鞠莉「もう……首に痕つけないでって言ったのに」
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ジッ…
ジッ…
ボォッ…
梨子「スウゥー…フゥー…」
鞠莉「タバコ、止めたんじゃなかったの」
梨子「ああ……。スゥー…フー…。セックスの後はね、なんだか口が寂しくなるんですよ」
鞠莉「ふぅん……」 曜「キスマーク?ふけばいいじゃん。…ああ、え?…あ、そっちのキスマークねふーんそっかそっか…え?」 ギシッ……
梨子「……まだシたりないんですか?」
鞠莉「口寂しいなら、タバコなんかよりマリーとキスしたらいいのに」
梨子「タバコの匂いがまとわりつくキスが好きだとは思いませんでした。とんだ物好きですね」
鞠莉「好きよ?タバコじゃない。……梨子のことが、ね」
梨子「……………………」
鞠莉「ねえ、いい加減私にしなさいよ。私なら……梨子の全部を受け入れてあげられる」
梨子「……灰皿、取ってくれますか」
鞠莉「……………………」コトン
ギュッ……
梨子「シャワー浴びてきます。どいてください」
鞠莉「……はいはい」スッ
ギシッ……
スタスタ……
鞠莉「……………………」 サァァァァァ……
梨子「……………………」
熱いお湯を頭から浴びながら、目の前の鏡に映る自分の姿を一瞥して、ため息をつく。
梨子「ひどい顔ね……」
苦笑混じりに漏れた言葉と、微かに香ってしまうタバコの匂い。
染み付いて取れず口を濯いでも残るそれは……そうなるまで、鞠莉さんを抱いた数と同じ……
私が最低だという、証…… チクッ……
梨子「つっ……」
小さく走る痛み。
見れば左の鎖骨辺りに、小さな引っ掻き傷があった。
梨子「……チッ」
誰に気を遣うわけでもなく、苦虫を噛み潰したように舌打ちしてから、粗野な手付きでお湯を止める。
非があるのは私だとわかっていながら、八つ当たりめいて……脱衣所のバスタオルを手に取り、身体も拭かずにベッドルームへと戻った。 鞠莉「あら、はやかったわね」
そう言う鞠莉さんは未だベッドの上で、ゴロゴロと横たわっていた。
ベッドの足元の方に頭を置いて、腕を枕に、下着もなにも付けず。
鞠莉「髪も身体もびしょ濡れじゃない。ちゃんと拭かなきゃ風邪をひいちゃうわ。それとも……大事なところが濡れているのをごまかすために、そのまま戻ってきたのかしら?♡」
イタズラな笑みを浮かべて腕を使って上半身を起こし、自分の豊満な胸を強調する。
鞠莉「シャワーを浴びながらまた発情しちゃった?♡いいよ?♡マリーはいつでもウェルカムだから♡」
私は鞠莉さんのそんな軽口を無視して、
梨子「これ」
胸の上の傷を指差した。
梨子「誰が傷を付けていいって言ったんですか」
鞠莉「梨子だって」スッ
チョン、と鞠莉さんは自分の首に指を当てる。
鞠莉「キスマーク、付けるじゃない。それも一週間は痕が残る真っ赤なやつを。セックスのときにマークを付けるのは、その人が自分のものっていうアピールでしょ?他の人に取られないように、ってね」
梨子「私は鞠莉さんのものじゃありません」
鞠莉「あら、じゃあ私はあなたのものなの?」
ネコのように妖艶な……金の眼差しが私を射る。
私は鞠莉さんのものじゃない。
鞠莉さんは……
一瞬澱みかけて、私は……
梨子「そうですよ」
なんて……甘い妄言をちらつかせて、
梨子「鞠莉さんは私だけのものです。困るんですよ、鞠莉さんがいないと。あなたは……」
鞠莉「……………………」
梨子「私にとって、都合のいいセフレですから」
泥を投げつけるよりも……痛烈な言葉を浴びせた。 鞠莉「そう」
観念めいた呟きの後、鞠莉さんはクスリと吹き出した。
鞠莉「いつもと変わらない答えね」クスッ
梨子「そうですね」
鞠莉さんはそれ以上なにも言わなかった。
いつも通りに。
鞠莉さんが怒らないこと、泣かないことを、私は知っていた。
理由もわかってる……。
わかっていながら……私は、その優しさに甘える。
鞠莉「んしょ……。そろそろ出ましょうか。身体、拭いてあげる。おいで」ニコッ
何年も見続けてきた、変わらない笑顔。
優しさに惹かれる……それはきっと、そうすることが楽だと思ってるからだ。
私のことを……本気で好きでいてくれるから……
私は鞠莉さんの優しさに甘える。
もとい、つけ込むんだ…… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています