善子・ルビィ「誓いの指輪を貴女に」
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もし───
ルビィ「ねえよっちゃん」
善子「ん、なに?」
もしも、自分の大切なものが守れるとして─
ルビィ「ルビィとよっちゃんが会ってから、もう少しで十年になるんだよね」
善子「……ええ、そうね」
ルビィ「懐かしいなぁ…最初に会ったときはビックリしちゃったけど」
善子「そうかもね…あの時は、そう…私も驚いたわ」
たとえ、その代わりに…別の大切なものを失うことになったとしても
善子「……でもね、それでも私は貴女と一緒にいたいと思った」
善子「責任とかじゃなくて、ただ貴女のことが…何よりも大切だったから」
善子「それに……約束したしね」
ルビィ「……よっちゃん?」
善子「ねえ、ルビィ──」
善子「聞いてくれる? 貴女に応える…十年越しの私の告白を」
それでも、アナタは運命を変えたいですか? ルビィ「記憶…」
善子「ちょっと加工して形を変えさせてもらったけどね、ほら、宝石が付けられてるでしょ?」
善子「ルビーと、こっちはサファイア」
ルビィ「……綺麗」
善子「ずっとね、考えていたの…この指輪に込められた願いと、その本当の意味を」 ルビィ「意味?」
善子「私なりの解釈よ、十年前…私はこれを使って廃校が無い世界へと行った」
善子「学校で過ごした記憶と引き換えにね…けど」
善子「そこに貴女が現れて、私の記憶を思い出させてくれた」
善子「私と同じ、もう一つの指輪を使って…まあ今のルビィは知らないでしょうけど」
ルビィ「……」
善子「で、ここからが本題」
善子「私が気になったのはね、その“思い出した”ってところなのよ」 ルビィ「どういうこと?」
善子「あの後、私は何か手掛かりがないか、もう一度本を読み返したの」
善子「そうしたら気付いたことがあったわ、それがこの部分」
善子「使用者の記憶を辿るってところともう一つ…創られた世界に対する介入ってところ」
ルビィ「それがどうかしたの?」
善子「…重要なのは、この条件だとルビィは私を連れ帰ることが出来たとしても、記憶を取り戻すことは出来ないってこと」
ルビィ「!?」 善子「今思い返してみれば、確かにそんな感じはあったの、貴女は私の世界に割り込んで…言うなれば私とただ会話をしていただけ」
善子「そこに何か特別な力を使ったわけでもないし、寧ろそれは私のほう」
善子「門の鍵を開けたのも、臨時休校にしたのも、電波ジャックも、全て」
善子「私の意思で引き起こされたもので、ルビィは本当に何もしていないのよ」
ルビィ「……」
善子「それなら、どうして記憶が戻ったのか……私は考えた」
善子「そうして出した答えがこれよ」
キラッ
善子「指輪の共鳴…いや、もう少し正確にいうなら記憶の共有ね」 ルビィ「記憶の、共有?」
善子「さっき言ったでしょ、この指輪は使用者の記憶を辿って世界を映し出す力を持っている」
善子「それはつまり、私たちの記憶がここに刻まれているっていうことなの」
ルビィ「…その指輪に?」
善子「ええ、だって私たちには何の力もないもの、ただ願っているだけ」
善子「その力を行使しているのは他でもない、これ自身なのよ」
善子「だからこう思ったの、もしその考えが当て嵌まるのだとしたら」
善子「私が思い出すことが出来たのは、私とルビィに共通する記憶が互いの指輪を通して私に伝わったから」
善子「そしてルビィと私が接触することで、記憶が戻るきっかけが生まれたからなんじゃないかって」
ルビィ「!」 善子「だから持ってきたのよ、今…これをね」
ルビィ「それじゃあ…」
善子「ただね、これはあくまで私が立てた仮説…本当かどうか、その確証はないわ」
善子「けど、可能性は……0じゃない」
ルビィ「! あっ……」
善子「だから私は賭けた、この可能性に……そう、あのとき誓ったもの」
何かを失ったって、いつかは…いつかは1に変えてみせる!
だってそれが…私たちAqoursだから!!
善子「あの誓いを果たすことがあるのだとすれば…それはきっと」
善子「今…この瞬間なんでしょうね」クス
そうでしょ? ルビィ 乙でさー
長く楽しんでいたssが色々終わっていく
クールの切り替わり時期のような寂しさ 善子「さあ、やるわよ…準備はいい?」
ルビィ「…大丈夫って言いたいけど」
ルビィ「ちょっとだけ、怖いかな」
善子「そうよね……でも安心して」
善子「何があっても私はずっと貴女の傍にいるわ」
ルビィ「よっちゃん…」
善子「ルビィには私がいる、でしょ?」
ルビィ「…そうだね」ニコッ ルビィ「わかった、ルビィも…信じる」
善子「ありがとう、ルビィ」
善子「…大丈夫、絶対に取り戻して見せるから、貴女と過ごした思い出を」
ルビィ「うん、お願いね」
善子「…フゥーッ……よし」
善子「始めましょうか」 善子「指輪をはめるわよ…手、出して」
ずっと思っていたことがある
ルビィ「はい」
善子「いくわよ、ルビィ」スッ
あの日、あのとき……そう、転校生としてやってきた貴女に出会ったあの瞬間
私はこう感じたの
ルビィ「───!!」
─ 皆さん、はじめまして…転校生の黒澤ルビィです ─
ルビィ「……あぁ…ッ……!」
これが、運命なのかと ルビィ「……なに…あた、まが……ぃたい…っ…!」ズキ
善子「─!! ルビィ!」
高校一年の春、桜が舞い散る頃……同じような出会いがあった
音ノ木坂から浦の星にやってきた一人の転校生、そこから全てが始まって
あの人はそれを奇跡と、そう言っていた
ルビィ「ああああぁぁぁ!! 痛い! いたいよっ…!!」
善子「ルビィ……ルビィ!! 大丈夫! 私が傍にいる!! ずっと!」ギュッ だから二年の春、東京で貴女が私の前に現れたとき…どこか似たようなものを感じたの
今度は浦の星から音ノ木坂へと、まるで打ち寄せられた波が返っていくように
ルビィ「…よっちゃ……!」
善子「お願いルビィ! 思い出してっ!!」
善子「私のリトルデーモンとして一緒に儀式をしたこと! 貴女が初めてだったのよ!!」
善子「嬉しかったの!」
その繋がりはきっと偶然でしょう、でも 善子「最初は私と花丸が仲良くしてるところに入りづらそうにしていて! でも私もそうだった!」
もし、運命というものがこの世に本当にあるのなら
善子「貴女のこと何も知らなかったから! だけどっ!!」
今、この瞬間こそが…私にとっての運命で
今まで不幸だった私に舞い降りた奇跡なのだと…そう思わずにはいられなかった
善子「そこから少しずつ変わっていったじゃない! 一緒に練習して! 一緒に帰って!」
善子「休みの日はお互いの家で泊まったりして! そうやって私たちは……っ…!」
善子「仲良くなっていったのよ!! 好きになっていったのよ!」
そして、これを奇跡と呼ぶのなら……きっとあの時と同じように
ここからまた何かが、変わっていくんじゃないかって─変えていけるんじゃないかって
善子「それを全部……っ…! 忘れたなんて言わないでよ!!」
善子「なかったことになんてしないで!!」
そんな気がしたの ルビィ「あぁっ……ああああぁぁぁ!!」
善子「ルビィ! 前に貴女が私に言ってくれた言葉! 今そっくりそのまま貴女に返すわ!!」
善子「貴女本当にこのままでいいの!? それでルビィは幸せなの!?」
善子「私との思い出が無くなって! 一番苦しかったのは貴女じゃない!!」
善子「なのにそれすら忘れて! 嫌よそんなの! そのこともちゃんと思い出してよ!!」
ルビィ「……よ……し………ちゃ…」
善子「それで苦しくて辛いなら私に言ってよ!! そのときは私が貴女の傍にいるから! 貴女を支えるから!」
だからねルビィ、私は
もう自分の気持ちから逃げない
善子「どんな時でも! 何があっても!」
善子「だって私はっ…! 貴女のことを─!」
善子「愛しているから!!」
ピカッ
ルビィ「!! …………ぁ……」 ───
ずっと言いたかったことがあるの、今まで言いたくても言えなかった言葉が…貴女に
ルビィ、私ね…あなたのことが好き
(ああ…そっか)
どんくさくて、どこか抜けてて、泣き虫で、いつも自分に自信がなさそうで
でも、とても素直で真っ直ぐで…いつも誰かを想える強い人
そんな貴女が放っておけなくて、いつしか貴方のことをとても愛おしく感じていたの
ずっと傍にいたいって
(ルビィはもう…知っていたんだね)
(善子ちゃんの気持ちを…想いを) ねえ、一緒にいてくれる? 私と
(…そうだよね、忘れちゃ駄目だよね)
(ルビィにとって、善子ちゃんにとって…一番大切なことだもん)
もちろん、一緒だよずっと
(でも、もう大丈夫…忘れたりしない)
だってルビィも、善子ちゃんのことを
─愛しているから。
─── ルビィ「……」
善子「ルビィ! しっかりしてルビィ……っ…!」
ルビィ「……あ…」パチ
善子「ルビィ! 大丈夫!?」
ルビィ「…………うん、大丈夫だよ」
ルビィ「ありがとう…“善子ちゃん”」 善子「!! ……ルビィ…あな、た……」
ルビィ「えへへっ…………ただいま」
善子「る、びぃ……ほん、と…? ほんとうに……?」
ルビィ「ごめんなさい、遅くなって」ダキッ
善子「あ……あぁっ…! ……うぅ……ぇぐっ……!!」
善子「あああああぁぁぁ……!!!」
ルビィ「善子ちゃん…ルビィね、辛かったの……苦しかったの…」
ルビィ「でも…信じてたよ、ずっと……ずっと!!」ポロポロ
善子「ルビィ……っ…ルビィ…!!」
ルビィ「よ、しこちゃ……っ…!」
善子・ルビィ「うぅっ……うああああああああああぁぁぁぁああ!!!!わああああああああああん!!!」 …………
……
善子「─ぐすっ…ああもう、目…すごい痛い」
ルビィ「善子ちゃん、真っ赤だもんね」
善子「そういうルビィだって顔ひっどいわよ」
ルビィ「えぇ!? そこまで言わなくても…」
善子・ルビィ「……フフッ!」
善子「…おかえり、ルビィ」
ルビィ「うん、ただいま善子ちゃん」 善子「クスッ…そう呼ばれるのも、なんか久々ね」
ルビィ「そうだね、ずっとよっちゃんって呼んでたから」
善子「…ねえルビィ」
ルビィ「心配しなくても“よっちゃん”との思い出のこともちゃんと覚えてるよ」
善子「!」
ルビィ「それが聞きたかったんでしょ?」
善子「…見透かしたように」
ルビィ「分かるよ、それくらい」
善子「……ま、いいけど」 善子「記憶が戻ったら人格のズレとか出るんじゃないかって、ちょっと気になっただけだし」
ルビィ「大丈夫、変わらないよ…だって」
ルビィ「よっちゃんのおかげで変わらないルビィのままでいられたから」
善子「…そう」ニコッ
ルビィ「うん……あっ、呼びかた善子ちゃんの方がよかった?」
善子「それくらい好きにしなさいよ」
ルビィ「じゃあ、よっちゃんにするね!」
善子「はいはい」 ルビィ「あっ…そうだ、ねえねえよっちゃん、ルビィも聞きたいことがあったんだけど」
善子「なに?」
ルビィ「どうしてわざわざ指輪に宝石を付けたの? 思い出させるだけなら別に無くても」
善子「ん? ああ……そうだ、まだそれが残ってたわね」
善子「あやうく忘れるところだったわ」
ルビィ「よっちゃん?」
善子「ほら、最初に言ったでしょ、告白だって」
ルビィ「え? 確かに言ってたけど」
善子「うん、だからとりあえず一回それ返して」
ルビィ「えぇ!? なんでそうなるの!?」
善子「いいから」 ルビィ「……はい」
善子「それでこっち付けなさい」
ルビィ「これ、さっきよっちゃんが付けてた…」
善子「そ、サファイアの指輪ね…で、私はこっちをはめるから」
ルビィ「? どうしてわざわざ取り替えたの?」
善子「それもさっき言ったでしょ、その指輪には私たちの記憶が刻まれているの」
善子「だからお互いに相手の記憶が刻まれたものを持っておくのよ」
善子「もう二度と忘れないっていう、誓いの証としてね」
ルビィ「……そっか…うん、そうだね」 善子「でもね、それだけじゃないわよ」
善子「もう一つあるの、さっきよりももっと大事なこと」
ルビィ「まだあるの?」
善子「ええ、知ってるでしょ? 指輪交換の儀式」
ルビィ「!!」
善子「宝石を付けたのはそういう理由よ」
ルビィ「え? ……えぇっ!?」 善子「なによ、さっきから驚いてばかりね貴女」
ルビィ「…ぃや…だって……」
ルビィ「それって…つまり………えぇっと……あの、ルビィと…」
善子「…はぁーっ、貴女って普段は素直で真っ直ぐなのにこういうとき本当に駄目ね……全く」
善子「ルビィ」
ルビィ「は、はいっ!」
善子「これが貴女に応える私からの告白よ」スッ
善子「結婚しましょう」
ルビィ「……っ……はい」
ルビィ「喜んで」 もし───
善子「なら決まりね、はい左手出して」
もしも、自分の大切なものを失ったとして─
ルビィ「うん…でも、ビックリしたよ急に……結婚指輪なんて」
善子「別に急じゃないわよ、前々から決めていたもの」
たとえ、その先で何度も壁に阻まれ、困難に挫けそうになったとしても
ルビィ「え?」
善子「何とぼけた顔しているの、ルビィが願ったことでしょ」
それでも、私は一緒に運命を変えていきたいと思った。
─何故かって? それはね………
ルビィ「…ルビィが?」
善子「ええ、だって貴女が手紙で私に言ったんじゃない」 …………
─P.S.
でもね、善子ちゃん
もし……もし一つだけ、我がままを言っていいのなら
お願いがあるんだ。
どんなに時間がかかってもいい、ルビィはずっと待ってるから
だから、約束してほしいの 今度は善子ちゃんが
ルビィのこと、絶対に──
善子「─迎えに来て。ってね」
約束したからよ。 貴女と。
─ 最終話 P.S.の向こう側 ─ 終わりです
長い間保守してくださった方々、最後まで読んでくださった皆様方、本当にありがとうございました。 ハッピーエンドでよかった…
善子ちゃんとルビィちゃんの未来に幸あれ……! おつ!2人の素の善さが優しいお話で良かったです…!末永くお幸せに。 とうとう完結してしまったか…
最高のハッピーエンドで締めてくれたし面白かったよ、乙! ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています