花丸「心中」
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度々保守ありがとうございます
とりあえず再開します ルビィ「うーん、恥ずかしがるマルちゃんも可愛いねぇ」
花丸「……あんまりいじめると拗ねるよ」
ルビィ「それは困るよぉ」
花丸「ふーん」
ルビィ「マルちゃん、機嫌直してよぉ」
花丸「……何か誠意を見せてもらわないと、嫌だ」
ルビィ「じゃあお詫びに――ハグッ」
ギュッ
ルビィ「えへへ、これでどうかな」
花丸「うん、許してあげるずらっ」 善子「……あんたら、少しは自重しないと色々と疑われるわよ」
ルビィ「疑われる?」
善子「知らないの? 二人で遊園地へ行ったときの写真、ネットに出回ってるわよ」
花丸「写真?」
善子「手を繋いだり、抱き合ったり、頬にキスをしたり、そんな感じの写真ね」
ルビィ「あっ、ジェットコースターの時の」
花丸「撮られちゃってたんだね……」
善子「わたしが知る限り、スクールアイドルの百合画像としてそれなりに有名になってるわ」
善子「二人は見てくれが良いから、Aqoursを知らない人にも評判になってるみたいで」 ルビィ「あれ、善子ちゃん褒めてくれてる」
花丸「いやぁ、照れるねぇ」
善子「私の意見じゃなくて一般論よ――私だって可愛いとは思っているけど」
花丸「おぉ、今日の善子ちゃんは素直だね」
ルビィ「善子ちゃん、いつにも増して可愛いねぇ」
花丸「マルたち三人、可愛いトリオだね!」
善子「そ、そうね――って呑気なこと言ってるんじゃないわよ」
善子「同性愛なんて噂としては洒落にならない部類よ」
善子「しかも実名で晒されてるし、もっと危機感を持ちなさい」 ルビィ「うゅ……」
花丸「ずら……」
善子「まあ、影響がなければいいのよ」
善子「結果的にAqoursのいい宣伝にはなってるみたいだし」
花丸「そっか、グループ名も一緒に広まるもんね」
善子「さて、真面目な話はこれぐらいにして――そろそろ遊びましょう!」
ルビィ「あっ、うん」
花丸「切り替え早いずら」
善子「くっくっくっ、宴の始まりよ―――― ―――
――
―
善子「……んがぁ」
花丸「善子ちゃん、寝ちゃったね」
ルビィ「かなりはしゃいでいたもんね」
花丸「今日が楽しみで昨日はあんまり眠れなかったのかも」
ルビィ「子どもみたいで可愛いねぇ」
花丸「そうだねぇ」 ルビィ「でも楽しいよね、三人でのお泊り会」
花丸「ルビィちゃんと二人もいいけど、やっぱり善子ちゃんと三人の時間も特別ずら」
ルビィ「仲良し三人組だもんね」
花丸「高校に入る前は、ルビィちゃん以外にこんなに仲良くなる子ができるとは思ってなかったなぁ」
ルビィ「ルビィも、ずっとマルちゃんと二人で居ると思ってたよ」
花丸「もちろん、ルビィちゃんの方が圧倒的に好きだけどね」
ルビィ「マルちゃん、やっぱり素直じゃないね」
花丸「ふふっ、そうかな」 ルビィ「ずっと一緒に居たいね。三人で」
花丸「大丈夫だよ――マルたちの関係さえ隠し通せれば」
ルビィ「隠せるかな、ずっと」
花丸「ルビィちゃん?」
ルビィ「怖いんだ、どんなに注意していても、いつかは知られてしまうことが」
花丸「……きっと何とかなるよ」
花丸「今は大変でも、大人になったらもっと自由になる」
花丸「大学に入って、内浦を離れられれば、少なくとも今よりは楽になれる」
花丸「高校生の間、何とか耐えられれば」
ルビィ「そっかぁ、そうだよね」 ルビィ「だけど大学を卒業したら、ルビィは黒澤家に戻らなきゃいけないかも」
ルビィ「地元か、どこか関係を強化したい有力者の家に嫁ぐ」
ルビィ「それが次女という立場の人間に、求められていることだから」
花丸「そうなったら、マルがルビィちゃんをさらっちゃうよ」
花丸「誰もマルたちに手が出せない場所に連れ出してあげる」
ルビィ「あはは、そんなことができたら嬉しいね」
花丸「むっ、マルは本気なんだけど」
ルビィ「ふふっ、じゃあルビィも逆の立場になったらマルちゃんと同じことをしようかな」
花丸「おぉ、王子様みたいだね」 ルビィ「でもその前の大学生活も楽しみだね」
花丸「やっぱり同じ大学に行くのかな」
ルビィ「そうだね、出来れば善子ちゃんも含めて3人で」
花丸「みんなで同じお家に住むのもいいかも」
ルビィ「いいね、楽しそう!」
花丸「それだとルビィちゃんと思う存分いちゃつけないのが欠点だけどね」
ルビィ「うーん、もし二人で暮らしてもお姉ちゃんが定期的に来そうだから、そこは同じかも」
花丸「あぁ、容易に想像出来るずら」 ルビィ「お姉ちゃん、何であんなに過保護なのかなぁ」
花丸「それだけルビィちゃんが大切なんだよ」
ルビィ「うゅ、それは嬉しいけど……」
花丸「マルだって、ダイヤさんの立場なら同じような感じになるかも」
ルビィ「そうなの?」
花丸「マルもルビィちゃんが大切だから」
花丸「たぶんね、お姉ちゃんってそういうものなんじゃないかな」
ルビィ「そっか……」 花丸「想像すると楽しそうだけどね、ルビィちゃんと姉妹なのも」
ルビィ「うーん、でも姉妹ならマルちゃんが妹かなぁ」
花丸「なんで?」
ルビィ「だってルビィの方が身長大きいもん」
花丸「身長って大事かな」
ルビィ「あと、ルビィもお姉ちゃんになってみたいから」
花丸「うーん、でもルビィちゃんはやっぱり妹向きずら」
ルビィ「むぅ、マルちゃんにそう言われると」
花丸「早速、花丸お姉ちゃんと呼んでもいいよ?」
ルビィ「お姉ちゃんかぁ――本当に姉妹だったら、何も気にせずに一緒に居られたのにね」 花丸「そうだね、でも――
グイッ
花丸「こういうことはできないから、マルは今の関係の方が好きかな」
ルビィ「ま、マルちゃん、どうしたの急に迫って――」
花丸「……近くで観ると、ルビィちゃんは本当に可愛いね」
ルビィ「ピギッ」
花丸「ねえ、久しぶりにしない?」
ルビィ「だ、駄目だよ、善子ちゃんもいるのに」 花丸「大丈夫だよ、ぐっすり寝てるもん」
花丸「他に人もいないし、何の障害もないよ」
ルビィ「だけど、もし見つかったら大変なことに――」
花丸「分かってるよ、それは」
花丸「でも我慢できない。こんな絶好の機会はなかなか無いから」
ルビィ「それは、そうだけど……」
花丸「お願い、ルビィちゃん」
ルビィ「……分かったよ」
花丸「いいの?」
ルビィ「うん、でも少しだけだよ」
花丸「ありがとう、じゃあ早速―――― ―――
――
―
ルビィ「すぅ、すぅ」
花丸「ふふっ」
花丸(可愛い寝顔)
花丸(久しぶりだったから、少し激しくしすぎちゃったかな)
花丸(まるで性を制御できない、思春期の男子みたいで、少し恥ずかしいかも) 花丸(久しぶりだったから、歯止めが効かなかった)
花丸(たぶん、ルビィちゃんとしたのは中学の時以来)
花丸(付き合い始めたころはそれなりの回数をしていた)
花丸(誰もいない図書室で、こっそりと行われた情事)
花丸(こっそりと物陰に隠れて、拙い知識を元に互いを慰め合う)
花丸(いま思うと、なんて危険な行動だったんだろう)
花丸(いくら人がいない場所とはいえ、自由に出入りができ、人に見つかりやすい空間だったのに)
花丸(でも仕方ない)
花丸(あの時は気づいていなかった、自分たちの置かれた立場の異質さを) 花丸(自らの特殊性に気づいたのは、偶然聞こえてきたクラスメイトの会話)
花丸(同性から告白されたという話で盛り上がる彼女たち)
花丸(その中で聴こえる、『気持ち悪い』、『受け入れられない』という言葉)
花丸(皆がそれを否定せず、積極的に肯定する)
花丸(それまで、全くそういう意識がなかったわけではない)
花丸(でもどこかで信じていた、世間の同性愛を受け入れる建前の風潮を)
花丸(しかし知ってしまった、心の中ではほとんどの人が嫌悪感を抱いている現実を)
花丸(自分自身ももちろん、ショックだった)
花丸(でもそれ以上に、一緒に居たルビィちゃんの表情が未だに忘れられない) 花丸(気づいてから、人目を避けるようにほとんどしてこなかった)
花丸(今日みたいに可能な状況でも、自分から避けるようにしてた)
花丸(ルビィちゃんに気を遣う意味も、当然あった)
花丸(幸いそこまで性欲も強くなかったので、特に支障をきたしていなかった)
花丸(互いに、傍にいるだけで幸せだったから)
花丸(それなのに、今日は我慢できなかった)
花丸(これはある種、遊園地での大胆な行動で開き直れた結果の行動が及ぼしたものかもしれない)
花丸(あの時はまだ子どもなんて言ってたのに、ね) 花丸(ずっと、不安だった)
花丸(いつかルビィちゃんと引き離されてしまう日が来ることが)
花丸(さっきは何とかするなんて言ったけど、所詮マルの力は小さい)
花丸(どんなに抗っても、きっとその結末は避けられないかもしれない)
花丸(少しでも一緒に居たくて、だから慎重に隠してきた)
花丸(今日みたいな行動も、本当は避けるべき)
花丸(遊園地もの時もそう)
花丸(軽率な行動をして、写真まで撮られて)
花丸(あれで周囲に疑われてしまったかもしれない) 花丸(でも、まだ誤魔化せる)
花丸(所詮は人の噂、また以前のように我慢すればすぐにみんな忘れてしまう)
花丸(そのまま何事もないように、大学生になって、大人になって)
花丸(家のしがらみから逃れて生きていけるようになれば、きっと堂々と2人で居られるようになるかもしれない)
花丸(恋人として、永遠に)
花丸(絶対に、何とかしてみせる)
花丸「ずっと、一緒に居ようね」
花丸(最後まで、どんな手を使ってでも、一緒に) キリもいいのでいったんここまで
今日中に再開するつもりで考えています 続き来てた!マルちゃんの独白で今すぐにでも不穏な影が現れて来そうな感じが... ――桜内家――
梨子「ルビィちゃん、そっちそろそろ見ないと」
ルビィ「そ、そうですね」
梨子「私の方は――あっ」
ルビィ「ピギッ、何かチョコの焦げた匂いが……」
梨子「ご、ごめんなさい。ちょっと火が強すぎたみたい……」
ルビィ「で、でもクッキーの方は――あれ、甘くない」
梨子「もしかして、調味料の配分間違ったかな」
ルビィ「り、梨子ちゃん、火を消さないと!」
梨子「あ、大変!」 ―――
――
―
ルビィ「な、何とか完成しましたね、お菓子」
梨子「ええ……」
ルビィ「ごめんなさい、だいぶ散らかしちゃって」
梨子「いいのよ、主な原因は私だから……」
ルビィ「げ、元気出してください」
ルビィ「ちゃんと美味しそうに完成したんですから」
梨子「そうね、出来合いものしか作ったことのない私にしては」
ルビィ「へっ」 梨子「実はね、今までお菓子作りなんてほとんどしたことがなかったの」
ルビィ「そうだったんですか」
梨子「ごめんね、言い出せなくて」
ルビィ「いえ、それなのに協力を頼んじゃって、ごめんなさい」
梨子「謝らなくていいのよ、見栄張って引き受けた私なんだから」
梨子「でもルビィちゃん、何で私に協力を頼んだの?」
ルビィ「えっと、やっぱりこういう女の子らしいのは、梨子ちゃんが適任かなぁ〜って」
梨子「……ごめんね、イメージ通りの素敵な先輩じゃなくて」
ルビィ「い、いえ」 ルビィ「よく考えたらピアニストなんですから、料理とかはあまりしないですよね」
梨子「恥ずかしながらね」
梨子「指を傷つける可能性がある包丁とか、使ったことがないのよ」
梨子「それどころか、火もほとんど使ったことがないぐらい」
梨子「あと水で手が荒れたら大変だからって、水仕事もほとんどしてこなかったの」
ルビィ「ふぇ、やっぱりプロを目指すような人だとそこまで徹底するんですね」
梨子「うちの両親が過保護なだけかもしれないけどね」
ルビィ「梨子ちゃん、ピアノが本当に上手ですもんね」
梨子「ふふっ、ありがとう」 ルビィ「もうプロとかは目指さないんですか?」
梨子「あれ、ルビィちゃんは私にAqoursを辞めてほしいの?」
ルビィ「そ、そんなことはないですけど」
梨子「うふふ、冗談だよ」
梨子「もちろん考えてない訳じゃない」
梨子「でもね、今の時間はすごく楽しいの」
梨子「怪我をするかもなんて気にすることもなく練習して、みんなで一つの目標に向かって」
梨子「こんな風に楽しく後輩と料理をするのも、以前なら考えられなかったから」
ルビィ「あはは、盛り上がりましたもんね」 梨子「とりあえず、しばらくは今の状態を続けるつもり」
梨子「少なくとも、Aqoursが続いている間はピアノだけに打ち込むことはないと思う」
ルビィ「……Aqoursが、続いている間」
梨子「もちろん、その後もどうなるかは分からないけどね」
ルビィ「いつか終わっちゃうんですよね、Aqours」
梨子「そうね」
梨子「まばゆく光輝く時間にも、いつか終わりは来る」
梨子「そしてその終わりは、いつ訪れるか分からない」
ルビィ「梨子ちゃん?」
梨子「……気にしないで、ちょっと昔のことを思い出したの」 ルビィ「……梨子ちゃん」
梨子「ごめんなさい、少し暗い雰囲気にしちゃって」
ルビィ「い、いえ」
梨子「ルビィちゃん、そのお菓子は花丸ちゃんにあげるの?」
ルビィ「はい」
梨子「食べるのが好きだもんね、花丸ちゃん」
ルビィ「梨子ちゃんは、善子ちゃんに?」
梨子「よく分かったね」
ルビィ「チョコレートが好きなのは善子ちゃんですし」
梨子「なるほど、分かりやすかったかな」 ルビィ「梨子さんは、善子ちゃんが好きなんですか」
梨子「うん、好きだよ」
ルビィ「どのぐらい好きなんですか?」
梨子「うーん、恋人にしたいぐらいかな」
ルビィ「こ、恋人!?」
梨子「変かな?」
ルビィ「そ、そんなことは」
梨子「ルビィちゃんは考えない?」
梨子「花丸ちゃんと、恋人になりたいとか」
ルビィ「え、えっと、それは」 梨子「うふふ、意地悪な質問だったかな」
ルビィ「う、うゅ……」
梨子「答えられないわよね、複雑な問題だから」
梨子「私もね、なかなか話せないの」
ルビィ「!」
梨子「初めて二人を見ていた時から気づいてたの」
梨子「この子たちは、私と同じ気持ちを抱いていると」
梨子「周囲から隠さなければならない、特別な気持ちを」 ルビィ「なら、恋人になりたいっていうのは本気で」
梨子「うん、そうだね」
梨子「私は善子ちゃんが好き」
梨子「恋人になりたいって、ずっと思っている」
梨子「ずっと一緒に寄り添って生きていきたい」
梨子「手を繋いで、キスをして、エッチなことも色々して」
梨子「ルビィちゃんも思うでしょ、花丸ちゃんと同じようなことをしたいって」
ルビィ「……はい」 梨子「花丸ちゃんとは付き合ってるの」
コクリ
梨子「もしかして中学の時からとか?」
ルビィ「えっと、一応」
梨子「これからもずっと、花丸ちゃんと恋人で居続けるの?」
ルビィ「できる限り、そのつもりです」
梨子「周囲から止められても?」
ルビィ「はい」
ルビィ「だってルビィは花丸ちゃんを愛してるから」 梨子「そっか――――
梨子「ごめんね、ルビィちゃん」
ルビィ「えっ?」 ダイヤ「ルビィ……」
ルビィ「お、お姉ちゃん」
ダイヤ「まさか、本当に花丸さんと」
ルビィ「ち、違うの、今のは、その、冗談で――」
ダイヤ「言い訳は結構です」
ルビィ「い、言い訳じゃなくて、本当に」
梨子「諦めよう、ルビィちゃん」
梨子「もう、誤魔化せないよ」 ルビィ「梨子さん、なんで……」
梨子「ごめんね、ルビィちゃん」
梨子「でもね、もっと人を疑うことを覚えなきゃ駄目だよ」
梨子「まさかこんな簡単に、私がついた嘘に引っかかるなんて思わなかった」
ルビィ「嘘ってことは……」
梨子「うん、私が同性愛者のわけないよ」
梨子「あんな、気持ち悪くて周囲から蔑まれる存在なわけ」
梨子「私はあくまで、ルビィちゃんから本当のことを引き出すように頼まれただけなの」
ルビィ「そんな……」 ダイヤ「それぐらいでいいでしょう」
ルビィ「お姉ちゃん……」
ダイヤ「梨子さんを恨まない事です」
ダイヤ「貴女の為に、わざわざ汚れ役を買って出てくださったのですから」
ルビィ「で、でも」
ダイヤ「ありがとうございます、梨子さん」
梨子「……いえ」
ダイヤ「お礼には改めて伺いますので」 ダイヤ「さてルビィ、帰りますよ」
ルビィ「ま、待って、説明を――」
ダイヤ「不要です」
ダイヤ「それは十分、貴女の口から聴きましたから」
ルビィ「…………それは」
ダイヤ「安心しなさい、お母様たちにはこの事は話さないでおきます」
ダイヤ「貴女の大切なAqoursの活動も、可能な限り同様に続けられるはずです」
ダイヤ「ただし、一つだけ」
ダイヤ「今後、花丸さんとの接触は禁止します」 保守ありがとうございます、投稿遅れ気味ですみません
遅くとも来週中には完結を目指しています
あと、明日から地域表示が変わるかもですが、恐らく自分なのでよろしくお願いします わ、罠だ!これは罠だ!リコが私を陥れるために仕組んだ罠だ!
音ノ木坂から来たのにレズじゃないのはおかしいじゃないか、それが罠だという証拠! 諦めよう、ルビィちゃん
さっき君は「花丸ちゃんを愛してる」と言った
それは自白しているも同然だ ―津島家―
善子「リリー!」
梨子「いきなり呼び出しておいて、騒々しいわね」
善子「なんなのよ、その態度!」
梨子「ちょっと落ち着いて、善子ちゃん」
善子「なんで、なんであんなことしたのよ!?」
梨子「あんなこと?」
善子「ダイヤから聞いたわよ、ルビィを騙して関係を聞き出したって」
梨子「仕方ないでしょ、頼まれてたんだから」
善子「だからって、そんなだまし討ちみたいな――」 梨子「元はといえば、善子ちゃんの責任でしょ」
梨子「私と同じように探りを入れるよう頼まれたのに、何も聞き出せなかった」
善子「それは、そうかもだけど」
梨子「早めに聞き出していれば、少なくともこんな辛い形にはならなかったのに」
善子「……」
梨子「わかってはいたけどね、友達想いの善子ちゃんにはできないことぐらい」
善子「……当たり前でしょ、大切な二人を引き裂けるわけないじゃない」
梨子「それで適当な報告をしたんでしょ」
梨子「ダイヤさんにはバレバレだったよ」 善子「なんで、リリーは正直に話したの」
梨子「おかしいかな」
善子「おかしいわよ!」
梨子「でも、必要だと思ったからやったのよ」
梨子「私に言わせればおかしいのは善子ちゃんの方だわ」
善子「なんで、そんなこと言うの」
梨子「素直になっていいのよ」
梨子「嫌だったでしょ、近くに二人も同性愛者がいるのは」 善子「違う、そんなことない」
善子「例えどんな人間だとしても、二人と私は大好きな友達よ」
善子「二人を大切に想う気持ちは変わらないわ」
梨子「へぇ、立派ね」
梨子「でもね、私の方がよっぽど二人の事を考えているわ」
善子「……どうしてリリーは分かってくれないの」
善子「そんなに、同性愛者が嫌なの」
善子「いいじゃない、誰にもばれないように二人で付き合っても」 梨子「……ねえ、善子ちゃん」
梨子「私がピアノを弾けなくなった理由、知ってる?」
善子「なによ、いきなり関係のない話を」
善子「同情でも引こうっていうの?」
梨子「ううん、これは関係のある話だよ」
善子「関係のある、話?」
梨子「だってその理由はね、私が恋をしたから」
梨子「二人と同じ、許されない恋を」
梨子「その結果、最愛の人は消え去り、私は消えない傷を負った」 善子「ま、まさか」
梨子「ねえ、善子ちゃん」
善子「な、なによ」
梨子「さっき二人のことを庇ったあなたは、私の恋を受け入れてくれるの?」
善子「そ、それは」
梨子「善子ちゃん――」
善子「こ、こないで!」
ドンッ
. 善子「あっ……」
梨子「……ほらね、現実はこんなもの」
善子「ち、ちがっ、今のは」
梨子「いいよ、無理しなくても」
梨子「結局こうなるの。周囲は受け入れてくれず、愛する人は引き離される運命」
梨子「離れ離れになるなら、早い方が傷は浅い」
梨子「だから私はダイヤさんに協力して、二人を引き離したの」
梨子「取り返しがつかなくなる前に」 梨子「これでも、まだ同じことが言える?」
梨子「二人の仲を引き裂いた私に、文句を言える?」
梨子「言えないよね、善子ちゃんは」
善子「……ええ、そうね」
梨子「じゃあ、話はここまでかな」
善子「…………」
梨子「私は帰るわね」
梨子「今日話した内容は忘れて、明日からまた仲良くしてくれると嬉しいわ」
梨子「難しいかも、しれないけどね」 善子「…………」
善子「私が、間違っていたの?」
『……ほらね、現実はこんなもの』
善子「ごめんね、リリー」
善子「ごめんね、花丸、ルビィ……」 ―図書室―
花丸「誰も、いないな」
花丸(ひとりぼっちの図書室)
花丸(屋上から、Aqoursのみんなが練習している声が聞こえる)
花丸(でも、以前のような活気とは程遠い、どこか空々しい声)
花丸(それだけ自分の存在感があった――わけではないだろう)
花丸(あからさまに元気をなくした同級生、詳しいことを知らないからこそ不信感が拭えないであろう上級生)
花丸(動揺するなという方が無茶だろう) 花丸(ダイヤさんから出された、接触禁止令)
花丸(当然、どちらかがAqoursを辞めなければならなくなった)
花丸(同じ部活に所属している限り、それは不可能だから)
花丸(もちろん、それはマルの役目。彼女にその事を告げられた時、迷わず即答した)
花丸(ルビィちゃんから、一番大切なものを奪うわけにはいかないもの)
花丸(そして戻ってきた、一人きりの本の世界)
花丸(でも中学以前の、ルビィちゃんが居ない頃の世界)
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