海未「これあげます」絵里「ありがとう」
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絵里「あけていい?」
海未「勉強に疲れた時に食べてください」
絵里「あ、これ食べ物なの」
海未「この大きさでなんだと思っていたのですか?」
絵里「消しゴム」
海未「私が絵里に消しゴムを渡す道理がありません……」 海未「これもあげます」
絵里「これは消しゴム?」
海未「食べ物です。先ほどのと好きな方を食べてください」
絵里「両方食べちゃダメなの?」
海未「……構いませんけど」 海未「絵里は誰かに贈り物をすることはありますか?」
絵里「あんまりないわ……でも、おばあさまにはよくお手紙と一緒にお土産を贈るわね」
海未「お土産を選ぶ時、何か基準はありますか?」
絵里「お菓子が多いから東京駅で探す時が多いわね。なにせ何回も送ってるから、同じものを送らないようにだけ気をつけているわ」
海未「なるほど……」 海未「贈り物というのは、相手のことを想って贈ります。ですから、相手がどんなものが好きそうで、どういったものが喜ばれるかよく考える必要があるんです」
海未「ですが私は、例えば食べ物なら、自分がおいしいと思ったからそれを贈ろうとしてしまうみたいなんです」
海未「わかってはいるのに、うまくいかないものですね」
絵里「……私はそれでいいと思うわ」
海未「!」
絵里「贈り物は、贈る側が相手のことを想っているように、贈られる側も想っているの」
絵里「きっと贈られた人はこう思うでしょうね。『ああ、この味があの人の好きな味なんだ』って」 海未「……絵里は素敵な考えができるのですね。感心しました」
絵里「私も自分本位なところがあるから、そう思うようにしてるだけよ」
絵里「ところで……やっぱりこれ、今からあけていい?」
海未「だめです。勉強に行き詰まった時ですよ」
絵里「うーん。でも開けちゃおー」
海未「待っ……!せめて私の見ていないところで……あっ」
絵里「あぁ、やっぱりそういうことだったのね」
海未「…………///」 絵里「バレンタインは世間的には14日よ」
海未「し、知っています」
海未「ただ、その、14日に渡してしまうと……い、意識してしまうといいましょうか。全然そのようなつもりはないのですよ?」
絵里「一言加えればよかったじゃない。『これは義理なんです』って」
海未「義理なんかではありません!」
絵里「えっ」 海未「私の絵里に対する尊敬や、今まで支えてくれた感謝を義理で伝えることはできません!」
海未「ですからそれは……私の、絵里に対する全ての気持ちを込めて作ったものです」
絵里「海未……」
海未「で、ですが。『そういう意図』はないということを示したかったというか、日本の慣習的な意味でのバレンタインではないということをですね……」
絵里「ありがとう。海未の気持ちはちゃんと伝わってるわ」
絵里「だから、海未の前で食べていい?」
海未「……気持ちだけでおいしくはなりませんから、味の保障はできませんよ」 絵里「どうして2つなのかと思ったら、こっちは抹茶チョコなのね」
海未「ずっと迷っていて、渡すかどうか決めあぐねていたのですが、もう両方渡してしまおうと思いまして」
絵里「すごく手間かかったんじゃない?」
海未「慣れないことをしてしまったものですから。苦手でしたら普通のだけを食べてください」
絵里「ううん、好きよ。いただきます」
絵里「なるほど……これが海未が好きな味ね」
海未「そ、そんなに口の中で味わわないでください……///見ていて照れてしまいますから……」 絵里「おいしかったわ。後味もよくてとてもいい気分よ」
海未「それならよかったです」
絵里「抹茶チョコね……難しそうだけど海未が好きなら次の参考にさせてもらうわね」
海未「次……?」
絵里「はいコレ」
海未「これ、は……」
絵里「チョコクッキー。乾燥剤入ってるけれど一応手作りよ」 海未「あ、あの。絵里も私と同じ……?」
絵里「まさか。私は海未みたいな立派な考えは持ってないわよ。単に当日に渡しそびれただけ」
海未「え……」
絵里「いつもの調子で接すれば普通に渡せるって思っていたのだけれど……海未があまりにも人気者で、急に怖くなっちゃったのよ。情けないわよね」
絵里「私はいつもそう。本心でぶつからなきゃいけない時は足がすくんでしまうの」
海未「絵里。それは、つまり……」
絵里「当日に渡せなくてごめんね。日が経ってるから食べれなかったら捨てちゃっていいから」 道理がありません!って渡る世間以外で言ってる人初めて見た 絵里「……帰るわね。暗くなるのが早いから気をつけて」
海未「ま、待ってください!……返事は」
絵里「いらない。だって、『そういう意図』はないのでしょう。死刑宣告を受けるようなものよ」
海未「いいから黙って私の胸を触ってください!」
絵里「え///何言ってるの」
海未「……私の胸に手を当ててください!///」
絵里「……」サワ
海未「っ……///」ドキドキドキ 海未「絵里の、私に対する気持ちを聞いて、初めて気づいたことです」
海未「こんなことならつまらない予防線を張らずにバレンタインに渡しておけばよかったです……///」
絵里「……じゃあ、来年は当日に渡してくれる?私だけのために」
海未「はい、もちろんです。絵里も……」
絵里「うん。来年は胸を張ってあなたにあげられそうよ」
絵里「だから、今からお互いの好きなものを知って、もっと仲良くしていきましょうね」
海未「……はい、絵里!」
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