花丸「心中」
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――某所――
ルビィ「うゅぅ……」
花丸(ルビィちゃん、寝てる)
花丸(柔らかく握られている手にも、全く力が入っていない)
花丸(完全に身を委ねている証拠)
花丸(穏やかな寝顔)
花丸(こんな頼りないマルの横でも、安心してくれているのかな) 花丸(鞠莉ちゃんからの直接の連絡が途絶えて、ずいぶんな時間が経った)
花丸(危機が迫っていることは理解している)
花丸(でもマルの力じゃ、どうしようもない)
花丸(絶望的な状況でも、助けてくれる人を信じるしかない)
花丸(鞠莉ちゃん、大丈夫なのかな)
花丸(小原家の人は心配ないと言っていた)
花丸(でもそれが嘘であることぐらい、マルにも簡単に理解できて) 花丸(今の状況で、理解できない方がおかしい)
花丸(最近場所を変えたばかりなのに、もう移動を伝えられている)
花丸(これはきっと、居場所が露見してきている証拠)
花丸(ダイヤさんはどんな手を使ってでも、マルとルビィちゃんを探し出そうとしている)
花丸(それでも耐え忍んでいれば大丈夫、見つかることはない)
花丸(そんな風に、必死に言い聞かせて)
花丸(震えそうな心を抑え込んで) 花丸(ルビィちゃんは鋭い子だから、何も聞かなくても周囲の不安を感じ取っている)
花丸(特にマルの感情には敏感に気づくはず)
花丸(それでも彼女は何も言わない)
花丸(マルのことを信じてくれている)
花丸(今みたいに、無防備な自分を晒してくれる)
花丸(その信頼に応えないわけにはいかない)
ギュッ
ルビィ「……痛いよ、マルちゃん」 花丸「あっ、ごめんね」
花丸「起こしちゃった?」
ルビィ「ううん、大丈夫だよ」
ルビィ「そろそろ時間?」
花丸「そういうわけじゃないけど、ちょっとね」
花丸「まだ寝てても大丈夫だよ」
ルビィ「そう?」
花丸「うん」 ルビィ「でもせっかくだし、起きてるよ」
ルビィ「寝てたらマルちゃんが一人で寂しくなっちゃうもんね」
花丸「ふふっ、ありがとう」
花丸「ねえ、ルビィちゃん」
ルビィ「なぁに?」
花丸「もしも、もしもの話だけどね」
ルビィ「うん」
花丸「マルが、ルビィちゃんに酷い事をしても、ルビィちゃんはマルの事を好きでいてくれる?」
ルビィ「酷い事、するの?」
花丸「……かも、しれない」 ルビィ「マルちゃんなら、いいよ」
ルビィ「きっとそれが、ルビィの為になるんでしょ」
ルビィ「意味もなく、そんなことはしないって、分かってるから」
花丸「……うん」
花丸(選択するなら、もうあまり時間はない)
花丸(これ以上二人で居ることが叶わない、そんな状況になった時)
花丸(二人で愛の象徴として死を迎える、そのつもりだった)
花丸(ルビィちゃんが否定しない今、それには何の障害もないはず) 花丸(でも言い出せない)
花丸(躊躇してしまう、彼女の命を奪うことを)
花丸(例えそれが最良だと考えていても、どうしても)
ルビィ「マルちゃん?」
ギュッ
ルビィ「どうしたの、大丈夫?」
花丸「うん」
花丸「ただ好きな人を抱きしめて、ぬくもりを感じたかっただけ」
ルビィ「そっか」 花丸(そもそも、まだ考えるのは早いよね)
花丸(だって見つかったわけじゃない)
花丸(それが言い訳じゃなくて、冷静な判断――)
ガタガタッ
花丸「えっ」
ルビィ「な、なにかな」
花丸「きっと、小原家の人だよ」
花丸「時間的に、そろそろ逃げる準備ができたんじゃないかな」
ルビィ「そ、そうだよね」 花丸(まだだよね)
花丸(まだ大丈夫な、はずだよね)
ギィ
花丸「!」
ルビィ「あっ……」
ダイヤ「……やっと見つけましたわ、二人とも」 ルビィ「お、お姉ちゃん」
花丸「ど、どうして」
ダイヤ「どうして?」
ダイヤ「簡単なことです」
ダイヤ「小原家の人間を『説得』して聞き出しました」
花丸「説得……」
ダイヤ「黒澤家を舐めない事です」
ダイヤ「世間的に見れば小原には劣っていても、自分の庭で、内浦で負けるわけがありません」
ダイヤ「私が余計な情さえ捨てれば、簡単なことでした」 花丸「る、ルビィちゃん、逃げよう!」
ルビィ「ピギッ」
花丸「今ならダイヤさんさえ振り切れば――
果南「おっと、そうはさせないよ」
ガシッ
ルビィ「果南ちゃん!?」
花丸「い、いつの間に」 ダイヤ「果南さん、お疲れ様です」
果南「いやー、簡単だったよ」
ダイヤ「貴女にとっては、そうでしょうね」
花丸「な、なんで」
果南「ごめんね」
果南「マルは嫌いじゃなかったけど、私のうち、黒澤家の助けがないと成り立たないんだよね」
果南「それに、大事な幼馴染の頼みは断れないから」
花丸「そ、そんな」 ダイヤ「果南さん、お喋りは結構です」
ダイヤ「早く花丸さんを運び出してください」
果南「はいはい、了解しました」
花丸「は、離してよ!」
果南「ちょっと、暴れても無駄だから抵抗しないでよ」
花丸「離して、離して、お願いだからっ」
果南「それは無理だよ」 ルビィ「マルちゃん!」
ダイヤ「ルビィ、貴女はこっちです」
ルビィ「嫌だっ!」
ダイヤ「ルビィ!」
グッ
ルビィ「お姉ちゃん……」
ダイヤ「何ですか、その反抗的な目は」
パァン
ルビィ「っ」 ダイヤ「甘やかさずに、もっとはっきりと告げるべきでした」
ダイヤ「自分の行為の愚かしさを」
ルビィ「愚かじゃ――」
パァン
ダイヤ「黙りなさい、今の貴女は異常なのです」
ダイヤ「異常な妹の言葉など聞きたくありません」
ダイヤ「話してないで、早く帰りますよ」 花丸「ルビィちゃんに何するの!」
果南「マル」
ルビィ「マルちゃん……」
花丸「嫌だよ、ルビィちゃんとこれでお別れなんて」
花丸「ルビィちゃんのいない世界なんて」
花丸「なんで一緒に居ちゃ駄目なの!」
花丸「世界中の誰よりも、愛しあってるのに!」
花丸「お互いに想いあってるのに!」
花丸「いらないよ!」
花丸「ルビィちゃんと一緒に居られない世界なんて、マルはいらない!」 こうも絶望的だと、ハッピーエンドを望みたいところだが… ―静岡・某病院―
鞠莉「…………」
ガチャ
果南「やあ」
鞠莉「果南……」
果南「元気だった?」
鞠莉「これが、元気に見える?」
果南「まあ、見えないね」 果南「はい、これお土産」
鞠莉「……干物を渡されても、食べられないんだけど」
果南「きっと頼めば焼いてくれるよ、こんな良い病室に泊まってる上客なら」
鞠莉「それは流石に、遠慮しておくわ」
果南「ずいぶんと、偉い目に遭ったね」
鞠莉「……ええ、そうね」
果南「入院かぁ、大変だねぇ」 鞠莉「証拠も出ない、犯人も見つからない」
鞠莉「自作自演を疑われるぐらい、何も出てこない」
鞠莉「怖いわね、田舎の権力者は」
果南「普段は仲良しだから、私や鞠莉は実感することが少ないけどね」
鞠莉「本当にね」
鞠莉「今回は身をもって思い知らされたわ」
果南「内浦だとみんな、黒澤の味方だからね」
果南「黒澤家のおかげで生活できている人が、大半なわけだし」
鞠莉「果南も、ダイヤの家に助けられてるのよね」
果南「うん、そうだね」
果南「うちはあらゆる意味で、黒澤家がいないと成り立たない商売だから」 鞠莉「二人を捕まえるのに、果南も協力したのよね」
果南「うん、そうだね」
鞠莉「今回の事、全部知ってるの?」
果南「まあね」
果南「そうじゃなきゃ私もダイヤに協力しないよ」
鞠莉「信頼されてるのね、ずいぶん」
果南「長い付き合いだからね、私とダイヤも」
鞠莉「妬けちゃうわね」
鞠莉「私には、ずいぶんと情熱的な接し方だったのに」
果南「まあダイヤからすれば、遠慮した方なんじゃないかな」
果南「これでも一応、入院ぐらいで済んでるわけだし」
鞠莉「そうかも、しれないわね」 鞠莉「正直は侮ってた」
鞠莉「口では厳しいことを言いながらも、私の中のダイヤはこんなことをする子には見えなかったから」
鞠莉「ここまで強引な手段を使ってくるなんて、想像もできなくて」
鞠莉「襲われた時のダイヤの顔、思い出すとゾッとするわ」
鞠莉「あんな顔ができたなんて、私は知らなかった」
果南「それだけルビィの事が、周りのみんなの事が大切なんだよ」
果南「一人で必死に考えて、これが最良だと考えたから、ここまでの事をしたんだ」
果南「鞠莉に対しても、障害が残るレベルの怪我を負わせるようなことはしなかったでしょ」
鞠莉「……そうね」 果南「相談ぐらい、してほしかったけどね」
果南「そうすれば、もう少し他の考えも浮かんだかもしれないから」
鞠莉「あの子は信じられないぐらい頑固だから、何を言われても自分で決めたことを曲げたりしないわよ」
果南「ははっ、そうかもね」
鞠莉「本当に、どんなことをしても無駄だったのかもしれないわね」
鞠莉「例え海外へ二人を逃がしても、あの子は追いかけてきた気さえする」
鞠莉「結局、私は場をかき回し、無駄に混乱させて、みんなを傷つけただけなのかもしれない」
果南「……かもね」 果南「ねえ鞠莉」
鞠莉「なにかしら」
果南「ダイヤから聞いたよ」
鞠莉「なにを?」
果南「私のこと、好きなんでしょ」
鞠莉「っ」
鞠莉「……あの石頭、本当に恐ろしいわね」
鞠莉「『相応の報い』は怪我じゃなくて、こっちの方だったのかしら」 果南「その様子だと、間違ってはないみたいだね」
鞠莉「ええ、私は果南が好きよ」
鞠莉「昔からずっと、果南が好きだった」
果南「そっか、ありがとう」
果南「でもごめんね、私は鞠莉の気持ちを受け入れられない」
鞠莉「うん、知ってる」
鞠莉「だから今まで言わなかったんだもの」
鞠莉「みんな薄々感づいてはいたみたいだけどね」 果南「大丈夫、告白されたからって、関係は変わらないよ」
果南「私だって何となく気づいた状態で、一緒にいたわけだし」
鞠莉「それなら、幸いね」
果南「二人とはいつまでも友達でいたい」
果南「私は本気でそう思ってる」
果南「鞠莉はもちろん、ダイヤとも」
果南「三人でずっと、大切な幼馴染として、一緒に」
鞠莉「一緒に、ね……」 ――渡辺家――
曜「退屈、だね」
善子「そうね」
曜「練習、なくなってからどれぐらいの時間が経ったのかな」
善子「もう数えてないわよ、昔のこと過ぎて」
曜「善子ちゃんがうちに来るようになってからも、それぐらいが経つんだね」
善子「ええ」 曜「まだ梨子ちゃんとは仲直りしてないの」
善子「……仕方ないでしょ」
善子「それに、曜さんだって千歌さんからの返事、保留にしたままじゃない」
曜「まあ、そうなんだけどね」
善子「何やってるのかしらね、私たち」
善子「こうして余った者同士集まって、ぼんやりと一緒に過ごして」
善子「何もしない、何もできない、そんな日々を送って」 善子「今日も、ルビィは一言も言葉は発していなかったわ」
善子「基本的にうつむいて、時々何もない宙に視線をさまよわせて」
善子「私が話しかけてもずっと空返事しか言わないの」
善子「無表情で、感情をなくした人形みたいになって」
善子「周囲のみんなにも、腫れ物扱いされて」
善子「私は二人の友達だと思っていた」
善子「ダイヤに何を頼まれても、二人の味方でいた」
善子「いざとなったら、身を投げ出してでも助けるつもりだった」
善子「それなのに、結局何の力にもなれずに……」 曜「あんまり、自分を責めちゃ駄目だよ」
曜「私もね、偉そうに応援するなんて言って、このざま」
曜「千歌ちゃんにすがりつかれたら、何もできなかった」
曜「助けようとしたのは、口だけで」
曜「実際、動いても無駄だったかもとは思うけどね」
曜「あの鞠莉ちゃんですら、あんなことになったんだ」
曜「私なんかじゃ、きっと何もできない……」
善子「曜さん……」 曜「……そういえば鞠莉ちゃん、最近退院したらしいよ」
善子「それは朗報ね」
善子「元気なのかしら」
曜「どうだろう」
曜「鞠莉ちゃん、責任を感じちゃってるだろうし」
善子「そうよね……」
曜「心配だから、後で様子を見に会いに行こうか」
善子「そうね――」 鞠莉「その必要はありませーん」
善子「わっ」
曜「ま、鞠莉ちゃん!?」
鞠莉「ハァイ、久しぶりね」
曜「い、いつの間に」
鞠莉「ちょうど窓が空いてたから、ちょちょいとね」
善子「なによそれ、滅茶苦茶じゃない」
曜「あ、危ないなぁ」 曜「というか、身体の方はいいの?」
鞠莉「おかげさまでね」
鞠莉「こんな派手なことができる程度には回復したわ」
曜「駄目だよ、病み上がりで無理しちゃ」
善子「そうよ、また入院なんてことになりかねないわ」
鞠莉「むぅ、私としては粋なサプライズのつもりだったんだけど」
鞠莉「可愛い後輩たちに言われると、流石に反省しちゃうわね」 曜「でもどうして突然?」
鞠莉「退院したこと、知り合いに直接報告しようと思ってね」
鞠莉「みんなの家を驚かせながら回ろうってわけよ」
曜「な、なるほど」
鞠莉「まあ、回るのはこれからだけどね」
鞠莉「沼津組の曜と善子が順番的に一番よ」
曜「あー、地理的に」
鞠莉「まあそうね」
鞠莉「理由はそれだけじゃないけど」
曜「へっ」 鞠莉「ねえ、二人とも」
曜「鞠莉ちゃん?」
善子「な、なによ、急に真面目な雰囲気になって」
鞠莉「二人は、ルビィと花丸の味方だったのよね」
曜「……それは」
鞠莉「行動できたかどうかは重要じゃないわ」
鞠莉「事情は何となく察しているから」
鞠莉「それよりも助けたいという意志があったか、それが知りたいの」 曜「それは、あったよ」
鞠莉「善子は」
善子「もちろん、私だって」
鞠莉「……そうよね」
鞠莉「二人は人一倍繊細で敏感な、やさしい子」
鞠莉「あの状況で、二人の味方をしないわけがない」
鞠莉「だからこそ、後悔してるのよね」
鞠莉「何もしなかったことを」
鞠莉「何もできなかったことを」 曜「……うん」
善子「……そうね」
鞠莉「だからこそ、私は貴女たち二人に頼みたいことがあるの」
曜「頼みたいこと?」
鞠莉「二人とも、ルビィと花丸を助けたくない?」
「「!」」
鞠莉「もしもその意思があるなら、明日の夜に、私の家へ来て」
鞠莉「そこで詳しく話すわ」 曜「それって、どういう――」
鞠莉「あら、もうこんな時間」
鞠莉「早く行かないと全員の家を回る時間が無くなっちゃうわ」
曜「えっ」
鞠莉「じゃあね二人とも、チャオ〜」
「「…………」」
曜「また、窓から出ていったね」
善子「凄いことするわね、ホント」 曜「どうする、明日の夜」
善子「行くしかないでしょ」
曜「でも、行っていいのかな」
曜「結局私たちは、自分の答えを出せていない」
曜「鞠莉ちゃんが何かを提案してくれても、受け入れられるか――」
善子「いいから行きましょう」
曜「善子ちゃん……」
善子「そうすれば、答えも出るかもしれないわ」 曜「……そうか、そうだね」
曜「考えるのも大事だけど、まずは動いてみないとだもんね」
善子「そうよ」
善子「何も考えずに動く、それでこそ曜さんらしいわ」
善子「流石脳筋ヨ―ソローね」
曜「あっ、言ったなぁ」
曜「善子ちゃんだって脳筋じゃないけど、同じようなもんじゃん」
善子「う、うるさいわね」 今回の更新はここまで
残りは今日を含めて近日中に、あと2〜3回の更新で完結予定です 乙です
地元権力者怖い……
マルちゃんがどうなってるのか…… ――黒澤家――
ダイヤ「ルビィ、朝ですよ」
ルビィ「うん」
ダイヤ「早く起きないと、遅刻しますわよ」
ルビィ「うん」
ダイヤ「やれやれ、布団を取ってしまいますよ」
ルビィ「うん」 ダイヤ「ただでさえ欠席が多いのです。これ以上は遅刻さえ好ましくないのですよ」
ルビィ「うん」
ダイヤ「今日は体育もあるのでしょう。準備はできているのですか」
ルビィ「うん」
ダイヤ「朝食の準備はできています。顔を洗って早く来なさいね」
ルビィ「うん」
ダイヤ「ルビィ」
ルビィ「うん」 ダイヤ「…………」
ダイヤ(強引に花丸さんと引き離し、家へ連れ戻して以来、ルビィはずっと上の空)
ダイヤ(私は、間違っていたのでしょうか)
ダイヤ(もっと上手く事を運べる手段が、あったのではないか)
ダイヤ(そんな事を考えずにはいられない日々)
ダイヤ(でもきっと、時間が解決してくれるはずです)
ダイヤ(いつかルビィも理解してくれるでしょう、私が正しいことを)
ダイヤ(生きるためには、私が与えた道しかないことを) ダイヤ(しかしその時の為にも、現状をどうにかしなければ――)
ピーンポーン
ダイヤ「あら、朝から来客?」
ダイヤ(小原家の……)
ダイヤ(いや、それなら家の者が通すわけがないと考えると、どなたが)
ピーンポーン
ダイヤ(とにかく、出ないことには)
ダイヤ「はい、どちらさま――」 曜「おはヨ―ソロー!」
ダイヤ「曜さん?」
善子「私もいるわよ!」
ダイヤ「善子さんまで」
ダイヤ「いったい、どうしたのですか」
曜「ルビィちゃんを迎えに来ました!」
ダイヤ「ルビィを?」
善子「ええ、そうよ」 ダイヤ「ありがたいですが、なぜ急に」
善子「前からルビィの為に何かできないかって曜さんと話してたのよ」
曜「それで、まずは学校に来られるようにと今日から毎日送り迎えをしようってことになって」
ダイヤ「はぁ……」
ダイヤ(この二人、信用していいのでしょうか)
ダイヤ(性格や人間関係的には、私の行動には反対するタイプのはず)
ダイヤ(特に善子さんは、一度私に反抗している) ダイヤ(しかし、それが以外の状況で特に何もしてこなかった)
ダイヤ(千歌さんと梨子さんに説得されて、考えを改めたという方が妥当か)
ダイヤ(この行動も、常にルビィを気にかけていた二人だからこそ)
ダイヤ(純粋にルビィを心配しての行動と、考えていいのでしょう)
ダイヤ「そうですか、それはありがとうございます」
ダイヤ「しかし、ルビィはまだ寝床を出られていないのですよ」
善子「あら、そうなの」
曜「それなら私たちが起こしに行きますよ」 ダイヤ「いいのですか」
曜「はい、その為に来たようなものですから」
ダイヤ「それなら、ぜひお願いしたいですが」
曜「了解であります!」
善子「じゃあお邪魔するわよ」
善子「ルビィの部屋はこっちよね」
ダイヤ「ええ」 善子「ルビィ、いるかしら」
ルビィ「うん」
善子「最近ちゃんと学校に来ないから、迎えに来たわよ」
ルビィ「うん」
善子「ほら、一緒に学校行きましょう」
ルビィ「うん」
善子「もぅ、聞いてるの?」
ルビィ「うん」 善子「駄目ね……」
ダイヤ「私が話しかけても、ずっとこんな感じなのですよ」
曜「うーん、これは重症みたいだね」
善子「曜さん、何か良い案はあるかしら」
曜「そうねだぇ……」
ダイヤ「無理しなくてもいいのですよ」
ダイヤ「気持ちだけで充分ですから」 曜「いやいや、でも一ついい案が浮かびましたよ」
ダイヤ「案?」
曜「ダイヤさん、ルビィちゃんの制服と鞄はどれですか」
ダイヤ「一応、これですが」
曜「善子ちゃん、悪いけどそれを両方持ってくれる?」
善子「ええ、分かったわ」
ダイヤ「何をするのですか?」
曜「まあ、見ててくださいよ」 曜「ルビィちゃん、おはヨ―ソロー!」
ルビィ「うん」
曜「さあさあ、曜ちゃん先輩と学校へ行こうじゃないか!」
ルビィ「うん」
曜「えっ、嫌なの」
ルビィ「うん」
曜「そっかぁ、それなら――こうだ!」
ひょい
ルビィ「ピギッ!?」 善子「おぉ、流石曜さん」
善子「いくら軽いとはいえ、軽々ルビィをお姫様抱っこするなんて」
曜「じゃあダイヤさん、私たちはこのまま学校へ行きますね!」
ルビィ「なっ」
ダイヤ「はい!?」
曜「さあ行くよ、善子ちゃん!」
善子「ふふっ、了解よ」 曜「全速前進、ヨ―ソロー!」
善子「あはは!」
ルビィ「ぴ、ピギィ――――――――!」
ダイヤ「…………なんだったのでしょうか、あの二人は」
ダイヤ(つい勢いに圧倒されて、何もできませんでした)
ダイヤ(一応、家の者はちゃんと追いかけたようですね)
ダイヤ(やや心配ですが、連れ去られたりする心配ないでしょう) ダイヤ(二人はこれからも、今日のようにルビィを迎えに来ると思うと、やや頭痛の種ですね)
ダイヤ(まあ監視をつけておけば、最悪の事態は避けられるはず)
ダイヤ(今は余計なことを考えるより、ルビィを優先するべき――)
ダイヤ(現に、今日は久しぶりに『うん』以外の言葉を話しました)
ダイヤ(あの泣き声を、言葉と評していいのかやや疑問は残りますが)
ダイヤ(少なくとも、私よりは二人の方がルビィを良い方向へ導いてくれるはずです)
ダイヤ(素直に信頼して、彼女たちに委ねてみましょうか)
(さて、私も急いで準備をして追いかけなければいけませんね)
(自分が遅刻しては示しがつきません)
(今日から復学する鞠莉さんにも何をされるかと思うとやや憂鬱ですが、きちんと謝らなければなりませんもの) >>511
訂正
ダイヤ(二人はこれからも、今日のようにルビィを迎えに来ると思うと、やや頭痛の種ですね)
ダイヤ(まあ監視をつけておけば、最悪の事態は避けられるはず)
ダイヤ(今は余計なことを考えるより、ルビィを優先するべき――)
ダイヤ(現に、今日は久しぶりに『うん』以外の言葉を話しました)
ダイヤ(あの泣き声を、言葉と評していいのかやや疑問は残りますが)
ダイヤ(少なくとも、私よりは二人の方がルビィを良い方向へ導いてくれるはずです)
ダイヤ(素直に信頼して、彼女たちに委ねてみましょうか)
ダイヤ(さて、私も急いで準備をして追いかけなければいけませんね)
ダイヤ(自分が遅刻しては示しがつきません)
ダイヤ(今日から復学する鞠莉さんにも何をされるかと思うとやや憂鬱ですが、きちんと謝らなければなりませんもの) 次回投稿文の調整で少し進めました
あと二回で、明日には完結させるように努めていきます
↓補足
・かなダイ以外レズビアンというコメントがありましたが、ようよしもかなダイ同様に同性愛者ではありません
・同性愛者が多すぎるという点については、あくまでも様々な事情によりそのような人間が集まった部ということです
学校全体に他に同様の性的指向を持った人間はおらず、学校単位で見れば一般的に言われる10~15人に1人ぐらいになるという設定です 乙
なんにせよ完結が楽しみ
花丸はどうなったんだろう… ―― ――
花丸「ルビィ、ちゃん」
花丸「ルビィちゃん、どこにいるの」
ルビィ?【マルちゃーん】
花丸「あはは、そこにいたんだね」
花丸「駄目だよ、一緒にいないと危ないから」
花丸「ほら、手を繋いで」 果南「おーい、マル」
花丸「ルビィちゃん?」
果南「やれやれ、また変なものが見えてる」
果南「ルビィじゃないよ、果南だよ」
花丸「か、なん――」
花丸「うっ、うぇぇ」
ビチャビチャ
果南「うわぁ、汚いなぁ」 果南「そんなに怖がらなくてもいいのに」
果南「確かに私は悪いことをしたとは思うけどさ」
果南「わざわざこうして、内浦から離れた場所まで定期的に面倒を見に来てるんだよ」
果南「なのにそんな反応をされたら、結構ショックなんだけど」
花丸「マルは、来てほしいなんて頼んでない」
花丸「むしろ来ないでほしいと思ってる」
果南「仕方ないじゃん、監視も兼ねてなんだから」
果南「他に人もいるし大丈夫だとは思うけど、念のためのさ」 花丸「……流石に諦めてるよ、もうここから逃げることなんて」
果南「いやいや、そっちじゃなくて」
花丸「じゃなくて?」
果南「確かに、一応逃げないための監視も兼ねてるけどさ」
果南「メインは、マルが馬鹿なことを、自ら死を選ばないようにするための監視だよ」
花丸「っ」
果南「あれ、見透かされていないとでも思ってた?」 果南「この部屋、全く物がないでしょ」
果南「小さな文庫本が数冊あるだけ、その手の行為に利用できる物は一切置いてないの」
花丸「……何で、そんなことを」
花丸「マルがいなくなった方が、都合がいいはずだよね」
果南「さぁ」
果南「指示してるのはダイヤだからね、何を考えているのかまでは」
果南「でもたぶん、ダイヤはマルも助けたいんだよ」
果南「何度も言ってたから、大切な後輩だって」 花丸「……だったら、ルビィちゃんを連れてきてよ」
花丸「それかもう、殺してよ」
花丸「大切だっていうなら、マルの望みを叶えてよ」
果南「無茶言うなぁ」
果南「どっちも無理に決まってるでしょ」
果南「もういい加減、ルビィのことは諦めて切り替えなよ」
果南「内浦に居られなくなった代わりに、手厚く面倒を見てあげてるんだから」
果南「普通に生きれば、標準よりいい暮らしができるんだよ」 花丸「忘れるなんて無理だよっ」
花丸「ルビィちゃんは唯一無二の存在なの」
花丸「なによりも大切で、マルの全てで」
花丸「少し離れ離れになっただけで、寂しくなるぐらい好きで」
花丸「ルビィちゃんも同じぐらいマルの事を愛してくれた」
花丸「だからずっと一緒にいようと誓い合った」
花丸「どんなことがあっても、離れないはずだったのに」 花丸「もう嫌だよ」
花丸「運命の人と出会った後、その人と引き離されて、一生存在を忘れられずに生きていく」
花丸「辛すぎるよ、耐えられないよ」
花丸「せめて声を聞かせてよ」
花丸「写真を見せてよ」
花丸「ルビィちゃんの存在を、マルから排除しようとしないでよ」
花丸「なんで、なんでみんな分かってくれないの」
果南「……はぁ、面倒くさいなぁ」 花丸「面倒くさいって、そんな」
果南「もういいよ、グダグダ言われるのも堪らない」
果南「それなら、私がマルを逃がしてあげるよ」
花丸「えっ」
果南「正直さ、相手をするのも嫌になってきたんだよね」
果南「いつもうじうじと、泣き言ばかり言って」
果南「一緒にいるだけでこっちまで暗い気分になってくる」
果南「やってられないよ、本当に」 花丸「ちょっと待って、今の本当に――」
果南「まあたぶん、マルが知らないような遠い場所にだけど」
果南「ルビィに近い場所だと、ダイヤに怒られそうだから」
果南「黒澤家を怒らせたら、私も色々ヤバそうだしねぇ」
果南「気が向いたときに、どこかに放り出すよ」
果南「それであとは自由にすればいい」
果南「私は関係ない、適当に小原の所為にでもすれば、ダイヤも納得してくれるでしょう」
花丸「果南ちゃん……」
果南「じゃあ私はそろそろ帰るよ」
果南「またね、マル」
花丸「……うん」 ―桜内家―
梨子「そっか、曜ちゃんにはフラれちゃったんだ」
千歌「うん……」
梨子「告白する前は、ひょっとしたらとは思ったんだけどね」
梨子「曜ちゃんは千歌ちゃんが大好きだから」
千歌「あはは、いつも反対してた割にそんなこと考えてたんだね」
梨子「別に、現実的な可能性の話よ」 千歌「でも自分でもね、肯定してくれるかもと思ってた」
千歌「曜ちゃんが返事を悩んでいたのを見て、もしかしたらって」
梨子「悩んでいたのは、断り方でしょ」
梨子「あんな最悪のタイミングで告白して、受け入れてもらえるわけない」
千歌「あはは、そうなんだけどね」
千歌「あそこで止めないと、曜ちゃんまで鞠莉ちゃんみたいな目に遭うかもしれなかった」
千歌「そう考えたら、もう止まらなくなってた」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています