【SS】 リリーのアトリエ
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曜「しっかりして、どうしたの!?」
梨子「な……あ、あれ……曜……ちゃ……?」
曜「浄化まだ終わってないよね、何か問題が?」
梨子「浄化………あ、私……っ!」バッ
突然接触してきた犯人に対して意識を向けてしまった梨子ちゃん
手に持つブースターの出力は不安定になり、小さな振動を繰り返しています
梨子「しまった、出力が……んん!」グッ キュィィ……ブブブ……
曜「大丈夫なの?」
梨子「魔力の流れが……くっ、流れに介入できない……んんっ!」ブブブブブ……
曜「がんばって!」
ブブブ……ガッ ガガガガ!!
梨子「止まって、んんん〜!!」グググ…!
曜「梨子ちゃん! ブースターの先端が!!」
梨子「えっ………大変! 綺麗な筋にならないから先端で行き場を失ってる!!」ガガガガ!!
暴れるブースターを抑え込もうと送り込んだ魔力がブースター内で膨張します
曜「やばっ、梨子ちゃんゴメン!」バッ
梨子「え…きゃあ!!」ドサッ
ガガガガ……! ガンッ! バキィィィイン………
膨張して膨れ上がった魔力が破裂すると同時に、ブースターの先端は折れてしまいました
梨子「あ………………」
曜「大丈夫、梨子ちゃん!」
曜ちゃんは本能的に危険を察知し、梨子ちゃんを地面に伏せさせると爆発から梨子ちゃんを庇いました
梨子「ブ、ブースターは!?……あ」バッ
曜「……………」
魔力を放出するための水晶球を取りつけた部分がポッキリと折れて転がっています
それを見た梨子ちゃんはここでようやく、浄化に失敗したことを理解しました
梨子「………………」
曜「怪我がなくて良かったよ……」
梨子「良くない………良くないよ曜ちゃん……」グッ
曜「……………」
梨子「失敗しちゃった……私が……ちゃんとやれなかったから……」
曜「……………」
梨子ちゃんは俯き、力なく項垂れる
浄化が進んでいた湖はその力を失い、みるみるその色を毒素に浸食されていきます
梨子「マリーさんやエリー先輩が……私とならできるって言ってくれたのに……ぅぅ」
曜「よくわかんないけど、すぐに再開すれば大丈夫なんじゃ……」
梨子「無理よ……ただ浄化薬を投下すればいいものじゃないの……ブースターで効力を上げて放出しないと……でも…」
傍に転がっているブースターの破片を見ながら、梨子ちゃんはこの先の惨状を想像してしまいます
曜「もう湖は治せないの?」
梨子「………今日治せなかったら、またものすごく準備に時間がかかっちゃう……」
曜「どれくらい?」
梨子「年内には無理……」
曜「え、そんなに!?」
梨子「エリー先輩達が気軽に扱っていたから解り難いけど、これだけのエリキシル剤を用意するだけでもとても時間がかかるの」
用意するのはそれだけではありません。エリキシル剤の材料である素材も高価なものや制作に時間が必要なもの
それだけではなく超純水も同じだけ必要。持続性栄養剤などの回復アイテムだって簡単には作れません
そしてそれらを用意する間にヘーベル湖は毒素によりその水質を完全に変容させ、そのうち毒沼になります
それは湖だけの問題では終わらず、毒が大地を蝕み、そこに生きる生物にも影響を与える
今浄化できないという事はそれだけ多くの問題にも繋がる。それがわかる梨子ちゃんはくやしくてたまりません
曜「……………」
梨子「ごめんなさい……みんなが協力してくれたのに……」
曜「どうしてあやまるの……そんなの私だって…」
梨子「でも……これは私のミスで……せっかく先輩達が期待してくれたのに……」
曜「私はあきらめたくないかな」
梨子「曜ちゃん……でも……」
曜「とりあえず次にルビィちゃんが来た時、一緒に鞠莉ちゃんのところに行こう」
梨子「……………」
曜「ブースターも持ってって、もしかしたら治るかもしれないし、他の方法があるかもしれない」
梨子「曜ちゃん…それは……」
曜「一回失敗したからってもう終わりだなんて、私は嫌だよ」
梨子「……………」
曜「梨子ちゃんは諦めちゃうの?」
梨子「そんなの……私だって嫌………」
曜「だったら行動しよう」
梨子「………でも他に方法なんて………」
ここまで時間をかけて浄化していた湖もまた元の毒素を含む水色に戻ってしまいます
だけど諦めたくない気持ちは本当です。自分のミスですべてを終わらせるのなんてくやしいのです
梨子「………………」
だったら足掻くしかない。考えるしかない。くやしさに押しつぶされて泣き崩れるのはそれらをやってからです
梨子「方法………浄化する方法………」
曜「ブースターと先っちょの壊れたやつ、こっちに集めておくね」サッ
梨子「壊れた…………部品……」
曜「綺麗に折れちゃってるなぁ」ゴソッ
ブースターと壊れた先端、放出部分を見て曜ちゃんが呟く
それを聞いた梨子ちゃんの頭に、一つの……たった一つの光が差します
梨子「曜ちゃん、先端部分ちょっと見せて!」
曜「ん、これ?」スッ
梨子「……………っこれ……!」キラン
――妄想の錬金術師 桜内梨子
アカデミーの友達につけられた梨子ちゃんの異名
思い描く妄想だけは論理的で、すばらしいもの
しかし現実的であるかは別問題で、いつも妄想の産物と言われてきました
だけど今、理論上は可能。可能であれば…………なにがなんでもやるしかありません
梨子「曜ちゃん………お願いがあるの」
曜「お、何かいい方法が?」
梨子「方法はある。だけどかなりムチャクチャな方法」
曜「それで浄化はできるの?」
梨子「できる」
曜「じゃあ何でもやるよ」
梨子「まだ説明してないけど……」
曜「私がやるべきことだけ言って。後は梨子ちゃんにまかせるから」
梨子「じゃあもう何を言ってもやってもらうからね。すぐに始めないといけないから」サッ
曜「なんでもこ〜い!」
梨子ちゃんは妄想します。そんなことが出来たらなーという、そんなことの部分を曜ちゃんを使って実現する
そこには大きな危険だってあります。突然の事態に対応できないかもしれない
だけど今この場で考えられる可能性で一番確率の高い方法を迷わず選びました
すべてはこの浄化作戦を成功させるため
梨子「ん…………大丈夫、絶対これでやれるはず」
梨子ちゃんはまず自分の荷物から絶賛借りパク中の武器、ルナスタッフを取り出します
梨子「曜ちゃん、この杖の先端部分だけうまく折って欲しいの」
曜「いいけど、これ梨子ちゃんの武器じゃ?」
梨子「武器というよりも魔力増強を目的としたもので、構造はマテリアブースターとよく似ているの」
曜「あ、もしかして折れた部分の代用品?」
梨子「の、ようなものかな。ブースター側のホース部分は壊れてないから、スタッフを間に組み込んで補強するの」
曜「今ここでできるんだね、じゃあ…」スッ
梨子「けっこう丈夫なスタッフだけど、あまり力をこめすぎないよう慎重に……」 ポキッ
曜「はい、とれたよ」
梨子「そんな気がした。ありがとう」
ブースターの放出部分とホース部分を繋げている部分だけが壊れていたので、梨子ちゃんはそれを繋ぐ目的でスタッフを組み込む
さすがは鞠莉ちゃん特性なのか、確かに丈夫で他の部分……特に放出部分の水晶球まわりは無傷でした
梨子「これで稼働はできるはず……」カチッ ブブブ……
曜「おっすごい、治った?」
梨子「ううんダメ。魔力の循環がやっぱりスムーズじゃない」
曜「あれ、じゃあ……」
梨子「でもいいの、今から追いつくには多少出力オーバー気味でないとダメだから」
曜「ん? というと、梨子ちゃんが強めに放出し続けるってこと?」
梨子「ここから追いつくだけの出力は無理。そんな事したら私の体が持たないわ」
今も他の二か所から浄化の力場は広がっています
力場はそれぞれが同程度の速度で広がり、最後に重なった部分、中央部分で干渉し合ったところで力が散らばって完了します
その瞬間、他に一か所でも毒素が残って居ると、そこからまた徐々に毒は広がる
だから最後に完全浄化をする必要があるのです
梨子「出力は少しだけ強めにして、今から先輩達と同程度の浄化範囲を得る方法……これを」サッ
曜「ん、これは……持続性栄養剤?」
梨子「曜ちゃん、それ飲んで私を湖のとあるポイントまで運んで」
曜「それって……私に梨子ちゃんを担いで泳いで行けって事?」
梨子「私泳げないもん」
曜「えっと、毒の湖なんだよね?」
梨子「妖精さんみたいにデリケートなら触れるだけでも危険だけど、曜ちゃんなら平気」
曜「ぇぇ……」
たしかにムチャクチャでした
梨子「曜ちゃんや松浦さんのように強靭な肉体をしてる人なら少しの間触れていても耐えれる」グッ
曜「すごい自信だね。まぁでも丈夫な体ってのはわかるけど」
梨子「でも絶対に飲んじゃダメだよ、体内臓器まで強靭な人なんていないから」
曜「ん………でもどうして湖に入るの?」
梨子「浄化の放出が360度流れるようにするためだよ」
梨子ちゃん達が放出している力はその場から全方位に広がります
実際梨子ちゃん浄化作業中も、その力は湖に広がると同時に足元の土にも広がっています
0から50までの距離を歩くとして、全員が同時に50となるポイントに達するための方法
梨子ちゃんは25の地点から0方面と50方面、両方同時に浄化をはじめればいけると考えました
曜「つまり梨子ちゃんがブースターを担いで、私はその梨子ちゃんを担いで一滴も水を飲まないように泳いでいくと」
梨子「そう」
曜「しかも浄化完了までずっと泳いでいないといけない……」
梨子「毒に関しては安心して。浄化が始まれば私達のところから綺麗になっていくから」
曜「そのためのドーピングをするわけだね……でも丁度中間ポイントにどうやって行くの?」
梨子「そこは進んでる間に計算するから、曜ちゃんは指示する方角に進んで」
曜「……………」
正直細かい疑問はありましたが、それで行けるという錬金術士の言葉を曜ちゃんは信じます
曜「わかった、がんばる!」
梨子「じゃあ他に必要なのもリュックにいれて私が背負っていくから、曜ちゃんはひたすら泳いでてね」
曜「ヨーソロー!」ビシッ
梨子「あとルビィちゃんへの書置きもここに……っと」ヨーソロー?
いきなりいなくなると当然問題が起きたと考えられるので、ルビィちゃんには経緯を簡単にまとめて知らせる
一つ残っている問題点もこれでどうにかしてくれるだろうという期待を込めてある一文の付け加えます
梨子「よしじゃあすぐに行こう……ってきゃ〜!」
曜「そんなに驚かなくても……」ヌギヌギ…
行くと決めた曜ちゃんは着ている服を全部脱ぎ棄てます
泳いでいくのだから当然ではあるのですが、突然だった梨子ちゃんには赤面ものです
梨子「せ、せめて下着くらい……」
曜「それも邪魔になるし、いいよ。見られて困る相手もいないし」
梨子「うぅ……ここでああだこうだ言ってる時間も惜しいし、仕方ないかな」
こうして梨子ちゃんと曜ちゃん(全裸)は浄化作戦を成功させるため、毒に染まるヘーベル湖に入っていくのでした
関西弁の黒幕……ただの悪人ではやさそうやん
梨子ちゃんなかなか無茶を言うけど
出会ってからの短い期間でそれだけ曜ちゃんを信頼してるって事だよね 一週間近く野外で二人きりだったし、そらもーマブよマブ ヨーソローなら大丈夫なはずだ!
梨子ちゃんをしっかり支えてあげてほしい ―――――――
王国歴874年 6の月 ヌマヅタウンを襲った大事件
原因不明のモンスターの襲撃により、町は大きな被害を受けました
町の周辺設備の被害は言うまでもなく、農作物も荒らされました
建物への被害は自警団の防衛により損害は比較的軽微です
しかし町民への被害は多く、怪我人多数……数名ですが亡くなった方もいます
20年前と同様今回の事件も原因不明として発表され、国に報告されました
後日国から派遣された調査団が来る予定です
不明な事だらけの今回の事件でしたが、それでもみんなが知っている事もあります
それは、町の危機を救ったのが三人の錬金術士だという事です
-梨子ちゃんの部屋
モゾモゾ…… ゴソッ…
梨子「……………ん」
モゾモゾ…… ジュウリョウカタデス? ダキョウ ……
梨子「…………ぁ」パチッ
善子「ああ、やっと起きたのね」
梨子「……………」
善子「大丈夫? どこか痛むところはある?」
梨子「………いえ、でも………」
ぱな「おはようです?」ズシッ
りん「しゅくふく」ズシッ
まき「…………」ムスッ ノシッ
梨子「重いです………」
善子「でしょうね。ほら、あんた達は水でも汲んできなさい」サッサッ
ぱな「だいしきゅうです?」
りん「しょうち」
まき「…………」ムスッ
梨子「………………」
善子「意識もしっかりしているようだし、取り敢えずは大丈夫ね」
梨子「えっと………ここは……私の部屋……ですね」
善子「初めて梨子に会ったときは私の部屋で目が覚めていたわね」
梨子「ああ……その節はお世話になりました」
善子「いいわよ別に。それに言ったでしょ、私は錬金術士の味方だって」
梨子「……………」
善子「起きれるようだったら何か食べたほうがいいわ、用意してあげる」
梨子「ん……ありがとうござい……っ!」ムクッ
梨子「って、な、なな、なん…!?」
梨子ちゃんはまた全裸でした
善子「服がボロボロだったから」サッ
梨子「着替えありますよね?」バッ
善子「ふふ、先に目を覚ました曜さんのイタズラよ」
梨子「曜ちゃん!? も〜……」ゴソゴソ
善子「曜さんも最初は全裸のままずっと眠っていたからね、それを知ってちょっとくやしいって」
梨子「むぅ………確かに全裸になるような事をお願いしたのは私ですけど……」
善子ちゃんの用意した服に着替え、そっと窓の外を眺める梨子ちゃん
そこに見える光景にどこか閉じていた思考が一気に回転します
梨子「浄化作戦……うまくいったんですね……」
そこに見えるのは壊れた家の外壁を治す人の姿、畑の手入れをする人の姿
それをお手伝いする子供達の元気な姿。梨子ちゃんはそれだけで気持ちが晴れやかになるのを感じます
善子「覚えてないの?」
梨子「途中からほとんど無意識でやってたから、そのまま反動で……」
記憶の中薄っすらと覚えてるのは曜ちゃんの声
がんばれとか、あと少し〜とか、そういう励ましの言葉の中ひたすら魔力を放出し続けていた
途中怪鳥アードラが襲い掛かってきたような気もします
ルビィちゃんが果南ちゃんに知らせてくれたのか、遠くから何かが飛んできてそれらを撃ち落としてくれていた気もします
それほどまでに意識は浄化にのみ集中していて、自分を肩車したままずっと泳いでくれた曜ちゃんにも本当に感謝です
梨子「ふぅ………」
それでも今はやり遂げられた事を素直に喜びます
外で遊ぶ子供達の姿、井戸水を使い洗濯するおばあちゃんの姿
何かを必死に守りたいとか誰かのためとか、そんな大層な理由はありません
ただ嫌な事は嫌だと全力で抗った結果です
それでも今のこの光景に、心が穏やかになるのは本当の気持ちでした
梨子「よかった……」
善子「あ、そうだ。花丸のやつが梨子が起きたら酒場に来てって言ってたわ」
梨子「花丸ちゃん?」
善子「みんなそれぞれ事後処理に忙しいからね、あいつも昨日までお見舞いにきてたけど今日は午前中は動けないって」
梨子「……………」
善子「ご飯食べて落ち着いたら行ってあげるといいわ」
梨子「あの………」
善子「ん?」
梨子「私、どれくらい寝ていたんですか?」
善子「今日でちょうど一月よ」
梨子「…………へ?」
善子「だから一月、一か月。ちなみに全裸なのは数日前から」
梨子「いっ…!?」
サラっとでた事実に衝撃を受ける梨子ちゃん
まず最初に善子ちゃんから受けた仕事の納品ができていない分、期日の心配をします
善子「あの状況でそんな事言わないわよ……まぁそのうち頼むわ」
梨子「ほっ……お仕事を始めて二回目にして経歴に穴があくところでした」
善子「どこを気にしてるのよ」
梨子「お仕事する上で信頼、評判は大事だよ。善子ちゃん」
善子「そりゃそうだけど……って、善子ちゃん?」
梨子「え、だってヨハネは錬金術士の頃の名前だって言うから」
善子「んん、そ、そうなんだけど、別に無理して名前で呼ばなくたっていいのよ?」
梨子「んー私もみんなみたいに呼びたいなって、善子ちゃん」
善子「だ、だからヨハネよー!!」
梨子「可愛いと思うけど善子ちゃん。後私より年下だったのねー」
善子「え、そうなの?」
梨子「私善子ちゃんの一個上みたいだよ」
善子「ぬ、そうだったのね……り、梨子さん……」
梨子「いいよ今までの呼び方で。実際お世話になっているし、錬金術士としての善子ちゃんも尊敬してるから」
善子「ぐ……そういうならまぁ……」
梨子「また錬金術はじめるんだよね?」
善子「そのうちね……」
梨子「いつでも言ってね、そうしたら私はどこか違うところに……」
善子「何言ってんのよ、ここはあなたの工房よ」
梨子「でもここは元々善子ちゃんが…」
善子「今はあなたの工房よ。名実ともにね」
梨子「どういうことですか?」
善子「後でわかるかもね」
梨子「んー?」
ぱなちゃん達の用意してくれたご飯を食べ、梨子ちゃんは町へ出ます
ひさしぶりという感覚は、一月の間眠っていた事を痛感させます
季節の移り変わりなのか、肌を指す風が気持ちいい
しかしそれ以上に変化を感じたのが……
「あ、梨子ちゃんだ! もう体は大丈夫なの?」
「梨子ちゃん、うちの店にいい野菜が入ってるよ、後で寄っていきな!」
「梨子ちゃんや…今度うちの孫の嫁に……」
「梨子ちゃん〜!」
「りこちゃん」
リコチャン…
梨子「な、なんなのー!?」
いつもはここまで声をかけられる事なんてありませんでした
ところが今日にいたってはすれ違う町の人、おじいちゃんおばあちゃんだけでなく、若い人達も声をかけてくれます
-酒場クニッキー
花丸「あはは、梨子ちゃんとても人気ものずらね〜」
梨子「正直初めて会う人もいて、どう対応していいのかわからないよぅ」
花丸「それだけ梨子ちゃんに感謝してるんだよ、みんな」
梨子「私だけで出来たわけじゃないのに……」
花丸「勿論町のためにみんながやれることをがんばったよ。でも、それでもっていうのはあるずら」
梨子「これでお仕事の依頼が増えてくれるならいいんだけど……」
花丸「梨子ちゃんがアトリエを本格的に再開すればもう大忙しずら〜」
梨子(……アトリエ?)
花丸「それにしても一か月って、長い事寝てたずらね」
梨子「え、私だけなの?」
花丸「絵里ちゃんと鞠莉ちゃんは二日くらいで動けるようになってたよ」
梨子「…………むぅ」
それは根底にある錬金術士としてのレベルの差だというのを理解した梨子ちゃん
同じ立場、同じ役割をこなしたはずですがこの結果に少しだけくやしく感じるものもあります
花丸「まぁあの二人は別格だからね」
梨子「でも、いつか私も……」
花丸「梨子ちゃんだって努力を続ければなれるずら」
梨子「うん。ありがとう」
花丸「っと、それじゃそろそろ行こうか」
梨子「そういえば用事があって呼び出したって…?」
花丸「ちょっとついてきて〜」サッ
花丸ちゃんは梨子ちゃんを酒場のカウンターの中へと招きます
そのままお店の厨房横を通り抜け、裏口に案内します
梨子「へぇ、ここってこうなってるのね」
花丸「これでも町で一番大きい酒場の厨房だからね」
梨子「いいなぁ大きなキッチン。工房のは小さくて…」
花丸「そのうちリフォームするずら?」
梨子「なるほど、リフォームという手もあるのね……」
花丸「ほら、こっちずら」ガチャ
梨子「あ、まだ奥へ行くのね」
さらに奥へ進み、細い渡り廊下を渡り隣の建物へ移動
そこから階段を上がり二階へ……陽の光も満足に入らない薄暗い廊下を進みます
場所は酒場から隣の旅館へと移動しています
建物の構造上、花丸ちゃんがどこに連れて行こうとしているのはわかりました
花丸「ここずら」
梨子「…………」
それは廊下の一番奥の扉……そこに待つ……いえ、眠っている女の子がいる部屋
花丸「ここに、高海千歌ちゃんがいるずら」ガチャ
梨子「チカ……ちゃん……」
話には聞いていた女の子。今回の事件においてとても重要な位置づけの子
その女の子がすぐそこにいる。不思議な緊張感とともに梨子ちゃんは部屋に入りました
そしてそこにいたのが……
曜「あ、梨子ちゃ〜ん! 目が覚めたんだね!」
梨子「曜ちゃん? あれっ?」
花丸「ああ、曜ちゃんもきてたずらね」
出迎えてくれたのは曜ちゃんでした
花丸「曜ちゃんはよく千歌ちゃんの様子を見にここに来てるんだよ」
梨子「そうなのね…」
曜「梨子ちゃんも会いに来てくれたんだね……」
そういって曜ちゃんが脇へ移動する
その奥……窓から差し込む光の中、彼女は眠っていました
梨子「この子が………」
ベッドで静かに眠る少女、それが高海千歌ちゃんでした
千歌「………………」スゥ…
曜「穏やかでしょ。ほんとにただ眠ってるだけみたい」
梨子「……………うん」
花丸「でも、ずっと起きないまま。呪いによるものだって……」
梨子「……………」
千歌ちゃんは何者かにかけられた呪いでずっと目を覚まさない状態
鞠莉ちゃんがすぐに解除できないようなレベルの呪いをどうしてこの子が受ける事になったのかなと、梨子ちゃんは考えます
梨子「チカちゃんてこの旅館の子だよね。一体何があったの?」
曜「詳しい事はわからないけど、ある日突然千歌ちゃんが変な事いいだして…」
花丸「穂乃果さんを出せって……その……」
梨子「殺してやるって?」
花丸「ん………うん……でも千歌ちゃんがそんな事言うなんて絶対におかしい……」
曜「穂乃果さんがその少し前から行方不明になっていて、それに関係しているのかなって……」
花丸「そのうち手がつけられないくらいに暴れるようにもなって……」
梨子「…………ふむ……あっ」
ここで梨子ちゃんはとても大事な事を思い出しました
梨子「そういえば犯人も穂乃果さんを探しているようだったけど…」
花丸「え………?」
曜「犯人?」
梨子「浄化作戦の時にね、私の前に現れたの。私それに気を取られて最初失敗しちゃったから」
曜「き、聞いてないよ!?」
梨子「だって状況的にそれどころじゃなかったから」
花丸「で、そいつは誰ずら!?」
梨子「姿は見えないけど、私に話しかけてきたの。錬金術でそういう事が可能な薬があるの」
曜「錬金術………?」
花丸「え、犯人は錬金術士ずらか!?」
梨子「その薬を本人が作ったのかどうかは知らないけど、犯人側にいるのは確実ね」
曜「犯人が錬金術士の可能性があるっていうの、他のみんなは知らないのかな?」
花丸「だって……知っていたら………」
梨子「もしかしてだけど、エリー先輩やマリーさんは知っているかも」
曜「え、そうなの?」
梨子「推測だけどね、モンスターをたくさん操る能力はあるけど人はたくさん操れないみたいだし」
花丸「そういえば黒澤の伝令は操られていた可能性があるってダイヤさんが……あれって錬金術で?」
梨子(錬金術………トロイヤの丸薬かな? 確か短時間だけど人の意識を……)
曜「………………」
花丸「と、とにかくこれで犯人の明確な目的がハッキリしたずらね!」
梨子「人探し……っていうよりかは隔離されているのかもね、穂乃果さん」
曜「…………どうして?」
梨子「犯人が言ってたの、かならず取り返すって。それであの方法を取るのなら、生半可な場所にはいないって事でしょ?」
花丸「取り返す……」
曜「………………まさか」ボソッ
梨子「……………」
明確になった事とさらに深まる謎の部分
梨子ちゃんはそのあたりの人間関係に詳しくないので判断材料がありません
けれど、一つだけあるとすれば……
梨子「曜ちゃん、団長さんって呼ばれてる人って自警団の団長さん?」
曜「っ!?」ドキッ
花丸「団長さんがどうかしたずらか?」
梨子「穂乃果さんのいる場所、もしくはそれに関わる何かしらの情報を知ってるっぽいから」
花丸「え、どうして?」
梨子「犯人がね、かならず取り返す、団長にもそう言えって……」
曜「団長……………」
花丸「曜ちゃん、団長さんって……あの人だよね?」
梨子(この辺りも顔見知りなのかな?)
曜「私、ちょっと行ってくるっ」バッ
花丸「曜ちゃん! 明日の約束忘れないでね!」
部屋を飛び出す曜ちゃんに慌てて声をかける花丸ちゃん
その背中を見送ってからあらためて眠る千歌ちゃんに視線を落とす
花丸「千歌ちゃん………ホントに何があったずらか……」
梨子「……………」
-酒場クニッキー
梨子「え、明日?」
花丸「うん。ここでちょっとした発表をするので、来てほしいずら」
梨子「花丸ちゃんがなにかするのね」
花丸「それは明日来てのお楽しみずら」
梨子「私も花丸ちゃんに用事あるし、明日なら大丈夫よ」
花丸「ん、マルに用事? 今じゃダメずらか?」
梨子「報酬の件で、津島工具店に一緒に行きましょっ」ニコニコ
花丸「あ、そういえばまだだったずらね。今日はもう遅いし…わかったずら」
梨子「もう頂くものは決めてあるからすぐにすむよ」
花丸「ま、新しいアトリエにはなにかと必要だしね、協力させてもらうずらよ」
梨子(またアトリエ……ま、どっちでもいいけど)
花丸「明日は絵里ちゃんや鞠莉ちゃんも来るからその時にまた今日の話をしよう」
梨子「エリー先輩達が!? わかった!」
花丸「ちょっとテンションかわりすぎじゃないずら?」
梨子「だってあれから会えてないし、いろいろお世話になったお礼もはやくしたいから」
花丸「それらも明日にまとめてするずらよ。お昼くらいに来てくれればいいから」
梨子「わかった、じゃあ明日ね」
花丸「がんばってね、ヌマヅの新しい錬金術士さん」クスッ
梨子「?」
別れ際によくわからない応援をされる梨子ちゃん
自分はとうにここでがんばっていると思っていたけど、何か意味はあるのだろうかと考えます
しかしその言葉の意味はすぐに判明するのでした
善子「お、ようやく帰って来たわね」
梨子「善子ちゃん、どうしたの工房の前で……って、え……?」
工房兼自宅に戻ると玄関前に善子ちゃんがいました
ぱなちゃん達もなぜか並んで待っているようでした
ぱな「ごしゅじんのきかんです?」
りん「てきかく」
まき「…………」ムスッ
どうしてそこにみんながいるのかと考える前に梨子ちゃんの目に飛び込んでくるものがあります
梨子「…………これ……………え……」
善子「今日でかける時気づかなかったみたいだったから、どうせなら綺麗にしておこうって、この子達が言うもんで」
梨子「え、じゃあこれ………」
善子「梨子が寝てる間に作っといたのよ」
それを見て梨子ちゃんはようやく花丸ちゃんや善子ちゃんの言葉の意味を知ります
梨子「………………」ポロッ
ぱな「ぴぃ!?」
善子「大丈夫、喜んでもらえたみたいよ、よかったわね」
自分は試験のためにやってきたよそ者。心のどこかにそんな気持ちがあったかもしれません
町のためにがんばる人達の中であっても、自分は自分に出来る事をただがんばるだけ
梨子「……っ……ぅぅ……」ポロポロ…
まき「…………」ムスッ スッ
しかし今日出会った町の人達の反応から、変化はありました
梨子「まきちゃ………ありがとっ……ズズ」
工房の玄関扉の上に、新しく取り付けられた看板があります
それはオトノキからやってきた梨子ちゃんがヌマヅの仲間入りをしたという確かな証としてありました
善子「名前は私が考えてあげたわ、感謝しなさい!」ビシッ
梨子「善子ちゃん……………ありがとぅ……」
少し装飾が悪魔ちっくなデザインではありましたが、看板にはこう書かれていました
ラノベなら一巻終了って感じかな
いつも楽しみにしてますよ 乙です
ほのぼのとしながらも色々きつそうな過去とか謎があって読んでて楽しいです ピンときてなかった梨子ちゃんが看板見て思わず涙こぼすの・・・良いなぁ
まだまだ謎は残ってるし続きも楽しみおつおつ
―――梨子ちゃんが新しい看板の前で妖精さん達と記念撮影をしている頃…‥
タッタッタ… ガチャ
曜「失礼しますー、団長!」タタタ…
「あら渡辺さん、今日はこっちにも仕事が?」
曜「ううん、ないけどちょっと団長に用事が……」
「団長ならしばらく出張中よ」
曜「え、どこに行ったの?」
「この間のモンスター襲撃事件の調査報告書を国に提出しにいくとかで、一週間は戻らないよ」
曜「調査団の人このあいだ来たばっかりじゃん。それに提出だけなら団長がいかなくても…」
「防衛戦力の補強案も一緒に提案するからって言ってたかな」
曜「むぅ………」
「団長に急ぎの用事だったの?」
曜「うん……仕方ないし、出直すよ」
「伝言預かろうか?」
曜「大丈夫、また顔だしまーす」タタッ
「あ、そうだ! ねえねえ曜ちゃんてさ、桜内さんと親しいんだって?」
曜「梨子ちゃん? 一緒に仕事はしたけど、個人的付き合いはまだそんなに…」
「どんな人なの? 桜内さん」
曜「どんなって……アカデミーの卒業試験のためにここに来てて…」
「もうっそういうのは知ってるわよ! どういう生活してるのかとか、恋人はいるのかとかよ〜」
曜「い、いやそこまではさすがに……」
「そっかぁ…でも、いいわよねー桜内さん」
曜「いいというのはどういう意味で?」
「すっごい可愛くない? いい意味でヌマヅっぽくない美少女って感じで」
曜(よくわからない……)
「それにこっちに来たばかりの頃、町のあちこちで迷子になってたじゃない」
曜「毎日いろんなところで泣いてたのは聞いた事あるね」
「もうさ、可愛いよね〜」
曜「そこなんだ」
「いいなあ曜ちゃん。私もお近づきになりたい」
曜「工房やってるんだし、何か依頼をすればいいんじゃないですか?」
「桜内さんって何系の錬金術やってるのかな?」
曜「んーそういえば何が得意とかは聞いてないなー」
「マリーちゃんが薬品関係、特に美容関係の類が得意だったよね」
曜「だね。絵里ちゃんは貴金属とか、アクセサリーが得意だって言ってた」
「桜内さんはあんな美少女なんだから、可愛い服とか作ってくれそうじゃない?」
曜「それは錬金術関係ないような」
-夜 梨子ちゃんの部屋
梨子「まきちゃ〜ん、寝るよ〜」パチッ
まき「…………」ムスッ トテトテ ボフッ
梨子ちゃんは毎日日替わりで妖精さん達と一緒に寝ています
最初はみんなで寝ようとしましたがさすがに狭く、気が付くと上に乗っかられるのでやめました
今日はまきちゃんの番です
梨子「明日はお昼から花丸ちゃんのとこに行って、それから工具店にも行って……」ソワソワ
まき「…………?」ムスッ
梨子「んふふ……んふふふ……♪」
まき「…………」ムスッ
梨子「嬉しいね、こんな風に町に溶け込んでいくのを実感すると」
まき「…………」ムスッ
梨子「アトリエ………私のアトリエ………んふふ〜♪」
まき「…………」ムスッ
尊敬する先輩達と同じように工房を構えるのは分かっていましたが、その名前までは考えていませんでした
リリーのアトリエという善子ちゃんのセンスには脱帽です
梨子「マリーのアトリエ……エリーのアトリエ………リリーのアトリエ……」
まき「…………」ムスッ
梨子「えへへ、いいなぁ〜♪」ムギュッ
まき「………っ!」ムスー
経験、技術、実績など先輩達にはまだまだ敵わないとしても、同じラインに立ったような気がして気が引き締まる思いです
梨子「私もがんばらないとね」ギュー
まき「………っっ」ムスッ タップ
梨子「やっぱり看板メニューみたいなのは必要かな?」
まき「………?」ムスッ
梨子「メガフラムやメガクラフトもいいけど、そのうちギガフラムも作りたいよね」
まき「…………!?」ムスッ
大量に作っていたせいか、梨子ちゃんは爆弾作りが得意になっていました
-次の日 酒場クニッキー
ザワザワ…… ガヤガヤ……
梨子「わっ、すごい人……」
お昼になにか発表をするという事で呼ばれていた梨子ちゃん
酒場には日中というのにすでにたくさんの人が集まっていました
梨子(ん、でもなんだか大人ばかり……)チラチラ
鞠莉「リリー!」
梨子「あれ、あそこにいるのって確か網元の頭領……」チラチラ
鞠莉「リリー?」
梨子「え?」
鞠莉「元気になったのね、よかったわリリー!」ギュムー
梨子「わっ、マリーさん!?」オモイ…
まだあまり呼ばれ慣れていないのですぐには反応できませんでした
鞠莉「もう平気なのね?」ギュー
梨子「は、はい。その、色々ありがとうございました」
鞠莉「それはこっちのセリフ。リリーがいてくれて本当に良かったわぁ」
梨子「リリー………」
鞠莉「アトリエの名前、決まったんでしょ?」
梨子「あ、はい。善子ちゃんがつけてくれて」
鞠莉「エリーと合わせてなんだか三姉妹みたいね〜」
梨子「三姉妹……」ドキッ
絵里「何言ってるのよ」ポンッ
鞠莉「oh-エリーもきたわね」
梨子「エリー先輩!」
絵里「ひさしぶりね梨子。元気になって良かったわ」
梨子「え…………はいっ!」
昨日も十分感じられましたが、絵里ちゃんが自分を名前で呼ぶ事にまた一つ心が温かくなる梨子ちゃんでした
絵里「それで、今日の発表というのは?」
鞠莉「おそらく例の件でしょうね」ギュー
梨子「?」オモイ…
酒場の残り少ない空きテーブルに三人で座ります
いつもならウェイトレスさんが注文を取りに来ますが、今日は酒場としての営業はまだのようでした
鞠莉「んー……」チラッ
絵里「…………」
梨子「………?」
鞠莉「やっぱり姿は見えないわね、ダイヤ達」
絵里「そうみたいね」
鞠莉「やっぱり何かあった……という事で決まりみたいね」
梨子「なにかあったんですか?」
酒場には町の権力者の姿も見受けられます
それがこの後の発表が重大であることを意味するのはわかります
鞠莉「私達が浄化作戦を成功させてから、色々町でもバタバタしていたみたいでね」
絵里「黒澤さんとこの……ルビィが見つかったという事でお家の方でも何かあったみたいなの」
梨子「それは、親御さん達との間にという事ですか?」
鞠莉「正確な事はわからないけど、それから表にでてこないのよ、ダイヤとルビィ」
梨子「……………」
厳格な家の生まれであるダイヤとルビィ。二人の間にあった問題は梨子ちゃんも知るところです
しかしその問題は良い方向へ向かっていたと思っていました
梨子「ルビィちゃん………」
すべてが終わったら、大好きなお姉ちゃんのために一緒におやつ作りをするという約束を思い出す
家の事情もあるとは思いますが、梨子ちゃんは何か嫌な予感がします
絵里「ん、来たみたいね」
梨子「……花丸ちゃん」
酒場がより一層騒がしくなると同時に、カウンターの奥からやってきたのはいつもの花丸ちゃん
その隣には初めてお目にかかるご老人。雰囲気から花丸ちゃんの祖父だと思われました
絵里「初めて見るわ」
鞠莉「私も子供の頃に一度見かけたきりよ」
梨子(確か町のご意見番……表舞台には立つことはないけど影から町を支えてきた人……)
酒場に集まった人々が花丸ちゃんとその隣に立つご老人に注目します
花丸ちゃんは一歩前にでると、その視線を一人で受け止める
そして語られる今回町を襲った事件の事
町のみんなで守り通した偉業を称えます。そして花丸ちゃんは一つの宣誓をします
梨子「花丸ちゃん…やるんだね……」
それは、人の上に立つ者の覚悟を現したものでした
これまで町を収めてきたのは南家、黒澤家、西木野家です
しかしそのバランスは崩れつつあり、次代にその役目を引き継げない状況にあります
その危うい状況を今一度統一、修正する事で安定した次代に対応するのが目的でした
絵里「やっぱりそういう家だったのね、この酒場」
鞠莉「そうね。でもあの子ならいいわ」
花丸ちゃんは正式に国木田として町の統制に関与するとし、町長代理として南家と行動する事になりました
その決定はスムーズに決まり、現町長である南家の頭首もそれを受け入れます
梨子「なんだか新しくかわったというより、元に戻ったって感じがしっくりくるんですけど」
絵里「この流れに誰も何も言わないのはそういう事なんでしょ」
鞠莉「もう随分前だけど、ここの町長は元は国木田一族ただ一つだったからね」
絵里「どうして一線を退く事になったの?」
鞠莉「退くというより、継げなかったからよ。花丸の両親は二人とも亡くなっているの」
梨子「そうだったんですね……」
重大な発表という内容にしては十分でしたが、今回はそれで終わりませんでした
花丸ちゃんは次に梨子ちゃんを指名し、前に出てくるようにと告げます
こうして町を救った新たな錬金術士として正式にリリーが皆にお披露目されるのでした
梨子「ひ〜ん……恥ずかしいよぅ」
更新おつです
次で終わり・・・一区切りなのか急展開なのか あれ?そうなんだ
第2話のプロローグってイメージで読んでたわ もうじき終わるとは言ってたけど、色々残ってるのが気になるぞ 乙
これまでのまとめ 話の開始安価と作者のID 主な出来事
>>2 ID:guSn0Z3h 梨子、ヌマヅタウンでの新生活
>97 曜との出会い・初採取と盗賊退治
>131 ID:WP0qEKvw 廃鉱で事故の知らせ・ルビィ登場
>162 ID:XXbc9m1/ モンスター接近・爆弾作りの依頼
>190 ID:xJQewBOo 防衛作戦準備・ルビィの思い
>217 ID:fO6eEQaS 作戦前日・助っ人善子
>247 ID:ww3LwOvQ モンスター襲撃・隠謀の予感
>272 ID:5CNy51UL 襲撃翌日・それぞれの複雑な過去
>300 ID:+CwkHpRJ 白昼の襲撃・市街戦
>340 ID:TW42DzwC 対決巨大ウォルフ
>371 ID:pOQFDq+Y ダイヤ登場 これまでのまとめ2 話の開始安価と作者のID 主な出来事
>404 ID:yfsi+8Iy 流された毒・絵里登場
>447 へーベル湖へ向かう・湖浄化プラン
>475 ID:0IA3O+pU モンス大砲・浄化作業開始
>513 ID:5Ysb61OA それぞれのやり取り
>537 ID:fk+zGAb/ 謎の錬金術師・壊れたブースターそして…
>567 ID:nUIfYIX9 ID:aVShxkJt
事後処理・眠れる千歌
>609 リリーのアトリエ 町長代理花丸 重大発表とリリーのお披露目会も終わり、梨子ちゃん達はそのまま酒場で昼食をとることにします
酒場の看板娘という役職(?)から町長代理へとクラスチェンジした花丸ちゃん
もう以前のような華やかに料理を運ぶ姿は見れないのかなと、梨子ちゃんは少し寂しくなりましたが…
花丸「ピルツ定食おまちどう〜ずらっ」シュタッ
梨子「あれー?」
そこにはいつもの割烹着姿の花丸ちゃんがいました
鞠莉「やっぱりその姿が一番キュートね」
花丸「ありがとずら〜」
梨子「あれ、いいの? 花丸ちゃん」
花丸「町長代理の事を言ってるのなら、それは勿論ちゃんと務めるし、本業も疎かにしないずらよ」
絵里「それ本業だったんだ」
花丸「まぁ今までのように毎日来れるわけではないけど、ここが一番の情報収集源なのはかわらないし」
梨子「そうなんだ。ちょっと安心」
花丸「これからもご贔屓によろしくずら」
三人がそれぞれ昼食をすます頃、曜ちゃんが酒場にやってきました
それに合わせて花丸ちゃんもお仕事を休憩し、合流します
今日のもう一つの目的。それはこれからの対応策についてです
曜「団長捕まらなかった……」
絵里「あれだけの事件だもの、事後処理もまだまだあるんでしょ」
鞠莉「組織って大変そうね〜」
梨子「軽いですね」
犯人の目的、狙っている相手、用いる手段。これらから推測できる次の展開を予想します
絵里「つまり狙われていたのは高海さんで、別の目的で探しているのが高坂さんって事?」
梨子「不明瞭な部分はまだあるんですけど、何か答えを当てはめていくのならそうなるかなーと」
鞠莉「チカっちが目覚める事を良しとしない状況、存在。可能性とするなら一つしかないわね」
梨子「はい。チカちゃんが穂乃果さんの居場所を知っていて狙っているとするなら、犯人にとってそれは障害です」チカッチ?
曜「じ、じゃあ千歌ちゃんに呪いをかけた相手は今回の犯人とは別ってこと?」
絵里「そうでしょうね。そもそもそんな面倒な呪いを行使できるならもっと違う手段もとれたはずだわ」
花丸「そして穂乃果ちゃんが現在いるところは誰も知らない。唯一知っているかもしれないのが……」
曜「団長……」
梨子「私は団長さんの事は良く知らないのだけど、知っている可能性はありそうなの?」
曜「いや、正直私にもよく……」
花丸「あの人、穂乃果ちゃんと接点あったかな?」
鞠莉「それはそのうち戻ってきてから直接聞けばいいんじゃない?」
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