0010名無しで叶える物語(茸)
2018/04/17(火) 14:59:19.49ID:3HJF2s6eピアノの音が耳に飛び込んできた私は、もしかしてと思って導かれるように音楽室に向かい、そして扉を開けた。
「あ、曜ちゃん」
彼女はドアの音に気付いてこちらを向くと、微笑みを浮かべながらそう言った。
曜「いい音だったからさ、梨子ちゃんかなと思って」
梨子「嬉しいこと言ってくれるわね」
曜「嘘つくの下手だからさ、私」
素直に思ったことは素直に言う。
彼女の前では私は素になれる。
仮面を外した本当の渡辺曜をさらけ出せる。
そしてそれは、梨子ちゃんにも同じことが言えた。
梨子「ここのピアノ、あんまり弾いてて楽しくないのよね」
曜「楽しくない?いい音だったじゃん」
梨子「いい音なんてどんなに古いピアノでも出せるの。ピアノのせいにするなんて力量不足よ」
淡々と言ってのける。音楽室の壁に反響する。