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『湧き上がる悲鳴は、すぐに森にいたネコのもとへ届きました』

『駆け付けたネコが見たのは、信じられない光景でした』

『少女が全身から無数のトゲを生やして泣き崩れ、そして、それを囲う村人たち』

『悲しみを堪えきれずに大きな声で泣き続ける少女に、手を差し伸べる者は一人もいません』

『それどころか、まるで恐ろしいバケモノを見るような目を向け、遠巻きにひそひそと言葉を交わすだけ』

『旅先で聞いた、トゲ人間の噂が脳裏によぎります』

『そうか、だから少女は今までたった一人で生きていたのか』

『私が村を離れるつもりだと、誰かから聞いたのだ』

『全てに気付いたけれど、時すでに遅く』

『村人たちは、忘れ掛けていた棘人への恐怖を思い出してしまいました』