「千歌ちゃんっ」
 
ドアの前から駆け寄って来た彼女──桜内梨子ちゃん──があの頃のようにはきはきとした声でわたしを呼んだ
 
「何ですか? 桜内さん」
 
それに対し何の感情も込めず、無機質な声で機械的に応じてやる

彼女の双眸が見開かれ、同時に口もぽかーんと開かれた
 
「『梨子ちゃん』って呼んでくれないの? 前みたいに」
 
「今さら何さ?」
 
少しだけ怒気を込めて問う

「この女はかつてわたしにしたことを忘れたのか」という不信感を伝えるべく