花丸「仮」
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H1
花丸(昔からひとりぼっちだった)
花丸(望んでいたわけじゃない)
花丸(ただ、普通と少し感性が違う子どもで)
花丸(だから周囲に溶け込めず)
花丸(みんなの輪の中に入れず)
花丸(変わり者仲間と仲良くしようとしても、どこか合わず、結局離れて) 花丸(気づけば周囲に人はいなくなり)
花丸(それが当たり前、自ら望んでいると処理するようになって)
花丸(そんな孤独で、真っ暗な世界)
花丸(そこに突然舞い降りた、一人の天使)
花丸(図書室の、本棚の影に隠れていた、小さな女の子)
花丸(出会えた瞬間の衝動)
花丸(気づけば、その子に抱きついていた) 花丸(甲高い叫び声があがる)
花丸(この世の物とは思えないほど、大きな悲鳴)
花丸(浮かれていた私は衝撃で正気へ戻り)
花丸(泣きじゃくる天使へただ謝罪をする)
花丸(頭を撫でて、涙を拭ってあげて)
花丸(女の子も抵抗することなく、それを受け入れて)
花丸(数分後、泣き止むと改めて自己紹介) 花丸(最初はオドオドと、だけど少しずつ普通に)
花丸(そうして、知った)
花丸(女の子の名前)
花丸(親友の、黒澤ルビィの名前)
花丸(いきなり抱きついてくるような不審者でも、彼女はすぐに受け入れてくれた)
花丸(会話を始めて数分で友達になって)
花丸(翌日には唯一無二の親友になっていた) 花丸(陳腐な言い方をしてしまえば、運命)
花丸(だけど、それにふさわしい出会い)
花丸(価値観をすべて覆すような衝撃)
花丸(人間なんて、どうでもよかった)
花丸(他人は他人、自分は自分)
花丸(他者に関心を抱くことなく生きる)
花丸(そう、確信していたのに) 花丸(ひとりぼっちの国木田花丸は、その日消え去った)
花丸(中学ではずっと二人)
花丸(高校ではさらに仲間ができて)
花丸(黒澤ルビィは、国木田花丸を塗り替えていく)
花丸(くすんでいたキャンパスを、明るく、輝かせていく)
花丸(彼女は私の輝きそのもので)
花丸(絶対的な象徴、かけがえのない人) R1
ルビィ「うぅ」
ルビィ(放課後の部室に一人きり)
ルビィ(先生に出された宿題を必死に説いている)
ルビィ(本当はマルちゃんと一緒にやりたい)
ルビィ(だけど、今日は図書委員のお仕事)
ルビィ(善子ちゃんも『今日は大切な集会の日よ!』とか言って帰っちゃうし……) ルビィ(お姉ちゃんに聞いても、『自分で考えなければ意味がありません!』って怒られちゃうよね)
ルビィ(だけどこんなの分かんないよぉ)
ルビィ(やっぱりマルちゃんと――)
ガラッ
ルビィ「ピッ」
曜「あれ、ルビィちゃん」
ルビィ「曜さん?」 曜「なにやってんの?」
ルビィ「え、えっと」
曜「あー、宿題?」
ルビィ「は、はい」
曜「ふむ、これは分かりにくいやつだね」
ルビィ「よ、曜さん?」
ルビィ(覗き込んでる、顔近い)
曜「まあ一見面倒だけど、ちょっと発想を変えれば――」
ルビィ(整った顔、ふっくらとした唇)
ルビィ(微かな汗のにおいが、生々しい) 曜「おーい、聞いてる?」
ルビィ「は、はい」
曜「じゃあ、そんな感じで解いてみてよ」
ルビィ「うゅ……」
ルビィ(ど、どうしよう)
ルビィ(せっかく解説してくれたのに、覚えてないよ)
ルビィ(つい、曜さんの顔に目がいっちゃった……) 曜「……あー、そういやさっきの解説、ちょっと抜けてる部分あったわ」
ルビィ「ふぇ」
曜「もう一回やってもいい?」
曜「ほら、私も納得いかないからさ」
ルビィ「い、いいんですか」
曜「ごめんね、余計な時間取らせて」
ルビィ(絶対嘘だ)
ルビィ(曜ちゃん、ルビィが聞いてなかったの分かってる)
ルビィ(なのに責めないで、自分の責任ってことにして) 曜「それでね――」
ルビィ(やさしい人)
ルビィ(自分より、他人を大切にできる)
ルビィ(そんな、やさしさを持った人)
ルビィ(それでいて格好良くて、気取らなくて)
ルビィ(素敵な、人だな)
ルビィ(こんな人が恋人だったら、きっと幸せなんだろう) ルビィ(ルビィには絶対に届かない、違う世界の住人)
ルビィ(曜さんを好きな人はたくさんいる)
ルビィ(アイドル部に入った時、クラスメイトのみんなから聞かれた)
ルビィ(当然、自分のことじゃない)
ルビィ(学校中の人気者、曜先輩について)
ルビィ(普段はどんな感じなのか)
ルビィ(他にも好きな食べ物とか、異性の好みとか)
ルビィ(恋、憧れ、その感情の種類は違うかもしれないけど) ルビィ(一つ確かだったのは、みんな曜さんと仲良くなりたがっていた)
ルビィ(曜さんのことを、知りたがっていた)
ルビィ(周囲を笑顔にできて、自然と人を惹きつけて)
ルビィ(きっとそれは、なりたい自分)
ルビィ(理想形、思い描く形)
ルビィ(だから憧れている)
ルビィ(ルビィだって、曜さんに憧れているんだ) H2
花丸(図書室は、常に静寂に支配された場所)
花丸(この学校に、本を読む人間はほぼ存在しない)
花丸(さらに特別な事情がない学生全員が部活に入っている)
花丸(放課後に人が来ることは、まずありえない)
花丸(マルは唯一の図書委員)
花丸(ここは、自分と天使のみしか立ち寄らない聖域なんだ) 花丸(天使)
花丸(ルビィちゃんは男の人が苦手)
花丸(苦手になった原因は、自分でも覚えていないらしい)
花丸(防衛本能で、記憶から消しただけ?)
花丸(けど、些細な出来事だったとしても)
花丸(幼い頃に刺さった小さな棘)
花丸(抜けずに残されたそれから、体内へ毒が入り込みじわじわと侵食して)
花丸(気づけば、父親以外とは会話もできない男性恐怖症になった)
花丸(繊細な彼女なら、その可能性の方が高いのかな) 花丸(けど、詳細は知らない)
花丸(聞いたら、トラウマを呼び起こしてしまうかもしれない)
花丸(覗かれたくないプライバシーぐらい、誰にでもある)
花丸(その程度、弁えている)
花丸(というより、彼女に嫌われる要因は作りたくない)
花丸(母親のように、安心して身を預けられる)
花丸(それが、彼女が自分に求めているものだから) 花丸(本当は……)
花丸(ルビィちゃんの中の国木田花丸は、唯一の親友)
花丸(永遠の友情を誓った大切なお友達、マルちゃん)
花丸(絶対に揺るがない、最高のポジション)
花丸(自分が、それ以外の場所を望んでいなければ)
花丸(禁忌を犯そうとしていなければ)
花丸(ルビィちゃん、は) ルビィ「マルちゃん!」
花丸「あっ、ルビィちゃん」
花丸(いつの間に)
花丸(今日は一人で宿題をすると言っていた)
花丸(時間は――もう下校時刻が迫っている)
花丸「待っていてくれたの?」
ルビィ「ううん、さっきまで部室で作業してたんだ」
花丸「作業?」 ルビィ「部室で宿題をしてたら、曜さんが来てね」
ルビィ「勉強を教えてもらった後、お礼に衣装づくりを手伝ってたの」
花丸「へぇ」
花丸(人見知りのルビィちゃんが、珍しい)
花丸(自分の得意分野だから、積極的になれたのかな)
花丸(あと、曜さんだから?)
花丸(人当たりのいい人だから、接しやすいもんね) 花丸「ちょっと待ってね、帰り支度するから」
ルビィ「分かった〜」
花丸「バス、時間はどうだっけ」
ルビィ「えーとね、まだ余裕あるよ」
花丸「よかった、急ぐのは苦手だよ」
ルビィ「のんびりさんだもんね〜」
花丸「ルビィちゃんものんびりさん仲間だよね」
ルビィ「そうだよ〜」 花丸(毒がない)
花丸(この子には、闇を抱えている人間が持つはずの、それがない)
花丸(だから、天使なんだ)
花丸(穢れなき天使)
花丸(そういえば、堕天使もいたっけ)
花丸(同級生の友達は天使と堕天使)
花丸(そんな二人に挟まれた自分自身は、何者なんだろう) ルビィ「ゆっくり歩いて、ちょうどいいくらいかな」
花丸「そうだね」
ルビィ「お腹空いたなー」
花丸「あれ、食いしん坊ちゃん?」
ルビィ「今日は部活ないし、ご飯とか控えめにしてたから」
花丸「あー、そうだよね」
ルビィ「身体を大きくするためにはたくさん食べなきゃ」
ルビィ「スタイルも維持しなきゃだから難しいけど」 花丸「ルビィちゃんの場合、そんなに気にすることないと思うけど」
ルビィ「そう?」
花丸「むしろ、ちゃんと食べなきゃ心配になるよ」
ルビィ「でもお姉ちゃんと違って、そんなに細くないし」
花丸「ダイヤさんは特別だから、比較対象にしちゃ駄目だよ」
花丸「マルはちょっと太めだから参考にならないかもだけど、曜さんぐらいまではあった方がいいんじゃない」
ルビィ「そうだよね」
ルビィ「その方が元気に動けるし――」 曜「おー、二人とも!」ダッ
花丸「わっ」
ルビィ「よ、曜さん」
花丸(坂道の途中、後ろから突然)
花丸(走ってきた?)
曜「花丸ちゃん、図書委員の仕事?」
花丸「は、はい」
曜「そっかー、お疲れ!」
曜「ってヤバい、バスの時間!」ダッ ルビィ「沼津方面、そろそろ時間なんだね」
花丸「間に合うのかな」
ルビィ「曜さんなら、たぶん」
花丸「根拠はないけど、そんな気がするよね」
ルビィ「いつも、走ってる」
花丸「案外、落ち着きのない感じだよね」
花丸「最初の頃は、しっかりした先輩の一人ってイメージだったのに」 ルビィ「でもね」
ルビィ「ルビィは、今の曜さんの方が好きだな」
花丸「そう?」
ルビィ「うん」
花丸「マルは、どっちでも構わないけど」
ルビィ「そうだよね、どっちの曜さんも素敵な先輩」
ルビィ「だけど、自由になりたい」
ルビィ「あんな風に、なりたいんだ」 花丸「……なれるよ、ルビィちゃんなら」
ルビィ「本当に?」
ルビィ「マルちゃん、いつも肯定してくれるから、逆に不安だよ」
花丸「そ、そう言われると」
ルビィ「ふふっ、ごめんね」
ルビィ「冗談だよ」
花丸「し、心臓に悪いよ……」 ルビィ「ありがとう」
ルビィ「ルビィを信じてくれて」
ルビィ「マルちゃんが肯定してくれるから、ルビィはいつも頑張れてるよ」
花丸「ルビィちゃん……」
ルビィ「これからも、背中を押してくれると嬉しいな」
花丸「う、うん!」 花丸「それじゃあルビィちゃん」
ルビィ「うゅ?」
花丸「とりあえず、時間がないから走ろう」
ルビィ「あっ!」
花丸(立ち止まって話し込み過ぎたみたい)
花丸「急ぐずら〜」
ルビィ「ま、マルちゃん、待って〜」 R2
ルビィ「ふわぁ」
ルビィ(午前の授業、やっと終わった)
ルビィ(長引いたせいで、もうお昼休み十分は過ぎてるよ)
善子「ルビィ」
ルビィ「善子ちゃん」
善子「ご飯、食べに行きましょう」
ルビィ「うん」 善子「花丸は?」
花丸「今日は図書委員の仕事があるから」
花丸「気にしないで二人で食べてて」
善子「そう、分かったわ」
ルビィ「じゃあねマルちゃん」
花丸「また後でね〜」
ルビィ「頑張ってね〜」 善子「お弁当よね」
ルビィ「だよ」
善子「どこで食べましょうか」
ルビィ「教室は?」
善子「気分じゃない」
善子「屋上とかでいいんじゃない?」
善子「今日は外の気分」
ルビィ「だけど日が出てるから暑いよ」
善子「むむ、それもそうね」 善子「じゃあ、中庭へ行きましょうよ」
善子「あそこなら日陰もあるし」
ルビィ「うん、そうしよ」
善子「よし決まり――ん?」
ルビィ「どうしたの?」
善子「中庭、少し騒がしくない?」
ルビィ「本当だ、声が聴こえる」 曜「ほいタッチ!」
千歌「あー、マジか!」
善子「先輩たち、なにを」
ルビィ「えっと、鬼ごっこ?」
善子「いやいや、そんな小学生みたいな」
むつ「曜は足がはやすぎだよ」
曜「へへー、次はそっちが鬼だよ」 善子「……本当に鬼ごっこみたいね」
ルビィ「だね」
善子「子どもっぽいわね、ここの先輩たちは」
ルビィ「でも楽しそうだよ」
ルビィ「みんな笑ってる」
善子「まあ、そうね」
ルビィ(その中でも曜ちゃんは、一番大きな笑顔で――) 曜「おっ、一年生組発見!」
善子「げっ、見つかった」
曜「ヨーシコー!」
善子「ヨハネよ!」
曜「一緒に遊ばない?」
善子「ご飯まだだし、そんな子どもじみたことしないし」
曜「えー」 ルビィ「……ちょっとなら、遊んでもいいんじゃないかな」
善子「ちょ、ルビィ!?」
曜「流石ルビィちゃん!」
善子「な、なんで勝手に」
ルビィ「別に、善子ちゃんは参加しなくてもいいよ」
曜「そうそう、無理しなくていいから」
善子「い、言ってないでしょ、そんなこと」 千歌「えー、じゃあ鬼ごっこする?」
善子「するわよ!」
曜「本当は最初から参加したかったんでしょ〜」
善子「違うわよ! ルビィに付き合ってあげるだけ」
曜「素直じゃないな〜」
善子「うっさい」
曜「ちょっと待ってね」
曜「みんなに二人も入るって言ってくる!」 ルビィ「……」
善子「なによ」
ルビィ「善子ちゃんは、曜ちゃんと仲良しさんだね」
善子「仲良し?」
善子「いつもおもちゃにされているだけよ」
ルビィ「帰りのバスとかで?」
善子「そうそう」
ルビィ「……いいな」 善子「何がよ」
ルビィ「そんな普通に話せて、羨ましい」
善子「あんた、ドM?」
ルビィ「そんなことないよ」
ルビィ「善子ちゃんだって、曜ちゃんのこと好きでしょ」
善子「……そりゃそうでしょ」
ルビィ「だよね」 ルビィ「どうやれば、もっと仲良くなれるんだろう」
善子「あんたたちも、充分仲良しよ」
ルビィ「そうかな」
善子「ええ」
善子「いま以上を望むなんて、強欲ね」
ルビィ「えへへ」
ルビィ「実は結構欲深いって、お姉ちゃんにも言われる」 曜「おーい、準備できた?」
善子「ええ」
ルビィ「はい!」
曜「じゃあ私と善子ちゃんが鬼ね」
善子「ちょ、聞いてないわよ」
曜「いいじゃん、堕天使なんだから似たようなものでしょ」
善子「違うわよ! 全然!」
ルビィ「あはは」 H3
花丸「はー、暑いねえ」
ルビィ「だねぇ」
花丸(夏も本格化してきて、毎日暑さで苦しむ日々)
花丸(練習後、一年生三人でかき氷を食べて)
花丸(方向の違う善子ちゃんだけ別れて解散)
花丸(二人でのんびり、海岸通りを歩く) 花丸「練習、全然動けなかったよね」
ルビィ「この暑さの中、屋外は大変だよね」
花丸「元気だったのは果南ちゃんと――曜ちゃんぐらい」
ルビィ「真似できないよねぇ」
花丸「どうやったらあんなに動けるようになるんだろう」
ルビィ「やっぱり、努力の積み重ねなのかな」
ルビィ「格好いいよね、曜ちゃん」 花丸(曜ちゃんだけ、か)
花丸(二人の会話)
花丸(話に頻繁に出てくるようになった人)
花丸(今までは、違ったのに)
花丸(好きなアイドルの話、少し苦手だけど自慢のお姉ちゃんの話)
花丸(マルのために仕入れてきた、マルの好きそうな話)
花丸(些細な、二人で過ごした日常の話)
花丸(それらは、全部どこかへ消え去って)
花丸(残ったのは、Aqoursと、曜ちゃんの話だけ) 花丸(強い関心を向けてる要因となる感情は二つ)
花丸(これは、愛情)
花丸(残るのは、憎悪しかない)
花丸(それは、ルビィちゃんは絶対に抱かない感情)
花丸(だから――)
花丸「好きなの」
ルビィ「ふぇ?」
花丸「好きなの、曜ちゃんのこと」 ルビィ「好きだよ」
ルビィ「曜ちゃんを嫌いな人なんていないよ、きっと」
花丸「そうじゃなくて」
ルビィ「?」
花丸「曜ちゃんと恋人になりたいとか、ないの?」
ルビィ「こ、恋人?」
花丸「うん」 ルビィ「そ、そんなの」
ルビィ「ルビィたち、女の子同士だよ」
花丸「いいよ、オラにはそんな反応しなくても」
花丸「今さら、だよ」
ルビィ「あっ、そうだよね」
花丸「うん」 ルビィ「うーん、だけど」
ルビィ「恋愛感情は、ないかな」
花丸「本当に?」
ルビィ「うん」
ルビィ「ありがちな、先輩に憧れる後輩――みたいな」
花丸「そっか」
花丸(好きでは、ないんだ) 「生産農家の不安が高まっている」豚コレラ対策 三重県が緊急消毒を実施へ- 名古屋テレビ【メ〜テレ】
https://www.nagoyatv.com/news/?id=202412
https://www.nagoyatv.com/themes/nagoyatv_pc/news/image/toukai/Apd1122328262735684340.jpg
三重県ではこれまでに、県内で豚コレラの感染は確認されていません。
しかし今月7日、隣接する岐阜県養老町で豚コレラに感染した野生のイノシシが見つかり、付近にある三重県内の養豚場1カ所が監視対象になるなど感染の恐れが強まっています。
鈴木英敬知事は「三重県の生産農家の不安も高まっている。やれる対応を全力でやり切る」と話し、予防のため県内の養豚場を対象に20日から緊急消毒を実施すると発表しました。
一方、12日に愛知県田原市で発生した豚コレラは、養豚場で飼育するすべての豚、およそ1200頭の殺処分が13日に、終了しました。県は、農場の消毒など防疫措置を18日までに完了させる予定です。 花丸(彼女の言葉に、胸をなでおろす)
花丸(その意味は、多種多様に入り混じり)
花丸(親友として先を越されなかったことへの安心)
花丸(姉のような視点で、妹の浮いた話が誤解であったことを知った感じ)
花丸(あとは――)
ルビィ「でも恋バナとかするの、初めてだよね」
花丸「だね」
花丸(ルビィちゃんは、恋愛とは無縁の子だったから) ルビィ「えへへ」
ルビィ「やっぱり初めてはマルちゃん」
ルビィ「他のみんなじゃ、ルビィの気持ちを理解できないから」
花丸「うん」
花丸(そして、オラだって)
花丸(誰にも話せない)
花丸(彼女がそれを望まない限り、自覚さえ許されない) 花丸(彼女と共に在るために必要な戒律)
花丸(だから自分も、恋愛とは無縁)
花丸(意識してはならない)
ルビィ「恋愛かあ」
ルビィ「まだまだ子どもだから関係ないと思ってたけど」
ルビィ「やっぱり、花の女子高生だもんね」
花丸「うん」 ルビィ「マルちゃん、恋人ができたら一番に教えてね」
花丸「もちろん」
ルビィ「ルビィも、真っ先に教えるから」
花丸「ダイヤさんはいいの?」
ルビィ「お姉ちゃんには内緒」
ルビィ「ばれたら面倒くさそうだもん」
花丸「うんうん」
花丸「余計なお節介してきそうだよね」 ルビィ「けど、お姉ちゃんの恋愛の話とか聞いたことないな」
花丸「許嫁とかいそう」
ルビィ「今どき流石にないよ〜」
花丸「黒澤家なら、もしかしたら」
ルビィ「……あるのかな」
花丸「ずら」
ルビィ「うむむ、調査しないと……」 ルビィ「そもそも、Aqoursの恋愛事情はどうなんだろう」
花丸「恋愛禁止! とかはないもんね」
ルビィ「あくまでも『スクール』アイドルだもんね」
ルビィ「普通の女子高生に、そんなこと言いだす方が変だよ」
ルビィ「曜ちゃんはモテるよね」
花丸「だね、そこが一番なのは間違いない」
花丸「だけど梨子ちゃんも凄そう」
ルビィ「東京に彼氏さんとかいるのかな〜」 ルビィ「逆に千歌ちゃんはあんまり縁なさそうだよね」
ルビィ「学校も家も女の人だらけ、出会いの場も少なそうだし」
花丸「千歌ちゃん可愛いのに、勿体ないね」
花丸「三年生は――怪しい?」
ルビィ「鞠莉ちゃんと果南ちゃん、大人の気配がするよね」
花丸「うんうん、未来ずらね〜」
ルビィ「未来だね〜」 ルビィ「善子ちゃんは」
花丸「見た目はいいけど……」
ルビィ「うゆ……」
花丸「ま、マルは子どもっぽくて、恋愛対象に見られない気がする」
ルビィ「ルビィも妹扱いされそう」
花丸「大人になりたいね」
ルビィ「恋をしたら、なれるのかな」
花丸「……どうだろうね、それは」 R3
ルビィ(今日も暑い)
ルビィ(赤点、一個だけ取っちゃった)
ルビィ(名前の書き忘れって、初歩的なミスで……)
ルビィ(だから補講)
ルビィ(先生も事情は分かってるから、優しく対応してくれてる)
ルビィ(だけどこの日差しの中、そんな理由で外に出るのは嫌だな) ルビィ(いつもは補講の後に練習があったりするけど、今日は珍しく休み)
ルビィ(だから憂鬱な気分で登校してきて、先生に励まされながら講義を受けて)
ルビィ(今から帰る――つもりなんだけど)
ルビィ(どうせなら、どこか行きたい)
ルビィ(頑張ったご褒美じゃないけど、おまけが欲しいな)
ルビィ(マルちゃん、誘えば図書室に来たかな)
ルビィ(声、かければよかったな) ルビィ(中学の頃だったら、絶対に一緒に来てた)
ルビィ(だけど高校に入ってから、ちょっと関係が変わった)
ルビィ(仲が悪くなったわけじゃない)
ルビィ(二人だけの空間)
ルビィ(そこに善子ちゃんが、Aqoursのみんなが入って)
ルビィ(濃度が薄まった?)
ルビィ(うーん、理屈っぽいのは苦手) バシャン
ルビィ「ピッ!?」
ルビィ(な、何の音だろ)
ルビィ(この方向は――プール?)
ルビィ(今日は部活とかないはずだけど)
ルビィ(不審者――だったら先生に報告した方がいい?)
ルビィ(普通の生徒かもしれないし)
ルビィ(……とりあえず、確かめてみなきゃ) ルビィ(……あれ、いない)
ルビィ(気のせい、だったのかな)
ルビィ(……プール、入りたい)
ルビィ(勝手に入ったら、怒られちゃうかな)
ルビィ(今なら、誰も観てないよね)
ルビィ(一応、この学校の生徒だし)
ルビィ(だけど、決まりは守らなきゃだし) ルビィ(それでも、足が一歩一歩、プールへ向かっちゃう)
ルビィ(誘惑に勝てない、ルビィは弱い子)
ルビィ「気持ちいいなぁ」
ルビィ(プールサイドに座って、はだしになって足だけを水中に)
ルビィ(カナヅチだから、授業の水泳は嫌い)
ルビィ(泳ぐのも、競うのも嫌だ)
ルビィ(だけど水に入るのは好き)
ルビィ(やっぱり、海辺の街の子だもんね) ルビィ(やっぱり、誰もいないプール)
ルビィ(……制服脱いで入っちゃったら、ダメかな)
ルビィ(タオル――汗拭きように一応持ってる)
ルビィ(この時期、水から出ればすぐに乾くだろうし)
ルビィ(少しだけ、少しだけなら――)
曜「ルビィちゃん」
ルビィ「ピギャッ!?」
曜「なにしてんの〜」 曜「脱いでるってことはあれか、露出狂?」
曜「そっか、意外な趣味だ」
ルビィ「ち、違うよ!」
ルビィ「曜ちゃんは?」
曜「私は自主練」
曜「最近スクールアイドルで忙しくて、水泳が疎かになってたから」
ルビィ「あっ、そうだよね」
ルビィ「曜ちゃん、兼部してるもんね」 曜「それでさ、真面目に」
曜「ルビィちゃんはプールで遊びたいとか?」
ルビィ「あ、あはは、そうかも」
曜「でも水着がないから、全裸だと」
ルビィ「男の人はいないはずだし、いいかなって」
曜「なるほど、そりゃそう――だ!」
ルビィ「わっ」
ルビィ(手を、グッと引かれる) バシャン!
曜「よっと」
ルビィ(大きな音、舞い上がる水しぶき)
ルビィ(水の粒が、視界に入るものを輝かせる)
ルビィ(結構、硬い)
ルビィ(力強い、引き締まった身体)
ルビィ(くっついていると、ドキドキして) ルビィ「よ、曜ちゃん」
曜「あはは! 気持ちいいね!」
ルビィ「い、いきなりは怖かったよ」
曜「やー、ごめんごめん」
ルビィ「うぅ、見つかったら怒られないかな」
曜「へーきだよ」
曜「適当に、ルビィちゃんの水泳の特訓とか言って誤魔化せば」
曜「実際、私が水に放り込んだわけだし」 曜「気持ちいいねぇ」
ルビィ(気持ちいい、心地いい)
ルビィ(その理由は、プールだけじゃない)
ルビィ(冷たい身体、温かい心)
ルビィ(ああ、そっか)
ルビィ(気づいた)
ルビィ(これが、恋なんだ) 一日で終わらないならvipでやった方がよかったんじゃないか? H4
花丸(沼津、お洒落なカフェ)
花丸(シチュエーションは、いいはずなのに)
花丸「はぁ」
善子「どうしたのよ」
花丸「考えてたんだよ」
花丸「どうして、善子ちゃんと二人なのかなと」 善子「あら、私じゃ不満?」
花丸「そうじゃないけど」
花丸「ルビィちゃんがいないのは、想定外というか」
善子「そうね」
花丸(夏休み、今日は練習が休み)
花丸(元々、みんなで遊びに行くつもりで)
花丸(補講期間が終わったルビィちゃんも一緒)
花丸(の、はずだったのに) 善子「先約なんて、珍しいわよね」
花丸「誘うのが遅かったかな」
善子「だけど、今まではそれでも問題なかったんでしょ」
花丸「うん」
善子「ダイヤに確認したら、家の用事でもないと」
善子「あの子、私たち以外にも友だちがいたのね」
花丸「うん」
花丸「知らなかったよ、全然」 花丸「ねえ、善子ちゃん」
善子「なによ」
花丸「ルビィちゃん、最近様子が変じゃない?」
善子「そう?」
花丸「ずいぶん、変わった気がする」
善子「私は気にならないけど」
花丸「……」 【即時】金券五百円分とすかいらーく券を即ゲット
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空気を表現するのすごく上手だね 善子「それよりも、あんたよ」
花丸「オラ?」
善子「ええ」
善子「私に言わせればだけどね」
善子「あんたほうが、よほど変に見えるわよ」
花丸「えっ、なんで」
花丸「普通だよ、普通」 善子「……自覚、なかったのね」
花丸「う、うん」
花丸(とても、冗談には聞こえない)
花丸(いつものふざけた悪友じゃない)
花丸(真剣な、親友の顔)
善子「Aqoursのみんなもね、心配してる」
善子「元気がない、ぼんやりしていると」
花丸「それは……」 善子「気づいてないのは一人」
善子「あんたが必死に隠そうとしている、ルビィだけ」
善子「頭だけ隠して、後は全裸みたいなものよ」
花丸「あはは」
善子「なによ」
花丸「変だし意味もおかしいよ、その例え」
善子「いいのよ、こういうのはだいたいノリで伝われば」 善子「それで、全裸のずらマルちゃんはね」
花丸「待って、その例え止めて」
善子「いいじゃない」
花丸「よくない、変な誤解される」
善子「……気に入ってたのに」
花丸「善子ちゃんは変な子だよ」
善子「それはあんたもでしょ」
花丸「うん」
善子「そして一般的ではない自らのことを、私たちは好いている」
花丸「それは……どうだろ」 善子「やっぱり、おかしいわよ」
善子「以前のあなたなら、絶対に同意していたはずなのに」
花丸「マルは、善子ちゃんほど開き直れないだけ」
善子「違う」
善子「今の花丸は、自分のことが好きじゃない」
善子「昔、一緒の幼稚園へ通っていた頃と同じ」
花丸「……」 善子「私はあの時、あなたの心を開けなかった」
善子「貼り付けた笑顔で、人と距離を置き続ける」
善子「脳で理解できない違和感を持った、国木田花丸のことが正直苦手だった」
花丸「それは、酷いな」
善子「うん、ごめん」
善子「謝るわよ、助けになれなかったことも含めて」 善子「だけどね、だからこそ」
善子「高校で再会して、自然に笑うようになったあんたを見たときは、嬉しかった」
善子「ちゃんと友だちになれて、ルビィも含めて三人で仲良くなれて」
善子「本当に嬉しかった」
花丸「うん」
花丸(それは、一緒)
花丸(善子ちゃんと仲良くなれた時は、嬉しくて) 善子「それなのに」
善子「それなのに、今のあんたは」
善子「昔の、理解不能な国木田花丸に戻ってる」
善子「ルビィと、何かあったんでしょ」
花丸「それは……」
善子「話せないことなの?」
善子「私は、信用できないの?」
花丸「ち、違うよ」
花丸「そうじゃない」 花丸「分からないの」
善子「分からない?」
花丸「喧嘩したわけでも、気まずいわけでもない」
花丸「黒澤ルビィと国木田花丸は、いつもどおり仲良しの大親友」
花丸「それなのに、違和感が頭から消えない」
花丸「自分の思考を整理できない」
花丸「悪い方向へばかり考えてしまう」 善子「えっと、つまり」
善子「考え過ぎ?」
花丸「ずいぶんと、バッサリずら」
善子「事実でしょ」
花丸「うん、そうだね」
花丸「たぶんそれで合ってる」
花丸(客観的に見れば、それで) 善子「でもあんたらしいわね」
善子「昔から、考えてばっかり」
花丸「駄目だよね、本当に」
善子「そんなことないわ」
善子「私は好きよ、花丸のそういうところ」
花丸「そう?」
善子「ええ」 善子「だけどあんまり抱え込んじゃ駄目よ」
善子「今回みたいに、ルビィに話せないこともあるでしょ」
善子「相談はできなくても、吐き出せば楽になるはず」
善子「愚痴でもなんでも、私が聞いてあげるから」
善子「だって、その、友達なんだし」
花丸「……善子ちゃん」
花丸「今日、変だよ」
善子「自覚はあるわよ」 花丸「でも、ありがとう」
花丸「おかげで少し楽になれた」
善子「そう」
花丸「善子ちゃんはいい子だね」
善子「別に」
善子「リトルデーモンの為にやっただけだし」
花丸「えー、リトルデーモンは嫌だなあ」
善子「そこは合わせるべきところでしょ!」 花丸「ほら、流石に譲れないラインというか」
善子「リトルデーモンって、そんなに嫌?」
花丸「うん」
善子「じゃあやっぱり、友達」
善子「友達を助ける――なんかリア充っぽい!」
花丸「はぁ」
花丸「本当に、善子ちゃんは残念な子ずら」
善子「う、うっさい」 花丸「だけどね」
花丸「マルは、そんな善子ちゃんが好きだよ」
花丸「これからもずっと、友達でいてね」
善子「ず、ずらマルがデレた……」
花丸「デレたって……」
善子「ルビィに、ルビィに連絡しなきゃ!」
善子「今日は記念日よ!」
花丸「ちょ、やめて恥ずかしい」
善子「遅い! もうライン送った!」
花丸「や、やめるずら〜」 R4
ルビィ(『ずらマルが堕ちたわ!』)
ルビィ(善子ちゃんから送られてきた文面)
ルビィ(どういう意味なんだろ)
ルビィ(嬉しいことがあったんだろうな)
ルビィ(『よかったね!』と返して)
ルビィ(これで――よし) ルビィ(花丸ちゃん)
ルビィ(お誘いを断っちゃったの、マズかったかな)
ルビィ(だけど今日は)
ルビィ(恋を自覚したプールの後)
ルビィ(曜ちゃんに、二人で遊びに行こうと誘われた)
ルビィ(ただの遊びだって分かってるけど、興奮して)
ルビィ(予定も確認せず、二つ返事でOKしちゃって) ルビィ(曜ちゃんと別れた後、スマホを確認)
ルビィ(そしたら、花丸ちゃんからの連絡が入っていて)
ルビィ(時間は、補講が終わった辺り)
ルビィ(そこに合わせて送ってくれたんだと思う)
ルビィ(曜ちゃんより、お誘いは早かったのに)
ルビィ(悪いことしちゃったな) 曜「お待たせ、ごめんよ」
ルビィ「ううん」
ルビィ「誰からの電話だったの?」
曜「水泳のコーチから」
曜「最近気が抜けてるとか、色々とさ」
ルビィ「スクールアイドル、忙しいもんね」
曜「そうだね」
曜「次、千歌ちゃんとのダブルセンターだし」 ルビィ「曜ちゃんはその上に、衣装まで作ってるんだから」
曜「そっちはルビィちゃんが手伝ってくれてるじゃん」
曜「おかげで楽できてるよ」
曜「ありがとう」
ルビィ「ゅ」
ルビィ(頭を撫でられる)
ルビィ(柔らかく、温かい手)
ルビィ(心がポカポカする) ルビィ「だけどそれなら」
ルビィ「練習、行った方がよかったりしない?」
曜「いいのいいの」
曜「今日はさ、遊びたい気分なんだ」
ルビィ「そっか」
曜「余計なことは忘れてさ、楽しもうよ」
ルビィ「うん」 ルビィ(わざわざ相手に選んでくれた)
ルビィ(事情はあると思う)
ルビィ(それでも嬉しくて)
ルビィ(一緒に)
ルビィ(二人で遊びに行けることが嬉しくて)
ルビィ(恋を自覚してから)
ルビィ(気持ちが溢れて止まらない)
ルビィ(曜ちゃんから目が離せない) ルビィ(いつも、曜ちゃんのことを考えて)
ルビィ(ちょっとしたメールのやり取りで嬉しくて悶える)
ルビィ(衣装づくりも、前より積極的に手伝うようになって)
ルビィ(我ながら、単純)
ルビィ(今日だって、普通に遊んでいるだけ)
ルビィ(身体を動かしたいって曜ちゃんの希望で、色んなスポーツができるレジャー施設に来て)
ルビィ(動き回る曜ちゃんと一緒に汗を流して) ルビィ(スクールアイドルを始めて、以前よりは身体が動くようになった)
ルビィ(だから一緒に楽しめてる)
ルビィ(運動中の曜ちゃんは、いつもより格好いい)
ルビィ(この時間は、とても楽しい)
ルビィ(それでも)
ルビィ(それでも) 曜「おーい、ルビィちゃん」
ルビィ「ふぇ」
曜「ボーっとしてるけど、疲れた?」
ルビィ「う、ううん」
曜「ごめんね」
曜「ちょっとはしゃぎすぎたかな」
ルビィ「ほ、本当に大丈夫だから」
曜「そう?」
ルビィ「うゆ」 曜「じゃああれか、考え事」
ルビィ「かな」
曜「ルビィちゃん、結構ボーっと考え込むタイプ?」
ルビィ「どうかなぁ」
ルビィ(きっとね)
ルビィ(それは、曜ちゃんの前だからだよ)
ルビィ(曜ちゃんに、恋に、思考が支配されるからだよ) 曜「さてと、次はなにしよっか」
ルビィ「一通りプレイしたよね」
曜「だね〜」
曜「もう一回だとすれば――卓球!」
曜「最初の卓球、完敗だったし」
ルビィ(そう)
ルビィ(他はルビィに合わせてもらってるけど、卓球だけは真剣勝負)
ルビィ(その上で、なぜか勝っちゃって)
曜「リベンジだよ!」 ルビィ(子どもみたいで可愛い)
ルビィ(曜ちゃんは、明るく元気に見える)
ルビィ(だけど)
ルビィ(ずっと見て、考えているから分かっちゃう)
ルビィ(曜ちゃん、本当は元気ない)
ルビィ(顔は笑っているのに、心が寂しそう)
ルビィ(無理に笑顔を作っているみたい)
ルビィ(自分の心を隠して)
ルビィ(必死に、誤魔化すように) ルビィ「曜ちゃん」
曜「ん?」
ルビィ「ルビィとじゃ、楽しくない?」
曜「なんで?」
ルビィ「……なんとなく」
曜「私は、そんな風に見える?」
ルビィ「ち、違うよ」
ルビィ「だけど」 ルビィ(上手な言葉が浮かばない)
ルビィ(花丸ちゃんやお姉ちゃんがいれば、助けてくれるのに)
ルビィ(適切な言葉を教えてくれるのに)
ルビィ(ルビィは今、一人だから)
ルビィ(一人じゃ、分からないよ)
曜「……ごめん」
曜「余計な心配かけさせて」
ルビィ(曜ちゃんは、そんなルビィの心を理解してくれる) 曜「だけど本当に」
曜「楽しんではいるんだよ」
ルビィ「うん」
曜「ただ今ね、色々と悩んでてさ」
曜「いや、もちろんたいした悩みじゃないんだけど」
ルビィ「そう……」
ルビィ(嘘だ)
ルビィ(これも、ルビィに気を使わせないようについている)
ルビィ(やさしい、嘘) ルビィ(嫌だな)
ルビィ(好きな人が苦しんでいると、自分までつらくなる)
ルビィ「その、元気出して」
ルビィ「ルビィで良ければこれぐらい、いつでも付き合うから」
曜「ありがとう」
曜「やさしいね、ルビィちゃんは」
ルビィ「そんなこと、ないよ」
曜「まあ些細な問題だからさ」
曜「あんまり気にしないでよ」 ルビィ(それでも、相談はしてくれない)
ルビィ(悩みを打ち明けてくれない)
ルビィ(出会って数ヶ月の後輩なんだから、当たり前だけど)
ルビィ(頼りにならないルビィが悪いから、仕方ないけど)
ルビィ(それでも)
ルビィ(好きな人が頼りにしてくれないのは)
ルビィ(好きな人の助けになれないのは)
ルビィ(つらいよ) H5
善子「ルビィ、行くわよ」
ルビィ「……」
善子「ちょっと、聞いてるの?」
ルビィ「……」
善子「もう……」
花丸(天使は物憂げに窓の外を眺める)
花丸(その眼には写っているのは) 花丸(夏休みも終盤)
花丸(予備予選を無事に通過した私たち)
花丸(地区予選に向けて、今日はミーティング)
花丸(だけど一日中)
花丸(いや、その前から)
花丸(最近はずっと)
花丸(ルビィちゃんの、様子がおかしい) 善子「私、もう帰るわよ」
ルビィ「……」
花丸「そっとしといてあげよう」
善子「でも」
花丸「マルが見てるから、善子ちゃんは下校していいよ」
花丸「今日、早く帰らなきゃなんでしょ」
善子「……うん」
花丸「下駄箱まで、一緒に行こうよ」
善子「分かった」 善子「ねえ」
花丸「うん」
善子「ルビィ、どうしたのかな」
花丸「分からない……」
花丸(相談に乗る、それ以前の問題で)
花丸(聞いても、答えてくれない)
花丸(誤魔化されて、おしまい) 花丸(以前は困ったら、どんなことでも相談してくれた)
花丸(ダイヤさんとの問題でさえ)
花丸(親友に信頼されている)
花丸(そう実感できて)
花丸(そんな自分が誇らしかったのに)
花丸(いつの間に、離れてしまったんだろう)
花丸(君は、どうして) 善子「ごめん」
花丸「えっ」
善子「私のせいよ」
善子「あんたは早く異変に気づいていたのに」
善子「私が考え過ぎだなんて言うから」
花丸「ち、違うよ」
善子「だけど」 花丸(確かに、善子ちゃんに言われた時は考え過ぎだった)
花丸(明らかに変わったのは、あの日)
花丸(ルビィちゃんに、『先約』を理由に誘いを断られた日)
花丸(あの後から、変化して)
花丸(そして決定的なのは、予備予選の後)
花丸(そこで、狂ってしまった)
花丸(電源の切れたロボットみたいに)
花丸(プツリと、落ちて) 花丸「とにかく」
花丸「今日、ちゃんと話してみるから」
花丸「それを報告するから、ね」
善子「お願いね」
善子「嫌なのよ」
善子「苦しそうなルビィを見るのは」
善子「もう、嫌なの」
花丸「うん」 花丸(遠ざかる善子ちゃんの背中)
花丸(うつむき加減で、影が差し)
花丸(早くしないと、マルが解決しないと)
花丸(善子ちゃんも変になる)
花丸(部室に戻ろう)
花丸(早く)
花丸(今のルビィちゃんを一人にするのだって、怖い――) 花丸(あれ)
花丸(いない……)
花丸(帰った?)
花丸(だけどすれ違ってないし)
花丸(鞄も置きっぱなし)
花丸(校内にいるよね)
花丸(行きそうな場所……)
花丸(図書室かな)
花丸(それとも教室?)
花丸(とにかく探してみよう) 花丸(鞄は持って行ってあげて)
花丸(捕まえたら、無理やりでも一緒に帰ろう)
花丸(それで、ちゃんとお話して)
花丸(真剣に向き合えば、悩みの内容ぐらい打ち明けてくれるはず)
花丸(避けていたのは、オラ自身)
花丸(内容を聞くのを怖がっていたのも――)
『ちょ、やめてよ!』
『あはは、嫌だよ〜』
花丸「ん?」 花丸(この声は)
花丸(覚えのある声色)
花丸(聴こえるのは、プールの方から?)
花丸(予感がして、外へ飛び出す)
花丸(上履きが汚れる)
花丸(けどそれどころじゃない)
花丸(衝動に理性は抗えない) 花丸(辿りつき、目に入ったのは)
花丸(楽しそうに遊ぶ二人の先輩と)
花丸(それをくすんだ瞳で見つめる、親友)
花丸(悲しみ、苦しみ)
花丸(あらゆる感情が内包された目)
花丸(天使は、堕ちてしまったの?)
花丸(静かに、近づく)
花丸(力なく垂れ下がった腕に手を伸ばす)
花丸(君は――) 花丸「ルビィちゃん」
ルビィ「ピッ!?」
花丸「やあ」
ルビィ「ま、マルちゃん?」
花丸「こんなところで、どうしたの?」
ルビィ「え、えっとね」
ルビィ「曜ちゃんがね、泳いでるの」
ルビィ「千歌ちゃんと、一緒に」 花丸「みたいだね」
花丸「だけど」
花丸「ルビィちゃんは、どうしてそれを眺めてるの?」
花丸「混ぜてもらいたいとか?」
ルビィ「……そうじゃ、ない」
ルビィ「ただ、曜ちゃんが気になって」
花丸「曜ちゃん」 ルビィ「曜ちゃんね」
ルビィ「少し前まで、元気がなくて」
花丸「そうなの?」
ルビィ「うん」
花丸(気づかなかった)
ルビィ「なのにね」
ルビィ「予備予選が終わってね、すっかり元気」
ルビィ「いつの間にか、前の曜ちゃんに戻って」 花丸「ダブルセンターのプレッシャーとか?」
ルビィ「ううん、違うよ」
ルビィ「他に理由がある」
花丸「どんな?」
ルビィ「それが分からないの」
ルビィ「……分からない、の」
花丸「……」 花丸「ルビィちゃんは」
花丸「最近、付き合いよくないよね」
ルビィ「そ、そう?」
花丸「誘っても、他の用事があるって断られることも増えた」
花丸「マルは、結構寂しかったんだ」
ルビィ「マルちゃん……」
花丸「気づかなかった?」
ルビィ「……ごめんね」 花丸「曜ちゃんなんでしょ」
ルビィ「っ」
花丸「元気ないのも、付き合いが悪くなったのも」
花丸「全部、曜ちゃんが理由なんでしょ」
ルビィ「……」
花丸「ねえ、なにがあったの?」
花丸「話してよ」
花丸「力になりたいの」
花丸「マルたちは、親友だよね」 ルビィ「気づいたんだ」
花丸「何に?」
ルビィ「恋をしているの」
花丸(……)
花丸(そっか)
ルビィ「私はね、曜ちゃんに恋をしてるから」
ルビィ「それに囚われてた」 花丸「そうなんだ」
花丸「ごめんね」
花丸「気づかなくて」
ルビィ「ううん」
ルビィ「ルビィの方こそ」
ルビィ「隠してて、ごめん」
花丸「いいよ」
花丸(その言葉から逃げていたのは、自分)
花丸(今、明確に自覚できた) 花丸「いつから好きなの」
花丸「曜ちゃんのこと」
ルビィ「自覚したのは、補講を受けていた頃」
花丸(じゃあ、マルが疑念を持った頃にはまだ)
花丸(本人より先に気づいた)
花丸(我ながら、ルビィちゃんのことをよく理解している)
花丸(そんな自画自賛で、自己を保つ) ルビィ「このプールでね、恋を自覚したの」
ルビィ「その時は、構ってくれてて」
ルビィ「二人で、何度も遊びに行ったりして」
ルビィ「なのに」
ルビィ「予備予選が終わったあと」
ルビィ「一度も誘われてない」
花丸「寂しいの?」
ルビィ「……うん」 ルビィ「それに、モヤモヤする」
花丸「……そっか」
ルビィ「恋は、嫌だな」
ルビィ「理想からも現実からも、逃れられない」
ルビィ「最初は、楽しかった」
ルビィ「幸せな気持ちにもなれた」
ルビィ「だけど、今は」
ルビィ「今は――」 花丸「大丈夫だよ」
ルビィ「マルちゃん……」
花丸「ルビィちゃんなら、上手くいく」
花丸「ルビィちゃんは、誰よりも可愛くていい子」
花丸「その恋は、きっと叶うよ」
ルビィ「だけど」
花丸「大丈夫、大丈夫だから」
花丸「だから、ね」 花丸(根拠のない励まし)
花丸(口から出る度に、心が締め付けられる)
花丸(ルビィちゃんをも苦しめるだけ)
花丸(それでも)
花丸(今にも泣きだしそうなこの子を少しでも楽にしてあげたくて)
花丸(親友として手を握りながら、白々しい言葉を繰り返す)
花丸(ああ)
花丸(善子ちゃんには、なんて報告しようかな)
花丸(ごめんね)
花丸(流石にこれは話せないよ) ペース遅いですかね、すみません
次からはもうちょい上げていきます R5
曜「このぐらいで足りそうかな」
ルビィ「問題ないと思うよ」
ルビィ「前に使った布、残っていたはずだし」
曜「よし」
曜「じゃあ帰ろっか」
ルビィ「うん」 ルビィ(今日は久しぶりに曜ちゃんとお出かけ)
ルビィ(だけど遊びとかじゃなくて)
ルビィ(衣装に必要な物の買い出しに来ただけ)
ルビィ(今だってほら、目的を達成したらすぐに帰ろうとして)
ルビィ(そりゃ、荷物はいっぱい)
ルビィ(どこかへ寄る余裕なんてない)
ルビィ(分かってるけど) 曜「ルビィちゃん」
曜「ちょっと右手に持ってる袋を貸して」
ルビィ「これ?」
曜「そう」
ルビィ(どうしてだろ)
ルビィ(なにかあるのかな)
ルビィ「はい」 曜「ありがとー、ちょっと中身確認したくてさ」
曜「代わりに、これ持ってて」
ルビィ「う、うん」
曜「悪いね〜」
ルビィ(あっ)
ルビィ(さっきのよりちっちゃいし軽い)
ルビィ(さりげなく、交換してくれた?)
ルビィ(元々、曜ちゃんの方がかなり多めに荷物を持ってくれてるのに) ルビィ(どうしてこの人は、こんな)
ルビィ(嫌な人だったら)
ルビィ(この気持ちも消えてくれるのに)
ルビィ(離してくれない)
ルビィ(心を支配し続ける)
ルビィ(花丸ちゃんは、大丈夫だと言ってくれた)
ルビィ(でもね、やっぱり)
ルビィ(自分では気づいてる) ルビィ「……ねえ」
曜「ん?」
ルビィ「曜ちゃんは、好きな人とかいる?」
曜「おっと、恋バナ?」
ルビィ「うん」
ルビィ(この耐え難い感情)
ルビィ(それを処理する方法は、一つしかない) 曜「そうだなー」
ルビィ(曜ちゃんは、キョロキョロと周囲を見回す)
曜「例えばさ」
曜「あの目の前を歩いている男の人」
ルビィ「うん」
曜「結構格好いいよね」
ルビィ(本当だ。テレビに出てくる俳優さんみたい)
ルビィ「ああいう人が好み?」 曜「でもなくてさ」
曜「私の右側を歩いている女の子」
ルビィ「ルビィ?」
曜「うん」
曜「その女の子のことは、可愛いなと思う」
曜「さっきの格好いいと、今の可愛い」
曜「その二つは、そんなに変わらなくて」
曜「それ以上の感情とかは、特に出てこない」 曜「私の感覚はそんなもんでさ」
曜「だから恋愛って言われても、よく分かんない」
ルビィ「……意外」
曜「そう?」
ルビィ「Aqoursで一番その手の話に縁がありそうなのに」
曜「そうでもないよ」
曜「告白されたこともあるけどさ」
曜「いまいち分からないから、断っちゃう」
曜「私は恋愛事とかより、部活とか、友達や後輩と遊ぶ方が楽しいし好きだから」 ルビィ「……」
ルビィ(これは警告?)
ルビィ(わざわざルビィの名前を出した)
ルビィ(ばれてるのかな)
ルビィ(心の中、簡単に見抜かれちゃうもんね)
ルビィ(だけどね)
ルビィ「ねえ、曜ちゃん」
ルビィ(届かない、特別な人だって分かってる)
ルビィ(それでも、それでも) 曜「うん」
ルビィ「ルビィはね、曜ちゃんのことが好きなの」
ルビィ「いまね、ルビィが付き合ってほしいって言ったら」
ルビィ「曜ちゃんは、どうする?」
曜「……その」
曜「なんというかさ」
曜「私はやっぱり、恋愛とかあんまり興味ない」 ルビィ(……だよね)
ルビィ(知ってた、そう言われるのは)
ルビィ(今なら、仮定の話で引き返せる)
ルビィ(それでも)
ルビィ「昔ね」
ルビィ「いつも、男の子にいじめられてたの」
ルビィ「小さいから、気が弱いから」
ルビィ「子ども同士のじゃれ合いみたいなもの」
ルビィ「それでも、それが嫌でたまらなくて」 ルビィ「その時の記憶のせいでね」
ルビィ「どうしても、男の人は好きになれなくて」
ルビィ「だけど、女の子も好きになれない」
ルビィ「曜ちゃんが、初めてなの」
ルビィ「マルちゃんでも善子ちゃんでもない」
ルビィ「曜ちゃんだけ」
ルビィ「曜ちゃんだけにしか抱けない気持ちなの」
ルビィ「だから、だからね――」 曜「ごめん」
ルビィ「……曜ちゃん」
ルビィ(……そっか)
曜「付き合うのは、無理」
曜「ルビィちゃんのことは好きだよ」
曜「大切な後輩で、友達」
曜「大事にしたい、仲良くしたい」
曜「一緒に笑っていたい」 曜「でも恋愛とは違う」
曜「私は、とりあえず付き合うとか、考えられないし」
曜「恋は大きな意味のあるものだと思ってる」
曜「だから、ごめん」
ルビィ「……ルビィの方こそ、ごめんね」
ルビィ「変な話して、困らせて」
曜「ううん」
曜「好きだって言ってくれたこと、嬉しかったよ」
曜「ありがとう、ルビィちゃん」
ルビィ「……」 曜「荷物、貸して」
曜「私が部室に持って行くから」
曜「ルビィちゃんは帰りなよ」
ルビィ「……ありがとう」
ルビィ(断る気力も湧かなくて)
ルビィ(曜ちゃんに手に持っていた物を全部渡す)
ルビィ(手と手が僅かに触れ合う)
ルビィ(ドキリと、心が揺れる) ルビィ「バイバイ、曜ちゃん」
曜「バイバイ」
ルビィ(手を振って別れる)
ルビィ(涙はでない)
ルビィ(この結果は予想してたよ)
ルビィ(だけどね)
ルビィ(この苦しみから解放される方法は)
ルビィ(この恋を終わらせてしまうしかないから) ルビィ(だけど、どうしてかな)
ルビィ(苦しいよ)
ルビィ(悲しいよ)
ルビィ(確かに解放されたはずなのに)
ルビィ(別の、さらに強い感情が心を覆う)
ルビィ(馬鹿だな、私)
ルビィ(どうしてみんな、恋に臆病になるのか)
ルビィ(少し考えれば分かることなのに)
ルビィ(フラれるのは、こんなに辛いことなんだ) H6
花丸「はぁ、はぁ」
花丸(走り回って、数時間以上が経った)
花丸(足は悲鳴を上げ、脳も限界を訴えている)
花丸(だけど走るのは止められない)
花丸(止めるわけにはいかない) 花丸(昨日から、ルビィちゃんが家に帰っていないらしい)
花丸(誰に聞いても、居場所が分からない)
花丸(つまり、行方不明)
花丸(あの子は一人で遠出なんかできない)
花丸(きっと沼津の周辺にいるはず)
花丸(思い当たる場所、全部回った)
花丸(それでも、見つからない) 花丸(ダイヤさんの号令で、Aqoursメンバー全員で探しているのに)
花丸(怖い)
花丸(最悪のケースが頭に浮かぶ)
花丸(ルビィちゃんが、消えてしまう)
花丸(そんなのは、耐えられない)
花丸(嫌だ)
花丸(絶対に嫌だ) 曜「あれ、花丸ちゃん」
花丸「曜ちゃん!」
花丸「見つかった?」
曜「ううん」
花丸「どこに行ったんだろ……」
曜「……見当もつかないね」
花丸「ルビィちゃん……」 花丸(いくら連絡しても、返事すらないまま)
花丸(――そうだ!)
花丸「ねえ、ルビィちゃんにメールかライン送ってみて」
曜「私が?」
花丸「うん」
花丸(きっと曜ちゃんからなら)
花丸(好きな人からのメッセージなら、無視できないはず) 曜「いや、それはちょっと」
花丸「へっ」
花丸(ど、どうして)
花丸「携帯の充電が切れてるとか?」
曜「違うよ」
花丸「それなら、なんで」
曜「逆効果だから」 曜「私のせいなんだ」
花丸(私のせい?)
曜「ルビィちゃんの告白を受けいれなかったから」
曜「だから、あの子は失踪したの」
花丸「待って」
花丸「どういうこと」
花丸(それは、つまり) 曜「花丸ちゃんなら知ってたでしょ」
曜「ルビィちゃんは、私のことが好きで」
曜「それで告白された」
曜「そして私はお断りした」
曜「そういうこと」
花丸(フラれた、ルビィちゃんが)
花丸(曜ちゃんに、フラれた) 花丸「どうして」
花丸「どうして、ルビィちゃんをフったの?」
曜「……」
花丸「可愛がってたんでしょ」
花丸「大切な後輩だったんでしょ」
花丸「それなら少し間を置いて考えるぐらいしてもいいでしょ」
花丸「とりあえず付き合ってみるとかでも」 曜「聞かされた」
曜「あの子が心に抱えているもの」
曜「告白される前にも、色々な話をされたよ」
曜「男性に対する感情、家のこととかも」
曜「私はそれを共有でない」
曜「一緒に背負っていける自信がない」
曜「付き合っても、きっとまともな交際はできない」
曜「むしろあの子を傷つけちゃうと思うから」 花丸「……重い子はお断りってこと」
曜「そう捉えられても仕方ないよね」
曜「でもね」
曜「最初、告白された」
曜「そのときの、ルビィちゃんの顔ね」
曜「死んでしまいそうだった」
曜「捨てられた子犬みたいに」 曜「本当は、受け入れたいよ」
曜「別に恋愛感情はなくても、恋人になる人もいる」
曜「別に私は構わない」
曜「大切な後輩を助けられるなら、それでも」
曜「それでもさ、ルビィちゃんの十字架を受け止めるのは」
曜「本当に愛情を持っている人じゃないとできないことだよ」
曜「私には無理だ」
曜「私はあの子に恋愛感情を持てない」 曜「ねえ、花丸ちゃん」
曜「君はどうかな」
花丸「……」
曜「自分の気持ちは、知っているでしょ」
花丸「なんのことか、理解できないずら」
曜「いいよ、隠さなくて」
曜「私は知ってる」 曜「ルビィちゃんと二人の時にね」
曜「よく君の話をされたよ」
曜「ダイヤさんや善子ちゃん」
曜「他のAqoursのメンバーも含めて、ルビィちゃんは大好きで」
曜「その好きが、会話の中によく現れる子」
曜「だけどね」
曜「花丸ちゃんだけは特別だった」
曜「他より強い好きが、言葉の中に混ざっていた」 花丸「本当に?」
曜「うん」
曜「出会ってからさ」
曜「誰よりも深い関係を築いてきたんでしょ」
曜「前にさ、ルビィちゃんが言ってたよ」
曜「ダイヤさんと気まずくなって一人になってた時」
曜「花丸ちゃんに助けられた」
曜「花丸ちゃんがいるから、やっていけたって」
花丸「ルビィちゃん……」 曜「私は結構気づくんだよ」
曜「誰が誰を好きなのか」
曜「だからルビィちゃんから話を聞いただけでも、花丸ちゃんの気持ちは理解できた」
曜「事情があるんだとは思う」
曜「踏み出すのが怖いのか」
曜「私が知らない何かがあるのか」
曜「それでもさ、頼むよ」
曜「助けられるのは、花丸ちゃんしかいない」 曜「ルビィちゃんをさ、苦しませたくないんだ」
花丸(苦しませない)
花丸(その為に、マルが)
曜「現実的な話をするとね」
曜「弱っている時の人は、ほだされやすいよ」
花丸「……ゲス」
曜「だね」
曜「だけど事実だし」
曜「私自身、そんなときに落とされそうになった経験あるからさ」 曜「なんかあっても、私のせいにすればいい」
曜「そうすれば、最悪誤魔化せるでしょ」
花丸「……しないよ、そんなこと」
花丸「マルは曜ちゃんみたいに卑怯じゃないから」
曜「そっか、偉いね」
曜「さてと」
曜「それじゃあ、ルビィちゃん探しを再開しようか」
花丸「そ、そうだよ」
花丸(現状、行方不明なのは変わってない) 曜「一応ね、目撃情報はあったから」
曜「心配し過ぎなくても大丈夫だよ」
花丸「そ、そっか」
曜「それに、善子ちゃんに当てがあるらしいから」
曜「そっちで見つかるかもしれない」
花丸「うん」
曜「じゃあ私は別の場所を探しに行くから」
曜「頑張ろうね、お互いに」 R6
ルビィ(雨、降ってきたな)
ルビィ(昨日、曜ちゃんと別れた後)
ルビィ(頭がグルグル回って、わけわかんなくなって)
ルビィ(駅まで走って、電車に飛び乗った)
ルビィ(どこか遠くへ行きたかったから) ルビィ(なのにここはお隣の駅)
ルビィ(一人で遠出する勇気は出なくて)
ルビィ(すぐに電車を降りちゃって)
ルビィ(いつまでも臆病なルビィちゃん)
ルビィ(弱い自分から抜け出せない――)
善子「見つけた!」
ルビィ「ピギャッ」 善子「ここにいたのね」
ルビィ「ど、どうして」
ルビィ(善子ちゃんが、どうして)
善子「私だって友達よ」
善子「そして、花丸やダイヤよりは冷静に対処できる」
善子「あんたの居場所を見つけることぐらい、わけないわ」
ルビィ(絶対、ばれないと思ってたのに……) ルビィ「目撃者でもいたとか?」
善子「まあ、駅の周辺を歩いていたって情報はあったわよ」
善子「私以外、電車に乗っていると考えた人はいなかったけど」
ルビィ(みんなの中のルビィのイメージって……)
ルビィ「なのに、善子ちゃんはどうして?」
善子「あんたでしょ」
善子「少し前自慢げに『お隣の駅まで行けたよ!』って連絡寄越したのは」
ルビィ「あっ」 善子「それでもしかしたらと思って来たらビンゴよ」
善子「駅近くにいてくれて助かったけど」
ルビィ「えっと、知ってる場所から離れるのも怖くて」
善子「あんたらしいわね」
ルビィ「えへへ」
ルビィ(本当は、へたり込んで動けなかった)
ルビィ(衝動が解けて、エネルギーが切れて)
ルビィ(身体がいうことを聞いてくれなかった) 善子「まったく、無事でよかったわ」
善子「よく面倒事に巻き込まれなかったわね」
ルビィ「ついてたのかな」
善子「ほら、立てる?」
ルビィ「……」
ルビィ(告白を受け入れてくれるわけない)
ルビィ(理解した上での行動だったのに)
ルビィ(喪失感に飲み込まれている) 善子「……大丈夫なの?」
ルビィ「……」
善子「最近、心配だったのよ」
ルビィ「心配?」
善子「様子、おかしかったでしょ」
善子「話しかけても全然聞いてないし」
善子「花丸まで一緒に元気をなくしてるし」 ルビィ「ごめんね、心配かけて」
ルビィ「だけどもう大丈夫だから」
善子「どの口が――まあ、話したくないならいいわよ」
善子「とことん付き合うわ」
ルビィ(へたり込むルビィの横に、腰を下ろす)
ルビィ(よく見ると、髪はぼさぼさ、服はよれよれ)
ルビィ(いつもきちっとしている、善子ちゃんらしくない) ルビィ(ずっと)
ルビィ(ずっと、ルビィのことを探してくれていたのかな)
ルビィ(嬉しいな)
ルビィ(やさしさが、空っぽになった心を少し満たしてくれる)
ルビィ「善子ちゃん」
善子「なによ」
ルビィ「遊びにいこ―よ」 善子「今から?」
ルビィ「うん」
善子「一度帰った方がよくない?」
善子「みんな心配してるわよ」
ルビィ「いいから」
善子「……このわがまま姫」
ルビィ「駄目?」
善子「いいわよ、付き合うって言ったのは私」
ルビィ「ありがとう」 ルビィ(それからお散歩をしながら、色んなお店を見て回って)
ルビィ(いつにも増してやさしい善子ちゃん)
ルビィ(その行動に、心の温度は上がっていく)
ルビィ(少しずつ、自分が戻ってくる)
ルビィ(やさしい、気遣いができるのは曜ちゃんと似てる)
ルビィ(少しずつ、恋の残骸が消えていく)
ルビィ(だけど善子ちゃんに新しい恋をするわけじゃない)
ルビィ(誰でもいいわけじゃない) 善子「さて、そろそろ帰らないと」
ルビィ「そうだね」
ルビィ(気づけば、外は暗くなっていて)
善子「多少気は晴れたかしら」
ルビィ「うん、おかげさまで」
善子「連絡はしておいたから、沼津まで戻れば迎えは来ているはずよ」
善子「ダイヤに怒られるのは、覚悟しておくことね」
ルビィ「うぅ、それは怖いな」 ルビィ「ねえ、善子ちゃん」
善子「ええ」
ルビィ「ありがとう、ルビィを探してくれて」
善子「……その台詞は、他のみんなにも言ってあげなさいよ」
善子「特に花丸なんて、休まずに探し続けてたんだから」
ルビィ(花丸ちゃん……)
ルビィ(連絡、いっぱい来てたな)
ルビィ(早く、返してあげないと)
ルビィ(心配かけたこと、謝らないと) 善子「ルビィ」
ルビィ「うゅ?」
善子「私はこのぐらいなら、いつでも付き合うから」
善子「ルビィは大切な友達だから」
ルビィ「……」
ルビィ(そう、友達)
ルビィ(善子ちゃんは最も大切な友達の一人) ルビィ(友情は尊い)
ルビィ(簡単に壊れない、かけがえのないもの)
ルビィ(友達といるのは本当に楽しい)
ルビィ(楽しいのに、どうして)
ルビィ(どうして、人は違うものを求めちゃうのかな)
ルビィ(どうして、恋の衝動に抗えないのかな)
ルビィ(恋は、怖いよ) H7
花丸(ふぅ)
花丸(流石に、歩き疲れた)
花丸(もうすぐ沼津駅)
花丸(ルビィちゃんが帰ってくる)
花丸(だからそのお迎え) 花丸(本当は、ダイヤさんが来る予定だった)
花丸(だけど)
『少し間を置かないと、やさしく迎えられそうにないので』
花丸(ということで、代理を任された)
花丸(もちろん、一番は自分の希望)
花丸(早く、ルビィちゃんに会いたかったから)
花丸(伝えたいことがあったから) 花丸(駅が見えてくる)
花丸(スマホを取り出し、善子ちゃんに連絡)
花丸(彼女からルビィちゃんを発見したと連絡が入ったとき)
花丸(二人にしてほしいと頼んでおいた)
花丸(返事はすぐに返ってきて)
花丸(遠巻きに、去っていく善子ちゃんの姿が見える)
花丸(同時に、早まる歩み)
花丸(天使の元に身体が引き寄せられていく) 花丸(赤い髪)
花丸(姿が見える)
花丸(ソワソワと落ち着かない表情)
花丸(彼女は迎えがマルであることを知らない)
花丸(ダイヤさんを、想像しているんだろうな)
花丸(そんな仕草に、心が惹かれる)
花丸(結局、仲良くなったきっかけは一目惚れ)
花丸(中身も勿論だけど、見た目が大好きなんだよね)
花丸(これじゃあ、マルもゲスさんだけど) 花丸(声が届く距離まで近づく)
花丸「ルビィちゃん」
ルビィ「えっ、花丸ちゃん?」
花丸「うん」
ルビィ「どうして……」
花丸(表情から読み取れるのは驚愕)
花丸(それと、喜び) 花丸「お迎えに来たよ」
花丸(そっと、彼女の手を握る)
花丸「一緒に帰ろう」
ルビィ「――う、うん」
花丸(少しの間)
花丸(だけどすぐに、握り返される手)
花丸(心が、僅かに跳ね上がるのを感じる) 花丸「い、行こうか」
ルビィ「そ、そうだね」
花丸(並んで歩きだす)
花丸(心臓が激しく鳴り続ける)
花丸(大丈夫かな)
花丸(気づかれてないかな)
花丸(手を握るなんて、普通にしていたのに)
花丸(意識するだけで、こんなに変わるなんて)
花丸(知らなかった) 花丸「夜になると、暑さも和らぐようになってきたね」
ルビィ「だね」
花丸(バスを、一つ手前のバス停で降りた)
花丸(話したいことがあるという、ルビィちゃんの希望)
花丸(今回の経緯について話そうとしてくれているんだ)
花丸(マルも話したいことがあったから好都合)
花丸(なのに、互いに本題を切り出せないまま、黒澤家は近づいてくる) 花丸・ルビィ「「あ、あのね」」
花丸「あっ」
ルビィ「被っちゃったね」
花丸「息、ピッタリずら」
ルビィ「ふふっ、だね」
花丸「えっと、どうしようか」
花丸「ルビィちゃんから話す?」
ルビィ「いいの?」
花丸「マルは後でも大丈夫だから」 ルビィ「……マルちゃん」
花丸(ルビィちゃんが、歩みを止める)
花丸「う、うん」
ルビィ「ルビィね」
ルビィ「曜ちゃんに、フラれちゃったの」
花丸「知ってるよ」
花丸「曜ちゃんから聞いた」
ルビィ「……そうなんだ」 ルビィ「やっぱり、駄目だった」
ルビィ「仕方ないよね」
ルビィ「元々、高根の花だって分かっていた」
ルビィ「恋人になるなんて、無理だって」
花丸「……」
ルビィ「ごめんね、励ましてくれたのに」
ルビィ「全然、上手くいかなくて」 花丸(言葉は、用意していたはずだった)
花丸(なのに、目を潤ませるルビィちゃんの姿を見ると)
花丸(そんなものは、全て吹き飛んでしまって)
ルビィ「変だな」
ルビィ「泣かないように、我慢してたのに」
花丸(手を握る力が強くなる)
花丸(水滴が零れ落ちる) 花丸「……辛かったね」
花丸(出会った時と同様の感覚)
花丸「ルビィちゃんは頑張ったよ」
花丸(手を引き、抱き寄せる)
花丸「本当に、頑張ったよ」
花丸「だからもう、無理しないで」
花丸(強く、強く、抱きしめる) ルビィ「無理、してないよ」
ルビィ「ルビィにはマルちゃんが居るから」
ルビィ「大切な友だちがいるから――」
花丸(言葉が、途切れる)
花丸(それ以上、続かない)
花丸(泣きそうになりながら、肩を震わせて)
花丸(だけどその行為は大好きだった人を責めることになると、必死にこらえてる) 花丸「ルビィちゃん……」
花丸(手を緩める)
ルビィ「……」
花丸(向き合った顔)
花丸(様々な感情を噛みしめ、歪んだ顔)
花丸(それは過去に観た彼女の顔の中で、もっとも美しくて)
花丸(吸い寄せられるように、引き込まれるように)
花丸(唇を、重ね――) ルビィ「い、いやっ!」
花丸(直前、振り払われる)
花丸「ルビィちゃん……」
ルビィ「駄目だよ、それは」
ルビィ「したら、引き返せなくなる」
ルビィ「友情は消えない」
ルビィ「だけど、愛情になったら消えちゃうかもしれない」
ルビィ「マルちゃんは消えてほしくない」
ルビィ「マルちゃんとは、永遠がいいの」 花丸(そこまで言い切ると、堤防は決壊した)
ルビィ(それを誤魔化すようにマルの胸に顔を埋める)
花丸(小さな身体)
花丸(だけどさらに小さな自分では、包み込むこともできず)
花丸(ただ共に泣くだけ)
花丸(それが彼女が親友に求めていることだから)
花丸(だから、構わないんだ)
花丸(例え、涙の意味が違ったとしても) そろそろ完結だと思ってたからまだまだ続くのうれしい ほう、ここからさらなる展開が待っているとは楽しみですわ ルビィ推してるけどこのルビィなんか嫌い。つい読んじゃうけども。 おれが感じたのは
このルビィちゃんは女の子のルビィちゃんじゃなくて
女のルビィちゃんなんだろうなって事
恋だの愛だのやってる女って感じがした すごく面白いんだけど二人称の君がちょっと違和感ある H2−1
花丸(去年までより、少し早めの朝)
花丸(親友を待つバス停)
花丸(桜が舞い散る中、のんびりと本を読む)
花丸(綺麗なピンク色)
花丸(入り込んでくる花びらは少し煩わしいけど)
花丸(今年は、桜が散るのは早めかもしれない) 花丸(それにしても、遅い)
花丸(もしかして、時間間違えてる?)
花丸(もうすぐバスが来ちゃう)
花丸(ダイヤさんはいないんだ)
花丸(迎えに行ってあげればよかったかな)
花丸(次のバスを逃すと遅刻は間違いない)
花丸(初日から遅刻なんて嫌だ)
花丸(だけどルビィちゃんを置いていくのは、もっと嫌だ) 花丸「うーん、究極の選択――」
ルビィ「ま、マルちゃん!」
花丸(直後、聴こえる声と地面を駆ける足音)
花丸(よかった、遅刻はせずに済みそう)
ルビィ「ご、ごめんね」
ルビィ「目覚まし、かけたんだけど」
花丸「間に合ったんだから、大丈夫ずら」
花丸(とぎれとぎれの声)
花丸(まともにセットされていない髪)
花丸(どれだけ急いできたか、よく分かる) 花丸「明日からはお迎えに行くね」
ルビィ「うう」
ルビィ「ちゃんと一人で起きられるようになるはずだったのに……」
花丸「いいんだよ、少しずつで」
花丸「最初から一緒に登校できる方が、マルも嬉しいし」
ルビィ「そう?」
花丸「ずら」 花丸(気づけば、マルたちも二年生)
花丸(新しい学校での、新しい生活を目前に控えている)
ルビィ「急いできたけど、制服変じゃないかな?」
花丸「うーん――問題なさそうだよ」
ルビィ「ほっ」
花丸「だけどほら、髪」
ルビィ「あっ」 花丸「やってあげるから、こっちおいで〜」
ルビィ「うん!」
花丸「せっかくだし、髪型変えてみる?」
ルビィ「うーん、どうしよ」
花丸(マルとルビィちゃんは仲良しの親友同士)
花丸(その関係は変わっていない)
花丸(変わりようがない) 花丸(あの日の出来事)
花丸(その場であったことについて、互いに触れていない)
花丸(私たちの中の禁忌)
花丸(国木田花丸と黒澤ルビィは永遠に『親友』である)
花丸(その戒律だけを残して)
花丸(求め合った二人が、永遠を手にするなんて)
花丸(素晴らしいよね) 花丸(そういえば、変わったこともある)
花丸(ルビィちゃんに、新しい親友ができた)
花丸(鹿角理亞)
花丸(北海道に住む女の子)
花丸(最初は敵視されていたのに)
花丸(気づけばルビィちゃんの前に骨抜きにされた)
花丸(私も一部始終を見ていて)
花丸(改めて、自分の親友の魅力を知った) 花丸(理亞ちゃんとかかわる中で、ルビィちゃんはドンドン成長して)
花丸(奥に秘められていた大きな輝きを、いっぱいに放つようになった)
ルビィ「あー、楽ちんだよお」
ルビィ「これからも毎日マルちゃんにやってもらおうかな」
花丸「えー」
花丸(それでも私の前ではずっとこんな調子)
花丸(お姉ちゃんの前ですら、自立したらしいのに)
花丸(私だけ、特別)
花丸(特別は嬉しい) 花丸「ほら、バスが来たよ」
花丸「早く乗る準備しよ」
ルビィ「はーい」
花丸「そういえば朝食は?」
ルビィ「食べてないよ」
花丸「ならのっぽパンあげるから」
花丸「途中で食べよう」
ルビィ「わーい」 花丸(以前より甘えるようになった?)
花丸(弱い黒澤ルビィは消えた)
花丸(わけじゃなくて)
花丸(表に出さない術を覚えたんだ)
花丸(つまり大人になってということ)
花丸(人は経験を重ねて成長する)
花丸(あの初恋が、彼女に変化をもたらした) 花丸(その中で私の立場は?)
花丸(お姉ちゃんの代わり?)
花丸(というよりもお母さん?)
花丸(実家で気を緩めるような感じかな)
花丸(国木田花丸は、黒澤ルビィの安全基地)
花丸(行動で縛り、言葉で縛り、関係で縛り)
花丸(彼女にとって、理想的な居場所となった) 花丸(それを意図して行なったのか)
花丸(それとも偶然たどり着いたのか)
花丸(分からない)
花丸(当事者である国木田花丸はもちろん)
花丸(本人、黒澤ルビィにも)
花丸(流された結果)
花丸(身を任せた結果、たどり着いた)
花丸(そんな居場所) R2−1
ルビィ(お姉ちゃんがいなくなったあとのおうち)
ルビィ(少し広くて、少し暗い)
ルビィ(寂しい、のかな)
ルビィ(そう、寂しいんだよね)
ルビィ(自分自身、少しは変われたと思う)
ルビィ(だけど根っこの部分は、甘えん坊の妹) 理亞『ねえ』
ルビィ「うん?」
理亞『ルビィ、聞いてる?』
ルビィ「もちろん」
ルビィ(スマホ越しに聴こえるのは、少し尖った女の子の声)
ルビィ(去年の冬に友達になった理亞ちゃん)
ルビィ(今では週に何度も、電話でお話する間柄) 理亞『それでね、その子がね――』
ルビィ「へえ、それは意外だね」
ルビィ(最近の話題は、部に入ってくれたという後輩の話)
ルビィ(よほど可愛いのか、嬉しいのか)
ルビィ(同じような話を、何度も繰り返している)
ルビィ(理亞ちゃんは、分かりやすい)
ルビィ(気持ちを知るのも、とても簡単) ルビィ(だから理解している、自分へ向けられてる愛情くらい)
ルビィ(大好きなお姉ちゃん)
ルビィ(大切な後輩)
ルビィ(理亞ちゃんにとって、二人とも大切な人)
ルビィ(だけどそれよりも)
ルビィ(黒澤ルビィ)
ルビィ(私に向けられる感情は)
ルビィ(強い) 信者に長い間保守させ続けて自分はエタるって無責任すぎるだろ ルビィ(普通は心に秘めるような部分まで)
ルビィ(理亞ちゃんは表へ出す)
ルビィ(全部私に向けてくる)
ルビィ(お姉ちゃん、花丸ちゃん)
ルビィ(色んな人から愛されて生きてきた)
ルビィ(だけどこれは、それとはまた違う)
ルビィ(種類の愛情) ルビィ(人からそれ向けられるのが、こんなに幸せだなんて)
ルビィ(この快楽には抗えない)
ルビィ(だから相手と特別な関係になる気がなくても、突き放せない)
ルビィ(それが向けられ続ける限り、避けられないんだ)
ルビィ(なんて楽なんだろう)
ルビィ(愛している時はあんなに苦しいのに)
ルビィ(愛されている時は、とても楽) ルビィ(相手の気持ちが理解できるの、いいな)
ルビィ(矢印を自分から向けてるときは、分からないもんね)
ルビィ(相手の気持ち)
ルビィ(恋をしている人間は分かりやすい)
ルビィ(理亞ちゃんは特に)
ルビィ(純粋なんだ)
ルビィ(きっと、初めての恋なんだろう) ルビィ(純粋な幸福感)
ルビィ(心地よい状況)
ルビィ(ふと、ほだされそうになる)
ルビィ(もしかしたら、永遠の愛をくれるかもしれない)
ルビィ(自分の荷物を、一緒に背負ってくれるかもしれない)
ルビィ(そんな風に)
ルビィ(言葉を交わすだけで、そんな風に感じて) 理亞『あっ、もうこんな時間――おやすみルビィ』
ルビィ「うん」
ルビィ「おやすみ、理亞ちゃん」
ルビィ(私は、酷いことをしてるのかな)
ルビィ(自分が傷ついたように)
ルビィ(理亞ちゃんを、傷つけようとしているのかな)
ルビィ(……嫌だな、そんなの) H2−2
善子「今年はこの時期から暑いわね」
ルビィ「うん」
花丸「かき氷屋さん、まだ空かないかな」
ルビィ「流石にGWだとね」
花丸「むう、融通が利かないよ」
理亞「本当よね」
理亞「北海道にだって、冬でもやってるお店はあるのに」 善子「……それにしても、理亞」
理亞「なによ」
善子「あんた、平然といるわね」
理亞「悪い?」
善子「いや、悪くはないけど」
理亞「姉様がいる東京へきたついでだから」
理亞「別にルビィに会いに来たわけじゃないから」
善子「……せめてそこは私たちにって言いなさいよ」 花丸(GWになった)
花丸(新しい学校での生活は、それなりに順調)
花丸(ルビィちゃんもマルも、楽しんでいる)
花丸(お休みになって早々)
花丸(理亞ちゃんが内浦へ遊びに来た)
花丸(当然のように)
花丸(ルビィちゃんに会いに来た) ルビィ「だけど理亞ちゃん」
理亞「うん」
ルビィ「確かお休みの最後の方までこっちにいる予定でしょ」
ルビィ「聖良さんに会いに行く暇、あるの?」
理亞「……一応、ちゃんと会って帰る」
善子「はあ」
善子「お姉ちゃんが悲しむわよ」 理亞「いいの」
理亞「今回はルビィに」
理亞「あと善子と花丸に会うのが目的だから」
善子「あっさり認めたわね」
花丸「ずら」
善子「どうしたのよ、らしくない」
理亞「う、うるさい」 ルビィ「理亞ちゃん」
ルビィ「お顔、真っ赤だよ」
理亞「き、気のせい」
ルビィ「えー、そうかな」
ルビィ「ルビィの気のせい?」
理亞「そ、そうよ」
ルビィ「ふーん」 >>314
一応完結しなかったことはないので、そこは大丈夫だと思います
ただ無責任なのは事実ですし、保守してくださる方には感謝しつつ、もう少しペースを上げられればとは考えています >>326
長く間空くなら予め全部書いてから投稿したらどうなの 読者様の意見は無視しといて自分のペースで書けばええよ 楽しみに読んでる
できるだけ保守はするので気長に待ってます SSまとめの大手(ラブライブ関係)が閉鎖したしエタるんじゃないのかなー
書き終えても纏めて貰えんぜー この人はpixivにも名作をガンガン投稿してたはずだしエタは無いと思う いろいろ書いてる人なのか
完結した後でいいので過去作教えてください 善子「……ルビィ」
善子「理亞が相手だと、妙に強気になるわね」
花丸「だね」
善子「今まで見なかった関係性」
善子「ある意味、特別なのかしら」
花丸「そうかも」
花丸(らしくない?) 花丸(妹、下の立場になりやすいルビィちゃん)
花丸(同じ属性の理亞ちゃんだからこそ現れる)
花丸(私では知りえない顔)
花丸(別の)
花丸(もしかしたら本来の)
花丸(黒澤ルビィとしての顔) 善子「GW期間、あんたはずっとルビィの家に泊まるんでしょ」
理亞「そのつもり」
善子「よく許可降りたわね」
理亞「ルビィは特別だから」
理亞「家族もみんな、信用してる」
善子「家族公認なのね」
ルビィ「聖良さん以外、ちゃんと会ったことはないけどね」 花丸(今、理亞ちゃんがこうしているのは)
花丸(楽しそうに学校に通えているのは)
花丸(スクールアイドルを続けられているのは)
花丸(ルビィちゃんのおかげ)
花丸(ルビィちゃんが、いるから)
花丸(それをみんなが知っている)
花丸(理亞ちゃんは隠すどころか、積極的に広めるから) 理亞「ルビィは、嫌だった?」
理亞「せっかくのお休みなのに」
理亞「私とずっと一緒なの」
ルビィ「そんなことない」
ルビィ「嬉しいよ」
ルビィ「一緒に居たくても、難しいもんね」
ルビィ「普段は」
理亞「うん」 善子「ほら、花丸」
花丸「なに」
善子「ルビィ、盗られてるわよ」
花丸「そう?」
善子「いや、だから」
花丸「仲良しでいいよね」
善子「そりゃ、そうだけど」 善子「あんた、嫉妬とかしないのね」
花丸「嫉妬?」
善子「理亞にルビィを盗られてとか、考えないの?」
花丸「そんなの、変だし」
花丸「考えないよ」
花丸(一番の親友)
花丸(一番の理解者)
花丸(だから、考えちゃいけない) 明日の夜(早ければ今日かも)には最後まで一気に書き上げて投稿するつもりです
それまで保守などよろしくお願いします 花丸(考えたら、ルビィちゃんを裏切ることになる)
花丸(それだけは許されない)
花丸(だけど)
ルビィ「今夜は二人きりだもんね〜」
理亞「そ、そうね」
花丸(嫌な予感がする)
花丸(それでも目を逸らす)
花丸(後ろ向きな思考の所為)
花丸(ただの考え過ぎ)
花丸(国木田花丸はそう考えるのが)
花丸(ルビィちゃんの為になる)
花丸(はずだから) R2−2
ルビィ(夜)
ルビィ(一人の、苦手な時間)
ルビィ(だけど)
ルビィ(だけど今日は)
理亞「なに?」
ルビィ「ううん」
ルビィ(一人じゃない) ルビィ「二人とも、帰っちゃったね」
理亞「泊まっていけばよかったのに」
ルビィ「仕方ないよ」
ルビィ「毎日お泊りって訳にはいかないし」
理亞「私は、毎日」
ルビィ「あっ、そうだよね」
ルビィ「理亞ちゃんだけ特別、例外だ」
理亞「特別……」 ルビィ「今日は楽しかったね」
理亞「うん」
ルビィ「やっぱり楽しいよ」
ルビィ「理亞ちゃんと一緒だと」
ルビィ「花丸ちゃんと善子ちゃんもいれて」
ルビィ「四人、一緒だと」
理亞「うん」 ルビィ「ねえ」
ルビィ「今年の春」
ルビィ「理亞ちゃんが、こっちの高校に来るかもしれない」
ルビィ「そんな話になったよね」
理亞「……あった、そんなことも」
ルビィ「あ、恥ずかしい?」
理亞「そんなこと、ない」 理亞「ただ、あの時も」
理亞「あの時もまた」
理亞「ルビィに、助けてもらったなって」
理亞「思い出して」
理亞「思い出して、幸せな気持ちになった」
理亞「ルビィを、さらに好きになれた」
ルビィ「理亞ちゃん……」 理亞「だけど、どうしてあの時の話を?」
ルビィ「……自分の行動」
ルビィ「理亞ちゃんが来ることを拒んだこと」
ルビィ「それは間違っていなかった」
ルビィ「確信は持ってる」
理亞「あたりまえ、そんなの」
理亞「おかげで、大切な今がある」
ルビィ「だよね」 ルビィ「だけどね、考える時もあるよ」
ルビィ「あそこで止めなければ」
ルビィ「理亞ちゃんと一緒に過ごせた」
ルビィ「同じ学校に通って、もしかしたら同じ家に住んで」
ルビィ「そんな未来も、あったんじゃないかなって」
ルビィ「それはそれで、素敵だったんじゃないかなって」
ルビィ「ほんの少し、考えちゃう」 理亞「……寂しいの?」
ルビィ「へっ」
理亞「ルビィは今、寂しいの?」
ルビィ「そ、そんなことないよ」
ルビィ「スクールアイドルは続けられているし」
ルビィ「善子ちゃんや曜ちゃん、千歌ちゃん、梨子ちゃんもいる」
ルビィ「花丸ちゃんだって、前より甘やかしてくれてる」
ルビィ「だから」 理亞「だけど」
理亞「お姉ちゃんの分は?」
理亞「黒澤ダイヤが、いなくなった分は?」
理亞「空いた場所は、埋まったの?」
ルビィ「それは……」
理亞「私には分かる」
理亞「ルビィの気持ちが」 理亞「私がここに来たのは」
理亞「前に、GWなのに姉に会えないって」
理亞「ルビィが寂しそうに話していたから」
理亞「少しでも、ルビィの為になりたかったから」
ルビィ「理亞、ちゃん」
理亞「迷惑じゃないんだよね」
理亞「私は、ここに来てよかったんだよね」 ルビィ「それは、もちろん」
ルビィ「お昼間にも言ったけど、嬉しいよ」
理亞「……よかった」
ルビィ(安堵の表情)
ルビィ(どうして、そこまで自信が持てないのかな)
ルビィ(私のことを信用できない?)
ルビィ(ううん、そうじゃない)
ルビィ(きっと、これは) ルビィ「……ねえ、理亞ちゃん」
理亞「なに」
ルビィ「理亞ちゃんは」
ルビィ「理亞ちゃんはどうして」
ルビィ「そこまで、私の為に動いてくれるのかな」
理亞「え?」 ルビィ「嬉しいよ」
ルビィ「理亞ちゃんの気持ちも、行動も」
ルビィ「だけど不思議なの」
ルビィ「大好きなお姉ちゃんより、優先してくれる」
ルビィ「それの意味が」
ルビィ「理由が」
ルビィ「分からないから」
ルビィ(それは嘘、だけど) 理亞「……分からない?」
ルビィ「うん」
理亞「本当に?」
ルビィ「考えたけど、全然」
理亞「……そっか」
ルビィ「ごめんね」 ルビィ「だから教えてほしいの」
ルビィ「理亞ちゃんが私を最優先にしてくれる理由」
理亞「それは……」
ルビィ「言いにくいこと?」
理亞「うん……」
ルビィ「私にも、言えないこと?」
理亞「……ルビィだから、言えない」
ルビィ「……」 ルビィ(たぶん、今の自分は少ししかめっ面になってる)
ルビィ(鏡を見なくても分かる)
ルビィ(目の前の、理亞ちゃんの表情で)
ルビィ(全部、分かる)
ルビィ(意地悪し過ぎたかな)
ルビィ(こうなるの、分かっていたはずなのに)
ルビィ(可愛い反応はみれたけど)
ルビィ(自分が嫌な人間になったみたいで――)
理亞「――きなの」
ルビィ「へ?」 理亞「好きだから、ルビィのことが」
理亞「誰よりも」
理亞「姉様よりも」
理亞「他の友達よりも」
理亞「好きなの」
理亞「キスしたい、身体を重ねたい」
理亞「そんな風に考えるぐらい」
理亞「ルビィは、特別な好きなの」 ルビィ「っ」
ルビィ(予想もしていなかった言葉)
ルビィ(かつての自分を重ねていた)
ルビィ(そんな相手から飛び出した)
ルビィ(予想外の、言葉)
ルビィ(返す言葉が見つからない)
ルビィ(理亞ちゃんも、俯いて喋らない) ルビィ(……ああ)
ルビィ(曜ちゃんに告白したとき)
ルビィ(あれと同じなんだ)
ルビィ(今の理亞ちゃんは、あの時の私)
ルビィ(そっか、そっか)
ルビィ(納得、納得だね) 理亞「ルビィは」
理亞「私のこと、好きじゃない?」
ルビィ(必死に、絞り出すように発した言葉)
ルビィ(自分と重なっていく)
ルビィ(告白されているのに)
ルビィ(まるでしているみたいに)
ルビィ(胸が締め付けられる) ルビィ(苦しかった)
ルビィ(辛かった)
ルビィ(あの時は、善子ちゃんが見つけてくれて)
ルビィ(花丸ちゃんが慰めてくれて)
ルビィ(だから、立ち直れたのに)
ルビィ(二人が居なかったら)
ルビィ(廃人のようになっていてもおかしくなかったのに) ルビィ(理亞ちゃんには、いるの?)
ルビィ(あの時の二人みたいに)
ルビィ(傷ついた自分を、励ましてくれる人が)
ルビィ(聖良さんも、もう傍にはいない)
ルビィ(友達だって、どこまで深い仲かは分からない)
ルビィ(そして)
ルビィ(どう考えても)
ルビィ(本来理亞ちゃんを慰める位置にいるのは)
ルビィ(私自身) 理亞「ルビィ……」
ルビィ(潤んだ瞳)
ルビィ(まるで死刑宣告を待つ囚人のように)
ルビィ(身体を震わせている)
理亞「やっぱり、嫌、だよね」
理亞「気持ち、悪い、よね」
理亞「無理、しなくてもいいから」
ルビィ(心が、痛いよ)
ルビィ(そんな目で見ないでよ) ルビィ(無理だよ)
ルビィ(私には、無理)
ルビィ(こんなの)
ルビィ(こんなの)
ルビィ(断れないよ)
ルビィ(駄目だって)
ルビィ(受け入れちゃ駄目だって)
ルビィ(分かっているけど)
ルビィ(……マルちゃん) ルビィ「いいよ、理亞ちゃん」
理亞「ルビィ?」
ルビィ「私もね、理亞ちゃんが好き」
理亞「ほ、本当?」
ルビィ「うん」
ルビィ「好きだよ」
理亞「る、ルビィ!」 ルビィ(抱きついてくる理亞ちゃん)
ルビィ(私はそんな彼女を抱きとめ)
ルビィ(彼女には分からない作り笑顔を貼り付ける)
ルビィ(ううん、違うかな)
ルビィ(心の中には、喜びもある)
ルビィ(笑顔の中にも、自然と出てきた部分もある)
ルビィ(私は結局弱くて、流されやすいから)
ルビィ(……ごめんね)
ルビィ(本当に、ごめんね) H2−3
花丸(図書室の窓から、外を眺める)
花丸(外は、雨が降りしきっている)
花丸(雨音が煩わしい)
花丸(自然の音に包まれながら本を読むのは好きだったのに)
花丸(苛ついて、叫び出したくなる)
花丸(精神的に余裕がない証拠) 花丸(かつてここと同じ、図書室と称される空間で)
花丸(多くの時間を共有した親友は)
花丸(沼津の学校へ移ってから)
花丸(この場所に一度も足を運んでいない)
花丸(今日のように雨で練習が休みでも)
花丸(一目散に家へ帰っていくから)
花丸(私には、わき目も触れず) 花丸(全ては、恋人の為)
花丸(誰よりも大切な相手の為)
花丸(ずっと、一番だったはずなのに)
花丸(その座から落ちるのは、あまりにもあっけなく)
花丸(いつも手のかかる恋人優先)
花丸(理亞ちゃん、理亞ちゃんと)
花丸(はるか遠くにいる相手にかまけて) 花丸(これが現実なんだ)
花丸(友情なんて)
花丸(親友なんて)
花丸(恋愛の前では無に等しくて)
花丸(辛い)
花丸(好きな相手ができても、変わらなかったはずなのに)
花丸(少しずつだけど、私から離れていく)
花丸(彼女の中の、大切ではなくなっていく) 花丸(薄々、気づいてはいた)
花丸(所詮、親友は友だちの一部)
花丸(その中で特別でも)
花丸(本物の特別には敵わない)
花丸(どれだけ願っても叶わない)
花丸(それでも直視するのを避けていた)
花丸(だって、この現実は)
花丸(あまりにも)
花丸(あまりにも) 花丸「――」
花丸(手に力が入る)
花丸(紙の破れる音)
花丸(下を見ると、ページが一枚破けている)
花丸(あとは衝動的に)
花丸(滅茶苦茶に、滅茶苦茶にしていく)
花丸(かつて自分を構成していた世界を)
花丸(自分の全てだった世界を) 花丸(気づけば、手元には)
花丸(細かい切り傷が大量に刻まれた手のひらと)
花丸(無残な本の残骸だけが残って)
花丸(それらは全て)
花丸(自らの心を写しているみたいで)
花丸(ぐちゃぐちゃの)
花丸(崩壊した)
花丸(国木田花丸の心) 花丸(ねえ、善子ちゃん)
花丸(確かに嫉妬はしなかったよ)
花丸(嫉妬なんて、生易しい感情じゃない)
花丸(絶望だよ)
花丸(夢も希望も一切ない)
花丸(一粒の光さえも許さない)
花丸(絶望の世界) 花丸(これは罰なのかな)
花丸(恋人になりたいなんて)
花丸(自ら天使を穢そうとした私へ)
花丸(神様から与えられた罰)
花丸(だとしたら、最悪だよ)
花丸(この世に神なんていない)
花丸(少なくとも、人間が望む形の神なんて) 花丸「……帰ろう」
花丸(早く残骸を片付けて)
花丸(これ以上いても、駄目になるだけ)
花丸(一度心を落ち着かせて)
花丸(落ち着かせて……)
花丸(無理だ)
花丸(無理だよ)
花丸(落ち着けるわけ、ないよ) ※
花丸(揺れるバス)
花丸(身体に響く振動)
花丸(心が、痛い)
花丸(これが)
花丸(きっとこれが)
花丸(ルビィちゃんが感じていた苦しみ)
花丸(失恋の苦しみ) 花丸(恋人になることを拒否されても)
花丸(思いが届かなくても)
花丸(恋が完全に終わったわけじゃなかった)
花丸(誰かと恋人にならない限り)
花丸(それは続く)
花丸(そもそも私は一番、上の位置にいて)
花丸(血縁ではない人間の中で、最も高い位置)
花丸(だからある意味、最も恋人に近い関係だった)
花丸(それが、痛みを誤魔化していたんだ) 花丸「ルビィちゃん」
花丸(会いたいよ)
花丸(お話したいよ)
花丸(触れたいよ)
花丸(抱きしめたいよ)
花丸(キスしたいよ)
花丸(一緒に、居たいよ) 花丸(恋人になりたいとか)
花丸(一番の友達でいたいとか)
花丸(もう言わないから)
花丸(ただの友達の一人でいいから)
花丸(傍に居たい)
花丸(君の傍に居たい)
花丸(なのに)
花丸(それは叶わない) 花丸「ぅぅ」
花丸(嫌だ)
花丸(嫌だよ)
花丸(涙が)
花丸(涙が溢れてくる)
花丸(公共の場所なのに)
花丸(もう高校生なのに)
花丸(涙が止められないよ) 花丸(恥ずかしい)
花丸(こっち、みないで)
花丸(私を見ないで)
??「ねえ、大丈夫?」
花丸(ほら、話しかけられた)
花丸(嫌だ、見知らぬ人に変な目で――)
果南「おっ、やっと気づいた」
花丸「果南、ちゃん?」 果南「うん、そうだよ」
花丸(海外へ、留学しているはずの先輩)
花丸(だけどこれは、見間違いじゃない)
花丸(間違いなく、本人)
花丸「ひ、久しぶり」
果南「そう?」
果南「半年も経ってないぐらいじゃない?」
花丸「そうだけど……」 花丸「どうしてここに?」
果南「今日、こっちに帰ってきてさ」
花丸「留学は?」
果南「留学――ああ、ダイビングの資格ね」
果南「もう取り終えたよ」
果南「そんな時間のかかるものでもなかったし」
花丸「そうなんだ……」
花丸(てっきり、ずっと海外に居るものだと思ってた) 果南「てか、その顔」
花丸「あ」
果南「とりあえずこのハンカチ、使いなよ」
花丸「あ、ありがとう」
花丸(自分の顔を軽く拭う)
花丸(ほのかに香る、大人の女性の匂い)
花丸(果南ちゃん、二つも年上なんだもんね) 果南「しかしさ」
果南「花丸、結構情緒不安定なんだね」
果南「ずっと後ろから見てたけど、泣き出したから驚いた」
花丸「は、恥ずかしいずら……」
果南「いやまあ、知れてよかったよ」
果南「元々さ」
果南「落ち着いていて、後輩らしくないなって感じだったから」 花丸「オラも、気づいた」
花丸「果南ちゃん、思ったより先輩っぽいね」
果南「それは酷く――ないか」
果南「マルには、ガキっぽいところばかり見せちゃってたし」
花丸「……ありがとう」
花丸「おかげで助かったよ」
果南「そう?」
果南「別になんもしてないけどね」 果南「でも」
果南「どうして泣いてたの?」
果南「何か嫌なことでもあった?」
花丸「……」
果南「もしかしていじめとか?」
果南「マル、大人しいし」
果南「よそ者だから狙われそうだし」 花丸「違うよ」
花丸「そんなんじゃない」
果南「本当に?」
果南「私、話をつけに行くぐらいはするよ」
花丸「違うよ」
花丸「本当に違う」
花丸「学校のみんなは、いい人たちばかりだよ」 果南「それなら――ああ」
果南「いないね、ルビィが」
果南「いつも一緒に帰ってたのに」
花丸「ぁ」
果南「……図星だね」
花丸「……うん」
果南「そっか、ルビィか」
果南「それなら納得だ」 果南「花丸をここまで落ち込ませられるのは」
果南「あの子ぐらいだもんね」
花丸「そんなこと」
果南「分かるよ」
果南「他のAqoursのメンバー」
果南「例え善子だとしても」
果南「ここまでは、無理だよ」 花丸「どうして、言い切れるの」
果南「簡単だよ」
果南「抱いている感情の種類が」
果南「重さが全然違う」
果南「自分では気づいてないかもだけどさ」
果南「結構分かりやすいんだよ、花丸は」
花丸「……」 果南「ルビィ、どうしたの」
花丸「……誰にも言わない?」
果南「うん」
花丸「恋人が、できたの」
花丸「私より、大切な人が」
果南「ああ……」
花丸「それで――」 果南「分かった、もう十分」
花丸「……」
果南「花丸」
花丸「なに?」
果南「うち来なよ」
果南「ちょうどいい、心を慰める方法」
果南「私は知ってるからさ」
果南「それを教えてあげる」 R2−3
理亞『それでね、その子は今日も部室に来なくて』
ルビィ「そっか」
理亞『考えてみたけど、やっぱり心当たりはなくて』
理亞『怒らせちゃったのかな』
理亞『体調が悪いだけなのかな』
ルビィ「だけどお返事、ないんだよね」
理亞『……うん』 理亞『ルビィはどうすればいいと思う?』
ルビィ「そうだね……」
ルビィ(今日も)
ルビィ(理亞ちゃんの相談に乗るという体の)
ルビィ(愚痴を聞かされる)
ルビィ(恋人としての毎日の電話)
ルビィ(それが憂鬱なだけの時間に変わってしまったのは)
ルビィ(いったい、いつからなのかな) ルビィ「やっぱり、一回お話してみないと」
ルビィ「相手の気持ちを確認するのは大切だよ」
理亞『そ、そうだよね』
ルビィ(毎日、同じようなアドバイスを繰り返す)
ルビィ(だけど臆病な理亞ちゃんは)
ルビィ(何一つ実践できず)
ルビィ(同じ内容の相談――愚痴を繰り返す) ルビィ(人付き合いが苦手な理亞ちゃん)
ルビィ(初めてできた後輩とまともに接する)
ルビィ(なんてこと、できるわけもなくて)
ルビィ(最初はちょっとしたすれ違いでも)
ルビィ(ドンドン溝は広がっていって)
ルビィ(そんな状況なのに)
ルビィ(暇さえあれば、私に連絡をして)
ルビィ(周囲より優先して、お話をしようとして) ルビィ(それじゃあ上手くいくわけない)
ルビィ(何度も、教えてあげているのに)
ルビィ(恋の熱に浮かされた理亞ちゃんは)
ルビィ(自分をコントロールできないから)
ルビィ(ずっと、私のことばかり見ている)
ルビィ(そして状況は悪化して)
ルビィ(こうやって、話す内容もろくでもなくなって) ルビィ(嫌だな)
ルビィ(自分の心の弱さに負けて、告白を受け入れて)
ルビィ(好かれていれば、大丈夫だと思ったのに)
ルビィ(辛い想いはしないと思っていたのに)
ルビィ(助けてあげたいのに)
ルビィ(何もできない)
ルビィ(事態は悪化して、話の内容も暗くなって)
ルビィ(悪循環に陥ってる) 理亞『じゃあ、明日話してみるね』
ルビィ「頑張って」
ルビィ(無駄だって)
ルビィ(できないって分かってるけど)
ルビィ(肯定する)
ルビィ(否定したくない)
ルビィ(傷つけたくない) 理亞『おやすみルビィ』
理亞『愛している』
ルビィ「私も」
ルビィ「おやすみ、理亞ちゃん」
ルビィ(電話、あっさり切れた)
ルビィ(時間がかかる時もあるから)
ルビィ(今日はついてた) ルビィ(……疲れたな)
ルビィ(花丸ちゃん)
ルビィ(花丸ちゃんと、お話したいよ)
ルビィ(どんな私でも笑顔で受け入れてくれる)
ルビィ(大切な親友に)
ルビィ(全部聞いてほしいよ)
ルビィ(受け止めてほしいよ) ルビィ(だけどそれは)
ルビィ(自分が理亞ちゃんから受けているのと同じ行為)
ルビィ(しかも)
ルビィ(最近はお話もしてくれなくなった相手に)
ルビィ(ずっと避けられてる)
ルビィ(ううん、違う)
ルビィ(お互いに、無意識に避け合ってる) ルビィ(原因は分かっている)
ルビィ(分かっているからこそ、解決できない)
ルビィ(裏切ったのは、私で)
ルビィ(元に戻すには、理亞ちゃんを裏切らなきゃいけなくて)
ルビィ(それは不可能なのに)
ルビィ(都合よく、受け入れてなんて)
ルビィ(当然、言えなくて)
ルビィ(八方ふさがり) ルビィ(きっとマルちゃんなら)
ルビィ(許してくれる)
ルビィ(私がどんなに酷いことをしても)
ルビィ(根拠もあるよ)
ルビィ(逆の立場なら)
ルビィ(許せてしまうから)
ルビィ(マルちゃんになら、何をされても)
ルビィ(あの時だって)
ルビィ(もっと強引に迫られたら、きっと) ルビィ(……駄目だよ)
ルビィ(これは実現しなかった未来の家庭)
ルビィ(今は、それよりも)
ルビィ(理亞ちゃんを助けてあげないと)
ルビィ(いい方法を考えないと)
ルビィ(……ああ)
ルビィ(けどやっぱり)
ルビィ(疲れた) H2−4
花丸「ん……」
花丸(身体が、重い)
花丸(というか、未知の感覚)
果南「起きたみたいだね」
花丸「果南ちゃん……」
果南「疲れ果てて寝ちゃったんだね」
花丸「……うん」 花丸(そうだ……)
果南「まあ初めてだと、大変だよね」
果南「シャワーでも浴びてきなよ」
果南「身体、気持ち悪いでしょ」
花丸「……」
花丸(初体験は、案外あっさりと)
花丸(ロマンチックな形なんて、考えてなかったけど)
花丸(まさか、こんな簡単に) 花丸「果南ちゃんは」
果南「ん?」
花丸「ずいぶん、慣れてるみたいだね」
果南「うーん、否定はしない」
果南「これでも、経験は豊富だし」
果南「悪くなかったでしょ」
花丸「分かんないよ」
花丸「初めてだから、比較対象がない」
果南「うん、そりゃそうだ」 花丸「いつもこんなことしてるの?」
果南「心が冷たいとね」
果南「ぬくもりを求めてさ」
花丸「だけどこんなのは」
果南「楽にはなれたでしょ」
果南「穏やかになれたでしょ、心」
花丸「それは……」 果南「寂しがり屋なんだよ、私」
果南「両親がさ、まともにいないじゃん」
果南「でもさ、鞠莉とダイヤがいるからやってこれた」
果南「けど、鞠莉が留学して」
果南「残ったダイヤとも、疎遠になって」
果南「気づけば、許容量を超えていて」
果南「落ち着ける方法を探したら」
果南「たどり着いたんだよ」
果南「これに」 花丸「誰とでも、寝てるの?」
果南「いや、基本的に女の子限定」
果南「別に性別はどっちでも良かったんだよ」
果南「ただ快楽を求めていただけだから」
果南「だけどさ、女の子とやる方が楽なんだよ」
果南「ネットがある時代」
果南「マイノリティの方が相手は発見しやすい」
果南「相手に飢えている人も多いしね」 果南「女の子相手だとさ、リスクも減るし」
果南「トラブルになっても、女同士ならある程度力づくで何とかなる」
果南「もちろん、面倒事に巻き込まれたこともあるけど」
果南「それでもマシなはずだし」
果南「なにより、異性間と違って妊娠の心配もない」
果南「タガの外れた私でも」
果南「まともな道から逸れる心配はないわけだ」 花丸「……」
果南「言葉も出ないかな」
果南「自分でも、酷いとは思うよ」
果南「それでもね」
果南「適当な相手と身体を重ねれば」
果南「満たされなくても、痛みは誤魔化せる」
果南「麻薬みたいなものでね」
果南「一度手にしたら止まらない」
果南「止められない」 果南「鞠莉も戻ってきて、十分に満たされて」
果南「心も成長して、痛みを誤魔化す必要ないはずなのに」
果南「どうしてもやめられないんだ」
果南「身体が勝手に求める」
果南「完全に依存症のそれだよ」
果南「いつか破滅する、ろくでもない結果を招く」
果南「理解しているはずなのに、逃れられない」 果南「花丸だって感じたでしょ」
果南「空いた穴、寂しさを誤魔化せたでしょ」
花丸「……」
果南「だったら、理解はできるよね」
花丸「……うん」
果南「よく自棄になって相手を探す人、居るけどさ」
果南「分かっているからだよ」
果南「これが一番手っ取り早く、簡単な方法だって」 花丸「ねえ」
花丸「ダイヤさんや鞠莉ちゃん」
花丸「千歌ちゃんや、曜ちゃんとは」
花丸「これ、やったことあるの?」
果南「ないよ」
果南「大切な幼馴染にはさ」
果南「こんな絶望的な場所へは来てほしくない」
花丸「……私は、大切な存在じゃないんだ」 果南「花丸には、必要だと思ったから」
果南「誰か沼に引きずり込もうとする人間に掴まる前に」
果南「私が教えなきゃいけないって」
果南「思い知ったでしょ」
果南「これがどんなに怖いか」
果南「私は恐ろしさを知らなかったから」
果南「底なし沼にハマった」
果南「花丸には、こうなってほしくない」 果南「今の話聞いてさ」
果南「また同じようなことをしたいと思える?」
花丸「……無理、かな」
果南「それならいいよ」
果南「薬物と違ってさ」
果南「一回ぐらいなら引き返せるから」
果南「こっちに来ちゃ駄目」
果南「こんな目に遭うのは、自分だけで十分だ」 花丸(こんな目、か)
花丸(そうだよね)
花丸(辛いよね)
花丸(抜け出せないなんて)
花丸(ハマったら、抜け出せないなんて)
花丸(……)
花丸(……だけど) R2−4
理亞「じゃあね、ルビィ」
ルビィ「バイバイ」
ルビィ「理亞ちゃん」
ルビィ(遊びに来た理亞ちゃんを)
ルビィ(沼津の駅まで送る) ルビィ(三連休でも、長期休みでもない)
ルビィ(ただ休日、日によっては平日なのに)
ルビィ(聖良さんに会いに来るという名目で)
ルビィ(沼津に顔を出す)
ルビィ(そんな日々を繰り返して)
ルビィ(聖良さん、甘いから)
ルビィ(それを普通に受け入れちゃってる) ルビィ(嫌なわけじゃない)
ルビィ(少しギクシャクした関係になっても)
ルビィ(理亞ちゃんのことは、並の友達より好きだし)
ルビィ(直接会えるのは嬉しい)
ルビィ(それでもやっぱり)
ルビィ(こんなの変だよ)
ルビィ(おかしいよ) ルビィ(それに)
ルビィ(愛情、信頼感)
ルビィ(今の理亞ちゃんから向けられるのは)
ルビィ(私には過剰なもの)
ルビィ(本当に、恋は盲目だよね)
ルビィ(理亞ちゃんは、私を高く評価し過ぎている)
ルビィ(だからその期待が、重い) ルビィ(理亞ちゃんは)
ルビィ(学校でも上手くいかなくなって)
ルビィ(家でもお姉ちゃんがいないから居場所がなくて)
ルビィ(部屋に引きこもっているのもつらくて)
ルビィ(こうして聖良さんや私の元にやってくる)
ルビィ(弱い自らを)
ルビィ(守ってくれる存在の元に) ルビィ(付き合う前は、こんな子じゃなかった)
ルビィ(負担になるような感情を押し付けてくる子じゃなかった)
ルビィ(向けられる好意も、ただ気持ちよかったもの)
ルビィ(それを狂わせたのは)
ルビィ(壊してしまったのは)
ルビィ(間違いなく自分)
ルビィ(狂った恋に、彼女は気づかない)
ルビィ(それに気づいている私も)
ルビィ(気づかないフリをする義務がある) ルビィ(でも、仕方ないよね)
ルビィ(他に愛を知らずに育った子)
ルビィ(知っているのは、家族からの愛情だけ)
ルビィ(知らない種類の愛は)
ルビィ(正しく人に向けることもできない)
ルビィ(その愛を持つ人間に)
ルビィ(依存することしかできない) ルビィ(……そういえば、マルちゃんも同じ)
ルビィ(同じように)
ルビィ(家族以外からの愛情を知らずに育った)
ルビィ(そして私と出会ったとき、初めて人から愛を受けた)
ルビィ(ほとんど、同じ境遇)
ルビィ(だから、本当に)
ルビィ(残酷なことを、しているのかな)
ルビィ(だけど、マルちゃんは)
ルビィ(あの子だけは、どうしても失いたくない) ルビィ(会いに行きたいな)
ルビィ(限界なんだ、私は)
ルビィ(これ以上いい子でいたら)
ルビィ(壊れちゃう)
ルビィ(理亞ちゃんと一緒に)
ルビィ(黒澤ルビィが、崩壊しちゃう)
ルビィ(そうなったら、マルちゃんも悲しむはず)
ルビィ(そうやって、言い訳を作って) ルビィ(利用する)
ルビィ(親友が、自分を好きだという事実を)
ルビィ(黒澤ルビィから離れられないという現実を)
ルビィ(駄目だな、本当に)
ルビィ(ごめんね)
ルビィ(心の中で、毎日のように呟いてる)
ルビィ(誰に謝ってるんだろうね)
ルビィ(分からないや)
ルビィ(もう、なにも) H2−5
花丸(ぼんやりと佇む)
花丸(中学生や、浦の星に通っていた頃)
花丸(よくルビィちゃんと過ごした)
花丸(防波堤の上で)
花丸(ただ、流れる海を眺める) 花丸(ここには)
花丸(懐かしい思い出が詰まっている)
花丸(楽しかった日々)
花丸(天使と戯れているだけの)
花丸(記憶)
花丸(その中に形成された)
花丸(楽園) 花丸(果南ちゃんとの行為の後)
花丸(警告に従い、二度目の経験はしていない)
花丸(その分、心は痛いまま)
花丸(それを癒すために)
花丸(こうして昔の思い出の場所を回って)
花丸(美しい記憶を集めている)
花丸(現実のルビィちゃんは)
花丸(沼津に頻繁にやってくるようになった)
花丸(理亞ちゃんの物だから) 花丸(いいんだよ)
花丸(記憶の中で美化された)
花丸(理想のルビィちゃんが居れば)
花丸「思い出さえあれば」
花丸「それで」
ルビィ「嫌だよ」
花丸「……」
ルビィ「私は、思い出だけじゃ嫌だ」 花丸「久しぶり、だね」
ルビィ「教室で会ってるよ、毎日」
ルビィ「部活だってしてる」
花丸「そうだね」
花丸「それでも」
花丸「久しぶり」
花丸「だよ」
ルビィ「――そうだね」 花丸「理亞ちゃんは?」
ルビィ「帰ったよ」
ルビィ「さっき、駅まで送っていったんだ」
花丸「そっか」
花丸(久しぶりに直視する)
花丸(ルビィちゃんの顔)
花丸(以前は簡単にしかしていなかった)
花丸(お化粧がしっかり施されている) 花丸(きっと疲れが顔に出るのを誤魔化す為)
花丸(少し痩せてもいる)
花丸(苦労しているんだろうな)
花丸(学校でも、元気がないことが多い)
花丸(せっかく手に入れた輝きも)
花丸(鈍く、掠れるようになって)
花丸(……結局、見てるんだよね)
花丸(ずっと、ルビィちゃんのこと) 花丸「ここに来たのは、たまたま?」
ルビィ「ううん」
ルビィ「マルちゃんを探して」
ルビィ「辿りついたの」
ルビィ「簡単だったよ」
花丸「よく分かったね」
ルビィ「なんでも分かるよ」
ルビィ「親友のことは、何でも」 花丸「……それは、私もだよ」
ルビィ「マルちゃんも?」
花丸「ルビィちゃんのことは、お見通し」
ルビィ「本当に?」
花丸「うん」
花丸「ルビィちゃんが会いに来た理由」
花丸「甘えたかったんでしょ」
花丸「私に」
ルビィ「……」 花丸「こっち、おいで」
ルビィ「うん」
花丸(躊躇なく寄ってくる)
花丸(近づいて)
花丸(防波堤の上に寝ころび)
花丸(膝の上に頭を乗せる)
花丸(ごくごく、自然に) ルビィ「疲れたの」
花丸「みたいだね」
ルビィ「やっぱり、お見通しなんだ」
花丸「親友のことだからね」
花丸(頭をそっと撫でる)
花丸(目を細めて)
花丸(可愛らしく息を漏らし)
花丸(固かった表情も、和らいでいく) ルビィ「ルビィはね」
ルビィ「甘えられるよりも」
ルビィ「甘える方が好きなのかな」
花丸「やっぱり子どもっぽいよ」
ルビィ「いいんだもん」
ルビィ「親友の前ぐらい」
花丸「もちろん」 花丸(久しぶりのぬくもり)
花丸(心が温まる)
花丸(これをずっと、求めていた)
花丸(だけど)
花丸(これは所詮、仮の関係)
花丸(やさしいルビィちゃんは)
花丸(理亞ちゃんの元を離れることができない)
花丸(あくまでも、一時的なもの) 花丸(それでもこの関係は終わらない)
花丸(終わらせることはない)
花丸(もう一人は嫌だ)
花丸(ルビィちゃんが支えられないのも)
花丸(離れ離れになるのも嫌だ)
花丸(だから)
花丸(確信をもって)
花丸(横で眠る彼女を眺めながら、顔を歪める) 花丸「そういえば、ルビィちゃん」
ルビィ「ゅ?」
花丸「理亞ちゃんとは、恋人なんだよね」
花丸「普段は、どんなことをして過ごしてるの?」
ルビィ「うーん」
ルビィ「おしゃべりしたり、しているぐらい?」
花丸「それだけ?」
ルビィ「うん」 花丸「それじゃあ」
花丸「これは」
花丸「したことないかな」
ルビィ「え――」
花丸(以前とは違い躊躇なく)
花丸(無防備に身体を預けていたルビィちゃんに)
花丸(ルビィちゃんの唇に)
花丸(自らの唇を重ねる) ルビィ「……こんなの、浮気だよ」
花丸(唇を離すと、少し睨まれる)
花丸「いいんだよ」
花丸「私たちは永遠に『親友』だから」
花丸「永遠に恋人にならないから、浮気にはならない」
ルビィ「屁理屈……」
花丸「得意なんだよ、屁理屈」
花丸「知ってるでしょ」 花丸(思うところはあっても)
花丸(罪悪感から、彼女は何も言えない)
花丸(今のルビィちゃんは)
花丸(出会った頃の、純粋な天使ではない)
花丸(それでも)
花丸(好きなんだ)
花丸(この感情は)
花丸(絶対に変わらない) 花丸「ねえ」
花丸「今日は私のうちにおいでよ」
ルビィ「マルちゃんのおうち?」
花丸「うん」
ルビィ「いいけど、どうして?」
花丸「いいこと、教えてあげる」
花丸「心が楽になれる」
花丸「一度やったら、病みつきになる」
花丸「楽しいこと」 ルビィ「……変なお薬とかじゃないよね」
花丸「もちろん」
花丸「そんなもの、使わないよ」
花丸「私がルビィちゃんに、すると思う」
花丸「そんな、酷いこと」
ルビィ「そ、そうだよね」
ルビィ「ごめんね」 花丸(結構、鋭いよね)
花丸(ううん)
花丸(今のは、意味深に言い過ぎたかな)
花丸(実際、ルビィちゃんを壊してしまうかもしれないこと)
花丸(でも大丈夫だよ)
花丸(私がずっと相手をしてあげれば)
花丸(傍に居れば)
花丸(ルビィちゃんを)
花丸(私とのそれに夢中にさせてしまえば)
花丸(底なし沼に一緒に堕ちれば)
花丸(永遠に、離れずに済むもんね) ずいぶん長引いてしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました
保守してくださった皆さん、本当に助かりました、感謝しています 乙ー
ルビまるはどうして背徳感が似合うのだろう
見た目なら甘々なのに 代替品も心中も好きだった
今回の「仮」も好きだわ
乙でした 久々に胸が苦しくなるSSだった
こういう生々しい恋愛もの大好物だから面白かったよ 乙です、素晴らしい
待ってた甲斐があった
みんな好意の矢印が上手く向かい合っていなくて、誰も願い通りの幸せを得られないようにしか思えなくて辛いな……
それでも仮の関係に縋らざるをえない歪んだ心情の描写に凄みを感じた 過去作も好き、代替品良かった
今回も想いの捩れやすれ違いの書き方が凄く丁寧で上手い…… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています