0061名無しで叶える物語(やわらか銀行)
2018/05/12(土) 00:47:29.25ID:W2PjMw5p服が雨を飲み込んでいく。
そのたび重くなっていくのは、身体か、心か。
雨に濡れてなお美しいままの黒髪。
誰の真似か、空は激しく泣き続けて。
呼応するように、世界は空の泣き声で全ての音を掻き消して。
それなのに。
彼女の頬を濡らすのが、雨ではないことも。
一色の音の中に、彼女の声が溶けていることも。
私にははっきりとわかった。
一人と、一人。
初めて見る彼女の泣き顔に、掛けられる言葉なんかあるはずもなくて。
近付くことすら、できなくて。
私にできたのは、ただ、想いーーそして、決めることだけ。
占占占