善子「よ〜〜〜し!お菓子を作るわよ!」
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善子ちゃんは何かを作ることが好きだった。
自分を愚図で愚鈍だと信じていたから、何かを生み出す行為はその事実から目をそらすための良い麻酔となったから。
クッキーの生地を無心で捏ねるのは嫌いじゃない。
行き場のない憤りをぶつけるように、何度も何度も生地を叩いた。
生地を叩く度に、彼女の心はギシリと音を立てて歪んだ。
だけど、それが心地よく思えた。 最後に泣いたのはいつだっただろうか。
涙を流さなくなったのは強さの証明ではなく、心の枯死に他ならない。
感情が萎凋し、消え去った後に肉体に残るものは何だろうか?
それはもはや生物と、ましては人間と呼べるのだろうか?
ルビィ「うゅゅ、善子ちゃん」
ルビィ「その考えはあまりに頽廃的過ぎるんじゃない?」
ルビィちゃんは陽だまりのような笑顔をたたえながらそう言った。 ルビィ「善子ちゃんは人間という存在を特別なものだと思ってるのかもしれない」
ルビィ「でもね、生き物っていうのはどこまでいっても電気信号で動くタンパク質の塊なんだ」
ルビィ「だから喜怒哀楽なんて感情は生理現象の副産物に過ぎないんだよ」
ルビィ「心が枯れる、なんて陳腐なこと言わないで欲しいかな」
善子ちゃんはなにも言い返すことができなかった。
ルビィ「だから、こんなもの飲んじゃダメだよ。脳に良くない」
そう言うと、ルビィちゃんは善子ちゃんの手にあったラム酒の瓶を取り上げた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています