梨子「鉄鍋の曜……?」
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曜「よし!下ごしらえバッチリ!」
曜「あとは180℃に熱しておいたオーブンに入れて、と」
ガコンッ
曜「ふぅ……はやく焼き上がらないかなー」
果南「ふあぁ〜……眠い……けど、開店までに仕込み終わらせないと……ん?」
果南「くんくん……いい匂いがする」
果南「あそこにいるのは…」
曜「…あっ」
果南「誰?」
曜「ちわっす。えっと、ここの方ですか?」
果南「そうだけど」
曜「私、今日からここでお世話になる渡辺です!」
果南「ふーん、新人ね…」
果南「へぇ……ふーん……ま、とりあえず」
曜「?」
果南「なに勝手に店の器具使ってんだオラァ!!」
ドスッ
曜「ぐほぉぁっ!!」 曜「いや、誰もいないしべつにいいかなって」
果南「チッ…」
曜(なにこの人……なんかヤバそう」
果南「ああ?」
曜「い、いえ、なんでもないっす」
果南「ったく……新人っつったら床磨きからって決まってんだよね」
曜「床?全然汚れてないですけど。たぶん昨日の閉店後に掃除してるんじゃないっすかねー」
果南「ナメた口きいてんじゃねぇよオラァ!!」
ドスッ
曜「ぐほぉぁっ!!」
ビシャーッ
果南「ほら、あんたの血反吐で汚れちゃったじゃん。さっさと拭いて」
曜「くっ……な、なんなんすか!なんなんすかっ!さっきから聞いてりゃ偉そうにっ」
果南「私はスーシェフの松浦だけど。この私の言うことを聞けない人間はここにはいらないかなん」
曜「す、すーしぇふ?」 果南「わかったらさっさと床掃除を」
ブー…
曜「あ、焼けたみたいだ」
ガコッ
曜「うんうん、いい焼き色」
果南「……この私を無視するなんていい度胸してるね」
果南「そのオーブンも綺麗に掃除……って、あんたっ!!」
曜「へ?」
果南「そ、そのオーブンから取り出したのって……アップルパイじゃんかっ!!」
曜「え?」
果南「うちは中華料理店って理解してんのかオラァッッ!!!!」
ドスッ
曜「ぐあぁぁぁぁっ!!!!」 曜「わわっ!」
曜(危なっ!いきなり蹴り入れてくるから落としちゃうとこだったよ)
曜「ふぅ……セーフ」
果南「全然セーフじゃねぇ!アウトだアウト!」
ズカッ バキッ
曜「うああああぁぁぁぁっ!!!!」
ガチャ…
花丸「うーん、うるさい。朝からなんの騒ぎずら?」
果南「あ、まる〜!聞いてよ、そこに変なやつが」
花丸「まるのことはシェフと呼ぶずら」
果南「はいはい。シェフ」
花丸「それで、その変なやつっていうのはオーブンの下に倒れてる子のことずらか?」
果南「うん。勝手に厨房を荒らしてたから教育してあげたんだよ」
花丸「へぇ…」
曜「うぅ……っ」
花丸「きみは……何者ずら?」
曜「わ、私は、渡辺……曜……」
花丸「渡辺曜!?」
果南「知ってるの?まる」
花丸「これっぽっちも知らんずら」
果南「だよね」 果南「こいつさぁ、アップルパイなんか作っちゃったってさぁ。ホントふざけてるよね」
曜「い、いや…」
花丸「……」
果南「ほら、まるからもきつく言ってあげてよ」
花丸「ふざけてるのは果南ちゃんの方ずら」
果南「え?」
花丸「この子が作ったものをよく見てみるずら」
果南「はぁ?こんなものの何を……えっ!?」
花丸「気づいたずら?」
果南 「このアップルパイ……よく見れば、白い」
果南「それに丸い」
果南「割った中にはジューシーな肉汁がいっぱい溢れて…!」
花丸「そう、これはアップルパイじゃなくて小籠包ずら!」
果南「しょ、しょーろんぽー?」 果南「しょーろんぽーって一体…」
花丸「小籠包とは、ずばり中華料理!」
果南「なっ…!?そ、そんなわけないっ!」
果南「中華料理っていうのは炒飯や餃子や拉麺のことで、こんな変な白くて丸いものなんて」
曜「いやいや、中華料理はもっとたくさん種類が」
果南「てめぇは黙ってろオラァ!!」
ドスッ
曜「ぐふっ!」
ドサッ
果南「とにかくっ、まる!こんな弱いやつどうせ厨房じゃ生き残れるわけないんだからクビにしようよっ!」
花丸「うーん……でも人手は必要ずら」
果南「わざわざ雇わなくても私が10人分くらい働くからさぁ!」
花丸「まあそれなら」
曜「…こわいんですか?」
果南「は?」
曜「私が松浦さんの知らない中華を知ってるから」
果南「……っ!」
ズガッ バキッ
曜「ぐぁっ!!」 というか小籠包知らんやつが中華料理屋に居る方がわからんし、小籠包の見た目と匂いでアップルパイと間違えるのもアレじゃね? 果南「いきがってんじゃねえよっ、新入り風情がっ!!」
バキッ ドスッ バキュンッ
果南「この私がそんな白くて丸いものにビビるわけないだろっ!!」
グシャッ
曜「はぁっ……はぁ……ぅぐっ……」
曜「……なら、私と勝負しませんか?」
果南「あぁん?勝負だぁ?」
曜「ええ、松浦さんが勝てば私をクビにするなり好きにすればいい」
曜「その代わり、私が勝てばここで働かせてもらいます」
果南「……わかった」
曜「っしゃ!」
果南「ただし、勝負のテーマはこっちで決めさせてもらうから。さっきみたいに妙なもの作り出されたらたまんないしね」
曜「いいですよ」
果南「じゃあ時間もないことだし、さっそく…」
曜「はい」
果南「勝負のテーマは……ケンカ」
曜「…は?」
果南「開始だオラァァァァッッ!!!!」 曜(マジでやばい人だっ!!)
曜(あんな鉄拳を何発ももらったらさすがに立っていられないっ!!)
曜(なんとかしないとっ…!)
果南「一発で沈めてやるよぉぉっ!!」
曜(この調理台で防ぎ…)
ガコッ
果南「はぁぁぁぁッッッッ!!!!」
ガシャーンッ
曜「ひぇっ!!」
曜(なっ……大理石を粉々に……)
果南「はははっ!ちょっとは頭回るみたいだねっ!」
果南「なんでも好きに使えばいいさっ、ハンデとしてこっちはステゴロよぉっ!!」
ドスドスドスッ
曜「ぐあぁぁぁぁっ!!!!」
花丸(やっぱりケンカじゃ果南ちゃんに分があるずらねぇ) 曜「ぐふぁ……あぅぅ……」
果南「なんだ、もう終わり?あんだけ大口叩いておいて情けないね」
曜「ち、ちが……」
果南「んー?」
曜「りょうり……料理で、勝負……」
果南「はぁ?負けそうになったからって今更なにを」
花丸「一理あるずら!」
果南「まる?」
花丸「ここは中華料理屋。ならば中華で白黒はっきりつけるのが筋というものずら!」
花丸(お腹すいたずら)
花丸「テーマは炒飯!双方、調理開始!」
果南「だってさ。よかったね。ご希望の料理勝負になって」
曜「はぁ……はぁっ……ぐ、うぅ……っ」
果南「もっとも、その身体じゃ満足に鍋を振ることすら難しいだろうけど」 小籠包知らない中華料理人…?ジャンってそんな漫画なのか ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています