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花丸「物語の眠る場所」
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0002名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 09:10:36.60ID:TXCZfmwG
元々在校生の少ない浦の星女学院の中、
陽の落ち始めた図書室はまさに、マルの聖域だと言えるかもしれない
少しだけ開けた窓から入り込んでくるさらりとした風に急かされるように、頁をめくる
微かなカーテンのさざめきと捲られる紙の乾いた音
ちくたく、ちくたく
少しずつすぎていく時の流れを踏み躙るように、小さな足音が扉の前で止まる

「…………」

ガチャリと無遠慮に開かれた扉の隙間からひょっこりと、顔を覗かせる紅い髪
続く伺う弱弱しい瞳に目を向けると、おびえたように姿を消す
まるで、そこにあるのに手を伸ばしてひとたび触れれば消えてしまう雪結晶のように。

「もう、本の貸出時間は終わったずらよ」

手元の小説に視線を戻しつつ、一枚のページをめくる
手を止めている間にも早く早くと急かしてきていた読書仲間は
満足したかのように動きを止めて、入れ替わるように影が文字を塗りつぶした

「花丸ちゃん……もう誰もいないよ?」
「知ってるずら」
「…………」
0003名無しで叶える物語(こんにゃく)
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2018/12/29(土) 09:13:48.53ID:scgg7Azi
期待
0006名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 09:24:03.02ID:TXCZfmwG
ちょっとだけ冷たく返す。
目を落としている紙は底なし沼のように引き込みこそすれど、一向に進ませてはくれない
黙り込んだ級友……いや、幼馴染へと目を向ける
普段と少し違って見えるのはマルがメガネをかけているから。
……ではない

「んっ……」

本が、瞼が、距離が、閉じる。
音が、少女が、光が、消える。
僅かな緊張とまだ幼さの残る柔らかさが伝わってくるたった一点に意識が持っていかれる閉じた本は足の隙間に落ちて、スカートを掴み切れずに床へと落ちていく
パタン。
それはとても小さな音だったのに、夏空に輝く花火のように。
深夜に鳴り響く除夜の鐘のように。
今の図書室にとってはあまりにも大きすぎて

「っ……ご、ごめんっ」
「……もともと古いから大丈夫」
「そ、そうじゃなくて」
「大丈夫」

謝ろうとしているのに、少女――ルビィはマルから後退りする
優しく声をかけてあげても、半開きの唇は滾った後悔に震えて動く。
落ちた本を拾って払う。
ハードカバーではないけれど、古いから問題はない
温まった椅子を机の方に押し戻してルビィちゃんを見ると、
彷徨った視線はマルから逃げ出してしまう
それなのに、半歩下がって以降動くことのない華奢な足はどういうことか。

「初めに言ったずら。ルビィちゃんのこと、マルは好きだって」
「でもっ」
「それこそ、マルは気に入らないずらよ?」
0007名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 09:36:32.55ID:TXCZfmwG
「う、うん……ごめんね。花丸ちゃん」
「どうせなら、ありがとうって言われたほうが嬉しい」
「あり、がとう」
「また明日」
「うんっ」

にっこりと笑って、明日もまた会うことを確約する。
不安に満ち満ちていたルビィちゃんはそれだけで元気な返事を返してくれて、
去り際、ドアの前で振り返ったルビィちゃんはばいばい。と手を振る
笑顔で見送ってから、ふっと息を吐く
甘さの消えた唇はすでにその余韻さえ失われてしまった
それだけ、ルビィちゃんは踏み込むことができていないということ
いや、踏み込み切れていないのはマルも一緒だ

「……それで。どうするずら?」

考えを振りほどくように虚空へと声を投げかける
カタっ……と、本棚の一つから音が聞こえたかと思えば、
夕暮れ時からだんだんと夜の帳に包まれようとしている図書室に、その子は姿を見せた
最終下校時刻間際にまでこっそりと隠れていたその子、善子ちゃんは複雑そうな表情でマルを見る
0008名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 09:53:31.40ID:TXCZfmwG
「花丸……」

小さな声

「花丸っ」

まだ小さい

「花丸ッ!」
「っ!」

張り上がった声、踏み出された強烈な一歩
一瞬にして埋まったマル達の距離は0を抜けてマイナスを叩き出して、背中が壁にぶつかる
噴き出しかけた空気を飲み込むと、ちょうど善子ちゃんの左手がマルの下あごを引き上げさせた
0010名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 10:00:13.48ID:TXCZfmwG
「花丸……あんた……」
「善子ちゃんはしたいの? それとも、したくないの?」
「そんなの……」

目に見える悲しさを携える善子ちゃんに対して、マルは意地悪な一言を投げつける
善子ちゃんはルビィちゃんとマルの関係を見るのは初めてじゃない
でも、いつもいつも、こう
咎めたり、怒ったりするわけでもなくそれを免罪符としているかのように詰め寄ってくる

唇が重なる。影が重なる
二つが一つに溶け合っていく中、ゆっくりと流れていく光は失われていく。
ルビィちゃんの時と違って閉じていないマルの目には、名残惜しそうに振り返る何かに見えた

繋がり、塞がれ、止まったはずの鼓動
けれど不思議なことに、呼吸をしなくても心臓は動いている
どきどきと。騒がしいほどに体を熱くしてしまう
優しい思いと愛おしい想いと
そして……重い想いが伝わってくる
0012名無しで叶える物語(茸)
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2018/12/29(土) 10:23:35.71ID:oF5r6MaX
えっろ
0013名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 10:26:39.34ID:TXCZfmwG
「っふ……」

勢い任せの接吻
離れていく善子ちゃんの表情は愁いを帯びて、尾を引く
自分がしたいことをしたはずなのに、
まったくもって幸福を得られてはいないというような顔つき

「……花丸」
「ずら丸って、呼ばないの?」
「やめてよ、今は」

マルの名前を呼ぶ堕天使は、その言葉に嫌悪する
自分でつけたあだなのに、普段は軽快に呼んでいるのに
ひとたび時が満ちれば、善子ちゃんにとってのマルは【ずら丸】ではなくなる
それが良いことなのか悪いことなのかマルには良い答えが見つからない

「花丸、もう一回」
「っ」

ぐっと押し込まれて、拒否権すら与えられることなく唇が重なる
奪われた。なんて考えは捨てた
だって、この唇はマルについているだけでマルのものじゃない
ある意味、マルにとってはマルの体自身が借家と同じ

「んっ」

呼吸の一瞬、離れて開いた口の中、隠れていた舌に舌が触れる
微かなざらりとした感触、想いを紡ぐ力強さに圧倒されて、からめとられていく
それはまるで、マルの今を表しているようで。

「っぁ……」
「んっ」
「んくっ……」

上手の善子ちゃんから流れ込んでくる想いを、ごくりと飲み込む。
ぽたりと床に落ち、踏み躙られるのはマルのこれからだ
0015名無しで叶える物語(茸)
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2018/12/29(土) 10:33:47.16ID:kv9wv0WH
沼津、海沿いのとある病院

花丸「コフーコフー」シュコシュコ ピッピッピッ

花丸(私脂肪が多いから助かったみたい。最後、真っ二つになったかと思ったけど)

花丸(皮膚に縦の裂傷が入っただけで済んでたのかな)

花丸(あんな痛い思いするくらいなら、早く死にたかったずら)

花丸(それにルビィちゃん、大丈夫かな。結局、縁を切りたい話は聞けずじまいだった)

コンコン

花丸(ノックの音。誰かがお見舞にきてくれたのかな。ルビィちゃんだったら嬉しいずら)///

ピッピッピッ

花丸(どうぞって言いたいけど、マスクのせいで喋れないや)

ガチャ

花丸(来たずら)

果南「ちょっといいかい?」

鞠莉「お見舞に来たシャイニー」

花丸「!?」
0016名無しで叶える物語(茸)
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2018/12/29(土) 10:34:39.84ID:kv9wv0WH
花丸(な、何であの二人が!?いや、いや、もう痛いの嫌!誰か、誰か助けるずら!)

鞠莉「そんな怯えなくっていいのよ。お礼参りじゃなくてお見舞いなんだから」くすっ

果南「って、随分とご大層な装備だねぇ。全身包帯、でも真っ赤だ」

鞠莉「出血が酷くて替えても替えても追いつかないんでしょうね」

果南「で、そっちは生命維持装置ってやつかい?呼吸器まで付けちゃって」

果南「あんたならそんなのに頼らずともまだ命は繋げるだろう。喋るのにも邪魔だ。とりゃ」ズバッ

花丸「ぷはっ。な、何しに来たずら……」ガクガクブルブル

果南「さっき鞠莉が言ったろう?お礼参り」

鞠莉「もう果南。お見舞いよ。尤も、話次第じゃお礼参りになっちゃうかもだけどぉ」くすり

花丸「ひっ」サァッ
0017名無しで叶える物語(茸)
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2018/12/29(土) 10:36:05.75ID:kv9wv0WH
果南「よくも水ゴリラとか馬鹿にしてくれたな。お蔭で松浦果南としての面目は丸つぶれだ」

鞠莉「貴女何を言ったの?」

花丸「マ、マルは別に……」

果南「本当かい!?」ギロリ

曜「ひっ。むっ、かなまるが盛り上がると思ったずら」

花丸「許して欲しいずら。きっとかなまるは盛り上がるずら。」

鞠莉「シャーラップ!」

果南「それ以前にキャラdisじゃねえか!」

果南「それを何が『かなまるは盛り上がる』だい!このボケナスが!」

ゲシッ

花丸「痛ぁ!」
0018名無しで叶える物語(茸)
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2018/12/29(土) 10:37:01.51ID:kv9wv0WH
鞠莉「傷だらけだから、蹴られただけでも断末魔ね」ウットリ

鞠莉「それはそうと、貴女は畜生キャラが浸透してると思って何を言っても許されると勘違いをした!」

果南「そのせいで『松浦果南は水ゴリラと呼ばれると喜ぶ』訳のわからないキャラになった!そこを分かってるのか!」

花丸「ひっ、ご、ごめんなさいずら」

果南「謝ったって済まないよ。キャラdisは絶対に許さない。」

鞠莉「相応の覚悟はしてもらうわっよっ!」ギュッ

花丸「があっそこはぁ!」ジタバタ

果南「暴れるな!」ギュッ

鞠莉(治りきってない傷口に指を突っ込むのは面白いわぁ)
0019名無しで叶える物語(茸)
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2018/12/29(土) 10:38:11.34ID:kv9wv0WH
鞠莉「さ・ら・に。大腿内を指でグリグリしてみたりー」

花丸「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

果南「煩いねぇ。そういえば、あんたルビィも介護役は御免だとかいってたの?」

花丸「!?」

果南「碌な人間じゃないね!」

花丸「……めて……」

果南「あん?」

花丸「そんなこと言ってない!ルビィちゃんはマルの……」

果南「どりゃっ」ボグッ

花丸「ぶべっ」プシャー

鞠莉(またまた鼻骨陥没w)
0020名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 10:47:47.13ID:TXCZfmwG
『HEY!!』

「っ!」
「痛っ」

『最終下校timeになったわ! 30secondsで支度してgohome!』

前触れなく―予感はあった―始まった最終下校時刻を知らせる悪戯は、
マルの唇から血を流させることに成功したからか、高笑いをしながら鐘の音へと切り替わった
この悪戯を仕掛けた理事長はもちろん放送室には居ないし、こんなことになるとは思ってもいなかったと思う

「なんなのよ……」

不満と怒りで練られた呟きをこぼした善子ちゃんは、
スカートのポケットからハンカチを取り出すと、マルの口元に押し当てる

「ごめん、花丸。平気?」
「ちょっとひりひりするけど、平気ずら」

自分でも何回か噛んだことがある。
大した痛みではないし、笑って見せると善子ちゃんも困った笑顔を見せてくれた
もうすっかり暗くなってしまった図書室を見まわして、息を吐く
傷ついた唇のじんわりとした痛みが気をしっかりと保つ

「まだやることあったのよね……花丸」
「あるといったけど……あれは嘘ずら」
「はぁ?」
「じゃないと、マルはルビィちゃんとバスの中だったずらよ?」

目も向けずに言うと、
言おうとした言葉を飲み込んだ吐息が聞こえた
握りしめた掌の音がした

「……ありがと」

支度を終えて目を向けた先、善子ちゃんは照れくさそうな声で言う
顔が真っ黒に塗りつぶされてしまって見えないのはきっと、暗いせいだ
0021名無しで叶える物語(茸)
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2018/12/29(土) 10:49:53.81ID:kv9wv0WH
梨子 「私たちはいつでも全力で、最高のパフォーマンスをしてきた」

千歌 「今回この状況で、ルビィちゃんは出来る?」

ルビィ 「それは……」

花丸 「ダイヤさんもあぁ言ったけど、きっと後悔する。きっと大会に出ても、そこにいるのはAqoursじゃない何かでしかない」

ミリィッ

ミリミリミリ

バキバキバキ

花丸「!?!?!?!?」

果南「国木田花丸は五体引き裂かれて内蔵引き千切られて血反吐撒き散らしてのたうち回って死に晒せ!!!!!!!!!!!!!」

グワバアアアアア!!!!!!!!!!!!!

花丸「────」

ドッバシャアアアアアア!!!!!!!!!!!

ビチャビチャビチャ!!!!!!!

果南「こんな、腟内部から股割きなんてエグい真似はさぁ、鞠莉にはとても出来ないね」

鞠莉「Oh!花丸の身体が縦に真っ二つね!!!ミラクル!イッツ・ミラクルよ!!!マイ・ダーリン!!!!!」
0022名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 11:04:18.79ID:TXCZfmwG
隣り合って、歩く
善子ちゃんはキスをするくせに、手をつながない
距離を詰めてくるくせに、一定の間隔を閉ざそうとはしない
キスをするだけ。
それ以外での善子ちゃんは、いつもの善子ちゃんだ

「それでさ……花丸」
「ん?」
「その……」
「はっきり言わないと聞こえないずら」

誰もいない校舎、頼りない明りの廊下
まもなく施錠されてしまう生徒玄関までの道
二つの足音さえ無駄に騒音な中での善子ちゃんの勇気ない声はよく聞こえる
けれど、あえて茶化すと善子ちゃんの足が止まった
続けて足を止め、振り返る
鞄を掴んでは離す手の動きが心を表して……ふり絞った勇気がマルを見た

「あのさ花丸! きょ――」

けれど。

「――最終下校時刻は過ぎていますわよ」

それは、許されることではないらしい
これだから、ヨハネと名乗るのだ
0024名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 11:34:21.28ID:TXCZfmwG
「げっ」
「げっ。とはなんです?」
「べっ、別に? ダイヤさんこそまだ残ってるのね」
「生徒会長ですから。まだ残っている生徒がいないか念のため見回りしていますの」

ルビィちゃんのお姉ちゃんで生徒会長、黒澤ダイヤ
ダイヤさんはマルと善子ちゃんをじっと見つめると、「貴女達のように」と厳しく言う
もちろん、厳しいと言っても優しさの方が強いように感じる
けれど、善子ちゃんの方はそうじゃないらしい
少なくとも、せっかくの勇気を邪魔されたことは許せないらしい

「余計なお世話よ。ずら丸にだって図書委員の仕事があんだから」
「そうですわね」

青緑色の光に赤色が灯る
堕天使の羽が手折られてしまいそうな、宝石の鋭利な輝き

「帰宅部の貴女は、違うのでは?」
「っ」
「花丸さんのお手伝い……というわけでもありませんでしょう」
「そっ」
「そこまで大きな仕事、図書委員にはありませんわ」

ダイヤさんは生徒会長であり、その性格から委員会のほとんどの仕事内容を網羅してる
人手が足りなくなるようなことがあれば人員を派遣できるように。
人が少ないこの学院だからこそ、うまく切り盛りするためのやり方
だからこそ、ダイヤさんの言葉を否定することが善子ちゃんにはできない

出来ても感情論
それでは、ダイヤを砕くことは不可能だった

「まったく……花丸さんはお疲れ様です」
「好きでやっていることだから平気ずら」
「そうですか……」

ちらっと窓の外を見たダイヤさんは、「ふぅ……」と
どこか艶っぽさの感じられる息を吐いて、マル達を見る

「もう時間も時間ですし、一緒に帰りましょう」
「別に二人でも――」
「善子さんはともかく、花丸さんお一人では心配ですわ」

それはどこから先のことなのか。マルは言いかけた口を閉じる
横目に見える善子ちゃんの唇
その奥の歯がギリッ……と、泣いた気がした
0025名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 11:56:23.89ID:TXCZfmwG
「久しぶりに練習がお休みだったのに、結局それを除けばいつもと変わりませんわね」
「変わらないのが、一番ずら」
「花丸さんは、そうですのね」

ほとんど人のいないバス
なのに一番最後、複数人で座れる座席を占領して、
ダイヤさんと善子ちゃんに挟まれるようにして、マルは座っていた
口数の消滅した善子ちゃんの一方、
ダイヤさんは他愛もなく、声をかけてくる
どこか弾んでいるのも、密着している体の度合いも
きっと、バスが揺れているからだ

「ですが、時が経つに連れて否応なく周囲の環境は変わっていってしまいますわ」
「……ダイヤさんは、変わるべきだって思うずら?」
「いえ、絶対にそうとは言い切れません」

ですが、と、ダイヤさんの目がマルを見る
名に相応しく美しい瞳に映るマルの姿は自分でも魅力的に見えかねない
やっぱり、宝石というものは美しい

「周囲が変われば、精錬されてしまう。故に変わらざるを得ない」
「順応するか、脱却するか」
「そして、流されていくか」

マルの挟んだ言葉に、ダイヤさんは続きを綺麗に言い当てて苦笑する
順応……己の意志をもって状況に対応する
脱却……受け入れることを拒絶する。それもまた己の意志
けれど、流されるだけというのは意志など欠片もない
むしろ、意志がないからこそ錨のない船が流されるようにどこまでも果てしないのだろう
0026名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 12:26:22.72ID:TXCZfmwG
「たとえば、卒業するとか」
「……っ」

呟きが耳に届く
マルと通って嫌味が届いたダイヤさんの体が揺れる
そしてマルとダイヤさんの体に隠れたマルの手に手が重なった
ゆっくりと握られていく
善子ちゃんの素っ気ない瞳が通り過ぎていく車の明かりを見る
でも、その目に見えているのは窓に映るマルとダイヤさん

「大学行くんでしょ? 東京の」
「……ええ」
「そりゃ、変わらざるを得ないわよね。田舎臭いお嬢様ってわけにもいかないし」
「そこまで言うことないと思いますが」

それに、と、ダイヤさんは止まらない

「いい歳してヨハネだの堕天使だの語る善子さんにだけは言われたくありませんわ」
「何も知らないくせに」
「ええ、知りませんとも。貴女が私を知らないように」

顔を向けあっていれば露骨に感じる火花も
向けあっていないという状況がその根深さを物語る

「いい加減にして欲しいずら」
「ずら丸……」
「花丸さん……」
「喧嘩は、嫌いずら」

静かに、言う
感情がこもっていないようでこもっている
二人の心を確実に揺さぶることができる声色で。
それを分かっていてやるマルが一番、いい加減にするべきかもしれないけど。
0027名無しで叶える物語(おにぎり)
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2018/12/29(土) 17:06:19.43ID:TXCZfmwG
「大人げありませんでしたわね……すみません。善子さん」
「別に……こっちもちょっと言い過ぎた」

マルの手前……そんな考えが片隅にあるのが分かりやすい謝罪だった
でも藪を突くような勇気のないマルにはそれ以上言えることがない
もしも、ここでそれを言う勇気があるのなら
マルは流されてはいなかったはず

流されているだけの船ならまだ何かできることはある
けれど、座礁してしまったマルにはもう、変えられることはない

「……それじゃ」

結局それ以降は一言も話すことはなく
ただ、マルの左手をダイヤさん、右手を善子ちゃんが隠れて握っているというだけで過ぎていった
そうして訪れた分岐点、乗ったままの善子ちゃんとマル達
善子ちゃんはダイヤさんがマルの隣にいることは不服そうだったけれど
特に何も言わずに、手を振ってマル達を見送る

「では、善子さんもお気をつけて
「心配って言うなら、私の方こそ心配されるべきだって思うけど」
「……善子さんはこれからまだ明るい場所に帰るわけですから。大丈夫ですわ」

そう信頼しています。と、ダイヤさんは笑う
善子ちゃんもなぜかそこだけは同意して頷くと、マルを見た

「ま、残念だけどそこは同意するわ。ずら丸は流されやすいから」
「ずらっ!?」
「だからここは預けてあげる。ちゃんと送り届けなさいよ」
「ええ、お任せ下さい」

善子ちゃんは去っていく……マルと、ダイヤさんを残して
善子ちゃんが見えなくなった途端、マルの手を強く握る、ダイヤさんを残して
0028名無しで叶える物語(玉音放送)
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2018/12/30(日) 11:55:55.68ID:Oia2mbaN
ルビィのこと幼馴染だっていうのに花丸ちゃん呼びだったりずら丸呼びだったり
この辺ちょっとよくわからん
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