千歌「善子ちゃんは普通が嫌い?」
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善子「なによ急に」
千歌「普通が嫌いなら、私の事も嫌いなのかなって思って」
善子「……」
本当になんなの?
急に変な質問してきて……
善子「そうね……」
意図はわからないけど、帰り支度をしている手を休めないで答えるわ。
善子「普通は嫌いよ」
千歌「そう」
善子「でも、貴方の事は……」
千歌「……?」
善子「嫌いじゃないわよ」
千歌「そうなんだ」
善子「まぁ、好きでもないけどね」
千歌「ふぅん、そっか」
善子「……」
言ってから「あぁ、また余計な事を言っちゃったわ」と後悔。
きっと「千歌先輩の事が大好きです」とでも言えば良かったんだろうけど……
実際口から出たのは「貴方の事は好きでも嫌いでもない」という、さっき休憩中に食べたアイスみたいに冷えた冷たい言葉。
そこには甘さなんて物はちっともなくて、
こんなキツい言葉ばかりが出てくる、自分の口が本当に嫌で仕方なくなっちゃう。 善子「はぁ……」
だから年上と話すのって苦手なのよ。
いつもこういう喋り方しちゃうから敬語とか相手を敬ったりとかが出来なくて、相手を傷つけたり嫌われたりする。
どうしたらいいのかくらいわかってるのよ?
こうしてあげたら喜んでくれるとか、こうしたら可愛い後輩だと思われるとかね。
頭ではわかってるの、でも実際に行動に起こすのは何だか恥ずかしいし……
それに凄いダサいような気がして結局出来ないのよね。
まぁ、Aqoursの先輩達は優しい人ばかりだったから、こんな振舞いでも問題ないみたいだけど。
これが普通の先輩だったらしばきまわされてるでしょうね今頃。 千歌「千歌の事、好きでも嫌いでもないんだね」
善子「そうよ」
改めて確認するように聞いてくるから、つい条件反射のように肯定してしまう。
だからそれじゃダメなんだってば。
こんな言動繰り返してたらいつか愛想尽かされちゃうわよ私。 千歌「あはは、そっか」
でも、特に気にした様子もなく千歌も帰り支度を始めたの。
善子「……っ」
それに私は少しだけ、面白くない感情を抱く。
だってそれって千歌が私にたいしてあまり関心がないって事じゃない。
もしあるなら「なんで?」とか聞いてくるはずだし、落ち込んだり怒ったりするはずでしょ?
なのに……
千歌「〜♪」ガサゴソ
なにも感じてないみたいに呑気に鼻歌なんか歌いながら帰り支度しちゃってる。
いえ、みたいじゃなくて本当に何も感じてないんでしょうね。
尽かす愛想もないくらい私には無関心。
きっと私なんかにどう思われていようが構わないのよ、千歌は…… 善子「……ふん」
それがとても面白くない……
自分は彼女にたいして無関心のような言動や素振りをするくせに、いざ自分がされるとなるとこんな風に寂しく感じたり苛立ったりしてしまう。
なんでかしら?
……それはきっと、彼女にもっと好かれたいって思ってるからよ。
愛想振り向かないのに好いて欲しいなんてワガママよね。
でも千歌の特別になりたいの……
それはね、私にとって千歌は特別な存在だからなのよ。
だって彼女は私がこのままで良いって、変わらないで良いって言ってくれた唯一の人だから。
私ね、あの時初めて自分が受け入れてくれたような気がしたの。
Aqoursに入ってからはメンバーやクラスメイトもこんな私を受け入れてくれたけどね。
でも、やっぱり初めては千歌だから特別視してしまう。 善子「……」チラッ
千歌「ふんふふーん♪」ガサゴソ
それだけ衝撃的だったからかしら。
こんなんじゃダメだって思い続けてきて……
悪いことだって思い続けてきたのに、それで良いんだよって彼女に言われたことが凄く衝撃的で……
同時に救われた気にもなったの。
だからこのままでいようって思ったのよ、千歌のあの言葉で。
でも、冷静に考えれば私にとっては特別な言葉でも、彼女にとっては何て事ない一言だったのよね。
ただ私を勧誘するためだけの言葉で、そこに深い意味なんてない。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています