ダイヤ「花丸さん、起きてください」 花丸「……ん」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
花丸「あれ……? ダイヤさん…? ここは…」
ダイヤ「私の部屋ですわ」
花丸「ダイヤさんの……」ボーッ
ダイヤ「ええ、忘れてしまいましたか?」
花丸「……うーん…」
ダイヤ「フフッ…今お茶を淹れてきます、それまでにゆっくり思い出してくださいね」スッ
花丸「あっ、はい……」
花丸「……えーと、マルは確か…」
──
─ ─数時間前、黒澤家
ダイヤ「……私の習い事を見学したい?」
花丸「うん、少し気になって」
ダイヤ「気になる…花丸さんはそういった分野に興味がおありなのですか?」
花丸「うーん、興味っていうか…あると言えばあるんだけど……ちょっと違うというか…」
ダイヤ「…花丸さんにしては随分と煮え切らない返事ですわね」
花丸「……」
ダイヤ「…まあいいでしょう、ではこれから始めるので付いてきてください」
花丸「ありがとうダイヤさん」 ─
ダイヤ「…」サラサラ
花丸「…」
ダイヤ「……」スッ
花丸「……」
ダイヤ「…………あの」トン
花丸「……」
ダイヤ「……花丸さん?」
花丸「……え?」 ダイヤ「許可しておいてなんですが…退屈ではないのですか?」フリムキ
ダイヤ「何もせずにただボーっと見ているだけだなんて、面白くもないでしょう」
花丸「ううん、そうでもないずら」
ダイヤ「本当に?」
花丸「本当に」
ダイヤ「はあ……よく分かりませんが、花丸さんがそう言うなら」
花丸「……」 花丸「ねえダイヤさん」
ダイヤ「はい、なんでしょう」
花丸「ダイヤさんは人がやっている作業とかって気になる人?」
ダイヤ「……はあ、作業ですか?」
花丸「今のダイヤさんみたいに何かしている途中だとして、それが何なのか気になったりしないのかなあって」
ダイヤ「成程、そうですわね……」 ダイヤ「そういったものは大抵本人は集中しているものですから、邪魔にならないように失礼しますわ」
花丸「そうなんだ」
ダイヤ「花丸さんは……ってこうしている以上聞くのも野暮ですわね」
花丸「うん、マルは気になっちゃう方なんだ」 ダイヤ「理由を聞いても?」
花丸「あのね、マルはその人の考えが気になるの」
ダイヤ「…考え? 私はてっきり完成までの過程を楽しんでいるのかと」
ダイヤ「実際にそのような作業工程は動画などでも多く出回っていますし、好きな方は少なくはないと思っていましたから」
花丸「うん、それもあるんだけど……でもマルが知りたいのはそういうのじゃないんだあ」
ダイヤ「……」 花丸「やっぱりその場にいないと分からないことってあると思うの」
花丸「誰が何をやった、とかは記録を見ればすぐに知ることが出来るけど」
花丸「始まりから終わりまでの過程はそこにいないと伝わらなくて」
花丸「その時そのときにふと見せる仕草や、それを通して伝わる感情とかは、どうしても画面越しじゃピンとこないんだ」
ダイヤ「……」
花丸「そういう…その時にしか分からない、伝わらないものを知るのが好きなんだと思う」 ダイヤ「…つまり、共感的好奇心というものですか」
ダイヤ「確かに…その一瞬に込められた想いというのはそこにいたほうがより伝わりやすいのかもしれませんわね」
花丸「ダイヤさんも分かる?」
ダイヤ「ええ…曲がりなりにもスクールアイドルですからね、私たち」
花丸「……そっか、そうだよね」 ダイヤ「しかし先ほどの花丸さんの話を聞く限りでは…」
花丸「ん?」
ダイヤ「私にもそれを求めているように思うのですけれども」
花丸「うん、そうだね」
ダイヤ「……では、何か分かったのでしょうか」 花丸「……ううん、まだ」
ダイヤ「そうですか」
花丸「でも、もうちょっとだけ見てたら何か分かるかも」
ダイヤ「もう少しだけって…始めてから大分時間が……」
花丸「…」
ダイヤ「はぁ……何となく読めましたわ」 ダイヤ「…察するに、終わるまで帰る気はないと?」
花丸「……まあ、そういうことずら」
ダイヤ「……」
花丸「駄目だった?」
ダイヤ「そういうわけではありませんが……しかし」 ダイヤ「貴女も物好きですわね」
花丸「そんなことないよ、普通だよ」
ダイヤ「そうでしょうか?」
花丸「うん、誰にでもそういうところってあると思うなあ」
ダイヤ「はあ…誰でも、ですか……ということは私にもあると?」
花丸「多分……ううん、あってくれたらいいなあ」 ダイヤ「あってくれたらいい…? それはどういう意味ですか?」
花丸「あっ…えと、それは……」
ダイヤ「それは?」
花丸「……」
ダイヤ「花丸さん?」
花丸「…………ダイヤさんはさ」
ダイヤ「? はい」
花丸「誰かと一緒にいたいって思ったとき…どうする?」 ダイヤ「一緒に……」
ダイヤ「…成程、そういうことですか」
花丸「うん」
花丸「ごめんね、回りくどくて」
ダイヤ「いえ、それはいいんですけど」
ダイヤ「……」フム 花丸「……聞かないの?」
ダイヤ「何がですか?」
花丸「…マルが嘘をついてたこと、とか」
花丸「帰らされたりしないのかなって」
ダイヤ「どうしてそんなことをする必要が?」
花丸「…だって、邪魔にならないようにって言ってたから、もしかして…と思って…」
ダイヤ「……あら、そんなことでしたの」
ダイヤ「花丸さん、意外と心配性ですわね」フフッ
花丸「……かもしれないずら」 ダイヤ「しかしそれなら心配いりませんわ、聞かないのはわざと、ですから」
花丸「え?」
ダイヤ「だって─」
ダイヤ「言わなくていいこともあるでしょう?」ピト
花丸「あっ……」
ダイヤ「口にしてしまえば、この時間はそれこそ終わってしまいそうですから」
花丸「…………うん」
花丸(ああ、なんか…温かいなぁ……) ─
花丸「…………」スゥースゥー
ダイヤ「あらあら、眠ってしまいましたか……フフッ、きっと疲れたのでしょうね」
ダイヤ「ああそうだ、今のうちにお茶の準備でもしておきましょうか」
ダイヤ「花丸さんもきっと喜ぶでしょうし」クス
花丸「……」スヤ
ダイヤ「……」
ダイヤ「……ねえ花丸さん、そんなに回りくどいことをしなくてもいいんですよ?」 ダイヤ「一緒にいたいのならそう言ってくだされば、私はいつでも貴女の傍にいますのに」
ダイヤ「二人きりの時くらいは、せめて気を遣わずに自由でいてほしいですわ」
花丸「……」スヤスヤ
ダイヤ「……まあ、私も人のことは言えないのでしょうけれど」 ダイヤ「案外、似た者同士なのかもしれませんわね…私たち」ナデナデ
花丸「………えへへ…」ムニャ
ダイヤ「笑ってる…楽しい夢でも見ているんでしょうか、それとも……」
ダイヤ「…いえ、それを知るのはまだ早いですわね…今は、気長に待つとしましょうか」
ダイヤ「湯が沸くまでにはもう少し、時間が掛かりそうですから」
──
─ 花丸「…そうだった、その後いつの間にか眠っちゃってて」
ダイヤ「段々はっきりしてきましたか?」コトン
花丸「…面目ないずら……お願いしたのはマルのほうなのに」
ダイヤ「気にしなくていいですよ、おかげでいいものが見られましたから」
花丸「いいもの?」ズズッ…
ダイヤ「ええ、とても可愛らしい寝顔でしたわ」
ダイヤ「花丸さんの言った通り、確かにその場にいないと分からないことってあるものですわね」
花丸「っ! ごほっ……ごほっ……!」 ダイヤ「花丸さん? 大丈夫ですか?」
花丸「……ダイヤさん、意地悪ずら…」
ダイヤ「フフッ…すみません、つい」
ダイヤ「しかしいいもの、というのは本当ですわよ?」
花丸「?」
ダイヤ「また一つ、知ることが出来ましたから」
ダイヤ「花丸さんのいいところを」
花丸「……そっか」
ダイヤ「ええ、そうなんです」 ダイヤ「……ですが」
ダイヤ(出来ればその先まで知りたいと思うのは……少し欲深いのでしょうか)
花丸「…ダイヤさん?」
ダイヤ「…いえ、何でもありませんわ…そうだ、おかわりはどうですか?」
花丸「? じゃあ、遠慮なく」 ダイヤ「ではそのままで、すぐに持っていきますから」
花丸「うん、ありがとうダイヤさん」ニコッ
ダイヤ「! …………ああ、そうでしたのね」
ダイヤ(一瞬に込められた想い……ですか)
花丸「ダイヤさん? どうかしたの?」
ダイヤ「…いえね、やっぱり」
ダイヤ「似た者同士だって、そう思っただけですわよ」ニコッ そう、だからこそ分かる
きっと次も、その次もまた
私も彼女も、自分と相手の似たところを探そうとするんだろうと
花丸「似た者同士? マルとダイヤさんが?」
ダイヤ「ええ、なんとなくですけどね」
花丸「なんとなく、かあ」
ダイヤ「はい、何となくです」 そうやってずっと先まで
何とか一緒にいようとするのだと
傍にいたいのに特別な理由はいらないけれど
どこか不器用な私たちだから
花丸「それなら、まあいいかな」
ダイヤ「ああ、それと花丸さん…茶飲みついでといってはなんですけれど」 今あるものに理由を付けて
いつか理由が要らなくなる、その日まで─
ダイヤ「もう少しだけ、ここに居ませんか?」
花丸「……じゃあ、お言葉に甘えて」
また一つ、過ぎ行く日々に想いを重ねて。 乙
ダイヤさんと花丸ちゃんの似たところって考えたことなかったなぁ いいね
和風少女同士のゆったりした掛け合いが心地いい |c||^.- ^|| おつなものですわぁ
|c||^.- ^|| あ、これは乙とおつをかけた… もはや |c||^.- ^||だけ書き込まれてるの見てもなんの違和感もなかった >>34
|c||^.- ^||説明しなくても良いんですのよ? ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています