8月も終わりを迎えようというのに、うだるような暑さが連日続いていた
 
親友の曜ちゃんと下校しようと教科書を鞄に入れていると、やや低めながらも透き通るような懐かしい声が耳に入ってくる
 
「千歌ちゃんはいる?」
 
「いるけど」
 
「……あっ」
 
声がした方を振り向くと、肩ほどまで伸びた紅いセミロングの娘と目が合ってしまった

一瞬だと誰だかわからなかったが、わたしはやや吊り上がった琥珀色の瞳を憶えている
 
「はぁ、はぁ」
 
動悸が高まる

呼吸が荒くなる

まるで天敵を視界に捉え、いつでも逃げられる体勢に入った草食獣のように