曜「愛しの君と」
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―部室―
曜「これで――よし」
ルビィ「できたね〜」
曜「これで完成した衣装が半分を超えたか」
ルビィ「だね」
曜「ルビィちゃんの方は?」
ルビィ「うん、こっちも大体は」 曜「流石に九人分の衣装づくりは骨が折れるねぇ」
ルビィ「骨折しちゃうの!?」
曜「いやいや、比喩表現だよ」
ルビィ「あっ、そうだよね」
ルビィ「ちょっと恥ずかしい……」
曜「あはは、可愛いからセーフだよ」
ルビィ「笑わないでよぉ」
曜「ごめんごめん、ついね」 ・人より動物が好きだと公言する(人の社会に適応できていないから)
・犬は殺せないが人なら殺せると公言する(キチガイ度が進むとこうなる) 曜「さて、ともかくそろそろ次の作業に――
ルビィ「ピギッ!」
曜「ど、どうしたの」
ルビィ「え、えっと、針を指に刺しちゃった」
曜「あれま、ちょっと見せて」
ルビィ「うゅ……」
曜「疲れた?」
ルビィ「……ちょっとだけ」 曜「今日はこのぐらいにしておこうか」
ルビィ「でも、もう少し進めた方がいいんじゃ」
曜「平気だよ」
曜「だいぶ作業は進んだし、まだ時間はあるから」
ルビィ「そうかな?」
曜「うん、ルビィちゃんが頑張ったおかげだよ」ナデナデ
ルビィ「え、えへへ」 曜「さてと、じゃあ今日はどうしようか」
曜「門限は大丈夫な日なんだっけ」
ルビィ「お姉ちゃんに許可は貰ったから」
曜「よし、じゃあ私の家ね」
ルビィ「うゅ!」
曜「けど泊まりは無理だよね」
ルビィ「うん、そこまでは許してもらえなかった」
曜「そこが残念だなぁ」 ルビィ「……曜ちゃん、変なこと考えてる」
曜「な、なんのことかな」
ルビィ「バレバレだよぉ」
曜「たはは、そりゃそうか」
曜「ルビィちゃんには敵わないね」
ルビィ「曜ちゃん、分かりやすいから」
曜「そんなに?」
ルビィ「ずっと一緒にいるから、考えてることが分かるようになっちゃった」 曜「それならさ、私が今したいことは分かる?」
ルビィ「したいこと?」
曜「ルビィちゃんならきっと分かってくれるよ」
ルビィ「うーん、そうだなぁ……」
曜「ワクワク」
ルビィ「これとか?」チュッ
曜「大正解」ギュッ
ルビィ「曜ちゃんは甘えん坊さんだねぇ」 曜「ルビィちゃんの前だけだよ」
曜「大切な恋人限定仕様の曜ちゃんだからね」
ルビィ「ルビィ限定の曜ちゃんかぁ」
曜「そうそう」
ルビィ「なんかいいね、素敵だよ」
曜「気に入ってもらえた?」
ルビィ「うん!」 曜「それはともかく」
曜「そろそろ行かないとバスの時間に間に合わなくなるよ」
ルビィ「ピギッ、本当だ」
曜「私がお姫様抱っこして走っていこうか」
ルビィ「それは恥ずかしいから嫌だかな」
ルビィ「そもそも、まだ歩いても間に合う時間だよ」
曜「そっかぁ、残念」
曜「もっとルビィちゃんとスキンシップしたかったのに」 ルビィ「それなら――はい」
ルビィ「一緒に手を繋いでいこう」
曜「ふふっ、ありがとう」ギュッ
曜(握りしめる、小さくて柔らかい手)
曜「……本当に可愛いね、ルビィちゃん」
ルビィ「ルビィは曜ちゃんの方が可愛いと思うよ」
曜「私、可愛いタイプじゃないよ」
ルビィ「ううん、そんなことないよ」
ルビィ「ルビィにとっては、可愛い恋人さんだから」 曜「……照れるね、流石に」
ルビィ「別に変なことは言ってないよ」
曜「普段は天使なのに時々小悪魔になるよね、ルビィちゃん」
ルビィ「リトルデーモン4号だからね」
曜「あー、その設定はまだ生きてたか」
ルビィ「その言い方だと善子ちゃん悲しむよ」
曜「善子ちゃんも最近は堕天使感薄れてきてるし、いいんじゃない?」
ルビィ「それは――確かにそうかもだね」
曜「でしょ」 曜「今の善子ちゃんはさ、堕天使より芸人寄りだよね」
ルビィ「芸人さんかぁ」
曜「ボケの善子とツッコミの花丸、コンビ名はよしまる」
ルビィ「そのまんますぎない?」
曜「……私、捻るのは苦手だからさ」
ルビィ「でも二人とも、いつも楽しそうだもんね」
曜「ホント、仲良いよねぇ」
ルビィ「仲良し芸人さんだねぇ」 曜「でもさ、ルビィちゃんは満足なの」
ルビィ「なにが?」
曜「一緒に漫才しないのも寂しくない?」
ルビィ「どうだろう」
ルビィ「ルビィは楽しそうな二人を見てるのが好きだから、別にいいかな」
曜「大人だねぇ」
ルビィ「でもマルちゃんとくっついていられないのは、少し寂しいかも」 曜「あー、確かに昔ほどベッタリしなくなったよね、花丸ちゃんと」
ルビィ「うん」
ルビィ「昔は二人きりの世界で生きてたから、その時よりはね」
曜「……その気持ち、分かるかも」
ルビィ「千歌ちゃんと曜ちゃん、ルビィとマルちゃんにちょっと似てるもんね」
曜「そうだね」
ルビィ「寂しいよね、二人きりの世界に他の人が入ってくると」
曜「……うん」 ルビィ「ルビィもね、正直最初は少し辛かった」
ルビィ「でもね、今はそんなに気にならないんだ」
曜「どうして?」
ルビィ「今は曜ちゃんもいるから」
ルビィ「大切な人といれば、寂しさより嬉しさの方が上回るよ」
曜「……私も、そうだね」
曜「ルビィちゃんが傍にいてくれるから、寂しさを感じなくなった」
ルビィ「えへへ、二人とも踏ん張るビィできたね」 曜「……ごめん、もう無理」
ルビィ「うゅ?」
曜「駄目、愛おしすぎ」
曜「もう我慢できない、耐えられない」
ルビィ「ど、どうした――んっ」チュッ
曜「ここで、しよ」
曜「ちゃんと時間には帰れるようにするから、ね」
ルビィ「……曜ちゃんは、本当に甘えん坊なんだから」 ―黒澤家―
曜「こんばんわー」
ダイヤ「あら、曜さん」
ダイヤ「こんな時間にどうされたのですか?」
曜「えっと、ルビィちゃんを送りに」
ダイヤ「あら、でもルビィはどこに」
曜「えっと、ここに」クルッ
ルビィ「……ぅゅ」スヤスヤ ダイヤ「あらあら、これは……」
曜「疲れて眠っちゃったみたいで」
ダイヤ「高校生にもなって――申し訳ありません、妹が迷惑を」
曜「いえ、大丈夫ですよ」
曜「付き合わせちゃったのは私なんで」
曜「衣装づくりとかを頑張った結果なんで、許してあげてください」
ダイヤ「……まあ、起きたら一言言っておきます」 ダイヤ「曜さんは今から帰るのですか」
曜「そのつもりです」
ダイヤ「もう遅い時間ですから、泊まっていかれるとか――」
曜「大丈夫ですよ、まだバスもあるんで」
ダイヤ「せめて家の者に送らせましょうか?」
曜「本当に平気ですから」
ダイヤ「そうですか……」 曜「ルビィちゃんにはよろしく伝えておいてください」
ダイヤ「分かりました」
ダイヤ「では曜さん、お気をつけて」
曜「はい」
曜(ルビィちゃん、大丈夫かな)
曜(一応、心の中では平謝り)
曜(どう考えても、私の我儘に付き合わせた結果だもんね)
曜(ただでさえ疲れているところ、あんなことしたら)
曜(年下だし、体力にも体格にも差があるんだから、もっと気をつけてあげないと) 曜(嫌になるなぁ、自分の理性のなさ)
曜(千歌ちゃんに対する気持ちをずっと我慢していた)
曜(そんな忍耐を持っていたのが嘘みたい)
曜(いつもルビィちゃんには迷惑をかけっぱなし)
曜(反省しようにも、我慢できなくなって)
曜(でもたぶん、怒られたりはしないとはずだよね)
曜(口では厳しいことを言っても、ダイヤさんは甘いから)
曜(そもそも、私たちが衣装づくりだけをしていて遅くなったと勘違いしているはずだから) 曜(私たちの関係を知っている人は、ほとんどいない)
曜(ダイヤさんには話せるわけない)
曜(黒澤家は間違っても、同性の恋人なんて認めないだろうから)
曜(普通に結婚して、子どもを産んで、後継者を残す)
曜(それが当然と教えられて育ったのに、ルビィちゃんは私を受け入れてくれた)
曜(別に同性愛者というわけでもないのに)
曜(元々、千歌ちゃんが好きな同性愛者だった私を) 曜(私たちの馴れ初めはあまり褒められた話ではない)
曜(今日みたいに、一緒に衣装づくりをしていた時)
曜(あの時の私は、精神的に参っていたっけ)
曜(恋人ではなくてもずっと千歌ちゃんの一番だった私)
曜(そこに現れた、千歌ちゃんの新しい一番になるかもしれない女の子)
曜(元々、千歌ちゃんと恋人になるのは無理だと理解していた)
曜(けど幼馴染として、彼女の一番では居られると思っていたんだ) 曜(そんな私に突きつけられた現実)
曜(梨子ちゃんが特別なのか、私との関係はその程度だったのか)
曜(理由はどうあれ、辛く耐え難い状況)
曜(私の心は、ずいぶんと追いつめられていた)
曜(そんな時、ふと魔が差したんだ)
曜(自分の横で無防備に作業をしている後輩)
曜(前から可愛いとは思っていた)
曜(元気で、人懐っこくて、千歌ちゃんに近い性質を持っているとも) 曜(正直に言ってしまえば、誰でもよかったんだと思う)
曜(その時に抱いていた感情を解消することができれば)
曜(そして気づけば、ルビィちゃんに迫っていた)
曜(ほとんど強引に、彼女の意志など無視して)
曜(最低最悪な、性犯罪者のように)
曜(その異常性に気づいたのは、行為が終わった後、正気に戻った時)
曜(ルビィちゃん曰く、直後の私は顔面蒼白だったらしい) 曜(すぐに謝った)
曜(土下座して、思い浮かぶ限りのありったけの謝罪の言葉を吐き出して)
曜(そんなことで許されるわけがない行為だったのに)
曜(身勝手にも泣きながら、謝罪を繰り返していた)
曜(でもルビィちゃんは、そんな私を受け入れてくれた)
曜(『曜ちゃんは理由もなしにこんなことをする人じゃないよね』と言って)
曜(辛いのは、痛いのは自分だったはずなのに)
曜(むしろ抱きしめて、慰めてくれて) 曜(感情の堤防が決壊した私は、そこで洗いざらい話した)
曜(彼女は何も言わず、私の頭をやさしく撫でながら聞いてくれた)
曜(そして全て話し終わった後、言ったんだ)
曜(『ルビィは曜ちゃんの味方だよ』)
曜(『辛かったね、苦しかったよね』)
曜(『大丈夫だよ、ルビィは全部受け入れてあげるから』)
曜(その瞬間、私は自分の単純さを知った)
曜(一瞬にして、天使のようなその少女に新しい恋をしてしまったから) ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています