヤ「花丸さんはどうせ、無駄だと思っているのでしょう?」

ダイヤ「なら、わたくしに任せてください」

ダイヤ「どうせあと、半日。ですから」
0381名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 19:37:21.72ID:RkvQCuhj
花丸(ダイヤさんは笑顔だ)

花丸(自分のそれを心から信じているかのように)

花丸(善子ちゃんは任せると言った)

花丸(マルも信じようと思った)

花丸(なら、もう、ダイヤさんを足止めする権利はないのかもしれない)

花丸(諦めるのなら、その命を任せてみないか)

花丸(その差し伸べられた手を取ったのは、自分たちなのだから)

花丸「ダイヤさん」

花丸「マルをエスコートする話はまだ健在ずらか?」

ダイヤ「ええ」

花丸「じゃぁ、お願いするずら」

花丸「善子ちゃん。それでいいよね?」

善子「花丸がそれでいいなら」

花丸(善子ちゃんは不安そうながら、同意してくれる)

花丸(次に行くつもりだって言うのは、そうなんだろうな)

花丸(結局、遺書も用意してない)

花丸(ううん、用意しなかったのかな……)

花丸(どうせ死ぬなら、ダイヤさんに付き合おう)

花丸(死ぬ瞬間を見せるのは気が引けるけど)

花丸(そんな理由じゃ、ダイヤさんは引いてくれないだろうから)

花丸「ダイヤさん。マルの最期を、お願いするずら」

花丸(ダイヤさんは笑顔を見せるだけで、何も言ってはくれなかった)
0382名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 20:40:01.52ID:RkvQCuhj
花丸(夕方になると、善子ちゃんはすぐに教室を出て行った)

花丸(下駄箱に靴は残っていたから)

花丸(まだ学校に残ってるのは間違いないけど、何をしているんだろう)

花丸(そんなことを考える頭が、バスの揺れでダイヤさんにぶつかる)

ダイヤ「……眠いですか?」

花丸「ううん、考え事」

花丸「善子ちゃんはなにをしてるんだろうって」

ダイヤ「今回は見届けないおつもりなのでしょう」

ダイヤ「その点も含め、わたくしにゆだねて下さっているようです」

花丸「どんな死に方をするとしても、危ない追い方をするのだけは止めて欲しいずら」

花丸「例えば、轢かれて飛び散った体。とか」

ダイヤ「嫌な話ですわね」

花丸「ありえる話ずら」

花丸「ダイヤさんの導き次第で」

花丸「車か、トラックか、電車か。それとも、戸棚に潰されるか」

ダイヤ「止めてくださいな」

ダイヤ「それはどれも、これから起こり得るものなのですから」
0383名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/23(月) 20:59:24.48ID:RkvQCuhj
花丸「どこが一番都合が良いずら?」

花丸「ダイヤさんの切り札」

花丸「マルが助かる可能性が最も高い死に場所に、連れて行って欲しいずら」

ダイヤ「……そういわれると、少々答えに困りますが」

ダイヤ「そうですわね。外の方が好都合ですわ」

花丸(車に轢かれたり、通り魔に殺されたり)

花丸(頭上からの落下物とか、建物の倒壊とか)

花丸(数えればきりがないけど、それは屋内も同じ)

花丸(むしろ、下手に安全な屋内の場合、病死の可能性もあるから)

花丸(少しでも危険な方がいい。かな)

花丸「じゃぁ、適当にお散歩する?」

ダイヤ「そうしましょう」
0385名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/09/24(火) 08:07:07.65ID:S45yr1TV
長ったらしくて冗長に感じる部分はあるけどクソ丁寧ってだけっしょ
序盤(生きたいけど嫌な思いさせたくない)
中盤(葛藤からの卑屈と希望?)←イマココ?
マジならまだ中盤なのかって感じはするが

花丸のは伏線とかじゃなく重要な過程じゃろな
むしろ伏線はダイヤの描写に隠されてるのでは?
0397名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/30(月) 06:32:46.47ID:aITUFeZX
花丸「いうべきじゃないのは分かってるけど、言っていいずらか?」

ダイヤ「何を。と聞き返しても?」

花丸(笑うようにそう言ったダイヤさんは)

花丸(冗談です。と品の有る笑みを浮かべて、先を促してきた)

花丸「この一週間、幸せだったと、多分、言える」

花丸「喜ぶようなことじゃないけど、嬉しいなんて、言っちゃいけないけど」

花丸「マルのことを本当に大切に思ってくれる親友がいると分かったから」

花丸「夢みたいで冗談だと鼻で笑いたくなるようなことを信じて、付き合ってくれる先輩がいるから」

花丸「マルは、一人ぼっちじゃなかったんだなぁ……って、分かって」

花丸(死んでもいい。その考えは安易だったんだって)

花丸(相手のことを考えているようで、思っているようで)

花丸(まったくためにならないことだったんだなって)

花丸(でも、生きたいなんて、言えないよ)

ダイヤ「善子さんは悪ふざけの多い後輩ですわ。鞠莉さんと組んで余計なこともする」

ダイヤ「本当に、手のかかる生徒」

ダイヤ「ですが、悪ふざけに死を持ち出すような人ではありません」

ダイヤ「それを信じず、振り払ってどうしますか」

ダイヤ「もしその信頼を裏切って冗談だったのなら、二度としないように叱ればいい」

ダイヤ「冗談みたいなことだからこそ、信じて、真剣に考えて、それが杞憂で終わればいいと付き合う」

ダイヤ「わたくしは、確たる証拠がなければ何もしないほど、厳格な人間ではありませんので」

ダイヤ「茶目っ気のある生徒会長だと、どうぞ笑ってください」
0398名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/30(月) 06:42:47.04ID:aITUFeZX
花丸「笑わないよ」

花丸「笑顔にはなるけど、笑わないよ」

花丸(答えながら、目を伏せる)

花丸(マルは笑顔なのかな)

花丸(本当に、そんな顔が出来てるのかな)

花丸(大切にされていて、思われていて)

花丸(すごく……すごく、嬉しくて)

花丸「ダイヤさん」

花丸(手を掴むと、ダイヤさんは止まってくれた)

花丸「善子ちゃんを、お願い」

花丸「マルにはどうにもできない。遺書を用意することすらできなかった」

花丸「苦しめたくないのに、辛い思いさせたくないのに……」

花丸「もう、善子ちゃんには会えない。声もかけられない」

花丸「だから、マルの代わりに、善子ちゃんをお願いしたいずら」
0399名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/09/30(月) 22:06:02.02ID:aITUFeZX
ダイヤ「申し訳ありませんが、それは出来ませんわ」

花丸「どうして?」

ダイヤ「私では、代わりになることができないからです」

ダイヤ「善子さんにとって、花丸さんは唯一無二」

ダイヤ「どれだけ繰り返し、いくつもの国木田花丸という存在を見てきたとしても」

ダイヤ「結局のところ、善子さんにとっての花丸さんはたった一人」

ダイヤ「国木田花丸の代役として、黒澤ダイヤは機能しません」

ダイヤ「幾百もの慰めの言葉を並べたとしても、善子さんを救うことは不可能です」

花丸「不可能は、ないんじゃないずらか?」

花丸「それが可能だって、見せてくれるはずじゃなかったずらか?」

ダイヤ「それは、花丸さんや善子さん、わたくしたちが生きている間だけです」

ダイヤ「誰か一人でも欠けた瞬間、可能は不可能となり、絶対は壁となる」

ダイヤ「分かるでしょう? 善子さんを失った場合のことを、考えた貴女なら」

花丸「………」

ダイヤ「だからこそ……」

ダイヤ「いえ、最期なら、もう少し楽しい話をしませんか?」

花丸(明らかに誤魔化すような切り替え方)

花丸(追及は出来る。けど、してもきっと、ダイヤさんは答えをくれないし)

花丸(喧嘩別れのような形になってしまうかもしれないのが嫌で、疑問を飲み込んだ)
0400名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/09/30(月) 22:22:00.78ID:yTW3rnp7
頑張って下さい
0401名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/01(火) 06:28:45.80ID:uHK1X2NP
花丸「楽しい話なんて、無理ずら」

花丸「覚悟してても、ダイヤさんを信頼してても」

花丸「今でさえ、いつ、嫌な音が聞こえてくるのか不安で仕方がない」

花丸「ねじの外れかけた看板の風に揺れる音、車のエンジン音、滑るタイヤの音」

花丸「走ってくる人の足音、鳥の羽ばたく音」

花丸「一つ一つ、聞こえてくるたびに心臓が痛くなる」

花丸「もう来る。まだ来ない。でもその瞬間に来るのかもしれない」

花丸「平気そうに見えて、気が気じゃないずら」

花丸(無理にでもと笑いながら顔を上げる)

花丸(ダイヤさんは立ち止まったままで、マルを見ていてくれている)

花丸(悲しそうな顔というよりは、困った妹だと言いたげな優しさに満ちた表情)

花丸(自分の胸に触れると、うるさすぎるほどの鼓動を感じる)

ダイヤ「手、握っていますか?」

花丸「………」
0402名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/01(火) 06:40:36.69ID:uHK1X2NP
花丸(さっき握ったままの、ダイヤさんの手)

花丸(握られるままだったその手は握り返してきて)

花丸(困った顔は、柔らかい笑顔へと変わる)

花丸「……巻き込まれるかもしれないずら」

ダイヤ「かまいません」

花丸「マルの手だけが、残るかもしれないよ」

ダイヤ「そうならないように、引っ張ります」

花丸「一番いやな後悔を、することになるよ」

ダイヤ「後悔しない。何があっても」

花丸「っ……」

花丸(ダイヤさんは、身体ごとマルを向いて)

花丸(その身長差を埋めるために、かがむ)

花丸(見上げるだけだった顔が、真っ直ぐに見えた)

ダイヤ「約束しますわ。いえ、誓うと言いましょう」

ダイヤ「わたくしは後悔しません。巻き込まれたことに恨みも抱きません」

ダイヤ「むしろ、信じ、託してくれたことに感謝します」

ダイヤ「だからこそ、わたくしは不可能を可能にすると言いました」

ダイヤ「その信頼に報いるために、花丸さんが、善子さんが、わたくしたちが」

ダイヤ「みながみな、望む未来を得るために」

ダイヤ「わたくしが証明するとしましょう」

ダイヤ「……貴女は、生きていても良いのだと」

花丸(ダイヤさんはそう言って、急に抱きしめてきた)

花丸(強く、優しく、温かく)

花丸(嫌なことを忘れられるくらいに、包み込んでくれた)
0404名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/02(水) 06:41:56.02ID:9YdFHnrw
花丸「マルが……生きていい?」

ダイヤ「そうです」

ダイヤ「善子さんも花丸さんも、花丸さんの死が運命であると考えている」

ダイヤ「ですが、もしもそうではないのだとしたら?」

ダイヤ「花丸さんは過程であって、死という結果とは別だったら?」

花丸「それは、おかしいずら」

花丸「ダイヤさんが言ったはずだよ」

花丸「マルは呪術にかかわっているせいで死ぬことになってるって」

花丸「なのに、生きていいなんて――」

ダイヤ「黒魔術の中断をする高知尾が出来れば死ななくて済む。という可能性もお話ししたはずです」

花丸「確かに、言われたずら」

花丸「でも、今から中断できるずらか?」

ダイヤ「できません」

ダイヤ「止めるには、少なくとももう一度月曜日に戻らなければならないかと」

ダイヤ「それに……」

ダイヤ「花丸さんの日曜日における何らかの接点を知らなければなりません」

花丸「なるほど。つまりダイヤさんは善子ちゃんを止める気なんてないずらね」

ダイヤ「……ええ。正直な気持ちを言ってしまえば」
0406名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/03(木) 06:39:57.84ID:uTKMnn7E
ダイヤ「わたくしも、我儘なので」

花丸「……酷い話ずら」

花丸「死にゆく人の一生のお願いも聞いてくれないなんて」

ダイヤ「その死を、受け入れるつもりがないからですわ」

ダイヤ「それが、何らかの外因的なものではないのであれば、わたくし達もなくなく受け入れるしかありません」

ダイヤ「ですが、そうではない」

ダイヤ「そして何より、それを覆せる可能性があるのならば」

ダイヤ「友人が生きている未来を目指すというのは、当然でしょう?」

花丸(ゆっくりと歩き出しながら話すダイヤさんは)

花丸(時々隣を見ては、マルのことを見つめて、微笑む)

花丸(まだ生きている。まだ大丈夫)

花丸(そのことに安堵しているような笑みを見せられては、反論を並べ立てる気にもならない)
0408名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/04(金) 06:33:35.08ID:1HY+9N+V
花丸「ダイヤさんは怖くないずらか?」

花丸「もしかしたら。じゃなく、マルは死ぬことが確定しているずら」

花丸「傍に居たら、ダイヤさんはそれを見ることになる」

花丸「場合によっては、マルの血を浴びることになるかもしれない」

花丸「その事故、事件は顔形の残る死に方かもしれないし」

花丸「マルだと分からないような凄惨な死に方になるかもしれない」

花丸「なのに、怖くないずらか?」

ダイヤ「………」

ダイヤ「その体が残るか残らないか」

ダイヤ「花丸さんだと判別がつくかつかないか」

ダイヤ「いずれにせよ、怖くはありますわ」

ダイヤ「しかし、知らない場所で失われてしまうよりは良いかと」

ダイヤ「……花丸さん」

花丸「何ずら?」

ダイヤ「生き残ることが出来たら、なにがしたいですか?」
0409名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/04(金) 06:39:43.73ID:1HY+9N+V
花丸「マルは、死ぬずらよ?」

花丸「そんなこと、考えてないし、考える気もないずら」

ダイヤ「では、死ぬと知らなかった一週間前」

ダイヤ「その時に、これからどうするか、考えていたりしていませんでしたか?」

花丸(得難い未来の話)

花丸(失われる命の将来なんて、考えるだけ無駄だ)

花丸(空しくなるし、嫌になる)

花丸(死ぬことがないから、その気持ちが分からないのかと)

花丸(やや厳しくなりそうな視線を地面に向ける)

花丸「……将来について考えたことは、多くないよ」

花丸「特に何も考えてなかった」

花丸「小テストがあるなぁ。とか、勉強しないとなぁとか」

花丸「何でもないことを考えて、特別、大きなことを望んだりもせずに生きていたずら」

花丸「振り返ってみると、漠然としていて、大したことない……かな」
0412名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/05(土) 23:12:28.81ID:hVx4ln6D
ダイヤ「良いではありませんか」

ダイヤ「漠然としていても」

ダイヤ「少しずつ、少しずつ整えて行けばいいんです」

ダイヤ「何度も踏み固めて、不安になって振り返って」

ダイヤ「こうなりたいと、こうありたいと」

ダイヤ「抱いた夢や願いをその瞳に映しながら、歩んでいけばいい」

花丸「ダイヤさ――」

ダイヤ「まぁ、それはわたくしの勝手な考え。ですが」

花丸「えっ」

ダイヤ「人生なんて、そんな簡単な言葉で言い表せるようなものではありません」

ダイヤ「なにより、こんな若輩者が人生を語るなど」

ダイヤ「先生にでさえ、鼻で笑われますわ」

花丸(ダイヤさんは楽しげに笑うと)

花丸(少し軽快な足取りで身を翻して、マルの方に体を向ける)

ダイヤ「ですから、貴女も胸を張ってください」

ダイヤ「今はくだらないと思える日々はきっと、かけがえのない過去になるはずですから」

ダイヤ「もちろん、悔いは残らないように」
0415名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/06(日) 11:29:56.71ID:hg2/qVqo
花丸「ダイヤさん、何を……言ってるずらか」

花丸「マルは死ぬ、ずら」

花丸「百歩譲って……ううん、百年分の一週間を譲ってマルが生き残れるとして」

花丸「その言葉を、マルが覚えていることなんてない」

花丸(なのに、どうしてそんなことを言うのか)

花丸(答えは、簡単だ)

花丸(ダイヤさんは、"今ここにいる"国木田花丸が生き残ると確信しているから)

花丸(そんな考えを見透かしているかのように)

花丸(ダイヤさんは微笑みを向ける)

花丸(この一週間、数多く見てきた優しい表情)

ダイヤ「わたくしは、今の花丸さんにお話ししているんです」

ダイヤ「過去でも、未来でも、別世界でもなく」

ダイヤ「命がかかったこの一週間を共にした」

ダイヤ「今、わたくしの目の前にいる国木田花丸さん。貴女にです」

花丸「死ぬのに?」

ダイヤ「後の死を考えていたら、人と人とが語る言葉は失われてしまいますわ」
0416名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/10/06(日) 11:48:12.47ID:IyEzEAbG
ほし
0417名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/06(日) 12:45:53.85ID:hg2/qVqo
花丸「……そうだけど」

ダイヤ「不満ですか?」

花丸「ううん、ダイヤさんの言ってることは最もずら」

花丸「マルだけじゃなく、人は死ぬ」

花丸「それを考えて何も話さないのなら、死ぬまで言葉は不要ずら」

花丸「………」

花丸「ダイヤさん、何をするつもりかは知らないけど」

花丸「無理だけは、しないで欲しいずら」

花丸「……どうせ、次に行くんだから」

花丸(マルは遺書を用意できなかった)

花丸(ダイヤさんは止める気がない)

花丸(こうなってしまえば、次に行くことになるのは確実だ)

花丸「無理に無駄なことしなくていい」

花丸「ダイヤさんが傷つくだけずら」

ダイヤ「無駄ではありませんわ」

ダイヤ「無理をする必要があります」

ダイヤ「傷つくでしょう。苦しむでしょう」

ダイヤ「しかし、決して無駄にはなりません」
0418名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/06(日) 15:05:08.62ID:hg2/qVqo
花丸(ダイヤさんはそういうと、申し訳なさそうな顔をする)

花丸(笑顔が多い)

花丸(でも、その顔も何度も見た)

花丸「ダイヤさん」

ダイヤ「なにか?」

花丸「ダイヤさんはな」

花丸(何をしようとしているのか)

花丸(何度聞いても教えてくれなかったこと)

花丸(今なら教えてくれるかもしれない)

花丸(その考えを口にしようとした矢先、体が浮いた)

花丸「にを」

花丸(ぶつ切りの言葉に殴りかかるような、叫んでいるようにも聞こえるほどの人の声)

花丸(目の前にいるダイヤさんは、マルからゆっくりと離れていく)

花丸(伸ばした手は、掴むのではなく押し飛ばすために開かれていて)

ダイヤ「証明を――」

花丸(ふと――ダイヤさんが視界から消えた)

花丸(横切っていく何かは瞬く間もなく過ぎ去って)

花丸(耳に残った酷くぶつかった大きな音を塗り替えるように)

花丸(頂きもののトマトを落としてしまったような音がして、どこかの誰かの悲鳴が轟く)

花丸(その理由に気付くよりも先に、背中がフェンスにぶつかってガシャンっと尻もちをついた)
0419名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/06(日) 17:22:59.16ID:hg2/qVqo
「ねえ! どこか怪我は!?」

「大丈夫!? 返事して!」

花丸「……ぇ?」

「分かる?」

花丸「ぁ……ぅ、うん……」

花丸(目の前の見知らぬ誰かの優しい問いかけ)

花丸(視界の外、左奥で響く怒号と悲鳴)

花丸(何が起きているのか分かっているから、考えることを頭が拒絶する)

花丸(だけど……体は動く)

花丸「ダイヤさんっ!」

「待って! 行っちゃダメ!」

花丸「放して!」

花丸(一瞬掴まれた手を振り解いて、躓きながら前へと進む)

花丸(見ちゃいけないなんて、分かってる)

花丸(でも、見なきゃいけないんだと……思った)
0420名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/06(日) 19:37:27.36ID:hg2/qVqo
花丸「………」

花丸(艶がかっていて、まっすぐに降りていた黒髪は)

花丸(血で赤黒く汚れて、べったりと……ダイヤさんらしき人の肌に張り付いていて)

花丸(しなやかに伸びていた両腕は、伸ばしていた影響か不自然な方向にねじ折れて)

花丸(ダイヤさんは……ダイヤさんは……)

花丸「っ……」

花丸「これが……ダイヤさんの策?」

花丸「マルを庇って、自分が死んで」

花丸「それで……マルが、生きていて良いって……?」

花丸(膝が折れて、座り込む)

花丸(お尻を打った痛みはべちゃりとした音に流されて、消える)

花丸(マルが、諦めていたから?)

花丸(だから、こんな手しかなかったの?)

花丸(手が、タイツが、スカートが)

花丸(何もかもが真っ赤に染まって……やがて、真っ暗になる)

花丸(直前に頬を打つ痛みと、生臭さを感じたけれど)

花丸(目を開けることは、出来なかった)
0421名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2019/10/06(日) 20:49:16.86ID:/CPsOyiA
どゆこと 笑
0422名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/10/06(日) 21:43:37.03ID:gvyleUFD
描写的に車が突っ込んできてダイヤが引き殺されたんだろ
>横切っていく何か/酷くぶつかった音
0423名無しで叶える物語(ますのすし)
垢版 |
2019/10/06(日) 23:42:19.39ID:pWRB3H9T
一気に全部読んだ
こういう話好き、続きが気になる
0424名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/07(月) 06:18:10.34ID:d6FOSlov
花丸「ぅ……」

善子「………体は起こさない方がいいわよ」

花丸「よ、しこ……ちゃん?」

善子「ええ」

花丸(気が付いたのは、明らかに病院)

花丸(物語の中のように個室なわけもなく)

花丸(ほかの患者さんへの面会もあってか、少し賑やかな病室の中で)

花丸(静かに椅子に座っている善子ちゃんは、文庫本から顔を上げた)

善子「怪我はないって。精神的なもので一時的に気を失っただけだろうから、明日にでも出られるそうよ」

花丸「そ……か」

善子「……聞かないのね」

花丸「理由がないから」

花丸「ダイヤさんが、もう……いないのは」

花丸「この目で、ちゃんと……確かめたずら」
0425名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/07(月) 06:28:56.37ID:d6FOSlov
善子「初めてよ」

善子「初めて、こんなことになった」

善子「人を頼ろうとしなかったせいもあるけど」

善子「自分が同じことをして、それで救える自信も確証もなかったからやれなかったのよ」

善子「それを、ダイヤはやった」

善子「花丸が死ななければいけない理由はない」

善子「そんな運命なんてない」

善子「たったそれだけの証明の為によ?」

花丸「うん……ダイヤさんは、何回も証明するって言ってた」

花丸「まさか、こんな方法だなんて、思わなかったけど」

花丸「そっか……だから、だったんだ」

花丸(何度も見せた悲しそうな表情も)

花丸(頼り切っているマルに対して、"ごめんなさい"と言ったのも)

花丸(マルに、自分が死ぬ瞬間に立ち会わせることへの、申し訳なさだったんだと)

花丸(今更、分かった)
0426名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/07(月) 20:38:06.71ID:d6FOSlov
花丸「ルビィちゃん達は?」

善子「ダイヤのこともあったから、私に任せてって帰したわ」

善子「みんな、あんたも傷ついてるだろうって理解してくれたんだけど……」

善子「泣いたりしないのね」

花丸「……うん」

花丸(不思議なほどに、泣けそうな気がしない)

花丸(善子ちゃんも、そうなのかと目を向けると)

花丸(何も言わずに、頷いた)

善子「ルビィは花丸の心配してたわ」

善子「ダイヤのことよりも、花丸のこと」

花丸「………」

善子「………」

花丸(ルビィちゃんがダイヤさんよりもマルを気遣う)

花丸(その意味が分かるかと問われるような沈黙に答える)

花丸「……知ったのかもしれない」

花丸(ダイヤさんはルビィちゃん宛の遺書を用意してるって言ってた)

花丸(今回の件だって、絶対に書いたはずだ)

花丸(でも、だとしても)

花丸(ルビィちゃんは、マルに怒鳴るべきだ)

花丸(なんで、どうしてって)

花丸(善子ちゃんに任せずに、起きるのなんて待たずに)

善子「最初から」

花丸「………」

善子「ルビィ、最初からそうだったんじゃないの?」
0427名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/07(月) 21:49:04.74ID:d6FOSlov
花丸「……え?」

花丸(マルの返答からは脈絡のなさげな呟き)

花丸(なぜか浮かべる訝し気な表情)

花丸(まともな答えも返せずに、困惑だけが残る)

善子「……いや、さすがに無いか」

善子「ダイヤにあんなことがあったのに、花丸のことばかり気にしてるからって」

善子「それは、理由にならないわよね」

花丸「……どうかな」

善子「理由があるの?」

花丸(考える。思い出す)

花丸(たった一週間の、ルビィちゃんとの記憶)

花丸(その中にある、善子ちゃんの突拍子もない言葉にぶつけられる何か)

花丸(ダイヤさんを巻き込むと決めた黒澤家で)

花丸(ルビィちゃんはまるで全部を分かっているかのような話をした)

花丸(そして今日の昼休み、ルビィちゃんは思わせぶりな様子で、"花丸ちゃんをよろしくね"と言った)

花丸(最近のことを思えば、初めから知らなくてもルビィちゃんが何かしら気付く可能性は十分あるけど)

花丸「ルビィちゃんにしては、察しが良いように思えた」

善子「……私には、そんな風に感じなかったけど」

善子「花丸にだけ見せてたのかしら」

花丸(そう考えこむ善子ちゃんはおもむろにマルへと目を向けてきて)

花丸(手に持つ文庫本のカバーがくしゃりと、音をたてた)

善子「ねぇ、花丸……私と一緒に、戻る気はない?」
0428名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/10/08(火) 08:43:11.84ID:mT8FXKgq
ここからが転結かね
起(善子のループ発覚)
承(解決法の模索と葛藤)
転(花丸の生存)
結()

くっそなげぇ
0433名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/10(木) 06:29:51.79ID:xjMIOhfh
善子「今まで、私一人でしか繰り返したことはないけど」

善子「話してたように花丸もこの呪術の術者に適用されるなら」

善子「二人そろって、同じ月曜日に戻れる可能性は十分ある」

善子「なにより、花丸が戻れば"失われた日曜日"が判明するかもしれない」

善子「過去、繰り返してこなかった記憶が持ち越せれば……だけど」

善子「可能性があるなら、やらない手はないでしょ?」

花丸「………」

花丸「一日、考えさせて」

花丸(でもそれで救えなかったら?)

花丸(何も思い出せず、無意味でしかなかったら?)

花丸(後ろ向きな言葉はいくらでも考えられるし、口に出せる)

花丸(でも、それは無意味だと押し込んで、時間を求める)

花丸(そこに意味があるか無いかは、前例も何もない以上考える必要はない)

花丸(必要なのは、マルがそれをするかしないかだ)

善子「ん……時間はあるし、良いわよ」

善子「明日また来るわ」
0434名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/10(木) 06:34:13.57ID:xjMIOhfh
花丸「帰るの?」

善子「うん。もうすぐ、面会時間も終わりだし」

善子「花丸のところのおばさんたちも来るだろうから」

花丸「……そっか、そうだよね」

花丸(女の子らしくない気はしたけど、一日くらいなら制服だし着替えはいらないと思ったけれど)

花丸(ダイヤさんの血で染まった制服は確かにもう使えないなと、考え直す)

花丸(マルは……最低だ)

善子「……言っておくけど、戻ればダイヤが生き返るから。なんて考えないで」

善子「そんな考え方してたら、私と同じになる」

善子「それは良くないわ」

花丸「でも、マルも泣けない」

花丸「悲しいはずなのに、全然……何ともなくて」

花丸「嫌になるくらいに、冷静で」

花丸「マルは――」

善子「あんまり考えない方がいいわよ」

善子「その方向に行くとね。死にたくなるから」

善子「ダイヤが護ってくれた命なんだから、大事にするべきよ」
0435名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/10(木) 06:35:50.71ID:xjMIOhfh
花丸「経験談?」

善子「違う」

善子「でも、似たような感じ」

花丸(善子ちゃんは文庫本をカバンの中にしまうと)

花丸(見計らったように聞こえてきたばあちゃんたちの声に、返事をする)

善子「じゃぁ、また明日」

花丸「……うん」

花丸(善子ちゃんが帰って、ばあちゃんたちが来て)

花丸(連れだって入ってきた警察の人に)

花丸(何があったのか、どうなったのかのかを簡潔に話す)

花丸(正直、あの瞬間は何が起こったのかは分からなかった)

花丸(押されたと思ったら、視界からダイヤさんが消えて)

花丸(少し離れた場所でダイヤさんが変わり果てていたとことくらいだ)

花丸(ガスと、血と、焦げたようなにおい)

花丸(思い出したくないその感覚を察してか)

花丸(目撃証言などもあって、非があるわけではないからと深くは聞いて来なかった)
0436名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/10(木) 06:42:17.39ID:xjMIOhfh
花丸(おばあちゃんたちも帰って)

花丸(周りの人たちがだんだんと寝静まっていく中)

花丸(おばあちゃんから渡された封筒を、こっそりと月明かりに透かして見る)

花丸(着替えと一緒に持ってきてくれた、郵便)

花丸(マルが学校に行ってる間に届いたと言ってたけど、それは多分、違う)

花丸(切手は確かに貼ってあるけれど、郵便局の押印がない)

花丸(直接郵便受けに入れられたやつだ)

花丸(そして、その差出人は……)

花丸「黒澤ダイヤ」

花丸(ダイヤさんらしい、背筋が伸びているような字で書かれたダイヤさんの名前)

花丸(中に入ってるのは、手紙)

花丸(きっと遺書だと、何となくだけど……想像がついていて)

花丸(開けてみた中身は、間違いなく遺書だった)
0441名無しで叶える物語(すだち)
垢版 |
2019/10/13(日) 11:37:43.66ID:4gWAUcx6
捕手
0442名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/13(日) 18:31:43.49ID:6sUCCMo4
ダイヤ【花丸さん、申し訳ございません】

ダイヤ【きっと、嫌なものを見せ、経験をさせてしまったことでしょう】

ダイヤ【ですが、貴女が生きて良いと証明するにはこれ以外に方法はなかったんです】

ダイヤ【そして、これを示すことこそが私の我儘】

ダイヤ【ですから、どうか背負わないでください。生きてください】

ダイヤ【善子さんは過去に誘われることでしょう】

ダイヤ【私が死に、花丸さんが生き、善子さんとともに過去へと戻れば】

ダイヤ【大きな変化があることかと思います】

ダイヤ【しかし、それで救えるとも救われるとも限りません】

ダイヤ【このまま、戻らずに生きていくことを推奨します】

ダイヤ【なにより、戻られることは私の望むところではありませんので】

ダイヤ【言ってしまえば、そこまでが私の我儘です】

ダイヤ【もし、私の我儘など知らないと過去へとお戻りになられるのならば】

ダイヤ【一つだけ、注意しておくことがあります】

ダイヤ【花丸さんの死が運命ではないと証明されましたが、"死"は運命である可能性が高い】

ダイヤ【誰かが、何かが。貴女にそれを強いている可能性がある】

ダイヤ【"死"というよりは、"不幸"を確定させる呪術の類】

ダイヤ【私は、そう考えています】

ダイヤ【そういったものの、強力な呪いを探してみてください】

ダイヤ【私には探す時間がありませんでしたが、戻るのならその時間もあるはずですから】

ダイヤ【花丸さん、無理をなさらないでくださいね】
0443名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/10/13(日) 18:59:26.98ID:9mp8ei0X
ほし
0444名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/13(日) 21:38:29.75ID:6sUCCMo4
花丸「ダイヤさん……っ」

花丸(文字の羅列では、表情を見ることは出来ない)

花丸(けれど、小説の描写が空想を孕むように)

花丸(遺書をしたためるダイヤさんが微笑んでいるのが、分かる)

花丸(眉を顰めて、困ったように)

花丸(どうせ無駄なんだと思いながら"戻らないで欲しい"なんて願いを呟いて)

花丸(戻れば、記憶のないダイヤさんが戻ってきてくれる)

花丸(この一週間、マルを支えようと、救おうと)

花丸(そして、本当に救ってくれた記憶のない、ダイヤさんが)

花丸(そんな考えで戻るかもしれないから。背負わないで。なんて書いて)

花丸「無理しないでください……じゃないずら」

花丸「善子ちゃんも認めるほどの無理をしたのは、ダイヤさんずら」

花丸(善子ちゃんすらしなかった、代理の死)

花丸(それを、自分の我儘だからって実行したダイヤさんは間違いなく無理しすぎてた)

花丸(マルと善子ちゃんに、希望はあると示すために)

花丸「それを分かってて……マルが、善子ちゃんが、ハッピーエンドを諦めると思ってるずらか?」

花丸(思ってないから、自分の考えを最後に書いた)

花丸(そうだよね? ダイヤさん)

花丸「不幸を確定させる呪術……日曜日にマルが触れた何か」

花丸「それを、善子ちゃんと一緒に戻って突き止める」

花丸(次で、何としてでも終わらせる)
0449名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/14(月) 11:32:36.79ID:robZ1+Pe
花丸(翌日、土曜日ということもあって)

花丸(朝の内から、善子ちゃんと果南ちゃんがお見舞いに来てくれた)

花丸(千歌ちゃん達も一緒に……という話もあったけれど)

花丸(大勢で押し掛けるような状況ではないだろうと配慮してくれたらしい)

花丸(この世界を置いて過去へ行く覚悟を決めてるなんて知られたら、どう思われるだろうか)

果南「調子はどう? 平気?」

花丸「うん、大丈夫」

果南「なら、お腹空いてない?」

果南「退院したら食べに行こう。奢ってあげるから」

果南「善子ちゃんも一緒にさ」

善子「病院食食べたんじゃないの?」

果南「そんな味気ないものじゃお腹いっぱいにならないでしょ」

花丸(病院食、昨日の夜は食欲がなくて食べなかったし)

花丸(朝食は、まだ)

花丸(嫌なことがあろうとなかろうと空腹になる食欲の卑しさが、おなかの底から伝わってくる)

花丸(果南ちゃんの厚意、善子ちゃんの気遣い)

花丸(でも……断るのは、空気を悪くしちゃいそうだから)

花丸「うん、満足できないずら」

花丸「おばあちゃんたちには話しておくね」

善子「退院するからって迎えに来てくれるだろうし……どうする? 一旦家に帰る?」

花丸「そうする。善子ちゃん達も一緒に」

善子「ん、分かった」

果南「…………」
0450名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/14(月) 13:51:32.51ID:robZ1+Pe
花丸(明るくなりすぎるのは、不自然)

花丸(かといって、気落ちしすぎるのも不自然)

花丸(だけど……)

果南「………」

花丸(果南ちゃんは、何か言いたそうな顔をしてる)

花丸(ダイヤさんが車に轢かれた現場にいたんだから、聞きたいことがあっても不思議じゃない)

花丸(マルがダイヤさんに対して抱いている想いよりも)

花丸(果南ちゃんがダイヤさんに抱いていたものの方が、きっと、ずっと大きいから)

花丸(マルのせいだと、正直に言うべきなのかな?)

花丸(でも、それを言ってどうにかなる?)

花丸(果南ちゃんが手を出す? 頬を叩いて、怒鳴って、想いの限りの怒りをぶつけてくる?)

花丸(置き去りにする過去に、そんなこじれる真実を告げることが、果たして意味あるのかな)

花丸(いや、置いて行くからこそ……すべきことかもしれない)

果南「とりあえずは、退院してからにしよっか」

花丸「……そんな顔、してたずら?」

果南「ちょっとだけね」

花丸(そう言った果南ちゃんは、ダイヤさんのように微笑んで見せた)
0451名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/14(月) 19:12:39.59ID:robZ1+Pe
花丸(大きなけがもなく、退院することになったマル)

花丸(その一方で、ダイヤさんは明日にも告別式が執り行われ……)

花丸(月曜日ではあるけれど、通夜が行われる)

花丸(そんな中、呑気にお昼を食べに行くのはと)

花丸(今更ながらに思うけれど……連れ帰られた部屋で、新しい洋服に着替える)

花丸(マルが最後に見たダイヤさんは、酷い状態だった)

花丸(あの状態では、面会もままならない)

花丸(……果南ちゃんにも、話さなきゃ)

花丸(果南ちゃんは何か言いたそうだった)

花丸(マルが何か言いたいことも、察していた)

花丸(あの雰囲気は、責めることも怒鳴ることもきっとない)

花丸(だとしても、そうじゃなかったとしても)

花丸(マルは、ちゃんと向かい合うべきだ)
0452名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/15(火) 05:31:59.67ID:UuVbysGf
花丸(結果から言うと、出かけることは出来なかった)

花丸(昨日の今日で、出かけようとするマルをおばあちゃん達が止めたから)

花丸(マルは大丈夫と言ったけれど)

花丸(果南ちゃんがそれはそうだと、申し訳なさそうに連れ出すことを諦めた)

花丸(交通事故に遭いかけた。友人が目の前で轢き殺された)

花丸(そんな経験をした直後に、その危険がある場所にノコノコ出ていくのは)

花丸(確かに、精神的にも危うくて認めがたい)

花丸(出かけることのできなかったマル達は、3人、マルの私室に集まっていた)

果南「少し軽率だったよ。ごめんね」

花丸「ううん、平気ずら」

善子「そりゃ、花丸が平気って言っても、向こうは気が気じゃないわよね」

花丸「……うん」

花丸(送り出したその数時間後には、遺体になって帰ってくるかもしれない)

花丸(一度そう思ってしまえば、持ち直すのは、簡単じゃない)
0453名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/15(火) 06:31:19.68ID:UuVbysGf
善子「じゃ、私はしばらく出ていくわ」

花丸「え?」

善子「花丸に話があるんでしょ?」

果南「んー……いや、善子ちゃんもいていいよ」

果南「その方がよさそうな気がするしね」

花丸(直観的に、善子ちゃんがマルとダイヤさんの件に関わっていたと考えているのか)

花丸(果南ちゃんは少し考えた程度で、善子ちゃんの同席を許可する)

善子「そう。じゃぁ聞くわ」

果南「そう身構えなくてもいいよ。別に責めるつもりはないから」

花丸「……怒らないずらか?」

果南「理由がないし、意味もないでしょ」

果南「ダイヤを車道に突き飛ばしたって言うなら話は変わるけど」

果南「そういうわけじゃないのは、もう分かってるからね」

果南「むしろ、ダイヤが花丸ちゃんをフェンス側に突き飛ばしたって聞いてるよ」

花丸「うん、そうずら」

花丸「ダイヤさんが、マルを助けてくれた」
0454名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/15(火) 06:42:11.00ID:UuVbysGf
果南「私達が聞きたいのは、たった一つ」

果南「ダイヤがこうなることを分かってたのかどうかってこと」

果南「だってさ、分かるでしょ?」

果南「最近のダイヤは花丸ちゃん達を最優先にしてた」

果南「帰りのことを考えれば、花丸ちゃんだけ。かもしれないけどね」

果南「直近の授業なんて、あれだよ?」

果南「生徒会長権限まで使って、1年生のクラスに行ってた」

果南「こういうのもあれだけど、おかしいよね?」

花丸「………」

花丸(疑問はもっともだ)

花丸(証拠は十分、あからさま過ぎてヘンゼルとグレーテルも迷いなく帰れるくらいに)

果南「だから、ダイヤが車に轢かれて、そこに花丸ちゃんが言合わせたって聞いた時に思ったんだよ」

果南「ダイヤはこうなることが分かってたから」

果南「ずっと、花丸ちゃん達の傍に居たんじゃないかって」
0455名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/10/15(火) 08:44:19.69ID:JxgpgFQg
果南の学のある先輩感すこ
脳筋が駄目とは言わないけどやっぱ優しい先輩だよね
0457名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/15(火) 21:28:35.12ID:UuVbysGf
果南「聞いといてアレだけど、もしも何か言えない事情があるなら言わなくていい」

果南「誰かに何か言われてるとか、それを言うことで……何か、悪い影響があるとか」

善子「………」

果南「そういうのがあったら、嫌だからね」

花丸(果南ちゃんは、善子ちゃんを見た)

花丸(まるで、善子ちゃんがたしなんでる黒魔術が関係してると言いたいみたいに)

花丸(対した善子ちゃんは少し考えて、口を開く)

善子「……悪い影響があるかないかで言えばある」

善子「ダイヤみたいに、自分を犠牲にしそうだから」

花丸「善子ちゃんっ」

善子「隠す意味がないわ」

花丸「でも……」

善子「どうせ、大方分かってるわよ」

花丸(果南ちゃんを一瞥した善子ちゃんは)

花丸(果南ちゃんの表情が変わらないのを見てため息をつくと、マルを見て苦笑する)

善子「果南の予想してる通り、ダイヤは知ってたわ」

善子「それと……私と花丸もね」
0458名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/16(水) 06:36:15.32ID:GcwGbGwu
花丸「ただ、ダイヤさんが死んじゃうのは予想外だったずら」

花丸「果南ちゃんはもう、分かってるかもしれないけど」

花丸「本当は、ダイヤさんじゃなくて、マルが死ぬはずだった」

花丸「それが運命だと思ってたずら」

花丸「だけど、ダイヤさんはそうじゃないって、死ぬ運命なんかじゃないって」

花丸「たった、それだけの為に……マルを護ってくれたんだ」

果南「………」

花丸(果南ちゃんは黙って聞いていてくれて)

花丸(善子ちゃんから引き継いで話したマルが口を閉ざすと)

花丸(善子ちゃんとマルを交互に見た視線が、マルへと落ち着く)

果南「それが運命だって思ってた理由は?」

善子「私よ」

善子「眉唾だけど、黒魔術で一週間を繰り返してるのよ」

果南「それはまた……突拍子もないね」

花丸(呟く果南ちゃんは逡巡するように目を伏せると)

花丸(すぐに、善子ちゃんを見た)

花丸(いつもの快活さというよりは、真剣さが勝る表情で)

果南「まぁ、いいか。信じるよ」

善子「……本気?」

果南「疑う理由がない」

善子「非科学的だって思わないわけ?」

果南「思う。けど、ダイヤと花丸ちゃんと善子ちゃんの優しさを信じるよ」

果南「それだけで、疑う理由はなくなるね」
0459名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/16(水) 06:44:07.32ID:GcwGbGwu
善子「でも、だって……」

果南「前は信じて貰えなかった?」

善子「っ」

果南「それは……記憶にないけど、申し訳ないと思う」

花丸(果南ちゃんは、"別の果南ちゃんの不信"を、善子ちゃんに謝る)

花丸(善子ちゃんの繰り返しているという非科学的で、ありえないことを信じてるからこその言葉は)

花丸(目を見開いた善子ちゃんの進み出そうな足を、引っ込める)

果南「私が信じるのも、ダイヤの犠牲があったからこそ」

果南「こんなことがあって、花丸ちゃんや善子ちゃんがふざけたことを言わないと信頼してるからこそ」

果南「だから、何もない状況で言われても、きっと私は信じなかったと思う」

果南「この立場になって初めて、信じてあげるべきだったのに。と、思うよ」

果南「ごめんね。善子ちゃん」

善子「そん……あや……謝られても、困る」

果南「そうだね」

果南「ダイヤは死んだ。花丸ちゃんを庇って」

果南「だから……と言ってもいいのかな? 二人とも、また繰り返すつもりだったりするんじゃない?」

花丸「………」

善子「……まさか」

果南「うん、それ。私も一緒に行くことって出来ないかな?」
0461名無しで叶える物語(すだち)
垢版 |
2019/10/16(水) 23:01:51.72ID:/aes7X0K
保守
0462名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/17(木) 06:35:41.92ID:UtVk88yt
果南「ダイヤがいなくなったこの世界」

果南「可能なら、みんなでダイヤと花丸ちゃん達を助けるために記憶を保持して戻りたいって思う」

果南「ううん、そうすべきだと思う」

果南「いなくなった後、私達が消えるのか、残って、また別の私達となるのか」

果南「それは観測できない以上、考えても仕方がないことだから」

果南「人の生死がかかってるんだから、やれるべきことを、やりつくそう」

善子「………」

花丸「それって、大丈夫なの?」

善子「まず、可能か不可能かで言えば、"可能かもしれない"って言うことになる」

善子「今までは私一人で戻って来たし、魔術書には人数制限も何も書いてなかったからね」

善子「ただ、"途中参加"が可能とは限らないわ」

善子「花丸は関わってる可能性があるから連れて行けるけど、果南達は……こういうのは悪いけど、魔術とは無関係でしょ?」
0463名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/17(木) 06:42:20.51ID:UtVk88yt
果南「そうだね」

果南「………」

花丸「果南ちゃん、その考えは……殺す可能性もあるって分かって欲しいずら」

果南「え……顔に出てた?」

花丸「少し」

花丸(本当は、深刻そうな表情で黙り込んでいただけ)

花丸(でも、マルも思えば似たようなことを考える必要はあったから)

花丸(果南ちゃんには申し訳ないけど、一緒に考えさせて貰おうと便乗する)

花丸「成否に関わらず連れて行くってだけなら、可能だよね?」

善子「ん、そりゃね」

花丸「その場合、魂か肉体か。片方か両方か。何がどうなるのかは分からないけど」

花丸「その結果なんて気にせず、テストケースの一つとしてやってみる」

花丸「果南ちゃんはそんなこと、考えてるよね?」

果南「驚いた……そうだよ」

果南「もっとも、その場合は私だけの犠牲にして欲しいけどね」

果南「……どうかな?」

善子「どうかな? じゃ、ないでしょ」
0469名無しで叶える物語(おにぎり)
垢版 |
2019/10/19(土) 20:09:13.26ID:JCTYL56P
善子「そんなことして無事で済むとは限らないのよ」

善子「ただ記憶が引き継がれないだけじゃなく」

善子「次の世界では果南の存在自体が消える可能性だってある」

善子「私達がやってるのは呪術や魔術」

善子「そんな、お試しでやっていいことなんてないのよ」

花丸(存在が消える。というのは、脅しが過ぎるかもしれないけれど)

花丸(可能性がある以上、すべきじゃないことは確か)

花丸(だからこそ、ダイヤさんがしたことは特別なんだ)

果南「だったら、ダイヤが死んだことはどうなの?」

善子「花丸がいるから、その辺は問題ないと思ってる」

善子「当然、記憶は引き継がれないだろうけど、存在自体は残るはずよ」

善子「……正直、それでも怖いことをやってくれたわよ。あの人は」
0470名無しで叶える物語(おにぎり)
垢版 |
2019/10/19(土) 20:25:19.11ID:JCTYL56P
花丸(善子ちゃんの愁いを帯びた表情)

花丸(果南ちゃんもその気持ちに理解があるからか)

花丸(くっと下唇を噛むようなしぐさを見せて、一瞬だけ目を細めると善子ちゃんを見た)

果南「ごめん。無神経だったね」

善子「謝らなくていい」

善子「助けようとしてくれてるからだっていうのは分かってるから」

果南「………」

果南「じゃぁ、次の世界の私のことを巻き込んでよ」

善子「信じないでしょ」

果南「信じさせるだけの何かがあればいい」

果南「……例えば、そうだね」

果南「朝でもいいし夜でもいい。次の世界の私に、善子ちゃんか花丸ちゃんが"三人で星は見れた?"と、聞く」

果南「私はきっととぼけるだろうけど、"戻ってきたらそうするって決めてたんじゃなかった?"って、言う」

果南「そう言える理由を聞かれたら、繰り返してるからって切り出す」

果南「私は困惑するだろうけど、受け入れるはず」

善子「いいの? そんな秘密教えて」

果南「困るのは"この私"じゃないからね」

果南「助けさせてよ。善子ちゃんを、花丸ちゃんを」

果南「それと……一人で無理する、生徒会長様をさ」
0472名無しで叶える物語(えびふりゃー)
垢版 |
2019/10/20(日) 11:17:31.80ID:XN7cGSjr
今まで花丸、ダイヤ、果南が善子の言う死の運命やループを証拠もなしに信じていたのはおかしいでしょ。
普通、親友や仲間がどんなに真剣に運命だのループだの言っても、それを心底から信じることはできない。
あまりに非現実的でオカルトだから。花丸が死の運命におびえたり、ダイヤが命を懸ける心情に説得力がない。
作者は果南に善子が合言葉というか秘密を示すことで説得する展開をやりたいがためにあえて避けたのかもしれないが、
善子が花丸やダイヤにループの証拠を示して信じてもらうといった話の筋にすべきだった。
例えば未来を予言して当てて見せるといったように。
0473名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2019/10/20(日) 11:46:53.66ID:lFLok6hT
確証がなければ信じられない人もいるが、確証がなくてもその人を信じて行動する人もいる
ダイヤ達は後者ってだけの話では?

ドラマや映画でも良くいるだろ
裏切り扱いされた主人公を物証もなく信じて味方する仲間
お前はそういうの全てにそんな批判すんのか
0474名無しで叶える物語(おにぎり)
垢版 |
2019/10/20(日) 21:53:16.13ID:FMuTrMd5
果南「いつ、次に行くの?」

善子「早ければ、今日の夜」

花丸「ダイヤさんの告別式に行かないずらか?」

善子「行ってもダイヤには会えないし」

善子「なにより、行かない方がいいと思うわ」

花丸(隣に座る善子ちゃんの手が、強くスカートを握りしめる)

花丸(行かない方がいい)

花丸(そこに込められた感情の強さを察してか)

花丸(果南ちゃんはそっと瞬きをして……氷の溶けた水を口に含む)

果南「そっか」

果南「そうかもね」

花丸「……マルずらか?」

果南「ダイヤを轢いた車の運転手が一番責められる立場にあるけど」

果南「最期、ダイヤの傍に居た花丸についてぐちぐちいう人も中には居るってこと」

果南「特に、状況が状況だったからね」

花丸「………」

善子「花丸を責めたって、どうしようもないんだけど」

果南「黒澤家の長女と地域に密着するお寺の孫とは言え、一般の子」

果南「前者を重要視する人たちにとってはなぜ……ってなるんだよ」

果南「そんなことダイヤが望むはずもないんだけどね」
0477名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/22(火) 14:12:11.27ID:+YDmTmT1
花丸(果南ちゃんと別れて、善子ちゃんと二人きり)

花丸(道を歩いていても、バスに乗っていても)

花丸(そこかしこから聞こえてくるひそひそとした声が)

花丸(もしかしたら自分に向いているのかもしれないと、錯覚しそうになる)

善子「ダイヤといい果南といい」

善子「三年生ってみんなああなのかしら」

花丸「え?」

善子「ダイヤがやったからかもしれないけど、果南も死ぬ気だったわ」

花丸「そう、だったずらね」

花丸(繰り返しの中に飛び込んだ結果どうなるか分からないのに)

花丸(そこに自分を引き込めって、果南ちゃんはやる気だった)

花丸(それこそ、それで自分が死ぬとしても……というくらいに)
0478名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/22(火) 15:20:07.82ID:+YDmTmT1
善子「あんなにやる気になってくれるなら、初めから手を打っておけばよかったわ」

善子「そうすれば、今回で……もしかしたらもっと前で終わらせられてたかもしれない」

善子「最初のダイヤで委縮しすぎたわ」

善子「もう誰も巻き込まない、誰にも嫌な思いさせない」

善子「そればっかりで、協力のための言葉なんて考えすらしなかった」

花丸(善子ちゃんは、罪悪感を感じる笑みを見せる)

花丸(果南ちゃんがあまりにも協力的で、どうすれば信じて貰えるか。なんて話までして)

花丸(次の果南ちゃんとまで協力できるようにしようとしてくれたことが、効いたらしい)

善子「今回だって、花丸が気付いて、ダイヤ信じてくれたからこそで」

善子「それがなければ、私は結局一人でやってたわ」

花丸「……善子ちゃん、分かりやすかったから」

善子「それでよく信じたわよ。果南みたいに、何か取り決めがあったわけでもないのに」

花丸「取り決めは、あったよ」

花丸「善子ちゃんが"ずら丸"って、呼ばなくなったこと」

花丸「マルにとってはそれが、信じるに値するものだったんだ」

花丸「いつのマルが言ったのか知らないけど、次の果南ちゃんにとっての今の果南ちゃんが、マルにとってのそれだったずら」

善子「そっか……失敗だと思ってたけど、そうじゃなかったのね」

善子「お願い聞いといて、良かった」
0479名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/23(水) 06:41:14.29ID:BUu+ZSF4
花丸(本当にそう思っているのか悩ましく思うような表情を見せて)

花丸(善子ちゃんはマルを車道側から遠ざけるように手で制して、赤色の信号機を見上げる)

花丸(月曜日や火曜日)

花丸(最初の頃よりは吹っ切れた顔つきの善子ちゃんは)

花丸(ふと、マルの方に目線を落とした)

善子「ダイヤのこと、悪かったわ」

善子「告別式も葬式も、本当は参加するべきなのに」

花丸「……ううん、仕方がないずら」

花丸「それに、もしかしたら体が残って参加するかもしれないし」

花丸(マルは過去に戻るけど、国木田花丸という存在は消滅せずに残留して)

花丸(これからもこの世界は続いていくのかもしれない)

花丸(観測できない以上、仮説でしかないけれど)

花丸(過去へと遡るような非科学的呪術が現実になるのなら)

花丸(パラレルワールドのような立証のできないものもあると仮定して良いはず)

花丸「悪い方よりもいい方向で考えたい。少なくとも、残していく世界のことは」

善子「……そうね。そうすべき、かもね」

花丸(信号が赤から青へと変わる)

花丸(車が絶対に来ないことを確認してから、ゆっくりと渡っていく)

善子「!」

花丸「大丈夫、マルも一緒ずら」

善子「………馬鹿ね」

花丸(一人先に歩こうとする善子ちゃんの手を、ダイヤさんの代わりに握って)
0480名無しで叶える物語(もみじ饅頭)
垢版 |
2019/10/23(水) 07:35:51.95ID:kH+5ANRY
ほし
0482名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/24(木) 06:43:48.73ID:MzP2Mt4b
花丸(家に帰ると、無事を確認するように駆け寄ってきたおばあちゃん達に笑顔を返して善子ちゃんと部屋に籠る)

花丸(ダイヤさんの事故の件で取材的な何かが群がってくることを善子ちゃんは気にしていたけど)

花丸(マルよりも黒澤家の方なのか)

花丸(いつもと変わらない閑散とした中で、ため息をつく)

花丸「今日、行くんだよね?」

善子「その予定」

善子「何かしたいことあるならそれやってからでも良いけど……どうする? 調べてみる?」

花丸「ダイヤさんが先に調べて何もなかったから、本当に、戻ってからじゃないとダメなんだと思う」

花丸「強力な呪術……それも、魂レベルで拘束する感じの」

善子「魂レベルの拘束ってだけなら、藁人形とかのような"人形呪術"がそれにあたるかもね」

善子「人形に髪とか爪とかを詰めて、それを対象の代替として固定する感じのやつ」

善子「だとすると……いや、さすがに藁人形には荷が重いか。奉納された人形のある蔵が発端かもしれないわよ」
0484名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/25(金) 06:41:23.44ID:D28JBHgR
花丸「……近づいた覚えがない」

善子「最初の花丸が近づいたか、向こうから近づいてきたか……よ」

善子「パッと見た感じ、花丸の部屋にはそれらしい人形もなさそうだしね」

花丸(部屋の中を見回した善子ちゃんは)

花丸(前々から確認していたのだろう、くまなく調べるようなことはせずに呟く)

花丸(供養の為に持ち込まれた人形はあるし、それを安置するための蔵が離れにあるのも事実)

花丸(だけど、厳重に施錠されているはずだし)

花丸(そこには近づかないように小さい頃から言われてきたから)

花丸(最初だろうといつだろうと、不用意にマルが近づいたとは思えない)

花丸(でも、こうなっている以上)

花丸(なにかがあって、マルはそれに触れた)

花丸(例えば、誘われたとか夢の中とか……あるいは)

花丸「ねぇ、善子ちゃん」

善子「なに?」

花丸「その人形って、人の姿で出てきたりすることってある?」
0488名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/28(月) 06:33:27.37ID:RuBNcye6
善子「あるか無いかで言えば、ある」

善子「人形はそもそも人の形をしてるから、それに何らかの霊的影響があって人間の姿になる可能性は十分ある」

善子「でもそういう場合、取るのは大体が子供の姿になるわ」

花丸「人形を持つのがほとんど、子供だから?」

善子「そうね。宿るのは子供の思念が多いらしいから……まぁ、人形が子供の形って言うのもあるけどね」

善子「人形蔵から這い出てきた人形の思念が」

善子「子供の姿で花丸に接触して、拘束する寺の子供として魂レベルでの拘束をされたのかも」

花丸「……じゃぁ、ある意味この繰り返しはその人形による人形遊びってこともあるずらか?」

善子「空の奥で、ケタケタ笑ってるかもね」

善子「考えたくもないけど」

花丸「どうにか、なるずら?」

善子「するのよ。なんとかね」

花丸「次の世界では果南ちゃんが協力してくれる。ダイヤさんも、きっと」

花丸「何とかなるよね?」

善子「ん……何とかするのよ」
0489名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/28(月) 06:39:36.20ID:RuBNcye6
花丸「……善子ちゃんは、お別れの電話とかしないの?」

善子「私がいなくなったからと言って、津島善子が消えるとは限らないからね」

善子「多分、別れ話の記憶は残らないだろうし」

善子「余計なことは出来るだけ避けたい」

花丸「そっか……」

善子「ルビィ?」

花丸「うん、ダイヤさんの件があって、何にもないのもどうかと思って」

善子「電話してもいいとは思うけど」

善子「実はループしてるんですって話をして、どうなるものやら」

善子「取り乱してたりしたわけじゃないけど」

善子「ふざけないでって言われるかもしれない」

花丸「次の世界で、協力して貰うずら?」

善子「花丸がそうしたいなら」

善子「そこは任せるわ。ダイヤと果南で充分だと思うし、正直、ルビィにはあんまり心配させたくない」

花丸「それは、マルも同意するずら」
0491名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/29(火) 06:30:45.23ID:OqHtJZOu
花丸「だけど、ダイヤさん達を巻き込む以上ルビィちゃんにも知られちゃうんじゃないかな」

花丸「そうなったとき、今回みたいに遠ざけるのか認めるのか」

花丸「そこは……決めておきたい」

花丸(何か察している様子で、でも、マルが何も言わないから踏み込んでこなかったルビィちゃん)

花丸(次の世界でも同じようになるとは限らないけれど)

花丸(もし、そういうことになるのだとしたら、マルは)

善子「その時は、その時よ」

善子「私が詰め寄られたら、話すしかないと思ってる」

善子「でも、花丸が何かあるんじゃないかってルビィに言われたときにどうこたえるかは任せる」

善子「その時に私がいれば私が言うし、いなければ私は何も言えない」

善子「今回、ダイヤが目の前で……その、あんなことになって」

善子「その光景を見ることになるのがどういうことか、分かったと思うから」

善子「ルビィに話すかどうかは任せる」
0492名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/10/29(火) 06:40:31.54ID:OqHtJZOu
花丸「……じゃぁ、話す」

花丸(次で終わらせるつもりだから、死ぬつもりなんてないから)

花丸(ルビィちゃんにあんな顔をさせるくらいなら)

花丸(正直に話して、一緒に乗り越える)

花丸(きっと、その方がいい)

花丸「それで、どうする?」

花丸「人形蔵に行ってみるずらか?」

花丸「おじいちゃんたちに話しても、まず間違いなく駄目だって言われるけど」

善子「鍵かかってるんでしょ?」

善子「鍵の場所はわかる?」

花丸「分かるけど……黙ってやるのは」

善子「じゃなきゃダメなんでしょ?」

善子「それとも、どうせならこの世界のおじいちゃん達に話しちゃう?」

善子「何らかの呪術に巻き込まれましたって」」

花丸「信じて貰えるかどうか分からないけど、その価値はある。かも」

花丸「手を尽くす。そう、決めたもんね」

花丸「話してみよう」
0501名無しで叶える物語(すだち)
垢版 |
2019/11/03(日) 15:32:24.68ID:VQ7nBXZP
保守
0503名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/04(月) 13:49:23.65ID:qbsXQ72A
花丸(ダメもとでおじいちゃんたちに話してみると)

花丸(最近の友達の訪問の多さはそれが原因だったのか……と)

花丸(驚きと困惑の半信半疑のような反応を見せて)

花丸(人形蔵にそのような悪さをしたとされる悪意の込められた人形はいないと言いつつも)

花丸(蔵の中に入る許可をくれた)

花丸(ダイヤさんの件もあって、信じ切れなくても信じてくれたらしい)

花丸(酷い言葉にはなるけれど)

花丸(ダイヤさんが身代わりになってくれたのが、とても大きな変化をくれた)

花丸(失敗は出来ない、したくない)

善子「花丸、大丈夫?」

花丸「あ……うん」

花丸(一足先に人形蔵へと足を踏み入れた善子ちゃんに頷いて、続く)

花丸(天井から吊り下げられた薄暗い電球の光)

花丸(大小さまざまな人形が並ぶ棚)

花丸(無数の視線があるようで、不気味だった)
0504名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/04(月) 14:49:12.06ID:qbsXQ72A
花丸「………」

善子「どう? 見覚えあるのとかある?」

花丸「ここ最近見た覚えがあるのは、一つも」

花丸(怯えを捨てて、人形を見る)

花丸(どの人形も先入観のせいか不気味だけど、普通の日本人形や西洋の人形にしか見えない)

花丸(ここに一人なら、ほんの些細なことで人形が動いたとでも錯覚しそうだけど)

花丸(善子ちゃんもいるおかげか、そんなことはなかった)

花丸「善子ちゃんはどうずら?」

花丸「呪術的な力は感じない?」

善子「これっぽっちも」

善子「そもそも、霊感も何もないし分かるわけないでしょ」

善子「……ただ、人形の向き、おかしくない?」

花丸「え?」

善子「ほら、前向いてる人形の中で、横向きの奴がいくつかある」

善子「わざとなのか、そう固定されてるのか……」

花丸「善子ちゃっ」

花丸(マルが止めるよりも先に伸びた善子ちゃんの指先が、横向きの人形に触れた)
0506名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/05(火) 20:14:30.64ID:phnxUT2l
善子「冷たっ」

善子「……まぁ、普通の人形……?」

花丸「善子ちゃん、安易に触るのは危険ずら」

善子「分かってるけど、そうでもしなきゃ意味がない」

花丸(善子ちゃんは恐る恐るといった空気を飲み込むように一歩引くと)

花丸(もう一度踏み込んで、今度は両手で人形の頬に触れる)

花丸(撫でるというよりは、拭う手の動き)

花丸(埃を払うように人形の袖を叩いて――)

花丸「善子ちゃんっ!」

善子「大丈夫」

花丸(躊躇なく、人形を棚から取り上げた善子ちゃんは静かに答えて人形を見る)

花丸(ひっくり返したり、捲ったりとはせず)

花丸(飾っていたぬいぐるみの手入れをするような仕草で人形を払って、また見つめる)

善子「驚いた、花丸。これ市松じゃなく木目込の方の人形よ」

花丸「きめこみ?」

善子「そう。日本人形って言っても種類がいくつかあるんだけど、本体に布を着せるんじゃなく押し込んでる作りのやつ」

善子「衣装がしっかりしてるからぱっと見気付かなかった」

善子「ただ、目がガラスでできてる……暗いからあれだけど、私が見える」
0507名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/05(火) 20:47:01.87ID:phnxUT2l
花丸「普通は違うずら?」

善子「そう。書き込んでたりするのよ。で、これはガラスの目……多分、この子が見てたやつも」

花丸「っ」

花丸(善子ちゃんは話ながらも躊躇することなく、向かい合っていた人形に近づいて、同じように手に取る)

善子「……やっぱり」

花丸「なにかあるずらか?」

善子「書き込まれた目は、書かれてるだけだから実際に映る"世界"がない」

善子「その一方で、ガラスの目は映る世界があるのよ」

善子「透き通ったガラスは世界を通し、濁ったガラスは世界を映す」

善子「その濁ったガラスが"濁った世界"を形成する……多分、この辺り」

善子「……あった」

花丸(善子ちゃんは一人で奥の方に入っていくと、また別の棚から人形を漁り出す)

花丸(ガラスの目をした人形があったのと延長線上にある人形だ)

善子「これも同じ作りになってる。で、多分この対面にも同じのがある」

花丸「どうしてわかるずらか?」

善子「偶然だろうけど、異変が起きてる以上そういった要素が出来上がってる可能性が高いから」

花丸(そう言った善子ちゃんが取り上げたもう一つの人形)

花丸(それもまた、同じくガラスの目をした人形だった)
0508名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/05(火) 21:45:42.61ID:phnxUT2l
善子「……これで世界が作られた」

花丸「どういうことずら?」

善子「花丸でも知ってるんじゃない? "合わせ鏡"の都市伝説」

善子「午前0時に合わせ鏡に映った自分を見ると、未来が見えるとかどうとか」

花丸「聞いたことはある。でも、それは二枚だよね?」

善子「そう。二枚は過去と未来。じゃぁ四枚は?」

善子「答えは、"良くないことが起こる"としか聞いたことがない」

善子「はっきり言って、ネットでよくあるガセネタのようなもの」

善子「でも、四枚で"箱"が作られてるとしたら?」

花丸「四方を鏡で覆った箱……"出口のない世界"ずらか?」

善子「鏡は鏡の世界を映し、その鏡の世界は鏡の中の鏡の世界を映す。無限にね」

善子「それは花丸が言ったように出口のない世界を形成する。しかも、同じことを繰り返し続けてる」

善子「それってさ、"私達の今の世界"と似てるって思わない?」

花丸「……」

花丸(マルが決まった日に死んで、決まった日に戻って、決まった日に死んで、決まった日に戻る)

花丸(世界の繰り返し、鏡の繰り返し、鏡の世界……人形の世界)

花丸「それを……マルが、作った?」

善子「そこまでは分からないけど、その可能性もあるわ」

善子「そこは……戻るしかなさそうね」

花丸(善子ちゃんは人形を元に戻すと、手についた埃を払う)

花丸(一人残すのが不安でついてくるのを待っていると、善子ちゃんは困ったように笑って早く出ましょ。と急かしてきた)
0515名無しで叶える物語(すだち)
垢版 |
2019/11/10(日) 23:10:47.55ID:b+V8BiFa
保守
0517名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/11(月) 18:49:00.98ID:/zFX7abA
花丸(約束の時間、午前一時まで十数分)

花丸(忍び込んだ浦の星女学院の生徒会室で、向かい合う)

花丸(生徒会長の席は……空席だ)

花丸(会うことも、触れることも出来ない)

花丸(告別式も、お葬式も)

花丸(直接家に行くことも出来ないまま、マルはこの世界からいなくなる)

花丸(だからせめて、との我儘を善子ちゃんは許してくれた)

善子「花丸、そろそろ時間」

花丸「分かってるずら」

花丸「善子ちゃん、次の世界でダイヤさんが死ぬことはないよね?」

善子「絶対とは言えないけど、今回みたいなことしなきゃ大丈夫だと思うわよ」

善子「誰かが死ぬことは出来る。でも、死ぬことが出来るだけで、死ぬわけじゃないはずだから」

花丸「……人形呪術、壊せる自信は?」

善子「こういうのもあれだけど、素人に期待する?」

花丸「マル達の中では、プロだよ」
0520名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/13(水) 07:20:16.18ID:OnPtJTSE
善子「期待されても困るけど……まぁ、何とかしましょ」

花丸「うん、なんとかするずら」

花丸(今までがどんなだったのか、マルは知らないけれど)

花丸(善子ちゃんがマルと一緒に死のうと考えるくらいに追い込まれた状況だった)

花丸(だけど、ダイヤさんの命を懸けた証明が希望をくれた)

花丸「人形呪術が関与してる可能性があるって分かって、果南ちゃんたちの協力が得られる」

花丸「きっと、なんとかなるはずだよ」

善子「そうね」

花丸(そうだといいね。と、続けそうな表情を見せた善子ちゃんは)

花丸(ふとため息をつくと、困ったように笑う)

花丸(分かってる。そう言ってるような笑顔には何も言えなかった)

花丸「そろそろいこっか」

善子「……もういいの?」

花丸「時間でしょ?」

善子「あと1,2分くらいはあるけど」

花丸「なにか持ち出せるわけでもないんだよね?」

善子「残念ながら」

花丸「じゃぁ、もう行こう」
0523名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/14(木) 21:12:50.43ID:rq3v7/ZV
花丸(ダイヤさんのいない生徒会室)

花丸(明かりを消した、月明かりだけの幻想的な部屋の中)

花丸(まるでそこに誰かいるかのように、会長の席を影が覆う)

花丸(ダイヤさんがまだ生きていたらどっちを望むのかな)

花丸(諦めるのと、危ないけど頑張る方)

花丸(……考えるまでもないよね)

花丸「……行ってきます」

花丸(そう声をかけると、見計らったように部屋全体が明るくなっていく)

花丸(そこにいた人がいなくなってしまったような)

花丸(そんな不安と共に、後押しのような空気を感じて半歩前に出る)

善子「誰かいた?」

花丸「ダイヤさんがいた」

善子「……そういうことじゃないんだけど」

花丸(ぼやいた善子ちゃんは"現在ではなく過去"だと察していて)

花丸(細めた目を会長の席に向けると、はにかむ)

善子「行ってくるわ。ダイヤ」
0524名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/14(木) 21:49:39.18ID:rq3v7/ZV
花丸(故人の使っていた誰もいない席への、別れ)

花丸(はたから見れば異常に思われそうな一息を挟んだマル達は生徒会室を施錠して、屋上へと向かう)

花丸(誰もいない学校の中に響く二人分の足音)

花丸(二人以外のすべてが無くなってしまったような静けさは、これからを不安にさせる)

花丸(だけど、無愛想につながった善子ちゃんの手と、その緊張感が前を向かせる)

花丸(善子ちゃんも不安だから、マルも不安だから)

花丸(だとしてもそれで怯むことなく、相手がいる心強さで足を動かす)

花丸「善子ちゃん」

善子「なに?」

花丸「もし、ここにいるのがダイヤさんだったら、どうだった?」

善子「どうだった? なんていわれても困るわよ」

善子「まぁ……抱き着いたり、してたかもね」

花丸「破廉恥ずら」

善子「抱いてっていうと、ちょっと小言はあるけど抱いてくれるのよ」

善子「次でうまくいったら、お願いしてみましょ」

花丸「……破廉恥、だね」

花丸(他愛もない話をしながら、儀式の準備をする)

花丸(午前一時、月明かりの下で――供物を)

善子「花丸、目を瞑って」

花丸「……うん」

花丸(これが、善子ちゃんの最後の繰り返しになりますように)

花丸(そう祈って、目を瞑った)
0527名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/16(土) 21:03:25.32ID:IeJXE7IG
花丸「……っ」

花丸(内側からじわじわと広がる熱っぽい頭痛を感じて、目を覚ます)

花丸(チカチカと光る携帯電話)

花丸(善子ちゃんからだと確信して手に取ると、やっぱり善子ちゃんからだった)

花丸「……もしもし」

善子『大丈夫?』

花丸「頭痛い、けど……」

花丸(折り返しで電話をかけて声を聴く)

花丸(繰り返しの確認よりも体調確認の時点で、呪術の痛みだろうと目を瞑る)

花丸「繰り返しの影響?」

善子『……ごめん、言い忘れてた』

善子『でも良かったわ。ちゃんと、覚えてるのね』

花丸(心底安心したような緩んだ声は……狡い)

花丸(この頭の痛みを忘れてたことを咎めるような気分にもなれなくて、ただ、うん。と返す)

花丸「学校、行く?」

善子『行くけど、まずはそっち行くわ。間違っても一人で人形蔵行こうなんて考えないでよ?』

花丸「分かってるずら」

花丸(前回はダイヤさんの犠牲もあって確認できたけど)

花丸(今回はそれが出来ない)

花丸(おじいちゃん達には悪いけど、こっそり忍び込むくらいしないとみることは出来ない)

花丸(………)

善子『花丸?』

花丸「なに?」

善子『前回と違うことが何かないか調べておいてくれない?』

善子『蔵は良いから、部屋の中とか、記憶とか』

花丸「……分かった」

善子『宜しく。準備が出来たらすぐに行くわ』

花丸「うん、待ってる」

花丸(本来ならまだまだ起きるには早い時間)

花丸(善子ちゃんの元気な声を聴いて、閉じそうになった瞼を開いて……体を起こした)
0529名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/18(月) 08:05:38.97ID:Wfrx+af/
花丸(見回して感じたのは、以前……前回の世界とは何も変わりがない部屋だということ)

花丸(記憶に関しても、直近で変わったことをした覚えはない)

花丸(人形蔵にあった人形呪術の欠片。けれど、それを自分がどうこうしたのか。と言われても)

花丸(首をかしげることくらいしかできそうにないだろうと、思う)

花丸(本当にマルは関係者だったのだろうか)

花丸(マルが人形呪術に加担したのだろうか)

花丸(もっと別の何かじゃないのだろうかと、疑心暗鬼になってくる)

花丸「……あっ」

花丸「起きて、る……よね」

花丸(考えに煮詰まって、思い出したダイヤさんのこと)

花丸(朝早くに迷惑かなと思いつつ、声が聴きたくて電話をかける)

花丸(一回、二回、三回。そして、プツッとコール音が途切れた)

ダイヤ『もしもし? ダイヤです。花丸さん……で、あっていますか?』

花丸「ダイヤさん……っ」
0530名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/18(月) 08:15:43.64ID:Wfrx+af/
花丸(顔を合わせているときよりも固く、どこか他人行儀に感じる声)

花丸(けれど、ダイヤさんだ)

花丸(生きてるダイヤさんの声だと心が震えて、声が濁る)

花丸「ダイヤさん……っマルっ、マルはっ」

花丸(何も知らない命の恩人)

花丸(何が言えるのかと、頭の抑止)

花丸(心だけが先走った呟きは、もはや嗚咽のようで)

ダイヤ『……大丈夫。ですわ』

花丸「っ」

花丸(優しい声だった)

花丸(前の世界のように、包み込んでくれる温かさ)

花丸(何も知らない。けれど、何も知らないから勝手なことは言わない。でも、ちゃんと寄り添おうとしてくれる)

花丸(電話なのに電話じゃないような)

花丸(そんな気にさえなってしまう)

ダイヤ『落ち着いて。深呼吸してください』

ダイヤ『電話と心許ないと思いますが、わたくしがここにいます。この機械でしっかりと、伝わっていますから』
0531名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/18(月) 08:29:03.44ID:Wfrx+af/
花丸「……大丈夫。ずら」

花丸「落ち着いて、る。ずら」

花丸「ただ……安心しただけ」

ダイヤ『怖い夢でも?』

花丸「うん」

花丸(ダイヤさんにも協力して欲しい)

花丸(だけど、また前回のようになるのが怖い)

花丸(でも……手の届かない場所にいられるほうが、怖い)

花丸「朝早いのに、ごめんなさい」

ダイヤ『かまいません。むしろ、まだ夢の中のルビィに言われたいですわ』

花丸「あははっ起こしてあげて欲しいずら」

ダイヤ『いつものことです』

花丸(明るいダイヤさんの声が心地よくて)

花丸(善子ちゃんには悪いと思いつつ、準備は後回しにして話し込んでしまった)
0535名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/19(火) 07:10:37.32ID:u9m5TynC
―――――――
―――――
―――

善子「元気そうで何より」

花丸「……ごめん」

善子「良いわよ別に。寝てたならともかく、起きてる状態で何も準備してないならそれなりの理由があったんでしょ?」

花丸「大した理由じゃないよ」

花丸「ただ、ダイヤさんに電話してただけずら」

花丸「分かってた。ちゃんと生きてることも、声が聴けるってことも」

花丸「だけど、電話したら安心しちゃって……」

善子「ダイヤに心配かけたわけだ」

花丸「うん」

善子「まぁ仕方がないわよ。私もそういう経験ある……っていうか、毎度のことだったし」

花丸「そういえば、月曜日に電話くれてたよね」

善子「安否確認したい気持ちも、それで安心できる気持ちも、また失うんじゃないかってことが怖くなるのも全部分かる」

善子「安心したくて声を聞くのに、声を聞いて安心したのに……またダメだったらって不安になるとか、馬鹿みたいだけど」

善子「聞かずにはいられないのよね」

花丸(困ったように笑う善子ちゃんは、気恥ずかしそうに頬を染める)

花丸(一緒に戻ってきたからこそ、その心の内を晒してくれたんだろう)

花丸(ダイヤさんに電話して安心して不安になったから良く分かる)
0536名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/19(火) 07:22:18.94ID:u9m5TynC
花丸「善子ちゃん、人形蔵についての記憶はなかったずら。何か特殊なものも部屋にはない」

花丸「昨日のマルが何かをしたとかじゃないと思う」

善子「……そう」

善子「だとしたら人形蔵の人形がそもそも無関係かもしれないし」

善子「もっと昔の……それこそ、花丸や私がもっと小さい頃に何かやらかしてるのかもね」

善子「おじいちゃんたちに絶対に入るな近づくなって言われてるらしいけど」

善子「それって昔からだった?」

花丸「………」

花丸(いつから。と言われると答えに困る)

花丸(気づいたころには、遊びに行くというとあっちにはいくなと言われていた)

花丸(大きくなるころにはそんな咎めるような一言も無くなったけれど)

花丸(お手伝いをする際は、必ずそっち側から外される)

花丸「どうだろう。聞いてみよう」

善子「素直に答えて貰えると良いんだけど」

花丸(善子ちゃんの不穏な呟きが嫌に、耳に残った)
0541名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2019/11/23(土) 01:22:53.58ID:8Xbj7K9Z
保守
0548名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/27(水) 06:08:40.95ID:u/Rw5uHx
「マルちゃんが蔵に近づいちゃいけない理由?」

花丸「そう……なんか急に思い出して気になったずら」

「なんだったかねぇ〜?」

花丸(おばあちゃんに、はぐらかしているような様子はない)

花丸(だけど、理由が分からないのに危険だというのは矛盾している気がして)

花丸(詰め寄るわけにもいかずにもどかしさだけが募る)

花丸(隣の善子ちゃんは黙ったまま、お祖母ちゃんを見ていた)

花丸(深く考え込んだお祖母ちゃんは、ふと、はっとしたように顔を上げた)

「幼稚園の頃だったかねぇ……マルちゃんが怪我をしたんだよ」

「確か、それが蔵でのことで……危ないから近づかないようにってしたんじゃなかったかね」

花丸「マルが、怪我?」

善子「覚えてる?」

花丸「ううん、全然」

花丸(幼稚園の頃、マルにそんなことがあった覚えはない)

花丸(でも、お祖母ちゃんがあったというならあったはずで)

花丸(なら、なんでマルは覚えていないのだろうかと、不思議になる)
0549名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/27(水) 06:38:07.05ID:u/Rw5uHx
花丸「マルが一人でそこに行ったずらか?」

「誰かと一緒だった気がするずら」

花丸「誰かって……」

花丸(お祖母ちゃんはそこまで細かいことは思い出せないらしい)

花丸(小さい頃、幼稚園のあたりでマルは人形蔵に入ったことがある)

花丸(その時に怪我をして、それ以降危ないからと立ち入らないように制限された)

花丸(じゃぁ、そのころなのかな?)

花丸(人形によって形成された世界)

花丸(それを作り上げたのは、その時のマル?)

善子「……まぁ、その時でしょうね」

花丸「でも、何があったんだろう?」

善子「何があったのかというよりは、誰といたのか。の方が重要な気がするけどね」

善子「そのころの花丸にどんな知識があったにせよ」

善子「今の私が手を伸ばして届く位置で埃を被っていた人形を弄ったとは思えない」

花丸「じゃぁ、マルは怪しい大人と一緒だった……?」

善子「だったらもっと大騒ぎでしょ」

善子「弄るため、あるいはそのせいで怪我をした可能性もあるしね」

花丸「そう、だね」

花丸(二人で考え、煮詰まって)

花丸(おじいちゃんにも聞いてみたけれど、答えは変わらなかった)
0550名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2019/11/27(水) 07:23:53.55ID:u/Rw5uHx
花丸「幼稚園の頃って、マルと善子ちゃんが会ったくらいの頃かな?」

善子「そのくらいが私達の原点だけど……私は知らないわよ?」

善子「幼稚園で会うことはあったし、公園で遊ぶこともあった」

善子「でも、花丸の家。しかも蔵にまでいった記憶はないわ」

善子「思い出せないだけの可能性も否定は出来ないけど」

花丸「………」

善子「……その時に花丸と一緒にいた誰かが人形の呪術を作った」

善子「だとしたら、世界はその時から作られてるのかもね」

花丸「じゃぁ、マルはそこからやり直せない限り死ぬずらか?」

善子「そこはなんとも」

善子「ただ、そうね……もしかしたらその呪術があったからこそ、花丸を救うチャンスがあるのかも」

善子「普通の世界だったら、過去に戻れる呪術なんてあっても実現しないだろうし」

花丸「現状を全否定ずらか」

善子「してもいいじゃない。少しくらいは考えも変えたほうが良いでしょ」
0555名無しで叶える物語(SB-iPhone)
垢版 |
2019/11/30(土) 16:32:18.44ID:OtzgBNNy
保守
0562名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2019/12/04(水) 23:02:02.60ID:eJzrbDvB
保守
0569名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2019/12/09(月) 00:47:34.37ID:PcrXuLPc
保守
0575名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2019/12/12(木) 00:13:55.95ID:J9I+WfHf
保守
0576名無しで叶える物語(関西地方)
垢版 |
2019/12/12(木) 15:03:16.35ID:jG4k8P9X
保守
0591名無しで叶える物語(SB-iPhone)
垢版 |
2019/12/20(金) 20:12:42.57ID:uO4sH/Mw
そろそろひと月経つが
0613名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2020/01/02(木) 03:09:10.84ID:O0DUmhDa
運命は結局ないのか?
0616名無しで叶える物語(庭)
垢版 |
2020/01/03(金) 00:15:27.37ID:9AjjQ0Bk
保守
0620名無しで叶える物語(庭)
垢版 |
2020/01/05(日) 13:06:30.32ID:s19EZwI+
保守
0622名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2020/01/06(月) 20:05:19.00ID:2GVBaZWq
ダイヤさんの犠牲を無駄にする気かよ!
>>1 !お前には幾度となく命を落とした花丸とダイヤさんのためにも書き続ける義務があるんだ!
0623名無しで叶える物語(庭)
垢版 |
2020/01/07(火) 06:57:57.12ID:O2z+VPeb
保守
0624名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/07(火) 07:09:28.90ID:ejOtDRKc
善子「とにかく、今日は学校に行って果南達に事情を話す」

善子「果南、鞠莉、ダイヤ……少なくとも3年生の知恵と力は借りたい」

花丸「ダイヤさんも?」

善子「果南達に話した時点で避けられないだろうし、前回の今回で影響がないとも限らないし」

善子「傍に居て欲しいのよ」

花丸「そっか」

善子「不満?」

花丸「不安なだけだよ」

花丸(あんなことになって、また頼る)

花丸(アレを繰り返してしまうんじゃないかと不安になるのは当然……)

善子「気持ちは分かるけどあえて、だからこそと言わせて貰うわ」

善子「見てないところでぐちゃぐちゃとか、誰かに殺されてるとか。別の意味でトラウマになる」

花丸「……それ、マルに言う?」

花丸(困り顔の善子ちゃん)

花丸(ごめんとつぶやいて、誤魔化すように笑う)

花丸(でも、それは善子ちゃんが実際に経験したことなんだ)

花丸「ダイヤさんを巻き込みたくないのはマルのわがまま」

花丸「………」

花丸「でも、そうだね。目をはなすのも怖いや」

花丸(そう笑うと、善子ちゃんは何も言わずに頭をポンッと叩いてきた)

花丸(手首で隠れた表情は、何となく分かってしまう気がした)
0625名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/07(火) 07:15:41.51ID:ejOtDRKc
花丸「あ、ルビィちゃん」

善子「は?」

花丸(バス停に行くと、いつもよりだいぶ遅れた遅刻しかねない時間なのに)

花丸(ルビィちゃんが立っていた)

花丸(携帯を弄ったり、本を読んだりもせずにぼーっとどこかを見ていて)

花丸(上の空に見えるルビィちゃんは声が聞こえたからか、こっちを見た)

ルビィ「あ、善子ちゃん花丸ちゃん。おはよ〜」

花丸「おはよう」

善子「おはよ〜。じゃなくない? これバスが遅れたら遅刻コースなのになにしてんのよ」

ルビィ「えへへ……お姉ちゃんが起こしてくれたみたいなんだけど、布団から出られなくて」

ルビィ「それより善子ちゃんと花丸ちゃんが一緒なんて珍しいね」

善子「昨日泊まったから」

ルビィ「えーっ、ルビィも誘ってよぉっ!」
0626名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/07(火) 07:22:46.34ID:ejOtDRKc
善子「今度ね、今度」

ルビィ「いいないいなっ、ルビィも花丸ちゃんのおうちにお泊りしたかったな〜」

花丸「今度ね」

花丸(その今度を手に入れるためには、マルは生き延びなくちゃいけない)

花丸(絶対にマルが死ぬ状況から、"誰か"に変わりはしたけれど)

花丸(ダイヤさんがマルを庇ってくれた結果である以上)

花丸(マルの近しい人が身代わりになるしかないと考えていたほうが良い)

花丸(そうじゃなくても、自分以外の誰かを犠牲になんて……)

ルビィ「そういえば、今週小テストだけど勉強した?」

善子「多少は」

花丸「授業を聞いてれば問題ないずら」

ルビィ「……えっ」

善子「えっ。じゃないでしょ。私はともかく花丸はそれなりに出来るし。私はやればできるのよ」

花丸(ふふんっと誇って見せる善子ちゃん)

花丸(勉強したのは事実かもしれないけど、何度も繰り返した記憶は強い)

花丸(うらやましいとは、口が裂けたって言っていいことじゃないけど)
0627名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/07(火) 07:29:37.90ID:ejOtDRKc
花丸「ダイヤさんに教えて貰ってないの?」

ルビィ「自分で頑張りなさいって言われちゃうもん」

花丸「そんなことないと思うけどなぁ」

花丸(ダイヤさんのことだから、日ごろしっかりやっていれば焦らなくていいのに。なんて)

花丸(小言があるだろうけど、ちゃんと教えてくれる)

花丸(仕方がないわね。と、呆れた声で)

花丸(次はしっかり勉強しておきなさい。と、優しい声で)

善子「言うだけ言ってみたら?」

ルビィ「ん〜」

花丸「………」

花丸(善子ちゃんの言葉はルビィちゃんに向いているはずなのに)

花丸(その目はマルを見る)

花丸("繰り返しの件"言うだけ言ってみたら? と言われてるような気がして――)

花丸(でも、今は。と、一歩引く)

花丸(朝の明るい空気にその話題は合わないと)

花丸(ダイヤさんを殺してしまったこともあって、今すぐの勇気は出ない)

花丸(バスは時間よりも少しだけ早く来た)

花丸(浦女生徒がまばらに居るバス。縦に並んだ三つの座席に、マル達はそれぞれ座ることにした)
0630名無しで叶える物語(庭)
垢版 |
2020/01/07(火) 13:26:10.41ID:O2z+VPeb
戻ってきて本当によかったです…続き気長に待ってます!
0631名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/07(火) 22:29:18.25ID:ejOtDRKc
ルビィ「………」

花丸(バスに揺られながら、前に座るルビィちゃんの後ろ髪を見つめる)

花丸(マルは結局、前の世界のルビィちゃんに会うことなくこの世界に来てしまった)

花丸(本当なら謝るべきだったかもしれない)

花丸(マルのせいでごめんねと)

花丸(でも、善子ちゃんが嘘をついてなければ)

花丸(ルビィちゃんはマルを心配してくれていた。責めるつもりなんて微塵もなく)

花丸(最愛の姉の代わりに生き残ったマルのことを)

花丸(それもまた、ダイヤさんの――)

ルビィ「どうかした?」

花丸「ずらっ!?」

ルビィ「あははっ、驚かしてごめんね」

花丸(揺れ動くバスの中で、いつの間にか振り返っていたルビィちゃんと目が合う)

花丸(楽しげに笑うルビィちゃんの瞳はその明るさとは裏腹に鮮やかさに欠けているように見える)
0632名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/07(火) 22:52:26.04ID:ejOtDRKc
ルビィ「窓に花丸ちゃんが映ってたから、どうしたのかなって」

花丸「何か変だった?」

ルビィ「変というか、見てたから。むしろルビィが変なのかなーって」

花丸(ルビィちゃんが変かどうかは巧い返答が思い浮かばない)

花丸(善子ちゃんと話したように違和感はあるけど……)

花丸「ルビィちゃんは怖い夢とか見たことある?」

花丸「例えば、マルとか善子ちゃんとか知ってる人が死んじゃうような……」

花丸(例えにしても最低だとは思いつつ、口にする)

花丸(でもルビィちゃんは怒ったり悲しんだりすることはなかった)

花丸(訝し気に眉を顰めてマルから目を逸らす)

ルビィ「……あったよ」

ルビィ「死んじゃったかどうか覚えてないけど、お姉ちゃんがいなくなっちゃう夢だったと思う」

ルビィ「朝早かったのに、寝てるお姉ちゃんに飛び込んだのに、優しく抱きしめてくれたのを今でも覚えてる」

花丸(ルビィちゃんはとても柔らかい表情で呟くように話してくれる)

花丸(だけど今日のこと……ではなさそうだった)
0633名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/07(火) 23:10:52.00ID:ejOtDRKc
ルビィ「花丸ちゃんもそんなことがあったの?」

ルビィ「……大丈夫だよ」

花丸「!」

花丸(バスの中だからこそ、背もたれがマルとルビィちゃんを阻む)

花丸(でもルビィちゃんの甘さの薄い優しい声は届く)

花丸(ダイヤさんにも感じる心に触れる微笑みが目の前にはあった)

花丸(本当にルビィちゃんはマル達の事情を知っているんじゃないか)

花丸(善子ちゃんの疑念が立証されそうだと思う間に、微笑みは無邪気さに染まっていく)

ルビィ「ルビィはちゃんとここにいるよ。夢じゃないよっ」

花丸(ルビィちゃんは自分が死ぬ夢だと思ったのか、そんなことを言って)

花丸(少し考えて、そうだ。と、笑う)

ルビィ「花丸ちゃんはルビィのこと好き? 好きだと良いなっ」

ルビィ「片思いは……違うとして。好きな人だとその人に良いことがあるって前に聞いたんだぁ」

ルビィ「だから怖い夢を見たときは夢診断をしてみるといいと思う。案外、良い夢だったりするからねっ」

花丸「うん、ありがとう」

花丸(明るいルビィちゃん、楽しそうなルビィちゃん)

花丸(その普段通りの姿に、マルは笑顔を返すくらいしかできなかった)
0634名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/08(水) 06:54:28.11ID:Rsy/YUUs
――――――
――――
――

花丸(やり直しになった月曜日)

花丸(マルや善子ちゃんが関わったり関わらなかったりによって)

花丸(全く同じという形にはなっていない時間はあっという間に過ぎていく)

花丸(そしてお昼休み、果南ちゃんを部室に呼び出した)

果南「話があるって……善子ちゃんだけじゃなかったんだ」

善子「ごめん、それも伝えとくべきだった?」

果南「いや、まぁ……」

花丸(果南ちゃんは少し照れくさそうな顔をして、頭をかく)

花丸(きっと誤解をしたんだろうと、察する)

花丸(果南ちゃんがどうであれ、善子ちゃんが送ったメールは「大事な話があるからお昼休みに部室に来て欲しい。一人で」というもの)

花丸(意外にというと失礼かもしれないけれど)

花丸(それなりに乙女な果南ちゃんは、一人、大事な話、人気のない場所。ってキーワードから告白でも連想したに違いない)

花丸(女の子同士なんて異質さはあれ、無きにしも非ずならどうすべきかと考えてしまう)

果南「あれだよね? 二人がそのさ……女の子同士で付き合ってるとか、じゃ、ないよね?」

善子「はぁ? どう考えたらそうなるのよ。ないわよ。ないない」

花丸「善子ちゃんのメールが簡素過ぎたずら。もう少し用件を入れるべきだったね」

花丸(……三年生まとめて呼び出すんじゃなくてよかった。絶対すんなりいかなかった)
0635名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/08(水) 07:06:07.28ID:Rsy/YUUs
果南「はーっ、そうだったらどうしようかってすっごく悩んだんだからね!?」

果南「善子ちゃんにそこまで好きになって貰えることしたっけって」

果南「でも一目ぼれとかあるし、そういうので好きになられてるならちょっと嬉しくも複雑で――」

花丸(真剣に考え込む果南ちゃん)

花丸(その一方で困り顔の善子ちゃんがため息をつく)

善子「悪かったわよ。ごめんなさい」

善子「果南……果南さんは私から見て格好いい先輩って感じだけど」

善子「さすがに恋愛どうこうはないわ」

果南「そっか」

果南「………」

果南「あれ? もしかして今私フラれた?」

花丸(きょとんとして聞いてきた果南ちゃんに、首を振る)

花丸(果南ちゃんの受け取り方次第だけど、それっぽい雰囲気だったことは否定できない)

花丸(でも実際に告白したわけではないから、違うと言えば違う)

善子「話、進めて良い?」

果南「あぁごめんね。うん、大丈夫」
0636名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/08(水) 07:14:14.57ID:Rsy/YUUs
善子「ねぇ、"三人で星は見れた?"」

果南「へっ?」

花丸(驚いた果南ちゃんの瞳が揺れる)

花丸(なんでそんなことをと言いたげな動揺)

花丸(善子ちゃんはそれを分かってか、用意していた言葉を口にする)

善子「聞いたわよ? "戻ってきたらそうする予定だった"って」

果南「聞いた……?」

果南「なんでそんな」

果南「………」

花丸(ない、ありえない。そう続きそうな果南ちゃんの言葉は途切れて)

花丸(俯くように傾いた顔に影が差す)

果南「なんで、そんなことを? だれから?」

花丸「マル達はこの一週間を繰り返してるずら」

果南「え?」

花丸「今の話を聞いたのは前の一週間の果南ちゃんから」

果南「いや、え? 繰り返してるって……」

花丸「それを言えば、果南ちゃんは信じてくれる。味方になってくれるからって」

果南「それを、私が……?」
0637名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/08(水) 07:29:54.62ID:Rsy/YUUs
花丸(繰り返すような疑問符付きの呟き)

花丸(果南ちゃんは考えて、考えての渋い顔をして……ふと目を閉じた)

果南「そっか。私がそう言ったんだね?」

善子「信じるの?」

果南「あてずっぽうだったら脱帽だよ」

果南「善子ちゃんが言ったのは私が考えるだけで誰にも言ってないことだからね」

果南「私以外が知ってるはずがないんだよ……まったく」

花丸(果南ちゃんは困ったように笑う)

果南「そんな秘密を打ち明けて託すくらいの何かがあるってことだよね?」

果南「いいよ。協力する」

果南「その繰り返しについて詳しく聞かせて」

果南「どれだけ力になれるか分からないけど、話を聞かなきゃ始まらないからね」
0640名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/08(水) 21:33:50.06ID:Rsy/YUUs
善子「まず、分かっているのは魔術は実際に効果があること」

善子「そして必ず月曜日に戻ってくる。これは何曜日に行使しようが絶対の不変」

善子「あと、誰かが必ず死ぬ」

果南「………」

花丸「果南ちゃん?」

善子「疑問があったら言ってくれていいからね?」

果南「大丈夫、とりあえず話を聞いてからにするよ」

善子「じゃぁ、遠慮なく」

善子「この死ぬって言うのは、花丸が死ぬことが基本。ただし、花丸の代わりに別のだれかが死ぬことは可能」

善子「人身御供って分かる? 簡単に言えば生贄なんだけど」

果南「生贄ならわかるよ」

善子「その言葉通りで、別の誰かを生贄として花丸を死なせないことが可能なの」

善子「よって、死は不変だけど結果は可変」

善子「また繰り返すと言っても、周りのすべてが全く同じってわけじゃない」

善子「私達が今の果南に関わってるように、行動次第で常に変動してる」

善子「ただ、それは私達が関わるかどうかに左右されることはないことが分かってるわ」

善子「証拠も証明も出来ないけど、花丸の死因が事件・事故で分岐することからそうだと思ってる」

果南「なるほどね……」
0641名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/08(水) 21:58:23.76ID:Rsy/YUUs
善子「あとは……花丸が子供のころに人形蔵で人形を用いた呪術が行われた可能性が高い」

善子「花丸が誰かと一緒に出てきたって情報があるのよ」

善子「それによって花丸が狙われてるんじゃないかって言うのが推測」

花丸「でも、マルはそのころのことを覚えてないしおばあちゃんたちはその時誰がいたのかまでは分からない」

花丸「それについて確定してるのは、少なくとも善子ちゃんではないということ」

善子「……繰り返しについて分かってるのはこのくらい」

果南「そっか……難しいね」

果南「正直、常識的に考えれば面白くない冗談だよ」

花丸(普段の力強さはなりを潜めて、真剣な眼差しが部室の机を睨む)

花丸(死ぬという言葉に引っかかった果南ちゃんはそれが不満だったのかな)

花丸(そう考えたマルを、紫色の瞳が捉える)

果南「とりあえず常識は捨てるべきだね」

果南「魔術や呪術、繰り返し……ループだっけ? それが現実に起きてるなら常識の範疇にないよ」

善子「そりゃね……常識的に考えてたらそもそも信じられないわよ」

果南「そこでまず私が言えるのは、残念ながら花丸ちゃんの小さい頃に居たのは私じゃないということ」

果南「希望を断つようで悪いけどね」
0642名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/08(水) 22:15:50.84ID:Rsy/YUUs
花丸(申し訳なさそうに言った果南ちゃんは)

花丸(そこから間を置くことなくそれでなんだけど。と呟く)

果南「善子ちゃんと花丸ちゃんは前の一週間にいた私から情報をもらってここにいる」

果南「つまり、"ループの記憶がある"ということで間違いはないよね?」

善子「ええ」

果南「それは"死んだから”なのか、"生き残ったから"なのか。どっち?」

善子「生き残ったからだけど、ただ生き残ったからじゃない」

善子「生き残って魔術を使ったから」

果南「なら前の世界の私は花丸ちゃんを護って……いや、違うかな」

果南「もし私が花丸ちゃんを護って死んだのなら、花丸ちゃん達は話してくれるよね」

花丸「………」

果南「つまり、その魔術は誰にでも使えるわけじゃない。あってる?」

善子「……察しが良いわね」

果南「ただ二人を信じてるだけだよ」

果南「二人の優しさと正しさを信じれば、命の恩人に何もないわけがない」

果南「信じれば、疑うべきことは信じられないことだけになる」

果南「私はダイヤや鞠莉みたいに頭を使うのには向いてないからね」

果南「せめて、信じたいと思ったことは信じぬいていきたいんだよ」
0643名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/08(水) 22:53:58.93ID:Rsy/YUUs
果南「恥ずかしいし、話を続けよっか」

果南「その魔術を使えるのは……現状なら善子ちゃんと花丸ちゃんだけ?」

善子「そうなるわね」

善子「私はループ魔術の行使者そして、花丸は起点」

果南「無理に私達が使おうとしたらどうなる?」

善子「断言はできないけど、別のループに巻き込まれてしまう可能性がある」

善子「この世界から松浦果南という存在が消えるのか、今の松浦果南の意識だけが消失して別の松浦果南になるのかは定かじゃないけど」

花丸「後者は今とさほど変わらないけど、前者だとしたら最悪だから絶対にやらないで」

果南「分かった。約束する」

花丸(あっさりと承諾してくれた果南ちゃんは少しだけ考える素振りを見せる)

花丸(頭を使うのに向いていないと果南ちゃんは自嘲したけれど)

花丸(そんな風には思えない)

果南「今日の部活はとりあえず休みにしてさ、ダイヤと鞠莉も含めて話すのはどうかな?」

果南「むやみに吹聴するのも嫌だろうけど……せめて知恵は増やさないとどうしようもないよ」
0645名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/09(木) 07:02:10.55ID:n0lkVfCh
花丸「千歌ちゃん達には……言わなくて良いずらか?」

花丸(元々、三年生とルビィちゃんだけの予定)

花丸(だけど果南ちゃんの意見も聞いておこうと聞くと)

花丸(果南ちゃんは小さく首を横に振った)

果南「それはやめておいた方がいいよ。曜ちゃんは大丈夫だけど……」

果南「私も少しそうだけど、千歌は特に死ぬって言葉に敏感だからね」

果南「花丸ちゃんが死ぬなんて話をしたらどうなっちゃうか……」

善子「なら曜達に話すのは?」

果南「なしで。千歌一人蚊帳の外はあからさまが過ぎてバレるかもしれないからね」

善子「一理ある」

花丸「ならそれで行こう」

花丸「二年生は巻き込まない。ルビィちゃんは……」

善子「話すんじゃないの?」

果南「ルビィちゃん一人蚊帳の外にするのは千歌と同じになるんじゃない?」

果南「可能なら話したほうが良いと思う」

果南「まぁ、ルビィちゃんみたいな子を巻き込むのに気が引けるのは分かるから」

果南「やり遂げられるなら、言わないのも一つの選択だよ」

果南「放課後、部活をなしにする連絡と、ダイヤと鞠莉は呼んでおく」

果南「ルビィちゃんをどうするかは二人に任せるね? 大丈夫?」

善子「ええ、任せて」
0646名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/09(木) 07:36:57.23ID:n0lkVfCh
花丸(放課後に集まるのは果南ちゃんのところのお店にしよう。と決まって)

花丸(教室に戻るまでの廊下を善子ちゃんと歩く)

花丸(人気が無いのは元々だったっけと静けさに悩んでいると、善子ちゃんの視線を感じて顔を上げる)

花丸「どうかした?」

善子「ルビィのこと、花丸はどうするつもり?」

善子「巻き込む……でいいか。そのつもりだったはずだけど」

善子「不安になった?」

花丸「不安になったわけじゃないよ。ただ、ルビィちゃんを巻き込むことで」

花丸「心を落ち着けてくれる無知ゆえの安心感を無くしちゃうような気がするずら」

善子「……なるほどね」

花丸「善子ちゃんはやっぱり話すべきだって?」

善子「果南とダイヤそれに鞠莉」

善子「三人いれば、知恵としては問題ないと思う」

善子「でも、前回話したこともそうだけど、それがなくてもルビィは私達と関わりがあるし」

善子「乗り越えるために必要な力かもって思うわ」

花丸「……そっか」

花丸「そうだね。やっぱり、話そう」

花丸(乗り越えるために、終わらせるために……ちゃんと)
0647名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/09(木) 08:33:24.34ID:0l32CS3I
果南「信じれば、疑うべきことは信じられないことだけになる」
果南「せめて、信じたいと思ったことは信じぬいていきたいんだよ」

誰だこいつ果南の偽者だろ本物は脳筋水ゴリラだぞ
0652名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2020/01/09(木) 17:50:44.72ID:g82AikM2
おかえり。待ってたよ。
0654名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/09(木) 21:57:12.49ID:n0lkVfCh
花丸(ルビィちゃんに声をかけようと思った昼休みの残り数分だったけれど)

花丸(ルビィちゃんは千歌ちゃん達とご飯を食べていたらしく、教室に戻ってきたのはギリギリだった)

花丸(言い出せないまま時間が過ぎて、放課後)

花丸(果南ちゃんの思っていた以上に早い行動のおかげか)

花丸(授業中に来たというのはともかく、部活がお休みの連絡が来たおかげで)

花丸(ルビィちゃんはもう帰る準備をしてる)

花丸「ルビィちゃん、ちょっといい?」

ルビィ「花丸ちゃん?」

花丸(きょとんとしたルビィちゃんに感じる日常)

花丸(でももう、迷わない)

花丸「大事な話があるから、寄り道してくれないかな?」

ルビィ「大事な話……?」

花丸(ルビィちゃんは自分の中で復唱するように言うと)

花丸(その優しさからか、まったく考える素振りは見せなかった)
0655名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/09(木) 21:59:48.10ID:n0lkVfCh
ルビィ「良いよ。別に予定もないから……善子ちゃんも一緒?」

花丸「うん、あと……果南ちゃん達」

ルビィ「それで部活休みなんだね……」

ルビィ「大事な話じゃなくてすっごく大事な話かぁ……」

ルビィ「……そっかぁ」

花丸(ルビィちゃんは息を吐くように呟く)

花丸(果南ちゃんのような勘違いはしてないよね? と考えた瞬間に、ルビィちゃんは顔を上げた)

ルビィ「二年生の中に好きな人がいるのかな?」

花丸「違うずらっ」

ルビィ「えーっ、隠さなくていいのに〜」

花丸「違うよ。本当」

花丸(そんな話だったらどれだけ良かったかと、考えてしまう)

花丸(無邪気な笑顔に笑って見せる……ちゃんと笑えていたのかは、わからなかった)
0656名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/09(木) 22:20:01.63ID:n0lkVfCh
――――――
――――
――

花丸(三人で果南ちゃんの家が経営しているダイビングショップへ向かう)

花丸(平日の夕方だからか、closedになっているドアを押して中に入ると)

花丸(カウンターの傍にいた果南ちゃん達は入店の音に気付いてマル達を見る)

花丸(明るい店内の暗い雰囲気)

花丸(鞠莉ちゃんの重みのある表情が何があったのかを教えてくれた)

善子「なんだ、話したの?」

果南「ある程度の信憑性は持たせておかないと話が進まないと思ってね」

鞠莉「あんなの信憑性どうこうじゃないわ!」

鞠莉「絶交してくれてもいいなんて……」

花丸(怒ったように言う鞠莉ちゃんの傍ら、凜とした佇まいで黙り込んでいたダイヤさんの目が、マルだけを見る)

花丸(何かを悟っている優しい目つき、それはすぐにマルの後ろにいるルビィちゃんに動く)

ダイヤ「本当に来たのね。ルビィ」

ルビィ「花丸ちゃんが大事な話があるって言うから」

花丸(明るい声で言ったルビィちゃんは、軽い足取りでマルと善子ちゃんの前に出ていく)

花丸(振り返るルビィちゃんの表情に、遊びはない)

ルビィ「誰かが死んじゃうっていう今朝の話だよね? 時間もなさそうだし、話を始めよっか?」
0657名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/09(木) 22:31:30.35ID:n0lkVfCh
善子「あんた……」

ルビィ「本当に驚いた。善子ちゃんならともかく花丸ちゃんがあんなこと言うんだもん」

ルビィ「でも、だからこそルビィは真剣に考えるべきだろうなって思った」

ルビィ「ごめんね。昼休みに千歌ちゃん達に会いに行ったのは嘘」

ルビィ「お姉ちゃんと話したんだ」

花丸「なんで……」

ダイヤ「ルビィから花丸さんが誰かが死ぬ夢を見たらしいという話を聞いて」

ダイヤ「思わず、今朝電話を頂いたことを呟いてしまって」

ダイヤ「そしたらルビィがそういうことかと。お昼に生徒会室に来て欲しいと」

ルビィ「花丸ちゃんが見たのは誰かじゃなく"お姉ちゃん"が死ぬところなんだよね?」

花丸(悲しそうに言うルビィちゃん)

花丸(言ってることは正しい。マルを護ってくれたのはダイヤさんだから)

花丸(果南ちゃんも話を聞いてか、察した表情をして……何も言わない)

花丸「……そうだよ。ダイヤさんが死んじゃったんだ」

花丸「死ぬはずだったマルのことを護って、代わりに死んじゃったんだ」
0658名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/09(木) 22:53:37.70ID:n0lkVfCh
ダイヤ「……なるほど、そういうことですか」

花丸(果南ちゃんからの事前情報もあって、落ち着いてるダイヤさんの一方で)

花丸(ルビィちゃんは見開いた目を、ゆっくり閉じる)

ルビィ「そっか」

ルビィ「……夢の話では、なさそうだね」

善子「信じられな――」

ルビィ「信じるよ」

ルビィ「お姉ちゃんが誰かが死んじゃうなんて話を冗談でさせるわけがない」

ルビィ「花丸ちゃんも、果南ちゃんも、みんながこんな風に付き合うわけがない」

ルビィ「本心を言えば、信じたくないけど」

ルビィ「でも……無関係じゃないから。話を聞いちゃった以上はね」

花丸(ルビィちゃんは辛そうな笑顔を見せる)

ルビィ「詳しい話を聞かせてよ」

花丸(その力強さを感じる声に頷いて……マルと善子ちゃんはルビィちゃん達に向けて、果南ちゃんにしたのと同じ話をした)
0659名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/10(金) 08:05:41.06ID:MwoINBwT
万年生理松浦果南、ヒステリック小原鞠莉、シスコンぶっぶーぼくろ黒澤ダイヤ、クソガキ黒澤ルビィを美化しすぎ
0664名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/12(日) 15:29:52.78ID:+o0i4RDv
花丸(二回目の果南ちゃん達も、一回目のルビィちゃんも)

花丸(口を挟んだりせずに真剣に聞くことに徹してくれたおかげで、説明はすんなりと終わった)

花丸(自分が死ぬという言葉を何度も繰り返していると)

花丸(その重みが少しずつ削られていくような気がしてしまう)

花丸(沈黙に支配されていく中で、あくまで規律を守るようにダイヤさんが手を上げた)

ダイヤ「……言わせていただきたいことがあります」

善子「なに?」

ダイヤ「花丸さんが幼いころに呪術が行使されたというのはおかしいのでは?」

花丸「人形蔵がキーになっているのは間違いない……と、思うずら」

花丸「そこから出てきた以上、マルとその誰かがそこで呪術を使ったと考えるのが普通だと思う」

ダイヤ「ええ。ですが、今回花丸さんが巻き込まれてるのは運命レベルで死に追いやる呪い」

ダイヤ「花丸さんを殺す目的で行使されたと考えるべきです」

ダイヤ「ですが、わざわざこのような回りくどいことをせずとも幼い花丸さんを殺すことなど容易では?」

善子「殺したら犯罪者になるでしょ」

善子「それを避けるためにあえて魔術を使った可能性は?」

善子「それに自分の手で殺すんじゃ運命レベルでの魂の拘束は不可能だわ」
0665名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/12(日) 15:48:57.33ID:+o0i4RDv
鞠莉「今は使ったという前提で話をしたほうが良いわ。ダイヤ」

ダイヤ「鞠莉さん……」

鞠莉「問題は"Why"なぜそれを行使したのか。ね」

鞠莉「"Who"誰が。というのも重要だけど、呪術の行使について最も重要なのはWhy」

鞠莉「ダイヤが拒むように"kill"なのか、それとも善子のように"keep"なのか」

善子「そいつが花丸を殺さないためにやったってこと?」

善子「だったらなんで……花丸が死ぬのよ」

果南「そこが問題だよね」

果南「そもそもの話、私は花丸ちゃんが絶対に不幸になるような呪いをかけられるような子じゃないと思う」

果南「花丸ちゃんの人格を信じれば、使われたのは助けるための魔術で間違いないはずなんだよ」

花丸「………」

ダイヤ「では……その一緒に出てきた誰かも今の善子さん達と同じ魔術を使っていた可能性もあると?」

善子「ま、待って!」

善子「それはないわ……さっき言ったように私が使ってる魔術はどうあがいても月曜日までしか戻れない」

善子「それ以上に戻れる方法があるならとっくにやってるわ」
0666名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/12(日) 16:37:35.43ID:+o0i4RDv
鞠莉「救うために魔術を使ったとしたら、その誰かを探すべきだけど……」

ルビィ「……善子ちゃん以上の魔術を使った上で助けられないような人がいても変わらないんじゃないかな」

ルビィ「その人を探すよりも、どうやったら花丸ちゃんを助けられるのか考えるべきだと思う」

花丸(ルビィちゃんの悲しそうな声が、話を中断させる)

花丸(ダイヤさんは何も言わずに目を細めて、果南ちゃんは机に肘をついたまま目を閉じる)

花丸(いつもは太陽のように明るい鞠莉ちゃんも、今ばかりは重い空気を感じる)

鞠莉「一理あるわ。けど、無意味と切り捨てるには早計よ」

果南「チーム分けする?」

ダイヤ「呪術について調べる方と人探しですわね」

ダイヤ「善子さんと花丸さんは一緒に居たほうが良いでしょう」

善子「なら、私達は呪術の方ね」

善子「調べるなら知恵が欲しいけど……」

果南「はいはい。私はお役御免だよね〜」

ルビィ「なら、ルビィもだね」

ダイヤ「では……」

花丸(ダイヤさんの目が、マルを一瞥して鞠莉ちゃんへと向かう)

花丸(自分は一緒じゃない方がいいという仕草に、鞠莉ちゃんの小さな息が零れる)

鞠莉「むしろ、一緒に居たほうが安心できると思うけど?」
0667名無しで叶える物語(たこやき)
垢版 |
2020/01/13(月) 09:28:02.06ID:UQ84l8pj
ぶっぶーぼくろですわ
0668名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/13(月) 15:59:01.45ID:Yx6qLul1
ダイヤ「しかし、また繰り返すのではと不安になるのでは?」

善子「鞠莉の意見が全てよ」

善子「目をはなしている間に何かがあったらそれこそたまったもんじゃない」

善子「だからこそ、花丸だってダイヤに電話しちゃったんだから」

花丸「ダイヤさんが呪術とかの怖いものが苦手なら……あれだけど」

花丸「そうじゃないなら、一緒に居てくれた方が安心できるずら」

花丸(今度は、ダイヤさんを死なせたくない)

花丸(当然マルだって死にたくない)

花丸(だからそのために、マルと善子ちゃん、ダイヤさんは一緒に居たほうが良い)

ダイヤ「……そう、ですか」

鞠莉「後輩に愛されててよかったじゃない、ダイヤ」

鞠莉「二人をお願いね?」

花丸(鞠莉ちゃんの優しい力がダイヤさんの背中を押して)

花丸(躓いたように前に進んだダイヤさんと目が合う)

花丸(声を聞いて、顔を見て、マルに影を差して……あぁ、本当に生きているんだと実感する)

花丸(手を伸ばすと、ダイヤさんは困惑しつつも握ってくれる)
0669名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/13(月) 16:33:14.50ID:Yx6qLul1
ダイヤ「ひとまず、上位の呪術があるという前提で行動を。果南さん、鞠莉さん、ルビィは件の人を探してください」

果南「りょーかい。なんとか探そう」

果南「期限は……木曜日だね。金曜日は花丸ちゃんが危ない」

鞠莉「無駄かどうかはその人から話を聞く」

鞠莉「それでOK? ルビィ」

ルビィ「うん、良いと思うよ」

ルビィ「人探しでルビィが力になれる気がしないけど」

ダイヤ「また貴女は――」

ルビィ「男の人だったらルビィは話しかけられないし」

ルビィ「そうじゃなくても……」

花丸(ルビィちゃんは人見知りで、人探しという役割は不向きだ)

花丸(三人三人できっちり分けなくてもいいと言おうとしたところで)

花丸(なぜかルビィちゃんは笑顔を見せた)

ルビィ「でも、頑張るよ」

ルビィ「花丸ちゃんのためだし、善子ちゃんとお姉ちゃんのためだし」

ルビィ「人見知りがどうかなんて気にしてる場合じゃないよね」
0670名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/13(月) 17:01:18.81ID:Yx6qLul1
―――――――
―――――
―――

花丸(部活は当然のごとく一週間お休み)

花丸(極力グループでの行動を心掛け、特に死亡経験がある人に関しては一人で行動しないこと。など)

花丸(ある程度の行動方針を決め終えるころには、すっかり陽が落ちてしまっていて)

花丸(鞠莉ちゃんの過ぎた気遣いの結果、大きなホテルの一部屋をマルと善子ちゃんとダイヤさんの三人)

花丸(隣室ではなかったけれど、同じ階に鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ルビィちゃんの三人が借りることになった)

花丸(親への言い訳は理事長―それも結局は鞠莉ちゃん―がしてくれたので、とりあえずは問題がない)

善子「まさかこんな……いや、鞠莉の力を借りるって時点で想定内よね」

ダイヤ「そうですわね……まったく、鞠莉さんにも困ったものです」

ダイヤ「しかし、好都合でもありますわ」

ダイヤ「善子さん、花丸さん」

ダイヤ「わたくしは、件の人物がルビィではないか……と考えているんです」

花丸(広い部屋の中、三人の距離が近いという理由でベッドの上に腰かけたダイヤさんは)

花丸(神妙な面持ちで、そう切り出した)
0671名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/13(月) 17:20:31.64ID:Yx6qLul1
ダイヤ「断定はできないので、これはあくまで相談です」

ダイヤ「ルビィを疑うのは気が引けますが命に係わる以上、疑いは見逃せません」

花丸(ダイヤさんは自分に言い聞かせるように呟くと)

花丸(ふと、息を吐いてマルと善子ちゃんを見る)

ダイヤ「バスで夢の話をされたからというだけで、迷わずわたくしに相談をしてきたこと」

ダイヤ「花丸さんのお話を聞いて、取り乱すようなこともなく冷静に受け止めていたこと」

ダイヤ「過去に呪術を行った人物がいるという話になって、即座に無意味だと切り捨てようとしたこと」

ダイヤ「わたくしの違和感はそこにある」

ダイヤ「ルビィが……ただ、高校生として成長しているというだけであれば嬉しい限りです」

ダイヤ「ですが、親友である花丸さんの死を聞き、あそこまで平静を保っていられる子ではないはずなんです」

ダイヤ「はっきり言って、今日のルビィは異質でした」

善子「……もしルビィがその人なら」

善子「ルビィは花丸を助けられる可能性があるのに、隠してるってことになるんじゃない?」
0672名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/13(月) 17:37:13.54ID:Yx6qLul1
花丸「ううん。その逆だと思うよ」

花丸「ダイヤさんも言ったけど、マルの幼少期に居た人を探しても無意味だって言ったよね?」

花丸「ルビィちゃんは本当に力になれると思っていないんだと思う」

花丸「だって、十数年前まで戻れる呪術を使ってもルビィちゃんはマルを死なせちゃうってことを知ったんだから」

花丸「きっと、ルビィちゃんにとってそれが切り札だったんだよ」

花丸「月曜日までの数日間のやり直しじゃなく、十数年のやり直し」

花丸「たった一回で、精神的には倍の年齢にもなるような期間だよ?」

花丸「マルが死ぬ、ダイヤさんが死ぬ。それを聞いたところで動じるような心はしてないはずずら」

善子「でも……だとしたらルビィは、私が一人で繰り返してる間どうしてたのよ」

善子「無駄なことしてるって達観してたの?」

善子「助からないのを分かってて、花丸に声をかけたりなんかしてたって言うの?」

ダイヤ「善子さん達にも思うところがあるのね?」

花丸(口論にまでなりそうだった空気を、ダイヤさんの声が引き裂く)

花丸(ルビィちゃんのことを話しているのに、ダイヤさんは凄く落ち着いてる)

花丸(きっと、ここまでの間で覚悟を決めていたんだ)
0674名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/13(月) 18:02:32.80ID:Yx6qLul1
ダイヤ「もしもそれが真実なら、グループを分けること自体が無意味で時間の無駄になる」

善子「まさか、呼び出して論破でもするつもり?」

ダイヤ「ルビィは決して、自分のためだけに黙秘するようなことは致しません」

ダイヤ「花丸さんの死を知り、それでもなお黙秘するのには理由があるはずです」

ダイヤ「ルビィも悲しみを抱えているのならば、それをどうにかしたいというのが……姉の心です」

花丸(ダイヤさんは、辛そうに言葉を取りこぼした)

花丸(もしもルビィちゃんが繰り返しの経験者なら今日までの十数年間偽り続けてきたことになる)

花丸(その間、ルビィちゃんが偽ってきたことに気付かなかったことに、思うところがあるんだろう)

花丸「ルビィちゃんが必ずしも過去に戻る呪術を使ったとは限らないずら」

花丸「死の運命を回避する呪術だったのはそうかもしれないけど十何年も戻る力があるとは限らない」

花丸(それはない。と、言って思う。一時的にでも免れる呪術があるなら、ルビィちゃんなら話してくれる)

花丸(あの冷静さは、それほどの重みを経験していなければ得難いもののはず)

花丸(それを知ってか、ダイヤさんは「そうですね」と微笑んで……明日の朝にでも話してみましょう。と心を決めた)
0675名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/13(月) 20:19:29.17ID:Yx6qLul1
花丸「ダイヤさん、聞いてもいい?」

ダイヤ「なんでしょう」

花丸「どうしてみんながいるところで聞かなかったずら?」

花丸「話を進めるには、その方が都合が良かったのに」

花丸(ダイヤさんはその質問も予想していたのか)

花丸(耽るようにそうですわね。と、呟く)

花丸(伏せった目線、考え込む横顔はやっぱり……大人で)

花丸(そこに感じる空気は、ルビィちゃんにもあったものだ)

ダイヤ「否定、されたかったんです」

ダイヤ「確証はなく、ただ……そうではないかという頼りない判断」

ダイヤ「善子さんと花丸さんがそんなことはないと切り捨てて下さればそれで終わらせるつもりでした」

ダイヤ「……見損なってくださいな。わたくしは、臆病なんです」
0676名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/13(月) 21:32:43.30ID:/SivE+vc
七海やちよ
0677名無しで叶える物語(きりたんぽ)
垢版 |
2020/01/13(月) 21:49:25.36ID:57MjiOHb
善子すきな奴って大人しい人おそうだね
0678名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2020/01/14(火) 04:53:17.03ID:9UFRHRSa
>>677
なんだなんだ!?突然!!!笑
0679名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/14(火) 06:53:43.14ID:l0dlxwcj
善子「臆病なんて思わないわよ」

善子「ダイヤがルビィを大事に考えてるのは良く分かってるし」

善子「無関係であって欲しいって思う気持ちを安易に分かると言うべきではないだろうけど」

善子「まったく分からないわけじゃないから」

花丸「そうずら」

花丸「ダイヤさんはちゃんと話してくれた」

花丸「それなのに、臆病なんて思わないよ」

ダイヤ「……ふふっ。ありがとうございます」

花丸(ダイヤさんは噛みしめるような声でお礼を言うと)

花丸(ゆっくりと瞬きをして、マルを見つめた)

ダイヤ「そんな貴女達の為に、わたくしはこの命を賭すことに悩むことはなかったことでしょう」

花丸「っ」

ダイヤ「振り返るなとは言いません。ですが、どうか背負わずにいてください」

ダイヤ「きっと、わたくしは花丸さん達を送り出すために行動したのですから、背負われてしまっては困ります」
0680名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/14(火) 07:00:16.33ID:l0dlxwcj
花丸(ダイヤさんは優しく笑ってくれる)

花丸(ダイヤさんの遺書は、持ち出すことは出来なかった)

花丸(命も同じく引き継ぐことは出来ていなくて)

花丸(あの瞬間のダイヤさんの言葉ではない)

花丸(だけど……)

花丸「……そんなこと言われると。善子ちゃんを部屋から追い出したくなるずら」

花丸(失ってしまった事実は変わらない)

花丸(その悲しさを、その後悔を忘れることは出来ない)

花丸(だから、ダイヤさんは振り返ってもいいと言った)

花丸(背負えば重荷になる。いつかその足を引き摺ることになる)

花丸(けれど、振り返るだけなら……見送ってくれる姿が見えるだけだ)

花丸(行ってきますと。思うだけ)

善子「出てっても良いけど?」

花丸「行かなくていいよ。全ては生き残ってからに取っておくから」
0681名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/14(火) 07:22:46.07ID:l0dlxwcj
花丸(感謝も、喜びも)

花丸(助かってからじゃなきゃ、何も報われてはいないから)

花丸「善子ちゃん、ダイヤさん」

花丸「最後まで頑張ろう」

花丸「ルビィちゃんを疑うのも、それでも解決の可能性があるとは限らないのも」

花丸「不安は多いけれど、きっと、何とかなるって信じよう」

花丸「少なくとも、ダイヤさんのおかげで善子ちゃんは前に進んだ」

花丸「だからきっと、大丈夫」

花丸「なんとかなるよ」

善子「……そう、ね」

善子「全部終わってから気兼ねなくパーティでもしましょ」

善子「千歌達は意味が解らなそうだけど、気にせず参加してくれるだろうし」

花丸「そうだね」

花丸(明るい会話)

花丸(凄く久しぶりな気がして、温かく感じた)
0683名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/14(火) 21:57:54.70ID:l0dlxwcj
――――――
――――
――

花丸(月曜日が過ぎて、火曜日)

花丸(運命の日が近づく中、昨夜三人で決めた話をするため)

花丸(登校するまでの時間を使って、ルビィちゃん達を呼び出した)

花丸(部屋に来た果南ちゃんと鞠莉ちゃんは朝から何なのかと不思議そうで)

花丸(ルビィちゃんはダイヤさんの目を見ると、察したように小さな笑みを浮かべる)

ダイヤ「朝からすみません」

ダイヤ「調査を始めるにあたって、一つだけ確認しておきたいことがあるんです」

果南「さすがだね。聞かせてよ」

花丸(果南ちゃんの好奇心に答える様子もなく)

花丸(ダイヤさんはルビィちゃんを見つめる)

ダイヤ「単刀直入に聞きます。幼少期の花丸さんと一緒に居たのはルビィでしょう?」

ルビィ「………」

鞠莉「what? 本気で言ってるの?」

ダイヤ「ええ。本気です」
0684名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/14(火) 23:07:02.09ID:l0dlxwcj
ダイヤ「花丸さんの死を聞いた貴女の冷静さ」

ダイヤ「人探しは無駄だと断じたその自信」

ダイヤ「そして、人が死ぬ夢を見たというだけで相談に来た判断」

ダイヤ「ルビィ、貴女にしては……」

ルビィ「おかしかった?」

ルビィ「……おかしいよね。でも、さすがに冷静ではいられなかったよ」

ルビィ「冷静だったら、私はちゃんと高校一年生のルビィでいられたはずだもん」

ルビィ「花丸ちゃんから誰かが死ぬという話を聞いて……お姉ちゃんのことだろうなって思って」

ルビィ「そしたらあんな話を聞くことになっちゃって」

ルビィ「驚いたし、それ以上に悲しかった」

ルビィ「頑張って、頑張って」

ルビィ「私のすべてをかけた呪術でさえ、花丸ちゃんを死ぬ運命から救えなかったんだから」

花丸(ルビィちゃんはあーあ。と、悲しそうな笑みを浮かべながら呟く)

ルビィ「……そうだよ。お姉ちゃん」

ルビィ「花丸ちゃんの小さい頃、一緒に居たのはルビィだよ」
0685名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/15(水) 06:21:43.80ID:QTAbfgr8
果南「合点がいったよ」

果南「本人だから、探そう。じゃなくて無駄だって言ったんだね」

果南「憶測だけで否定する子じゃないと思ってたけど、そっか……」

ルビィ「ルビィが使ったのは、善子ちゃんが使うのと少しだけ似てる」

ルビィ「違うのは、牛ではなく日本人形を使った呪術であること」

ルビィ「そして、代償はルビィの命」

善子「は?」

ルビィ「以前のルビィは15歳だったから、その15年分を人形に込めるという意味で」

ルビィ「髪の毛を切って、人形に埋め込む」

ルビィ「その人形とルビィの血を使って四方陣を組み、陣の中で命を絶つ」

ルビィ「そうすることで、ルビィを供物として呪術が行使される」

花丸「……じゃぁ今ここにいるルビィちゃんは、誰?」

ルビィ「ルビィはルビィだよ。ルビィの願いを引き受けた人形だけどね」

ルビィ「でも、この世界はルビィが形成しているから人間と何も変わらない。血は流れているし、死ぬよ」
0686名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/15(水) 06:31:59.42ID:QTAbfgr8
ルビィ「陣を長く保管されるために人形蔵が適しててね」

ルビィ「ルビィが目を覚ましたのは人形蔵で、目の前には花丸ちゃんがいた」

ルビィ「その時に見られちゃったんだね。きっと」

花丸(ルビィちゃんは簡単なことのように語る)

花丸(自分の命を絶つということは、つまり自殺したということ)

花丸(それをルビィちゃんが躊躇したのかしなかったのか)

花丸(自分を人形だと言ったルビィちゃんの姿勢が、教えてくれる)

花丸(ルビィちゃんは躊躇しなかったんだ)

善子「この世界があんたのものってことは、私が何してたのか全部知ってるのね?」

ルビィ「知ってるけど知らないが答えだよ」

ルビィ「この世界はルビィの呪術によって形成されたけれど、理自体を制御してるわけじゃないからね」

ルビィ「ルビィの呪術はあくまで人形で形成された箱庭であり、その中で作られた箱の中身を覗くことは出来ない」

ルビィ「ただし、何かが起こってることだけは察知できる」

花丸「……だから、あんなに気にしてくれてたんだ」

ルビィ「そのルビィを私は知らないけど、でも、そうだと思うよ」
0687名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/15(水) 06:40:40.91ID:QTAbfgr8
ダイヤ「ではルビィ、貴女は脱する方法を知らないのね?」

ルビィ「そうだよ。だから力になれないって……あぁ」

ルビィ「今、善子ちゃんの呪術はルビィの中で行われてるのは理解できるよね?」

ルビィ「それが可能ということはもしかしたらルビィの呪術ですら、"何かの中"なのかもしれない」

鞠莉「……マトリョーシカのような感じ?」

鞠莉「人形の中に人形っていう」

ルビィ「うん、それがイメージしやすいかも」

ルビィ「だから、箱を開けて行けばどうにかできるかもしれないよ」

ルビィ「ルビィの呪術を破壊して箱庭の外に出る。そこで、もう一度呪術を探し出し、破壊する」

ルビィ「花丸ちゃんが死ぬという運命が回避できないのは、それを人形の内側に内包してしまってるからって可能性がある」

果南「なるほど、一理はあるね」

果南「ただ、破壊した場合どうなる?」

果南「冒険お疲れ様でした。元の世界にお帰りなさいなんて言わないでしょ?」
0688名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/15(水) 06:52:28.69ID:QTAbfgr8
ルビィ「ルビィが呪術を使わなかった世界に戻ることになると思う」

ルビィ「つまり……いや、その前に話しておくことがある」

花丸「話しておくこと?」

ルビィ「うん」

花丸(ルビィちゃんは怪訝そうな顔でダイヤさんを見ると)

花丸(善子ちゃんとマルへと向き直って、少なくともお姉ちゃんはいるんだよね。と、呟く)

ルビィ「善子ちゃんは前の世界で花丸ちゃんを死なせることなく一緒に呪術を使ったけど」

ルビィ「その結果、本来混じるべきではない不純物が紛れ込んだことになるんだよ」

善子「……嫌な予感しかしないんだけど」

ルビィ「間違いないね」

ルビィ「不純物が入るうえで、本来あるべき何かが外に弾かれちゃうんだ」

ルビィ「ルビィの場合、花丸ちゃんと一緒に戻った結果、物心つく前にお姉ちゃんが交通事故で死んでたよ」

花丸「え……」

ルビィ「繰り返して、月曜日の朝。お姉ちゃんはもう先に学校行ったのかと思ったら遺影なんだもん。絶望しかなかったよ……」
0689名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/15(水) 07:00:35.98ID:QTAbfgr8
ルビィ「ただ、そのおかげなのか花丸ちゃんは死ぬことなく日曜日にまで行くことが出来た」

ダイヤ「ですが、私は……」

ルビィ「花丸ちゃんと話し合って、お姉ちゃんを取り戻そうって話をしてね」

ルビィ「最後の手段だった呪術を使って今になった」

ルビィ「15年も戻れば、ルビィが繰り返す呪術を使ったという部分を含めて戻る」

ルビィ「それによってお姉ちゃんが死ぬという結果を生み出すことになったことも無くなって」

ルビィ「お姉ちゃんは死なないままここにいる」

ルビィ「だから、ルビィの呪術を壊した場合、花丸ちゃんはいるけどお姉ちゃんのいない世界に戻ることになるはず」

ルビィ「そこは勘違いしないように気を付けてね?」

ダイヤ「では、その世界で――」

果南「ダイヤ。それを言ったらダメなことくらい、私でもわかるよ」

ダイヤ「っ」

鞠莉「ダイヤがいない世界で良いなら、そもそも二人は来てないわ」
0690名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/15(水) 07:28:01.27ID:QTAbfgr8
善子「誰かがいなくなるなんて、そんな妥協はしたくない」

善子「……だからこそ、この世界もダメね」

善子「花丸が助かるとしても誰かがいないんでしょ?」

ルビィ「うん。お母さんはいたんだよね?」

善子「いたわ」

ルビィ「なら、善子ちゃんの親しい人……Aqoursかな?」

花丸(ルビィちゃんはそう言うと、考え込む)

花丸(誰を、何を)

花丸(失った誰かを推測するルビィちゃんは不意に頷く)

ルビィ「じゃぁ、一つだけ聞くね?」

ルビィ「Aqoursは8人のグループである。あってる?」

善子「なっ」

ダイヤ「違うのですか?」

花丸「違う……9人ずら」

ルビィ「そういうこと……誰かいなくなってる人がいる」

ルビィ「残念ながらルビィは呪術の強制力で誰がいないのかは分からない。すり合わせたほうが早いかな……互いに誰がメンバーかって」
0691名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/15(水) 07:57:37.83ID:mPPMa/8i
>>649
ほっといてあげれ
0692名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/15(水) 08:59:07.45ID:bBWLKpEJ
知能指数たけぇって言ってんだろうが
うゅもピギィもぶっぶーもシャイニーもねぇじゃん
キャラ崩壊させ過ぎ
0693名無しで叶える物語(SB-iPhone)
垢版 |
2020/01/15(水) 17:26:53.08ID:C1cpaN0w
>>692
まずそれが既にかずおのせいでキャラ崩壊させられたあとの設定じゃねえかよ
0695名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/15(水) 20:02:06.69ID:QTAbfgr8
鞠莉「なら、ここにいる全員は除いて……善子から言ってみて?」

善子「言うって言っても二年生だけど……高海千歌」

ルビィ「いるよ」

善子「渡辺曜」

ルビィ「うん、曜ちゃんもいる」

善子「なら……桜内梨子」

ルビィ「いない」

花丸「梨子ちゃん……? なんで?」

花丸(言い方は悪いかもしれないけど梨子ちゃんは全くの無関係のはずだ)

花丸(なのに、どうして? そう悩むのを悟られたのか)

花丸(ルビィちゃんは困ったように首を傾げた)

ルビィ「むしろ関係ないから弾きやすかったんじゃないかな」

ルビィ「お姉ちゃんは花丸ちゃんの代わりに死んだけど、だからこそ花丸ちゃんの想いが結びついて飛ばせなかったんだろうね」

果南「一応、私は名前くらいなら知ってるよ」

果南「千歌の隣に引っ越してくる予定だった家族の一人。表札に名前が書いてあったからね……」

果南「引っ越してくる途中で交通事故に遭ったらしいよ」

ダイヤ「ほんの一時ニュースになっていたあの……ええ。それでしたらわたくしも名前くらいは」
0696名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/15(水) 21:37:31.26ID:QTAbfgr8
善子「……なるほど、千歌が死について敏感って言うのはそれが理由ね?」

果南「そう。誰が来るのかって楽しみにしてたんだけど、結局来ることはなかった」

果南「好奇心を止めなかった私の責任かな」

果南「表札の名前を見ちゃってね……それで」

花丸「梨子ちゃんがいない世界……作曲は誰がしてるんだろう」

ルビィ「誰って……それは」

鞠莉「善子よ。なんだっけ、ボーカロイド? とかいうやつでちょっとだけやったことあるからって」

善子「えぇ……」

花丸(本気? と言いたそうな善子ちゃんの苦い表情)

花丸(マルはぼーかろいどがどういうものか知らないけど、知ってる善子ちゃんがそんな顔をするなら)

花丸(あんまりいいものではなさそうだ)

善子「変なことになってるわね……まったく」

善子「それで、ルビィの術式を壊した場合の影響は?」

ルビィ「梨子……ちゃん? さん? は戻ってくるはずだよ。ルビィの術式を壊すにあたって、通れるのは一人だけだから」

ルビィ「因果を崩壊させる花丸ちゃんじゃなく、善子ちゃんがやるのなら。だけどね」
0697名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/15(水) 21:46:38.49ID:QTAbfgr8
善子「花丸も一緒じゃないの?」

ルビィ「可能だとしてもやめたほうが良いけど、無理だよ」

ルビィ「呪術を使うのではなく、壊すことで回帰させる以上」

ルビィ「壊した人以外が回帰の波に耐えられるとは思えない」

ダイヤ「その呪術破壊は複数人で行うことは?」

ルビィ「んーどうだろう。無理だと思う」

ルビィ「複数人での儀式ならともかく、私一人だからね」

果南「そっか……善子ちゃん、花丸ちゃんはそれで大丈夫?」

善子「大丈夫なんて聞かれても困るわよ」

花丸(ダイヤさん達ではそもそもの輪から外れてしまうことになる)

花丸(つまり、可能なのは善子ちゃんとマルで、マルが不可能なら残るは善子ちゃん)

花丸(要するに、選択肢など存在しない)

善子「せっかく、花丸を連れ出したのに」

花丸「マルがいなくてもマルはいるしみんながいるずら」

花丸「善子ちゃんなら大丈夫」

善子「煽てられても困るんだけど」
0698名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 06:17:04.65ID:0b3pRleY
善子「また一から説明するのね……信じて貰える自信がないわ」

果南「私は例のやつで良いと思うよ」

果南「実際、あれがあっての今だから」

鞠莉「what? 何の話?」

果南「こっちの話」

花丸(選択肢はなく、善子ちゃんは困ったように頷く)

花丸(善子ちゃんしかいない、善子ちゃんしかできない)

花丸(マルも何かできたらいいのに、何もできない)

花丸(マルには、果南ちゃんのようなキーワードなんてないから)

善子「分かった。分かったわよ。やるしかないし」

善子「ルビィ、その呪術の破壊方法は分かってる?」

ルビィ「うん……分かってる」

花丸(ルビィちゃんは躊躇いがちに頷く)

花丸(それしかないとしたのはルビィちゃんなのに)

花丸(善子ちゃんしかいないとしたのはルビィちゃんなのに)

ルビィ「ただ……善子ちゃん以外は聞かない方がいいと思う」
0699名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 06:24:03.85ID:0b3pRleY
花丸「え?」

ダイヤ「なぜ?」

ダイヤ「呪術の破壊がどの程度の規模かは分かりませんが、準備含め一人では難しいこともあるのでは?」

ルビィ「破壊まではルビィが手伝うよ。道具の準備とか」

ルビィ「ただ、実際にする内容は……」

果南「……あぁ」

鞠莉「果南?」

果南「んー……いや、まぁ、そういうこと?」

善子「何よ。なんなのよ」

花丸(ダイヤさんと鞠莉ちゃん、それとマル達をよそに)

花丸(果南ちゃんは何かに気付いて呟きながら、目を見開く)

花丸(ありえないものを見ている感じの瞳、そこに映っているのは何なのだろう)

果南「ルビィちゃん、今までの話を全部信じるなら方法は一つしかないんだけどさ」

果南「本当に、絶対にそれ以外にはないの?」

ルビィ「ないですよ」

果南「知らないだけ……じゃ、なさそうだね」
0700名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 06:31:28.57ID:0b3pRleY
ダイヤ「果南さん、分かっているのなら話してください」

鞠莉「そうよ果南、非常時なんでしょ?」

果南「そうなんだけどルビィちゃんの気持ちもわかるって言うか」

果南「間違ってて欲しいって本能が否定したいって言うか……」

ルビィ「邪魔しないって約束できるなら良いよ」

ルビィ「前提としてそれ以外に方法はないことを分かっててもらいたい」

ルビィ「それをしなければ桜内さんは返ってこない……まぁ、私達この世界の人にとってはそこまで重要な人でもないんだけどね」

善子「ルビィ!」

ルビィ「事実だよ。この世界のAqoursにとって桜内さんは無関係に等しい」

ルビィ「いようがいまいがどっちだっていい。だから、花丸ちゃんが助かるなら尊い犠牲と思おう」

ルビィ「……なんて言われても困るんだよね。特に、お姉ちゃん」

ダイヤ「わたくし、ですか?」

果南「そうだね。あと、鞠莉もあんまり聞きたくない話だろうね……いや、誰でも嫌がるか」
0701名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 06:43:29.91ID:0b3pRleY
鞠莉「もうっ! いい加減にして!」

鞠莉「止めるか止めないか、何も聞かずに言えるわけがないわ」

鞠莉「果南、ルビィ。分かってるなら話して」

ルビィ「………」

花丸(鞠莉ちゃんの怒った声に怯えた様子はなく、黙り込むルビィちゃんの視線は果南ちゃんに向かう)

花丸(果南ちゃんもルビィちゃんを見て、それを受けてかルビィちゃんは頷く)

ルビィ「この世界はルビィが使った人形による箱庭なのは話してた通り」

ルビィ「そして、さっきしれっと言ったけどその箱庭を形成している人形こそ今みんなの目の前にいるこの私なんだ」

ルビィ「呪術の破壊とはこの世界の破壊」

ルビィ「要するに破壊する方法は……私を殺すってこと」

ダイヤ「ふざ――」

ルビィ「ルビィがふざけてるわけない。ましてや冗談で言うわけがないよ」

果南「この世界はルビィちゃんが形成してるってさらっと言ってたからね。そうかなと思ってたけどやっぱりそうなんだね」
0702名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 07:18:59.36ID:0b3pRleY
善子「殺す? 私が、ルビィを?」

ルビィ「うん。実際に呪術が行われた人形蔵で殺して貰う」

ルビィ「この世界を形成してる主軸だから、ルビィが死ねばこの世界は崩壊して再構築されるし」

ルビィ「その世界で殺人云々って問題にはならないから安心して良いよ」

ルビィ「善子ちゃんなら知ってるよね。世界は五分前に作られてるってやつ」

ルビィ「まさにそれだよ」

ダイヤ「待って……待ってルビィ。本気ですか? 本気で死ぬと?」

ルビィ「それ以外に道はない。善子ちゃんと花丸ちゃんが桜内さんを犠牲にして良いって言うならまた別だけどね」

ルビィ「……そもそも、私は黒澤ルビィを模した人形だから」

ルビィ「人形が一人の人間として生きていること自体誤りだとするなら、これは必然の帰結」

ルビィ「我儘過ぎたんだよ。ルビィは」

ルビィ「花丸ちゃんもお姉ちゃんも失いたくない。誰も殺したくないなんて」

ルビィ「それが巡り巡って殺され殺させることになった。それを背負わせる善子ちゃんには申し訳ないなぁって思うよ」
0703名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 07:27:04.84ID:0b3pRleY
花丸(ルビィちゃんは笑う)

花丸(まるで、本来のルビィちゃんのように)

花丸(人形だというのが殺させるための嘘にも思える自然さ)

花丸(だけどそれはきっと、嘘なんかではなくて)

善子「……時間」

善子「少しだけ時間をくれない?」

ルビィ「なら今日一杯はその時間にしよっか」

ルビィ「桜内さんが死んだことで、花丸ちゃんは死ぬ運命からそれているはずだけど」

ルビィ「ここまで引っ掻き回した私達を許してるとは思えないし」

ダイヤ「………」

鞠莉「ダイヤ……」

ダイヤ「すみません、一人にしてください」

ダイヤ「学校は……行く余裕がありませんから、お休みします」

果南「……そうだね」

花丸(影を落とすダイヤさんが部屋から出て行ったのを目で追った果南ちゃんは息の混じった声で呟く)
0708名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 22:21:34.53ID:0b3pRleY
――――――
――――
――

花丸(結局ダイヤさんと鞠莉ちゃんが学校を休み、それ以外のみんなは登校することにした)

花丸(本当は鞠莉ちゃんじゃなく果南ちゃんが休む予定だったみたいだけど)

花丸(状況を考えてか、果南ちゃんが学校に来てくれることになった)

花丸(ルビィちゃんは昨日とそんなに変わらない雰囲気だ)

花丸(まるで、死ぬだの殺されるだのの話が聞き間違いだったかのように感じるその一方で)

花丸(善子ちゃんの沈んだ表情が現実へと引き込む)

花丸(それはクラスメイトにも伝わってしまうようで、心配そうなな雰囲気を醸し出しつつも)

花丸(誰一人として声をかけてきたりはしないまま……お昼休み)

善子「………」

花丸「善子ちゃ」

善子「……大丈夫。ちょっと、見ておきたいところがあるだけ」

花丸(おもむろに席を立った善子ちゃんは、呼び止めることすら許さずに答えて教室を出ていく)

花丸(見ておきたいところがどこかなんて、考えるまでもない)
0709名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 22:50:53.62ID:0b3pRleY
ルビィ「お弁当。一緒に食べてもいいかな?」

花丸「へっ、あっ……うん」

ルビィ「お邪魔します」

花丸(登校途中に用意したお昼)

花丸(同じお店のちょっと違うマルとルビィちゃんのお昼が机を埋める)

ルビィ「なんだか"知り合い"みたいだね」

花丸「そうかな」

ルビィ「そう感じるよ。少なくともルビィ……私達はそう感じてるはず」

花丸(知り合い。友達でも親友でもなく、知り合い)

花丸(今までと比べれば繋がりの酷く薄れた表現が、齧ったパンの欠片を飲み込ませない)

ルビィ「実際、私から見た二人はまだ二日目の顔見知りだし、二人から見た私だってそれと同じようなものじゃないかな」

花丸「そんなことないよ」

ルビィ「そっか。それが私の見当違いだったかな……違う。私の考え方が変わりすぎたんだろうね」
0710名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 23:00:34.91ID:0b3pRleY
花丸「例の話をしたこと、後悔してるの?」

ルビィ「してないよ。してない……そこが私の狂ってるところなのかもしれない」

ルビィ「必要なことだから。たったそれだけであんなにも簡単に話せちゃったんだからね」

花丸(手が止まってしまうマルの目の前でルビィちゃんは食べ進めていく)

花丸(本当に違う……全然)

花丸(ルビィちゃんは殺される必要があることを恐れてない)

花丸(殺させてしまうことを申し訳なく思っているのに、それ以外の道がないという絶対的な諦念がある)

ルビィ「ねぇ、花丸ちゃんと善子ちゃんは幼馴染?」

花丸「え……そう、だけどもしかしてこっちでは違うずら?」

ルビィ「こっちでは同じだよ。でも、向こうではどうかな」

ルビィ「向こうだと、花丸ちゃんの幼馴染はルビィだったんだ」

ルビィ「……同じことにならないようにって色々と避けてきたこともあるけど」

ルビィ「それ以前に違うことも多いんだよね……多分、それが世界を構築するってことなのかも」
0711名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/16(木) 23:13:03.29ID:0b3pRleY
ルビィ「ただ、それでも変わらないことがある」

ルビィ「ルビィが花丸ちゃんたちに出会ってしまうこと」

ルビィ「人数の多少はあってもAqoursが結成されること」

ルビィ「それと……死ぬこと」

花丸「だから、ルビィちゃんは運命だって?」

ルビィ「どうなんだろうね」

ルビィ「善子ちゃん達の話を聞いて、改めて考えてみたんだけど」

ルビィ「お姉ちゃんの意志が花丸ちゃんの死を妨げたのがただの偶然じゃないのだとしたら」

ルビィ「全部、誰かの強い意志が働いているだけなのかもしれないよ」

ルビィ「Aqoursは千歌ちゃんが、私達は私達が」

ルビィ「だとしたら、花丸ちゃんが死ぬようにと強く思ってるのは……」

ルビィ「そこだけが分からない。花丸ちゃんが恨まれるはずない。花丸ちゃんがそう願われるはずがない……だから、答えが見つからない」
0712名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/17(金) 06:15:28.41ID:7K9yJqr9
ルビィ「私達はここでゲームオーバー」

ルビィ「向こうの世界にも花丸ちゃん達がいるのはいるけど」

ルビィ「でもそれは花丸ちゃん達であって、"今ここにいる花丸ちゃん達"じゃない」

ルビィ「何か、話しておきたいことはないの?」

花丸「……無理をしなくてもいいよ。って、くらいかな」

花丸(殺さないでなんて言ってしまった)

花丸(助けて欲しいと言ってしまった)

花丸(その時考えていた以上に責任は重く、殺意は強く、脱するための方法は常軌を逸してる)

花丸(その過去に戻り、無かったことに出来たらどれだけ良いだろうと、今は思わずにはいられない)

花丸「でも、さすがに言えないよ」

花丸「マルが死んで終わるならそれもいいかもしれない」

花丸「けど、梨子ちゃんがマルの身代わりに消えてしまっている以上それは出来ない」
0713名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/17(金) 06:26:08.67ID:7K9yJqr9
花丸「……ルビィちゃんが助けたマルは、何か言ってた?」

ルビィ「ルビィの幼馴染は死ぬことを受け入れてた」

ルビィ「早いか遅いか、どう死ぬかの違いだけ。そこに誰かの意志が介入していようと」

ルビィ「世界的に見ればそれは一つの命が終わる運命でしかないんだよ。って……笑ってた」

ルビィ「手を引いた時、花丸ちゃんに振り払われたこともある」

ルビィ「運命を変えるということは、誰かの運命を捻じ曲げることになる」

ルビィ「だから、それがどれだけ理不尽であろうと受け入れなければいけないのが理なんだって、ね」

花丸(ルビィちゃんは食べ終えたパンの空き袋から空気を抜くと)

花丸(話しながら綺麗に折りたたんで、買い物袋の中に入れていく……机の上には、マルの分だけが残った)

花丸「それでも助けたんだよね?」

ルビィ「うん」

花丸「何も言われなかった?」
0714名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/17(金) 06:52:25.83ID:7K9yJqr9
ルビィ「色々言われたよ。実際、ルビィは花丸ちゃんを助けた結果お姉ちゃんに会えなくなったし……」

ルビィ「ルビィが呪術を使ったという事実そのものを上回る回帰呪術を用いることで、ルビィは逃げるしかなかった」

花丸「もしそのマルだったら、初めから助けてなんて言わなかったのかな?」

ルビィ「言わなかったと思うけど、でも、それはそれ。これはこれだよ」

ルビィ「さっき言ったけど、違う部分は存在する」

ルビィ「もう一人の自分がどうしたかなんて考える必要はないし、考えるなら自分がどうしたいかを考える方がいい」

花丸「……ルビィちゃんは凄いね」

ルビィ「何も凄くはないよ。自分が自分ではないという記憶がある人形だからってだけだもん」

花丸「ルビ……」

ルビィ「……あっ、お昼の時間無くなっちゃうよっ」

花丸(ルビィちゃんらしい声と表情……雰囲気)

花丸(でも、知っているルビィちゃんじゃないと……今はもう、はっきりと分かってしまう)
0715名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2020/01/17(金) 08:54:18.91ID:LgGtYhpK
起 ループ発覚
承 ダイヤが犠牲となって別ループ
転 ルビィを殺す←今ここ
結 ハッピーエンド(断言)

別の呪術使用者がいるならルビィ殺しは承でそれが転かもしれない
これスレッド容量足りないのでは?(推測)
0716名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/17(金) 12:49:21.49ID:QXdL/feu
さっさとルビィ殺して世界崩壊みんな仲良く消滅ENDで終われば良いのにな
0717名無しで叶える物語(あら)
垢版 |
2020/01/17(金) 19:01:00.33ID:fNMhlWOY
スレまたいでいいから完結して欲しい
0720名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/17(金) 23:54:22.16ID:7K9yJqr9
――――――
――――
――

花丸(善子ちゃんは時間ギリギリで戻ってきた)

花丸(横を通ったときの悲しそうな表情……梨子ちゃんの存在は本当になかったんだろう)

花丸(救うためには何かを傷つけなければいけない、失わなければいけない)

花丸(世界にそう、諭されているようで……)

花丸(放課後になると、席を立った善子ちゃんにルビィちゃんが近づいた)

善子「……なに?」

ルビィ「昨日と同じ部屋だって。善子ちゃんが連絡見てないだろうから伝えてって」

善子「そう」

花丸(今日の善子ちゃんの空気もあってか、遠巻きに心配そうな目が向けられる中での、囁く会話)

花丸(二人が喧嘩したんじゃないか)

花丸(ふと聞こえた呟きの平和さに、それならどれだけ良かっただろうかと思う)

花丸(二人と一緒に教室を出て、何も会話をしないままバスに乗る)

花丸(人のまばらなバスの中、善子ちゃんのほっとしたため息が聞こえた)
0721名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 00:40:32.99ID:Eir5U68a
善子「大丈夫そうね」

ルビィ「……桜内さん、どうだった?」

善子「影も形もなかったわ」

善子「転校前だったからか、ほんと……何にもね」

ルビィ「そっか……」

ルビィ「……全てを背負わせるのは悪いと思ってるよ。でもそれ以外にない」

ルビィ「恨んでくれていいし、憎んでくれてもいい」

ルビィ「その方が、やりやすいだろうからね」

花丸(マルを間に挟んで隣に座る善子ちゃんへと、ルビィちゃんは優しく語りかける)

花丸(ただ、その優しさは痛い)

善子「……ふざけんじゃないわよ」

善子「恨めも憎めもしない……そんなことがあるわけがないでしょ」
0722名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 00:59:26.46ID:Eir5U68a
善子「あんたが命を賭けてくれたから私は生まれることが出来た」

善子「今は辛い。苦しい。けど、ルビィが悪いわけじゃないし」

善子「繰り返して、何とかしようとしたのは私の意思」

善子「……だから」

花丸(善子ちゃんは言葉半ばに口を閉ざす)

花丸(きゅっと結ばれた唇、俯きがちのせいか垂れた髪の影が重い)

善子「だから、こそ……私……」

花丸「………」

花丸(無理しないでなんて口が裂けても言えない。ありがとうなんて嫌味にも程がある)

花丸(何が言えるだろう。何ができるだろう)

花丸(発端になっているマルに、かけてあげられる言葉は……)

花丸(きっと、何も言わないのが正解だ。何も言わずに……ただ)

善子「っ」

花丸(善子ちゃんの膝上で震える手に、手を重ねる)

花丸(傍に居る。力がなければ声もない。影も形もないけれど……でも、いるからね。と、善子ちゃんの手を握るだけだ)
0723名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 12:11:20.24ID:Eir5U68a
花丸(善子ちゃんがルビィちゃんを殺さずにこのままを選ぶとしても、責められない)

花丸(梨子ちゃんがいない世界)

花丸(マルを生き延びさせようとしたせいで、梨子ちゃんが消えてしまった世界)

花丸(責任はマルにある。罪はマルにある)

善子「……なによ」

花丸「へ?」

善子「ゲームの恋愛イベントでもあるまいし、もっと何か言ったっていいのに」

善子「何も言わないで……そんな顔して……」

花丸「善子ちゃん?」

善子「花丸を助けるという"理由"でも、そうすると決めて"行動"したのは私」

善子「花丸がそんな顔をする理由も、梨子のことを背負う必要もない」

善子「それは私の役目よ……ここから先に行く、私の役目」

善子「私が頑張ったのも、ダイヤが助けてくれたのも……こんな場所で諦めるためじゃないッ」
0724名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 14:04:26.65ID:Eir5U68a
花丸(善子ちゃんの手が、強く握り拳を作る)

花丸(力も言葉も強いけれど、心がそれに耐えられるかどうかは別だ)

花丸(特に、マルみたいに間接的じゃなく)

花丸(ルビィちゃんを直接殺すなんていう行いは……)

ルビィ「なら、やれるね?」

善子「ええ」

ルビィ「じゃぁ……そうだなぁ」

花丸(善子ちゃんが頷くのを見ると)

花丸(ルビィちゃんはちょっとだけ悩んでいるようなそぶりを見せる)

ルビィ「あとはお姉ちゃんかなぁ……」

花丸(ルビィちゃんを殺すこと)

花丸(ダイヤさんが許可を出すなんて思えない。許してくれるなんて思えない)

花丸(なかったことになるとしても、殺したことに変わりはないから)
0725名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 16:05:34.93ID:Eir5U68a
花丸(バスを降りて、果南ちゃんの協力で淡島へと向かう)

花丸(昨日借りたホテルの一室では、ダイヤさんと鞠莉ちゃんが待機していて)

花丸(ルビィちゃんのただいま。という声に、ダイヤさんは「おかえりなさい」と静かに返す)

ダイヤ「善子さん、決まりましたか?」

善子「……やるわ」

ダイヤ「ルビィ、花丸さんも?」

ルビィ「私は善子ちゃんがやり遂げてくれるなら異論は無いよ」

花丸「マルも……ない」

果南「私は一つだけ聞きたいかな」

果南「本当に呪術の破壊が出来るんだよね? 呪術破壊に失敗して何もなくルビィちゃんが死ぬだけなんてことはないよね?」

ルビィ「そこは約束できるよ」

ルビィ「そもそも、私の場合は絶命した時点で黒澤ルビィを維持できなくなるから」

ルビィ「死ねばただの人形になって砕け散るよ……もっとも、それが観測された時点で破壊に失敗したということになるけど」
0726名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 16:27:56.89ID:Eir5U68a
ダイヤ「……そんな易々と!」

花丸(ダイヤさんの怒号が響く)

花丸(善子ちゃんとマルだけが、その震えた空気に後退って)

花丸(果南ちゃんも鞠莉ちゃんも何も言わない)

ダイヤ「易々と……絶命などと」

ルビィ「私は死ぬ話をしてるんだよ? 死ぬかもしれないじゃなく、死ぬ話」

ダイヤ「ええ分かっています。ですが、そもそもそんな話を」

ルビィ「必要だからしてるんだよ。お姉ちゃん」

ルビィ「お姉ちゃんがルビィを愛してくれてたのは知ってる。その温もりも優しさも」

ルビィ「それを失ったルビィにとって手放しがたい幸せであることに間違いない」

ルビィ「それでも私はこの命を捧げると言う」

ルビィ「私はルビィの命を引き継いだ。願いと祈りを引き受けた」

ルビィ「だから……それを成し遂げられる可能性があるのなら命を賭すことを厭わない。その考えは変えられない」
0727名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 16:53:03.53ID:Eir5U68a
ダイヤ「人形と言えど、これまで生きてきた立派な人でしょう?」

ダイヤ「それなのに命を捨てるなんて」

ルビィ「捨てないよ」

ルビィ「ルビィが死んだことで私がここにいるように」

ルビィ「私が死ぬことで、芽吹くものは必ずある。私の命は過去の願い。それを無駄遣いなんてさせないよ」

花丸(自分の胸に手を宛がって意思を語るルビィちゃんは強く見えて)

花丸(それを見つめているダイヤさんはとても悲しそうで)

花丸(ダイヤさんの下ろされた手が、固まっていくのが見えた)

ダイヤ「貴女は、生まれたときからわたくしの傍に居てくれました」

ダイヤ「長女の私が担えばいい稽古を、貴女はとても楽しそうに付き合ってくださいました」

ダイヤ「……貴女は自分を人形だと言うけれど、わたくしにとっては貴女こそがルビィです」

ダイヤ「愛しています。たとえ、世界が変わってしまうとしても……ずっと」
0728名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 17:07:58.06ID:Eir5U68a
花丸(本当は、認めるなんて嫌なはずだ)

花丸(そんなことなんて絶対にさせたくないはずだ)

花丸(だけど、今のルビィちゃんは今までのルビィちゃんとは全く違う異質さを感じさせる)

花丸(あえてそうさせているのか、もう偽る必要がないからなのか)

花丸(立ち位置の違うマルには分からない)

花丸(だけど、それがルビィちゃんの言葉を真実に昇華する)

花丸(拒みようのない"過程"であると証明する)

花丸(だからこそ……ダイヤさんも認めざるを得ない)

鞠莉「けど、向こうでいないのはダイヤなんでしょう?」

鞠莉「それについて何も言わないんだから、ダイヤもダイヤよ」

ダイヤ「わたくしは良いのです。年長者として先立つ覚悟はできていますから」

ルビィ「言っておくけど、私はルビィの15年を合わせて三十路の最年長だからね?」
0729名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 18:27:30.21ID:Eir5U68a
果南「それを嬉々として語るのはどうなんだろう……」

ダイヤ「その割に、成績は中間でしたが?」

ルビィ「出る杭は打たれるからね」

ルビィ「世界への影響力を考えれば、大きすぎる変革は世界そのものの崩壊を招きかねないんだよ」

果南「って、言い訳かな?」

ルビィ「違うもん!」

花丸(ルビィちゃんはむっとして声を上げる)

花丸(ほんの少しだけ、優しい空気)

花丸(いつも見るものではないけれど、穏やかで愛おしい)

花丸(隣に立つ善子ちゃんは、寂しそうな笑顔でそれを見ている)

花丸(失ったもの、守れなかったもの)

花丸(これから……手に入れようとしているもの)

善子「……花丸、私ね」

善子「花丸がいてくれなかったら、私はきっとただ頭のおかしいことをしてる高校生でしかなかったんじゃないかって思ってるの」
0730名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 18:57:37.43ID:Eir5U68a
花丸「ん?」

善子「笑わずに聞いてよね……」

善子「私はただの厨二病だった。高校生にもなって、ヨハネだのなんだのって」

善子「そんな私を、花丸はAqoursに入れるようにしてくれた」

善子「こんな私のバカみたいな言動を、呆れながらもかまってくれたのが花丸だった」

善子「ちょっと痛いツッコミもあったりしたけど、でも、人との繋がり方に不安しかない中で」

善子「無視せずに付き合ってくれてるってことが、私にとっての救いだった」

善子「だから、私は花丸を諦められない」

善子「神が花丸を殺すと言うのなら、私はこの手で神の首を絞め殺す」

善子「やるわ。私……やり遂げて見せるわ」

善子「そのために、私はもう一度だけヨハネを名乗る」

善子「だから……花丸はまた、馬鹿なこと言ってって、背中を叩いてくれない?」
0731名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 19:14:18.31ID:Eir5U68a
花丸(背中を押せと、善子ちゃんは言ってるんだと分かってしまう)

花丸(引いてしまう手を握らずに、拒絶するように背中を叩いてと)

花丸「良いの?」

善子「良い」

花丸(善子ちゃんの声ははっきりとしているのに、マルの声は頼りない)

花丸「きっと、すっごく痛いよ」

善子「それが良いの」

花丸「もしかしたら躓いちゃうかもしれないよ」

善子「もう二度と躓かないわ」

花丸(優しく、笑いも混じっているような善子ちゃんの声)

花丸(覚悟を決めたと分かるその声に、どうしてもう終わりにしようと言えるだろうか)

花丸(バスの中で手を掴まずに抱きしめていれば……もう終わりにしようと言えてさえいれば)

花丸(マルは善子ちゃんを失わずに済んだのだろうか)

花丸(顔を上げれば、善子ちゃんの自信に満ちた横顔が見える)
0732名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 19:31:14.73ID:Eir5U68a
花丸(あぁ……大丈夫だ)

花丸(あの日見た、ヨハネを彷彿とさせる自信に満ちたこの善子ちゃんなら)

花丸(握った拳を解く)

花丸(息を吐いて……唇を噛み合わせる)

花丸「仕方がないなぁ……ヨハネは」

善子「……善子でしょ」

花丸「マルにとっての始まりは、善子ではなくヨハネだったよ」

善子「だから――」

花丸(持てる力の全力で)

花丸(勢いよく振った左手で、善子ちゃんの腰のあたりを引っぱたく)

善子「ひぐっ!?」

花丸(部屋に響く大きな音。集まる視線)

花丸(痛がる善子ちゃんにだから言ったのにと……微笑む)

花丸(帰ってきて欲しくないから、行ってらっしゃいもさよならも言わないよ。なんて、心にもなく思った)
0733名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/18(土) 22:55:11.88ID:Eir5U68a
ルビィ「……良い顔をするようになったね」

善子「そう? 変わらないと思うけど」

ルビィ「変わって見えるよ。きっと、向こうの面倒くさい花丸ちゃんもすぐに察してくれると思う」

善子「面倒くさいってどんな感じなのよ」

ルビィ「少なくとも、生きる気はないかな」

ルビィ「死ぬ運命を話しても受け入れるだけで抵抗しようとしない」

ルビィ「善子ちゃんが頑張るなら付き合ってくれるっていう感じ」

ルビィ「ルビィの時もそうだった」

ルビィ「協力はするけどするだけって感じだったね」

ルビィ「諦めても恨みも憎みもする気はないと言うか……むしろ、それでいいって促してくる感じ」

果南「それは……困ったね」

ルビィ「手強いよ。それでも、やれるんだよね?」

善子「やると決めたからにはやるわよ。あんたが心配してることだって……心配ないわ」
0734名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/19(日) 00:00:20.79ID:7KLfJfWL
花丸(善子ちゃんの言葉に、なぜかルビィちゃんは驚いた顔をする)

花丸(ルビィちゃんが心配していることはマル達が知ってることとは別にあるのか)

花丸(それを聞こうかとしたところで、ルビィちゃんが笑顔を見せた)

ルビィ「それなら……後顧の憂いはないね。安心して任せられる」

ダイヤ「ルビィ、何かあるの?」

ルビィ「ううん、大丈夫。大丈夫だよ」

花丸(ルビィちゃんは心底安堵したように言うと)

花丸(ぐっと体を伸ばして、鞠莉ちゃんへと目を向ける)

ルビィ「鞠莉ちゃん、用意はできた?」

鞠莉「……やるのね?」

ルビィ「うん。花丸ちゃん、人形蔵に入れるよう交渉をしてくれないかな」

花丸「今日はさすがに無理だと思うよ?」

花丸(そうは思いつつも電話をしてみると……意外にも、許可が出てしまった)
0735名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/19(日) 00:39:02.24ID:ijdU9Jzh
ルビィが知的なのは三十路だとしてもよしまるもいちいち知的過ぎるんだよなぁ…
馬鹿は天才を書けないらしいがその逆パターンか?
0738名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/20(月) 06:42:25.33ID:Mhvzjma6
花丸(深夜、みんなが寝静まるころに)

花丸(マル達はこっそりと人形蔵に忍び込む)

花丸(月曜日の朝ににおわせることになっていたこともあって)

花丸(人形蔵の中を見たいという要望は思っていた以上に簡単に叶えて貰えた)

花丸(明日の朝に返すね。と、言ったけれど、返せてしまったら大変なことになる)

果南「……なんかちょっと、不気味だね」

善子「環境的に考えればこんな時間に来ちゃダメな場所だしね」

鞠莉「心なしか……外よりも寒く感じる」

ルビィ「陣はルビィがやるから、善子ちゃんは道具の確認をしておいて」

ルビィ「肋骨や胸骨が邪魔になるから、刃は立てずに寝かせること」

ルビィ「心臓を一突きしたら、鍵を開けるように捻って抜く」

ルビィ「それが一番儀式的に正しく、そして早いと思う」
0739名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/20(月) 06:49:10.51ID:Mhvzjma6
ダイヤ「っ……」

花丸「ダイヤさん、ここからは無理に立ち会わなくても大丈夫だよ?」

ダイヤ「大丈夫です。大丈夫、ですわ」

ダイヤ「……ルビィ、この人形はどこに?」

ルビィ「人形はルビィを囲むように四方向、仰向けに倒しておいて欲しいかな」

ダイヤ「わかったわ」

花丸(辛そうな表情は変わらないけれど、ダイヤさん達も協力をしてくれる)

花丸(ルビィちゃんを殺す必要のある儀式)

花丸(オカルトなことを信じてくれるのは、果南ちゃんが言ったように信じてくれているからだろう)

花丸(少なくとも……冗談なんかじゃないって)

花丸(ほどなくして準備は終わる)

花丸(ルビィちゃんを囲むように倒れた人形)

花丸(人形同士をつなぐ陣、ルビィちゃんと直結する陣)

花丸(正座するルビィちゃんが、深く息を吐く)
0740名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/20(月) 06:58:28.97ID:Mhvzjma6
ルビィ「じゃぁ始めるよ」

ルビィ「善子ちゃん、ルビィを押し倒す勢いで突き刺してね?」

善子「……分かってる」

ルビィ「お姉ちゃん、鞠莉ちゃん、果南ちゃん」

ルビィ「辛ければ見ている必要はないからね?」

花丸(ルビィちゃんの気遣いにみんなが首を振る)

花丸(分かってる。ではなく、大丈夫という意思)

花丸(ルビィちゃんは困ったように笑うと、白衣を脱いで襦袢のみになる)

ルビィ「……ふぅ」

花丸(ルビィちゃんは息を吐き、目を瞑って祈るように手を合わせる)

花丸(人形のすぐそばに置かれた蝋燭の火が、かすかに揺れる)

花丸(ルビィちゃんの唱える呪術的な言葉は、呟くような声で聞き取り辛い)

花丸(けれど……きっと聞き取ってはいけないものだと総毛立つ)
0741名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/20(月) 07:20:51.17ID:Mhvzjma6
花丸(数分間の呪詛)

花丸(蝋燭の火が大きく揺らいで……ルビィちゃんの影をかき消す)

ルビィ「……っ!」

花丸(ルビィちゃんは自分の手首を思いっきり切ると)

花丸(その血を人形へと振り撒いていく)

花丸(4つの人形が赤色に染まっていく中で、ルビィちゃんは自分の切った手首を優しく撫でて)

花丸(その血を紅として唇に塗り……善子ちゃんが使う包丁に口づけする)

善子「………」

花丸(互いに言葉はなく、善子ちゃんは包丁を受け取って)

花丸(こっちに来てから練習したルビィちゃんの心臓の位置めがけて――包丁を力強く突き刺す)

花丸(鈍い衝撃音、揺れるルビィちゃんの体、うめき声がルビィちゃんの口から飛び出して)

花丸(善子ちゃんは強く唇を噛みながら、包丁をひねって引き抜いた)
0746名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/21(火) 06:30:23.25ID:8ElfBu7s
ルビィ「っぁ……」

ダイヤ「ルビィ……っ」

花丸(仰向けに倒れたルビィちゃんの苦しそうな声に、ダイヤさんは見ていられなくなったのか目を伏せて)

花丸(善子ちゃんの持っていた包丁から血が飛ぶ)

善子「はぁっはぁ……くっ」

果南「だめだ、浅い……」

花丸「え?」

ルビィ「……ぁっ」

花丸(ルビィちゃんは震える左手で自分の胸を撫でると)

花丸(握り切れない中途半端な手で、人差し指をたてる)
0747名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/21(火) 06:36:32.03ID:8ElfBu7s
善子「ごめん……っ、ルビィ」

ルビィ「く……っぁ」

花丸「………ルビィちゃん」

花丸(目を逸らすわけにはいかないと、唇を噛み、爪を立てて握り拳をつくる)

花丸(その痛みはルビィちゃんには遠く及ばない)

花丸(けれど、ルビィちゃんはマルのために命を賭けてくれてるから……少しでも。じゃダメなんだ)

花丸(そのすべてをちゃんと、たとえ引き継がれることがないとしてもこの命に刻まないといけない)

善子「ふーっ……ふー……っ」

花丸(善子ちゃんはルビィちゃんに跨ると、一度刺した胸元に包丁をたてて持ち手の先に右手の平を置く)

花丸(ルビィちゃんの表情は苦しそうなのに……笑顔で)

花丸(浮かぶ冷や汗と、穴の開いてしまった心臓から溢れた一部か……咳き込むたび、口元から血が出ていく)
0748名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/21(火) 06:47:22.88ID:8ElfBu7s
花丸(ルビィちゃんは何か言いたそうで)

花丸(けれど、言葉を発するほどの力はもうないのか……唇が震えるだけ)

花丸(ダイヤさんを鞠莉ちゃんが抱きしめているのが横目に見える)

花丸(唇を噛み切った果南ちゃんの苦渋に歪んだ顔が見える)

善子「……分かってる。絶対にやり遂げて見せるから……待ってて」

花丸(善子ちゃんは、ルビィちゃんに包丁を突き立てたまま、極めて明るく声をかけた)

花丸(殺そうとしている状況とは思えないほど優しく、温かく)

花丸(場に不釣り合いなほどの笑顔を浮かべて)

ルビィ「……が……ぃ」

花丸(ルビィちゃんのかすれた声)

花丸(善子ちゃんはそれを聞いて、添えていた右手で強く握り拳を作り……解く)
0749名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/21(火) 06:56:51.52ID:8ElfBu7s
善子「くっ!」

花丸(善子ちゃんはその右手で包丁の持ち手の先を力強く叩く)

花丸(持ち手を殴られた包丁は今度こそ、ルビィちゃんの心臓をしっかりと貫いたのだろう)

花丸(ルビィちゃんの体はその勢いでわずかに浮いて、痙攣して)

善子「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!」

花丸(善子ちゃんは叫ぶままに包丁を力一杯に捻って抜く)

花丸(血が、はね飛ぶ)

花丸(ルビィちゃんの体から流れ出ていく血の量は少しずつ増えていく)

花丸(裂けた胸の肉を押しのけ、含んだ空気のはじけた、ごぷっ……という不気味な音が、耳に残る)

花丸(血に染まった包丁を手に、ルビィちゃんに跨る善子ちゃんは天井を仰ぐ)
0750名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/21(火) 06:59:30.54ID:8ElfBu7s
花丸(ルビィちゃんの血が陣に広がっていくと、不意に眩暈がした)

花丸(足元が崩れるような感覚に立っていられなくなって……)

花丸(果南ちゃん達の方に目を向けると)

花丸(そこには誰もいなくて……真っ白になっていく)

花丸(ルビィちゃんと、血の陣、そして善子ちゃん)

花丸(形成する三つの要素だけが残り……それすらもやがて消えていく)

善子「………」

花丸「善子ちゃん……っ」

花丸(声をかけ、手を伸ばす)

花丸(けれど手も声も届かなくて――すべてが真っ白な中にとけていく)
0751名無しで叶える物語(らっかせい)
垢版 |
2020/01/21(火) 07:08:24.29ID:8ElfBu7s
現段階で1レス750byteで流石に辛いので
すみませんが一先ずこのスレでの投下はここまでにして別スレに移行することになります

次スレをたてたら誘導します
0754名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/21(火) 09:15:14.00ID:m/iP8yhd
保守期間が長かったにせよ最近では珍しく長いな
次行くなら一連のまとめ作ってくれないかな
0763名無しで叶える物語(関西地方)
垢版 |
2020/01/24(金) 22:16:03.76ID:ry1fthMI
いつのまにか凄い話になってた
ループ物で救う/救われる二者間で完結しない話って面白いなとは思ってたけど、ここまで色んな人を巻き込んだ展開になるとは
0767名無しで叶える物語(SB-iPhone)
垢版 |
2020/01/26(日) 21:55:09.23ID:9g/KtZGm
保守
0772名無しで叶える物語(しまむら)
垢版 |
2020/01/28(火) 18:17:09.68ID:QFEOwwNs
保守
0775名無しで叶える物語(庭)
垢版 |
2020/01/30(木) 14:27:33.45ID:nCI6Ephy
PM21:00

保守
0776名無しで叶える物語(庭)
垢版 |
2020/01/30(木) 14:27:58.05ID:nCI6Ephy
ごめんなさい、書きかけのやつのまま投下しちゃいました
0778名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/01/31(金) 12:57:35.04ID:PmvLQRGd
はい終わり😭
エタですねエタ🤗
0786名無しで叶える物語(家)
垢版 |
2020/02/04(火) 11:52:52.98ID:kuQ+/jSt
保守
0822名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2020/02/24(月) 01:37:43.80ID:HazGJQy5
タイムリープとかってしっかり作っておかないといけないからなぁ
立て直してまでやったならエタる意味って思うけど
そろそろ落としてあげれば?
0831名無しで叶える物語(たこやき)
垢版 |
2020/03/01(日) 00:26:27.05ID:h59qz/ev
エタるんか、、、???
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況