穂乃果「廃校は異能で阻止するんだよっ!」
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深夜の秋葉原,大通りから2,3本外れた裏路地。 ───ザアァ その上空では不自然に雨雲が集まり、 ビルの間では雨が音を立てて激しく降っていた。 「このっ…」キィンッ 単調に降り続ける雨の中で、暗闇に紛れ不規則に動く二つの人影。そこからは刃物がぶつかり合うような音が聞こえる。 「当たらないわぁ」ザッ 「はあぁっ!」 夜道のアスファルトは雨水に濡れ、 道端に出来た水溜まりの波紋は、微かな街頭の光によって広がっていく様を照らし出される。 「…その程度なの?」シュッ 「こいつっ…」バシャッ 暴力的な雨音に混じり、水場を踏む足音がかすかに聞こえる。 「…そろそろ良いかしら」 「は…何が?」 そう問う、雨水にぬれた猫耳を付けた女と対峙しているのは、水色の仮面をつけたブロンドの少女。 離れては近づき何度も切り合う。 一息もつけない攻防の中で、 「…終わらせてあげる」ピチャ… 仮面をつけた少女はしびれを切らしたのか、腰をかがめて水たまりへと手をついた。 コオォォ…────── 地面についた手を中心にし、一瞬にして地表が冷気で包まれていく。 にこ「っとついたわね、あれ。あの扉に張ってたアルミホイルは?」 海未「剥がれちゃったんじゃないですかね」ハテ? にこ「なら、また張らないとね」ガチャ 扉を開けると天井と壁一面に張ってあったアルミホイルはすべて剥がされており、元々張ってあったアイドルのポスターのみが壁に張り付いていた。 部室内は昨日のようなまがまがしさはなく、華やかな雰囲気を醸し出す。 今までアルミでおおわれていた棚の中のアイドル関連グッズも露になり、元々のアイドル研究部を取り戻したように見えたが。 にこ「うっ…これは………ねぇ、あんたたち何したのか分かってんの?」ギロッ にこ「私の仲間なんじゃないの?…勝手に人の部室に入って勝手に防御壁剥がして!!、何のつもりよ!!出ていきなさい!!!」 穂乃果「…アイドル、好きなんですよね?」 にこ「っ…なんでそうなるのかしら」 花陽「こんなにグッズを並べるなんて嫌いじゃできませんっ」タナ ユビサシ にこ「それは敵の情報を集めるためよ」 海未「ならグッズは必要ですか?」 にこ「証拠品よ…」 ことり「こんなにアイドルのポスターが張ってあって…」 にこ「…」 凛「アイドルかわいいにゃー」 にこ「…」 真姫「強情ね」 花陽「伝伝伝こんなに集めている人がアイドル嫌いなわけがありませんっ!」 にこ「…でもっ」 穂乃果「良いんだよっ!!」ダキッ 穂乃果「もし、何かあっても。私たちがいるんだ!私たちが守るっ!!アイドルを好きで良いんだよっ!!!アイドルが酷いことするわけないじゃないですかっ!なんでそんな事をしたのか、理由があるはずですっ!!信じて!もう一人じゃない、私たちは仲間なんだよっ!!!」 海未「私も能力持ちですから、」フッ 穂乃果「だから、私たちをアイドル研究部に入部させてくださいっ!!!!」 ことうみまきりんぱな「「「「「お願いしますっ!!!!!」」」」」 にこ「…」 にこ「……」ウル にこ「…」ゲシゲシ にこ「…ほんっと、しょーがないわねー。」 にこ「……私、…なんで頭にアルミホイルなんかつけてるのかしら」 穂乃果「なおった!?」 真姫「成功ね」 にこ「でも、本当にいいの?」 にこ「私の部活に入ったら、アイドルについて調べていく事になるわよ、あんたらの目的は廃校阻止らしいじゃない」 穂乃果「…それって、A-RISEの事ですよね。私達もA-RISE、UTXについて調べているんです」 にこ「UTX、A-RISEが廃校に関わってるって?」 穂乃果「そうですっ!」 にこ「………フッ…まぁ悪くないわね」 にこ「良いわ、あんたらの入部を認めてあげる。最後に言うけど、危険よ?」 穂乃果「はいっ!分かってます」 にこ「私はなんでアイドルの頂点に立つA-RISEがあんな事をしてたのか、分からない。でも…そんな事をしてたのには理由があるはず。」 にこ「にこはそう信じてる。……だから…その理由を知るためにはどんなことだってやるわ。…」 穂乃果「…なるほどっ」 にこ「あんた達に、その覚悟は…ある?」 【生徒会室】 絵里「えーっとここは…」カキカキ 希「…」 絵里「…ふむ」 希「えりち、見て…」 絵里「…何?」 希は生徒会室の窓から、立ったまま外へ視線を向ける。 絵里「希?」 希「雨、止んでる」 そしてその先では今までの天候をかき消すかのように、雨雲の割れ目から差し込まれた幾つかの陽光が煌めいていた。 次からは雑談も交えながらのバトル回に入ります。展開とか能力で質問あったら答えます。 第6話「相手は誰だ?」前編 海未「学校の廃校阻止について、かなりの暴論ですがとりあえずUTXを調べると…」 海未「で、方法についてですが。何かありますか?」 穂乃果「うーん…尾行とか?」 凛「…見つかりそうにゃ」 真姫「誰か捕まえちゃう?」パンサー 花陽「ええっ?」 ことり「止めた方がいいかも…」 真姫「…冗談よ」 にこ「そうね…UTXに乗り込むわけにもいかないし…。次にアライズのライブをやる場所で何か掴むとかしかないわね」 海未「それしか無いですか…」 にこ「…今、会場を調べるから待ってて」カタカタ 海未「すみません、にこ先輩」 にこ「なんか先輩って煩わしいから先輩禁止で」 穂乃果「雜っ」 にこ「あーここか、」 穂乃果「どこどこ?」 にこ「ビルの中に巨大なステージがある所よ、結構設備は揃ってるみたいね」 花陽「ビルの中ですね…」 にこ「アライズ…」 にこ「なにがあるかわからないし、行くとき護身具とか持ってったら?」 ことり「そんなに危険なの?」 にこ「一応よ、べつに持ってかなくてもいいけど」 真姫「私はパパにもらったムチを持ってくわ。あっ…そういえば前に言ってたグローブ使い方が分かったわよ」 海未「ほんとですか?」 真姫「そうよ、それと私にGPSのお守りもくれたの」フフン 真姫「なんでこんなにぶ厚いのか知らないけど…何か穴開いてるし。」 凛「早くグローブ出すにゃー」 真姫「……聞きなさいよ、で。例のグローブなんだけど…」ゴソ 凛「あーっこれミッションインポッシブルで見たことあるかも」 真姫「まぁ機能は違うけど、デザインは確かに似てるところはあるかもしれないわね」 真姫が取り出したそのグローブは下地が黒色の化学繊維で作られており、 手の甲についている正方形の薄い装置からは、指先一本一本にかけて細い半透明の青いラインが通っていた。 花陽「これ何?真姫ちゃん」 真姫「手の甲の機械で高周波を発生させる、名づけるなら高周波グローブね。」 海未「おぉ…」(カッコいいです…) 真姫「はいこれ、海未にあげる」 海未「ええ!?こんな高価そうな物もらっていいんですか?」 真姫「いいのよ、多分海未が一番活用できると思うから」 穂乃果「なんで?穂乃果もほしいよっ!」 真姫「あげないわよ。海未、前に家に日本刀があるって言ってたでしょ?そのグローブはめれば、かなり切れ味が上がるはずよ。」 海未「ありがとうございます真姫、あなたは最高ですっ!」 真姫「まぁ私じゃ使えないし、捨てようと思ってたぐらいだから気にしなくていいわよ」// 海未「恩に着ます、真姫」 凛「いいなー」 にこ「…はいっ、聞いて。じゃあ、ライブの日付は三日後よ。」 ことり「ちょうど午前授業の日だねっ」 にこ「にこも色々調べとくからあんたらも用意してなさい」 ことり「チケットはどうするの?」 真姫「無料の席と有料の優良席があるみたいだけど、行くだけだし必要ないでしょ」 海未「分かりました」 穂乃果「穂乃果、それまで何してよう?」 ことり「休憩とかかな?」 花陽「ライブを見る用意もしていいですかっ?」 にこ「…許可するわ」 花陽「了解しましたっ」 凛「凛は特にないにゃー」 真姫「三日後ね」 _____________ 真姫「思っていたより立派な場所ね、ここ」 花陽「真姫ちゃん当たり前だよっ。あのARISEなんだから」 真姫「…確かにそうね」 アイドル研究部4名は秋葉原から少し離れたビルを訪れていた。 彼女らが制服のまま、たっている場所はロビー、そこはライブが始まるまでの待機場所である。 地上から7階程上がった所にあり、僅かにある窓からは他ビルの広告板が見えた。 そして、その真上はライブ会場として4階分ほどスペースをとり、その上は会場管理室、さらにその上からは事務所、オフィスが閉めているというのがビルの内部構成であった。 一同はロビー内の壁際にある、布で覆われた円柱状の椅子へと並んで腰をかける。 真姫「あれ?にこちゃん達はまだなの?」 花陽「にこちゃんと凛ちゃん今日、先生に職員室に呼ばれちゃったみたいで、待つって言ったんだけど…」 ことり「優しいよね、アイドル好きの花陽ちゃんのために皆に先に行ってていいよなんて」 花陽「聞いてたの〜?ことりちゃん」 ことり「聞いちゃいましたっ♪」 真姫「穂乃果は?」 ことり「穂乃果ちゃんも呼ばれてたみたい」 海未「…もしかしてこの前の定期試験の事ですかね?」 ことり「どうかなぁ?」 海未「全く…」 真姫「ねぇ、いつごろ始まるんだっけ?」 花陽「あと1時間位かな」 真姫「…長いわよ」 花陽「そう?以外と早かったりするよ」 真姫「そういう物なのかしらね」 海未「瞑想でもしてましょうか」 ことり「いつ頃みんなここに来れるかな?」 真姫「適当に待ってれば来るでしょ」 花陽「まぁ心配しなくても良いと思うよ?」 海未「」 海未「」👀 海未「…何か騒がしくありませんか?」 ことり「そう?」 花陽「準備してるんじゃないかな」 真姫「また事件とか勘弁してほしいわよ?」 海未「……五感をあげましたが、異常な騒がしさです」 真姫「はぁ…」 花陽「だんだん私にも聞こえて来ましたっ」 ことり「あっ」 ことりが向かいの壁へと視線を泳がせていると、横目にロビー端の階段から数人が焦った様子でかけ降りて行くのが見えた。 ことり「見てっ…本当に何かあったのかも…」 真姫「…ねぇ…どうする?」 花陽「何もないんじゃないかな…」 真姫「一応見てきた方がいいんじゃない?」 ことり「有事じゃないといいけど…」 海未「勘違いであることを祈りましょう…少し上の様子を見てきます」 花陽「…もし何かあったらどうするんですか?」 海未「どうするもなにも、元々は情報収集が目的でしたからしょうがないです」 ことり「そうだね…」 真姫「一人じゃ危ないわ、私も行ってあげる。待つのも疲れたし」 海未「有難うございます」 ことり「私も行きたいっ」 花陽「花陽もですっ」 海未「すみませんが、私たちだけで大丈夫だと思いますので二人で行かせて貰います」 真姫「大人数でいってもしょうがないし、後からにこちゃん達も来るから待っててあげて。」 花陽「わかった、皆が来るもんね」 ことり「じゃあ、花陽ちゃんとお話してるねっ」 海未「はい…待っててください。上まで見てきますから」 真姫「行ってくるわね」フリフリ 海未「では二人供ここで待っていてください。無いとは思いますが、もし避難指示のようなものが出た場合は早急に逃げてください」 ことり「海未ちゃん達がまだいるのにそんなこと出来ないよ」 花陽「私達の事は気にしなくてもいいよ」 海未「しかし…」 花陽「後から凛ちゃん達も来るし大丈夫」 ことり「そんな危ないことはしないし、それに何もないんじゃない?海未ちゃん」 海未「…」 真姫「私はそれでいいわよ。心配しなくても二人なら臨機応変に対応できるんじゃない?」 海未「…危険な事はしないで下さいね。では、」 ことり「気を付けてね」 花陽「また後で〜」 花陽「…行っちゃいましたね」 ことり「お話でもしてよっか」 ことり「かよちゃんはいつからアイドル好きなの?」 花陽「小さい頃からです、キラキラしててとっても素敵だから憧れちゃいます」 ことり「そうだよね、今はARISEかなり人気だしね」 花陽「はい、ここの有料入場券の倍率、凄かったらしいですよっ」 ことり「そうなんだぁ……。そういえばさ、能力者って数年前位かな?出てきたの」 花陽「はい…凛ちゃんのも中学生のころに気付きました。」 花陽「ある日一緒に走ってたらいつの間にかものすごく遠くへ行っちゃってて…」 ことり「そうなんだ〜海未ちゃんもn────── 「「>♪〜<」」 「ARISEの今回のイベントは誠に申し訳ありませんが、急遽中止とさせていただきます」 「払い戻し等については後程インターネット上に掲載する予定です」 「代替措置については必ずご用意させていただきますので、速やかにお帰りください。」 ザッ ツバサ「当グループARISE一同からも謝罪させていただきます」 ツバサ「今回の件については必ず後で埋め合わせいたしますので今回はどうかお帰りください」 ツバサさ~ん キャー ダイテー 花陽「ツバサさんが出てきた?」 ことり「やっぱり、何かあったみたいだね…」 花陽「うん…」 ことり「海未ちゃんたち頑張ってるんだし、私たちもここで待ってないと」 花陽「そうだね」 「あちらのエレベーターか階段からお降りください」 キャー アクシュシテー ツバサ「とりあえず避難してからと言うことでいいかしら」ウインク コッチミタワ キャー ハイッ 花陽「見つかったら連れ出されちゃいますっ」 ことり「ここに隠れられるかも」ゴソゴソ キャー ツバサ「こっちに来てくれる?」 ドコマデモッ カッコイイー ツイテキマス ─────────────── 海未と真姫の二人は各階を確認し、歓談しながら階段を上へ上へと駆け上がっていく。 真姫「所で、海未は何か持ってきたりしたの?」 海未「はい。真剣というわけには行きませんでしたが」チラ 真姫「木刀ね、あのグローブは?」 海未「さすがに木刀では使えないと思いましたので」 真姫「…まぁそうね」 真姫「あれ、海未の能力ってなんだっけ?」 海未「身体感覚能力上昇ですよ」 真姫「早口言葉?それ。」 海未「ちがいますよ、五感と筋力反射神経もろもろが上がるんです」 真姫「そうなの」チラ「……この階も何もないわ」 海未「今のところ特に変わった場所はないですね」 真姫「いい調子だわ」 海未「何も無いといいのですが…」 海未「所で、凛と花陽とは仲がいいんですか?」 真姫「なんで?」 海未「一年生ですし、よく会うのではと思いまして」 真姫「…まぁそうね」 海未「ふむ……この階は…」 海未「ちょっと見てください」チョイチョイ 真姫「何?……ハァ…案の定、見つけちゃったわね、行きましょ」テクテク 海未「見つけて良かったと言った方が良いのか、悪いのか…」扉バタ 彼女らが踏み入れた先は一般的なオフィス。 パソコン等がのった長方形の白い机が適度な感覚を開け、碁盤目状に並んでいる。天井の散水機からは水が霧状に放出され、デスクの上に散乱していた書類は水でにじむ。 オフィスチェアは無造作に横へと倒れ、足のローラーがカラカラと音を立てていた。 海未「スプリンクラーが作動してるようですね」キョロ 真姫「結構ぬれるものね…これ、止まらないの?」ピチャ 海未「どうでしょうね、いつかは止まると思いますが」 真姫「あれ?誰もいない?」 ────シン 海未「…いや、奥にいますよ」 奥、窓際では淡い青色の仮面をつけた女がこちらを向いていた。 その仮面は顔全体を隠し、どこか冷徹な印象を抱かせる。 「…」 真姫「かなりの不審者ね…」グッ 海未「目的は情報収集ですよ真姫」 真姫「…大丈夫よ」 海未「何をしてるんですか?」 「」 女は無言で濡れた手を二人に向けて振り払うと、親指ほどの氷塊が指先一本一本からとんだ。 真姫「氷?」ボッ それらを真姫は能力による炎を放出して受け止め、白いもやが上がる。 真姫「いきなり、なによ」 海未「話す気は無いようですね。どうしましょうか」 真姫「やるしか無いんじゃない?」 真姫「……私と相性が良いと思うわ、行かせて」 仮面女は水を手にまとわせて氷塊を放つ。 海未「隙を見て私が攻撃します」サッ _______ オフィスの真ん中で対峙する二人の能力者。 様子見で真姫は相手へジャブとばかりに炎を放つが、仮面女が手をかざすとその火は消える。 真姫(手周囲の温度を下げたのかしら、連続してやってみる?) 今度は3回ほど連続して両手から交互に炎を撃つ、右手で胴、胴、最後に頭へと目がけて。 それに対して、仮面女は一撃目の炎を手で殺し、 二撃目は手のうちに氷を形成し炎へとぶつける、溶解熱を利用して消滅。 白い靄が上がる。 「…」ボワッ 「…」タタッ 徐々に真姫と距離を詰める仮面女は、最後の炎を左前へと上体をそらして回避、 「…」サッ 一歩進み踏み込んでから、右手で真姫の首をつかまんとするが 海未「真姫っ」 海未の木刀がそれを阻み、真姫はとっさに首へと微かな違和感を感じたために後ろへと下がる。 真姫「ごめん…ちょっと休ませて…」 首をおさえながら真姫は比較的離れたオフィスの椅子へと向かった。 海未「大丈夫です、任せてください」 海未「…さて、私に代わりましたが今だ話す気は?」 「……。」 その問いにもあくまで答えず。 海未「それは…?」 気が付くと仮面女の真っ直ぐに揃えられた両手の指先では、氷が半透明のパルチザン尖端を形成していた。 海未「…」 海未「…それでは行かせて頂きます」 窓際に不敵に立つ仮面女を見据え、両手で持った木剣を斜めに構えた。 海未「…」サ ※パルチザン http://tinyangel.jog.client.jp/Arm/Partisan.html 海未「……」ブン 海未は木刀を振り上げ、大ぶりな軌道を描いて女へと正面から振るう。 もちろん女は討たれるわけもなく、片手で受け流し、 「…」サッ もう片手の氷剣で海未に反撃。 「…」シュッ 海未はその行動を持ち前の反射神経を活かし、刀剣でいなす。 氷と木がぶつかるガギンという鈍い音が響く。 … …… … 仮面女は氷の礫を徐々に戦術へと織り交ぜていった。 パソコンや書類が並ぶ中、 拮抗した実力の斬撃をお互いに繰り返し、切り合う。だが、やはり繰り返される氷塊による手数でのアドバンテージか、海未は力では多少勝っているものの押され気味である。 「…」ブンッ 海未(能力を使用する戦闘にかなり経験があるようですねッ) 海未「…ッ」ギリギリ そのため戦闘の最中、海未は女の指先から氷が飛ぶたびに、後ろへと下がりながら戦うしかなかった。 海未(…このままでは不味い、) 海未「…」ブゥン 「…」ガギッ 「…」シュッ ヒュン 海未(また氷の礫…)サッ 海未「うっ」ゴン 後ろへと足を擦って移動するが気付けば背後にガラス壁が迫っており、海未はこれ以上下がることは叶わない状態に。。。 「…」ヒョイ それを見て、仮面女は地面に落ちていたペットボトルをさっと拾い上げる。 そして手に持ち仮面女は、 海未へ、ペットボトルと氷塊とで左右に分けて同時に投げた。 海未(子供騙しですか?)ブン それを海未はペットボトルの方向へと避けて、刀で分断。 (…かかったわね) 海未の木刀からの圧力に耐えきれず、ペットボトルが内容物を吹き出す。 海未「…」ビシャッ そのため、中身の液体がこぼれ出て海未の顔にあたる。 「…」スッ そこに女がすぐさま近より、顔にさっと手をかざすと、顔面の液体が凍り始めて海未の視界を奪う。 海未(冷、顔全体の感覚が有りませんっ)パキパキ 「」ニヤリ 防御力。諸々が下がった海未の身体へ、仮面女は半回転して渾身の後ろ回し蹴りを腹部へと食らわせる。 海未「うぐっ」ドスッ 腹への衝撃を受けた海未は、うめき声を上げて体をくの字に曲げる。 「ダスビダーニャ…」ググッ 海未「…このっ」ギロッ 海未は蹴られた勢いで、手足を前に向けながら、 「…」ズンッ 海未「…うぁっ」パリイイィィィン 背中からガラスを突き破って、外へ飛び出る! 真姫「…海未っ!?」 奥に下がっていた真姫は派手なガラスの割れる音に何事かと顔を上げ、この状況を確認するように叫ぶ 海未「…っ」 真姫の叫びとガラスの割れる音を聞きながらビル高層階より、中空へと放り出された海未は、 「……」フッ 重力に従ってガラスと水滴を伴って、なすすべもなく、回転するように地面へと落ちていった… 海未「」パラ…パラ…… 第7話「相手は誰だ?」中編 真姫が派手な音に何が起きたか、と面をあげると奥のガラス壁が大きく割れており、そばには仮面女。 真姫「海未はっ!?」 しかし、そこいたはずの海未の姿はなかった。 真姫「…」 真姫は少し首をさすったあとに女へと駆け、あえて使っていなかったムチを取り出してふるった。 真姫「…焼き切ってあげる」ブンッ 女は手の氷剣で受けとめたようとしたが、ムチによって溶け切れてしまう。しかし、それに気づいたのか女は運よくムチをかわしきる。 すぐさま下がってから氷を放つが、真姫はそれを溶かし切る。 そのあとすぐさま真姫のムチによる連撃。 真姫「効かないわよっ!」ビュンッ 「…」サッ 真姫「くらいなさいっ」シュルッ 「…っ」サ 真姫「…このっ」シュ 「…」サッ 真姫「ちょこまかと…」シュッ 「(鬱陶しいわね…)」サ 真姫「ふっ」ブンッ 「(アブなっ)」…サッ 真姫の攻撃を回避する以外の方法が見当たらない女は、段々とフロアにおいてあるいくつかの机を横目にしながら奥へ追い詰められていく。真姫にとっては良いことに、対処法が見つからない以上、仮面女はどこかのタイミングで鞭に焼切られてしまうのは明白だった 真姫「ふんッ」ビュ 「…」ゴンッ 真姫「何よそ見してんのよっ!」 「…」アブナッ 「…これは……」 (ゴルフクラブ……鉄製の棒ね…) 「…」ニヤ 真姫「…」シュッ 「…」ヒラリ 真姫「…は?」シュルッ そして女は奥にあったゴルフバッグからクラブをとりだし、それを手のひらでしっかりと握りしめると──── 真姫「無理よっ!」ビュッ 真姫のムチを受けた 「…」フ そのクラブは溶ける事はなく、ムチはクラブにしっかり巻き付いてしまう 真姫「えっ!?」 「…」シュルル 女がクラブを引くとムチは真姫の手から離れていく 真姫「あっ…」 「…」ダッ 直ぐに女は剣を生成すると真姫へと迫って切り上げ 真姫「」サ 真姫はそれをすんでの所でかわす、 真姫(…鞭がなくなった今、近付いて戦ったら負けしかない。隠れるか距離をとらないと。でも、能力を使おうにも体力もなくなった。) 「…」ズ… 真姫(これは…厳しいわね……) ことり「私たち以外、お客さん全員避難したっぽいね」 花陽「良かったです〜」 避難指示にしたがわないために、ロビーの端の椅子がまとめて置いてある場所へと隠れたことぱな。 花陽「あっちの方から誰か来ましたっ」サッ 英玲奈「あんじゅ、我々も帰るぞ」カツカツ あんじゅ「え〜、私たちはいいんじゃない?」コッコッ 英玲奈「本部に連絡はしたんだから、でしゃばる必要はない」 あんじゅ「でも直ぐ終わらせられると思うんだけど…」 ことり(終わらせる?) 英玲奈「そういう問題じゃないんだ、あんじゅ」 あんじゅ「行かないの?」 英玲奈「行って我々が能力を使っているところを写真にでも撮られたらどうするんだ」 あんじゅ「そんなこと無いわよ」 花陽(二人とも能力者だったんですかっ!?)ガタッ ことり(かよちゃんっ静かに!) 英玲奈「…この前似たような状況があっただろう忘れたのか?」 あんじゅ「あったの?……ねぇエレナ」チラ あんじゅ「…今何か動かなかった?」 ことり(みられてたの!?) 花陽(はうぅー、ごめんなさい) 英玲奈「そうか?、て言うか状況については覚えていないのか」 あんじゅ「椅子の所、見てくるわね」トコ 花陽(ばれたら記憶末梢されちゃうのかなぁ…) 英玲奈「はぁ」 花陽(不味いですうぅ) ことり(花陽ちゃん大丈夫だって、安心してよ) 英玲奈「一応見といてくれ」 あんじゅ「たしかこの裏側らへん」カツカツ 花陽(こっちに来ましたっ)ドキドキ ことり(ばれちゃうっ)ハラハラ あんじゅ「…ここかn─── ガバt 花陽(ばれましたっ…)ガクブル ことり(ごめんなさいぃ)ヒィ 英玲奈「…おい!」 英玲奈「…まさか、なし崩しに上階に行こうとしてないよな?」 花陽(まだ、みられてない!?) ことり(はやくあっちに行ってー) あんじゅ「フフ、そんなわけないじゃない」 英玲奈「じゃあ戻ってこい、確認なんてしなくていい。普通に考えて危険な場所にとどまる理由なんてない」 あんじゅ「それもそうね、じゃあ階段で上へ…」 英玲奈「ダメだ、行ったらあいつの思う壺だ、放っておけ」 あんじゅ「相変わらずロボットみたいに堅物ねエレナは」 英玲奈「余計なお世話だ、ツバサも待ってるんだ。エレベーターにのれ、行くぞ」ピッ あんじゅ「はいはい」テクテク 花陽(はい、セーフ) ことり(よかったあぁ) 英玲奈「ツバサもファンに囲まれて大変だな」 あんじゅ「本望じゃない?」フフ 花陽(死ぬかとおもった…) ことり(…寿命が縮んじゃったよ) 英玲奈「一階で良いな?」pi あんじゅ「ええ」 ことり「エレベーターで行ったね」 花陽「良かったです。でも、あのARISEのお二人が能力者だったとは」 ことり「ツバサさんも能力者だったりして」 花陽「ありえるかも…」 ことり「でも、能力者って知れたことはかなりの大きいねっ」 花陽「うん、普通の人は誰も知らないと思うよ。ARISEの秘密が知れて嬉しいですっ」 ことり「…上に行ったけど海未ちゃん達大丈夫かな」 花陽「心配だよね」 ことり「上に行くわけにも行かないし……ッ」チラ 花陽「待つしかないですね……?…さっき窓の外に何か。…どうしたの?ことりちゃん」 ことり「…う……ち…」パクパク 花陽「今窓でちらっと落ちていったやつ?」 ことり「…う……み…ちゃん、う…海未ちゃんっ」 ことり「海……未ちゃん…が落ちて…いった」 花陽「エエッ!?海未ちゃんがオチテイッチャッタノオ?」 ことり「…早く下に行かなきゃっ!」 花陽「私もついてきますっ」 階段へと急いで、駆け下りていく二人 花陽(真姫ちゃんは大丈夫かな…凛ちゃんたちに伝えとかないと)タッタッ ことり「うみちゃん…うみちゃん…」タッタッ 花陽「…下からだれか来てます」 ことり「だれっ?」 花陽「…」ゴク… 穂乃果「おおっ!ことりちゃん、花陽ちゃんっ来たよっ!」バッ ことり「ハノケチェン?」 にこ「急いでるみたいだけど、どうしたの?」 凛「なんか今日中止みたいだったけど来ちゃったにゃー」 ことり「海未ちゃんが…下に落ちてっちゃった…」 穂乃果「海未ちゃんが!?」 にこ「…なにかあったわね」 花陽「それでっ真姫ちゃんもまだ上にいて…」 凛「えっ真姫ちゃんも?!ほら早くっ」 穂乃果「真姫ちゃんは見てくるから…海未ちゃんの事よろしくっ!!」 にこ「早く行くわよっ」ダッ ─────── ────浮遊感 …まさか外に 海未は体をビルへと向けながら落下し、窓際に立つ仮面女を呆然と見据えることしか出来ずに下へと落ちていく。 こう地面と放れていては、…録な受け身とかはさすがに取れませんね…ハハ…… 重力に従って落ちていく海未。 その体はいつのまにかビル下部を囲むように発生していた不自然な濃霧へと、飲み込まれていった。 ──────バァンッ 「…っぐ」 海未は背中に強い衝撃を感じ、 「うぅ…」 「……痛…これは車の上に落ちたんですか?」 屋根がへこんで少しだけクッションになったようですね (それにこれは霧…ですか) 車の上に仰向けになりながら、ぼんやりと白くなっている身の周りを見渡す。 (不穏な空気です。起き上がらないと) 「はっ…────ズキ 「…」 「動くのは厳しそうですね…」 海未「…」 … 花陽「おーい」 ことり「うみちゃん居たら返事してー」 海未「!…」 花陽「うみちゃーん」 海未「ここです!、」 この霧の中でことりは見通しの悪いなか、ビル横に路上駐車している中型車の上に海未を見つけた。 ことり「うみちゃあぁ〜ん、よかったよぉ」 花陽「無事でなによりです」 海未「二人とも、ありがとうございます」 花陽「落ちてくるのが見えて、来ました」 海未「氷を使う仮面の女に蹴りおとされて……。…はっ真姫がまだ上に…」 ことり「凛ちゃん達が確認しに行ってくれたよ。大丈夫」 海未「なら良いのですが」 ことり「海未ちゃん大丈夫?」 海未「…背中を強く打ち付けました、」 ことり「痛そう、視界も悪いし、ことり達今何処にいるか分からないよ」 ことり「…この霧何だろうね?」 海未「ここに来た時は霧なんて有りませんでしたよね、それに今の時間帯にも場所的にもかなり不自然」 花陽「私は霧は見えるけど、その感覚はないから、たぶん能力者の影響だと…」 海未「ここでも能力者、全くどうなっているんですか」 ことり「…じゃあ、海未ちゃんとりあえず、ここから移動しよう」 海未「そうですね、少し手伝ってくれませんか…」 花陽「もちろんですっ」 真姫「…クッ」 「…」テク… 真姫「…やるならやりなさいよ」 「……威勢がいいわね」コォォォォ… 「…」♪ボルシチ~♪ 「…あ」 「…ちょと静かにしてくれない?」 「何?」pi 『うちは順調やけど、そっちはどうなん?』 「上々よ、」チラ 『それなら良かったわ。……誰かにあったりした?』 「……二人会ったわ、一人はビルから外に蹴飛ばしてやったけど」 『ちょっ、…』 「能力者なんだし、そのくらい大丈夫でしょ」 『っ大丈夫なわけないやろ!?…。』 「私は別にそれでも構わないわよ」 『はぁ…亜里沙ちゃんのことがあって必死なのは分かる、でもな。その人関係ないやん』 『冷静になるんや。急いでどうってなるもんでもないやろ…見境なさすぎや』 「五月蠅いわね、私の勝手でしょ…。」タンタン 「…また誰か来たみたい……もう切るわよ?」 『…まって…確認や、うちが合図を出せばいいんやっけ?』 「そうよ、」pi 「さぁ、お次は誰が来るのかしらね…」 真姫「凛っ?!」 にこ、穂乃果よりも速く移動できる凛は、ことぱな の話を聞いてからは全力疾走。二人よりも速く目的の二人がいるはずの階へと足を踏み入れた。 凛「まきちゃーん」ぱっ 真姫「…ふ」ググ… 凛が目にしたのは壁際で足を氷漬けにされて身動きがとれなくなっている真姫だった。 この様子を見ると、体力を使い果たし能力を使用するエネルギーも無いように思えた 「お仲間かしら?」 その向かいには仮面の女が細長く、氷で出来た棒状の大きな矢じりを右手に構えていた。 長さは一メートルほどで、氷塊の両端は鋭くとがり、先端は真姫の方向を向く。 凛「真姫ちゃんになにしてるのっ」シュイン それを見て直ぐに女の方へと素早く迫ってタックル 「この子も能力者?」 凛からのタックルを受け氷槍を手から放してしまうが、女は倒れる事はなく、そのまま氷剣を形成し、すぐさま近距離で凛に切りつける。 「氷の剣?」サッ それを凛は直ぐに後ろへと下がり避け、 真姫「凛…あまりスピードは出しすぎないで…」 凛「まきちゃんっ大丈夫?」 真姫「まぁまぁよ、ねぇ…凛。高速移動で水に当たったらまずいわよ」 凛「何となくわかった、任せて!」 真姫からのアドバイスを受けて攻撃態勢になる凛、最低限のスピードで女へと迫って正面から顔面を殴る、 凛「…」シュッ 「…」パキッ 女は一瞬、濡れていた仮面表面の水を凍らせて迫る拳に合わせて滑るようにさけ、 「…」シュッ 凛の顔へ直ぐ殴り返すが避けられる。 凛「あたんないよっ」サッ 攻撃に当たらない為と様子を見るために、距離を取る凛。 そこへ女は距離が出来た所で氷を放ち、飛び放たれた氷塊を凛は身を低くして高速でよける。そして、そのために標的を逃した塊は、後ろの壁へとめり込む。 ─────ビシビシッ 凛「このっ」ピョンッ 凛はさっきの身を低くしたままの体勢で、女へと正面から迫り、両腕で胴にしがみつく、抵抗は少なく そしてそのまま一緒に女の後方に倒れ、動きを封じる 「」バタン 凛は女の体を腕で固定したまま、倒れた女の頭の先にある机の引き出しへ、 頭部を叩きつけようと床を滑るように足で地面を蹴る。 「…」ググ… 床に押し付けられるように頭上の方向へ動かされた女は、凛の腕と自分の体の間へと手を潜り込ませて、体を捕らえている腕をはがすように上へと押し上げる、 すると仮面女は凛の拘束から抜け出し、横へと体を転がすようにして脱出! 女は立ち上がるとさっと右手に剣を形成し、立ち上がりきれていない凛へと一気に寄る。 凛「う…」ヨロッ しかし距離が近づいた所で、狙っていたのか屈んでいた凛の高速の足払いが女のくるぶしに命中して上体が傾く 「…」グラッ 横へころんだ拍子に女はとっさに右手で倒れ込んだ受け身をとるが、 そこへ立ち上がった凛が迫り、下向きの腹へと思い切り蹴りあげた 「うっ」 女は腹を蹴られ上半身が上へとぐらつき、小さなうめき声をあげる。 凛「このっ」バッ そのまま凛は後ろから羽交い締めにしようとし掴みかかる、 が凛はわき腹を女の右肘で突かれてしまい、伸びた手を引っ込めて少しだけ距離をとった────── 「…」サッ 立ち上がった女は目をつけていたのか、机の上に置き去りにしてあった鉄製の水筒を左手に持って、蓋を外す。 凛「何するのっ!?」 女は空いた水筒を手に持ったまま、身構えていた凛へと走って右手で殴りかかり、凛が横へ避けた所に液体を掛けて足付近を凍らせ、 「…」ビシャッ 凛「…あっ!」 凛の少しの拘束時間に女はフロア奥へと駆け出し、奥へ駆けていくと通路の横に曲がって姿が見えなくなる。 「待つにゃ!」?? いつの間にかシャワーのような音はなくなっており、スプリンクラーからの放水はとまっていた。 その中で凛はスピードをだんだんと高めながら、女を追いかける。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
read.cgi ver 07.5.4 2024/05/19 Walang Kapalit ★ | Donguri System Team 5ちゃんねる