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曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その4
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0001名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:17:10.48ID:mc7jjdA4
おしっこ大好き曜ちゃんと、曜ちゃん大好き善子ちゃんのお話です。

今回はおしっこ要素はそこまでないので苦手な人もぜひ。


*過去スレ

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1513854343/
(堕天)

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その2
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1517118470/
(堕天)

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その3
http://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1518316226/
(堕天)

↑の続きですが読んでなくても大丈夫です。

(付き合いたてのようよしがイチャイチャしたりケンカしたりたまにおしっこするだけなので)



【前回のラブライブ!】


*不治の病編

ケンカした翌日、何とか仲直りした二人でしたが善子ちゃんが倒れてしまいます。

風邪っぽい症状で熱もあったためインフルエンザかも? と病院へ連れて行く曜ちゃんでしたが……。

やっぱりどうやらただの風邪ではないようでした。


*料理教室編

善子ちゃんが倒れたと聞いた曜ママは、善子ちゃんにいっぱい食べて元気になってもらおうと張り切って料理を振る舞うことに。

予想通り酷い出来でも気を遣う善子ちゃん。はっきりマズいと言う曜ちゃん。

大人版曜ちゃん(曜ママ)にドキドキする乙女善子ちゃん可愛い。


*お泊まり会編

曜ママと善子ちゃんがお風呂で思い出話をしている間、曜ちゃんは善子ママと……。

あろうことか現場を目撃されてしまい、善子ちゃんのビンタが炸裂。

曜ママと善子ちゃん、善子ママと曜ちゃんの親子じゃないのに親子っぽい関係が好き。




以下本編
0002名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:18:40.92ID:mc7jjdA4
【ダイエット編】



 朝

 善子の家 リビング

善子「ふわぁ……よく寝たわ」

曜「おはよう。今起こしに行こうと思ったところだよ」

善子「あれ、ママたちは?」

曜「仕事。私たちも今日から学校だからね?」

善子「そっか。今日は始業式だったわね」

曜「午後からはテストだよ」

善子「結局、冬期講習は半分くらいしか出られなかったわね」

曜「でも、その代わり一緒に勉強できたからよかったよ」アハハ

善子「私は教えてもらえてよかったけど……曜さんはよかったの?」

曜「んー?」

善子「自分の勉強は」

曜「あぁ……うん。徹夜でテキスト読み込んだから大丈夫だよ」

善子「テスト中寝落ちしても知らないわよ」

曜「それは嫌だな……」

善子「分かってるとは思うけれど、赤点だと補習で追試だから」

曜「うん……」

善子「一緒にいる時間が減っちゃうわ」ボソッ

曜「え?」

善子「何でもない。朝ごはん食べましょ」

曜「そうだね」

……

善子「……」モグモグ

曜「美味しい?」

善子「ええ」パクッ

曜「よかった」
0003名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:19:16.28ID:mc7jjdA4
善子「念のために聞いてもいいかしら」

曜「入ってないよ」

善子「……」モグモグ

曜「入ってたら匂いで気づくよね?」

善子「ほんの少しだけ入れたかも」モグモグ

曜「そんなことしないよ」アハハ

善子「どうかしら」パクッ

曜「それはそうと、結局ダイエットはしなかったね」

善子「え?」

曜「ウエスト。二センチ太ったままだよ」

善子「……」

曜「私のせいかな」シュン

善子「どうして?」

曜「毎日善子ちゃんに食べさせるから」

善子「栄養のある食事は大事でしょ。食べ過ぎはよくないけれど」パクッ

曜「そういえば善子ちゃん、私が来てからカップめん食べてないね」

善子「そうね。曜さんの料理の方が美味しいから」モグモグ

曜「ママの料理は食べてる?」

善子「食べてるわ。曜さんがいないときに」パクッ

曜「そっか」

善子「……」モグモグ

曜「……」

善子「曜さんは食べないの?」パクッ

曜「わ、私? 私は……」

善子「ママたちともう食べた?」

曜「ううん……」

善子「……」

曜「食べてない」

善子「あっ……そういうことね」

曜「?」
0004名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:19:50.07ID:mc7jjdA4
善子「はい」つ

曜「えっと……」

善子「あーん」つ

曜「ごめんなさい」

善子「えっ」カシャン

曜「実はさ、私……」

曜「ダイエット中なんだ」アハハ

善子「」

曜「こう見えて先月から一キロ太ってるの」カァアア

善子「いや、一キロなんて誤差でしょ」

曜「ううん。空腹時も満腹時も平均してだよ」

善子「……」

曜「ほら、お腹周りなんて少し」スルッ

善子「ぬ、脱がなくていいから!」カァアア

曜「ウエストは三センチも増えた」プニ

善子「私より……」

曜「だからあまり善子ちゃんのことは言えないんだ」アハハ

善子「曜さんも食べ過ぎて?」

曜「ううん。私は運動不足かな」

善子「運動不足……?」

曜「前までは毎日欠かさず筋トレしてたんだけど、最近はほとんどやってないから」

善子「あぁ、それで……」

曜「果南ちゃんとジョギングしたりもしてたんだけどね、最近はすっかりやってないの」

善子「果南さんと?」

曜「そうだよ。私が誘うとね」

曜「『夜中に二人きりで会うのはやめてあげたら?』アハハ」

曜「ってさ」

善子「何だか気を遣われてるような……」

曜「善子ちゃんといるときはもちろんだけど、いないときもね」

善子「……」
0005名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:20:25.04ID:mc7jjdA4
曜「私が他の人と二人きりなんて嫌かな?」

善子「ジョギングでしょ? そのくらいいいわよ」パクッ

曜「本当は嫌でしょ?」

善子「……そこまで気にしてたら何もできないじゃない」

曜「私は果南ちゃんとも一緒にジョギングしたいんだけどね」アハハ

善子「すればいいのに」

曜「やっぱりみんな何か気を遣ってるよねぇ」

善子「……まあ、正直やりづらい感じはするわね」

曜「どうしたらいいと思う?」

善子「うーん……」

曜「本当はさ、グループ内での恋愛はあんまりよくないんだよね」

善子「私たちのせいでAqoursがうまくいかなくなるって心配してる?」

曜「……少し」

善子「自意識過剰も程々にしなさいよ。みんなそこまで私たちのことなんて気にしてないんだから」

曜「そうかな」

善子「そうよ。そんなに心配ならみんなに聞いてみたら? たぶん笑われるわね」フフッ

曜「う……」

善子「まあ、ダイエットくらいなら一緒に……」

曜「今日は学校まで走って行こうよ」

善子「は? 嫌よ絶対遅刻するわ」

曜「今から出れば間に合うよ」

善子「曜さんはよくても私が間に合わないわ」

曜「じゃあバス停ひとつ分だけ走ろう」

善子「ひとつ分? そんなのでダイエットになるのかしら……」

曜「あー、うん、本当は軽めの運動を三十分くらい続けないと有酸素運動にならないんだけど」

善子「そうよ。でも三十分も走ってたら遅刻しちゃう」

曜「善子ちゃんとジョギングしたいな」

善子「……」

曜「ダメ?」

善子「食べた後で走ると気持ち悪くなるから嫌」
0006名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:20:57.08ID:mc7jjdA4
曜「……」シュン

善子「帰りなら付き合ってあげてもいい」

曜「本当!?」ガタッ

善子「バス停ひとつ分だけね。毎日やれば少しは効果あるでしょ」

曜「毎日やるの?」

善子「やらないの?」

曜「やる」

善子「仕方ないから付き合ってあげるわ」

曜「ありがと」エヘヘ

善子「じゃあ……」つ

曜「ん?」

善子「朝ごはん食べないとテスト中頭が働かないわよ」つ

曜「一口だけ……」パクッ

善子「どう?」

曜「美味しいよ」モグモグ

善子「でしょ。実はこれ、私の大好きな人が作った料理なの」つ

曜「……」カァアア

善子「いいから早く食べて」カァアア

曜「善子ちゃんは優しいね」パクッ

善子「食べてるときの曜さんが好きなだけよ」

曜「私も。食べてるときの善子ちゃん、好きだよ」モグモグ

善子「……」ドキドキ

曜「えへへ……」ニヤニヤ

善子「って! ダメよそんな考えしてたら!」

曜「え?」

善子「このままじゃ私たち、本当に太っちゃうわ……」

曜「確かに」

善子「今日からダイエットよ」

曜「分かった。食事もいつもよりヘルシーなものにするね」

善子「それと、あんまり美味しく作らないで」
0007名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:21:29.16ID:mc7jjdA4
曜「食べ過ぎちゃうから?」

善子「そうよ」

曜「量を少なめに作ればいいんじゃないかな?」

善子「……」

曜「それと、お代わり禁止で」

善子「そうね。そうしましょ」

曜「おやつも控えようね」

善子「当然よ」

曜「あと夜食も」

善子「食べてないわよ」

曜「私が」

善子「食べてるの!?」

曜「お腹空いちゃってさ」アハハ

善子「……」

曜「さ、食べ終わったなら片付けてきちゃうよ」スタッ

善子「え、もう食べないの?」

曜「ダイエット中だから」

善子「じゃあこれは?」

曜「捨てる」

善子「そんなもったいないことできるか!」ガツガツ

曜「太るよ?」

善子「曜さんの料理を捨てるくらいなら太った方がましよ」モグモグ

曜「……そんなこと言われたらもっと美味しく作らなきゃね」エヘヘ

善子「やめて。本当に太る」パクッ

曜「やっぱり私も食べるよ」

善子「太るわよ?」

曜「善子ちゃんだけ太らせるわけにはいかないよ」

善子「……」つ

曜「あむっ」パクッ

善子「おせちも食べてないのに正月太りなんて……」ハァ
0010名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:24:07.00ID:mc7jjdA4
曜「幸せ太りじゃない?」

善子「どっちでもいいわよ」パクッ

曜「……」

善子「ごちそうさま。美味しかったわ」

曜「それじゃ片付けてくるから、善子ちゃんは着替えて来なよ」

善子「いいわよ、たまには私が片付けるから」スタッ

曜「そう? じゃあお願いしようかな」

善子「食器が一人分だと片付けるのも楽よね」

曜「今日から二人で一つの食器で食べようか」

善子「えっと……二人だけのときならいいわよ」

曜「ダイエットにもなるしね!」

善子「そうね。二人で一人前を食べれば見た目は一人前でもカロリーは半分……」

曜「もしかして善子ちゃんって天才?」

善子「ええ。今頃気づいたの?」フフッ

曜「善子ちゃんとなら楽しくダイエットできそうだよ」アハハ

善子「私も。一人だとどうしても怠けそうになるもの」

曜「私は怠けたりしないけどね?」

善子「夜食」

曜「う……」

善子「いいから着替えて来なさい。私も片付け終わったら行くわ」

曜「絶対に覗かないでね?」スタッ

善子「曜さんじゃないんだから……」ハァ

……

 善子の部屋

ガチャ

曜「そういえば……前に善子ちゃんの制服を着たときはちょっとキツかったっけ」

曜「着てみようかな」スッ

スルスル

シュルッ

曜「……」
0011名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:24:38.10ID:mc7jjdA4
曜「ん? 太ったはずなのにキツくない……」

曜「そっか。筋肉が落ちたから細くなってるのかな」

曜「お腹周りは調整すれば大丈夫だし……」キュッ

曜「うん! いい感じ」フリフリ

曜「……」

曜「カバンも交換しないとだ」

曜「うわ、善子ちゃんのカバン重たいなぁ」ズシッ

曜「何が入ってるんだろ?」ガサゴソ

曜「……」ガサゴソ

曜「教科書ちゃんと持ち帰ってるんだね。真面目だなぁ」

曜「私は基本置きっぱなしだからねぇ」

曜「おっ、このポーチは……」サッ

曜「メイク道具?」

曜「善子ちゃん、いつもメイクなんてしてたんだ」

曜「そんなことしなくても可愛いのに」キュッ

曜「……」ヌリヌリ

曜「……」サッサッ

曜「……」ペタペタ

ガチャ

善子「お待たせ曜さん」フゥ

曜「あ」サッ

善子「何して……」

曜「な、何でもないよ。善子ちゃんの着替えはそこに用意しておいたから」

善子「気が利くわね。ありがとう」

曜「うん……」ドキドキ

善子「何?」

曜「あの……」

善子「こっち見ないで」

曜「え」

善子「見ないで!!」
0012名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:25:11.98ID:mc7jjdA4
曜「……」クルッ

善子「……」

曜「……」

善子「……」スルッ

スッ シュルッ

曜「……」

善子「……」

キュッ パチッ

曜「あ、あのさ……」クルッ

善子「こっち見るなって言ってんでしょうが!!」

曜「ひぃっ!!?」クルッ

善子「……」スッ

曜「……」ビクビク

善子「あれ……? 太った割には制服がキツくない……」

曜「よ、よかったねぇ」アハハ

善子「さてと。もういいわよ」

曜「……」

善子「着替え終わったわ」

曜「うん」

善子「こっち見ていいわよ」

曜「……」クルッ

善子「ん? 曜さんは少し太ったみたいね。私よりキツそうだわ」

曜「そ、そうなんだよー。ちょっと痩せないと危険かも」アハハ

善子「まあいいわ。行きましょ」スッ

曜「っと! カバンは私が持ってあげる!」サッ

善子「いいわよ、自分で持つわ」

曜「大丈夫だって! このくらい私に持たせてよ」

善子「……」

曜「そろそろ行かないとバスの時間が……」

善子「そうね。行きましょ」スタッ
0016名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:29:23.29ID:mc7jjdA4
曜「ふぅ……」

善子「?」

曜「あ、いや……何でもないよ」

善子「今のため息は何?」

曜「え、えっとね? ため息が出るほど可愛いなーって」エヘヘ

善子「私が?」

曜「そう! 着替えを見られなかったのは残念だけど……」

善子「変な曜さん」

……

 バス

曜「……」

善子「……」

曜(善子ちゃん、もしかして気づいてない?)

曜(それとも気づかないふりしてるだけ?)

曜「……」チラッ

善子「何?」

曜「えっ? 何も」

善子「そう……」

曜「……」

善子(曜さんの様子がおかしい……)

善子(ひょっとして)ジー

曜(う、うわ……すごい見られてる)ドキドキ

善子(んん……?)ジー

曜(バレませんように! いや、バレてもいいけど怒らないで!)

善子(気のせいかしら)ハァ

曜(……)ドキドキ

善子「あ、そういえば曜さん」

曜「何?」

善子「帰りはバス停ひとつ分走るのよね?」

曜「うん。だから少し早めに学校を出ないとね」
0017名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:30:05.43ID:mc7jjdA4
善子「今日は部活がないから、帰りは待ち合わせしないと」

曜「あっ、それなら私が教室まで迎えに行くよ」

善子「そう?」

曜「もちろん。できるだけ早く行くから待ってて」

善子「分かったわ。終わったらメールするわね」

曜「うん」

善子「……」ジー

曜「……」ドキドキ

善子「曜さん、いつもより可愛いわね」

曜「そ、そうかな!? 善子ちゃんがそんなこと言うなんて珍しいなぁ」アハハ

善子「もしかしてメイクしてる?」

曜「してないよ?」

善子「そう……」

曜「……」ドキドキ

善子「……」

曜(何だか善子ちゃんに悪いことしてる気がしてきた……)

曜(間接キス目的とはいえ勝手に口紅使われたら嫌だよね)

善子「分かったわ」

曜(素直に謝れば許してくれるかな? ちょっとした出来心だったんだし……)

善子「トイレ、行きたいんでしょう?」

曜「あ、あのね善子ちゃん!」

善子「学校までかなりあるわよ。我慢できそう?」

曜「私っ……」

善子「って言うか我慢してくれなきゃ困るわ。降りたら次のバスまで一時間以上待たなきゃだし」

曜「……」

善子「ペットボトルならあるから……」ガサゴソ

曜「ごめんなさい」

善子「いいわよ。家を出る前にトイレ行かなかったのは悪いけど」

曜「……」

善子「まあ、仕方ないわよね。そのときは行きたくなかったんだから」
0018名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:30:42.12ID:mc7jjdA4
曜「実は……」

善子「はい、ペットボトル。小さいのだけど足りる?」スッ

曜「……」

善子「私に飲めって言うの? さすがにお断りよ」

曜「……」シュン

善子「もしかして具合でも悪いの?」

曜「ううん、大丈夫……」

善子「無理はしないでね」

曜(とても言い出せる雰囲気じゃない……)

曜(善子ちゃんが珍しく私に優しくしてくれてるのにそんなこと言ったら)

曜(せっかく優しい善子ちゃんがいつもの鬼みたいな善子ちゃんに)

善子「……」ヌギッ

曜「え!?」

善子「上着で隠して」スッ

曜「う、うん……」

善子「他のお客さんが乗ってくる前に済ませちゃいなさい」

曜「……」

善子「早く」

曜「分かった」スルッ

善子「見ないであげるから」

曜「見てもいいよ」

善子「いいわよ。別に見たくない」

曜「……」スッ

曜(出るかな? いや、善子ちゃんがくれたペットボトルを空のまま返すなんてできない)

曜(……)

ショワァ

曜「あ……」ブルッ

善子「声出てるわよ」

曜「だって……」

ジョボボ
0019名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:31:17.03ID:mc7jjdA4
善子「手にかけたら怒るからね」

曜「うん……」

ジョボボ

善子「あと溢したら私たちタダでは済まないわよ」

曜「分かってるよ……」

ジョボボ

善子「もう少し?」

曜「もう少し」

ジョボボ

バス「ププー!」キキーッ!!

善子「え」

曜「嘘っ!?」

善子「溢れ……」

曜「うっ」グッ

バス「」ピタッ

善子「きゃっ!?」ゴチンッ!

曜「善子ちゃん大丈夫っ!?」バッ

善子「いったぁ……」ヒリヒリ

「猫が飛び出してきたため急停車になりました……お怪我はありませんでしょうか?」ハァ

善子「だ、大丈夫です!」

曜「私も大丈夫です!」

「よかった……」

ブロロ

善子「……」

曜「……」

善子「溢した?」

曜「ううん。何とか押さえたから……」

善子「そう……」ハァ

曜「でも」

善子「え?」
0020名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:31:53.45ID:mc7jjdA4
曜「善子ちゃんの上着に……」

善子「あっ!! 私の上着が」ベチャ

曜「ごめん」

善子「……」シュン

曜「ごめんって」

善子「き、気にしないで。もうボロボロだったし新しいの買おうと思ってたし……」

曜「洗えば落ちるよ! 私が責任持って綺麗にする!」

善子「……」グスッ

曜「わああ! 泣かないで!!」

善子「泣いてない!」

曜「善子ちゃん、これお気に入りの上着だったんだよね……」

善子「……」

曜「代わりにはならないけどさ、とりあえず今日は私ので我慢して」ヌギッ

善子「いいわよ、曜さん寒いでしょう」

曜「ううん。善子ちゃん着て」スッ

善子「いいってば。私なら平気だから……」

曜「……」

善子「仕方ないわよ、さっきのは不可抗力だもの……」

曜「ごめんなさい」ペコリ

善子「……」

曜「善子ちゃんのメイク道具勝手に使いました」

善子「え?」

曜「制服も交換しました」

善子「えっ、ちょっと何? 何の話?」

曜「カバンも……」

善子「……」

曜「善子ちゃんになりたくて」

善子「私に?」

曜「物を交換したくらいじゃなれないのは分かってるよ」

曜「それでもなりたかったんだ」グスッ
0021名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:32:29.11ID:mc7jjdA4
善子「……」

曜「ごめんね」スッ

善子「あっ、そのノート……」

曜「今日一日だけ代わって」ピラッ

善子「ダメっ! その呪いは!」

曜「『……』」ボソボソ

善子「あ……」

曜「『…………』」ボソボソ

善子「わた……し……」フラッ

……

……

ユサユサ

善子「ん……」

ユサユサ

善子「何よ……」

「お客さん」ユサユサ

善子「え?」ムクッ

運転手「学校、着きましたよ。降りないんですか?」

善子「あぁ!? す、すみません降ります!」

善子「ほら、曜さんも起き……」

??「……」

善子「あ、あれ? 私??」

??「……」

善子「ってことは……」

運転手「あの……降りないんですか?」

善子「お、降ります……」

善子「曜さん、ほら起きて」グイッ

??「……」

善子「嘘っ……軽い」ヒョイ

??「……」
0022名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:33:01.23ID:mc7jjdA4
善子「私の体ってこんなに軽いの?」

スタスタ

運転手「変な子ねぇ。さっき頭を打ったのかしら……」ハァ

……

 学校 一年教室

ガラッ

善子「……」

ルビィ「あっ、曜さん。おはようございます」

花丸「おは……え?」

善子「おはよう。善子ちゃんはちょっと寝ちゃってて……」

曜「」

花丸「それ寝てるの?」

善子「え? そうよ。バスの中でね」

ルビィ「善子ちゃん重かったでしょ? ご苦労様です」

善子「重くないわよ!」

花丸「『わよ』……?」

善子「お、重くないヨーソロー……」

ルビィ「ぷっ……」クスクス

花丸「ふふっ……」クスクス

善子「何で笑うのよ!? 変なこと言った?」

ルビィ「だって今日の曜さん、善子ちゃんみたいなんだもん」

花丸「可愛いずら」ニコニコ

善子「か、可愛いとか言うな」カァアア

ルビィ「あっ、照れてる? 曜さん可愛いー♡」ギュー

善子「えっ、ちょっ……」カァアア

ルビィ「おっと、善子ちゃんにバレたら怒られちゃうよね」パッ

善子「そ、そうよ。絶対怒るって」

花丸「ルビィちゃん、あんまり曜さんを困らせちゃだめだよ?」

ルビィ「えへへ……そうだよね。ごめんなさい」ペコッ

善子「……」
0023名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:33:36.65ID:mc7jjdA4
花丸「善子ちゃんは預かるね」サッ

善子「ええ」ストッ

曜「」ズルッ

善子「っと! いい加減に起きなさいよ。始業式の後はテストなんだから」グイッ

ルビィ「曜さんも教室に戻らないと遅刻しちゃいますよ」

善子「そ、そうね……」

曜「んん……」

花丸「善子ちゃん、やっと目が覚めた?」

曜「あれ、私だ」

善子「善子ちゃん、ちょっと」クイクイ

曜「……え?」

ガラッ

ストッ

 廊下

曜「私、だよね……?」ツンツン

善子「やめて」プニプニ

曜「だって……目の前に自分がいるんだよ?」ジー

善子「よりによって何でこんな日に入れ替わるわけ」

曜「善子ちゃん、あの呪い今までに使ったことある?」

善子「……」

善子「ないわよ」

曜「今の間は何」

善子「あるわ」

曜「あるんだ」

善子「寝てる曜さんと入れ替わった。三回くらいかしら」

曜「えぇ!!?」ガタッ

善子「私の経験上、この呪いは掛けた当日のみ有効で日付が変われば解けるはずよ」

曜「今はまだ八時すぎだから……」

善子「あと十五、六時間はあるわね」
0024名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:34:09.21ID:mc7jjdA4
曜「……」

善子「曜さん、まさか知ってて……」

曜「知ってるわけないよ! 本当に入れ替わるなんて思わなかったし……」

善子「私でさえ成功率はかなり低い呪いなのに、どうして初見で成功させちゃうのかしらね」ハァ

曜「天才なので」エヘヘ

善子「いい? 今日の曜さんは私なんだから、いつもみたいな変な行動は控えること」

曜「善子ちゃんみたいな?」

善子「曜さんみたいな! 私は変な行動はしてない!」

曜「あはは。善子ちゃんこそ気をつけてよ? 私の体で変なことしたりさ」

善子「変なことっ……」カァアア

曜「してもいいけど誰にもバレないようにね?」

善子「しないわよ! 曜さんこそ私の体で変なことしたらタダじゃおかないんだから」

曜「分かってる。私は善子ちゃんとだからそういうことするんだよ? 善子ちゃんの体だからするわけじゃないよ」

善子「……」ハァ

曜「それじゃ、テスト頑張ってね」ポンポン

善子「最初からそのつもりで……!」ギリッ

曜「私はそんな怖い顔しないよ。ほら、笑って笑って!」グイ

善子「ふんっ、こうなったら全教科白紙で出してやるわ」

曜「……」

善子「曜さんも白紙で出してくれたっていいわよ。アスリートとして恥ずかしくなければだけど」

曜「何でアスリート?」

善子「曜さん言ってたじゃない。手を抜くことは努力への裏切りだって」

曜「……」

善子「私はアスリートじゃないし? 手を抜いたってサボったって何ともないわ。だって私じゃないんだもの」

曜「善子ちゃんはそんなことしないよね」

善子「……」

曜「白紙で出すなんてそんな酷いことしないよね?」

善子「私、これでも一年生なんだけど? どうして二年生のテストで点が取れると思ったの?」

曜「えっ」

善子「ん?」
0025名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:34:46.06ID:mc7jjdA4
曜「善子ちゃん一年生だ!!」

善子「え!!? 忘れてたの!?」

曜「どうしてくれるの善子ちゃん! これじゃ赤点で補習確定だよ!」

善子「いや……」

曜「ねぇ、今すぐ元に戻して! どうせなら梨子ちゃんと入れ替わればよかった!」

善子「それはダメ!!」

曜「何で!?」

善子「絶対にダメ! 私以外と入れ替わるなんて絶対に認めないわ!」

曜「善子ちゃんと入れ替わったところで赤点だよ!」

善子「くっ……!」

曜「私のバカ! バカ!!」ゴッ!

善子「それ私の体! 大切に扱ってよね!?」

曜「あ……そうだった」

善子「殴るならこっちの体にしなさい」

曜「じゃあ失礼して……」スッ

善子「ちょ、ちょっと! 本当に殴る気じゃ」

曜「私のバカ!」ブンッ

善子「ひぃっ!!?」

ペチッ

曜「っはぁ……」

善子「全然痛くないわ」

曜「けっこう強めにいったんだけどな」

善子「私の体ってそんなに力ない?」

曜「ないね」

善子「むぅ」

曜「すぐ疲れるし」

善子「悪かったわね……」

曜「……まあでも」ニヤニヤ

善子「わっ、私そんな気持ち悪い顔しないから!」

曜「いくら私の体とはいえ今は善子ちゃんだからね。本気で殴るわけないじゃん」アハハ
0026名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:35:21.59ID:mc7jjdA4
善子「そうよね……」

曜「逆に善子ちゃんは気をつけてよ。私の体なんだからうっかりいつもの勢いで引っ叩いたら最悪死ぬよ」

善子「その場合どうなるのかしら? 日付が変わったら元に戻って私が死ぬの?」

曜「うーん……」

善子「って、どうでもいいのよそんなことは。とにかく曜さんのせいでこうなったんだから責任持って私の振りしなさいよ」

曜「はーい」

善子「あと! ずら丸とルビィに変なことしたら本気で殺す」

曜「ひぇっ……」

善子「二人がベタベタしてきても、いつもの私みたいに嫌そうな顔して断るのよ」

曜「うん……」

善子「さっきみたいにデレデレするとすぐ調子に乗るんだから」カァアア

曜「?」

善子「な、何でもない! ほら、教室戻って!」グイッ

曜「あ、あのっ!」ガシッ

善子「何よ? 私、二年生の教室行かないとなんだけど」

曜「上着ごめん」

善子「え?」

曜「その……汚しちゃって本当に」

善子「いいわよもう。その代わり今度新しい上着買いに行きましょ」

曜「私のお金?」

善子「当たり前」

曜「そうだね」アハハ

善子「冗談よ。ママに汚しちゃったって言えば買ってもらえるわ。たぶんね」

曜「じゃあ今日私がお願いしてみるね」

善子「やめて。戻ってから私がお願いする」

曜「でも……」

善子「余計なこと言いそうだからよ」

曜「言わないよ。善子ちゃんと入れ替わったなんて言ったら私まで頭がおかしいと思われちゃう」

善子「私は思われてないわよ」

曜「あはは」
0027名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:35:52.31ID:mc7jjdA4
善子「いや、少なくとも私はね」

曜「……え?」

善子「そこに疑問の余地なくない? あるの?」

曜「いや……ないけど」

キーンコーン

善子「げっ、急がないと遅刻だわ! また後で!」ダッ

曜「廊下は走っちゃダメだよー!」

「何この体めっちゃ速い!」

曜「……」ハァ

曜「私も戻るか」

スタスタ

ガラッ

 一年教室

ルビィ「あっ、善子ちゃん戻ってきたよ」

花丸「……」ジー

曜「な、何かな」

ルビィ「今日ね、テストだから部活ないでしょ?」

曜「うん。そうだね」

ルビィ「たまには三人でお出かけしない?」

曜「……」

花丸「善子ちゃん、最近はずっと曜さんにべったりだから」

曜「そんなことないよ? 私はルビィちゃんも花丸ちゃんも好きだし」

ルビィ「え」

花丸「……」

曜「あっ……ええと、ルビィもずら丸も好きよ」

ルビィ「花丸ちゃん」トントン

花丸「何? ルビィちゃん」

ルビィ「この人誰?」

曜「えっ」

花丸「どう見ても善子ちゃんだけど……?」ジー
0028名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:36:25.82ID:mc7jjdA4
ルビィ「んん……?」ジー

曜(やば……)ドキドキ

花丸「あっ!」

ルビィ「でっかいタンコブ! きっとこれのせいだね!」サワッ

曜「いたっ!」ビクッ

ルビィ「あ……ごめんなさい」

花丸「どうしたの? どこかで頭ぶつけた?」

曜「えっと……そういえばバスの中で」

 善子『きゃっ!?』ゴチンッ!

曜「あのときのかな」

ルビィ「もう一度頭ぶつけたら治ると思う?」ヒソヒソ

花丸「却って酷くなるかも」ヒソヒソ

曜「何か物騒な話が聞こえてくる……」

ルビィ「えーい!」ブンッ

花丸「善子ちゃん覚悟!」グイッ

曜「わぁあ!!」

ペチッ

曜「え……?」

ルビィ「はい、あげる」つ

曜「えっと……これは?」

花丸「お菓子。どうせ善子ちゃんのことだもん、お正月太りで朝ごはん食べてこなかったでしょ」

曜「……」

花丸「お腹空きすぎて頭がおかしくなっちゃったんだね。よくあることずら」アハハ

曜「ないよ」

ルビィ「食べて。テスト中頭が働かないよ?」

曜「……」ゴクリ

曜(いや、間食はナシって決めたばっかりじゃん。ここで食べたら善子ちゃんが太っちゃう……)

花丸「ダイエットもいいけど、無理な食事制限は体を壊すからね」

ルビィ「善子ちゃんは十分すれんだー? だから大丈夫だよ」つ

曜「じゃあ……」アーン
0030名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:38:07.17ID:mc7jjdA4
ルビィ「え?」

曜「あむっ」パクッ

花丸「えぇ!!?」

曜「あ、これ美味しい」モグモグ

ルビィ「花丸ちゃん、今の見た?」

花丸「ルビィちゃんの『あーん』で食べたね」

曜「あれ? いつもはしないっけ」モグモグ

ルビィ「しないしない! 自分で食べるからいいって頑固だもん」

花丸「……頑固なのかな?」

曜「た、たまにはね? 私も素直なときもあるんだよ」アハハ

ルビィ「……」

花丸「素直すぎて気持ち悪いね」

ルビィ「ルビィはこっちの善子ちゃんも好きかも……♡」エヘヘ

曜「う……気に入られてしまった」ハァ

花丸「……」

……

 二年教室

善子(どうしよう……。本当にこのままテスト受けなきゃならないの?)

善子(いくら曜さんが悪いとは言え、赤点を取ったら曜さんガッカリするかしら)

善子(というより私のテストで赤点取ったりしないわよね? 二年生だものね?)

善子(不安だわ……)ハァ

「渡辺さん」

善子(あぁ……どうすれば)

「渡辺さん? 寝てるの?」

善子「へ?」

先生「渡辺さん。いつまでも冬休み気分でいたらダメよ。今日はテストもあるんだから」

善子「す、すみません……」

アハハ

……

千歌「曜ちゃん大丈夫?」
0032名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:39:49.91ID:mc7jjdA4
善子「ええ。たぶんね」

千歌「……」ジー

善子「な、何」

千歌「曜ちゃん?」

善子「私が何よ」

千歌「喋り方変じゃない?」

善子「えっ……あぁ、そうだよね!? 変だよね……」シュン

千歌「こんなのでテスト大丈夫なのかな」

善子「そういう千歌さ……千歌も平気なの? 赤点取ったら補習よ?」

千歌「ひゃっ……」

善子「?」

千歌「い、今私のこと何て」ドキドキ

善子「えっと……千歌さん? ううん、千歌ちゃんか」

千歌「……」

善子「ごめんね千歌ちゃん」

千歌「千歌でいいよ……」カァアア

善子(曜さんはみんなのことちゃん付けだったわね……気をつけないと)ハァ

梨子「……」

千歌「り、梨子ちゃん見てたの?」ドキドキ

梨子「ううん。曜ちゃんに全力ビンタ食らわせたの、どこの誰だったかしらと思って」

千歌「う……」

善子「ビンタ?」

梨子「まさか忘れたの?」

善子「えっと……」

善子(どうせ曜さんのことだから、どさくさに紛れて千歌さんの千歌さんを千歌さんしたとかなんでしょうね)

善子「ごめん。あのときは悪かったよ」

千歌「や、やめてよ。私の方こそ思ったより手首のスナップが効いちゃって……」

善子(曜さんってもしかしてしょっちゅう引っ叩かれてるの?)

梨子「……私も私だけどね」ハァ

善子「梨子さん?」
0033名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:40:24.56ID:mc7jjdA4
梨子「え?」

善子「あ、あぁ……梨子。じゃなかった、梨子ちゃん」

梨子「……」カァアア

千歌「ほら! 私の気持ち分かるでしょ!?」

梨子「……」コクコク

善子「??」

千歌「とにかく今日の曜ちゃん変だよ? 怪しいクスリとかやってないよね?」

善子「やってない!」

梨子「曜ちゃんが変なのはいつものことだから……」

善子「失礼ね」

千歌「ほらまた口調が変だ」

善子「あっ……」

善子(これ以上喋るとボロが出そうね。少し黙っておきましょうか)

梨子「……」

……

……

 始業式後

曜「ふわぁ……終わった終わった」

花丸「でっかい欠伸……」

ルビィ「女の子としてどうかなぁ」

曜「ん?」

花丸「この後テストだよ? 眠そうだけど大丈夫?」

曜「大丈夫。これでも勉強はしてきたから」

ルビィ「ルビィは心配かな……」

花丸「善子ちゃんのこと?」

ルビィ「ううん、ルビィ何でもっと勉強しとかなかったんだろ……」

曜「テストやる前から後悔してどうするの」

ルビィ「だって……」

曜「大丈夫。ルビィちゃんならきっとできるよ」ポンッ

花丸「ルビィ……ちゃん?」
0034名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:41:03.68ID:mc7jjdA4
曜「えーと、この私のリトルデーモンなんだから絶対に大丈夫! 自信を持ちなさい」

ルビィ「善子ちゃん……」ギュ

花丸「わぁ……」ドキドキ

曜(ルビィちゃんいい匂いするなぁ)ナデナデ

ルビィ「今日の善子ちゃん優しい……♡」スリスリ

花丸「気持ち悪いずら……」

「ちょっと!」グイッ

曜「わっ!?」

善子「ルビィちゃんとベタベタしないで」

ルビィ「曜さん?」

曜「し、してないよ?」

善子「その反応……やっぱり」

曜「違うよ! ルビィちゃんがテストを心配して元気なさそうだったから励ましただけで……」

善子「いくら同級生とはいえ過度にベタベタするのは良くないと思うわよ? ねぇ善子ちゃん」

曜「る、ルビィちゃんの方から抱きついてきたんだよ……」

ルビィ「もしかして今、ルビィのこと取り合ってケンカしてるの?」ヒソヒソ

花丸「新しい展開だね」ヒソヒソ

善子「とにかく! 二人も善子ちゃんにベタベタしないこと! 私の恋人なんだからねっ!」ダッ

ルビィ「……」

花丸「……」

曜「えっと……何かごめんね?」

ルビィ「曜さんってあんなにヤキモチ妬く人だった?」

花丸「善子ちゃん、曜さんと何かあったでしょ……」

曜「な、何のことかな」アハハ

……

 二年教室

善子「ったく、油断も隙もないわね……」ハァ

梨子「曜ちゃん?」

善子「あっ、ううん。ちょっとトイレに行ってくる」スタッ

梨子「私も行こうと思ってたの」スタッ
0035名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:41:36.36ID:mc7jjdA4
善子「え」

梨子「??」

善子「ちょっと待って。一緒に来るの?」

梨子「ダメ?」

善子「いや……」

梨子「いつもなら曜ちゃんの方から誘ってくるのに」

善子(何やってるのよ曜さん!)カァアア

「あっ、トイレなら私も行くよ!」

善子「千歌さんまで?」

千歌「さん付けはやめてほしいかな……」

善子「えっと、千歌ちゃんも?」

千歌「もしかして二人きりがよかった?」アハハ

梨子「ちょっと千歌ちゃん!」カァアア

善子「あの……私っていつもトイレ行くとき誘うの?」

千歌「え? うん。だいたいね」

梨子「私さっき行ったばかりなの、って言っても話し相手に連れて行かれるよね」

千歌「そうそう。善子ちゃんが聞いたら嫉妬しそうだなー」

善子「うっ……」

梨子「狭いところが苦手なんだよね。気持ちは分からないでもないかな」

千歌「一人だと寂しくなっちゃうなんて、曜ちゃんって子どもだよねぇ」

善子「うるさいわね。早く行くわよ」スタッ

……

 トイレ

善子「ふぅ……」カチャ

スルッ

善子(そっか……曜さんの体でおしっこするのは初めてなのよね)

善子(……)

チョロロ

善子(……)

チョロロ
0036名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:42:10.83ID:mc7jjdA4
善子(…………)

「曜ちゃん?」

善子「な、何よ千歌さ……ちゃん」

「紙貰っていいかな」

善子「え? もしかして確認しなかったの?」

「うん……我慢してたから」

善子「梨子ちゃんに貰いなさいよ」

「梨子ちゃん、くれる?」

「終わるまで待ってて。後でドアの上から渡してあげる」

「今欲しいんだけど」

「わがままね……」

善子「……」

チョロロ

ガチャ

「曜ちゃ……あっ」

善子「え?」クルッ

千歌「紙だけ貰っていくね」スッ

善子「ちょっ、何で!? 鍵閉まってなかった!?」

千歌「ここの鍵がユルユルなのは知ってるでしょ?」カチャカチャ

善子「し、知らないわよ……!」カァアア

千歌「じゃ」

バタン

善子(えぇ……!?)

「千歌ちゃん? あの……もしかして今、脱いだまま外出たの?」

「ちょっとだけ」アハハ

「もう! 誰かに見られたらどうするの!」

善子「そうよ! しかも他の人の個室に黙って入ってくるなんて!」

「曜ちゃんだってこの前入ってきたじゃん」

善子「えっ!?」

「そうなの?」
0037名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:42:44.36ID:mc7jjdA4
「あ、そのときは梨子ちゃんいなかったよね。っていうかもうちょっと紙置いといて欲しいよ」

「そうよね……スペアがないのはちょっと」

善子「無駄遣いする人がいるから、だったかしら」

「そうだよ。無駄遣いなんて、曜ちゃんくらいしかしないのにね」アハハ

善子「何で私」

「……」

「曜ちゃんが漏らすからだよ」

善子「……」

「拭くの私たちなんだからね? 私はまあいいけど梨子ちゃんなんていつも恥ずかしすぎて死にそうな顔してるよ」

「……」カァアア

善子「えぇ……」

「きっと今も恥ずか死寸前だよ」アハハ

「も、もう……!」

善子「えっと……いつもごめんなさい」

「いいっていいって! 生理現象だから仕方ないって曜ちゃんいつも言ってるじゃん」

「わ、私たちはともかく他の子に知られたら大変よ?」

「あー、特に善子ちゃんだけにはバレたくないよね。嫌われちゃうかも」アハハ

善子(いや、バレるも何も……)

善子(って曜さんいつも何させてるの? ううん、二人も二人よ! 私の曜さんに何して……)

ジャー

ガチャ

「ふぅ。スッキリしたぁ」

ジャー

ガチャ

「千歌ちゃん、あんまり大きな声でそういうこと言わないの」

「あはは。誰も気にしないよ」

「もう……」ハァ

「あれ? 曜ちゃんまだ?」コンコンッ

善子「な、何よ! まだ拭いてなかっただけ!」

「千歌ちゃん、行こうか」
0038名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:43:19.57ID:mc7jjdA4
「え? 待たないの?」

「テストの準備しないと。ね?」

「私は特に……」

「曜ちゃん、あんまり辛かったらメールしてね……」

善子「えっ?」

「あぁ、そういうこと! 曜ちゃんはうん……」

「千歌ちゃん?」ニコニコ

「テストのヤマも当たるといいね! 運だけに!」アハハ

「もう! 千歌ちゃん!」

ギィ

タッタッ

バタンッ

善子「何なの……」ハァ

善子(でも正直助かったわ。少し一人にしてほしかったし……)

善子(って、そろそろ拭かないと乾いちゃうわね)スッ

善子(……)

善子「こ、これは仕方ないのよ。そのままってわけにもいかないんだから」カァアア

フキフキ

善子(……)ドキドキ

フキフキ

善子(ん……)

フキフキ

ピロンッ

善子「メール? 誰からかしら……」スッ

 †堕天使ヨハネ†:善子ちゃんごめん

善子「何よ……また何かやらかしたの?」

 †堕天使ヨハネ†:間に合わなかった

 †堕天使ヨハネ†:(写真)

善子「わああ!!? 私のスカート!!」

 †堕天使ヨハネ†:さっきの上着といい本当にごめん
0040名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 15:44:51.84ID:mc7jjdA4
善子「……っ!」スッ

 曜♡善子ちゃん:今どこよ!? すぐ行くわ!

 †堕天使ヨハネ†:ううん。自分で何とかするから……

 曜♡善子ちゃん:曜さんいつもどうしてるの!? スカート濡らすなんて!

 †堕天使ヨハネ†:だって善子ちゃんタイツ履いてるんだもん

善子「あ……それでか」

 †堕天使ヨハネ†:タイツは新しいの買って返すね

 曜♡善子ちゃん:まさか脱ぐの?

 †堕天使ヨハネ†:脱ぐしかないでしょ?

 曜♡善子ちゃん:タイツの下履いてないんだけど!?

 †堕天使ヨハネ†:え

 曜♡善子ちゃん:違う! タイツ脱いだら下着になっちゃうってことよ!!

 †堕天使ヨハネ†:あぁ、スパッツ履いてないってことね

 曜♡善子ちゃん:そうよ。曜さんのことだもの、下着なんて気にするわけないし……

 †堕天使ヨハネ†:この下着は見られたら恥ずかしいよね

善子(ん……私どんな下着だったかしら)

 †堕天使ヨハネ†:うーん、セクシー♡♡

 †堕天使ヨハネ†:(画像)

善子「何してんのよ!! 下着姿で鏡……これってトイレ!?」

「え?」

善子(やば……外に人いたのね)カァアア

ガチャ

「あ、善子ちゃんここにいたんだ」

善子「まさか」クルッ

曜「善子ちゃんもトイレ? 気が合うね」アハハ

善子「ど、どうして曜さんがここに」

曜「とりあえず体操着に着替えなきゃかなって思ってさ」

善子「私の体で! そんな姿で歩かないでよ!!」バシッ!

曜「いてっ! だ、大丈夫だよ脱ぐのは中で脱いだから……」ヒリヒリ

善子「個室から出ないで!」
0042名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:46:29.24ID:mc7jjdA4
曜「誰も来ないよ」アハハ

善子「さっきまで千歌さんと梨子さんがいたし! って誰も来なければ出てもいいの!?」

曜「ところでもう終わった?」

善子「なーにがところでよ! 終わってない!!」

曜「じゃあ早めにね。テスト始まっちゃうよ」

善子「曜さんこそ、絶対に遅れないようにしなさいよ?」

曜「あっ、花丸ちゃんたちにメールしとこ」スッ

善子「余計なこと言わないでよね」

曜「ちょっとお腹痛いから何とか時間稼いでおいてっと」スッスッ

善子「だああ!!? お腹痛いとか言うな! 誤解されるでしょーが!」

曜「え? もしかして善子ちゃん、高校生にもなってまだ大きい方恥ずかしいの?」

善子「は、恥ずかしいわよ。恥ずかしいに決まってるじゃない」

曜「変に恥ずかしがってる方が恥ずかしい気がするなぁ」

善子「う……」

曜「授業中はどうしてるの? 我慢しきれないほど急に来たら?」

善子「そ、そんなこと滅多にないし……」

曜「いやー、夜中にアイス食べまくったりするとなるでしょ」

善子「私は食べまくらないわよ」

曜「今日は私の体なんだから、テスト中でも遠慮なく手を挙げなよ」

善子「え?」

曜「お腹痛いんでしょ。昨日アイス食べまくったからさ」

善子「食べまくったの?」

曜「何か無性に食べたくなってつい」アハハ

善子「バカ!! テスト中お腹痛くなったらどうするのよ!」

曜「だから、今日の善子ちゃんは私なんだからいつも通り普通に手を挙げて出てくればいいんだって」

善子「そういう問題じゃ……!」

曜「生理現象なんだから仕方ないよ」

善子「曜さん知らないの? テスト中にトイレに行くときはその時点で答案を回収されちゃうのよ」

曜「知ってるよ?」

善子「テストはいいの?」
0044名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:47:08.00ID:mc7jjdA4
曜「うーん、いつも半分以上時間余ってるからなぁ」

善子「それ、解き終えてじゃないわよね」

曜「分かる問題だけやったら十分か十五分で終わっちゃうよ」

善子「他の問題は?」

曜「やらないよ?」

善子「いや、テストなんだから努力しなさいよ」

曜「考えても分からないって分かりきってる問題に悩むなんて、それこそ時間の無駄じゃない?」

善子「無知の知みたいに言うわね」

曜「むち打ち?」

善子「何でもないわ。それよりアスリート精神はどうしたのよ。何事にも全力を尽くすんでしょ?」

曜「例えばさ、善子ちゃんは学校の屋上から飛び降りられる?」

善子「は? 無理に決まってるわ。死んじゃうわよ」

曜「何で?」

善子「『何で』? あんな高い所から落ちたら死ぬわ」

曜「何で死ぬの?」

善子「五秒もしないうちにコンクリートにぶつかって死ぬの! 想像つくでしょ?」

曜「そうじゃなくて。どうして空を飛べるかもって思わないの?」

善子「飛べるわけないでしょ!? 鳥じゃないんだから!」

曜「あ、そこは天使じゃないんだ……」

善子「どっちでもいいわよ。それに、堕天使は翼を折られてるから飛べないし……」

曜「そんな考え方で飛行機を発明できると思う? 無理だよね」

善子「……この話、テストに関係ある?」

曜「つまりさ」

曜「やってみるまで分からないことには全力を尽くすけど、やらなくても分かりきってることには無駄な労力を使いたくないの」

善子「歪んだアスリート精神ね」

曜「命は一つしかないんだから、大切にしないと」

善子「テストは努力しても死ぬことはないわよ」

曜「だから頭の中どれだけ探してもないんだって。空っぽの金庫をいつまでも漁る?」

善子「どこかにあるはずよ。授業で聞いてるんだもの」

曜「聞いてたらね」
0046名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:48:46.28ID:mc7jjdA4
善子「聞きなさいよ!」

曜「授業は貴重な睡眠時間なんだよ」

善子「そんなのでよく内申がどうのこうのって言えたわね!?」

曜「私そんなこと言ったっけ」

善子「言ったわよ! 内申に響くから赤点は取れないんじゃなかったの?」

曜「だからこうして入れ替わってもらってるわけですし」

善子「最低! こんなの替え玉受験じゃない」

曜「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ? 知らなかった?」フフッ

善子「ねぇ曜さん、スポーツマンシップって知ってる?」

曜「もちろん。船長だからね」ゞ

善子「こんな人が選手宣誓したって説得力ないわね……」

曜「あのねぇ、昨日まで私と善子ちゃんはずっと一緒に勉強したよね?」

善子「したわよ」

曜「同じ内容が頭に入ってるよね?」

善子「えっ……私は一年生の内容しか」

曜「ううん、入ってるはずなんだよ。善子ちゃんは気づいてないかもしれないけど」

善子「……だから?」

曜「どっちが受けても同じだよ」

善子「なら自分でやりなさいよ」

曜「……」

善子「最初からそのつもりだったのね」

曜「え?」

善子「私に勉強を教えてくれたのは」

善子「自分の代わりにテストを受けさせて、いい点数を取らせるつもりだったのね」

曜「あ、違うよ?」

善子「最低よ!」

曜「だから違うってば」

善子「こんなの絶対に許されないわよ! いつか必ずバレるわ!」

曜「じゃあ私が二年生のテスト受けて、善子ちゃんは一年生のテスト受ける?」

善子「当たり前でしょ!? 明日になれば戻るんだから!」
0047名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:49:30.92ID:mc7jjdA4
曜「今日受けないの!?」

善子「私まで不正に巻き込まないで!」

曜「……」

善子「いいから出てってよ。まだ拭ききれてないんだから」シッシッ

バタンッ

善子(……)

「次の日受けると得点が半分になるの知ってるよね」

善子「ええ。先に受けた人に聞けば、事前にある程度問題を知ることは可能だから」

「せっかく勉強したのに」

善子「そう思うならこんなことしなければよかったでしょ?」

「……」

善子「どうして私まで半分にならなきゃいけないのよ……」

「今日受けようよ」

善子「は? 不正はしないって言ったわよね」

「だからさ、善子ちゃんは善子ちゃんとして受ければいいんだよ」

善子「無理よ! どう見たって曜さんじゃない! 誰が私だって信じてくれるの!?」

「私が本当のことを先生に話す……」

善子「やめて!! 私まで頭がおかしいと思われちゃう!」

「え……」

善子「どうしてこんなことしたのよ……」グスッ

「……」

善子「……」フキフキ

ガチャ

曜「あ、あのさ」

善子「入ってこないで」

曜「体調が悪いって言って保健室で受けさせてもらえないか頼んでみるよ」

善子「私は嫌よ。どうして嘘をつかなきゃいけないの」

曜「だから、私が保健室で受けさせてもらえるように頼むからさ」

曜「善子ちゃんは善子ちゃんとしてテストを受けてくれればいい」

善子「周りから見て替え玉には変わりないわ。バレるに決まってる」
0048名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:50:04.59ID:mc7jjdA4
曜「保健室に誰もいなかったら?」

善子「は? 誰も監督の人がいないなんてありえないわ」

曜「ふふ。どうかな」

善子「待って。テストの日だって保健の先生は来てるわよね?」

曜「まあ私に任せて」

善子「嫌よ! どうして訳も分からないまま任せなきゃならないの?」

善子「第一、監督の先生がいないんじゃそんなの……」

曜「教科書もスマホも見放題だね」

善子「……そうよ」

曜「でも善子ちゃんは不正はしないんでしょ?」

善子「……」

曜「私はしちゃうかもなぁ」アハハ

善子「曜さんだってしないわよ」

曜「赤点は取りたくないし」

善子「腐ってもアスリートだもの」

曜「そんなに腐ってるかな」

善子「目も耳も頭もね。性格だって相当腐ってるわ。それでも……」

曜「嫌いにならないでくれるんでしょ?」

善子「……私の台詞取らないで」カァアア

曜「善子ちゃんに不正の片棒を担がせるなんて……私ってバカだよね」フフッ

善子「……」

曜「善子ちゃんは私と違って……まともな生徒だもんね」

善子「……」

……

……

 保健室

ガラッ

曜「あー、げほっごほっ! 体調悪いわー」

先生「あら、大丈夫?」

曜「え」
0049名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:50:43.38ID:mc7jjdA4
善子「……」ジロッ

先生「えっと……津島さんもここで受けるの?」

曜「そ、そうですけど……」

先生「渡辺さんも、やっぱり少し頑張って受けたら?」

善子「いえ、私は……」

先生「もちろん無理してほしいわけじゃないの。でも……明日受けるとなると得点は半分よ」

善子「そんなの、分かってるわよ……」

先生「お腹が痛いのよね? トイレには行っていいから、ちょっとだけ頑張ってみない?」

曜「……」

先生「もちろん、トイレに行ったからってそこで試験終了にはしないわ」

先生「ただし、教科書やノート、スマホは預からせてもらうけどね」

善子「でも私……本当に」

曜「そ、そうですよ。渡辺さんはこう見えて体調悪そうだし……帰らせてあげても」

先生「替え玉しようったってそうはいかないわよ」

善子「え?」

曜「はは……何のことでしょうか」アハハ

先生「一度ね、その手を使われたことがあるから分かるのよ」

善子「……」

先生「と言っても、もう二十年くらい昔の話なんだけど」

先生「私だって養護教諭だから、生徒を疑うなんてしちゃいけないと思ってるわ」

先生「見た目で体調を判断するなんてね」

先生「だから津島さん、あなたがもし仮病だとしてもここで受けることは認めてあげるつもりよ」

曜「け、仮病なんてそんな」

先生「渡辺さんの方は平気そうな顔してるけど本当にお腹が痛そうね」

善子「はい……」

曜「……」

先生「さ、二人分の問題と答案を貰って来ないとだから」スタッ

先生「他には来ないでしょうね? さすがに三人も見るのは大変だわ……」ガラッ

ストンッ

善子「……」
0050名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
垢版 |
2018/03/10(土) 15:51:22.27ID:mc7jjdA4
曜「……」

善子「どうするのよこれ」

曜「どうって……」

善子「先生、いないんじゃなかったの」

曜「……」

善子「このままじゃ本当に」

曜「分かってる。何とかするから……」

善子「無理よ。私たちはそこのついたてで仕切られて、この椅子で先生に見られながら試験を受けるのよ?」

善子「曜さんが何をしたってすぐバレるわ」

曜「途中で私が吐きそうになるから、その間に答案を交換するとか」

善子「それも不正よね」

曜「……」

善子「もう無理よ。諦めて帰りましょう」

曜「待ってよ……それじゃ本当に赤点だ」

善子「いい加減にしなさいよ」

曜「明日になれば得点は半分! インフルエンザでもない限り……」

善子「まだ自分の心配してるの!? 曜さんって本当に、どうしようもなく最低ね」

曜「私は……善子ちゃんのために」ボソッ

善子「は?」

曜「善子ちゃんに赤点取ってほしくないから」

善子「もう一度言ってみなさい……」ガシッ

曜「知ってるよ。善子ちゃんの成績が本当に危なくて……りゅ、留年スレスレだってこと」

善子「……」

曜「ごめん。善子ちゃんの通知表見ちゃったんだ」

善子「そう……」パッ

ドサッ

曜「だから一緒に勉強して、こんな私でも教えてあげられればいいかなって思ったの」

曜「でも無理だよ……。善子ちゃん、頭悪すぎて私には」

善子「……」イラッ

曜「私ですらあそこまで酷くないよ!? こんな言い方しちゃいけないのかもしれないけど……」
0051名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
垢版 |
2018/03/10(土) 15:51:58.77ID:mc7jjdA4
曜「どうやって高校入ったの?」

善子「どうって……入学試験を受けて合格したのよ」

曜「嘘。あんな成績で受かるわけがない」

善子「本当よ」

曜「裏口だよね」

善子「は? そんなお金ないしあったとしてもやらないから」

曜「……」

善子「別に信じてくれなくてもいいわ」

曜「今日のテスト、私が代わりに受ければ……」

曜「これでも二年生だからさ、一年生の問題くらい赤点取らずに済むだろうって」

曜「……」

善子「それで私と」

曜「うん……。留年した子、だいたいみんな学校やめちゃうから」

善子「そうなの」

曜「一年かけて分からなかったことを、もう一年かけて分かるようになれるかな?」

曜「その自信が持てるくらいなら……最初から留年なんてしてない」

善子「……」

曜「ほら、浦女ってこう見えてそこそこ頭いい学校でしょ? 偏差値だってかなり上位だし」

善子「……入るまで知らなかったのよ」

曜「入学試験をたまたまパスしちゃったのは私も同じだよ」

善子「え……?」

曜「絶対受かるわけないって思ってた。それでもみんなと同じ高校に行きたくて」

曜「必死で勉強して、気づいたらさ」

曜「この制服を着てたんだよね」

善子「それは……たまたまなんかじゃないわ。曜さんが努力したからよ」

曜「合格点ギリギリだったよ」

善子「それでも合格は合格よ。私もね」

曜「そんな努力、三年間もずっとやらなきゃいけないのかな」

曜「そう思うとね……いっそ留年してやめちゃった方が楽なのかも」

曜「まあ、そんな勇気なくて進級はしたけどさ」
0053名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
垢版 |
2018/03/10(土) 15:52:36.50ID:mc7jjdA4
善子「曜さんはもうあと半分ないじゃない。その調子で頑張りなさいよ」

曜「善子ちゃんこそ! まだ諦めちゃダメだよ!!」

善子「……」

曜「大丈夫だよ……まだ一年生なんだから」

曜「進級さえできれば、別の学校に転校したって……」

善子「え?」

曜「私と転校しようか」

善子「何言ってるの?」

曜「私はもう二年生だから……この時期に転校なんてバカみたいだと思われるだろうけど」

曜「善子ちゃんと一緒ならもう一度二年生をやってもいい」

善子「……」

曜「無理せず新しい学校で頑張ればそれで……」

善子「冗談? 悪いけど全然面白くないわよ」

曜「本気だよ」

善子「は……? じゃ、じゃあAqoursは? やめるの?」

曜「同じ学校の生徒じゃないとダメかな?」

善子「そんなの……」

曜「他の学校に移ってもさ、やめろなんて言わないよ。みんな優しいから」

善子「それは……そうかもしれないけど」

曜「今みたいに勉強に時間取られなくて済めばもっと練習できるし……」

曜「衣装だってもっと締め切りに余裕持って作れるし、その分もっといいものにできるはず」

曜「善子ちゃんとも遊べるしね」アハハ

善子「そんなの願い下げだわ」

曜「え?」

善子「私はこの学校をそこそこ気に入ってるつもりよ。だからやめる気なんてない」

曜「……」

善子「もし留年したって、絶対に卒業してみせるわ」

曜「留年したことがないから言えるんだよ」

善子「曜さんだってないくせに。してから言いなさいよ」

曜「ないよ。ないけどさ」
0054名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:53:18.40ID:mc7jjdA4
善子「何?」

曜「留年が決まってやめてっちゃった子、どうなったと思う?」

善子「知らないわよそんなの。勝手にやめたんでしょ」

曜「……」

善子「曜さんは転校したいならすればいいし、やめたいならやめればいい」

善子「まあ、本当のことを言えば一緒にいたいのは確かだけれど」

善子「曜さんは勉強なんかに時間を取られたくないものね?」

曜「みんなは知らないんだ」

善子「……」

曜「ここをやめた後、しばらくは地元で働いてたんだけど」

曜「高校をやめたのがバレてクビになって、仕事を探しに東京に行って、一年もしないうちに……」グスッ

善子「し、知らない! 曜さんはそんなことにはならないでしょ?」

曜「ならないよ。善子ちゃんと一緒なら」

善子「私と一緒じゃなくてもよ」

曜「……」

善子「曜さんさえよければ、今のまま恋人で……」

曜「絶対嘘だよ」

善子「どうしてよ。曜さんは私を嫌いになるの?」

曜「留年してやめるような子だよ? そんな子と一緒にいたら善子ちゃんが恥ずかしい思いするだけだよ」

善子「あのねぇ」

曜「善子ちゃんには迷惑かけたくないよ……」グスッ

善子「本当にそう思ってるならこんなことしないわよね」

曜「うん……そうだね……」

善子「って、過ぎたことをあれこれ言っても仕方ないか」スタッ

曜「……」

善子「今日は帰るわ。朝まで本気で勉強すれば、例え半分でも赤点は避けられるはず」

曜「本気で言ってるの?」

善子「そこまでバカに見える?」

曜「見える……って言ったら怒るかな」

善子「やってみなきゃ分からないじゃない」
0056名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:54:56.18ID:mc7jjdA4
曜「……」

善子「曜さんは? 私のために替え玉で受けるなんてやめてよね」

曜「バレないと思うけどな」

善子「私が嫌なのよ」

曜「……分かったよ」

善子「はぁ……」

曜「ごめんなさい……私のせいで得点が半分になっちゃって」

善子「謝って許されるとでも思ってるの?」

曜「ううん……」

善子「もういいわよ」

ガラッ

先生「……」

善子「先生あの……」

先生「ごめんなさい。聞いちゃったわ」

曜「え……」

先生「あなた達……もしかして」

善子「すみません。体調が悪いので帰ります」スタッ

曜「待ってよ善子ちゃん!」ガシッ

先生「……やっぱり」

曜「あっ……待ってよ曜ちゃん」

先生「いいから、早く席につきなさい」

善子「明日受けるので……その、得点は半分でいいですから」

曜「ダメだよ曜ちゃん! 自分がどれだけ頭が悪いか分かってないの!?」

善子「曜さんに頭が悪いなんて言われたくない!」

曜「わ、私も悪いよ? あと私は善子ちゃん……」

善子「私は頭が悪いかもしれないけどね、曜さんは頭がおかしいのよ。だから平気であんなこと言えるの! 私の気持ちも考えないで!!」

曜「だ、だから私が善子ちゃんで善子ちゃんは私……あれ?」

善子「曜さんとだから頑張れたのに」ボソッ

曜「え?」

善子「勉強よ! 曜さんとだから頑張れたの!!」
0057名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:55:40.69ID:mc7jjdA4
曜「私だって同じだよ……」

善子「でももういいわ。私一人でも頑張ってみせる。だって曜さんは留年して転校しちゃうんだものね?」

曜「っ……」

善子「新しい学校で頑張ってね。応援はしてあげる……これでも恋人だから」

曜「……やだ」

善子「さよなら。それと先生、うるさくしてごめんなさい」ペコッ

先生「……」

ガラッ

ストンッ

曜「……」

先生「はぁ……」

曜「ごめんなさい」グスッ

先生「あなたたち、どこかで見たことがあると思ったら……そういうことだったのね」

曜「え……?」

先生「二十年前の替え玉事件」

曜「わ、私たちは替え玉なんて……」

先生「正確には替え玉未遂事件なんだけど」

曜「……」

先生「まあいいわ、とりあえず追いかけてあげなさい」

曜「私は……」

先生「いいから追いかけなさい」

曜「そんな資格ないです」

先生「早く! じゃないと半分どころかゼロにするわよ!」

曜「……」

先生「渡辺さん!!」

曜「っ!!」ダッ

ガラッ! バタンッ!!

ダッダッ

先生「ふぅ……手のかかる親子だこと」ハァ

……
0058名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
垢版 |
2018/03/10(土) 15:56:19.41ID:mc7jjdA4
 玄関

善子「靴がキツい……」

善子「あっ、今の私は曜さんだったわね」

善子「……」

ダッダッ

「善子ちゃん!」

善子「何? 私は曜さんだけど」

曜「先生、テスト受けさせてくれるって!」

善子「は? 不正ならしないわよ」

曜「だから、私が二年生のテストを受けて、善子ちゃんは一年生のテストを受けていいって!」

善子「……え?」

曜「私たちが入れ替わってること、何でバレたんだろう?」

善子「曜さんが私のこと『善子ちゃん』って呼ぶからでしょう!?」

曜「いや、善子ちゃんの方が……」

善子「って、そういう問題じゃないわね」

曜「普通は信じないよね」

善子「信じるわけがないわ」

曜「でも信じてくれたよ」

善子「……」

曜「私、本当は浦女やめたくない」

善子「そう」

曜「みんなと一緒に卒業したい!」

善子「その成績で?」

曜「こ、これから頑張る……」

善子「……」

曜「だから、その……」

善子「仕方ないわね。私も付き合ってあげるわよ」

曜「本当?」

善子「当たり前でしょ。私は曜さんの恋人なんだから」

曜「留年しても嫌いにならないでくれる?」
0059名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:56:50.19ID:mc7jjdA4
善子「留年したら別れる」

曜「えぇ!? 今よりもっと一緒にいられるのに!」

善子「そこまで曜さんが最低だったら付き合える自信がないわね」

曜「でも……」

善子「それとも、もう一回二年生しないと私の気持ちなんて分からない?」

曜「分からないよ」

善子「本当に?」

曜「……」

善子「とりあえず、保健室に戻りましょうか」

曜「善子ちゃんが頑張るって言ってるのに、私だけ頑張らないわけにはいかないよね」

善子「別に私のためにじゃないでしょう」

曜「一緒に進級しよう。それで一緒に……」

善子「卒業は別々」

曜「あ、そっか……」

善子「はぁ……」

曜「テスト、本当はもう始まっちゃってるよね」

善子「まだみんな解き終えてないもの。ネタバレはされようがないわ」

曜「途中でトイレに行った子がいるかも」

善子「まだ開始十分よ。そんな子いるわけ……」

ギュル

曜「?」

善子「う……」

曜「どうしたの?」

善子「夜中にアイス食べまくるのはやめなさい……」

曜「え、もしかして」

善子「いいから……トイレに連れて行きなさいよ」

曜「善子ちゃん、漏れそう?」

善子「早く……」プルプル

曜「分かった! 私もさすがにそっちの趣味はないからね!」ガシッ

ダッ
0061名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:58:20.69ID:mc7jjdA4
……

……

 保健室

先生「もうそろそろ時間ね。解き終えたかしら?」

曜「もう少し」

善子「さっきから一ミリも動いてないわよ」

曜「まだ考えてるんだよ」

善子「そう……」

先生「津島さんの方は回収しても?」

善子「あ、はい」つ

先生「どれどれ……? うん、赤点は免れそうね」

曜「本当ですかっ!!?」ガタッ

善子「わっ、何よ急に」

先生「採点はしてないから正確な点数までは分からないけど……」

先生「これは確実に合ってるし、ここも……あとここも」

先生「間違いなく半分以上正解してるわね」

曜「そっかぁ……」ホッ

ピピピ

先生「あ、時間ね。渡辺さんもペンを置いて」

曜「はーい……」コロンッ

先生「えーと、渡辺さんは……」ジー

曜「私も半分以上取れるかな。けっこう埋まったし」

先生「ここは不正解、ここも……あっ、ここは合ってるわ。ここは間違いね……」

善子「何だか怪しい感じね」

曜「そんなに間違ってないよね!?」

先生「うーん、どうかしら……」ハァ

曜「えっ、ちゃんと採点して! 赤点だったら大変だ!」

先生「いいけど、模範解答があるわけじゃないから誤差は許してね?」

善子「解答がないのに採点できるんですか?」

曜「あっ、それ聞いたことあるよ。学校の先生って偉そうなこと言ってるくせに、生徒と同じテスト解かせたら全然取れないって」
0062名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:59:00.78ID:mc7jjdA4
先生「そういう先生もいることは確かね……」

曜「自分が解けないような問題作るのっておかしくない?」

善子「って言われてもこれ、業者が作ったテストだから」

曜「うっ……」

先生「これはギリギリかもしれないわ……」

善子「そんなに間違ってるの?」ペラッ

曜「あっ、ダメだよ他の人の答案見ちゃ!」

善子「解き終えたとはいえ不正になるのかしら」

先生「ならないわよ。幸い、今日は欠席の生徒はいないようだし」

善子「それなら問題ないわね。どれどれ……?」

曜「見ないでぇー!」

善子「んん?」

先生「あ……これはギリギリセーフ? いやアウト……」

曜「やめて! 実況しないでぇ!」

善子「ねぇ、私の答案見せてくれる?」

先生「いいわよ」サッ

善子「問題用紙も。大丈夫、書き加えたりはしないので」

先生「見るだけなら」サッ

曜「あぁ……」

善子「これ、半分くらい同じ問題じゃない?」

曜「え?」

先生「ええ、そうよ。半分は一年生から三年生まで共通」

先生「残りの半分が学年に応じた内容になってるわ」

善子「」

曜「そうだったんですか!?」ガタッ

先生「渡辺さんは去年も受けたでしょうに」クスクス

曜「そうだっけ?」アハハ

善子「ねぇ曜さん」

曜「ん?」

善子「これ、替え玉しなくても同じじゃない?」
0063名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 15:59:31.60ID:mc7jjdA4
曜「同じじゃないよ。私の名前で善子ちゃんが解いてくれれば……」

善子「さっき私のことバカにしてなかった?」

曜「し、してないよ?」

善子「私がバカ過ぎて、教えても無駄だとか何とか」

曜「そんな言い方はしてない! 私の教え方が悪いだけだし……」

善子「……」

曜「さっきはごめん。いくら焦ってたとはいえ、酷いことたくさん言っちゃったよね」

善子「許さないわよ」

曜「善子ちゃんは頭はよくないけど、バカなんかじゃないよ」

善子「頭が悪い方は否定しないのね……」

曜「だって善子ちゃんだよ? 私なんかを好きになっちゃうような人だよ??」

善子「曜さんは間違いなくバカだし頭も悪いどころかおかしいわ」

曜「う……」

善子「でも好きでいてあげる」

曜「ありがと」

先生「うっ……何だか胸焼けが」

曜「二日酔いかな? 保健の先生なんだからまずは自分の体をね」

善子「それより、採点はどう?」

先生「まあ、赤点は避けられそうよ。と言ってもかなりギリギリなんだけど」

曜「っし!」グッ

先生「津島さんの方は頑張ったわね。平均点超えてくると思うわ」

善子「嘘っ!?」

先生「ざっと見積もって八十点……。よくあの成績からこの数字を出したものだわ」

曜「私の脳みそだからだね」

善子「いや、関係ないでしょ」

曜「私だってそっちの頭なら取れたもん……」

善子「一緒に勉強したら同じ内容が入ってるんじゃなかった?」

曜「そ、それは善子ちゃんを励ますための方便というか」

善子「曜さんこそ、私の頭を使っておいてその点数はないんじゃない?」

曜「だってこの体全然思うように動いてくれないし……」
0064名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 16:00:02.06ID:mc7jjdA4
善子「むっ……体力ないのは認めるわ」

曜「でも、何だか元気が出てきたよ」

善子「え?」

曜「私の頭でも頑張ればそのくらい取れるんだって分かったし」

善子「これは私の努力だから」

曜「いや、私の頭だね」

善子「……」

曜「私も同じくらい努力したよね!?」

善子「心構えが違うのよ。曜さんはやる前から諦めてたじゃない」

曜「う……」

善子「って言うか私と半分同じテスト受けて私の半分しか取れないって……」

曜「向き不向きがあるから仕方ないよ」

善子「曜さんこそよく進級できたわね」

曜「死ぬほど頑張ったから」

善子「あと一年ちょっとだもの、死なない程度に頑張りなさい」

曜「一緒に頑張ってくれる?」

善子「ええ。もちろんよ」

曜「えへへ。持つべきものは善子ちゃんだね」

善子「私も曜さんのおかげで頑張れたし……」ボソボソ

先生「あー、盛り上がってるところ悪いんだけど」

曜「はい?」

先生「まだ一教科しか終わってないわよ」

曜「」

善子「知ってるわ」

先生「どうする? 津島さんはともかく、渡辺さんは教室に戻ってもらっても……」

曜「善子ちゃんと一緒じゃなきゃ嫌です」

善子「……」カァアア

曜「次こそ高得点取ってギャフンと言わせてやる」

善子「これで赤点だったら本当に恥ずかしいわよ」

曜「くっ……」
0065名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 16:00:34.64ID:mc7jjdA4
先生「ほら、休憩してらっしゃい」

善子「ええ」

曜「はーい……」

……

……

 テスト終了後

曜「終わったぁ……」

善子「中々いい感じだったわ」

先生「見た感じ、二人とも赤点は回避できそうね」

曜「本当によかったよ」

善子「私のおかげじゃない」

曜「そうだね」

善子「ううん、曜さんが頑張ったからよ」

曜「……そうだね」フフッ

善子「って、ちょっと上から目線かしら?」

曜「実際あの点数見たら反論できないよ」

先生「津島さん、どうして今までこんな成績だったのかしら……」

善子「そりゃ死ぬほど努力したもの。でももう二度とごめんだわ」

曜「私となのに?」

善子「曜さんも。これからは毎日少しずつやりましょ」

曜「うん」

先生「そういえば生徒会長の黒澤さんは毎日三時間欠かさずに勉強されてるそうよ」

曜「あ、無理です」

善子「一緒に付き合わされてるルビィはそこまでよくないみたいだけど……」

曜「ダイヤさんどんな教え方してるんだろ? 今度教わってみたいなぁ」

善子「たぶん曜さんが想像してるような甘いものじゃないと思うわよ」

曜「って言うかママに教わればよくない? 先生じゃん」

善子「ママにだけは教わりたくないわね……」

曜「私は教わりたいな」

善子「絶対にダメ」
0067名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 16:02:13.65ID:mc7jjdA4
曜「……」

善子「曜さんのお母さんは? 成績良かったんじゃないの?」

曜「……あれで?」

善子「それは私も思うけど可哀想だから言わないであげて」

先生「……」

曜「さてと、そろそろ帰らないとかな」スタッ

善子「あぁ、帰りは家まで走って帰るんだっけ」

曜「えぇ!? 疲れたしバスで帰ろうよ」

善子「何だか座ってばかりで体がムズムズするのよ」

曜「私の体だもんね」

善子「そうだわ、今夜果南さんと走らない?」

曜「日付変わってからならいいよ」

善子「嫌よ。この体のうちにしかできないことをしておかなきゃ」

曜「あっ……それで朝トイレで」

善子「ち、違うし! 曜さんこそ私の体で変なことしないでよ!?」

曜「してないよ」

善子「スカートは?」

曜「……」シュン

善子「さっき気づいたんだけど、制服交換してあったのね」

曜「うん。言わなかったっけ?」

善子「曜さんが汚したのは自分のスカートね。タイツは私のだけどそんなに高くないからいいわ」

曜「大切にするね」

善子「やっぱり返して」

曜「新品で返すよ」

善子「……」

先生「さ、そろそろ帰りなさい。私も答案を担任の先生に渡しに行かなきゃだから」

曜「ありがとうございました」

善子「本当に助かったわ」

先生「私は何もしてないわよ。各自自分の名前を書いて解答しただけでしょう?」

曜「おまけに速報まで頂いてしまって」
0068名無しで叶える物語(もんじゃ【15:42 震度2】)
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2018/03/10(土) 16:02:53.66ID:mc7jjdA4
善子「不安なまま家に帰らずに済んだのはよかったわね」

先生「二度と替え玉なんてバカなことはしちゃダメよ」

曜「やだなぁ、未遂じゃないですか」アハハ

善子「未遂でも不正をしようとしたのは事実でしょ」

曜「不正……不正なのかな?」

善子「不正よ」

曜「私が善子ちゃんじゃないってどうやって証明できる?」

善子「は? 私が曜さんの中にいるんだもの、私の中に曜さんがいるに決まってるじゃない」

曜「そりゃ私たちは当事者だからね? でも他の人からは分からないよ」

善子「……」

曜「私が渡辺曜として解答したことの方が不正だったりして」

善子「そ、それは……」

曜「まあ、バレずに済んだからいいけど」

先生「……」

善子「そういえば、私たちが入れ替わってることどうして信じてくれたのよ?」

先生「生徒を信じるのが先生の仕事だから」

曜「私たちが入れ替わってるって嘘ついて替え玉したかもよ?」

先生「あ」

善子「え? って言うか普通そっちを疑わない?」

先生「ううん、そんなはずないわ。こんなに綺麗な目をしている子たちが嘘をつくなんてあるわけない」

曜「ごめんなさい。ちょっと先生とは歳が離れすぎてるかな」

善子「口説いたわけじゃないわよ」

先生「ちょっと待って。本当はどっちなの?」

曜「どっち? 何が」

善子「私が津島善子です。今は曜さんの体だけど……」

曜「私も善子ちゃんだよ。中身は私だけど」

先生「???」

善子「やめなさいよ。先生困ってるわ」

曜「私たちのこと信じてくれたわけじゃなかったんだね……」

先生「あなた達のことは信じてるわよ? でも、本当に入れ替わって……??」
0069名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:03:27.01ID:mc7jjdA4
先生「ううん、そんなことあるわけない」

善子「生徒を信じるのが先生の仕事なんじゃなかったの」

先生「ごめんなさい、頭が痛くなってきたわ……」ハァ

曜「あはは。先生面白いね」

先生「一応確認しておくけれど、替え玉はしてないのよね?」

善子「してないわ。ちゃんと私は私として解いたもの」

曜「私も。筆跡見てもらえば分かって貰えるかな」

先生「私は何も聞かなかったわ。体調の優れない生徒二人をここで受けさせただけ」

先生「とりあえずカンニングはしてなかったからこの答案は有効よ」

善子「……」

曜「大丈夫ですか? 顔色悪いですけど」

先生「答案届けたら休む……」フラッ

ガラッ スタスタ

善子「何だか申し訳ないことをしたわね」

曜「やけに物分りがいいって思ったんだよねぇ」

善子「本当は分かってなかったのね」

曜「普通は信じられないよね、こんなこと」

善子「はぁ……私までフラフラしてきたわ」フラッ

曜「おっと」ガシッ

善子「テスト中は何とか耐えたけど……これも入れ替わりの副作用?」

曜「完徹したからかな」

善子「あっ……そういえば教科書を読み漁ったって言ってたわね」

曜「よくその頭であの点数出したね」

善子「……」フラッ

曜「大丈夫? ちょっと休んでから帰ろうか」

善子「ええ、そうするわ」

曜「それじゃ、ベッドまで」ガシッ

善子「わっ」

曜「うぅ……! 重たい!!」ツルッ

ズテッ
0070名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:03:58.31ID:mc7jjdA4
善子「いったた……」

曜「ごめん」

善子「無理しなくていいわよ。曜さんは重いんだから」

曜「重くないよ!」

善子「私に比べてよ。太ってるって意味じゃないわ」

曜「この体が力ないだけだもん!」

善子「どっちでもいいわよ……」スタッ

ギシ

善子「少し寝るわ。曜さんは先に帰ってていいから……」バサッ

曜「何言ってるの。私もいるよ」

善子「好きにしなさい……」スゥ

曜「うん」

善子「すぅ……」

曜「早い! さすが私!」

善子「……」

曜(寝てる自分を眺めるのも変な気持ちだな……)

曜(……)

曜「私って意外と……」スッ

善子「ん……」ムニャ

曜「可愛い?」

善子「すー……」

曜(ううん。中身が善子ちゃんだからだよね)

曜(それと、今日は薄くだけどメイクもしてるし)

曜(今度からメイクしてみようかな……)

曜(善子ちゃん喜ぶかな)エヘヘ

スッ

曜「ごめんね。私のせいで……」

善子「……」

曜「目が覚めたら戻ってるから」スタッ

……
0071名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:04:31.25ID:mc7jjdA4
……

 ???

善子「うぅ……寒い」ガタガタ

善子「ここどこ?」キョロキョロ

善子「そっか……夢の中ね」

善子「……」スタスタ

善子「お風呂発見」

善子「早く温まりたいわ……」タッタッ

タッタッ

曜「えへへ」

善子「あ、曜さん……」

曜「え?」クルッ

善子「私も入っていいかしら?」

曜「私はいいけど……ヨハネちゃんは?」

ヨハネ「誰あなた」

善子「はい?」

ヨハネ「名前。私はヨハネ、見ての通り天使よ。こっちは下僕の曜ちゃん」

曜「えっとね、ヨハネちゃんは私の恋人なの……♡」カァアア

善子「えっ」

ヨハネ「ちょっと、恥ずかしいから言わなくていいわよ」カァアア

曜「どうぞ。寒かったでしょ?」

善子「ええ、まあ……」

ヨハネ「……」ジー

善子「な、何よ」

ヨハネ「あなたどこかで……」

曜「あっ、ヨハネちゃんだめだよ? 可愛いからって手を出しちゃ!」

ヨハネ「出さないわよバカ!」

曜「ねぇねぇ! 名前何ていうの?」

善子「私は……」

善子「……」
0072名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:05:04.50ID:mc7jjdA4
ヨハネ「??」

善子「あれ、私……」

曜「とりあえず入ったら? 寒いでしょ」

ヨハネ「服は脱いで入ってよね」

善子「わ、分かってるわよ……」スルッ

曜「……」ジー

ヨハネ「ちょっと曜ちゃん?」

曜「えっ? 見てないよ」

ヨハネ「いや、完全に見惚れてたわよね」

善子「……」シュルッ

曜「……」ジー

善子「わっ!? な、何よ曜さん」

曜「ヨハネちゃんに似てる?」

ヨハネ「は? こんな地味な子と一緒にしないで」

善子「うっ……」

曜「ヨハネちゃん? 相手は一般人だよ」

ヨハネ「あ、そっか……よく見たら羽も生えてないみたいだし」

善子「羽?」

ヨハネ「これよ。背中に生えてるの」ファサッ

曜「ヨハネちゃんは黒くてシュッとしててカッコいい羽だよね。私のは白くてフワフワしてて何だか子どもっぽい」フワッ

善子「曜さんにまで……」

ヨハネ「見たところただの人間ね。どうしてこんなところに来たの?」

善子「保健室で寝てたらいつの間にか夢の中で……」

曜「あはは。変な子」

ヨハネ「まあいいわ。入ってもいいけど曜ちゃんには近づかないでよね」

曜「何で?」

ヨハネ「あなたが人間で汚れたら困るもの」ナデナデ

曜「ヨハネちゃん……♡」ウットリ

善子「……」イラッ

ヨハネ「どうしたの? 入らないの?」
0075名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:07:44.05ID:mc7jjdA4
善子「入るわよ。端っこの方でね」チャプ

曜「……」

善子(温かい……)フゥ

曜「ねぇ、名前教えてくれないの?」

善子「な、名前ね。名前……」

ヨハネ「言いたくないならいいわよ」

善子「待って。どうして思い出せないの……」

曜「名無しのなし子ちゃん」

善子「それは梨子さんに悪いからダメ」

ヨハネ「梨子さん?」

善子「りこ、よ。なしこじゃないわ」

ヨハネ「ふーん……」

曜「本当に思い出せないの?」

善子「梨子さんのことも、曜さんのことも、そこにいる……ヨハネのことも知ってるわ。なのに私」

善子「私って誰だっけ……」

ヨハネ「ヨハネたちのこと知ってるの? 人間のくせに博識ね」

曜「どこかで会ったかな?」

善子(私の恋人よ……)

ヨハネ「え?」

曜「私の恋人はヨハネちゃんだけだよ」アハハ

善子「何で聞こえてるのよ! 声に出してないんだけど!?」カァアア

ヨハネ「……あなた曜ちゃんのこと知ってるのね?」

善子「ええ。あなたと同じくらいには」

ヨハネ「……」ジー

曜「えっと……私のこと知ってるの?」

善子「知ってるわ。曜さんが浮気性なことも」

ヨハネ「浮気?」ジロッ

曜「いや、この子が勝手に言ってるだけだから……」

ヨハネ「まさかヨハネとの契約を忘れたわけじゃないでしょうね?」

曜「忘れるわけないよ。私は一生ヨハネちゃんに尽くす下僕だよ?」
0076名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:08:19.99ID:mc7jjdA4
ヨハネ「どさくさに紛れてちゃん付けで呼ぶな! ヨハネ『様』でしょ?」

曜「ずっと呼んでたけどな……」

ヨハネ「ヨハネ『様』よ。はい呼んで」

曜「ヨハネ……様」

ヨハネ「ふんっ。油断も隙もないわね……」

善子「えっと……」

曜「あなたが変なこと言うせいでヨハネちゃ……ヨハネ様の機嫌を損ねたじゃん」

善子「ご、ごめんなさい。でも私、本当に曜さんのこと知ってるんだもの」

曜「全く、冗談は善子ちゃんだよ」

善子「善子……?」

ヨハネ「だっさい名前ね。あなたにお似合いだわ」クスクス

曜「そんな言い方ないんじゃない?」

ヨハネ「は? 何よ、この子のこと好きなの? ヨハネよりもこの地味で羽もない人間がいいってわけ?」

曜「そ、そうは言ってないけど」

善子(私、夢の中でも面倒くさいわね……)ハァ

善子「ん? 私??」

曜「善子ちゃん、何だか記憶が曖昧みたいだし……きっと人間界からこっちに来て困ってるんだよ」

ヨハネ「だから何よ。戻りたいならそこから飛び降りればいいじゃない」

善子「私……ヨハネ? ヨハネなの?」

曜「え?」

ヨハネ「あなたもブツブツ言ってないで早く帰りなさい」

善子「そう……私なのね? あなたは私、そうでしょ?」

ヨハネ「は……? 何この子頭大丈夫?」

曜「ヨハネちゃん、そんな言い方」

善子「あなただったのね」

ヨハネ「バカなこと言ってないで早く帰りなさい。もう温まったでしょう」

曜「まだ五分も入ってないけどな」

善子「あのとき私の頭に話しかけてきてたのはヨハネ」

善子「もうひとりの私」

ヨハネ「曜ちゃん、この子本当にヤバいわよ」
0077名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:08:56.80ID:mc7jjdA4
曜「……」

善子「曜さんの恋人は私よ。あなたじゃないわ」

ヨハネ「な、何言ってるのよ!? どうして人間なんかが曜ちゃんと!」

曜「善子ちゃん……?」

善子「私……」

曜「善子ちゃん、だね?」

善子「ええ」

曜「そっか」

ヨハネ「曜ちゃん近づきすぎよ! その子……そいつは人間なの! 離れて!!」グイッ

曜「わっ」

ザブン

善子「私の名前は善子……」

ヨハネ「あなたも! 名前がわかったならもういいでしょ? さっさと帰りなさい!」

曜「ごぼごぼ」

善子「帰るって……どこに?」

ヨハネ「『どこに』?? 人間界から来たんでしょう!? そもそも何しに来たのよ!」

善子「曜さん、大丈夫?」グイッ

ザパァ

曜「ぷはっ……。それが分からないから困ってるんだよね?」ケホッ

善子「ええ」

ヨハネ「あなたが言う『夢の中』なら、そこから飛び降りれば戻れるんじゃない?」クスクス

善子「そこ……」スタッ

ヨハネ「下、見える? 人間界よ」

善子「高っ!!」

ヨハネ「さあ、行きなさい。もう二度と来ないでね」フフッ

善子「ここから降りれば……」ゴクリ

曜「待って!!」

善子「え?」

ヨハネ「何よ、邪魔しないで」

曜「羽もないのにこんなところから落ちたら死んじゃうよ!!」
0078名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:09:32.38ID:mc7jjdA4
善子「ゆ、夢の中だもの……」

曜「ヨハネちゃん! 善子ちゃんに羽がないの知ってて飛ばせようとしたね!?」

ヨハネ「ええ。だってこんな子」トンッ

善子「きゃっ……!?」

曜「危ないっ!」ガシッ

善子「曜さんっ!」ギュッ

ストンッ

曜「ふぅ……」

ヨハネ「何よ……ヨハネよりそっちの人間がいいわけ?」

曜「どうしてこんなことするの」

ヨハネ「そいつはここに相応しくない。曜ちゃんにも相応しくないの」

曜「……」

善子「私……」

ヨハネ「曜ちゃんは天使らしくヨハネの恋人でいるべきだわ。ううん、ヨハネ様の下僕で!」

曜「さっきの聞いたでしょ。この子……善子ちゃんはヨハネちゃんなんだよ」

ヨハネ「は!? 何言い出すのよ! これだから人間と関わるとろくなことが……」

善子「……」

ヨハネ「あんたのせいよ! あんたが来たせいで曜ちゃんは!」ガシッ

曜「やめなよ! やめっ……やめて!!」グイッ

ヨハネ「きゃあっ!?」

ドシンッ

曜「はぁ、はぁ……」

善子「曜さん……」

ヨハネ「……」

曜「私……天使なんかじゃないよ」

曜「この羽、偽物だよね」ブチッ

ファサッ

ヨハネ「っ!! 何てことを! 私がせっかくつけてあげたのに!!」

曜「私は人間だよ」ブチッ

ヨハネ「いいえ! あなたは天使! ヨハネと同じ!!」
0079名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:10:27.90ID:mc7jjdA4
曜「人間だよ」ブチッ

ファサッ

ヨハネ「っ……」

曜「さっ、善子ちゃん体拭こう? いつまでも裸じゃ……目のやり場に困るよ」カァアア

善子「曜さんも裸よね!?」

曜「私は……半分天使だから?」

ヨハネ「このヨハネ様に選ばれたというのに不満なのね」

曜「……」

善子「……」

ヨハネ「そう。さよなら。二人ともお幸せに」スタッ

善子「ちょっ、まさか死ぬ気じゃ……」

曜「ヨハネちゃんは天使だから。飛べるから心配しないで」

ヨハネ「……」スッ

バキッ!

善子「え!?」

曜「ヨハネちゃん!?」

ヨハネ「こんな羽! こんな羽があるから!!」ボキッ!

曜「やめなよヨハネちゃん!」

ヨハネ「近づかないで! それ以上来たら飛び降りるわ!」

善子「……」

曜「どうして……」グスッ

ヨハネ「ヨハネが天使だから……曜ちゃんは人間だから……」ボキッ

ヨハネ「どうせあんたもそうでしょ!? ヨハネなんていなければいいって思ってた!!」

善子「わ、わた……」

ヨハネ「あなたのこと知ってるのよ? ヨハネになりたがってたくせに、今はヨハネより『善子』がいいんでしょう!?」
0080名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:11:18.80ID:mc7jjdA4
ヨハネ「そのだっさい名前が! 地味な体が! 羽もないくせに!!」

善子「だって……」

善子「曜さんが好きになってくれたのは私だもの」グスッ

曜「……」

ヨハネ「曜ちゃんも否定してくれないのね。もういいわ」クルッ

ヨハネ「二人で人間界に帰りなさい。大丈夫、地面にぶつかる前に目が覚めるわよ」

善子「あなたは……」

ヨハネ「ヨハネは一人で天界を彷徨うことにするわ」

ヨハネ「どこかに曜ちゃんよりももっと優秀な下僕がいるかもしれないし……」

曜「ヨハネちゃん……」

ヨハネ「もっとも……こんな折れた羽の私を天使って認めてくれるかは分からないけれど」

ヨハネ「さっ、二人ともさよなら。目が覚めたら私のことなんて忘れてるから」

善子「……」

ヨハネ「必ず曜ちゃんを幸せにしなさいよ」ボソッ

善子「え?」

ヨハネ「何でもないわ」トンッ

曜「わっ……」

善子「きゃっ……!?」

ヨハネ「さよなら」

曜「落ちるぅぅ!!!?」

善子「……っ!!」ガシッ

ヨハネ「きゃっ!? は、離しなさいよ!」

善子「あんたも一緒に堕ちるのよ!」グイッ

ヨハネ「私は天使なんだから! 人間界へは行けないの!」

善子「そんな折れた羽で! 何が天使よ!!」

ヨハネ「うっさい! こんなの放っとけばまた生えて……」

善子「バカね。あなたも私じゃない」フフッ

ヨハネ「えっ……」ズルッ

ヨハネ「きゃああ!!? 堕ちる! 死ぬぅぅ!!」

善子「うるさい! 落ちる前に目が覚めるんでしょ!?」
0081名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:11:58.18ID:mc7jjdA4
ヨハネ「死ぬわよ! この勢いで地面にぶつかったら!」

善子「えええ!!? あんた嘘ついたの!?」

ヨハネ「今ごろ曜ちゃんは……」グスッ

善子「嘘! 嘘よ!! 曜さんがこんなことで死ぬわけ……」グスッ

ヨハネ「ヨハネたちもすぐ追いつくわ……」

善子「勝手に殺さないで! ってか曜さんも勝手に死ぬな!!」

ヨハネ「あぁ……もう地面が……」

善子「曜さん助けて!! お願い!!!」

……

ショワァ

「わっ」

ショワァ……

「善子ちゃんおねしょ?」

ユサユサ

「善子ちゃん」

ユサユサ

「善子ちゃん起きて」

善子「はっ!!?」バサッ

曜「大丈夫? すごい汗だよ?」

善子「私……死んで」

善子「ないわね」ホッ

曜「怖い夢でも見た?」

善子「ええ、少し……」

曜「私たち、戻れたね」

善子「え? あぁ、本当だわ」

曜「さっき日付変わったから」

善子「えっ……それじゃ今」

曜「夜中だね」

善子「ええ!? ここ保健室よね!? 何で誰も起こしてくれないのよ!」
0083名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:13:29.34ID:mc7jjdA4
曜「学校の鍵は預かったよ」チャリンッ

善子「そういうの、生徒に預ける……?」ハァ

曜「鞠莉さんに頼んで貸してもらったの」

善子「鞠莉さんに?」

曜「そう。事情を話したら信じてくれて……優しいよね」アハハ

善子「……」

曜「『変なことしちゃだめよ?』ってニヤニヤしながら貸してくれたよ」

善子「鞠莉さん……」ハァ

曜「それにしても……自分の体に戻るとき変な感覚だったな」

善子「そう」

曜「まるでもう一人私がいるみたいな……って、訳わかんないよねごめん」

善子「ヨハネは……」

曜「え?」

善子「ヨハネは!? 死んだの!?」ガシッ

曜「えっと……善子ちゃん大丈夫?」

善子「ヨハネよ! 一緒に堕ちて……」

曜「ヨハネちゃん」

善子「へ?」

曜「珍しいね。私の前でヨハネちゃんが出てくるの」

善子「わ、私……」カァアア

曜「これも浮気かな」ギュッ

善子「浮気……じゃないわ」グスッ

曜「ヨハネちゃん」ギュ

善子「善子よ……」

曜「私もね、変な夢見ちゃったんだ。ヨハネちゃんと浮気する夢……」

曜「天国みたいなところでお風呂に入ってたら善子ちゃんが来てね」

曜「……」グスッ

善子「待って、その夢」

曜「最後は地面に叩きつけられて死んだんだけどさ」アハハ

善子「うわ……」
0084名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:14:01.14ID:mc7jjdA4
曜「全身の骨が砕ける感覚は新鮮だったなぁ」

善子「だ、大丈夫だった?」

曜「二人の裸が見られたからいいよ」フフッ

善子「っ……!」ブンッ

パーン

曜「うわっ! 顎の骨折れてるからっ!!」ヒリヒリ

善子「ヨハネと浮気したわね!? 絶対に許さない!」

曜「浮気したからあんな目にあったんじゃないかな」アハハ

善子「言ったわよね? 私以外の私と浮気したら殺すって!」ガシッ

曜「いや、だから一回死んで……」

善子「このバカ! 私だから好きなんじゃなかったの!?」グイッ

曜「苦しっ……」

善子「本当は誰でもよかったの??」ググッ

曜「ね、ねぇ本当に死んじゃう……」ピクピク

善子「曜さんなんてっ……!」グッ

曜「ぐっ……」

善子「……」

曜「……」

善子「それでも好き」グスッ

曜「私も……好きだよ」

善子「私に殺されても?」

曜「善子ちゃんは……そんなことしないって信じてる」

善子「どうかしらね」グイッ

曜「善子ちゃんは優しいから」フフッ

善子「……っ」パッ

ドサッ

曜「げほっ!! ごほっ!」ゼェゼェ

善子「これで三回目ね」

曜「夢の中で……ヨハネちゃんのこと助けてたよね」ハァハァ

善子「えっ」
0085名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:14:32.81ID:mc7jjdA4
曜「善子ちゃん優しいな、って思った瞬間に死んだの」

善子「何で知ってるのよ!!」バシッ!

曜「だから顎! 折れてる!!」ヒリヒリ

善子「んなわけあるか! 夢の中でしょうが!」

曜「あれ……本当だ」サワッ

善子「折れてたら喋れないから……」ハァ

曜「それと、四回目だよ」

善子「は?」

曜「善子ちゃんに殺されかけるの」

善子「夢の中のは私じゃないでしょ」

曜「ヨハネちゃんも善子ちゃんだよね?」

善子「なっ……」

曜「あっと、ヨハネ様?」

善子「曜さんのバカ! 夢の中まで入ってくるなんて!」カァアア

曜「そんな。寝てたら呼ばれたんだよ」

善子「誰によ!」

曜「ヨハネちゃんに。『空を飛びたいって思ったことない?』って誘われて」

善子「飛びたかったの?」

曜「ヨハネちゃんが可愛かったからつい……」エヘヘ

善子「浮気! それ本当に浮気だから!!」

曜「ん……? ってことはあそこ、本当に天国?」

善子「え」

曜「本当に死ぬところだったね」アハハ

善子「笑いごとじゃないわよ」

曜「入れ替わりの魔術、あれはかなり危険だってことか」

善子「……そうみたいね」

曜「そんなもの三回も私に使ったの?」

善子「使ったわよ」

曜「よく死ななかったね」

善子「私は今のところ死んでないわね」
0086名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:15:01.90ID:mc7jjdA4
曜「もしかして、私だけ何回も死んでる?」

善子「まさか。落ちるのは今回が初めてよ」

曜「いつもはどうやって帰ってきてたの」

善子「忘れたわ」

曜「えぇ……」

善子「どうせ朝になったらまた忘れるもの」

曜「私は忘れないよ」

善子「忘れて。お願いだから」

曜「絶対に忘れない。ヨハネちゃんとお風呂入ったこと……」

善子「忘れて!!」

曜「あはは。じゃあおやすみ」

善子「いや、待ちなさいよ」

曜「え?」

善子「片付けないの?」

曜「朝やればよくないかな。徹夜のせいかすごくだるくて……」

善子「私だって何でか分からないけど足とか肩とか痛いのよ!」

曜「……」

善子「一つ聞いてもいい?」

曜「何?」

善子「これ、私がやったの?」

曜「ん?」

善子「おねしょよ」

曜「そうだよ。って言うかそのときもう起きてなかった?」

善子「そう……地面にぶつかりそうになって、それで」

曜「善子ちゃんってビビリなんだね」アハハ

善子「誰だってあんなの漏らすわよ」

曜「私は漏らしてないよ?」

善子「そういえば……」

曜「善子ちゃんと違ってモロに地面にぶつかったけどね」

善子「よく平気だったわね」
0087名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:15:34.56ID:mc7jjdA4
曜「実は高いところ好きなんだ」

善子「関係なくない?」

曜「飛び込み台の上とかすごく興奮するの。もっと高ければいいのに、っていつも思ってた」

善子「えーと、それは何と言うか……変態ね」

曜「……」エヘヘ

善子「褒めてない」

曜「でもさ、私が先に死んだおかげで善子ちゃんを死ぬ前に助けられたんだよ?」

善子「あ、地面にぶつかる前に目が覚めたのって、曜さんが起こしてくれたから?」

曜「あの痛みはさすがに可哀想だから」アハハ

善子「……どんな痛みだったのかしら」

曜「興味あるの? 善子ちゃんも私に負けず劣らず変態さんだね」

善子「味わいたいわけじゃないわよ」

曜「イメージとしては……そうだね、スカイダイビングでパラシュートつけるの忘れちゃった感じかな」

善子「うん、例えがズバリすぎて全くイメージが沸かないわ」

曜「死んだほうがまし、ってああいうときに使う言葉だね」

善子「そ、そんなに……」

曜「善子ちゃんが言う通り……善子ちゃんとヨハネちゃんが別人なんだとしたらさ」

曜「やっぱり私、浮気したことになるのかな?」

善子「さっきからそう言ってるじゃない」

曜「……」

善子「何よ。曜さんから見たらどっちも私?」

曜「うん……」

善子「そうよね。見た目は私だもの」

曜「善子ちゃんもそう言ってた」

善子「……」

曜「ヨハネちゃんを助け……ううん、道連れにしたとき」

善子「何でわざわざ言い直したの」

曜「『あなたも私じゃない』って」

善子「……」

曜「私はヨハネちゃんも好きだよ」
0089名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 16:17:01.73ID:mc7jjdA4
善子「それ、思ってたとしても私の前で言う?」

曜「言う」

善子「……」

曜「善子ちゃんに隠しごとはしたくないんだ」

善子「言ってることは立派だけどやってることは最低」

曜「でも、私の恋人は善子ちゃんだからね」

善子「ええ」

曜「どっちかしか選べないなら私は善子ちゃんを選ぶよ」

善子「いや、両方選べたとしても私だけを選びなさいよ」

曜「うーん……」

善子「悩まないで」

曜「……たまにはヨハネちゃんでもいいよ?」

善子「は? 死にたいの?」

曜「あっ、そうじゃなくて。私の前だからってヨハネちゃんを封印しなくてもいいんだよ、ってこと」

善子「……」

曜「ごめん、喋りすぎたね。おやすみ」

善子「おやすみなさい」

……

……
0095名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2018/03/10(土) 17:08:18.15ID:HOEJRI5s
おつかれさまでありますっ(*> ᴗ •*)ゞ
0097名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:23:32.73ID:mc7jjdA4
……

……

 翌朝 保健室

「な、何と破廉恥な……」カァアア

「よく見なよ。抱き合って寝てるだけじゃん」

「ふふっ。変なことしないように釘を刺しておいたんだけれど」

「そういう問題ですか……?」

善子「ん……」

「気持ちよさそうに寝ちゃってさぁ」ツンッ

善子「きゃあっ!!?」バサッ

果南「おっと、ごめん。起こしちゃったかな」

鞠莉「大丈夫? 曜に変なことされなかった?」

善子「えっと……」

ダイヤ「まさか保健室に泊まるとは……。寒くありませんでしたか?」

善子「ええ。曜さんのおかげで……」

果南「それはよかった。曜も今回は役に立ったね」アハハ

鞠莉「体調はもういいの?」

善子「あ……ええと、徹夜したせいでフラフラしたけどもう平気よ」

鞠莉「ノンノン! 寝不足はお肌の敵なんだからね?」

ダイヤ「そうですわ。ニキビができても知りませんわよ」

善子「まあ私じゃないんだけどね」ボソッ

曜「すー……」

果南「そうだ。善子、足とか痛くない?」

善子「え? そうね、起きたときから太ももとか肩とか……少しね」

果南「あれだけ走っておいて少し? こう見えて普段からトレーニングしてたりする?」

善子「トレーニング? 何のこと?」

果南「いや、頼んできたのそっちだよね? ダイエットしたいからみっちりトレーニングしてって」

善子「言ってないわよ」

果南「これ見てよ」スッ

 †堕天使ヨハネ†:お願い! 今からトレーニングに付き合って!
0098名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:24:07.20ID:mc7jjdA4
善子「これ私じゃないわ」

果南「善子のアカウントから来てるよ?」

善子「……」

鞠莉「まさか、アカウント乗っ取られたの?」

ダイヤ「いけませんわ! 善子さんのことですから、パスワードは曜さんの誕生日とかなのでしょう?」

善子「曜さんじゃあるまいし……」

果南「そういえば曜は誘わなくてよかったのかな」

善子「曜さんが勝手に私のスマホで送ったのね」ハァ

鞠莉「そうなの?」

善子「ええ」

果南「善子もノリノリだったけどな」

善子「え?」

果南「実は私、善子が最近ちょっと太ったなって思ってたんだ」

善子「……」カァアア

鞠莉「果南……」ハァ

ダイヤ「よく気づきましたわね。私ですら微妙なラインでしたのに」

果南「ちゃんと測ってないから分かんないけど、たぶん二センチくらい……かな?」

善子「な、何でそこまで……」カァアア

鞠莉「今度は曜を誘ってあげたら? きっと喜ぶわよ」フフッ

果南「あー、実は曜から善子を誘うように言われてたんだ」

善子「どうして果南さんが」

果南「何でだろう? 自分で誘えばいいのに」

鞠莉「善子に気を遣ったんじゃない? 恋人に『太った?』って指摘されるなんて、やっぱり気にしちゃうよね」

ダイヤ「ふふっ。曜さん、本当に善子さんのことが大好きですのね」

善子「そうかしら……」

鞠莉「曜ったらすぐ他の子にデレデレするものね」

果南「曜は昔からそういう子だよ」

善子「いや、曜さんも太ってたわよね。他人のこと言えないじゃない」

ダイヤ「曜さんが?」

善子「ええ。私が二センチなところ曜さんは三センチも太ってたわ」
0099名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:24:44.33ID:mc7jjdA4
果南「曜がそんなことするかなぁ……」

ダイヤ「まさか、善子さんと一緒にダイエットするためにわざと太ったとか?」

鞠莉「それは……かなり重たいわね。体重だけに」

果南「考えすぎかな」アハハ

善子「曜さんならやりかねないわね……」ハァ

ダイヤ「それはそうと、お二人は青少年健全育成条例を知らないわけではありませんよね?」

果南「ん? 早口言葉かな」

鞠莉「夜十時から翌朝四時にかけての外出は禁止……とんだ悪法ね」

ダイヤ「なぜです。普通の子どもはそんな夜中に外出などしませんわ」

果南「大丈夫。善子をいかがわしい場所に連れてくわけないじゃん」

鞠莉「いかがわしい場所……?」

果南「えっと、ゲームセンターとか?」

ダイヤ「果南さんにはもっと浦女の生徒として自覚を持って頂きたいですわね」

果南「室内で筋トレしただけだよ」

ダイヤ「先ほど『あれだけ走っておいて』とか何とか聞こえましたが? 果南さんの家にルームランナーなどありませんでしたわよね?」

果南「……外でちょっと走った」

ダイヤ「まあ! 不審者に襲われていたかもしれませんのよ!?」

鞠莉「ダイヤ、この辺りにそんな人出ないと思うわよ?」

ダイヤ「分かりませんわ。もしもそういうことがあってからでは……」

鞠莉「大丈夫。果南ならワンパンチノックアウトよ」

果南「いや、見ず知らずの人にパンチはしないよ……」

ダイヤ「果南さんは平気でも善子さんは! 必ず守り切れるという確証はありまして?」

果南「う……」

鞠莉「いくら果南とはいえ屈強なマッチョが五、六人でハイエースしにきたら勝てないわよね」

果南「全員黒帯だったら負けるかも」アハハ

ダイヤ「善子さんを人質にとられでもしたら尚更ですわ」

果南「……ごめんなさい」

善子「あ、あの……もしかして」

鞠莉「ん?」

善子「昨日の夜、私……果南さんとトレーニングしたの?」
0100名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:25:20.17ID:mc7jjdA4
果南「えっ、忘れたの?」

善子「……」

ダイヤ「覚えていないのですか? いえ、私も見てはいないのですが……」

鞠莉「何よ、記憶が飛んじゃうようなことしたの? ねぇ?」

果南「し、してないよ……」カァアア

善子「……」スタッ

トコトコ

体重計「やぁ」

善子「……」スタッ

鞠莉「善子?」

善子「一キロも減ってる……」

ダイヤ「果南さん、無理なトレーニングは体を痛めますわよ」

果南「そんなの分かってるって。善子も体を痛めないように気を遣ってたみたいだよ」

善子「私が?」

果南「慣れてない人だとつい張り切りすぎて体を痛めがちなんだけどね。善子はそんなことなかったよね」

鞠莉「いつもこっそりトレーニングしてるの? それでそのスリムな体型を」

ダイヤ「善子さん、見直しましたわ」

善子「そっか……私が寝てる間に」

曜「すー……」

善子「何よ、一緒に誘ってくれればいつでも」グスッ

果南「え!? 何で泣くの? やっぱり筋肉痛?」

善子「少しね」フフッ

鞠莉「私たちもトレーニング始めようかしら。ねぇダイヤ?」

ダイヤ「私は結構ですわ。自分の体の管理はしておりますので」

鞠莉「嘘ね。ダイヤの家、お正月はすごい料理が出るじゃない」

ダイヤ「鞠莉さんみたいに好きなだけ食べて飲んで寝てはいません」

鞠莉「わ、私だってこれでも抑えたし……」

果南「鞠莉は二キロ太ったね」

ダイヤ「やはりそうですか。私の目でも分かりましたわ」

鞠莉「太ってない! しかもダイヤと違って『ここ』に行ってるから」ムニッ
0101名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:25:59.09ID:mc7jjdA4
ダイヤ「いえ、お腹周りが」

果南「……」ジー

鞠莉「何よもう!」カァアア

善子「曜さん、そろそろ起きなさいよ」トントン

曜「うぅ……」

果南「ほら、いつまでも寝てないで……ん?」バサッ

ダイヤ「どうかしたのですか?」

果南「この匂い……あぁ」ハァ

鞠莉「おねしょ?」クンクン

ダイヤ「高校生にもなって……」ハァ

曜「ふわぁ……よく寝た」

善子「曜さん。早くシーツを洗って布団を干しましょ」

曜「え?」

果南「曜、まだおねしょ治ってなかったんだ?」クスクス

鞠莉「大丈夫よ。誰にも言わないから」

曜「よ、善子ちゃん……」

善子「全く、高校生にもなって恥ずかしくないの? 私じゃなかったら絶対嫌いになってるわよ」

曜「えぇ!!?」

善子「な、何よ。どう見ても曜さんの匂いでしょうが」

曜「そうだけど……」

ダイヤ「善子さん、匂いで分かるのですか?」

善子「えっ、わ、分からないわよ……」カァアア

鞠莉「善子、赤くない?」

果南「まさか善子が? なわけないよね」フフッ

善子「見て分かるでしょ? 私の服はそこまで濡れてないわ。曜さんのはびっしょり」

曜「みんなに見られるなんて……もう生きていけないよ」グスッ

果南「あはは。生理現象だからね、仕方ないよ」

鞠莉「大丈夫よ。曜も可愛いところあるじゃない♡」

ダイヤ「可愛いのでしょうか……」
0102名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:26:34.02ID:mc7jjdA4
曜「善子ちゃんひどいよ」グスッ

善子「し、知らないわよ! 起きたらもう三人がいたんだもの」

果南「学校に泊まったって聞いたから様子を見に来たんだよ。あと善子の筋肉痛が心配で」

善子「ありがとう」

鞠莉「変なことしてないでしょうね?」フフッ

曜「……」グスッ

ダイヤ「え、まさか……」

善子「いや、してないわよ。大丈夫だから」

ダイヤ「ほっ……。お二人は健全なお付き合いをしていると信じていますからね」

果南「一瞬疑ったよね」

ダイヤ「せ、生徒会長は疑うのが仕事ですの!」

鞠莉「ポリスメン?」

曜「このことは誰にも言わないでください……」ペコ

果南「だから言わないって」

鞠莉「もちろんよ」

ダイヤ「分かっています。それより早く片付けてしまいましょう」スタッ

曜「えっ、手伝ってくれるんですか?」

ダイヤ「え? 仕方ないでしょう。濡れた布団は意外と重たいですし……」

曜「だ、ダイヤさん……」ドキドキ

善子「ちょっと」ガシッ

果南「ダイヤはルビィの片付けで慣れてるからね」アハハ

鞠莉「そういうダイヤもなかなかおねしょ治らなかったわよね?」クスクス

ダイヤ「はい? お二人もばかなことを言っていないで手伝ってくださいまし」

曜「いいよ、自分でやるから……」

善子「ええ。曜さんはもう慣れてるもの」フフッ

曜「……」ジロッ

善子「えぇと、たぶんね」

鞠莉「とりあえずシャワー浴びましょ? 服は……ジャージなら私のを貸すわよ」

果南「じゃあ善子には私のを」

善子「私はいいわよ」
0105名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:29:15.10ID:mc7jjdA4
ダイヤ「いえ……その、着替えたほうがよろしいかと」

善子「じゃなくて。自分のがあるから大丈夫ってことよ」

果南「そう? ならいいんだけどさ」

鞠莉「果南の汗臭いジャージなんて嫌よね? 借りるならダイヤにしたら」

果南「臭くないし! ってかまだ着てないやつだよ!」

ダイヤ「私のでよかったら言ってくださいね」

善子「気持ちは嬉しいわ。ありがとう」

曜「もう嫌……」グスッ

善子「曜さんも! 早く片付けてシャワー浴びに行くわよ」

鞠莉「今から洗って干せば……放課後には乾いてるわよね?」

ダイヤ「ええ。今日は晴れると予報が出ていましたからね」

果南「ほら、脱いで」グイッ

曜「や、やだよ!」

果南「いつまでもそれ着てるつもり?」グイッ

曜「善子ちゃん助けてぇ!」

果南「おねしょなんかしてると善子に嫌われちゃうぞー?」

善子「そうよ。気をつけなさい」

曜「なるの……?」

善子「ならない……けど」カァアア

曜「私のことずっと好きでいてくれる?」

善子「ええ」

ダイヤ「……」カァアア

鞠莉「朝から見せてくれるわね……」フゥ

果南「ほら、早く脱ぎなよ」

曜「うん……」ヌギ

善子「も、もういいから! 片付けは自分でやらせるし三人は帰って……」

鞠莉「ん? いいわよ、手伝ってあげる」

曜「私、みんなの前で裸にされちゃうんだね……」ドキドキ

果南「何言ってんの。曜の裸なんて小さい頃から見慣れてるよ」アハハ

ダイヤ「私は初めて見ますわ……」カァアア
0106名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:29:47.89ID:mc7jjdA4
鞠莉「見たいの?」

ダイヤ「い、いえ! そんなわけないでしょう!? そもそも合宿のときに一度……」クルッ

果南「早く脱ぎな」

曜「善子ちゃん……嫌いにならないでね」ドキドキ

善子「ストップ! 何しようとしてるの!?」

果南「何って、着替えだよ?」

善子「それは見れば分かるわよ」カァアア

果南「ほら、濡れた服って一人だと脱ぎづらいし……昨日善子の着替えも手伝ってあげたじゃん?」

善子「え」

鞠莉「ちょっと果南? 善子に変なことしてないでしょうね……」

果南「してないよ! そりゃ少しは私もドキドキしたけどさ……」カァアア

ダイヤ「やっぱり不健全なことをしていたのですね!? 条例違反ですわ!」

果南「だからしてないって! そもそも何で私が善子の裸なんか見て興奮しなきゃいけないの」

善子「っ……」

鞠莉「今のは善子、傷ついたわよ」

果南「あっ、そういう意味じゃないんだよ? まるで私が善子をそういう目で見てるみたいな言い方をするから……」

ダイヤ「見ていたら大変なことですわ」

曜「私は見てるからね。心配しないで」

善子「そんな心配はしてないわ」

果南「善子だって私の裸見たもんね? お互い様だよ」アハハ

曜「え?」

善子「何が『え?』よ!」

曜「あ、私か」

鞠莉「果南、いつも曜とそんなことしてたの?」

果南「言い方! トレーニングした後は汗かくでしょ? そしたらシャワー浴びるよね??」

ダイヤ「汗をそのままにしておくと風邪を引きますからね」

果南「そう。体を洗いっこするくらい普通のことだよ」

善子「洗いっこ!?」

曜「いや、そういう意味じゃないから」

善子「確認しておくけどまさか果南さんと……」
0107名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:30:20.21ID:mc7jjdA4
曜「え? 本当に疑ってる?」

果南「曜が私と浮気してると思ってるの? 可愛いね」アハハ

善子「か、かわ……」カァアア

ダイヤ「果南さん? あまり善子さんをからかうのは……」

果南「善子、また一緒にトレーニングしようね。二人きりでさ」フフッ

善子「嫌! 絶対にしないわ!」カァアア

曜「果南ちゃんは本当にそういう目では見てないよ」

善子「そんなの分からないじゃない!」

果南「えぇ……」

鞠莉「また一つ、果南は信用を失ったわね」

ダイヤ「私たちはともかく、善子さんや花丸さんをからかうのはやめなさい」

果南「マルも面白いよねぇ」アハハ

善子「ずら丸に何したのよ! 言ってみなさい!」

果南「だから何もしてないって……」

曜「花丸ちゃんにもヤキモチ? 善子ちゃんは忙しいね」

善子「もう! 果南さんがそんな人だとは思わなかったわ!」プイッ

果南「嫌われちゃったよ」

ダイヤ「まあ、当然ですわね……」

鞠莉「それでも反省しないのが果南の悪いところよ」

果南「……本当に冗談だからね?」

善子「分かってるわよ……」

曜「で、どうするの? 手伝ってくれるの? くれないの?」

果南「それは善子に聞いて」

曜「……」

善子「私が手伝うからいいわ。だって恋人だもの」

鞠莉「言うじゃない♡」

ダイヤ「曜さん、くれぐれも……」

曜「分かってます。善子ちゃんとは健全にお付き合いさせてもらってるからね」

善子(どこがよ)チラッ

曜「と、とにかく! ここは私と善子ちゃんで片付けるから三人は」
0109名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:31:51.13ID:mc7jjdA4
果南「はいはい。私も二人の邪魔をしたくないし行くよ」

鞠莉「誰かが来ちゃう前に片付けるのよ?」

善子「分かってる。ありがと」

ダイヤ「……善子さんも。曜さんに変なことをされたらすぐ私たちに言うのですよ」

善子「ええ。って言わないわよ!」

ダイヤ「大丈夫です。心配しなくとも殺しはしませんから」ニコッ

曜「ひぃっ!?」ビクッ

鞠莉「じゃ、私たちはこれで。後はよろしくね♡」

果南「またねー」ノシ

善子「みんなありがと。助かったわ」ノシ

曜「ダイヤさん何で怒ってたんだろ……」ビクビク

善子「さあ? 学校で変なことしようとするからじゃない?」

曜「してないよ」

善子「この前ここで私におしっこさせて飲んだわよね」

曜「そうだっけ? もう一度飲めば思い出すかも」アハハ

善子「しっかり覚えてるじゃない」

曜「善子ちゃんのために私がお漏らししてあげたんだからね? 感謝してよ」

善子「え?」

曜「いや、あのまま善子ちゃんのおねしょがみんなにバレたら可哀想だから」

善子「もしかして……私の匂いを消すためにわざと?」

曜「当たり前でしょ。善子ちゃんに恥をかかせるわけにはいかないからね」

善子「本当?」

曜「私はこんなの慣れてるからいいけど、善子ちゃんは気にするかと思って」

善子「……」

曜「それともみんなに知ってほしかった?」

善子「そんなわけないでしょ」

曜「だよね。だから寝てる善子ちゃんにおしっこかけておいたの。感謝して」

善子「自分がしたかっただけじゃないの?」

曜「そうとも言うね」アハハ

善子「はぁ……」
0110名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:32:21.11ID:mc7jjdA4
曜「あと……ごめんね? 果南ちゃんの前で裸になったりして」

善子「何?」

曜「善子ちゃんに内緒で果南ちゃんに付き合ってもらったんだ。太っちゃったのは私のせいでもあるわけだし……私が戻しておかないとだから」

善子「私が寝てる間に頑張ってくれたのね」

曜「うん。善子ちゃん、ダイエットするなんて言ったら絶対無理な食事制限するもん」

善子「しないわよ」

曜「じゃあトレーニングする?」

善子「……しなそうね」

曜「だよね」アハハ

善子「いや、するわよ。曜さんも誘ってくれればよかったじゃない」

曜「だって……」

善子「私に気を遣ってくれたの?」

曜「私とだと痩せられない気がして」

善子「何でよ」

曜「ほら……私って善子ちゃんに甘々だし?」

善子「それは、まあ」

曜「それに、どんな善子ちゃんでも善子ちゃんだから」

善子「……」カァアア

曜「元々痩せてるもん、少しくらいは太ってもね?」

善子「嫌よ」

曜「ほら、胸ももう少し大きくなるかも……」

善子「……」ゴクリ

曜「今のは冗談」アハハ

善子「もう!」

曜「でも、本当にどんな善子ちゃんでも好きだからね?」

善子「曜さんが好きになったのは私でしょ?」

曜「……そうだよ?」

善子「太った私じゃないわよね」

曜「今のところは」

善子「この先もよ」
0111名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:32:53.32ID:mc7jjdA4
曜「それは善子ちゃん次第かな」

善子「そういう曜さんこそ太りすぎないように気をつけなさいよ」

曜「太ったら嫌われちゃう?」

善子「アイドルとしてどうかと思うわ」

曜「気をつけなきゃね」アハハ

善子「仕方ないから付き合ってあげるわよ。曜さんのダイエットに」

曜「ありがと」

善子「私ももう少し体力つけないとって思ってたから」

曜「そうだね。もう少し体力がつけば疲れにくくなるしダンスにもキレが出るよ」

善子「ええ。曜さんの体になってみてよく分かったわ」

曜「それとおしっこのキレもね?」

善子「は?」

曜「今のは冗談」

善子「今でも十分キレてるわよ」

曜「キレッキレだったね」

善子「見たの?」

曜「見たっていうか、したっていうか……」

善子「……」

曜「善子ちゃんも私でしたじゃん。お互い様だよ」

善子「そ、そうね……」

曜「善子ちゃん、おしっこだけじゃなくて私の体でえっちなことしたでしょ?」

善子「してないわよ!!」

曜「そうかな。下着がカピカピしてたから」

善子「し、してな……」カァアア

曜「してもいいんだよ?」

善子「……そ、そういう曜さんこそ私の体で変なこと」

曜「こっそり果南ちゃんとトレーニングしたくらいかな」

善子「果南さんの前で裸になるなんて……」

曜「だから果南ちゃんはそういう目で見ないって」

善子「本当に?」
0112名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:33:23.79ID:mc7jjdA4
曜「本当。じゃなかったら脱ぐわけないじゃん」

善子「どうかしらね。曜さんのことだからむしろ喜んで裸になりそう」

曜「私の恋人だよ? 他の人に好きにされるなんて……」ボソボソ

善子「え?」

曜「何でもない! それより、お腹周り締まってるでしょ?」ムニュ

善子「ひゃああ!?」ビクッ

曜「ウエスト採寸だね! えっと巻き尺は……」ガサゴソ

善子「な、何よもう……」

曜「あった! 二センチダウンしてるかな? どうかな?」シュルッ

スッ

善子「……」

曜「……」スッ

善子「ど、どう?」

曜「お腹凹ますのはずるいよ」

善子「凹ませてないわよ」

曜「そう。なら達成だね」

善子「本当?」

曜「本当」

善子「やった……」グッ

曜「うん!」

善子「曜さん大好き」ギュッ

曜「え? 私も好き!」ギュ

善子「私のこと、こんなに大切にしてくれて……」

曜「大切だよ」

善子「私も、曜さんのこと大切にするわ」

曜「うん。大切にしてあげてね」

善子「……」フフッ

曜「えへへ」

善子「とりあえず片付けましょうか」

曜「もう少し」ギュッ
0115名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:35:31.31ID:mc7jjdA4
善子「シャワーも浴びないとよ?」

曜「私は善子ちゃんのシャワーが浴びたいな」

善子「え……」

曜「私のは浴びせてあげたでしょ?」

善子「どうしてこの流れで気持ち悪いこと言えるのかしら……」

曜「気持ちよかったよ」

善子「聞いてないわよ!」

曜「善子ちゃんも気持ちよさそうな顔してたけどな」

善子「してない! ……たぶん」

曜「えへへ。シャワーのときにたっぷり浴びさせてね?」

善子「嫌よ。そもそも学校のシャワーは一人用でしょうが」

曜「プールのシャワーなら二人でも余裕だよ」

善子「あっ……でも冬は使えないわよね」

曜「ふふん」チャリン

善子「え?」

曜「鍵。借りてあるから」

善子「保健室の鍵だけじゃなかったの?」

曜「それじゃシャワー浴びれないでしょ?」

善子「まあ、そうだけど……」

曜「『二人でも余裕だからって変なことしちゃダメよ?』って鞠莉さんが」

善子「変なことさせる気満々じゃない!」

曜「あはは。私のこと信用してくれてるんだね」

善子「その信用を裏切らないように気をつけなさい」

曜「……」

善子「返事は?」

曜「いや、鞠莉さんの場合本当に振りだったりして……」

善子「ないわよ」

曜「だっていつも善子ちゃんと二人でいられるように便宜を図ってくれるよ?」

善子「それは気を遣わせてしまっているのね。何だか悪いわ」
0116名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:36:05.81ID:mc7jjdA4
曜「今日から部活あるよね」

善子「あるけど」

曜「みんなに聞いてみようかな」

善子「何をよ」

曜「私と善子ちゃんが付き合うこと、どう思ってるか」

善子「そりゃみんな応援するって言ってくれるわよ。優しいもの」

曜「ならこれまで通り普通にしてほしいな」

善子「そう言ってみる?」

曜「わがままだと思われちゃうかな?」

善子「元々曜さんはわがままよ。みんな知ってるわ」

曜「そんなぁ。みんなの前ではこんなにわがままじゃないよ」

善子「どうかしら。私には付き合い始めてから急にわがままになった気がするけれど」

曜「うっ……気をつけないとね」

善子「もう少しわがままになってもいいと思う」

曜「本当!? それじゃあ」

善子「みんなといるときの話よ。二人きりのときはもう少し抑えて」

曜「うん……」

善子「あ、言っておくけど私にじゃないわよ? みんなに対して曜さんがわがままになってもいいんじゃないかしら、って言ったの」

曜「わがまま……」

善子「困らせない程度にね」

曜「おしっ」

善子「困らせない程度に! 聞こえなかった?」

曜「分かったよ。それを言うなら善子ちゃんもだよ?」

善子「私?」

曜「みんなの前だからって我慢しなくていいんだよ」

善子「私、そんなに遠慮して見えるかしら」

曜「みんなの前でも私に抱きついてくれていいんだよ?」

善子「いや……それは逆に気を遣わせてしまうような」

曜「ううん。みんな善子ちゃんがもっと私に甘えたいのに我慢してるの気づいてるから」

善子「……」
0117名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:36:35.95ID:mc7jjdA4
曜「だってみんなの前だと急に私に対して冷たくなるよね? 分かりやすすぎだよ」

善子「そういえば、この前ルビィに聞かれたわ」

善子「『善子ちゃん、曜さんのこと嫌いなの?』って」

曜「それはいけないね」

善子「ルビィにまで心配されるなんて……」

曜「ルビィちゃんは私たちと違って純粋な目をしてるんだね」アハハ

善子「そうかしら? ううん、そうなのよね……」ハァ

曜「じゃあこうしよう」

善子「却下」

曜「聞いてよ!」

善子「曜さんのことだもの、私がみんなの前で曜さんにキスするとかそういうのでしょ」

曜「何で分かったの?」

善子「はぁ……」

曜「私からしたんじゃあまり意味ないしなぁ」

善子「もっと他にいい方法はないの?」

曜「うーん」

善子「まあいいわ。とりあえず片付けましょ。本当に誰か来ちゃうわよ」

曜「そうだね」

……

……

 プール シャワー室

ガチャ

曜「ここに来るのも久しぶりだな」

善子「そっか、曜さんスクールアイドル始めてから水泳部は……」

曜「最初の頃は掛け持ちでときどき練習にも出てたんだけどね。今はすっかり行ってないや」

善子「本当はやりたい?」

曜「善子ちゃんと?」

善子「は? 殺すわよ」

曜「違う、水泳をだよ。何だと思ったの」

善子「あ……」カァアア
0118名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:37:08.61ID:mc7jjdA4
曜「善子ちゃんと水泳かぁ……」

善子「い、いや私とじゃなくて。水泳部としてよ」

曜「うーん。たまには泳ぎたくもなるけどね」

善子「競技に出たいとか」

曜「もう出ても大した成績は残せないよ」

善子「できるわよ。曜さんなら」

曜「どうかな。もう何ヶ月もやってないからね」

善子「私、知ってるわよ。曜さんが大学から誘われてるの」

曜「え?」

善子「スポーツ推薦で来ないかって誘われてるんでしょ」

曜「……」

善子「それで内申点のこと気にしてたのよね。推薦を貰うには基準に達してないとだから」

曜「そうだよ」

善子「いいんじゃない? 大学でも頑張ったら」

曜「……」

善子「どうせ曜さんの頭じゃまともな大学なんて入れないわよ。かなり有名なところから誘われてるんでしょう? 行ったらいいじゃない」

曜「うん……」

善子「スクールアイドルもいいけど、水泳をやめちゃうなんて勿体ないわ」

曜「そうかな……」

善子「私、水泳とか飛び込みやってる曜さんが好きだもの」

曜「え?」

善子「私、本当はAqoursに入る前から曜さんのこと知ってたのよ」

曜「そうなの?」

善子「曜さん、中学のときから大会でも活躍してたじゃない」

曜「まあね。そのときは水泳しかなかったから」

善子「私、大会に応援しに行ったこともあるのよ」

曜「本当?」

善子「ええ。カッコいいなってずっと……思っ」チラ

曜「ぐへへ……」ニヤニヤ

善子「思ってない。むしろ気持ち悪いなって思ってた」
0119名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:37:39.76ID:mc7jjdA4
曜「はっ!? 私変な顔してた?」

善子「無自覚? 気持ち悪いわね……」ハァ

曜「気をつける」シュン

善子「浦女に行こうって決めたのだって……曜さんが」

曜「私?」

善子「曜さんと同じ学校に行きたかったからよ」

曜「あはは、嘘でも嬉しいよ」

善子「本当よ。でも入ってみたら曜さんはすっかり落ちこぼれてるし」

曜「むっ」

善子「水泳よりもスクールアイドルなんて始めちゃってるし」

曜「……」

善子「私の好きだった曜さんはいないんだ……ってガッカリしたわ」

曜「それは……申し訳ないことをしたね」

善子「いいのよ。私がよく知りもしないくせに勝手な想像してただけだもの」

曜「……」

善子「でも安心して。今は曜さんのことが好きだから」

曜「私のことなんて何とも思ってなかったんじゃなかったの」

善子「そのときは何とも思ってなかったわ」

曜「……」

善子「Aqoursに誘われたときだって、私がどんな気持ちでいたかなんて気づいてなかったんでしょうね」

曜「ずっと私のこと好きでいてくれたなら言ってほしかったな」

善子「……」

曜「私は善子ちゃんのこと何も知らないで……木から落ちてきたときも『この子頭大丈夫かな?』って思ったくらいだし」

善子「悪かったわね……」

曜「正直、スクールアイドルに向いてるとは思えなかったよ」

善子「うっ」

曜「あ、そのときはね? 今は違うから」

善子「分かってる」

曜「私自身、本当はアイドルなんて向いてないと思ってたし」

善子「やっぱり」フフッ
0121名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:39:35.26ID:mc7jjdA4
曜「『やっぱり』?」

善子「千歌さんの思いつきに振り回されてるだけに見えたわ」

曜「あはは。そう見えた?」

善子「余計なことしないで、って思ってた」

善子「曜さんはそんな遊びに付き合ってる場合じゃないの。水泳で忙しいんだから……」

曜「そのときは私も……ちょっとスランプだったしね」アハハ

善子「……でしょうね」

曜「え? 善子ちゃんったら私のこと何でも知ってるの?」

善子「そんなの見てたら分かるわよ! 記録が伸びなくて悩んでたんでしょ?」

曜「まあね。大会で優勝はしてたけど……いくら努力しても記録が伸びていかなかった」

曜「そんなときに大学から声がかかって」

曜「ウチで練習してみないか……って誘われたんだ」

善子「高校生なのに?」

曜「『あなたはもっと高いところに行くべきだわ』って言われて」

善子「見る人は見てるのね」

曜「それで飛び込みに興味を持ったの」

善子「え?」

曜「高いところ……つまり飛び込み台だよね。それで飛び込みを始めたんだよ」

善子「違うと思うわよ」

曜「とにかく誘われたの。あ、でも結局練習は一度しか行かなかったんだけど……」

善子「どうして?」

曜「飛び込みかぁ……ってウキウキしながら行ったら普通のプールだった」

善子「そんなことで!?」

曜「冗談。本当はあまりのレベルの差に圧倒されたんだ」

曜「その大学、水泳で何度も日本一になってるところだから。日本代表も何人も出してる」

曜「大学生だからって身長とかはそんなに変わらないはずなのに……すごく大きく見えてさ」

曜「私が本気を出しても勝てない相手がいるんだなって……」

善子「……」

曜「悔しかったね」アハハ

善子「それでやめちゃったの? 曜さんらしくないわね」
0122名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:40:16.68ID:mc7jjdA4
曜「ううん。コーチに感想を聞かれたときにね」

曜「飛び込みをやってみたいって言ったんだ」

善子「あ、まだ興味はなくしてなかったのね」

曜「そうしたらね……」

善子「……」

曜「……」

善子「何よ」

曜「私の話はいいよ。シャワー浴びよう」

善子「え? その先聞かせてくれないの?」

曜「私の過去なんて聞いたってつまらないでしょ。これからの未来の話をしようよ」

善子「……」

曜「善子ちゃんとのね」フフッ

善子「私は聞きたい」

曜「……」

善子「曜さんのこともっと知りたいもの」

曜「私は……」

善子「水泳、本当は続けたいんでしょう」

曜「……」

善子「曜さんがAqoursのためにしてくれてることは分かってるつもりよ」

善子「毎回ものすごく手の込んだ衣装を作ってくれて」

善子「最近は私にも色んなことしてくれて、それこそ寝る間もないくらい忙しいの知ってるわ」

善子「毎日欠かさなかったトレーニングもできてなくて、それで少し太ったりもして」

善子「私のために……なんて出過ぎたことは言わないけれど」

善子「Aqoursのために曜さんが本当にやりたいことをできなくなっているのだとしたら」

善子「それはちょっと違うと思うわ」

曜「待って。私は本当にアイドルをやりたくてやってるんだよ。みんなのために我慢してるみたいな言い方はやめてよ」

善子「欲張りな曜さんのことだもの、水泳だってやりたいんじゃない?」

曜「……」

善子「私となんて一緒にいる時間ないんじゃないの」
0124名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:41:51.86ID:mc7jjdA4
曜「何でそんなこと言うかなぁ」グスッ

善子「ごめんなさい。今のはいじわるだったわね」

曜「……」

善子「シャワー、浴びましょうか」

曜「うん……」

……

ザー

バシャバシャ

善子「ふぅ……」

曜「……」

ザー

善子「気持ちいいわね……」

曜「……」

バシャ

善子「曜さん」

曜「な、何?」

善子「体、洗ってあげるわよ」

曜「え?」

善子「あっち向いて」

曜「……」クルッ

ザー

ゴシゴシ

善子「大きな背中ね……」

曜「そうかな」

善子「男の子みたい」フフッ

曜「むっ」

善子「あ……ごめんなさい」

曜「善子ちゃんと違って筋肉質だから」

善子「何よ、私は太ってるって言いたいわけ?」

曜「善子ちゃんみたいに女の子らしくないってこと」
0125名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:42:30.65ID:mc7jjdA4
善子「……女の子よ」

曜「当たり前」

善子「女の子よね」

曜「そうだよ。そこそこ胸もあるし」ムニッ

善子「そういうことを言ってるんじゃないの」

曜「アレもないしね」アハハ

善子「は?」

曜「ごめん」

善子「……」

ザー

曜「……」

善子「私もどんな曜さんでも好きよ」

曜「どうしたの急に」

善子「ううん。言ってなかった気がして」

曜「……ありがと」

善子「でも、自分の好きなことしてる曜さんがいちばん好き」

曜「好きな子としてるよ」エヘヘ

善子「あのねぇ……」ハァ

曜「嘘。今はアイドルが好きだもん」

善子「水泳は?」

曜「好きだよ」

善子「しないの?」

曜「……欲しいって言えば何でも手に入るわけじゃないよ」

善子「時間のこと?」

曜「時間もそうだし……」

善子「……」

曜「時間かな。何でもできる私でも時計の針は巻き戻せない」

善子「何だか意味ありげなことを言うのね」

曜「そうかな? そんなつもりはないんだけど」アハハ

善子「……」
0126名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:43:05.43ID:mc7jjdA4
曜「何でもできる、は言い過ぎだね。勉強はできないし」

善子「ええ」

曜「善子ちゃんが何を言いたいのかも……分からないし」

善子「分かってるくせに」

曜「分からないよ」

善子「じゃあ言うわ。もう一度……」

曜「やめて」ピトッ

善子「何よ。言わせなさいよ」

曜「もう決めたことだから」

善子「……」

曜「私はスクールアイドルをやるって決めたの。だから水泳はやらない」

善子「どうして……」

曜「全くやらないって言うと語弊があるかな。競技としてはやらないだけ」

善子「……」

曜「大学の推薦は……頑張ればスクールアイドルでも取れるかな?」

善子「そんなわけないでしょ」

曜「だよね……」

善子「ねぇ本当に」

曜「死ぬ気で勉強すれば推薦なんてなくても行けるよ」

善子「……私は大学の心配なんてしてないわ」

曜「……」

善子「もう一度水泳を本気でやってほしい。ただそれだけよ」

曜「っ……」

善子「もちろん飛び込みでもいいわ。飛び込みやってる曜さんもすごく輝いてたし……」

曜「今は輝いてないみたいな言い方だね」フフッ

善子「ごめんなさい。今も十分輝いてるわ」

曜「ありがと」エヘヘ

善子「でも、本当はもっと輝ける」

曜「……」

善子「大学でもやったらいいじゃない。日本代表だって目指せるわ」
0127名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:43:39.44ID:mc7jjdA4
善子「ううん。オリンピックで金メダルだってきっと取れるわよ」

曜「……」

善子「曜さんならできるわ」

曜「嬉しくないよ」

善子「嬉しいでしょ? 私がここまで言ってるのよ」

曜「……嬉しくない」

善子「泳いだり飛び込んでる曜さんが大好きなの。だからお願い」

曜「ごめん」

善子「もっと曜さんを見たくて浦女に来たのよ」

曜「……」

善子「私は曜さんのマネージャーにでもなれたら……幸せだなって」

善子「なーんて、他の子が許さないでしょうけど」フフッ

曜「……」

善子「ね、ちょっとこの後泳いでみない?」

曜「嫌」

善子「私にも教えてよ。あんまり泳げないのよね」

曜「嫌だよ」

善子「じゃあ見てるだけでもいいわ」スタッ

曜「……」

善子「そういえば水着がないわね」

善子「明日休みでしょ。教えてくれる?」

曜「教えない」

善子「私の水着姿見られるわよ」

曜「それは見たいけど教えない」

善子「何でよ! タダで見せるわけないじゃない」

曜「いくら?」

善子「お金!?」

曜「冗談。こんな時期に温水でもないプールに入ったら風邪引いちゃうよ」

善子「じゃ、じゃあ沼津の温水プールに行きましょ」
0128名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:44:12.24ID:mc7jjdA4
曜「……」

善子「飛び込み用のプールもあったはずだわ。久しぶりに見たいわね」

曜「どうしても見たい?」

善子「どうしても」

曜「……分かったよ。善子ちゃんのお願いなら」

善子「……」

曜「体拭かないと。また授業に遅れちゃう」スタッ

善子「そうね。じゃあ私が……」

曜「いいよ、自分で拭けるから」

善子「そう……」

……

……

 二年教室

ガラガラッ

先生「みんなおはよう」

千歌「うぅ……赤点だけは勘弁してください……」

梨子「大丈夫よ。あれだけ頑張ったんだもの」

千歌「でも不安だよー!」

先生「ふふ。人数が少ないと次の日には返ってくるからいいわよね」

千歌「よくないよ! そのまま返ってこなくていいのに……」

先生「大丈夫よ。今回は赤点は一人もいなかったわ」

千歌「本当ですかっ!!?」ガタッ

梨子「落ち着こうか」グイ

先生「みんなよく頑張ったわね」フフッ

千歌「ってことは曜ちゃんも赤点回避? やったね!」

曜「……」

千歌「嬉しくないの?」

曜「えっ? ごめん、聞いてなかった」

千歌「昨日から変だけど大丈夫かな……」ハァ

先生「……」ジー
0129名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:44:49.51ID:mc7jjdA4
曜「な、何ですか先生」

先生「ううん。渡辺さんもよく頑張ったわ」

梨子「ほっ……」

千歌「梨子ちゃんはね、私だけじゃなくて曜ちゃんにも教えてあげればよかったってずっと言ってたんだよ」

梨子「余計なこと言わないで」

曜「そうなの? ありがと」

千歌「でもすごいじゃん! 自力で赤点回避するなんてさ」

曜「まあ私が本気を出せばね?」

先生「じゃあ早速テスト返すわね」

梨子「あれ? 教科の担当の先生が返すんじゃ……」

先生「業者さんのテストだからね。全教科まとめて評価やアドバイスがついてるのよ」

千歌「そっか、梨子ちゃんは年明けのテスト受けるの初めてなんだ」

梨子「ええ」

千歌「きっと今回も余計なお世話なこと書かれてるんだろうなー」

……

先生「はい。それじゃ各自復習して今後の学習に活かすこと」

千歌「ゴミ箱行きだよこんなもの」グスッ

梨子「どんなこと書かれたんだろう……?」

先生「分からないことはそのままにしないでね。先生に聞いてもいいし、桜内さんに聞いてもいいのよ」

梨子「どうして私に」

先生「全教科満点だから」

千歌「……」

曜「……」

みんな「「……」」

梨子「何で言うんですかぁ」

先生「えーと、何かごめん。それじゃホームルーム終わり! 解散!」

……

 一年教室

先生「はい、よかった人も悪かった人もよく反省してこれから頑張ってね」

ルビィ「またお姉ちゃんをガッカリさせちゃうよ……」
0130名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:45:21.42ID:mc7jjdA4
花丸「マルは思ったより取れててよかった」ホッ

善子「くく……やればできるじゃない私!」ニヤニヤ

ルビィ「善子ちゃんも赤点? 一緒だね……」

善子「見なさい。この点数を」ペラッ

花丸「えぇ!!?」

ルビィ「嘘っ……!? 善子ちゃんが八十点って」

花丸「どんな勉強したの? マルにも教えてほしいな」

善子「それは秘密よ。ヨハネが本気を出せば満点だって余裕なんだから」

ルビィ「善子ちゃんですら八十点……。ルビィは、ルビィは……」

花丸「元気出してルビィちゃん。次また頑張れば大丈夫だよ」ポンポン

ルビィ「そういう花丸ちゃんは何点だったの」

善子「そうよ。偉そうに言ってルビィと大して変わらなかったりして……」

花丸「それはないね」

善子「ないわね」

ルビィ「酷いよ!」

花丸「そこそこいい点数は取れたけど満点は一つも取れなくて……」ペラッ

ルビィ「全教科九十点台……」

善子「くっ……やるじゃない」

ルビィ「ルビィ、生きてる価値あるのかな……」シュン

花丸「わぁあ!? ごめんねルビィちゃん。マルがもっとうまく教えてあげられてたら……」

ルビィ「ううん。正直に言っていいんだよ。ルビィには無理だからさっさとやめたほうがいいって」グスッ

花丸「や、やめるだなんて」

ルビィ「これじゃまた最下位だよー!」

善子「ダイヤさんに教わっててその点数……」

ルビィ「お姉ちゃんにも花丸ちゃんにも、鞠莉さんにも果南さんにも教わってるよ! この前は千歌さんにも教わったし……」

花丸「そんなに?」

ルビィ「本当は梨子さんにも教わりたかったんだけど忙しそうだったから……」

善子「それだけ色んな人に教わったら逆効果なような……」

花丸「みんな教え方が違うだろうし……同じところ教えたり逆に誰も教えないところがあったりしそう」

ルビィ「みんなは悪くないよ! ルビィの頭が悪いからこんなことに……」グスッ
0131名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:45:55.12ID:mc7jjdA4
善子「はぁ……。私がこの点数を取れたのはね」

ルビィ「曜さんがマンツーマンで教えてくれたからでしょ? 知ってるよ」

善子「あ、うん」

ルビィ「悔しいよぅ……ルビィも曜さんが欲しいよぅ……」グスッ

花丸「曜さんは二人もいないから……」アハハ

善子「誰か一人に絞って教わった方がいいかもね。ダイヤさんはほとんど満点取っていたはずだし……」

ルビィ「お姉ちゃんだけはないかな」

花丸「ダイヤさん厳しいもんねぇ」

ルビィ「ルビィいつも泣きながら勉強させられてるよ」

善子「うわ……」

ルビィ「涙でほとんど教科書が見えないんだ」エヘヘ

花丸「マルでよければまた教えてあげるよ」

ルビィ「……」

花丸「嫌かな」

ルビィ「花丸ちゃんに先生ヅラされるのムカつく……」

花丸「えぇ!?」

ルビィ「ルビィも曜さんに教わろうかな。曜さんって何でもできるしきっと今回も満点なんだろうなぁ」

善子「ダメよ!」

ルビィ「勉強を教わるだけだよ?」

善子「それでもダメ」

花丸「善子ちゃんヤキモチ?」

善子「それもあるけどとにかくダメなものはダメ」

ルビィ「ルビィが善子ちゃんよりいい点数取るのが嫌なんでしょ」

善子「それはあり得ないわね」フフッ

ルビィ「むかっ! こうなったらどんな手を使ってでも曜さんに教わるもん」

花丸「ルビィちゃんまさか……」

ルビィ「うふふ」ニヤニヤ

善子「やめて。お願いだから」

……
0133名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:47:28.18ID:mc7jjdA4
 放課後 二年教室

先生「渡辺さん、ちょっといいかしら」

曜「はい?」

先生「ちょっと話があるの」

曜「……」

先生「大切な話よ」

梨子「えっと……じゃあ私たちは先に行くから」

先生「悪いわね」

千歌「先生、あんまり曜ちゃんをいじめないであげてね」

先生「いじめないわよ」

梨子「曜ちゃん、本当に赤点じゃなかったのよね? 結局見せてくれなかったけど……」

曜「あはは、大丈夫だよ。追試も補習もないからさ」

先生「……」

千歌「早く来ないと練習はじめちゃうよ?」

梨子「千歌ちゃん。行こう」グイ

ガラガラッ

ストンッ

曜「……」

先生「ふぅ……」

曜「えっと……何でしょうか? 赤点なら一つも取ってませんけど」

先生「そうね。いつもの渡辺さんからは想像できないような点数ね」

曜「カンニングもしてないですよ!?」

先生「知ってるわよ。保健の先生に目の前で見られながら受けたって聞いたもの」

曜「ええ。少しドキドキしました……」カァアア

先生「……」ハァ

曜「いや、冗談なので突っ込んでくれないと」

先生「え? あぁ、冗談だったのね」

曜「さすがに自分の親より年上は……ちょっとね」アハハ

先生「……」

曜「ほとんどの教科がピッタリ五十点なのは私も驚きました」
0134名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:47:59.32ID:mc7jjdA4
先生「このテスト、半分は一年生の内容なのよ。渡辺さんは一年生の部分は満点だった」

曜「きっと去年までは優等生だったのかな」アハハ

先生「逆に言うと二年生の範囲はほとんど全問不正解。あなたこの約一年何してたの?」

曜「えっと……」

先生「……」

曜「ほ、ほら。まずは一年生の内容から復習しようと思って」

先生「まあ、基本を振り返るのは大切なことだわ。センター試験だって七割近くは一年生の内容だし」

曜「私でも七十点取れるのかぁ」

先生「えーと、七割取ってね」

曜「??」

先生「まあいいわ。そんなことより大切なお話があります」

曜「そんなことより!?」

先生「いえ、テストもすごく大切なんだけれど、その先の話ね」

曜「何ですか」

先生「進路のことよ」

曜「あー、えっとまだ考え中なのでまた今度に」

先生「もう二年生も終わって三年生よ。これ以上先延ばしにはできないわ」

曜「……」

先生「自分の中ではどうしたいと思ってるの?」

曜「ええと……まだ何も」

先生「何もってことはないでしょう。実現できるかどうかは置いといて、まずは希望を話してみて」

曜「……本当に何も決まってないんです」

先生「……」

曜「先生も知っての通り、今はスクールアイドルとして頑張ってるところで……」

曜「だから進路のことなんて全然」

先生「スクールアイドルでは食べて行けないわよ」

曜「……知ってますよ」

先生「もしかして、プロのアイドルを目指したいとか?」

曜「いえ」

先生「どうして。好きなんでしょう」
0135名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:48:32.48ID:mc7jjdA4
曜「私は……Aqoursだから好きなんです。みんなと一緒だから」

先生「そう……」

曜「もうすぐ三年生も卒業しちゃうから……今はライブのことで精一杯なので。進路の話はその後でも」

先生「もう少し先のことを考えなさい」

曜「……」

先生「実はね、大学から推薦のオファーがきてるの」

曜「はは……」

先生「前にもきたけれど、またよ。よほど渡辺さんに来てもらいたいのね」

曜「お断りしたじゃないですか」

先生「……」

曜「私はもう、水泳も飛び込みもやりません」

先生「そう」

曜「はい。今度はきちんと断っておいてください」

先生「……」

曜「私へのオファーですよ。先生へのじゃありません」

先生「そうよ。だから言ってるの」

曜「……」

先生「今回の点数には正直私もホッとしてる……でもね」

先生「このままじゃ進級の要件は満たさないの。分かってるとは思うけれど」

曜「留年ですか」

先生「今回だって……どのくらい勉強したの?」

曜「それはもう、死ぬ程勉強しましたよ」

先生「……」

曜「ええ。それでこの点数です」

先生「天は二物を与えずって言うけれど……本当ね」

曜「……」

先生「ごめんなさい。今回は渡辺さんも頑張ったと思うわ。だっていつもの点数からは想像できない伸び幅だもの」

曜「あれだけ頑張って最下位ですよ」

先生「……」

曜「でも見てください。五十点超えた科目もあります」ペラッ
0137名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:50:04.77ID:mc7jjdA4
先生「頑張ったわね」

曜「はい!」

先生「残り二回のテスト、今回以上の成績を残せる?」

曜「残せなかったら留年ですか」

先生「今のままではね」

曜「……」

先生「でも、渡辺さんには水泳があるじゃない。そっちでいい成績を出せば進級できるわよ」

先生「ウチも推薦決まってる子を留年させたくはないから……」

曜「それはずるくないですかね」

先生「ずるくはないわよ。推薦は渡辺さんの努力で勝ち取ったものなんだから」

曜「私、何もしてない……」

先生「……このまま留年してもいいことなんてないわよ」

曜「……」

先生「渡辺さん、同じグループの後輩の子と付き合ってるんですってね」

曜「あ……はい」

先生「その子、今回はものすごくいい点数を取ったみたいじゃない」

曜「そうですけど……どうして」

先生「渡辺さんが教えてあげたの?」

曜「まさか。こんな点数の私が教えられるわけないです」

先生「でも渡辺さん、一年生の範囲は満点だったわ」

曜「……」

先生「もしかして、最初から二年生の範囲は捨てて……」

曜「そ、そんなことして私に何の得があるんですか」

先生「……」

曜「私は二年生ですよ? 一年生のテストだったらほとんど満点取れたかもしれないけど……」

先生「渡辺さん、教え方だけは上手よね」

曜「『だけ』って……」シュン

先生「あ、ごめんね? 今のは悪く言うつもりじゃなくて」

先生「渡辺さん、先生に向いてるんじゃないかしら?」

曜「あはは。面白い冗談ですね」
0138名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:50:42.63ID:mc7jjdA4
先生「本当は分かってるのにテストだと解けないのは不思議だけど……」

曜「本番に弱いんです」

先生「勉強ではそうみたいね」

曜「勉強じゃなくても、ですよ」

先生「……」

曜「私、本当に大事なときに何もできないんです」

曜「この前善子ちゃんが倒れたときも……何の役にも立てなくて」グスッ

先生「あれは……仕方ないわよ。私も後から聞いたんだけれど、彼女、心にその……障害があるそうじゃない」

曜「善子ちゃんをそんなふうに言わないで!!」バンッ!

先生「……ごめんなさい。そんなつもりは」

曜「善子ちゃんは普通の女の子です……」

先生「ええ。そうよね」

曜「こんな私でも好きって言ってくれるんです」グスッ

先生「……」

曜「だから私……何でもしますよ」

先生「え?」

曜「善子ちゃんにはこんなこと言ったら怒られちゃいますけど……」

曜「私、善子ちゃんのためなら死ねます」

先生「……」

曜「私たち、遊びで付き合ってるわけじゃないので」

先生「誰もそんなこと言ってないわよ」

曜「だから……もし善子ちゃんが望むなら」

曜「水泳だって飛び込みだって、大学にだって行きます」

曜「……」

先生「私は、あなたの考えを聞きたいんだけどな」

曜「推薦、今からでも間に合いますか?」

先生「え?」

曜「オファー、来てるんですよね?」

先生「ええ、来てるわよ。でも……」

曜「私、それ受けます。大会にも出ます。スクールアイドルは絶対にやめませんけど」
0139名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:51:14.03ID:mc7jjdA4
先生「その大学、名門中の名門よ。いくらスポーツ推薦とはいえ入ったら勉強はやらなくちゃ」

曜「……さっき先生から勧めてきませんでした?」

先生「そうだけど。最後まで聞いて」

先生「次回のテストで今回以上の点数を取ること。渡辺さんはまだまだこれから伸びるってことを誰が見てもわかる形にするの」

先生「それと大会で少なくとも表彰台には上ること。最低でも地元の新聞に載るくらいじゃないと見てもらえないわ」

先生「そうすれば何とか進級はできるはずよ。あとは三年生になってもっと頑張ればいい」

曜「簡単に言ってくれますね」フフッ

先生「それかもう一度二年生をやり直すのね」

曜「……」

先生「もう一度聞くわね。進路はどうしたいと思ってる?」

曜「……少し考えさせてください」

先生「いつまで?」

曜「私の気持ちが決まるまで」

先生「先に留年が決まらないといいわね」

曜「……」

先生「ごめんなさい。言い過ぎたわ」

曜「大学からのオファーは保留でお願いします」

先生「分かったわ。今週中に返事をちょうだい」

曜「……来週で」

先生「仕方ないわね。来週中よ」

曜「ありがとうございます」ペコッ

先生「この後練習?」

曜「はい」

先生「そう……頑張って」

曜「先生も、今度のライブ見に来てくださいね」エヘヘ

先生「ええ。もちろん」

ガラッ

曜「それでは失礼します」

ストンッ

先生「……」
0141名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:52:42.71ID:mc7jjdA4
先生「高海さんですら七十点……まあ、あれだけ熱心にやってたしあの桜内さんが教えたなら当然か」

先生「死ぬ気で頑張ってこの点数はちょっとね……」

先生「……」

先生「補習、やらなきゃダメかしら」

……

……

 善子の家 リビング

曜「……」

善子「どうしたのよ。さっきからボーッとしちゃって」

曜「え? ううん。何でもないよ」

善子「さっき走ってるときも何だか心ここにあらずって感じだったわね」

曜「……」

善子「バス停ひとつ分じゃなくてもう少し走りたかった?」

曜「ううん。元からひとつ分の予定だったからね」

善子「そう? 曜さんはまだまだ走り足りなそうだったわ」

曜「距離は慣れてきたら伸ばしていけばいいよ」

善子「そうね」

曜「それより善子ちゃん、筋肉痛は大丈夫?」

善子「え? 全然痛くないわよ。さすが曜さんよね」

曜「やる前にもやった後にもみっちりストレッチをしておいたから」

善子「私の体、固かったでしょう」

曜「柔らかかったよ?」

善子「……変な意味じゃないわよね?」

曜「変な意味って?」

善子「えーと……だから、その」ボソボソ

曜「お腹はちょっとぷにぷにしてたかなぁ」

善子「うぅ……」カァアア

曜「ね、私の体は?」

善子「曜さんの体……」

曜「変な意味じゃなくてね」フフッ
0142名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:53:11.86ID:mc7jjdA4
善子「通じてたんじゃない!」

曜「あはは。私の体は好きに使っていいって言ったよ?」

善子「何もしてないわよ」

曜「もったいない」

善子「えぇ!?」

曜「嘘嘘。下着がカピカピしてたのは私の気のせいかもしれないし」

善子「……」カァアア

曜「私もおしっこ飲んどけばよかったかなぁ」ハァ

善子「飲んだに決まってるわ」

曜「飲んでないよ。善子ちゃんに飲んでいいって聞いたら絶対ダメって言うでしょ」

善子「もちろん」

曜「だから飲んでない」

善子「本当かしら?」

曜「まあいいよ。信じてくれなくても」

善子「……」ジー

曜「本当だって。こっそり飲まなくたってちゃんとお願いすれば飲ませてくれるでしょ?」

善子「いや、飲ませないわよ」

曜「しゅん」

善子「バカなこと言ってないで、自分の家に帰りなさいよ」

曜「えっ」

善子「昨日も泊まったじゃない」

曜「うん……」

善子「また今度ね」

曜「じゃあ帰るけど……その前に」

善子「?」

曜「バス停まで競争して勝ったら飲ませてくれるって約束だよね」

善子「は? してないわよそんな約束」

曜「したよ。覚えてないの?」

善子「嘘ね。しかも勝ったの私だし」

曜「あれは善子ちゃんに勝たせてあげたんだって。実質私の勝ちだよ」
0143名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:53:41.50ID:mc7jjdA4
善子「めちゃくちゃね……」ハァ

曜「善子ちゃんが本気の私に勝てるとでも思ってる?」

善子「何かムカつく」

曜「今だって私が本気を出せば善子ちゃんから無理やり飲ませてもらうことだって……」

善子「やってみなさいよ」

曜「いいの?」

善子「できるものならね」

曜「……」ゴクリ

善子「言っておくけれど、曜さんのこと嫌いにならないって保証はできないわよ」

曜「それはずるいな」

善子「私と私のおしっこよ。好きな方を選んでいいわ」

曜「……」

善子「さ、今日はもう帰りなさい。また明日ね」

曜「待って」ギュ

善子「何よ。今日も泊まるとか言い出さないでよ」

曜「飲ませて」

善子「は?」

曜「飲みたいの。お願い」

善子「嫌よ。何度も言わせないで」

曜「明日の水泳教室の授業料だよ」

善子「え……」

曜「善子ちゃんの気が済むまで教えてあげる。だからお願い」

善子「明日だけ?」

曜「……何日?」

善子「私の好きなときに好きなだけ」

曜「……」

善子「そのくらいの価値はあると思うけど?」

曜「あるね。分かったよ」

善子「あるのね……」

曜「早く。ママが帰ってきちゃう」
0144名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:54:18.04ID:mc7jjdA4
善子「ここで!? 匂いでバレるわよ!」

曜「じゃあお風呂でする?」

善子「トイレでなら」

曜「善子ちゃんの家のトイレ一人用だからなぁ」

善子「トイレって普通は一人用よ。多目的トイレでもない限り」

曜「多目的……」

善子「おむつ替えとかそういうのね」

曜「今度善子ちゃんのおむつ替えてあげるね」

善子「いや、いいから……」

曜「私のを替えたかったかな? でもごめん。私もうおむつは卒業したから」

善子「お漏らしは治ってないわよ」

曜「それは治らなくてもいいかな」

善子「今日三年組に見られて恥ずかしがってたのは誰だったかしら」

曜「あれは……事故だよ」

善子「曜さんがお漏らしするってバレちゃったわね」

曜「うん……」ドキドキ

善子「心なしか嬉しそうに見えるんだけど」

曜「みんな嫌な顔一つしないで手伝うって言ってくれたよね」

善子「嫌に決まってるわよ。顔に出さなかっただけで」

曜「そうかな……」

善子「当たり前でしょ。曜さんだって私じゃなかったらおねしょシーツなんて触りたくもないでしょう」

曜「匂いによるね」

善子「うぇ……」

曜「でもでも、善子ちゃんのおねしょシーツほどいい匂いのするシーツは世界中どこを探しても見つからないよ。私が保証する」

善子「そんな保証いらない」

曜「って、善子ちゃんのしかきちんと嗅いだことはないんだけど」アハハ

善子「曜さんって私のよりいい匂いのシーツ見つけたらその子を好きになりそうね」

曜「その子のおしっこは好きになるかもね。本人まで好きになるかは分からないな」

善子「否定しないの?」

曜「私、嘘をつくのは苦手なんだ」
0145名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:54:45.68ID:mc7jjdA4
善子「あっそ。用が済んだら帰ってよね」

曜「一応飲ませてはくれるんだね」

善子「飲ませるまで帰らないつもりでしょ」

曜「もしかして、私にずっと側にいてほしいから飲ませないの?」

善子「……」

曜「側にいてって言えばいいのに」

善子「言わない」

曜「何で?」

善子「言わないといてくれないの?」

曜「いるよ」

善子「そう。これからもいて頂戴」

曜「うん」エヘヘ

善子「えっと……紙コップはあったかしらね」スタッ

曜「心配しなくても直接飲むよ」

「嫌よ」ガサゴソ

曜「我慢できなくなっちゃう?」

「曜さんがね」

曜「私はおしっこさえ飲ませてくれれば大人しく帰るよ」

「なら大人しく帰って」

曜「うん」

善子「あったわ。一杯だけだからね」

曜「うん……」

……

 トイレ

バタン

曜「二人だとちょっと狭いね」フフッ

善子「鍵、掛けた?」

曜「誰もいないのに」

善子「いいから掛けて」

ガチャリ
0147名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:56:15.17ID:mc7jjdA4
曜「掛けたよ」

善子「それじゃするから……あっち向いてて」

曜「見せてくれないの?」

善子「見せないわよ」

曜「……」クルッ

善子「こっち向いたら即流すからね」

曜「分かったよ。信用ないなぁ私」

善子「……」

スルッ

シュッ

曜「……」

善子「……」

チョロ

曜「あのさ」

善子「何」

チョロロ

曜「わた……」

善子「私が終わってからにして」

曜「……」

チョロロ

曜「コップで飲ませるだけなら私は外で待たせておいてもよかったのに」

善子「あ、そういえばそうね。出ていっていいわよ」

曜「本当に?」

善子「何よ、出ていきたいの?」

曜「ううん。鍵開けちゃうよ? ドアも開けちゃうよ??」

善子「……」

曜「たまたまママが帰ってきたら私と善子ちゃんが変なことしてたと思われちゃうね」

善子「……確かに」

曜「ねっ、やっぱり私と……」クルッ

善子「こっち見ないで!」
0148名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:56:52.87ID:mc7jjdA4
曜「ごめん」クルッ

チョロロ

善子「……こんなものかしら」スッ

曜「飲ませて!」

善子「終わってからでいいでしょ」

曜「うぅ……」

善子「まだ曜さんが変なことしないとも限らないし」

曜「しないってば」

善子「……」

ジョボボ

曜「いくらいい匂いで気が変になりそうだからって、善子ちゃんを襲ったりとかそういうのはね?」

善子「曜さんってそういうところはしっかりしてるのね」

曜「あ、もちろん善子ちゃんが襲ってほしいなら別だよ?」

善子「……」

曜「もしかして期待してた?」

善子「何を」

曜「鍵まで締めさせてさ。私がドアの前にいるから善子ちゃんは逃げられないし」

善子「……」

曜「私がもし……その」

曜「善子ちゃんの……」

善子「……」

曜「……」

善子「何よ」

曜「な、何でもない……」カァアア

善子「そう」

ジョボボ

曜「……」

善子「曜さんってこういう話題苦手よね。いかにも好きそうなのに」

曜「その、善子ちゃんとしたいとか?」

善子「私とじゃなくてもよ」
0149名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:57:25.62ID:mc7jjdA4
曜「ママと?」

善子「そういうことを聞いてるんじゃないの。一般的によ」

曜「あぁ、例えばコンビニのそういう雑誌を立ち読みしてもトイレに駆け込みたくならないかってこと」

善子「やけに具体的ね……」

曜「何でトイレの側に置いてあるんだろうね?」

善子「知らないわよ」

曜「やっぱりそういうことするためなのかなぁ」

善子「さあ?」

曜「私も立ち読みしたことあるけど、そこまで面白くはなかったよ」

善子「あるの!?」ガタッ

ジョボボ

曜「な、ないよ……」

善子「うわ……曜さんのせいで手にかかったわ」

曜「舐めてあげようか」

善子「洗うからいいわよ……」フキフキ

曜「……」

チョロ……

善子「ふぅ……」スッ

ガラガラ

フキフキ

曜「善子ちゃんもそういう雑誌読んだりする?」

善子「エロ雑誌のこと?」

曜「そ、そんな言い方は……」カァアア

善子「読んだことないわね。読みたいとも思わないわ」

曜「善子ちゃんが見たのはどんな内容だった?」

善子「だから読んでない」

曜「参考に……してあげなくもないよ?」ドキドキ

善子「い、いいわよそんなの! 曜さんとは……その、普通に」

曜「……」カァアア

善子「どうして自分で恥ずかしがるのよ」
0150名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 19:58:05.85ID:mc7jjdA4
曜「だって恥ずかしいもん……」

善子「前に映画見たときも曜さん、顔真っ赤にして泣きそうだったわね」

曜「あのときの……。でも善子ちゃんが見たいって言うから」

善子「初デートで映画って言ったら普通は恋愛映画よ。ゾンビ映画じゃないわ」

曜「私も別にゾンビ映画を見たかったわけじゃないよ」

善子「……」

曜「善子ちゃんこそ、ゾンビとかホラーとか好きそうなのに苦手なんだね」

善子「映画館は迫力が違うもの」

曜「うん……アレなシーンも迫力がね」ドキドキ

善子「って言ってもR15だから」

曜「私がそういうの苦手だって知っててわざわざ見せてくるなんて、善子ちゃんって変態さんかな? って思っちゃったよ」

善子「知るわけないじゃない。そのときは曜さんのこと何も知らなかったし」

曜「何もってことはないよね」

善子「みんなが知ってる程度にしか知らなかったわ」

曜「……」

善子「あ、曜さんと話してたら拭くの忘れてたわ。また乾いちゃう」

曜「善子ちゃんって拭かないでパンツ履いちゃったりする?」

善子「しないわよ」

曜「私はたまにあるんだけど……そのときってやっぱり匂いで気づかれるものかな」

善子「汚い! ちゃんと拭いて!」

曜「基本は拭くよ。でも急いでるときとか、何かが後ろにいるときとか……ね?」

善子「急いでても拭いて。あと後ろに何がいるのよ」

曜「分からないよ。分からないから怖いんだって」

善子「ホラー映画、平気なんじゃなかった?」

曜「自分で経験するってなるとね……できれば遠慮したいかな」

善子「曜さん、狭いところ苦手だものね」

曜「そうだよ。トイレするときもついドアを開けたままにしたくなるし」

善子「学校でも?」

曜「うん」

善子「やめなさいよ。誰かが来たら大変よ」
0152名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:00:02.81ID:mc7jjdA4
曜「みんなもう慣れてるから気にしないよ」

善子「見られてるの!?」

曜「『渡辺さんまたドア閉め忘れてるよ』ってそっと締めてくれるよ」

善子「……」

曜「私としてはそのまま開けておいてほしいんだけど……」

善子「今のこの状況も本当は怖い?」

曜「え? あぁ、狭いところに閉じ込められてるってこと?」

善子「ええ。鍵までかけられてて……もし何かあってもすぐには逃げられないわよ」

曜「何かあるの?」

善子「曜さんの後ろ……」スッ

曜「な、何もいないよね……? っていうか私の後ろドアだよね?」

善子「ドアの向こうから……足音が近づいてきてるわ」

曜「私を怖がらせようって言ったってそうはいかないよ」ガクガク

善子「聞こえるわ。ほら……」

トン…… トン……

曜「ききき聞こえない! 足音なんて何も!」

善子「しっ! 静かに」ピトッ

トン…… トン……

曜「んんーー!!」モゴモゴ

善子(ママが帰ってきたのかしら)

曜(もう無理! このままドアごと私はエイリアンに食べられて……)プルプル

善子(ママのことだから玄関に靴があるのにいないってなったらトイレを疑うわ……)

善子(私と曜さんが変なことしてたと思われちゃう)

善子(どう誤魔化すべきかしら……)ハァ

コンコンッ

曜「嫌あああ!!」

善子「わっ」グイッ

「曜ちゃん? ごめんね、トイレ中に」

曜「ママ!? 何だ、驚かさないでよ……」

「ごめんなさい。善子がいないみたいだけど……知ってる?」
0153名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:00:34.65ID:mc7jjdA4
曜「はい。善子ちゃんなら……もごっ」

善子(余計なこと言わないで!)

曜(だって、ママ心配してるんだよ? 靴があるのにいないなんて幽霊にでもなっちゃったんじゃないかって)

善子(そんな心配はしてないわよ)

曜(それか、裸足のまま急に走り出したくなっちゃったとか)

善子(それ、私ただの頭おかしい人……)

「曜ちゃん?」

曜「え? あぁ、えっと……善子ちゃんは」

善子(コンビニに行ったって言いなさい)

曜(靴も履かずに?)

善子(他にも持ってるから……)

「大丈夫? お腹痛いの?」

曜「善子ちゃんはコンビニに……行きました」

「そう。珍しいわね」

曜「雑誌を立ち読みに……あ、決して変な雑誌ではもご」

善子(だから余計なこと言うな!)

曜(ごめん)

「帰ってきたらちょっとお話があるの。曜ちゃんは……悪いんだけど今日は」

善子(え?)

曜「そ、そうなんですか。ちなみに何の話でしょう……」

「進路のことでね」

善子(いや、まだ一年生よ私)

曜「さすが善子ちゃん。一年生なのに進路? 私ですら未定なのに」アハハ

「曜ちゃんも、お母さんから話があるんじゃないかしらね」

曜「え?」

「ほら、来週は三者面談があるでしょう?」

善子(そういえばそんなようなものが……)

曜「あー、家庭訪問の代わりでしたっけ」

「ええ。今は家に上がり込まれるのを嫌がる家庭も多いから」

曜「ママになら好きなだけ上がり込んで貰っていいんですけど」
0154名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:01:06.76ID:mc7jjdA4
「……」

曜「中学のとき、私の部屋まで見ましたよね」

善子(そうなの?)

曜「うん。と言ってもそのときの私の部屋は普通だったよ」

「ん?」

善子(ほら! 私はいない振りしてくれなきゃ!)

曜「あー、そっか。今のは独り言です」

「そう……」

曜「トイレって狭いから誰かと喋っていないと落ち着かないんです」

「狭いところ苦手なの?」

曜「ほら、私って将来は世界に羽ばたく人じゃないですか」アハハ

善子(世界に羽ばたく……)

「曜ちゃんは将来、何になりたいの?」

曜「私? 私は……」

「って、トイレ中に聞くようなことじゃなかったわね」

曜「善子ちゃんのお嫁さん、かな」

善子(……)カァアア

「ふふっ。楽しみね」

曜「本当ですよ?」

「この前の写真、よく撮れていたわ」

曜「私も今度ウエディングドレス着たいな……」

「確か曜ちゃんのお母さん、昔のを取ってあるはずよ」

曜「え? レンタルじゃないんですか?」

「曜ちゃんのお母さん、海外で式を挙げたからレンタルの手配ができなかったみたいでね」

善子(どんな業者よ。騙されて買わされたんじゃないの)

曜(あれ、一着いくらするんだろうね……)

「曜ちゃんのお父さんがプレゼントしてくれたって言ってたわ」

曜「お父さんが?」

「レンタルの手配ができなかったなんてただの口実よ。買うなんて言ったら絶対反対されると思ったんでしょう」クスクス

曜「それで嘘を」
0156名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:02:44.13ID:mc7jjdA4
「そうみたいよ。曜ちゃんのお母さんが着たいって言っていたドレス、オーダーメイドだからレンタルはなかったの」

曜「たった一回着るだけなのに……」

善子(前撮り合わせても二回か三回でしょうね)

「羨ましいわね」フフッ

曜「ママは……」

「私? 私は式なんて挙げてないわよ」

曜「そうなんですか? ママのウエディングドレス姿、見たかったな」

「結婚式って挙げるだけでもものすごくお金がかかるから」

善子(相場は三百万円だったかしら)

曜(詳しいね。そんなに私と挙げたい?)

善子(あ、挙げたい……)カァアア

曜「今度私と挙げよっか」

「えっ?」

善子(ママには言ってない!)

曜「三百万円なんて大金は持ってないけどさ、そこはみんなに協力してもらって身内でやるの」

「えっと……」

曜「衣装は私が作るし、料理は私が作るから」

善子(忙しそうね)

曜「会場は学校の講堂でさ。うまく飾り付けすればそれっぽくなると思うし」

曜「梨子ちゃんにピアノ弾いてもらって、ほら……」

「……」

曜「誓いのキスとかしちゃったりして」エヘヘ

「曜ちゃん……」カァアア

善子(だからママじゃないわよ! 曜さんも否定して!)

曜「好きだよ」ギュ

善子「あ……」ドキドキ

「あ、ありがとう……」カァアア

曜「私のことは?」

善子(それはもちろん……)ドキドキ

「好きよ。ありがとう、気持ちだけ貰っておくわね」
0157名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:03:13.25ID:mc7jjdA4
善子(私より先に返事しないで!!)

曜「あはは。ヤキモチかな?」

「何言ってるの。曜ちゃんには善子がいるでしょ?」

善子(だからママには話してないんだってば!)

曜「そんなの関係ないよ。好きなんだもん」ギュ

「……」カァアア

善子(あぁ……)

曜「約束だよ」

「や、約束……」

善子(どんどん私の目の前で話が進んでいくわ……)

曜「ふぅ……」

「曜ちゃん、誰にでもそんなこと言ってるの?」フフッ

曜「え?」

「好きって言ったり」

曜「……」

善子(あのね、ママはさっきの話、自分に対しての話だと思ってるのよ)

曜(えっ)

善子(だってここに私がいること知らないもの)

曜(えええ!!?)

善子(だから言ったのに……)ハァ

曜(どうしよう!? 私ママのことは好きだけど結婚式はさすがに!)

善子(今すぐ否定しなさい。じゃないと後々面倒よ)

曜(善子ちゃんがここにいるってバラしていい?)

善子(それはダメ!)

曜(えぇ……)

「あのね、曜ちゃん」

曜「は、はいっ」

「そういうのは本当に好きな人だけに言ってあげなさい」

曜「私は……」

善子(さすがにママも勘違いしてなかったか……)ホッ
0158名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:03:42.57ID:mc7jjdA4
曜「ママのことも好きです」

善子(おいぃ!!?)

「善子が聞いたら怒るわよ?」

善子(聞いてるわ)

曜「善子ちゃんの目の前でも言えます。ママのことも好き」

善子(……)

曜「それで私のことを嫌いになるようなら……それは仕方ないです」

「そんなこと言わないであげて」

曜「本当のことだから」

善子(……)

「善子が聞いたら泣くわね」

曜「泣いてる?」

「私? 泣いてないわ」

善子(泣きたいわよ)

曜「ごめんなさい」

「もう少し、大切にしてあげてね」フフッ

曜「大切にします! するけど……」

「それにしても善子遅いわね。様子を見てこようかしら」スタッ

スタスタ……

曜「……」

善子「やっと行ったわね。トイレ中なのに遠慮ないんだから」ハァ

曜「やっぱり分かってもらえないか……」

善子「は?」

曜「私が悪いのかな」

善子「何が」

曜「善子ちゃん以外にも好きって言うの、変かな」

善子「変かどうかは知らない。私はあんまりいい気持ちはしないってだけよ」

曜「嫌いになんてなれないよ」

善子「思ったことを口に出さずにはいられないのね。曜さんの悪いところだわ」

曜「うん……」
0159名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:04:13.73ID:mc7jjdA4
善子「私がいなかったらママとキスだってしてそう」

曜「それはママが許さないよ」

善子「私も許さないわよ」

曜「……」

善子「寝てるときにとかやめなさいよ?」

曜「あっ」

善子「『その手があったか』みたいな顔しないで」

曜「ううん。寝てるときにするのは反則だね」

善子「変なフェアプレー精神」

曜「アスリートだから」アハハ

善子「アスリートのくせに自分の体重も管理できてないわよね」

曜「うっ……」

善子「ボクシングなら失格よ」

曜「私はボクサーじゃないよ」

善子「例えばの話」

曜「私がボクサーだったら……?」

善子「いや、わざわざ想像しなくても……」

……

…………

実況『さぁ始まりました! 女子フェザー級世界タイトルマッチ、チャンピオンの松浦選手に挑むのは期待の新人』

曜『善子ちゃんを貰うのは私だよーー!!』

 善子「何で私が賞品なの」

実況『期待の新人、渡辺選手! 高校生にして日本大会を制した天才ボクサーです!』

果南『ふふん。善子は私のものだからね。絶対に譲らないよ』

曜『何をーっ!?』ブンッ

果南『止まって見えるね』シュッ

曜『そ、そんな……私のパンチはマッハ四なのに』

果南『たったの四……ゴミめ』フフッ

 善子「果南さんはゴミとか言わないわ」

曜『くっ……負けました』ペコッ
0160名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:04:42.19ID:mc7jjdA4
 善子「諦めるの早すぎ!」

実況『おーっと渡辺選手?? まさかの降参かぁ!!?』

曜『高二です』

 善子「聞いてない」

果南『ふふっ。そうだね、曜は来年も高二だった』クスクス

曜『むっ』

果南『留年なんかして可哀想に。パンチ食らいすぎて頭が……』

曜『元々だもん!!』

 善子「そんなこと胸張って言わないで……」

果南『じゃあ善子は今年も私が好きなように使わせてもらうね』

 善子「使うって何!? 私どんなことされちゃうのよ」

曜『善子ちゃんに何を!? 私も混ぜて!』

 善子「ちょっと!」

果南『嫌だね。善子が欲しかったら私を倒してからにしな』

曜『私も果南ちゃんのものになるから……』

果南『本当?』

曜『この体……果南ちゃんの好きに使ってくれていいから』カァアア

果南『……』ドキドキ

実況『えっと……』

 善子「実況、諦めたわね」

果南『負けました』ペコッ

実況『勝負あり!! 世界タイトルを制したのは渡辺選手! 金メダルおめでとう! 世界新記録だーーー!!!』

曜『みんなありがとう! 果南ちゃんのペットになってもボトルにはならないから!』アハハ

…………

……

曜「えへへ」

善子「……」

曜「ってボトルにされちゃうんだよね」

善子「知らないわよ」

曜「二人分も飲みきれるかなぁ」
0161名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:05:15.85ID:mc7jjdA4
善子「結局私は誰のものになったの」

曜「果南ちゃんのものだよ。私は間借りしてるだけ」

善子「間借りの使い方間違ってるわ」

曜「曲がりなりにも恋人だからね」フフッ

善子「それは……合ってる」カァアア

曜「うん」

善子「いや、合ってないわよ。私の恋人なら正々堂々と奪い返しなさい」

曜「善子ちゃん、果南ちゃんにもドキドキしてたよね」

善子「はい?」

曜「朝、保健室で。果南ちゃんはからかっただけなのに赤くなっちゃってさ」フフッ

善子「あ、あれは……」

曜「善子ちゃんって、ああいうカッコいい人がタイプなの?」

善子「えっ?」

曜「ほら、私のお母さんにもドキドキしてたじゃん? 娘の私が言うのもアレだけど、お母さんってカッコいい方だし」

善子「……」

曜「去年の私もカッコよく見えたかな?」

善子「見えた……わよ?」チラ

曜「そっか」エヘヘ

善子「今はそうでもないわね」

曜「そっか……」シュン

善子「冗談よ」

曜「ううん。私ですら果南ちゃんはカッコいいと思うもん」

善子「……」

曜「私が女の子だったら惚れてたかもなぁ」アハハ

善子「……そうね」

曜「いや、そこは『曜さんも女の子じゃん!』って突っ込んでよ」

善子「果南さんを男の子みたいに言った方じゃなくて?」

曜「あ、そっち……」

善子「ああ見えて可愛いところもあるのよ」

曜「それは私も知ってるよ。ご当地キティちゃんのキーホルダー集めてたりね」
0163名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:06:57.16ID:mc7jjdA4
善子「可愛いわね」フフッ

曜「同じのばっかり何個もあるんだよ」アハハ

善子「果南さんらしいかも」

曜「私、果南ちゃんのお店手伝おうかな」

善子「え?」

曜「果南ちゃんも私とならいいよって言ってくれるんじゃないかな」

善子「……」

曜「あ、善子ちゃんもやる? 私は大歓迎だよ」

善子「いいわよ、私は」

曜「そっか……。じゃあ遊びに来てね」

善子「……」

曜「さてと。いつになったら飲ませてくれるのかな」

善子「あ、すっかり忘れてたわ」

曜「せったくの出来立てが冷めちゃうよ」

善子「出来立てとか言わないで」

曜「飲んでいい? 飲んでいい??」

善子「いいわよ」スッ

曜「ありがと! 善子ちゃん大好き!」チュル

善子「……」

チュルッ

曜「あぁ……」

善子「早く飲みなさいよ」

曜「ゆっくり味わってるんだよ」

チュルッ

善子「そんなに美味しい?」

曜「善子ちゃんも飲む?」

善子「飲まない」

曜「そう……」

チュルッ

善子「本当に好きなのね」
0164名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:07:30.89ID:mc7jjdA4
曜「好きだよ」

チュルッ

善子「私よりも」

曜「その質問はいじわるかな」

チュルッ

善子「……」

曜「心配しなくても善子ちゃんのことは」

チュルッ

曜「大好きだからね」フフッ

善子「おしっこ飲みながら言われてもね……」ハァ

ゴクッ ゴクッ

曜「ぷっはぁー! 美味しいよ善子ちゃん!」

善子「ど、どうも……」

曜「キスしてもいい?」

善子「嫌よ!! 何で私のおしっこ飲んだばっかりの曜さんと!」

曜「そんなこと言わずにさぁ」グイ

善子「本当に嫌!」バシッ

曜「っ……」

善子「ご、ごめんなさい。そんなに強く叩いたかしら」

曜「善子ちゃん、自分がどういう状況か分かってないみたい」

善子「は?」

曜「ここは密室だよ。ドアには鍵も掛かってて逃げる場所なんてどこにもない……」

曜「こんな狭い空間に二人きりにして、こんないい匂い嗅がせてさぁ」

曜「おまけにおしっこまで飲ませちゃうんだよ……?」

善子「えっと……曜さん?」

曜「我慢できなくなっても仕方ないよね……」スッ

善子「ひゃっ……」ビクッ

曜「こんなの善子ちゃんの方から誘ってるのと同じだよね?」サワッ

善子「わ、私……」
0165名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:08:06.49ID:mc7jjdA4
曜「……」

善子「……」ドキドキ

曜「なーんてね! ごちそうさま」ガチャ

善子「え……?」

曜「もし本当に襲ったらどうするの?」アハハ

善子「……」

曜「今日はもう帰るよ。ママはまだ戻ってきてないみたいだけど……」

曜「あっ、メールしとこうかな。善子ちゃんなら戻ってきましたよって」スッ

善子「……」

曜「アドレス聞いてなかった。電話にしよう」スッ

プルル

善子ママ『もしもし、曜ちゃん?』

曜「はい。善子ちゃん帰ってきましたよ」

善子ママ『そう? 私も買い物したら帰るわね』

曜「お買い物してたんですか」

善子ママ『ええ。晩ごはんの材料を買いに』

曜「私も行きたかったな」

善子ママ『曜ちゃん、お腹の調子は大丈夫?』

曜「大丈夫です。すみません心配かけて」

善子ママ『ううん。あまり冷たいものを食べ過ぎちゃダメよ』

曜「何でそのことを」

善子ママ『冷凍庫に買った覚えのないアイスがたくさんあったから』

曜「勝手に食べてませんよね?」

善子ママ『食べないわよ。善子じゃないんだから』

曜「えっ」チラッ

善子「食べてないわよ。そもそもアイスがあったことすら知らないもの」

善子ママ『善子、そこにいるの? ちょっと代わって貰ってもいいかしら』

曜「私とお喋りするより娘の方がいいんですね。ふーん?」

善子ママ『いじわる言わないで』

曜「えへへ。冗談です」スッ
0166名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:08:35.51ID:mc7jjdA4
善子「……」

善子ママ『善子?』

善子「何よ」

善子ママ『今日、テストが返ってきたんでしょう。ちゃんと復習しておくのよ』

善子「……そんなことわざわざ言いに?」

善子ママ『そんなことって……。どうせ善子のことだもの、今回も悲惨な点数だったんでしょう。毎回同じことを繰り返してたら本当に留年しちゃうわよ』

善子「うっ……」

善子ママ『曜ちゃんにだって嫌われちゃうかも』フフッ

善子「……」

曜「ならないよ」

善子ママ『曜ちゃんもよ。あんまり善子を甘やかさないであげて』

曜「で、でも今回は善子ちゃん、点数よかったし……」

善子ママ『あら、何点くらい取れたの?』

善子「……」

曜「えっとね、確か……」ガサゴソ

善子「また後で」ピッ

ツーツー

曜「あれ? どうして電話切っちゃったの」

善子「別にいいでしょ。電話で話さなくても」

曜「せっかく今回はいい点数だったのに」

善子「……」

曜「不正なんかじゃないよ。善子ちゃんが努力した結果なんだから」

善子「そういうことじゃないわ」

曜「どういうこと?」

善子「……」

曜「もしかしてこの点数じゃ不満?」ペラッ

善子「……」

曜「総合評価は『A+』。『S』よりは下だけど十分いい成績だと思うよ」

曜「見てよ私なんて」ペラッ

善子「『D―』ね。まあ、そんなものだわ」
0168名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:10:06.48ID:mc7jjdA4
曜「いつもは『F』だからこれでもかなりいい方だね」

善子「私も似たようなものよ。たまに『E』が間違って入ってるくらいで」

曜「ねぇ知ってる? 『F』が何のFなのか」

善子「え? アルファベット順に『E』の下だからでしょ」

曜「不合格のFだよ」

善子「ん?」

曜「『ふ』のFだよ」

善子「FaultのFね」

曜「ふぉる……何だって?」

善子「フォルトよ。意味は短所、欠陥、誤り、過失、罪」

曜「私ってそんなにダメ人間かな」シュン

善子「違うわよ。単語としての意味を言っただけ」

曜「善子ちゃん、英語できたっけ? そんなにスラスラ単語の意味言えた?」

善子「曜さんのおかげでね」

曜「あぁ、私と勉強したんだっけ」

善子「英語の問題にも出てきてたわ……ほら」ペラッ

曜「えーなになに?」ジー

善子「英文和訳問題に使われてる」

曜「読める?」

善子「読めないの? これ一年生の範囲よ」

曜「『It's your fault.』意味は……」

曜「『善子ちゃんが悪いんだよ? 私におしっこなんて飲ませるから……♡』ドキドキ」

善子「……」

曜「正解?」

善子「曜さんの答案見せなさい」サッ

曜「突っ込んでよ」

善子「変なこと書いてないでしょうね……?」ジー

善子「『それはあなたの欠点ですね』か。まあ直訳すればそんなものよね」

曜「よく見て。端っこに小さく続きが書いてある」スッ

善子「ん……?」ジー
0169名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2018/03/10(土) 20:10:55.58ID:mc7jjdA4
曜「『でも私はそんなところも好きです』」

善子「何これ」

曜「いや、いくら何でも酷い例文だなって思ってさ」

善子「余計なこと書くと不正解にされるわよ」

曜「だって……」

善子「変なところ優しいんだから」フフッ

曜「でも善子ちゃんはそんなところも好きでしょ?」

善子「ええ」

曜「ありがと」エヘヘ

善子「……」

曜「ドヤ顔善子ちゃんを見ておいて悪いんだけど、FはたぶんFailureのFだね」

善子「何?」

曜「フェイラー。……で合ってるかな? 発音には自信がないからごめんね」

善子「失敗とか落第ね。もちろん知ってるわよ」

曜「またまたー。後から実は知ってましたって言うのはいちばん恥ずかしいパターンだよ」アハハ

善子「このテスト、評価と一緒にコメントがついてるじゃない?」

曜「え? うん。善子ちゃんはどんなこと書かれたの?」

善子「私が曜さんにF評価をつけるなら、意味はフォルトにするわ」

曜「私ってそんなに罪深いかな」

善子「ちゃんとコメントに書いてあげるわよ」

善子「『そんなところも好き』って」

曜「……」

善子「何よ」カァアア

曜「私だったら善子ちゃんには文句なしのS評価をつけちゃうよ」

善子「特別のS?」

曜「好きのS」

善子「頭悪そう」

曜「酷い」

善子「ちなみに曜さんはどんなこと書かれたのよ」

曜「『去年の復習はしっかりできていますね。この調子で頑張りましょう』だってさ」
0170名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:11:31.25ID:mc7jjdA4
善子「よくその点数でここまでポジティブなコメントが書けるものだわ」

曜「褒めて伸ばすタイプなんだね」

善子「私は……『素晴らしい! かなり高得点です。次は必ず満点を取れますよ』だって。無責任ね」

曜「かなりこ?」

善子「は?」

曜「何でもない。べた褒めだね」

善子「これでも精一杯頑張ったのにさらに頑張れって? 勘弁してよね」

曜「……」

善子「って、ごめんなさい。私がこんなこと言ったらダメか」

曜「今回は業者のテストだったけど、次はまたいつもの中間期末だよね」

善子「そうね。半分も内容が同じなんてことはないから」

曜「今回ほどは取れないかもね」アハハ

善子「ええ。今回はたまたまよ」

曜「私も次回は……」

善子「私のことなんて気にせず自分の範囲を勉強してね」

曜「一人で?」

善子「一緒にするだけならいいわよ」

曜「内容は別々なのか……」

善子「それは仕方ないわね。学年が違うんだもの」

曜「ま、まあ来年は私が留年してるかもしれないしね?」

善子「それを言ったら私だってしてるかも」

曜「……」

善子「曜さん、私のために自分の勉強捨てたでしょう」

曜「そんなことないよ。善子ちゃんと一緒だから頑張れただけで」

善子「次はそんなことしないでよね」

曜「善子ちゃんが知らないだけで、去年の私は優等生だったんだから」

善子「……」

曜「本当だよ?」

善子「本当に嘘が下手ね」ハァ

曜「赤点回避が目的だったんだよ。それは十分達成できたじゃん」
0171名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:12:12.47ID:mc7jjdA4
善子「曜さん、本当は頭がいいんでしょう」

曜「そうだよ。善子ちゃんを好きになるくらいには」

善子「……」

曜「もっと自信を持って」

善子「いや、曜さんの話をしてるんだけどね?」

曜「私は……」

善子「どうしていつも本気でやらないのかしら」ハァ

曜「本気だよ。好きなことに対しては」

善子「何に対してもよ」

曜「……」

善子「どうしてやる前から諦めちゃうのよ」

曜「無駄な努力はしたくないんだ」

善子「無駄なの?」

曜「赤点さえ取らなければそれでいいよ」

善子「……」

曜「今はもっとやりたいことがたくさんあるからね」

善子「例えば?」

曜「それはもちろん善子ちゃんでしょ? あとはスクールアイドルでしょ? それから……」

善子「もう少し自分のことも考えなさいよ」

曜「……」

善子「ごめんなさい。偉そうなことを言って」

曜「先生みたいなことを言うんだね」

善子「先生にも言われたの?」

曜「うん……」

善子「私以外から見てもそうってことは、たぶん本当にそうなのよ」

曜「みたいだね」アハハ

善子「自己犠牲も程々にしないと、いつか本当にダメになっちゃうわよ」

曜「前にも言ったでしょ。ただの自己満足なんだから放っといてよ」

善子「自己満足で体まで入れ替わる?」

曜「それは自分欲求を満たしたくて……つい」
0173名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:13:49.66ID:mc7jjdA4
善子「……」ジー

曜「飲んだよ!」

善子「飲んだの!?」

曜「……」チラ

善子「まあ、どうせそんなことだろうと思ったわ」ハァ

曜「美味しくなかったよ」

善子「聞いてないわよ」

曜「ううん。美味しかったけど、いつもよりは美味しくなかった」

善子「あっそ」

曜「善子ちゃんのおしっこなのに、いつものとろけちゃいそうな深みがなくて……」

善子「うぇ……」

曜「やっぱり私、善子ちゃんじゃなきゃダメなんだよ」

善子「その言葉、おしっこのくだり以外で聞きたかったわ」

曜「え? いつでも言ってあげるよ。善子ちゃんじゃなきゃダメ」

善子「もういいわよ」

曜「信じてないなー?」

善子「本当、曜さんって私のおしっこのためなら何でもしそうね」

曜「するよ」

善子「お願いだからやめてよね」

曜「私だって嫌がる善子ちゃんから無理やり飲ませてもらうつもりはないよ」

善子「そう。それを聞いて安心したわ」

曜「ただの一度だって私が善子ちゃんの嫌がることしたっけ?」

善子「ん??」

曜「しました」

善子「そうよね。反省してもらわないと困るわ」

曜「むしろ嫌なことばっかりしてるよね私」

善子「自覚があるならやめてくれない?」

曜「うん……」

善子「……」

曜「ごめんね?」
0174名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:14:38.24ID:mc7jjdA4
善子「本当に悪いと思ってる?」

曜「思ってるよ。善子ちゃんは私なんかにおしっこを飲ませたくないんだよね」

善子「曜さんだから飲ませたくないわけじゃないわよ」

曜「おやすみのキスもしたくないよね」

善子「それは別に」

曜「お風呂も一緒に入りたくないよね……」

善子「……」

曜「毎日のように家に押し掛けられるのも嫌かな」

善子「来月から曜さんのお母さん、帰りが早くなるんでしょう? お母さんのためにも家に居てあげなさいよ」

曜「お母さんもこっちへ帰ってくればいいんじゃないかな?」

善子「住まないで」

曜「今度さ、善子ちゃんとママで泊まりにおいでよ。きっとお母さんも喜ぶと思うな」

善子「そうね、考えておくわ」

曜「じゃあ今日はこれで。たまには私のいない寂しい夜を過ごすのもいいかもね」アハハ

善子「曜さんこそ一人じゃトイレ行けないんじゃない?」フフッ

曜「寂しかったらいつでも電話していいから」

善子「ええ」

曜「じゃ、ママによろしく」ノシ

善子「気をつけて帰るのよ」ノシ

ガチャ

バタン

善子(……)

善子(思ったより素直に帰っていったわね)

善子(お母さんが帰ってくるの、実は嬉しかったりして)フフッ

……

……

 夜

 曜の家

ガチャ

曜ママ「ただいまー」
0175名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:15:13.49ID:mc7jjdA4
「お帰り」

曜ママ「ごめんごめん。結局帰らせてもらえなくてさ」

曜「日付が変わる前だもん、早い方だよ」

曜ママ「こんな時間まで起きて待っててくれなくても」

曜「……」

曜ママ「ううん。ありがとね」

曜「別にお母さんの帰りを待ってたわけじゃないよ」

曜ママ「あはは、そっか。たまたま起きてただけか……」

曜「お風呂、追い焚きしてくるね。疲れたでしょ?」スタッ

曜ママ「うん……」

曜ママ(曜、眠そうな顔してた……)

曜ママ(……)

曜ママ(でも、来月からはもう少し早く帰れるし……そうしたら)

曜ママ(……)

曜ママ(曜も喜ぶかな)フフッ

「何一人で笑ってるの。気持ち悪いな」

曜ママ「ううん。さて、今日のご飯は何かなー?」

曜「食べてばっかりだね」フフッ

曜ママ「曜の料理は美味しいもの」

曜「太ったらごめんなさい」

曜ママ「善子ちゃんと付き合い始めてからますます上手になったよね?」

曜「そうかな? だといいんだけど……」

曜ママ「本当、いつかお店出したら? 私なら毎日でも通っちゃうけどなー」

曜「ありがと。考えておくね」

曜ママ「私も少しは頑張らないとかな」

曜「料理以外でお願いね」

曜ママ「どうして? 私の料理が美味しくなったら嬉しくない?」

曜「また引っ越しは嫌だよ」

曜ママ「……」

曜「ごめん」
0177名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:16:55.94ID:mc7jjdA4
曜ママ「じゃ、じゃあ料理は曜に任せるとして。私は何を頑張ろうかな」

曜「十分頑張ってくれてるよ」

曜ママ「家に帰ったら食べて飲んで寝るだけだよ? 料理も洗濯も掃除もみんな曜にやらせてさ」

曜「私にはこれくらいしかできないもん」

曜ママ「私にだって……仕事くらいしかできないよ」

曜「いいじゃん。私はお母さんと違って勉強できないからきっと仕事も」

曜ママ「曜はいいお嫁さんになれるよ」

曜「お嫁さんかぁ」

曜ママ「ま、そのうちいい人が必ず現れるから……それまでは一人で頑張るんだね」ポンポン

曜「お母さんはどうしてお父さんと結婚したの?」

曜ママ「え? 何でかな。忘れちゃった」アハハ

曜「真面目に答えてよ」

曜ママ「……」

曜「ほとんど家に帰ってこないし……私なんて顔もはっきり思い出せないくらいなのに」

曜ママ「そっか……曜はまだ」

曜「お母さん、今でもお父さんのこと好き?」

曜ママ「何言ってるの。そんなの当たり前じゃない」

曜「……」

曜ママ「きっとお父さんも、私や曜のこと大切に思ってくれてるはずよ」

曜「そうかな」

曜ママ「どうしてそんなこと急に?」

曜「お母さん、指輪してないなって」

曜ママ「……」

曜「仕事で邪魔なのかな」

曜ママ「そ、そうね。書類に引っかかったりして困るから外してるの」

曜「そっか。てっきりお父さんのこと嫌いになったのかと思ったよ」アハハ

曜ママ「今でも大好きよ」

曜「それなのにママと浮気してるんだね」

曜ママ「え?」

曜「善子ちゃんのお母さんと」
0178名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/10(土) 20:17:30.05ID:mc7jjdA4
曜ママ「……」

曜「お父さんが聞いたら悲しむんじゃないかな」

曜ママ「曜は私と善子ちゃんのお母さんが付き合うこと、反対?」

曜「ううん」

曜ママ「ならいいじゃない」

曜「私もね、善子ちゃんのことは世界でいちばん大好きだよ。でもみんなのことも好き」

曜「って言うとね、善子ちゃん嫌な顔するの」

曜「何でだろう? 善子ちゃんがいちばんなのは本当なのに」

曜ママ「……」

曜「お母さんは誰がいちばん好きなの?」

曜ママ「わ、私は……」

曜「お父さん? 善子ちゃんのママ?」

曜ママ「……」

曜「それとも……私?」

曜ママ「曜かな」フフッ

曜「真面目に答えて」

曜ママ「冗談のつもりはなかったんだけど。曜のたった一人の親として私は大切に……」

曜「え?」

曜ママ「だから、いちばん大切なのは曜。娘だもの、当然でしょ?」

曜「……」

曜ママ「どうしたの? 急にそんなこと聞くなんて。善子ちゃんと何かあった?」

曜「善子ちゃんはね、私に善子ちゃんだけを見てほしいって思ってるみたい」

曜ママ「そうよね。曜が善子ちゃんのお母さんに抱きつくと目を逸らすもの」

曜「たぶん本当に嫌なんだね」

曜ママ「他の人に抱きつくのやめてあげたら?」

曜「善子ちゃん以外を嫌いになれって?」

曜ママ「何でそうなるの。抱きつくのをやめればそれでいいじゃない」

曜「抱きつかなくてもだよ。私が誰かと笑うだけで、善子ちゃんは寂しそうな顔するし」

曜「私のこと好きでいてくれるのは嬉しいよ? でもさ」

曜「私は善子ちゃんだけじゃなくて、みんなのことも好きなんだよ」
0179名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2018/03/10(土) 20:18:25.01ID:mc7jjdA4
曜ママ「……」

曜「これってそんなにおかしいことかな?」

曜ママ「曜は優しい子に育ったわね」

曜「きっとお父さんに似たんだね」アハハ

曜ママ「何よ、私は優しくない?」

曜「もっと優しくしてくれてもいいよ?」

曜ママ「……曜って甘やかすとすぐ調子に乗るから」

曜「むぅ」

曜ママ「お腹空いちゃった。まだ食べさせてくれないの?」

曜「私に『あーん』してほしいの?」

曜ママ「違うわよ。してくれてもいいけど」

曜「そういうのは好きな人としてね」

曜ママ「曜ってどうしてこんないじわるな子に育っちゃったのかしら」ハァ

曜「お母さんに似たんだね」

曜ママ「うっ」

曜「今用意するから待ってて」スタッ

曜ママ「……」

……

……
0180名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2018/03/10(土) 20:19:46.58ID:mc7jjdA4
 翌朝

 曜ママの部屋

コンコンッ

「入るね……」

ガチャ

曜「うわ、またお母さんったら……」

曜ママ「ぐぅ……」

曜(まあ、休みの日くらい寝かせてあげようっと)

曜「風邪引くよ? ちゃんと布団かけてね」ファサッ

曜ママ「むにゃ……」

曜「私は出かけちゃうけど、ご飯机の上にあるから食べてね」

曜ママ「すや……」

曜「お疲れ様」ナデナデ

曜ママ「う……」

曜「私も大きくなったらお母さんみたいになれるかな」

曜ママ「……」スー

曜「お母さんみたいに……」

曜「……」

曜「行ってきます」

……


ダイエット編 終わり
0184名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2018/03/10(土) 21:13:12.62ID:mc7jjdA4
レズありがとうごさいます

ようよし→ママたちの呼称について混乱している人もいそうなのでまとめておきます

曜→曜ママ お母さん

曜→善子ママ ママ、善子ちゃんのママ、善子ちゃんのお母さん

善子→曜ママ 曜さんのお母さん、曜さんのママ

善子→善子ママ ママ、私のお母さん、私のママ

善子ちゃんは元々善子ママのことをあまり良く思っていなかったのでお母さん呼びでしたが、曜ちゃんのおかげで打ち解けてから(かなり序盤の方、たぶん最初のスレ)ママ呼びになっています

曜ちゃんは善子ちゃんが善子ママのことをママと呼ぶので自分もそう呼んでいます
(本当のママのように慕っているというのもあります)
自分のお母さんのことは恥ずかしいからかややこしくなるからかお母さん呼びです

善子ちゃんは「私の」「曜さんの」と区別して呼んでくれますが曜ちゃんは「ママ」「お母さん」で呼び分けているので分かりにくいかもしれません
0186名無しで叶える物語(笑)
垢版 |
2018/03/11(日) 03:16:14.59ID:dnLrCPXM
曜パパは死んどるんか...
引越しの意味深なシーンは今までなんかあったっけ?
これからの話の伏線かね
0187名無しで叶える物語(笑)
垢版 |
2018/03/11(日) 04:31:02.15ID:nMiKDp2K
>>184
予測変換レズってどういうことや
0189名無しで叶える物語(しうまい)
垢版 |
2018/03/11(日) 15:50:32.10ID:CqzF3wYs
いつもおつおつ
0192名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2018/03/12(月) 08:14:12.89ID:s8aeJngc
毎回保守してたけどまとめて投下してくれるし、
次回も立て直すなら特に必要なかったりするんだろか
0226名無しで叶える物語(たこやき)
垢版 |
2018/03/18(日) 23:45:55.19ID:nz3bE9D7
水泳教室編ですが明日の夜に投下します
待っていてくださった方申し訳ないです

もう少し早く書けるようになりたい……
0227名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2018/03/19(月) 06:09:28.26ID:9oGXUwLO
一度の量が多いから仕方ない
あ、ちなみにこれは文章量とおしっこの量を…
0230名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/19(月) 19:56:02.79ID:Kzc7BDnn
楽しみにしてますよっちゃんよーちゃん!
0232名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2018/03/19(月) 23:05:13.50ID:+ZJivdei
 朝

 善子の家

 リビング

善子「……」

善子ママ「さ、食べちゃって」コトッ

善子「いただきます」パチ

善子ママ「いただきます」

善子「……」パクッ

善子ママ「……」パクッ

善子「今日は曜さんと出かけてくるわ。夕飯までには戻ってくると思う」モグモグ

善子ママ「あら、デート? 楽しんでらっしゃい」フフッ

善子「ちょっと水泳を習いにね」

善子ママ「善子、水泳苦手じゃなかった?」

善子「だから習うのよ。曜さん泳ぐの得意だから」

善子ママ「確か中学生のときに全国大会で優勝したのよね」

善子「ええ。去年もよ」

善子ママ「……」

善子「せっかくあれだけ泳げるのにもったいないわ」パクッ

善子ママ「今は水泳やってないんだったかしら」

善子「そうよ……。もう大会に出るつもりはないんだって」

善子ママ「そう……」

善子「……」モグモグ

善子ママ「泳いでる曜ちゃん、カッコよかったわよね」フフッ

善子「まあね」

善子ママ「善子、あのときからずっと好きだったんでしょう?」

善子「そんなわけないでしょ。同じ沼津の選手として応援してただけよ」

善子ママ「あら」

善子「ママも一緒に行ったわよね?」

善子ママ「担任だもの」

善子「曜さんの担任だったなら言ってくれればよかったのに」
0233名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2018/03/19(月) 23:05:55.61ID:+ZJivdei
善子ママ「言わなかったかしら?」フフッ

善子「ママはそのときから曜さんのママと付き合ってたのよね……」

善子ママ「そう。誰にも知られたくなかったのよ」

善子「……」パクッ

善子ママ「教え子の親と付き合ってるなんてバレたら問題になるもの」

善子「ママはそういう人よね。知ってたわ」

善子ママ「何怒ってるの?」

善子「怒ってないわよ。大人だもの、世間体を気にするのは仕方ないわよ」

善子ママ「ましてや教師だから……」

善子「同時に教え子にも手を出してるなんてね」

善子ママ「それは誤解よ」

善子「手を出されてた? 同じことだわ」

善子ママ「それは……」

善子「親子で同じ人を好きになるなんて、よほどママって魅力があるのね。私にはさっぱりだけど」

善子ママ「曜ちゃんもどこまで本気だったのか分からないわよ」

善子「本気よ。曜さんは好きなものに一直線だもの」

善子ママ「……」

善子「私も曜さんと同じ学校がよかったわ」

善子ママ「そういえば、中学の時はそこまで仲良くなかったわよね」

善子「仲良くないどころか話したことすらないわよ。曜さんはきっと私が応援席にいたことすら気づいてなかっただろうし」

善子ママ「声くらいかけてみればよかったのに」

善子「……」

善子ママ「善子の性格じゃ無理か」

善子「うるさいわね」ムッ

善子ママ「善子の方から壁を作ってただけだと思うわよ? 曜ちゃんは他校の友達も多かったみたいだから」

善子「……」

善子ママ「ま、でもいいじゃない。今はこうして恋人にまでなれたんだもの」

善子「そうね」

善子ママ「善子は知らないかもしれないけど、中学の時の曜ちゃんはそれはもうモテモテだったんだから」

善子「噂では聞いていたわよ。曜さんの学校、女子校なのに何で……」
0234名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2018/03/19(月) 23:06:29.41ID:+ZJivdei
善子ママ「男子校だったら全員彼氏にしちゃいそうなくらい」

善子「曜さんならやりかねないわね」

善子ママ「でも曜ちゃんは同級生になんて全然興味ないみたいだったわ」

善子「そんなにママのことが好きだったの?」

善子ママ「もっと自分を高いところに連れて行ってくれる人を探してた……って感じかしら」

善子「曜さんらしいわ」フフッ

善子ママ「今もきっと探してるわよ」

善子「ないわね。今の曜さんは現状維持の平和主義だもの」

善子ママ「善子に自分にないものを感じたから好きになったんじゃない?」

善子「私にあって曜さんにないものなんてある?」

善子ママ「あるわよ。たぶん」

善子「……」

善子ママ「もう少し自信を持っていいのよ?」

善子「曜さんみたいなこと言わないで」ムスッ

善子ママ「ふふっ。曜ちゃんに何言われたのかしら」

善子「ごちそうさま。片付けは私がやるわ」スタッ

善子ママ「あ、曜ちゃんとの待ち合わせは大丈夫?」

善子「まだ時間あるから」

善子ママ「じゃあお願いしようかな」

善子「ん。ママも食べ終わったら持ってきてよね」カチャ

スタスタ

善子ママ(まさか善子がお手伝いするようになるなんてね)

善子ママ(曜ちゃんには感謝しなきゃ)フフッ

……

善子「はぁ……」ストンッ

善子ママ「お疲れ様。行く準備はできてるの?」

善子「そうね、着替えてくるわ」

善子ママ「水着は大丈夫?」

善子「大丈夫って?」

善子ママ「その、サイズとか」
0235名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:07:02.80ID:+ZJivdei
善子「そんなに太ってないわよ」

善子ママ「ううん……」

善子「心配しなくても昨日着られたから平気」

善子ママ「そう?」

善子「あ、もし曜さんが来たらここで待たせておいて」

善子ママ「何時頃来る約束なの?」

善子「現地に九時集合よ。でも曜さんのことだから必ず私の家まで迎えに来るわ」

善子ママ「なら最初から迎えに来て貰えばいいじゃない」

善子「じゃあ泊まるって言い出しそう」

善子ママ「泊まってもらえば?」

善子「嫌。プールに行くまでにクタクタになっちゃうから」

善子ママ「分かるわ」フフッ

善子「それじゃ、私は着替えてくるから……お願いね?」

善子ママ「止められなかったらごめんなさい」

善子「……」

善子ママ「努力はします」

善子「あと、もし曜さんが抱きついてきても頭撫でたりしないでよね」

善子ママ「どうして?」

善子「調子に乗るからよ」

善子ママ「うーん……」

善子「まあいいわ。さっさと着替えてきちゃえばいいだけのことだし」スタッ

スタスタ

 善子の部屋

ガチャ

善子「さてと……。曜さんが来る前に着替えを済ませないと」

バタン

善子「……」スルッ

善子「……」シュルッ

パサッ スッ

善子(どうせ水着に着替えるなら着ていけばいいか)サッ
0236名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:08:06.37ID:+ZJivdei
……

 リビング

ピンポーン

善子ママ(曜ちゃんかしら)スタッ

ピッ

善子ママ「はーい?」

『あ、善子ちゃん? 今日も可愛い声だね』

善子ママ「……」

『ママか。ごめんなさい』

善子ママ「善子が出るとは限らないわよね」

『ママの声も可愛いですよ?』

善子ママ「はぁ……」スタスタ

ガチャ

曜「おはようごさいます」ペコッ

善子ママ「おはよう。待ち合わせは現地って聞いたわよ」

曜「えっ、善子ちゃんもう行っちゃいましたか?」

善子ママ「ううん。中にいるけど……」

曜「よかった……。間違えてママに秘密のレッスンをお願いするところでした」アハハ

善子ママ「朝から元気ね……」ハァ

曜「ママは朝弱いんでしたっけ」

善子ママ「そういう意味じゃなくてね」

曜「善子ちゃんに似て寝相も悪いですし」

善子ママ「とりあえず上がって。玄関先で変なこと言われたらご近所さんに聞こえるわ」

曜「ずいぶん若い彼女ね、って噂になっちゃうかも」

善子ママ「ないわよ」

曜「ないかな」

善子ママ「いいから、上がって」スッ

曜「お邪魔します」スタッ

バタン
0237名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:08:39.78ID:+ZJivdei
……

善子ママ「善子は部屋にいるけど、ここで待たせておくように言われてるの。大人しくしててね」

曜「着替え中ですか? それなら……」スタッ

善子ママ「大人しくしててね?」グイ

曜「はい……」シュン

善子ママ「何か飲む?」

曜「お」善子ママ「お茶ね。分かったわ」

曜「エスパーかな?」

善子ママ「本当にお茶だったの? よかった」ホッ

曜「もしかしてママのおしっこが飲みたいとか言うと思いました?」

善子ママ「え、ええ」

曜「会っていきなりなんて、まるでおしっこ目当てに来たみたいじゃないですか」アハハ

善子ママ「……」ハァ

曜「ごめんなさい」

善子ママ「ううん。曜ちゃんと話していると頭が痛くなってくるわね……」

曜「ママに会えて嬉しいんですよ」

善子ママ「調子がいいんだから」

曜「えへへ」

善子ママ「お湯沸かしてくるから待ってて」スタッ

曜「ありがとうごさいます」

……

 善子の部屋

善子「ふぅ……こんな感じかしら」クルッ

善子「うん。なかなか決まってるわね」フフッ

善子「これなら曜さんも……」

善子「……」

善子「えへへ」

ガチャ

曜「善子ちゃん着替え終わった?」

善子「ええ。今終わったとこ……」
0239名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2018/03/19(月) 23:10:51.37ID:+ZJivdei
曜「あ……」

善子「って! 何で曜さんが私の部屋に!?」

曜「その服可愛いね」

善子「か、かわ……」カァアア

曜「すごく似合ってるよ」フフッ

善子「当たり前でしょう!? ってか来てたなら言いなさいよね……」ハァ

曜「ママにリビングで待つように言われたから」

善子「だったら最後まで待ちなさいよ」

曜「早く善子ちゃんに会いたかったの」

善子「……。まあ、着替えは終わったからもう行けるわよ」

曜「ママがお茶淹れてくれてるから、それ飲んだら行こうか」

善子「そうね。ってまだ七時半だけど……」

曜「プール何時からだっけ?」

善子「九時。だから現地に九時集合にしたんでしょう?」

曜「あぁ、そうだった」

善子「曜さんってやっぱり約束守らない人なのね」

曜「え? 私何かしたっけ」

善子「現地に九時集合って約束したわ」

曜「うん。だからこれから現地に集合しようよ」

善子「あのねぇ、どうして私がわざわざ現地に集合って言ったか分かってる?」

曜「善子ちゃんの家に八時半って言ったら、私が『じゃあ泊まる』って言うから?」

善子「それも正解」

曜「私の家に八時半って言ったら、待ち切れなかった私と入れ違いになっちゃうから?」

善子「それもね」

曜「じゃあ……私が善子ちゃんの着替えに乱入するからかなぁ」

善子「しないで」

曜「私はてっきり、現地集合って言っておいて本当は家まで迎えに来てくれることを期待してたのかと思ったよ」

善子「どれだけ面倒くさいのよ私」

曜「実際面倒くさいもん」

善子「何ですって!?」
0240名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:11:22.54ID:+ZJivdei
曜「面倒くさい善子ちゃんが好きなんだよ」

善子「……」ハァ

曜「わざわざリビングで私を足止めしておくようにママにお願いしたのもそうだよね?」

善子「は?」

曜「本当は着替え中に私が部屋のドアを開けるのを期待してたんでしょ」

善子「してないわよ」

曜「『きゃー! 曜さんのえっち!!』パーン」

善子「本当にしてない」

曜「心配しなくても善子ちゃんの着替えなんて覗かないよ」ヒリヒリ

善子「そうかしら?」

曜「覗かないよ。見るなら堂々と見るもん」

善子「ダメに決まってるでしょ」

曜「おしっこだって堂々とお願いするよ」

善子「朝からやめてよね」

曜「やっぱり迷惑だったかな……」

善子「ええ。現地でって言ったんだから現地に来てくれればよかったのよ」

曜「私は善子ちゃんが迷子になっちゃうんじゃないかって心配で来たのに……」

善子「むしろ曜さんの思考が迷子よね」

曜「……朝から言うねぇ」アハハ

善子「曜さんと話してたら疲れちゃうもの」

曜「そんなぁ」

善子「せっかく一日曜さんが水泳教えてくれるって言ったのに、私が疲れちゃったら意味ないでしょ?」

曜「……」

善子「約束どおり、プールが閉まるまで丸一日教えなさいよ」

曜「そんな約束してないよ」

善子「したわよ! まさか午前中だけさらっと付き合ってあとはランチに誘って終わりにするつもり?」

曜「ランチには誘われるんだね」

善子「当たり前よ。曜さんのおごりで」

曜「よく思い出して。私は善子ちゃんの好きなときに好きなだけ教えるって約束したよね」

善子「ええ。まあ、今日一日付き合ってくれればそれでいいわよ」
0242名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:12:54.30ID:+ZJivdei
曜「それじゃ私が納得いかない」

善子「何で」

曜「たった一日で泳げるようになったら苦労しないよ」

善子「私、全く泳げないわけじゃないわよ?」

曜「あ、そうなの?」

善子「カナヅチかと思った?」

曜「大工さん?」

善子「全く泳げない人のこと」

曜「あぁ、そっちの」

善子「水泳でカナヅチと言えばそれしかないわよ」

曜「善子ちゃんがカナヅチなら私は五寸釘だね」アハハ

善子「意味が分からないわ」

曜「引っ叩かれても嫌いにならないってこと」

善子「……」

曜「だから遠慮なく叩いてね? 五寸釘は思いっきり叩かないと全然入っていかないよ」

善子「私を暴力キャラみたいにしないで。前にも言ったわよね」

曜「あはは。他の子には暴力振るっちゃダメだよ?」

善子「心配しなくても他の人は叩かれるようなことしないわよ」

曜「善子ちゃんも私と同じだね」フフッ

善子「どこが」

曜「私はおしっこでしか好きって伝えられないけど、善子ちゃんは暴力でしか伝えられないじゃん」

善子「曜さんと同列で語られたらお終いだわ」

曜「暴力キャラな善子ちゃんも好きだから」

善子「私は嫌い! って言うか本当に暴力なんて振るってないから!」

曜「冗談が通じないのも善子ちゃんの可愛いところだね」

善子「……」

曜「可愛いよ?」

善子「もう勝手にして。やっぱり疲れたわ」ハァ

曜「私は善子ちゃんと話すの楽しいけどな」

善子「私もよ。そろそろ行きましょ」
0243名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:13:27.29ID:+ZJivdei
……

 リビング

善子ママ「あ……善子、私はできるだけ足止めしたわよ」

善子「知ってるわ。着替えは済んでたから十分よ」

曜「親子揃って私を何だと思ってるんですかね」

善子「変態」

善子ママ「まあ、そういう面もあるわね」

曜「酷いな。おしっこが好きなだけで変態なんかじゃないよ」

善子「それ、みんなの前でも言える?」

曜「……」

善子「いや、言わなくていいからね。一応言っておくわ」

曜「言わないよ。二人が知っていてくれればそれでいいもん」

善子ママ「二人って……私も?」

曜「ママは私が中学生の頃から知ってましたよね」

善子ママ「そうね。あの親にしてこの子あり、と思ったわ」

曜「やけに冷静だと思ったら、私のお母さんとそういう関係だったからなんですね」

善子「最低ね」

善子ママ「そ、それはいいじゃない! 誰を好きになろうと私の勝手でしょう?」

曜「私のことは受け入れてくれなかったくせに」

善子ママ「無茶言わないで。私は担任なのよ? 生徒に手を出すなんて言語道断だわ」

曜「生徒じゃなかったら受け入れてくれた?」

善子ママ「……」

善子「そこははっきりノーと言って」

曜「あんまりママをいじめちゃ可哀想だよ」

善子「いじめてるの曜さんよね」

曜「たっぷりいじめられたから、そのお返しかな」アハハ

善子「いじめたの?」

善子ママ「まさか。少し厳しく指導したのは確かだけれど」

曜「この前、ママに本気で怒られたとき……昔に戻ったみたいで嬉しかったなぁ」

善子「この前……っていつ?」
0244名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:14:02.07ID:+ZJivdei
善子ママ「ここで盛大に漏らしたときね。ほら、善子が曜ちゃんのお母さんとお風呂に入っている間に」

善子「あぁ、そのときの」

曜「私、中学の時はママに怒られてばっかりでよく漏らしたっけ」エヘヘ

善子ママ「後処理をするのはいつも私だものね」

曜「それはママのせいで漏らしたんだもん、当然だよ」

善子「それ、他の人は気づかなかったの?」

曜「みんなの前では怒らないでくれるから」

善子ママ「逆よ。曜ちゃんが私と二人のときにだけ悪いことをするの」

曜「ママに怒られたかったのかな?」アハハ

善子「やっぱり変態だわ」

曜「そんな。おしっことママが好きなだけだよ」

善子「私は?」

曜「もちろん好きだよ」

善子「そう」

善子ママ「……」

曜「さっ、お茶淹れてくれたんですよね? 冷めないうちに頂きます」スッ

善子「それじゃ私も」スッ

曜「はぁ……温かい」

善子ママ「あ、そうそう。まだ熱いから気をつけ」善子「あっつ!!!」

善子ママ「気をつけてね」

善子「遅いわよ!!」

曜「善子ちゃん猫舌だもんね」

善子「熱くしないでっていつも言ってるのに……」フーフー

善子ママ「そんなこと言われてもね。熱くないと出ないじゃない」

曜「お茶がいちばん美味しく出せるのは約七十度ですよ」

善子「それでも熱いわよ」

曜「私が淹れるときは、善子ちゃんのだけ軽く冷ましてから出してるからね」

善子「助かるわ」

曜「ちなみにママのは熱めに出してます」

善子ママ「わざわざ? よくそこまで気が回るわね」
0245名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:14:31.81ID:+ZJivdei
曜「好きな人のためなので」

善子「……」カァアア

善子ママ「私はそこまでできないもの。そこそこの熱さで出して、あとは各々好みに応じて冷まして飲めばいいと思うわ」

曜「ごめんね。今度ママが淹れるときは私が冷ましてあげるから」

善子「いいわよ。ママが曜さんを見習ってくれればいいだけのことだもの」

善子ママ「善子が冷ましてから飲めばいいだけのような」

善子「何か言った?」

善子ママ「普通は温度を確認してから口をつけない?」

善子「……」

曜「善子ちゃんって意外と後先考えないよね」

善子ママ「そうよ。善子はいつも行き当たりばったり」

善子「いいじゃない。明日生きてるかも分からないんだし、今を楽しまなきゃ」

曜「善子ちゃんにしては珍しくポジティブだね」

善子ママ「……ポジティブ?」

善子「いつもネガティブじゃ嫌になるでしょ」

曜「ならないよ」

善子「私が嫌になるのよ」

曜「そっか」

善子ママ「これも曜ちゃんのおかげかしら」

善子「そんなに変わって見える?」

曜「善子ちゃんは変わったよ。前は自分なんて不幸な人間だからって何をするにも後ろ向きだったのに」

善子「そこまで後ろ向きじゃないわよ」

曜「私は善子ちゃんのおかげで少し後ろも見られるようになったかな」

善子ママ「よかったじゃない。お互い変われて」

善子「……」

曜「安心してよ。私を手に入れたこと以上に不幸なことなんてないんだからさ」

善子「不幸なの?」

曜「じゃあ幸せ?」

善子「……幸せ」ボソッ

曜「えへへ。私も!」
0247名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:16:07.40ID:+ZJivdei
善子ママ「……」

曜「ママの前でも平然と惚気るようになったよね」

善子ママ「それは言えてるわ」

善子「曜さんが振ってくるからよ!」カァアア

曜「あとはみんなの前でもこのくらい素直になってくれればね」

善子「ならない」

曜「私の前では特別? それは嬉しいけど……」

善子「いいから早く行きましょ。このままお喋りしてたら一日終わっちゃいそうだもの」グイ

曜「それはそれで」

善子「ごちそうさま。行ってくるわね」

善子ママ「気をつけてね。まあ、曜ちゃんがいれば大丈夫か」

曜「はい!」

善子「逆に心配にはならないのね……」

……

……

 プール

 更衣室

曜「じゃ、早速着替えちゃおうか」

善子「ふふ」

曜「実は善子ちゃんの分も用意してきたんだよね」ガサゴソ

善子「……」ヌギヌギ

曜「あ、これこれ。私が中学のとき着てたやつだけど善子ちゃん合うかな?」サッ

善子「じゃーん! もう下に着てるわ」

曜「え」

善子「どう? 似合ってるかしら?」クルッ

曜「えっと……その」

善子「何よ、嬉しすぎて言葉にならない?」

曜「可愛いよ? だけど……」

善子「実はこれ、去年買ったはいいけど一度も着てなかったのよね。だから見せるのは曜さんが初めてよ」

曜「うん、だからね……」
0248名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:16:41.48ID:+ZJivdei
善子「さ、曜さんも早く着替えちゃいなさい」

曜「それで泳ぐの?」

善子「ん?」

曜「その水着で」

善子「ええそうよ。そのために着てきたんだから」

曜「そんな抵抗のありそうな水着で……」

善子「そりゃ少しは恥ずかしいし抵抗もあるわよ? でもせっかく買ったのに着ないなんてもったいないじゃない」

曜「……」

善子「それに曜さん……見たがってたし」カァアア

曜「プール、見た?」

善子「へ? 何よ」

曜「流れるプールで遊ぶわけじゃないんだよ。私たちが行くのは五十メートルプール」

善子「だから? そんなの分かってるわよ」

曜「他の人たち、みんな競泳水着だよ」

善子「え……」

曜「そんな水着の人誰もいないよ」

善子「そ、そう……」

曜「善子ちゃん、競泳水着なんて持ってないでしょ。私が中学の時着てたやつ貸してあげるから……」スッ

善子「……」

曜「ごめんね、中古で」

善子「うん……」スッ

曜「ゴーグルは持ってきた? なければ貸すよ」

善子「……」スッ

曜「空いてるロッカーは……」キョロキョロ

善子「……」

曜「うわ、意外と混んでるのかな? なかなか空いてないぞ」スタスタ

「せっかく……」

曜「あっ、ここ! 善子ちゃん!」

「……」タッ

……
0250名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:18:05.84ID:+ZJivdei
曜「うっ……久しぶりだと意外とキツい」ギュッ

善子「私はそうでもないわ」スルッ

曜「特に胸のあたりが……」ムニュ

善子「私は全然……」

曜「まあ、競泳水着は少しキツいくらいがちょうどいいからね。善子ちゃんも……うん、少し緩そうに見えるけど大丈夫でしょ」

善子「……」

曜「ほら、鏡見て。似合ってるよ」

鏡「……」

善子「これが私……」

曜「帽子も貸してあげる」サッ

善子「……」ギュッ

曜「ゴーグルつけて」サッ

善子「……」グッ

曜「おお、選手っぽい!」パチパチ

善子「これ、ずいぶん体のラインが出るのね……」

曜「水の抵抗を減らすために体にフィットするようにできてるからね」

善子「そうじゃなくて、その……股のラインとか」カァアア

曜「え? 善子ちゃんさっき超ビキニ着てたよね?」

善子「超って何よ」

曜「超可愛いの超」

善子「あ……うん。ありがと」

曜「あれじゃ水泳を教えるどころじゃなくなっちゃうね」アハハ

善子「……」

曜「どうかした?」

善子「それさっき聞きたかったわ」

曜「可愛いって言ったよ?」

善子「あんな愛想笑いしながらじゃなくて!」

曜「愛想笑いしてた?」

善子「もしくは苦笑い」

曜「それは、善子ちゃんが場違いな水着だったから」
0251名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:18:39.72ID:+ZJivdei
善子「うっ……悪かったわね」

曜「今日は水泳をしに来たんだからね。ああいうのは今度遊びで来たときにゆっくり見せてくれれば」

善子「また来るの?」

曜「来ないの?」

善子「来る……」

曜「うん。じゃあ準備運動して始めようか」

善子「……」エヘヘ

……

 プール

チャプ

曜「うん、さすが温水プール。冬でも温かいや」

善子「そう? よかったわ」

曜「あー気持ちいい」

善子「それじゃ私も……」スッ

ザブン

善子「冷たっ!!」

曜「え?」

善子「どこが温水よ! 全然冷たいじゃない!」

曜「もしかして善子ちゃん、温泉だと思った?」

善子「いや、温水なんだからもっと温かいお湯かと……」

曜「それじゃのぼせちゃうよ」

善子「確かに」

曜「少し泳いでいればちょうどよくなるから」

善子「そうかしら……」

曜「うん。あ、先にレーンのこと教えておくね」

善子「レーン?」

曜「向こう側の一・ニレーンは上級者用。タイムを測ったりするところだよ」

善子「ああ、確かに速そうな選手ばっかりね」

曜「三から六はそこそこの人たち用。そこそこ泳げる人たちが練習に使ってる」

善子「なるほど」
0252名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:19:18.97ID:+ZJivdei
曜「私たちがいる七・八レーンは、言ってみれば子ども用。特に八レーンは小さな子でも安心なように床が高くなってるんだ」

善子「あ、それで水深が浅いのね」

曜「善子ちゃんにはちょうどいいでしょ」アハハ

善子「むっ。七レーンにするわ」

曜「そう? じゃあ七レーンに」

善子「全く泳げないわけじゃないの。言ったでしょ……わっ!」ザブン

曜「七レーンは床がないから深いよ」

善子「ぷはっ……。足が滑ったわ」ゲホッ

曜「水の中だと境目が分かりにくいよね」

善子「レーン跨ぐのって禁止なんだっけ」

曜「あぁ、うん。よく知ってるね。でも七と八の間は仕切りがないから大丈夫」

善子「仕切り作ってほしいわね」

曜「それだと二人しか使えないじゃん」

善子「まあ、確かに」

曜「色んなレベルの子が同時に練習できるようになってるんだよ」

善子「その一角を私たちが使ってるってわけね……」

曜「周りの子はせいぜい小学生低学年の子ばかりだけど、恥ずかしがることはないよ」アハハ

善子「うっ……泳げるって言ってるのに」

曜「ウォーミングアップも兼ねて、まずはここで泳いでみて」

善子「分かったわ。でも子どもたちにぶつかったら困るわね」

曜「それなら大丈夫。私が隣で歩くから」

善子「私、そんなに遅くないわよ」

曜「そうなの? うーん、じゃあ私も泳ぐよ。子どもたちが前に来たら止まってくれれば」

善子「ちゃんと止めてよね。水の中じゃ聞こえないかも」

曜「抱きつけば気づくかな?」

善子「普通に止めて」

曜「はいはい。じゃあ準備ができたらいつでもどうぞ」

善子「行くわよ……」スッ

曜「……」

善子「……」
0253名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:20:02.99ID:+ZJivdei
曜「……」

善子「えっと、何で泳げばいい?」

曜「ん? 何でもいいよ。善子ちゃんの好きな泳ぎ方で」

善子「じゃ、じゃあクロールで」

曜「うん」

善子「……」チャプ

曜「……」

「……」タッ

曜「おっ、いい蹴り出し」

「……」スー

曜「伸びるね」

「……」

曜「ん?」

善子「ぷはぁっ!」ザバッ

曜「どうしたの」

善子「やっぱり先に曜さんがお手本やって」

曜「善子ちゃんがどのくらい泳げるのか見たいだけなんだけどな」

善子「いいから」

曜「んー、じゃあゆっくり目に泳ぐ」

善子「ええ」

曜「……」ザブン

タッ

善子「……」

スー

善子「けっこう深く泳ぐのね」

スー

善子「泳ぎなさいよ」

「……」バシャ バシャ

善子「……」

「……」バシャ バシャ
0254名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:20:33.97ID:+ZJivdei
善子「あっ、子ども」

ザバッ

曜「っと、こんな感じだよ」

子ども「おねーちゃんかっこいー」パチパチ

曜「えへへ。ごめんね、付き合ってる子がいるから」

善子「なっ!?」カァアア

子ども「??」

曜「何でもないよ」アハハ

善子「子どもに変なこと言うのやめなさいよ!」

曜「冗談なのに」

善子「あの子、困ってたじゃない」

曜「じゃあ今度は善子ちゃんの番ね。はい泳いで」

善子「え……うん。じゃあ行くわ」

曜「……」

善子「……」ゴクリ

曜「いつでもいいよ」

善子「……」ザブン

タッ

曜「蹴り出しはいいんだけどな」

「……」バシャバシャ

曜「ん?」

「よ、曜さ……」バシャバシャ

曜「何?」

「ど、どう? 泳げてる?」バシャバシャ

曜「溺れてるみたいに見える」

「えっ」ザバッ

曜「善子ちゃん、本当に泳げるの?」

善子「泳げてたわよね」

曜「これを泳げるとは言わないよ」

善子「沈んでなかったしちょっとずつ前に進んでたでしょ」
0255名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:21:08.33ID:+ZJivdei
曜「まあ、一応は」

善子「……こんな程度よ。だから教わりたかったの」

曜「泳げないなら泳げないって言えばいいのに」

善子「だから泳げて……」

曜「ちょっと待ってて。ビート板借りてくる」ザバッ

善子「そんなのなくても泳げるってば!」

善子「……」

……

 用具室

曜「えっと、ビート板は……」ガサゴソ

「曜?」

曜「ん? 何、善子ちゃん」クルッ

「こんなところで何してるの」

曜「あ……」

「水泳、まだやってたんだ」

曜「……」

「とっくにやめたかと思ったよ」

曜「もうやめたよ」

「競泳水着なんか着て」

曜「今日はね、水泳を教えに来てるの。選手じゃないよ」

「ふーん……」

曜「あっ、あったあった。ってこれは小さい子用か……」ガサゴソ

「あの子、曜の知り合い?」

曜「え?」

「そこから見てる子」スッ

曜「……」クルッ

善子「……」

曜「よ、善子ちゃんどうしたの」

善子「ビート板、見つかりそう?」

曜「今探してるところ……」ガサゴソ
0256名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:21:39.96ID:+ZJivdei
「……」ジー

善子「な、何よ」

曜「小さいのばっかりだな……」ガサゴソ

「それ、曜の水着だよね」

善子「そ、そうよ。何か?」

「妹?」

善子「違うわ」

「……」

曜「あった! うん、善子ちゃんにぴったりだね!」サッ

善子「こんなのなくても大丈夫なのに」

曜「何言ってるの。さっきのはただ溺れてるだけだよ」アハハ

善子「……」

曜「行こっか」グイ

善子「え? ええ」タッ

「……」

……

 プール

曜「ビート板は使ったことある?」

善子「あるわよ。こう持って……バタ足の練習するのよね」

曜「そう。善子ちゃん、全然足を使えてなかったから」

善子「久しぶりすぎて忘れたのよ」

曜「あはは。じゃあビート板使えば思い出せるかも」

善子「……」ザブン

曜「よっと」ザブン

善子「いくわよ」

曜「うん」

善子「……」タッ

善子「……」バシャバシャ

善子「……」バシャバシャ

曜「もう少し体を伸ばして」
0258名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:23:09.55ID:+ZJivdei
善子「こう?」バシャバシャ

曜「うん。いい感じ」

善子「こんなので……泳げるようになるのかしら」バシャバシャ

曜「なるよ」

善子「ならいいけど」バシャバシャ

曜「膝はなるべく曲げずに……もっと太ももを使って」

善子「こ、こう? すごく疲れるわ」バシャバシャ

曜「その方が断然早く泳げる」

善子「うん……」バシャバシャ

曜「……」

善子「……」バシャバシャ

曜「……」

善子「……」バシャバシャ

曜「……」

善子「疲れたわ。少し休憩」

曜「え? あ、うん。休憩にしよっか」

善子「大丈夫?」

曜「何が?」

善子「何かボーッとしてるわよ」

曜「善子ちゃんに見惚れてただけだよ」アハハ

善子「も、もう……」カァアア

……

 プールサイド

曜「水分補給はしっかりね。水の中だとつい忘れがちだけど……」

善子「意外と汗もかくし脱水になりやすいんだったわね」キュッ

曜「うん。私も何度か気持ち悪くなったことあるから」

善子「気をつけるわ」ゴクッ

曜「……」

善子「……」ゴクッゴクッ

曜「……」
0260名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:24:41.01ID:+ZJivdei
善子「ぷはぁ」

曜「……」

善子「曜さん?」

曜「何?」

善子「さっきの人に何か言われたの?」

曜「さっきの人って?」

善子「用具室で話していた人よ。曜さんの知り合い?」

曜「あはは。中学のときの同級生だよ。大丈夫、そういう関係じゃないから」

善子「そういう心配はしてないんだけど」

曜「……」

善子「……」

曜「もう少し休む?」

善子「いえ、練習しましょう。まだバタ足しかやってないわ」

……

 プール

善子「……」バシャバシャ

曜「いいよ。さっきよりいい感じ」

善子「……」バシャバシャ

曜「だいぶスムーズになってきたね」

善子「そうかしら……」バシャバシャ

曜「これなら今日だけでも何とか泳げるようになるかも」

善子「頑張る」バシャバシャ

……

 プールサイド

善子「ふぅ……さすがに疲れたわね」

曜「バタ足ばっかりで飽きたかな? 次は違う練習にしようか」

善子「だいぶコツが掴めてきた感じするわ」

曜「ビート板使って正解だったでしょ」

善子「ええ。曜さんが手を掴んでくれてもよかったんだけど」

曜「ダメ。それは次のステップだからね」
0261名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:25:12.92ID:+ZJivdei
善子「同じじゃないの?」

曜「ビート板の方が安定してて簡単なんだよ」

善子「そう……」

曜「そんなに私の手がよかったの? 困ったなぁ」アハハ

善子「別に。ビート板でいいわ」

曜「じゃあ次は、ビート板を足に挟んで練習しようか」

善子「足に挟むの?」

曜「バタ足はなし。上半身と腰だけで泳ぐ練習だよ」

善子「ふぅん」

曜「これができるようになれば、ビート板なしでも泳げるようになるはずだから」

善子「そういうものかしら」

曜「あー、でももうお昼だね。お腹空いてるならご飯にしてもいいよ」

善子「もうちょっとやってから」

曜「分かった。ちょうど子どもたちもお昼でいないみたいだし、今なら伸び伸び使えるね」

善子「ええ。五十メートル泳ぎきりたいわね」

曜「善子ちゃんならできるよ! ……たぶん」

善子「どうして半信半疑なの! 曜さんがついててできないなんてあるわけないじゃない」

曜「うん。その意気だよ」

……

 プール

善子「ビート板を足に……」ピョンッ

善子「このっ! 大人しく挟まりなさいよ!」ピョンッ

善子「くっ……」

曜「うまく挟めない? 足を載せるのでもいいよ」

善子「曜さん載せてくれる? 自分だとうまく行かなくて……」

曜「うん。じゃあそこに捕まって」

善子「ええ」

曜「それっ」ヒョイ

善子「おっ……」フラッ

曜「そのまま手をゆっくり離して。沈まないから」
0262名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:25:43.75ID:+ZJivdei
善子「本当? 絶対溺れるわよ」

曜「じっとしてれば自然と浮くよ」

善子「……」

曜「怖い?」

善子「これじゃ足もつけないし……」

曜「じゃあ私の手を掴んでいいから」

善子「そ、それなら……」

曜「はい」スッ

善子「ん」ギュッ

曜「行くよ……」

善子「わ……変な感覚」プカ

曜「いい?」

善子「ええ」

曜「離すね」パッ

善子「きゃっ!?」バシャッ

ツルッ ピョンッ

曜「あいてっ!」

「〜〜!」バシャバシャ

曜「ビート板が顔面に……」ヒリヒリ

「ちょっ……早く助け」バシャバシャ

曜「あ、ごめんごめん」グイ

善子「ぷはっ! げほっ……」

曜「うまくいかないね」

善子「曜さん、ビート板と足を押さえててくれないかしら」

曜「あっ、そうか」

善子「顔、大丈夫?」

曜「意外と痛い……」ヒリヒリ

善子「じゃあもう一度」

曜「うん」

……
0263名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:26:16.51ID:+ZJivdei
 プールサイド

善子「はぁぁ……もう疲れたわ。これ以上泳げない……」フゥ

曜「お疲れ様。もうそろそろビート板なしでも泳げそうかな?」

善子「どうかしら? まだちょっと不安ね」

曜「どうする? 今日はこのくらいにしてお昼食べて帰ろうか」

善子「何でよ。せっかくここまでやったんだもの、午後も教えなさいよ」

曜「無理してない?」

善子「してない」

曜「本当に?」

善子「ほ、本当によ」

曜「まあ、とりあえずお昼食べようか」

善子「ええ。曜さん、どうしても食べたくて仕方ないみたいだし」

曜「ここの食堂、意外と美味しいんだよー?」

善子「知ってるわよ。私も食べたことあるから」

曜「じゃあ行こう」スタッ

善子「え? そのまま??」

曜「もちろん体は拭くよ」

善子「水着のまま食べるの?」

曜「上着は羽織るよ」アハハ

善子「……」

曜「お昼食べて帰るならともかく、午後もやる人はいちいち着替えてないよ」

善子「そうなの?」

曜「うん。上着すら羽織らない人もいるくらいだし」

善子「それは恥ずかしいような……」

曜「プールの中だと恥ずかしくないのに不思議だよねぇ」アハハ

善子「水着じゃない人もいるからじゃない?」

曜「そっか。作ってるおばちゃんたちは水着じゃないもんね」

善子「水着だったら逆に嫌ね」

曜「考えたこともなかったよ。さすが善子ちゃん」パチパチ

善子「いや、別に水着で作ってほしいなんて言ってないんだけど」
0264名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:26:47.41ID:+ZJivdei
曜「お願いしたら着てくれるかなぁ」

善子「しなくていいから……」

……

 食堂

ザワザワ

曜「わっ、意外と人がいるね」

善子「流れるプールの方に来てるお客さんもいるものね」

曜「そっか。休みの日だから」

善子「お昼はもう少し後にする?」

曜「うん……」

善子「そんなに食べたいの?」

曜「善子ちゃん、少し休んだ方がいいよ」

善子「もしかして私の心配してくれてるの? ありがとう」

曜「まあね」エヘヘ

善子「そういえば曜さん、お昼持ってこなかったのね。珍しいじゃない」

曜「あ」

善子「いいわよ、私も全然考えてなかったし」

曜「お弁当持ってきたんだった」

善子「え? 忘れてたの?」

曜「ロッカーにあるよ」

善子「更衣室、暖房入ってたわよね。食べられるかしら」

曜「ちゃんと保冷剤入れてクーラーバッグに入れてきたよ」

善子「それなら大丈夫ね」

曜「一旦更衣室戻ろうか」

善子「でも、ここ以外に食べるところある?」

曜「うーん、誰もいなければ更衣室でも」

善子「更衣室で!? ちょっと非常識じゃないかしら……」

曜「プールサイドよりはまし」

善子「それはそうだけど……」

……
0265名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:27:24.24ID:+ZJivdei
 更衣室

ガチャ

曜「うん、冷えてる冷えてる」

善子「本当? 傷んでたら許さないわよ」

曜「触ってみなよ。保冷剤まだ冷たいでしょ」ピトッ

善子「冷たいっ!!」バッ

曜「あはは。冷たくて気持ちいいよね」

善子「これじゃお弁当まで冷たくなってそうね……」

曜「あ、そっか。レンジは食堂に行かないとなかったような……」

善子「仕方ないわよ。少し冷たいけど傷んでるよりはましね」

曜「ごめんね? 冬なんだからこんなに保冷剤いらなかったのに……」

善子「何言ってるの。動いた後だからちょうどいいんじゃない?」

曜「じゃあその辺で座って食べよう」

善子「あ……そういえばシャワーあったわよね」

曜「うん。奥の方にあるよ」

善子「ちょっと浴びてきてもいいかしら?」

曜「またご飯食べたらプール入るよね?」

善子「そうだけど……汗で水着がベタベタするし、髪とか塩素の匂いで気持ち悪いし」

曜「どれどれ……」クンクン

善子「ひゃあ!? 嗅がなくていいから!」

曜「私はこの匂い好きだけどな」

善子「塩素の匂いが?」

曜「プール入りたての善子ちゃんの匂いが」

善子「あっそ……」カァアア

曜「シャワー浴びるなら私も行くよ」

善子「そう。変なことしないでよね」

……

 シャワー

曜「もう少し詰めて」

善子「ええ」
0266名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:28:00.29ID:+ZJivdei
曜「ありがと」

善子「って、他にも空いてるのにどうして一緒に入るわけ」

曜「節水だよ」

善子「は?」

曜「二人で浴びれば水が節約できるでしょ? これでも地球環境に配慮してるんだ」

善子「また適当なことを」

曜「善子ちゃんだって私の水着姿見たいんじゃないの?」

善子「曜さんのはいつも見てるし……」

曜「あぁ、ポスターの撮影とかで着てたもんね」

善子「そうよ。何だってあんなポスター……」

曜「ちょっとやりすぎかなとは思ったよ。いかにもグラビアって感じで恥ずかしかったり……」

善子「校内のポスター、いつの間にか全部なくなってたわね」

曜「私の隠れファンが持ってっちゃったのかなぁ」

善子「えぇ……」

曜「もしかして善子ちゃんが?」

善子「ないわよ」

曜「善子ちゃんには本物があるもんね」

善子「ええ、まあ」

曜「好きなだけ見ていいよ」クルッ

善子「……」ゴクリ

曜「触ってもいいよ?」

善子「さわ……るわけないじゃない。シャワー浴びなきゃ」クイ

ザー

曜「脱ぐ?」

善子「脱がない。軽く流すだけだもの」

曜「そう。脱ぐとき言ってね。手伝ってあげる」

善子「一人で脱げるわよ」

曜「ほう……」

善子「えっ、脱げないの?」

曜「私はもちろん脱げるよ。でも競泳水着初体験の善子ちゃんが一人で脱げるかなぁ」
0268名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:29:25.49ID:+ZJivdei
善子「う……確かに汗で張り付いて脱ぎにくそう」

曜「まずはね、シャワーをこうやって……」クイ

善子「ちょっと! どこに突っ込んでるのよ!」

曜「水着と肌の間を流すんだよ。決して変なことをしているわけでは」

善子「あ、そうなのね……」ホッ

曜「これでだいぶ脱ぎやすくなるんだ」

善子「そうなの? ちょっとやってみようかしら……」クイ

曜「あー、ダメダメ。そんなに恥ずかしがってちゃ」

善子「そんなこと言われても」

曜「もっとこう! 胸元を開けてシャワーを突っ込む!」グイ

善子「ひゃああ!!?」ビクッ

曜「水着が肌から浮くのが分かる?」

善子「き、気持ち悪い!」

曜「何で?」

善子「全身を撫でられてるみたいな……ううっ」ブルッ

曜「あー、分かる」クイ

善子「だからやめなさいってば!」バッ

曜「あとそれでも脱ぎにくいときはね……」クイ

善子「ちょっ、まさか」

曜「そう。下からだよ」

善子「や、やめなさいよ……」カァアア

曜「何を恥ずかしがってるの。お風呂で散々私の裸見てるじゃん」

善子「水着の隙間から見るのとは違うじゃない!」

曜「善子ちゃんってこういうの好き?」クイ

善子「好きとか嫌いとか、そういうんじゃなくて……」カァアア

曜「善子ちゃんが見たければ家でも着てあげるけどな」

善子「……」カァアア

曜「恥ずかしがり過ぎだよ」

善子「もういいから! 髪洗ってお昼食べましょ」

曜「うん」
0269名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:29:58.44ID:+ZJivdei
善子「……」チラ

曜「……」

善子「あ、あの……いつまでシャワー当ててるの?」

曜「え? 別に」

善子「一応聞いておくけど、まさかシャワーで」

曜「シャワーで?」

善子「その、ええと」

曜「??」

善子「何でもないわ」カァアア

曜「ちょっとおしっこしたくなっちゃってさ」

善子「あぁ、それで刺激を」

曜「刺激って」アハハ

善子「そういうのはトイレでしなさいよ」

曜「私、いつもシャワー浴びながらしちゃうけどな」

善子「いや、家ではそれでいいけどここはシャワー室だし」

曜「流れるから大丈夫」

善子「……」

曜「こうやって少し水着をずらせばね」クイ

善子「え……」

曜「水着を汚さずにできるんだよ」

善子「そ、そうなの……」ドキドキ

曜「水着の中でするのもすごく気持ちいいんだけどね?」

善子「気持ち悪いわね」

曜「善子ちゃんも一度やってみなよ。競泳水着じゃないと味わえない感覚だよ」

善子「嫌よ。私は普通にトイレでするわ」

曜「じゃあ失礼して……」

ショワァ

善子「本当に気持ちよさそうな顔するのね」

曜「うん……。競泳水着で善子ちゃんとおしっこする日がくるなんて夢みたいだよ」

ジョボボ
0270名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:30:28.11ID:+ZJivdei
善子「そんな夢嫌よ」

曜「善子ちゃんのは私が飲むからね」

善子「飲ませないわよ」

曜「何で」

ジョボボ

善子「もう水泳教室代は飲ませたわ」

曜「じゃあオプションもつけるよ」

善子「何よそれ」

曜「水着の私を好きにできる権利」

ジョボボ

善子「そ、そんなのずるいわ」

曜「善子ちゃん、泳ぐ練習しながらずっと私のこと見てたよね」

善子「目の前にいるんだもの、仕方ないじゃない」

曜「そんなに私の水着が見たかったのかな」

ジョボボ

善子「曜さんこそ、私の水着姿を見たくて仕方なかったんじゃないの」

曜「私は別に」

善子「……」

曜「見たいか見たくないかで言えば見たいよ。思ったよりバッチリ似合ってて私も嬉しいし」

ジョボボ

善子「そんなに似合ってるかしら?」

曜「似合ってるよ」

チョロロ

善子「さっきの人、私を曜さんの妹と間違えてたわね」

曜「私の水着だったからじゃない?」

善子「学校のと違って名前が大きく書いてあるわけでもないのに、どうして分かったのかしら?」

曜「あれ? そういえば何でだろう」

善子「私と曜さんが本当の姉妹に見えたとか?」

曜「全然似てないよね」

善子「ええ」
0273名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:33:31.97ID:+ZJivdei
曜「後で聞いてみようかな」

善子「そうね。私も気になるわ」

ザー

バシャバシャ

曜「ふぅ……。気持ちよかった」

善子「きちんとシャワーで流してよね。匂いでバレないように」

曜「うん」

ザー

曜「善子ちゃんは?」

善子「え?」

曜「おしっこ、しないの?」

善子「しないわよ」

曜「トイレ、すごく混んでたよね」

善子「混んでたわね」

曜「ここでしちゃえば楽だよ?」

善子「しないってば」

曜「トイレに並んでて漏らしちゃうのとどっちがいいかな」

善子「どうして間に合わない前提なのよ」

曜「慣れない競泳水着をスムーズに脱げると思う?」

善子「それは……」

曜「私なんてタイツでさえ慣れてなくて間に合わなかったのに」

善子「……」

曜「しかも混んでるトイレだよ。私が手伝ってあげてもいいけどみんなに見られちゃうよね」

善子「わ、分かったわよ! ここでするわ」

曜「うん!」

善子「言っとくけど飲むのは禁止! 匂いだけで我慢しなさい」

曜「我慢できるかな……」

善子「本当は匂いだって嫌なんだからね」

曜「嫌なの?」

善子「そもそも個室って一人用でしょう? 二人で入ること自体間違いなのよ」
0274名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:34:07.29ID:+ZJivdei
曜「いや……善子ちゃんさっきすごい見てたよね」

善子「目の前でされたら見るしかないじゃないの」

曜「さっ、早く」

善子「……」

曜「わくわく」

善子「ねぇ」

曜「何?」

善子「本当に好きにしていいの?」

曜「へっ?」

善子「何でもないわ。そこで大人しく見てなさい」

曜「見るのはいいんだね」

善子「あっ……やっぱりダメ! 匂いだけって約束!」

曜「はいはい」

善子「もう……」スッ

曜「……」

善子「……」

ショワァ

善子「あっ」

曜「まさか水着をずらさずにやるとは」

善子「待って、ずらすの忘れたわ!」

ショワァ

曜「止めたら?」

善子「止められるわけ……」

曜「止めてあげようか」

善子「え……」

曜「ふー♡」

善子「ひゃああ♡♡」ビクッ

ジョボボ

曜「えへ……」

善子「よ、曜さん……」ドキドキ
0275名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:34:39.67ID:+ZJivdei
曜「善子ちゃん、耳弱いよね」

ジョボボ

善子「止めてくれるんじゃなかったの」

曜「口をつけてもよければ」

善子「ダメに決まってるでしょう」

曜「……」

善子「水着をずらすのよね。こう……」

善子「ん? うまくいかないわ」

曜「貸して。一旦少し引っ張ってからじゃないと」クイ

善子「あっ……♡」ビクッ

ジョボボ

曜「今の声、録音したかったな」

善子「気持ち悪いのよ……」

曜「あーあ、善子ちゃんのおしっこが手にかかっちゃったよ」

善子「ご、ごめんなさい……」

曜「これは舐めてもいいよね? 私の手だもんね?」

善子「好きにして」

曜「えへへ。それじゃ遠慮なく」ペロッ

善子「……」

曜「れろっ……ちゅるっ」

曜「はむっ……」

善子「……」カァアア

曜「どうしたの?」

善子「いちいち舐め方がいやらしいのよ」

曜「自分の手くらい好きに舐めさせてくれても」

善子「……」

曜「善子ちゃんの手も舐めていい?」

善子「わ、私の手を?」

曜「おしっこ、たっぷりついてるから」

善子「……」
0276名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:35:13.25ID:+ZJivdei
ザー

曜「あぁ……もったいない」

善子「何がよ。私の手まで舐めていいなんて言ってないわ」

曜「これじゃ水着の私はあげられないな」

善子「くれなくていいから」

曜「……」

善子「あぁ……水着の中が気持ち悪い。最初からトイレですればよかったわ」

曜「一旦脱ごうか。洗ったほうがいいよ」

善子「……」

曜「洗わないの?」

善子「洗うけど曜さんの前では嫌」

曜「善子ちゃんの裸なんて見慣れてるよ」

善子「むっ」

曜「それより、誰かが来る前に済ませちゃった方がいい気がするけどな」

善子「一人でやるから曜さんは出て行って」

曜「一人で脱げるの?」

善子「やってみるわ」

曜「うん……」

……

「善子ちゃんどう?」

善子「うぐぐ……」

「さっき教えたでしょ。シャワーを突っ込んで水着を浮かすんだよ」

善子「あ、そうだったわね」

ザー

善子「んっ……」ビクッ

「あとは肩から脱ぐだけだよ」

善子「分かってる……」

「脱げそう?」

善子「か、肩が攣りそう……」

「体硬すぎだよ」アハハ
0277名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:35:45.97ID:+ZJivdei
善子「さっき肩を使いすぎたせいよ!」

「私のせい?」

善子「そうよ」

「手伝ってって言えばいいのに……」ハァ

善子「あーもう! 全然脱げないじゃない!」

曜「貸して」クイ

善子「あっ……」

曜「ほら、ちゃんとシャワーで浮かせてないから」

ザー

善子「っ……」ビクッ

曜「肩の力抜いて」

善子「……」

曜「脱がすよ」スッ

善子「ええ」

スルッ

曜「……」

善子「あんまり見ないでよ……」カァアア

曜「見てない」

善子「……」

曜「ほら、足上げて」

善子「……」スッ

曜「腰まで脱げれば自分でも脱げそうだけどね……」クイ

善子「そ、そうよね。もういいわ」

曜「……」

善子「よいしょっと……」スルッ

曜「はぁ……舐めたい」

善子「ダメ!!」

曜「あっ、変な意味じゃないよ! 純粋におしっこの味を……」

ザー

バシャバシャ
0278名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:36:18.13ID:+ZJivdei
善子「はぁ……」

曜「水着、交換しようか」

善子「は?」

曜「おしっこまみれの水着なんて嫌でしょ。私のと交換しよう」

善子「嫌よ! どう見てもサイズ合わないし!」

曜「……」

善子「目の前に裸の私がいるのよ? それなのに水着の方が欲しいって……」ボソボソ

曜「ん?」

善子「何でもないわよ。手伝ってくれてありがとう」

曜「着るのは自分でできるかな?」

善子「ええ」

……

 更衣室

善子「さっぱりしたわ」フキフキ

曜「さっぱりしてたね」

善子「何が?」

曜「善子ちゃんが」

善子「……」

曜「おしっこの味まではごめん、シャワーでほとんど流れちゃってたから」

善子「てっきり味の感想かと思ったわ」

曜「塩素と混ざって甘い匂いがしたんだろうなぁ」

善子「……」

曜「そんなに気持ち悪そうな顔しないでよ」

善子「本当に気持ち悪いもの」

曜「お昼食べようか」

善子「ええ。冷たいままだけど」

曜「今日のお弁当の中身は何かなー」パカッ

善子「美味しそう……」

曜「冷めてもいいように工夫はしたつもりだよ」

善子「思ったよりボリューム少なめなのね」
0279名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:36:51.79ID:+ZJivdei
曜「ダイエット中だからね」

善子「まだ体重戻ってなかったの?」

曜「私はまだ」

善子「曜さんって意外と太りやすいタイプ?」

曜「油断するとね、すぐお腹がぷにっと」プニ

善子「体脂肪率は低そうなのに」

曜「一応これでも一桁キープしてるよ」

善子「え!? お腹のこれは?」

曜「これも含めて」プニ

善子「そんなに痩せてて大丈夫? 骨粗鬆症になっても知らないわよ」

曜「筋肉があるせいで体重は多めなんだけどね」アハハ

善子「はぁ……。その体型の維持って大変なのね」

曜「まあね。善子ちゃんも筋肉がつけばもっとカッコよくなれるよ」

善子「私は別に」

曜「やっぱり果南ちゃんに鍛えてもらうか……」

善子「今のままでいいわよ」

曜「ううん、私が」

善子「私じゃないのね。よかった」ホッ

曜「もしよかったら一緒にどう?」

善子「私と一緒じゃ曜さんのトレーニングにならないわよ」

曜「そんなことないよ」

善子「曜さんに合わせたら私にはキツすぎるし」

曜「うーん……」

善子「いいから、早く食べましょ」

曜「そうだね。はい、あーん」つ

善子「あ、あーん……」パクッ

「何かいい匂いがする……」クンクン

善子「誰か来たわ」

曜「大丈夫。気にしないで」つ

善子「あむっ……怒られたりしないわよね?」モグモグ
0280名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:37:25.09ID:+ZJivdei
曜「何で怒るの」

善子「こんなところでお弁当食べるなって」

曜「図書室じゃないんだから」

善子「……」モグモグ

「また曜か」ハァ

曜「その声」

「何、今度は妹にお弁当食べさせてあげてるの? 大変だねぇ」クスクス

善子「妹じゃないわよ」

曜「そうだよ! 善子ちゃんは私の……」

「更衣室でお弁当食べるなんて」

曜「ここ、飲食禁止なんて書いてない」

「食堂か選手の控え室で食べればいいのに」

曜「食堂は混んでたし……控え室は」

「あぁ、ごめんごめん。もう選手じゃないんだった」アハハ

善子「むっ」

曜「そうだよ。私はもう選手じゃない」

「控え室、空いてるよ?」

曜「いいよ、ここで食べるから」

「冷たそうなお弁当だね。向こうならレンジもあるのに……」

曜「本当?」ガタッ

善子「えっ」

「どうしてもって言うなら入れてあげないこともないけど?」

曜「……」

善子「さっきから何なのよ。どうして曜さんにちょっかい出すわけ?」

「何この子、曜の親戚?」

曜「善子ちゃんは私の……こ、恋人だよ」カァアア

善子「……」カァアア

「ぷっ……。面白い冗談だね」クスクス

曜「本当だもん!」

「それじゃ今すぐ警察を呼ばなくちゃ」
0281名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:37:58.90ID:+ZJivdei
曜「善子ちゃんは女の子だよ! 見ればわかるでしょ!?」

「……」

曜「ほら、胸もあるし……」ムニュ

善子「きゃあ!!? 何すんのよバカ!」ブンッ

バチーン!

「うわ……」

曜「ほ、ほらね……」ポタポタ

善子「あっ、曜さん鼻血!」

曜「プールで鼻の粘膜がふやけてるから……叩くのはやめてほしいな」

善子「ごめんなさい! えっと、ティッシュ……」

「はぁ……。来なよ、控え室にティッシュあるから」

曜「うん……」スタッ

善子「で、でもいきなり胸触ってくる曜さんが悪いのよ?」

曜「そうだけどさぁ」

……

 控え室

「はい、ティッシュ」サッ

曜「ありがと」

善子「ごめんなさい。迷惑をかけてしまって」

「あんた、敬語使えるんだ?」

善子「あっ……それは」チラ

「いいよ。私のこと、いじわるな人だと思ったんでしょ」

善子「う……」

曜「紹介するね。この子は私の元同級生。水泳の実力はそこそこあるんだ」

「この前の大会でも優勝したんだから」エヘン

善子「すごい……」

曜「私に一度でも勝ったことあったっけ?」

「ないけど」

曜「つまりその程度なんだよ」

善子「そうなの? 驚いて損したわ」
0282名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:38:34.03ID:+ZJivdei
「むかっ……。これでも大学に推薦決まってるんだからね!?」

曜「え? すごいじゃん」

「向こうからスカウトされたの。曜も水泳やめてなければ声をかけてもらえたかもしれないのに」

善子「曜さんだって声かけられてるわよね?」

「え?」

曜「あ……ううん。何でもないの」

「曜は浦女に行ったくらいだもん、頭だけはいいもんね」

曜「そ、そうだよ。私ならセンター九割余裕だし」

善子「……」ジー

曜「な、何」

善子「いや、別に」

「しかし曜が水泳やめちゃうなんてなぁ」

曜「ところでレンジは? お弁当温めに来たんだけど」

「あ、冷蔵庫の上だよ。業務用だから時間は気をつけてね」

曜「うん」スタッ

善子「……」

「ねぇ。曜の恋人って本当?」

善子「へ? ほ、本当よ」

「あんなやつのどこがいいの?」

善子「どこって……」

「頭はいいけど態度悪いし、毎日のように先生に怒られてたし」

善子「やっぱり本当だったのね……」ハァ

「もっといい人紹介してあげるよ?」

善子「間に合ってるわ」

「くっ……確かにちょっと可愛いよねあんた」

善子「そ、そうでしょ? 曜さんにぴったりじゃない」

「……」

善子「何よ! 今のは笑うところ!」カァアア

「はぁ……」

善子「えぇ……ため息?」
0283名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:39:05.20ID:+ZJivdei
「曜、すっかり変わっちゃったね」

善子「そう……なの?」

「昔はもっとストイックに上ばかり見てた」

善子「……」

「自分より下の人のことなんて見向きもしないで、ましてや泳げない人に教えてあげるなんて絶対にありえない」

善子「曜さんと仲よかったの?」

「……」チラ

善子「……」

「あんたさぁ」クイ

善子「はい?」

「キスとかしたことある?」

善子「か、関係ないでしょう……?」カァアア

「ないんだ?」

善子「……」

「あるの?」

善子「どっちでもいいじゃない!」

「私はあるよ」

善子「そう。どうでもいいわ」

「曜とね」

善子「」

「嘘だと思う? 本当だよ」

善子「う、嘘ね」

「本当」

善子「だったら何なのよ。曜さんが昔誰と付き合っていようと関係ないし……」チラ

曜「まだかなー?」ワクワク

レンジ「……」ブーン

「曜は誰とでもよかったんだよ」

善子「は?」

「他の子ともキスしてるの見たことあるし」

善子「……そ、そんな話信じない」
0284名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:39:43.36ID:+ZJivdei
「担任と付き合ってるって噂もあったくらいなんだから」

善子「げっ」

「そういうやつだよ、曜は」

善子「今は違うわ。私のことだけを好きって……言ってはくれないけど」

善子「私さえいればいい……とも言ってくれないけど」

善子「でも、私に大好きって言ってくれるし……その」

善子「わ、私も曜さんのこと……好きだし?」チラ

曜「ん? もう少し待っててねー」

レンジ「……」ブーン

「はぁ……」

善子「何よ」

「いつか後悔するときが来るよ。絶対に」

善子「そんなの分からないじゃない」

「私は後悔してる」

善子「知らないわよ! あなたが勝手に振られただけじゃない!」

「え? 私別に曜と付き合ってなんかないけど?」

善子「そ、そう……」

「私は好きっていうより憧れの方が強かったから……」

善子「憧れ?」

「何でもできちゃう子だったからね」

善子「曜さんみたいになりたかった……?」

「それだけはない」

善子「何でよ」

「ああなったら人間はお終いだよ」

善子「そこまで言う?」

「平気で人を裏切るようなやつだよ。私との約束だって、もうとっくに忘れてるんだろうな」

善子「聞いてみたら?」

「覚えてたら水泳やめてないよ」

善子「……」

「私が勝つまで絶対にやめないって約束したのに」
0286名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:41:18.24ID:+ZJivdei
善子「そんな約束を」

「去年の夏、いきなり引退しやがって」

善子「ずいぶん口が悪いのね」

「おっと失礼。でも腹立つんだよ」

善子「勝負したらいいじゃない」

「今更?」

善子「曜さんに勝って、それでスッキリするなら」

「今の曜に勝ったって嬉しくも何ともないよ。あのときの曜に勝てないんじゃ意味がない」

善子「……」

「去年の夏に曜が出したタイム、未だに私は超えられてないんだ」

善子「そう。頑張って」

「もう少し真面目に聞いてよ」

善子「だって興味ないもの」

「酷いなぁ」シュン

曜「そろそろ温まったかな?」ピッ

善子「ずいぶん長く温めたわね。調子が悪いの?」

「まさか。この前新調したばかりだよ」

曜「さてと……」パカッ

プシュー

曜「あっ……」

善子「え」

「焦げ臭い……」

曜「わ、わぁ……これだけ温まれば食べられるねぇ」アハハ

善子「何分やったのよ」

曜「スタートボタンを押しただけだよ」

「あぁ……適当にストップしないと」

善子「お弁当の入れ物が溶けてる……」

曜「捨てよう」

善子「さすがにね」

「料理はちっとも上手くなってないね。今度教えてあげようか?」
0287名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:42:03.08ID:+ZJivdei
曜「上手くなったもん! 善子ちゃんだって美味しいって言ってくれるし」

善子「ええ」

「それは恋人だから美味しいって言ってくれてるんだよ」アハハ

曜「そんなことない。善子ちゃんは本当に……」

善子「美味しいわよ」

曜「食べすぎて太っちゃうくらいだもん!」

善子「余計なこと言うな!」

「……」

曜「今度作ってくるから食べてみなよ」

「曜、レンジの前でずっと見てたよね? 途中で普通気づかないかな」

曜「あぅ……」カァアア

善子「曜さんにしては珍しいわね」

曜「二人の会話が気になっちゃって」

善子「聞いてたの!?」

曜「少しね」エヘヘ

善子「……」

「もういいよ。私のお昼分けてあげるからさ……」

曜「いいよいいよ。食堂で買ってくるね」タッ

善子「えっ、ちょっと……」

曜「善子ちゃんは何がいい? ハンバーグ? 分かった!」

ガチャ バタンッ

善子「聞きなさいよ」

「くっくっ……昔と全然変わってない」クスクス

善子「はぁ……」ストンッ

「行かないの?」

善子「お弁当の燃えカス、片付けとかないとだから」

「とりあえず水につけて冷ましたほうがいいね」

善子「そうね……」

……

「……」パクッ
0288名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:42:41.58ID:+ZJivdei
善子「……」

「……」モグモグ

善子「曜さん遅いわね……」

「食堂、混んでたんでしょ。仕方ないよ」パクッ

善子「……」

「食べる?」

善子「え? いいわよそんなの」

「酷い……」シュン

善子「あっ、気を遣って貰わなくてもって意味よ!」

「これでも自信作なんだからね?」つ

善子「いらないってば」

「食べなよ。誰かに食べてもらいたくてさ」

善子「曜さんにでも食べさせたら?」

「あいつは何かムカつくから嫌」

善子「そう」

「あーん」つ

善子「……」

「ほら、私があーんしてるんだから食べなよ。先輩だよ?」

善子「私の先輩じゃないわよ」

「うるさいな。いいから口開けなよ」

善子「……」

「……」カシャン

善子「?」

「いいよもう! どうせ私の料理なんて美味しくないんだろ!? 曜だって食べてくれなかったし……」グスッ

善子「えっ? どうしたのよ急に」

「ううっ……私なんてどうせ曜に何一つ勝てやしないんだよ……」

善子「えっと……大丈夫?」

「私があんないじわる言ったのに嫌な顔ひとつしないでさぁ! 昔の曜なら絶対ケンカになったのに!」

善子「あなた、曜さんとケンカしたかったの?」

「したかったよ! いや、したくない!」
0289名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:43:18.87ID:+ZJivdei
善子「どっちよ」

「もういいよ……今日は帰る」スタッ

善子「そう。気をつけてね」

「……」スタスタ

善子「お弁当は? 持って帰らないの?」

「食べていいよ」

善子「いらないけど」

「やっぱり私の料理なんて……」グスッ

善子「あぁもう! 面倒くさいわねあなた!」スッ

パクッ

善子「……」モグモグ

「え……?」

善子「……」モグモグ

「も、もしかして私のお弁当……」

善子「……」ゴクンッ

善子「食べてあげたわよ」

「……」パァアア

善子「な、何よその目は」

「もう一度聞いていい? 何であんなやつと付き合ってるの?」

善子「は? 好きだからに決まってるじゃない」

「もったいないよ。えっと、名前何て言ったっけ」

善子「津島よし……ヨハネよ」

「ヨハネちゃん? ずいぶんハイカラな名前だな」

善子「放っといて」

「よく見たらけっこう可愛いし、今度男の子紹介してあげるね」

善子「だからいいってば。興味ない」

「もしかして、レ……」

善子「違うわ。好きになった曜さんがたまたま女の子だっただけよ」

「何だ、違うのか」

善子「レズだと思ったの? って言うかそれだったら男の子紹介しないわよね」
0290名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:43:53.03ID:+ZJivdei
「あぁ、えっと……私はどっちもアリだからきっとヨハネちゃんもそうかと思って」

善子「聞きたくないわ」

「ほら、曜ってどっちから見ても魅力的だし……?」カァアア

善子「さっき『あんなやつ』とか言ってなかった?」

「やっぱり好きなんだよ」

善子「ダメよ。今は私が恋人だもの」

「じゃあ二番目でいいや」

善子「ダメに決まってるでしょうが!」バンッ

「ひぃっ!?」ビクッ

善子「あなた、曜さんに負けず劣らず変わってるわね」

「やっぱりそう思う?」

善子「そう言われて嬉しそうにするところとか」

「まあ、元カノの私としては……」

善子「元カノ!? さっき誰とも付き合ってなかったって言ったじゃない!」

「言ってない。誰とでも付き合ってるって言ったの」

善子「それこそ言ってないわ! あんまり嘘ばっかり言ってると怒るわよ!」

「いや、本当なんだってば。曜は誰にも興味なかったけど、来るものは拒まないタイプだったからね」

善子「拒みなさいよ」

「勝手に曜のこと好きになって、半ば無理やりキスしちゃう子、けっこう多かったから」

善子「えぇ……」

「曜はそういうやつだよ」

善子「聞きたくなかったわ……」ハァ

「だからそんなやつと付き合わない方がいいって」

善子「……」

「まあでも、好きならキスくらいはしてから別れるのでもいいかもね」アハハ

曜「ちょっと。善子ちゃんに変なこと言うのやめてくれる?」

善子「あぁ、曜さん……曜さんっ!!?」ガタッ

「遅かったじゃん」

曜「クラブハウスサンド。三つあるから一つずつ食べよう」トサッ

「ハンバーグは?」
0291名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:44:34.52ID:+ZJivdei
曜「売り切れだってさ。あとおばちゃんはいつも通りエプロンだったよ」

善子「聞いてないわ」

曜「それと……」クイ

善子「へっ……?」ドキドキ

チュルッ

曜「……」

善子「い、いきなりキスなんて……」カァアア

曜「私がいない間に餌付けするの、卑怯じゃない?」チラ

「……」

善子「餌付けとか言うな」

曜「善子ちゃんのこと好きなの?」

「はっ?」

善子「えっ?」

曜「ダメだよ。善子ちゃんは私の恋人なんだから」

「……」

善子「えっと、その」チラ

「ないよ。マジでない」

善子「でしょうね」

曜「善子ちゃん、何もされてない? 大丈夫?」

善子「されてないけど……」

曜「この子、人に無理やりキスするような子だからさ」

「曜だって満更でもなさそうだったじゃん!」

曜「だって……断ったら傷つけちゃうかなって」

善子「何その優しさ」

曜「善子ちゃんごめんね。善子ちゃんが初めてじゃなくて……」

善子「……いいわよ別に」

「ヨハネちゃん! こいつは私の知る限り十人以上とキスしてるよ!? こんなやつやめたほうがいいって!」

曜「してない!」

「私見たもん!!」

曜「十人はしてない! したのは九人!!」
0292名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:45:08.06ID:+ZJivdei
善子「えぇ……」

曜「善子ちゃんが十人目だよ」フフッ

善子「いや、全く嬉しくない」

曜「って言うか私からしたのは善子ちゃんが初めて……だと思うよたぶん」

善子「おい」

「いーや、嘘だね! 曜の方から担任にキスしてるとこ見たもん」

曜「……」

善子「何見られてるのよ」

曜「いや……見られてるとは思わなくて」

「あの担任、口では嫌がってたけど本当は曜のこと好きそうだったし……」

善子「はぁ……」

曜「誤解がないように言っておくね。えっと、あのときの先生は……」

善子「お願い。もう黙ってて」グイ

曜「え? 本当のこと言えばいいじゃん」

善子「ママがクビになっちゃう」

曜「あ……」

「な、何かとんでもないことが聞こえた気もするけど」

善子「気のせいよ」

曜「で、食べるの? 食べないの?」

「お弁当あるから……」

曜「じゃあ半分ずつ食べようか」

「……」コクッ

善子「ダメに決まってるでしょ!?」

曜「別に食べさせ合いっこするわけじゃないよ。手でちぎって分けるだけ」

善子「それでもダメ」

曜「どうして?」

善子「どうしてもよ」

曜「善子ちゃんは食べたのに?」

善子「そ、それは……」

「頂きます」パクッ
0294名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:47:10.17ID:+ZJivdei
曜「それじゃ私も」スッ

善子「やめときなさいって!」バッ

曜「えー? もうサンドイッチ食べられちゃってるんだけど」

「はぁぁうめぇ……♡」モグモグ

曜「あむっ」パクッ

善子「あっ」

曜「……」モグモグ

「美味しい? ヨハネちゃんは美味しいって言ってくれたよ」

善子「言ってないわよ」

曜「……」モグモグ

「嫌だったかな」シュン

善子「あんまり可哀想だから仕方なく食べてあげたの」

曜「……」モグモグ

「どう? 美味しい?」

曜「ごめん、正直マズい」

「」

善子「……」

曜「塩と砂糖間違えた?」

「間違えてない!」

曜「もしくは醤油と墨汁」

「料理に墨汁使わないよね!?」

曜「じゃあ生まれてくる世界」

「酷いっ!!?」

善子「ぷっ……」クスクス

曜「最後のは言い過ぎた」

「やっぱり曜って最低だよ」グスッ

曜「よく言われるよ」

善子「反省はしないのね」

曜「後悔と反省だけはしないって決めてるから」

善子「反省はして」
0295名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:48:25.99ID:+ZJivdei
「私は……後悔ばっかりだよ」グスッ

善子「うわ、面倒くさいわね」

「曜のこと好きで……無理やりキスだってしたよ? だけどそんなことで曜の気持ちが手に入るなんて……ないって分かってたのに」

曜「あのときのキスはそういう……」

善子「思い出さないで」

「ねぇ、今もう一度……」

曜「仕方ないなぁ。一度だけだよ」スッ

善子「ちょっと!! 何しようとしてるのよ!」

曜「善子ちゃんはあっち向いてて」グイ

善子「いやいや、見なけりゃいいって問題じゃないから!」クルッ

「ごめんねヨハネちゃん」

曜「目、閉じてくれる?」

「うん……」ドキドキ

善子「やめなさいよ? 本気で嫌いになるからね??」

曜「……」スッ

善子「ひゃっ……」

チュッ

「え……?」チラ

曜「ごめん。やっぱりできない」

善子「首筋はやめてって……言ってるじゃない」ビクッ

曜「私は善子ちゃんが好き。だからごめん」

「……」

曜「あのとき……本当のこと言えればよかったね」

「本当のこと……」

曜「先生のことが好きだったんだ」

善子「……」

曜「さすがにみんなにバレたら先生が可哀想だからさ」

「バレバレだったよ」

曜「え?」

「曜が先生のこと好きだって……みんな知ってたよ」
0296名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:48:59.42ID:+ZJivdei
善子「……」

曜「私、そんなこと言ったっけ?」

「だからあんなババア嫌いだった」

善子「っ!!」グイッ

曜「善子ちゃん!」

「……あんなやつ、生徒との関係がバレてクビになればよかったんだ」

善子「ママのことババアって言ったわね」グイ

「ママ?」

善子「そうよ。あのときの担任は私のママ」

曜「善子ちゃん、余計なこと言わない方が……」

善子「うるさい! 曜さんは黙ってて!!」バンッ!

曜「ひぇっ」ビクッ

「誰かに似てると思ったら……そういうことか」フフッ

善子「ママのことバカにしたわね。取り消して」

「まあ、先生としてはいいやつだったよ」

善子「ババアって言ったことを取り消せって言ってんの!」グイ

「けほっ……」

曜「善子ちゃん、やめようよ。ママがみんなから慕われてたのは本当なんだから」

「曜は私たちのものだったのに……」

善子「そんなの知らない! 勝手に片想いしてただけじゃないの!」

「……」

曜「……」

善子「早く謝りなさい」グイ

「……」

善子「早く!!」ガシッ

曜「あ、あのね? こうなったら善子ちゃんは絶対許してくれないよ。殺される前に謝るべきだと思う」

善子「そうよ。死んでから後悔したって知らないから」

「……ご、ごめん」

善子「何に対して?」

「ババアなんて言って」
0297名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:50:12.23ID:+ZJivdei
善子「もう言わない?」

「言わない」

善子「そう。ならいいわ」パッ

「げほっ!! ごほっ……」ゼェゼェ

曜「大丈夫? 生きてる?」

「見てないで止めてよ!! 本当に死ぬかと思ったじゃん!」

善子「本気で殺すつもりならとっくに死んでるわよ」

曜「そうそう。善子ちゃんに殺されるとしたら私が最初で最後だね」アハハ

善子「ええ」

「……」

曜「あ、否定してくれないんだね……」

「よくこんな子と付き合ってるね」

曜「こういうところも含めて好きなんだよ」

善子「あ、ありがと……」カァアア

「……」

曜「どうしたの?」

「いや……やっぱり曜と付き合わなくて正解だったかな」

曜「負け惜しみかな?」

「かもね」

曜「ごめんね、あのときはちゃんと返事できなくて」

「いいよ、あいつのこと好きなのは分かってたし」

善子「あいつ?」ジロッ

「いやっ、せ、先生のこと好きだって」

曜「だから今返事させて」

曜「ごめんなさい」ペコッ

「……」

善子「……」

「何で今更振られたの私」

善子「ざまあないわね」クスクス

「えぇ……」
0299名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:51:50.56ID:+ZJivdei
曜「お昼食べようよ。お弁当は正直マズかったけど」

「酷い」

善子「そうよ。私だって似たようなものじゃない」

曜「いや……私のお母さんといい勝負かも」

善子「そこまでじゃないわよ。何とか食べられたし」

「曜のお母さんって確か……」

曜「私が小学生のときに家を燃やしてる」

善子「え、まさかそれで引っ越しを?」

曜「うん。不慮の事故だから火災保険は降りたんだけどね」

「料理やめようかな……」

善子「そんなことでやめちゃうの?」

「そんなことって……いつか家を燃やしちゃうかも」

善子「そんなことで?」

「……」

善子「曜さんを好きなら、せめて私より美味しい料理を作ってから言うのね」

曜「善子ちゃんは料理じゃないよ」

善子「は?」

曜「あと、昼間からそういう話題はね?」

「……」

善子「ごめんなさい、意味が分からないんだけど」

曜「ううん。分からないならいいや」

「え……マジ?」

曜「恋人って言ったでしょ?」

「……」

善子「え? 何なのよ」

「ごめん、気分が悪いから行くね……」フラッ

曜「あっ、お弁当忘れてるよ! あとサンドイッチ返して!」

「ごちそうさま……」ガチャ

バタンッ

善子「……」
0301名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:53:34.49ID:+ZJivdei
曜「食い逃げされたぁ!」

善子「何と言うか……曜さんの知り合いって変な人しかいないの?」

曜「何でだろうね」

善子「私もその一人なのかしら……」ハァ

曜「それは間違いないね」

善子「……」

曜「だって私を好きになるような人だよ? まともな人のはずがないよ」アハハ

善子「うん……」

曜「ちょっ、今のは冗談だって」

善子「サンドイッチ、食べましょうか」スッ

曜「そ、そうだね」

善子「さっきの人、本当に何だったのかしらね。ビート板探してるときも何かこっち見てきたし」

曜「善子ちゃんが可愛いから見惚れてたんじゃない?」

善子「それはないわよ」

曜「じゃあ何? 私のことまだ好きとか?」

善子「それはあるわね」

曜「大丈夫。さっき丁重にお断りしたから」

善子「わざわざキスするふりして目まで閉じさせて、それから私にキスしたわよね」

曜「心なしか嬉しそうだったね」

善子「曜さんの周りって変態しかいないの?」

曜「それだと善子ちゃんも変態ってことになるけどいいのかな」

善子「それは困るわ」

曜「きっと私に勝てずに終わったことが悔しいんだろうね」

善子「分かってるなら勝負してあげなさいよ」

曜「今の私になんて勝っても嬉しくないよ」

善子「さっきの人もそう言ってたけど……本当は勝負したくて仕方がないって感じだったわ」

曜「……」

善子「負けるのが怖い?」

曜「別に。現役の選手になんて負けて当然だよ」

善子「勝負する前から負け惜しみなんて、曜さんらしくもない」
0302名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:54:16.26ID:+ZJivdei
曜「善子ちゃんは、私が負けるところなんて見たくないでしょ」

善子「まあ、正直見たくないわね」

曜「だからやらない」

善子「何でよ」

曜「善子ちゃんが見たくないって言ったんだよ?」

善子「曜さんが勝つところを見たいって言ったら?」

曜「……」

善子「逃げるなんて曜さんらしくないわよ」

曜「もう私は選手じゃないんだよ」

善子「関係ないわ」

曜「向こうは全日本強化選手にも選ばれてる。私なんかとは違うよ」

善子「曜さんだって去年は選ばれてたじゃない」

曜「……勝てるわけない」

善子「勝てなくてもいいわ。勝負から逃げないでほしいだけ」

曜「……」

善子「いつまでも逃げてばかりじゃ、いつか本当に大切なものを失うわよ」

曜「それは……善子ちゃんに嫌われるってことかな」

善子「それはないけど」

曜「じゃあいいよ」

善子「……」

曜「善子ちゃんが好きでいてくれるなら、後は別に」

善子「もっと好きになってあげる」

曜「本当?」

善子「本当よ」

曜「……」

善子「水泳を続けてくれなんて言わないわ。もう一度だけちゃんと向き合ってくれれば」

曜「……」

善子「お願い」

曜「お願い、かぁ……」
0303名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:54:52.14ID:+ZJivdei
善子「ずるいと思う?」

曜「それなりの報酬を貰えるなら」

善子「何でよ。自分のプライドのためでしょ」

曜「善子ちゃんのためだよ」

善子「……」

曜「善子ちゃんのためだよ?」

善子「私のためでもいいわ。それならやってくれる?」

曜「もちろん。その代わりおしっこは飲ませてくれるんだよね?」

善子「言うと思った……」ハァ

曜「コップ一杯でいいよ」

善子「つい昨日飲ませなかったかしら」

曜「あれは水泳教室の授業料でしょ」

善子「……」

曜「飲ませて」

善子「分かったわ。コップ半分だけね」

曜「一杯じゃなきゃ嫌」

善子「残り半分は成功報酬」

曜「負けても半分は飲めるんだね」

善子「やっぱり勝ったら飲ませる。負けたらナシ」

曜「そんなぁ」

善子「どうしても飲みたいなら勝ってみせなさい。私の前で、現役の全日本強化選手に」

曜「そんな無茶苦茶な……」

善子「今日とは言わないわ。今から練習して……そうね、明日勝てる?」

曜「さすがに無理」

善子「飲みたくないの?」

曜「……私に死ねって言ってる?」

善子「じゃあ来週」

曜「来週学校休んでもよければ」

善子「ダメに決まってるでしょう? 学校が終わってから練習するのよ」

曜「Aqoursの練習は……」
0304名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:55:34.91ID:+ZJivdei
善子「もちろんそれも終わってからよ」

曜「えぇ……」

善子「大丈夫よ。ここ、家に近いし……夜は確か九時までやっていたはず」

曜「それは選手の練習時間だよ。一般の人は七時でお終い」

善子「……」

曜「練習が終わってここまで来るだけでもう七時くらいになっちゃう」

善子「八レーン」

曜「ん?」

善子「八レーンは? 床が浅いから選手は使わないでしょう」

曜「いや、浅すぎてぶつかるし……」

善子「スタートの練習はできないわね。でもそのくらい曜さんならカバーできるでしょ」

曜「でも、スタートで差がつくと挽回するのは大変だよ」

善子「……」

曜「気持ちは嬉しいけどさ、無茶だよ。やめようよ」

善子「うるさいわね」

曜「期待させちゃ悪いからはっきり言うね。できないものはできない」

善子「あっそう。この先一生飲ませてあげないけどそれでいいのね?」

曜「……」

善子「……」

曜「飲みたいよ。飲みたいけど……」

善子「ねぇ、本当は分かってるんでしょう? これは私のためでもおしっこのためでもないのよ」

曜「……」

善子「曜さんが前に進むために必要なこと」

曜「私のことなんて知らないくせに」ボソッ

善子「あぁ、そう。それ言っちゃうのね」

曜「善子ちゃんが知ってるのは今の私だけだよ。昔の私のことなんて知らないんだ」

善子「だって教えてくれないじゃない」

曜「教えたくないもん」

善子「どうしてよ」

曜「……教えたくないもん」
0305名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:56:09.05ID:+ZJivdei
善子「はぁ……」

曜「今の私だけ見てよ。過去とか未来とかそんなのどうだっていいじゃん」

善子「それ、本気で言ってるの?」

曜「本気だよ?」

善子「この先もずっと曜さんといたいって思ってるのよ」

曜「私も善子ちゃんといたいよ」

善子「だったら教えて」

曜「……」

善子「今すぐにじゃなくていいわ。いつか教えてくれればそれで」

曜「いつかね」

善子「今回は私のお願いを聞くと思って」

曜「善子ちゃんのお願い……」

善子「今は分かってくれなくてもいい。私のこといじわるだって思うかもしれないけど……」

善子「いつか分かってくれればそれでいいの」

曜「善子ちゃんって……本当にいじわるだね」

善子「私なんかを好きになるから悪いのよ」

曜「そうだね……」

善子「……」

曜「分かった。善子ちゃんのお願いだもん、やるよ」

善子「本当!?」

曜「やる。だけど今すぐじゃ準備が足りない」

善子「どのくらいかかる?」

曜「一年」

善子「は?」

曜「いや、半年でいいよ」

善子「ふざけてるの?」

曜「大真面目だよ。そのくらいのブランクがあるもん」

善子「半年も私のおしっこを飲めないのね。あー可哀想」

曜「う……」

善子「半年も私に『好き』って言ってもらえないのね。一緒にお風呂も入れないんだわ」
0307名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:57:37.82ID:+ZJivdei
曜「それは善子ちゃんがしたいだけじゃ……」

善子「何ですって!?」ガタッ

曜「な、何でもないよ」

善子「さっきからごちゃごちゃうるさいのよ! 飲みたいの!? 飲みたくないの!?」

曜「……」

善子「……」ジー

曜「の、飲みたいです」

善子「はい決定! 早速始めるわよ」スタッ

曜「えっ、今から?」

善子「今から。向こうだって今頃練習してるわ」

曜「でも……」

善子「勝負は来週の今日。いいわね?」

曜「えぇ!? せめて来月……」

善子「ダメ。これでも譲歩してるのよ? 本当なら明日って言いたいところなんだから」

曜「分かったよ……。その代わり、もし負けても嫌いにならないでね?」

善子「本気でやって負けたんだったらね」

曜「わざと負けるとでも思ってる?」

善子「体調のせいにするのも禁止」

曜「それはカッコ悪いな」

善子「当日どんなに熱が出ていようと、足が折れていようとそれは実力だからね」

曜「厳しいなぁ」

善子「ほら、分かったら無駄口叩いてないで練習するわよ」

曜「善子ちゃんの水泳教室は?」

善子「だから来週の今日って言ってるの!」

曜「あぁ、なるほど」

善子「もし曜さんが負けたらさっきの人に教わることにするわ」

曜「えぇ……」

善子「さすがにいじわるかしら?」

曜「レッスンと称してあんなことやこんなことをされちゃうかも」

善子「されないわよ」
0309名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:59:12.09ID:+ZJivdei
曜「あの子、どっちもいける子だから」

善子「……」

曜「って言ってたよ。自己紹介のときに」

善子「酷い事故紹介ね。私が言えたことじゃないけれど」

曜「はぁ……やるだけやってみるよ」

善子「ええ。応援してるわ」

曜「ありがと! 善子ちゃんに応援してもらえるならサメにだって勝てそう」

善子「え? う、うん……」

曜「そうと決まれば宣戦布告だね」

善子「練習は?」

曜「先に退路は絶っておかないと。つい逃げたくなっちゃう」

善子「分かったわ。そういうことなら」

……

 プールサイド

善子「ねぇ、ちょっといい?」

「あ、ヨハネちゃん久しぶり」

善子「さっき会ったばかりよ」

「そっか……ヨハネちゃんは曜に」

「うっ……」

曜「大丈夫?」

「大丈夫……。ちょっと想像しちゃっただけだから」

善子「まあボケは置いといて」

善子「来週、曜さんと勝負しなさい」

「……え?」

曜「私と勝負だよ」

善子「曜さんに勝ちたがってたでしょう?」

「私が勝ちたかったのはあのときの曜で……」

曜「ふーん? 約一年もプールを離れてた私に負けるのが怖いの?」

「は?」

善子「さっきまで自分もビビってたくせに……」ハァ
0310名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/19(月) 23:59:45.25ID:+ZJivdei
曜「私に勝てたら何でも言うこと聞いてあげるよ」

善子「ちょっ、安請け合いしないで!」

「何でも?」

曜「何でもだよ。あ、善子ちゃんはあげないから」

「何でもじゃないじゃん……」

善子「えっ、もしかして私が欲しかったの!?」

「いや。ないね」

善子「そうよね」ホッ

曜「善子ちゃん以外なら何でもいいよ」

「何でもか……」

善子「本当にいいの?」

曜「私が負けるとでも思ってるの?」

善子「そうは言ってないけど」

曜「じゃあ善子ちゃんだって賭けてもいいよね」

「さすがにそれはやめておいた方がいいんじゃないかな……」

善子「そうよ。別に私なんて欲しくないみたいだし」

曜「善子ちゃんの良さが分からないとは……」ハァ

「えぇ……」

善子「まあいいわ。とにかく私以外でなら何でもいいって言ってるんだもの、今からお願いを考えておくのね」

曜「そうだよ。あ、お金はナシね」

「何でもじゃないじゃん……」

曜「賭博は違法だから」

善子「変な遵法精神」

曜「私にできることでお願いね」

「分かった。考えておくよ」
0311名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/03/20(火) 00:06:06.76ID:w/vmrvb1
善子「じゃあ、そういうことだからよろしく。邪魔してごめんなさい」クルッ

スタスタ

「……」

曜「ごめんね。善子ちゃん、言い出したら聞かないから」

「曜も大変だね」アハハ

曜「だから好きなんだけどね」エヘヘ

「……」

曜「じゃ、また来週」タッ

「本気?」

曜「何が?」

「一年近くやってなかったんだよね。そんなんで勝てるって本当に思ってる?」

曜「……思ってるよ」

「ずいぶん舐められたもんだね」

曜「……」

「いいよ。やるからには本気でやる。その代わり」

「曜も本気でやってよね」

曜「もちろん」

「それと、私が勝ったら何でも言うこと聞きなよ」

曜「……あんまりいじわるしないでね?」

「……」

曜「ううん。何だっていいよ、負けなきゃいいんだから」

「楽しみにしてるよ」フフッ

曜「私もだよ」

……
0316名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/20(火) 19:27:17.13ID:dH+mtW3N
じもあい満タン入りましたー!
おつ!
0322名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/21(水) 22:03:34.22ID:KMYx3EnY
(ヒョイっと曜ちゃんに持ち上げられてちょっと悔しい善子ちゃんのようよし)
0325名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/22(木) 12:31:43.58ID:JTrdZfSn
0328名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/22(木) 19:20:29.37ID:JTrdZfSn
ようよぴ!
よぴこめっちゃ可愛くない??
0331名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/23(金) 00:34:53.06ID:BShqO/Sp
>>329
ロリよしこ=よぴこ!
Twitterでようよぴ検索して…
0335名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/23(金) 14:36:45.43ID:XLoxK8Ck
0337名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/23(金) 23:49:52.25ID:AMqGbO5a
曜ちゃんだYO
0340名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/24(土) 11:18:58.13ID:M5OzNn5v
0344名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/25(日) 08:35:18.53ID:/HUeZzhf
ほもだぁ〜いってなんだよ草
0348名無しで叶える物語(たこやき)
垢版 |
2018/03/25(日) 19:17:05.92ID:Cn1blU3f
……

……

 日曜日

曜「はぁっ……はぁっ」ザバッ

善子「すごいわ! 昨日の今日でこんなにタイムが縮まるなんて!」

曜「まだこんなもんじゃ勝てないよ……」ハァ

……

 月曜日

曜「げほっ……どうかな」ザバッ

善子「うん……安定したタイムが出てるわね。この調子よ」

曜「……」フゥ

……

 火曜日

曜「どう!?」ザバッ

善子「ちょっとイマイチね。もう少しこう、大きくかいてみたらどうかしら?」

曜「簡単に言ってくれるよね……」

……

 水曜日

曜「ダメだ。全然タイムが縮まらない」

善子「ちょっと休憩しましょ。おやつ持ってきたから……」スッ

曜「そんな時間ないよ。もうあと半分もないんだ……」

……

 木曜日

曜「もうダメだよ」グスッ

善子「何泣いてるのよ。まだ明日も練習できるし、明後日までここから頑張れば……」

曜「うわぁん! このまま負けて善子ちゃんに恥ずかしいところを見られちゃうよー!」ポロポロ

善子「今の姿の方がよっぽど恥ずかしいような……」

曜「何であんなできもしないこと言ったんだろ私」グスッ

善子「どうしてできないって決めつけるわけ? まだ分からないじゃない」

曜「分かるよ! 去年のタイムに遠く及ばないもん……」
0349名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:17:36.97ID:Cn1blU3f
善子「そうだけど……」

曜「善子ちゃんはいいの!? あの子私のこと好きなんだよ!? 善子ちゃんの目の前でキスしてとか言うかも!」

善子「……」

曜「お、おしっこ飲ませてって言われるかも……」ビクビク

善子「曜さんじゃないんだから」

曜「私が飲ませるのは後にも先にも善子ちゃんだけだよ? でもどうしよう、もし負けたら……」

善子「そんなお願いするわけないじゃない」

曜「そのときは私を殺してくれる? 善子ちゃん以外に飲まれるくらいなら死ぬよ」

善子「私を殺人犯にするつもり?」

曜「やっぱり今から土下座して謝ろう。キスでも何でもするからおしっこだけは許してもらわないと」

善子「キスもダメよ」

曜「じゃ、じゃあお金? どうしよう私そんなにお金持ってない……」

善子「賭博は違法なんじゃなかったの」

曜「善子ちゃんはいいの!? 水着姿の私を好き放題されちゃっても!」

善子「いいわけないでしょうが」

曜「どんなことされても嫌いにならないでね……お願い」ギュ

善子「曜さんがわざと負けたり、本気を出さなかったりしなければね」

曜「そんなことしないよ」グスッ

善子「めそめそ泣いてる暇があったら練習よ。少しでも勘を取り戻して貰わなきゃ」

曜「うん……」

……

 その夜

 善子の家 リビング

曜「ごちそうさま……」スタッ

善子ママ「曜ちゃん大丈夫? このところ疲れてるみたいだけど……」

善子「……」

曜「ごめんなさい。今日はもう寝ます……」フラッ

善子「あっ、後片付けは私がやっておくから。ゆっくり休んで」

曜「うん……」フラフラ

善子「……」
0350名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:19:04.69ID:Cn1blU3f
善子ママ「最近、毎日遅くまでプールに行っているわね」

善子「ええ。やっと水泳に本気になってくれたのよ」

善子ママ「もしかして、善子がやらせてるの?」

善子「え?」

善子ママ「前に曜ちゃん言ってたわ。もう二度と水泳はやらないって」

善子「変な意地張ってただけよ。久しぶりにプールに入ったとき、気持ちよさそうに泳いでたわ」

善子ママ「そう……」

善子「ママも知ってるでしょ。曜さん、大学から推薦の話が来てるのよ。曜さんの頭じゃ絶対行けないようなところなんだから……」

善子ママ「曜ちゃんが行きたいって言ったの?」

善子「言ってないけど」

善子ママ「周りが押し付けるのはよくないと思うわ」

善子「……」

善子ママ「結局は本人が決めることなのよ」

善子「曜さん、未だに進路の希望すら決まってないのよ」

善子ママ「みたいね」

善子「もう二年生も終わるのに、私が聞いても全く決まってないって言うの」

善子ママ「……」

善子「本当は水泳がやりたいんだと思うのよね」

善子ママ「そうなの?」

善子「明後日になれば分かるわ。勝っても負けても、きっと曜さんはもう一度水泳をやりたくなるはず」

善子ママ「明後日、何かあるの?」

善子「現役の選手と勝負するのよ」

善子ママ「えぇ!? 現役のって……」

善子「そういえば名前聞き忘れたわね。でも確か、中学の時の同級生だったって言ってたわ」

善子ママ「……」

善子「ちょっとカッコいい子だった……」

善子ママ「女の子よね?」

善子「も、もちろん曜さんの足元にも及ばないけど? 曜さんなら絶対勝てるって信じてるし」
0351名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:19:41.44ID:Cn1blU3f
善子ママ「曜ちゃんのことあんまり強く言えないじゃないの」フフッ

善子「浮気とかじゃないから。カッコいいかカッコよくないかで見ればカッコいい方に入るだけ」

善子ママ「……」

善子「忘れて」

善子ママ「ええ」

善子「とにかく! 曜さんが一歩前に踏み出すいいきっかけだと思うわ。そのためなら私は賞品にだってなるわよ」

善子ママ「賞品?」

善子「あっ、いや別に」

善子ママ「あんまり曜ちゃんに無理させちゃダメよ」

善子「もちろん。でも曜さんはこのくらい全然平気よ。いつも果南さんとトレーニングしてるくらいだもの」

善子ママ「……」

善子「そうだ、明後日の夕飯は曜さんが好きなハンバーグにしましょ。私とママで作ってあげたら喜ぶわ」フフッ

善子ママ「そうね」

善子「また太っちゃうかも?」

善子ママ「曜ちゃんはともかく、善子は気をつけなさいよ。太るとなかなか痩せない体質なんだから」

善子「私、そんなに太ってないわよね?」

善子ママ「ううん。善子みたいに筋肉のない細い体の子は、一旦太ると痩せにくいのよ」

善子「それ、ママの実体験?」

善子ママ「善子を産んだ後に、少しね」フフッ

善子「今はそんなことないわよね」

善子ママ「ここまで戻すのに何年かかったことか……」ハァ

善子「き、気をつけるわ」

善子ママ「それはそうと、善子は進路どうするの?」

善子「えっ」

善子ママ「この前聞いたとき、のらりくらり躱して結局答えなかったじゃない」
0352名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:20:09.97ID:Cn1blU3f
善子「まだ考え中なのよ」

善子ママ「もう二年生になるのよ? あっという間に三年になっちゃうんだから」

善子「私は……」

善子ママ「進学? それとも就職?」

善子「まだ決まってないわ」

善子ママ「どっちにしても早く準備しておかないと、後で困るのは善子なんだからね」

善子「分かってるわよ……」

善子ママ「曜ちゃん、お母さんとそういう話しないのかしら」

善子「さあ? こう言っちゃ悪いけど、あんまり曜さんのお母さんって曜さんに興味ないわよね」

善子ママ「そんなわけないでしょう。本当は気になって仕方がないのよ」

善子「そうは見えないけどねぇ」

善子ママ「私にしょっちゅう電話で相談してくるんだから……」

善子「何よ、可愛いところあるじゃない」フフッ

善子ママ「でしょう?」クスクス

善子「……惚気?」

善子ママ「『曜に進路のことそれとなく聞いてみて』って私に頼むのよ」

善子「自分で聞きなさいよ。親なんだから」

善子ママ「そうよ。だから私は曜ちゃんから聞き出すつもりはないわ」

善子「曜さん、本当に迷ってるみたいだしね」

善子ママ「そうみたい。最近はため息ばかりしてるわ」

善子「明後日、答えが出るといいんだけど」

善子ママ「……」

善子「さて、私も片付けたら寝ようかしら。泳ぐのって結構疲れるのよね」スタッ

善子ママ「お風呂は?」

善子「プールでシャワー浴びてきたからいいわ」
0353名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:20:37.37ID:Cn1blU3f
善子ママ「そう。たまには湯船に浸かって休んだほうがいいわよ」

善子「そうね。これが終わったらゆっくり入らせてもらうわ」

善子ママ「……あんまり無理しちゃダメよ。曜ちゃんも、善子もね」

善子「分かってるわよ」

……

……

 翌朝

 善子の部屋

善子「……っ!」バサッ

善子(あぁ……やっぱり)

善子(寝る前ちゃんとトイレに行っておいたのに、ついてないわね)ハァ

コンコンッ

善子「ママ? ごめんなさい、シーツ今から洗えるかしら」

ガチャ

善子ママ「また? 今日は天気良くないって天気予報で言ってたわよ」

善子「じゃあ洗濯し終わったら乾燥機かけておいて」

善子ママ「電気代がかかるからダメ」

善子「部屋干し? 臭くなるから嫌よ……」

善子ママ「善子が漏らしたのが悪いんでしょう? 我慢しなさい」

善子「トイレは行ったわ! そもそもこれ、私じゃなくて曜さんのかもしれないじゃない」

善子ママ「曜ちゃんの匂いじゃないわね」

善子「うっ……」

善子ママ「いいから、シャワー浴びてらっしゃい」

善子「曜さんは?」

善子ママ「そういえば姿が見えないわね」
0355名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:22:01.66ID:Cn1blU3f
善子「私が寝るときはここにいたはずだけど……」

善子ママ「もしかして家に帰ったのかしら」

善子「何のために?」

善子ママ「教科書を取りに行ったとか」

善子「それはないわよ。そもそも曜さん、基本的に教科書は学校に置いたままだもの」

善子ママ「じゃあ着替えかしら」

善子「帰るなら普通、声をかけて帰るわよね?」

善子ママ「善子、曜ちゃんに何かした?」

善子「してないわよ」

善子ママ「……」

善子「えっ、まさかその、私が曜さんに変なことしたと思ってるの?」

善子ママ「善子、寝相が悪いから」

善子「あぁ、そっちね」ホッ

善子ママ「私も人のことは言えないんだけど」フフッ

善子「嫌われないように気をつけなさいよ」

善子ママ「寝ているときだもの、わざとじゃないわ」

善子「私も気をつけないと……」

善子ママ「別々に寝るくらいしか方法がないわね」

善子「そうなのよね……」ハァ

……

 学校

 二年教室

千歌「あれ? 今日曜ちゃん休みなの?」

梨子「え? そういえばまだ来てないわね」

千歌「もうチャイム鳴っちゃうよ。メールしても全然返事ないし……」
0357名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:23:56.48ID:Cn1blU3f
梨子「曜ちゃんのことだから滑り込みで間に合うかも?」

千歌「遅刻しない最終バスはとっくに過ぎてるよ」

梨子「ということは遅刻だね」

千歌「それか学校まで走ってくるかも? 曜ちゃんの足なら間に合うかな」アハハ

梨子「無理じゃないかな……。こんな信号もない田舎でバスより早く着くなんて」

千歌「善子ちゃんなら何か知ってるかも」スッ

 チカ@次期生徒会長:善子ちゃん、曜ちゃんのこと何か聞いてる?

梨子「二人は毎日同じバスで来てるんだっけ」

千歌「そうだよ。ラブラブだよねぇ」

梨子「ちょっと羨ましいな……」

千歌「ん? もしかして梨子ちゃん……」

梨子「ううん。いないよ」

千歌「ありゃ。これは本当にいない反応だ」

ピコンッ

 †堕天使ヨハネ†:えっ? 曜さんまだ来てないの?

 チカ@次期生徒会長:来てないよ。善子ちゃんと一緒かと思った

 †堕天使ヨハネ†:今日は一緒じゃなかったのよ。まあ、そのうち来るでしょ

千歌「思ったより薄情だね」

梨子「善子ちゃん何て?」

千歌「そのうち来るでしょ、だって」

梨子「まだ寝てたりして」

千歌「それはないと思うけどなぁ」

梨子「そうね。千歌ちゃんならともかく、曜ちゃんは早起きだから」

千歌「私だって隣の家の人が起こしてくれれば遅刻しないで済むんだけど?」

梨子「それは千歌ちゃんのためにならないと思う」
0358名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:24:28.37ID:Cn1blU3f
千歌「あーあ、私も曜ちゃんみたいな彼氏が欲しいよ」

梨子「彼氏?」

千歌「毎日起こしに来てくれて、美味しいご飯作ってくれて、私のお願い何でも聞いてくれるの……」ウットリ

梨子「それは善子ちゃんだからじゃない?」

千歌「幼なじみの私を差し置いて! 悔しいよぅ……」グスッ

梨子「はいはい」

千歌「あ、今のは『悔しいよう』と曜ちゃんの『よう』をかけてるのだ」エヘヘ

梨子「私も曜ちゃんに電話してみようかな」スッ

千歌「せめて突っ込んでくれても……」シュン

……

 一年教室

善子「……」スッ

 †堕天使ヨハネ†:曜さん、学校遅れるなら連絡しなさいよ

 †堕天使ヨハネ†:無断遅刻は内心に響くわよ。言われなくても分かってるわよね?

善子「はぁ……」

ルビィ「どうしたの? 元気ないね」

善子「あ、ルビィ……」

ルビィ「また曜さん?」

善子「……ええ」

ルビィ「善子ちゃん、曜さんと付き合い始めてから曜さんのことばっかりだね」

善子「そうかしら?」

ルビィ「花丸ちゃんと三人で出かけようって約束したのに全然行けてないよ」

善子「あぁ、そんな約束したような気もするわ」

ルビィ「花丸ちゃんずっとケーキ我慢してるんだよ。善子ちゃんと食べるまで我慢って」

善子「それ、ルビィじゃない?」
0359名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:24:55.69ID:Cn1blU3f
ルビィ「花丸ちゃんだよ。ルビィを食いしん坊にしないで」

花丸「誰が食いしん坊って?」

ルビィ「ピギィ!?」ビクッ

花丸「善子ちゃんはマルたちより曜さんの方が大切なんだよ。分かってあげようよ」

善子「二人のことも大切よ。ちょっと後回しにしちゃったのは謝るわ」

ルビィ「本当に悪いと思ってる?」

善子「思ってるわよ」

ルビィ「じゃあ今度の土曜日、ルビィたちにケーキおごってよ」

善子「え? それは無理」

ルビィ「何で!? その日も曜さんとデートとか言うの?」

善子「その日は……デートよりも大切な日なの」

花丸「デートよりも……?」

ルビィ「ってことは……」

善子「あー、勘違いしないでよね。二人が想像してるようなのはないから」

ルビィ「結婚式かなぁ」

善子「ないわよ」

花丸「ウエディングドレス、とっても似合ってたよ」

善子「あれはただのコスプレだから」

ルビィ「ルビィもウエディングドレス着たい!」

花丸「マルも……ちょっとだけ興味あるかな」エヘヘ

ルビィ「曜さん、ルビィたちとも撮ってくれるかなぁ」

善子「やめなさいよ。絶対喜びそうだわ」

花丸「でもお金かかるよね。ドレスのレンタル代だって安くないんじゃないかな」

善子「そういえばいくらかかったのかしら……。曜さんが出したから知らないわね」

花丸「善子ちゃん、曜さんに出させてばかりじゃダメだよ」
0360名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:25:23.21ID:Cn1blU3f
ルビィ「そうだよ。たまには善子ちゃんがおごってあげたら?」

善子「そういえばそうね。いつも出してもらってばかりで……」

ルビィ「ルビィたちにもさぁ」

花丸「ルビィちゃん」

善子「分かったわ。日曜日でよければご馳走してあげる」

ルビィ「みんなに? 善子ちゃん太っ腹!」

花丸「みんなってマルも?」

善子「ちょっと待って。ルビィとずら丸だけよね? いくらお小遣いが増えたからってそんなに何人もご馳走できないわよ」

花丸「お小遣い増えたの?」

善子「この前のテストで頑張ったからかしらね。特にお願いはしてないんだけど、いつの間にか増えていたわ」

ルビィ「いいなぁ……」

善子「ルビィはお小遣いなんていらないでしょ」

花丸「たいていのお店は顔パスできたりして」

ルビィ「それ使うとお姉ちゃんにバレるんだよ。何でだろう?」

善子「そりゃ家に請求が行くし……」

花丸「ルビィちゃん、カードとか持ってないの?」

ルビィ「カード? 電子マネーなら持ってるよ」

善子「それ使えばいいじゃない」

ルビィ「いつどこで何を買ったのかお姉ちゃんにバレるんだよ」

花丸「うーん、自由には使えないんだね」

ルビィ「鞠莉さんみたいにブラックカードがあればなぁ」

善子「えっ、鞠莉さんブラックカード持ってるの!?」

ルビィ「それか、小切手をさらさらーっと」カキカキ

花丸「高校生でそんなの持ってて大丈夫なのかな……」

ルビィ「はい、一千万円」つ
0361名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:25:50.77ID:Cn1blU3f
善子「いや、ルビィの家だと本当に効力ありそうだからやめて」

ルビィ「現金があれば何でも欲しいものが買えるのに」グシャ

花丸「ルビィちゃんがお金に物を言わせるような子だったら嫌かも」

善子「友達やめるわね」

ルビィ「酷いっ!」ポイッ

ゴミ箱「」ストッ

善子「まあいいわ。日曜日空けておいてね」

花丸「本当におごってくれるの?」

善子「ええ。但し一人五百円まで」

ルビィ「五百円……」

善子「何よ。不満なら自分で足しなさい」

花丸「お店はマルたちが決めてもいい? ルビィちゃんと話してたお店があるんだ」

ルビィ「あー、あそこね! 善子ちゃん絶対好きそう」

善子「私の知ってるお店?」

ルビィ「どうだろう? 最近できたばかりだからルビィは初めてなんだけど」

花丸「マルもないよ。一人でああいうお店行くのは勇気がいるよね……」

善子「私も今から楽しみだわ」フフッ

……

……

 放課後

 プール

善子(……)

曜「……」バシャ バシャ

曜「はっ……」バシャ

曜「ふぅ……だいぶ形にはなってきたけど、まだまだだな」ザバッ
0362名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:26:23.17ID:Cn1blU3f
善子「やっぱり、ここにいたのね」

曜「あ、善子ちゃん。おはよう」

善子「もう夕方よ」

曜「放課後の練習行けなくてごめんね。みんな怒ってなかった?」

善子「風邪引いたなんて言うからみんな心配してたわよ」

曜「ごめん。騙すつもりはなかったんだよ」

善子「何も学校休んでまで練習しなくても……」

曜「もう明日でしょ。最後の追い込みをしようと思ってね」

善子「また内申が悪くなったわ」

曜「私、欠席だけはしたことないんだ」

善子「……こんなことのために皆勤賞捨てたの?」

曜「こんなことって」アハハ

善子「あ……いや、ごめんなさい。私が無理言ってお願いしたのよね」

曜「ううん。善子ちゃんのためじゃないよ」

善子「……」

曜「やるからには中途半端な勝負はしたくない。今の自分を全部出し切って、それで負けたなら仕方ないけど」

曜「努力もしないで負けるなんて、そんなのカッコ悪すぎるもん」

善子「朝起きて曜さんの姿がなかったとき、きっとプールだろうなとは思ったわよ」

曜「ごめんね。声かければよかったかな」

善子「かけてたら学校休ませてない」

曜「だよね。声かけなくてよかった」

善子「……」

曜「今日一日練習してね、だいぶコツが掴めてきたというか……タイムの出し方を思い出してきた感じがするの」

善子「よかったじゃない」

曜「これでも日頃から運動はしてたからね。体力が落ちてなかったのが幸いかな」
0363名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:26:52.11ID:Cn1blU3f
善子「あまり無理しないでね」

曜「ん?」

善子「私が言うことじゃないか。でもママも心配してたから」

曜「ママにまで心配かけてたんだね私……」

善子「昨日の夜、曜さんフラフラだったじゃない」

曜「ちょっと頑張りすぎちゃってさ」アハハ

善子「いつもこのくらい頑張ってくれればね……」

曜「ママと同じこと言ってる」

善子「ママにも言われたの?」

曜「ううん。何でもないよ」

善子「……」

曜「さてと、休憩終わり!」

善子「待って。差し入れ持ってきたから……」ガサゴソ

曜「わざわざ? 何だか悪いなぁ」

善子「はい、飲み物とカロリーメイト」つ

曜「フルーツ味! 私フルーツ味好きなんだよね」エヘヘ

善子「どうぞ。溢さないように気をつけなさいよ」

曜「うん」パクッ

善子「……」

曜「……」モグモグ

善子「水泳、やっぱり楽しいでしょ?」

曜「どうかな」

善子「いい笑顔してるわ」

曜「そう? ありがと」パクッ

善子「やっぱり曜さん、本当は水泳やりたいんじゃない?」
0365名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:28:15.64ID:Cn1blU3f
曜「たまにはいいかもね」モグモグ

善子「ええ」

曜「……」モグモグ

善子「プールから出ると甘い物が食べたくなるわよね」

曜「何でだろうね? あと塩っぱいものも食べたくなる」

善子「それだけ汗をかいてるってことなのかしら」

曜「……」

善子「何かぼーっとしてるわね。疲れたなら帰ってもいいのよ」

曜「ううん」アハハ

善子「明日に備えて、今日はもう終わりにしたら?」

曜「せっかく来たんだし、善子ちゃんも泳ごうよ」

善子「え? 私はいいわよ」

曜「水着、持ってきてないの?」

善子「一応持ってはいるけど……どう見ても曜さん、疲れてるわよね」

曜「気分転換にさ、善子ちゃんに教えてあげるよ」

善子「……」

曜「嫌かな」

善子「いいの?」

曜「元はといえば善子ちゃんが水泳教えてって言うから来たんだよ。なのに私の練習に付き合わせちゃってるだけじゃん」

善子「私は楽しそうに泳ぐ曜さんを見られればそれでいいのよ」

曜「そんなに楽しそうに見える?」

善子「昨日泣きべそかいてたのが嘘みたいにね」

曜「あはは。昨日のは……恥ずかしいから忘れてほしいな」カァアア

善子「忘れないわ」

曜「いじわる」
0366名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:28:43.21ID:Cn1blU3f
善子「じゃあ私、着替えてくるから……」

曜「一人で着られる?」

善子「当たり前よ。もう何回も着てるんだからさすがにね」

曜「トイレも行ける?」

善子「行けるわよ!」

曜「そっか。成長したね」

善子「泳ぎの方だってかなり成長したわよ。ここ何日かはあんまり教わってないけど、八レーンでずっと練習してたから」

曜「たまにチラッと見てたけど可愛かったよ」アハハ

善子「可愛いって言えば何でも許されると思ってるでしょ……」

曜「明日終わったらさ、善子ちゃんの気が済むまで教えてあげるね」

善子「勝ったらね」

曜「負けても教えてあげるよ」

善子「勝った方に教わるわ」

曜「教えてくれるなんて約束したの?」

善子「してない。でも私には分かるの、一見いじわるだけど本当は優しい人よ」

曜「……」

善子「浮気じゃないから」

曜「それは分かってるよ。ただ……」

善子「何」

曜「教わってるうちに好きになったら困るなって」

善子「ないわよ」

曜「分かんないよ? あの子、キスすごい上手だから……もしかしたら善子ちゃんも」

善子「何で上手って分かるのよ」ジロッ

曜「中学の時……その、無理やりされたのに私」カァアア

善子「だああ!! 聞きたくないってば!!」バッ
0368名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:30:08.71ID:Cn1blU3f
曜「私のことも好きでいてよね?」

善子「何言ってるのよ。曜さんのことが好きなんだもの、他の人なんて好きにならないわ」

曜「うん。何だか元気が出てきたよ」

善子「よかったわね。それじゃ、私は着替えてくるから」スタッ

曜「行ってらっしゃい」ノシ

……

 トイレ

善子(ふぅ……)スルッ

善子(学校休んだって聞いて心配したけど、元気そうでよかったわ)

善子(でも皆勤賞を逃したのはもったいないわね。私のせいで……)

チョロロ

善子(曜さん……また水泳やってくれるかしら)

チョロロ

善子(……)

「くんくん……これは善子ちゃんの匂いだな」

善子「よ、曜さん? 恥ずかしいからやめてよ」

「着替えるって言うから更衣室に行ったのかと思った」

善子「先にトイレに行っておこうと思ったの」

「……」

善子「曜さんもトイレ?」

「開けてよ」

善子「嫌よ。他の個室空いてるじゃない」

「他が空いてなかったら開けてくれるのかな」

善子「開けない。空くまで待つのね」

「漏らしたら責任取ってくれるの?」
0369名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:30:42.43ID:Cn1blU3f
善子「取るわけないでしょ。そもそも早めに行かなかった自分が悪いんだもの」

「プールの中だと尿意を忘れるって言うかさ……ふと気づいたときにはもう限界だったりするじゃん?」

善子「気持ちは分かるわ」

「分かる? じゃあ開けて」グイ

善子「開けない。何回も言わせないで」

「ふーん? だったら私も開けない」

善子「ふぅ……」フキフキ

「……」

善子「……」クイ

ジャー

「終わった?」

善子「ええ。お待たせ」グッ

善子「?」グッ

「……」

善子「ちょっと! 開けなさいよ」グイ

「開けないって言ったよね?」

善子「は? いいからそこ退いて」グイ

「退かないよ」

善子「ねぇ、私出られないんだけど?」

「出なくていいよ。ずっとそこにいれば」

善子「何でよ」

「善子ちゃんだって開けてくれなかったし……」

善子「あのねぇ、普通は誰かが使ってる個室には入らないのよ?」

「普通はね。でも私たち恋人でしょ」

善子「恋人とか関係ないから。個室って意味分かってる? 一人用の部屋のことよ」
0370名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:31:10.08ID:Cn1blU3f
「じゃあそこが善子ちゃんの部屋だね」

善子「私が使っているときはね。もう終わったから開けて」

「開けない」

善子「しつこいわね……。どうして今日はこんなにわがままなのよ」

「私いつもわがままだもん」

善子「いつにも増してわがままよ」

「だって……」

善子「いいから開けてよ。練習するんでしょう?」

「……」

善子「はぁ……。分かったわ、何が望みなの」

「……」

善子「私のおしっこ? 見ての通りたった今したばかりよ」

「……」

善子「まさか、次にしたくなるまでここを開けないつもり?」

「もう無理……」グスッ

善子「え?」

「本当に無理なんだよ……」ポロポロ

善子「ど、どうしたのよ急に。泣いてるの?」

「……」グスッ

善子「あの……」

「善子ちゃんが開けてくれなかったからだよ……」

善子「ん?」

「あ……」

チョロロ

善子「えっ」
0371名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:31:36.87ID:Cn1blU3f
「やだ……誰か来たら見られちゃう」

ジョボボ

善子「ちょ、ちょっと! そんなところでしないで!」

「ぐすっ……」

ジョボボ

善子「このっ……!」ドンッ

「きゃっ」フラッ

ゴッ!

善子「あっ……大丈夫?」

「」

善子「開けるわよ?」キィ

曜「」

善子「曜さんが開けないのが悪いんだからね? ほら、早く立って……」スッ

曜「」

善子「もしかして気絶してる?」ユサユサ

曜「」ショワァ

善子「わっ、寝ながらしないでよ! 私にかかってるってば!」

曜「」チョロロ

善子「あーもう! 面倒くさいったらありゃしないわ」グイッ

キィ

バタンッ

善子「はぁ……」スッ

ガチャリ

善子「ほら、座って」グイッ

曜「」ストンッ
0372名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:32:03.54ID:Cn1blU3f
善子「これはずいぶん派手にやらかしたわね……」

善子「とりあえず起きなさいよ」ユサユサ

曜「」

善子「寝たふりしても無駄よ。その手には乗らないんだから」ペチペチ

曜「」

善子「私に拭けって? ううん、曜さんが自分でやるべきだわ」

キィ

「ふぅ……トイレトイレ」

善子(だ、誰か来た)

「ん?」

善子「……」ドキドキ

「うわ、これ……誰か漏らしたのかな」

善子(私じゃないわよ! 漏らしたのは曜さんで……)

「まあいいや。そのうち誰か片付けるでしょ」ガチャ

バタン

善子(よりによって隣!? 他にも個室空いてるのに……)

チョロロ

「はぁぁ……♡」

善子「……」カァアア

ジョボボ

「気持ちいい……♡」

善子(独り言やめて! 聞いてるこっちが恥ずかしいわ!)

ジョボボ

「そういえば明日は曜と勝負かぁ」

善子(えっ?)
0373名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:32:43.32ID:Cn1blU3f
「私が勝ったら何でも言うこと聞いてくれるんだっけ」

ジョボボ

善子(もしかして……あの人?)

「って言われてもなぁ。今更曜に用なんてないし」

善子(曜に用……)クスッ

ジョボボ

「恋人の前で負けるなんて可哀想だし、手加減してやるかな」

善子(えっ?)

「あの子何て名前だっけ……」

善子(ちょ、ちょっと? 手加減ってまさか、わざと負けるってこと?)

「よ、よ……」

善子(ふざけないで! あなたそれでも現役の選手なの!? プライドとかないわけ!?)

「よし……よし何とかちゃんだった気がする」

善子(待って。真面目に勝負してくれなきゃ意味がないじゃない……)

「よしえちゃん! そうだ、思い出した。よしえちゃんだ!」

善子「ヨハネよ!」

「……え?」

善子(やばっ……!? いつものクセで)

「そうそう! ヨハネちゃん! 思い出したわ」

善子(私が隣ってバレた!? ってことはそこのお漏らしも私ってことに……)カァアア

「何で曜なんかと付き合ってるんだろ? もったいないなぁ」

善子(余計なお世話よ! 私が誰を好きになろうと私の自由でしょう?)

「もっといい人たくさんいるのになぁ」

善子(うるさいわね……)

「私とか」カァアア

善子「へっ?」
0374名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:33:13.77ID:Cn1blU3f
「やば。隣誰かいるんだった」

善子(……もしかしてバレてない?)

「ふぅ……」フキフキ

善子(何なのよこの人! もういいから早く出て行って!)

「明日、ヨハネちゃんも来るのかな」

善子(ええ、行くわ。だからあなたは早く出て行って)

「ヨハネちゃん」

善子(今度は何よ)

「ヨハネちゃん。可愛い名前」フフッ

善子(か、かわ……)カァアア

「どんな字書くのかな。夜に羽かな」

善子(ええそうよ。って何で分かるのかしら……)

「さてと、私も行かないと」スタッ

ガチャ

善子(やっと行ってくれたわね……)ハァ

「これ……」

善子(……)

「曜? もしかしてそこにいるのって曜なの?」

善子(違います!)

「さっきの独り言聞いてた……?」

善子(聞いてた! でも安心して、曜さんは気絶してるから!)

「……」

善子「……」

「開けるよ……」クイ

善子(は!?)

グッ

「開かない? 曜じゃないのか……」
0375名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:33:41.12ID:Cn1blU3f
善子(何その判別方法)

「えーと、誰か分からないけどごめんなさい。友達と間違えたんです」

善子(友達……)

「部屋の前のこれ……あなたの?」

善子(違う! って言うかもういいでしょ? 早く行ってよ……)

「……」

善子(ねぇ本当にいつまでいるのよ! これじゃ出られないわ)

コンコンッ

善子(ひいっ!?)ビクッ

「大丈夫? さっきから返事がないですけど……」

善子(返事したくないのよ! そのくらい察して!)

「あのっ、体調悪いんですか? 救急車呼びますか?」

善子(えっ)

「すみません、開けますね」グイ

善子(無理よ、鍵はちゃんと掛かってるわ)

「ふんっ!」ドンッ

善子(わぁ!? 何こじ開けようとしてるのよ!)

「とりゃっ!」ドシンッ

善子(いやいや、やめなさい! やめなさいってば!)

「このっ! いい加減に! 開けよ!!」ドンッ! バンッ!

善子(こ、このままじゃドアが壊れるわ……)

「くそっ、ダメだ……全然開かない」ハァ

善子(危なかった……)ハァ

「……」スッ

善子(そうよ、諦めてさっさと行きなさい)
0376名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:34:07.59ID:Cn1blU3f
「もしもし? ええ、救急車をお願いしたいんですけど」

善子「っておぉい! やめなさい!!」ガチャ

「え?」

善子「私よ! 中にいたのは私!」

「えっと……体調は大丈夫? 今救急車呼ぶから……」

善子「呼ばなくていいから! この通りピンピンしてるし!」

「あ……やっぱり大丈夫みたいです……。はい、すみませんでした……」ピッ

善子「はぁ……危なかったわ」

「隣にいたの、ヨハネちゃんだったんだ……」

善子「返事をしなくてごめんなさい。まさか通報するとは思わなくて……」

「私の方こそしつこくてごめん。あれじゃ返事したくても恥ずかしくてできないよね」

善子「ええ、まあ……」チラ

善子(曜さんにはまだ気づいてないみたいね……)ホッ

「ヨハネちゃんはどうしてここに? ってトイレに決まってるか」

善子「そうよ。トイレに決まってるわ」

「今日も曜と一緒?」

善子「え? きょ、今日は一人よ。その……自主練をしようと思って」

「そうなんだ。少しは泳げるようになった?」

善子「少しはね。まだ一人じゃうまく泳げないんだけど……」

「じゃあ私が教えてあげる」

善子「いいわよ」

「今のはどっちの『いいわよ』かな? 承諾? それとも拒絶?」

善子「遠慮」

「いいわよ」

善子「……」
0377名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:34:34.44ID:Cn1blU3f
「ヨハネちゃんの真似」アハハ

善子「全然似てないわね」

「うん。とりあえず出ておいでよ。もう服は着てるんでしょ?」

善子「ええ、着てるわ」

「これ、片付けるの手伝ってあげるから」

善子「あっ……」

「間に合わなかったんだよね。大丈夫、曜もよくやるから」

善子(何で人前で漏らしてるのよ!)

「蛇口にホース繋いでそのまま流すだけなんだけどね」ガサゴソ

善子「……」

「ほら、出ておいでよ」

善子「自分で片付けるからいいわ。もう行って」

「遠慮しないで」

善子「遠慮はしてない」

「じゃあ何」

善子「……恥ずかしいからに決まってるでしょう」

「……」

善子(私のじゃないのに……!)カァアア

「そっか。じゃあ……行くね」

善子「ええ。その……気持ちは嬉しいわ。ありがとう」

「私のこと好きになっちゃう?」アハハ

善子「勝手に言ってなさい」

ギィ

バタンッ

善子「ふぅ……やっと行ってくれたわ」ガチャ
0378名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:35:02.36ID:Cn1blU3f
「喰らえっ!」クイ

ジャー!

善子「きゃああ!!?」

「あはは! 引っかかった!」

善子「も、もう! 行ったんじゃなかったの!?」

「ってあれ? ヨハネちゃん水着じゃない……」

善子「あぁ……もう! 下着までびっしょりよ!」

「ごめん! てっきり水着だと思って……」

善子「もういいから……早く行って」シッシッ

「本当にごめんね? 代わりの着替えある?」

善子「ないわよ! 帰りまでに乾くかしら……」

「私のでよければ貸すよ! 大丈夫、曜と違って胸が小さいからヨハネちゃんでも着られるよ」

善子「余計なお世話!」

「……」

善子「はぁ……」

「このあと泳いでいくんだよね?」

善子「ええ。水着に着替えて、その間に服は干しておくわ」

「お詫びになるか分かんないけど……今日は私が水泳教えてあげる」

善子「え? お詫びなんていいわよ」

「お願い。私にはそれくらいしかできないから……」

善子「本当に気にしないで。次やったら怒るけど」

「だけど……このままじゃ私が曜に殺されちゃうよ」

善子「いや、殺しはしないでしょ……」

「ヨハネちゃんなら殺す?」

善子「殺さない。冗談でも殺すとか言わないで」
0379名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:35:31.09ID:Cn1blU3f
「えぇ……」

善子「何よ」

「いや、何でもないよ? 曜は優しいからそこまでしないだろうけど……」

善子「大丈夫よ、あなたにやられたってことは言わないから」

「……」

善子「あなたも余計なこと言わないでよね?」

「うん」

善子「はい、もう終わり。片付けは……もう十分流れたみたいね。私も手を洗ったら行くから」

「……」

善子(とりあえずドアは閉めて……っと)キィ

善子(まさか中を覗いたりしないわよね?)チラ

「やっぱり教えさせて。ヨハネちゃん、絶対筋がいいと思うし……すぐ泳げるようになると思う」

善子「はいはい。ありがとう」クイ

ザー

「……」

バシャバシャ

善子「明日あなたと勝負した後、曜さんがまた教えてくれることになってるから」

ゴシゴシ

「じゃあ今日だけ」

善子「……」クルッ

「……」

善子「私、これでも曜さんの恋人なのよ? 気持ちは嬉しいけれど遠慮するわ」

「あの……そうじゃなくて」

善子「私のこと好きって言ってくれるのは正直嬉しい。でもごめんなさい」

「そうじゃなくてね?」
0381名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:37:05.56ID:Cn1blU3f
善子「分かったらもう行っていいわよ」クルッ

ザー

「下着、見ちゃったから」

バシャバシャ

善子「え? 何?」

「ヨハネちゃんの下着……見ちゃったから」

キュッ

善子「何か言った? 水の音で聞こえなかったわ」フキフキ

「ヨハネちゃんの下着!!」

善子「私の下着がどうしたのよ」

「か、鏡見てみなよ……」

善子「え……」クルッ

鏡「……」スケスケ

善子「う、嘘」カァアア

「意外と派手な下着なんだね。でも似合ってる」

善子「早く言いなさいよ! バカ!!」バンッ

「わぁあ!? だからごめんってば!」

善子「曜さんに言いつけてやるわ! あなたにホースで水かけられて下着見られたって!」

「言わないで! 水泳教えてあげるから!」

善子「曜さん怒るでしょうね!? 土下座したって絶対許してくれないわよ!」

「ひぇ……」ビクビク

善子「まさか私が制服って知っててわざと……?」

「ない! ないよ!! 曜じゃないんだから!」

善子「……」ジー

「……」ビクビク
0382名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:37:32.54ID:Cn1blU3f
善子「それもそうね」

「うん……。落ち着いた?」

善子「まあ、どうせ更衣室で見られてるんだし……いいわよもう。曜さんには言わないであげる」

「本当?」

善子「ええ。だからあなたも絶対に余計なこと言わないで。約束よ」

「約束」

善子「分かったらもう行ってよね。練習に戻らなきゃいけないんじゃないの?」

「えっ? あぁ!! 早く戻らないと怒られちゃう!」ダッ

善子「走ると危ないわよー」

「ありがと! じゃあまたね!」ノシ

善子「はいはい」ノシ

ガチャ

バタンッ

善子「……」

善子「はぁ……。本当に疲れたわ」

善子「何なのよあの人……曜さんと同じくらい自分勝手ね」

「そうだよ。あの子は昔からああいう子だよ」

善子「そうなの? 曜さんの周りって本当に変な人ばっかり」

「まあね」アハハ

善子「……ってええ!!?」ガタッ

ギィ

曜「あの子には気をつけないとダメだよ」

善子「い、いつから起きて……」

曜「すごい音で誰かがドアを壊そうとしてくるんだもん。さすがに気がつくよ」

善子「どうして教えてくれなかったのよ!」
0383名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:38:14.54ID:Cn1blU3f
曜「空気を読んで黙ってたんだよ。善子ちゃんも私と個室で二人きりだったなんて知られたくないでしょ?」

善子「それはそうだけど! おかげでドアの前で私が漏らしたことになっちゃったじゃない!」

曜「これに懲りたら次からはすぐにドア開けてね?」

善子「はぁ!? 何で私のせいになるわけ!?」

曜「善子ちゃんがドアを開けてくれてさえいれば、こんなことにはならなかったんだよ」

善子「結果的にはね! でも元はと言えば曜さんが早めにトイレ行かなかったのが悪いわ」

曜「やっぱり私の言った通りになったか」ハァ

善子「何よ、言った通りって」

曜「あの子に関わるとろくなことがないよ。前に言ったよね?」

善子「そんなの聞いてない」

曜「じゃあ今言うね。あの人とはもう喋らないで」

善子「何よ、ヤキモチ?」

曜「……」

善子「あの人、曜さんに勝ったときのお願い決まったみたいよ」

曜「何かな」

善子「私とデートしたい、ですって」クスクス

曜「……」

善子「もちろんいいわよって言ったわ。曜さんが負けるはずないものね?」

曜「わ、私……」

善子「あっ、一日だけって言うの忘れたわ……。もしこの先ずっとって言われたらどうしよう」

曜「……」

善子(ふふ……。そんなこと言われてないわよ)ニヤニヤ

曜「私……行かなきゃ」

善子「え? 私に水泳教えるんじゃ……」
0384名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:38:49.70ID:Cn1blU3f
曜「ごめん、そんな時間ない」タッ

善子「何よ! 曜さんが教えないならあの人に教わるわよ!」

ガチャ バタンッ

善子「……」

善子(まあ、本気になってくれたならいいか……)フゥ

……

 プール

曜「はぁっ、はぁ……」ザバッ

曜(こんなんじゃ勝てっこない。かなりタイムは縮まってきたとはいえ相手は全日本強化選手……)

曜「くそっ!」パーン!

曜「いったぁ……」ヒリヒリ

「あれ? 曜いたの?」

曜「あっ……ひ、久しぶりだね」

「ヨハネちゃん、一人で練習しに来たみたいだよ」

曜「そ、そうなんだ? 知らなかったよー」アハハ

「曜が教えてくれないからって一人で来たみたい」

曜「……」

「私が教えてあげるって言ったんだけどね……」

曜「やめてよ」

「何で? あの子、かなり筋がいいと思うよ。私が教えればすぐ泳げるようになるんじゃないかな」

曜「善子ちゃんには手を出させないから」

「手を出すって……。本当にそういう目では見てないってば」

曜「そんなことどうでもいい!」

「……どうでもいいの?」

曜「いや、よくはないかな……。でも今はそれどころじゃないよ」
0385名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:39:19.00ID:Cn1blU3f
「というと?」

曜「……」

曜「とにかく、善子ちゃんには私が教えるって約束したから」

「だったら教えてあげなよ」

曜「い、今はその」

「明日の勝負のため?」

曜「そうだよ。善子ちゃんの前でカッコ悪い負け方だけはできない」

「ふーん……」

曜「もういい? 私これから練習しないとなんだ。さすがの私でも一年のブランクは厳しいから」

「……」

曜「……」ザバッ

バシャバシャ

……

 更衣室

善子「はぁ……。こんなにびしょ濡れで乾くわけないわね」

善子「気持ち悪いけど帰りもこれ着るしかなさそう」

善子「……」

善子(曜さんに着替えを取りに行かせようかしら?)

善子(そうよ、元はと言えば全部曜さんのせいだもの)

善子(とりあえず着替えましょうか)ハァ

シュルッ

善子「……」

トスッ

善子「……」

善子(本当に下着までびっしょりね)
0387名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:40:52.93ID:Cn1blU3f
ヌギッ

善子(濡れて……引っかかって脱ぎづらいわ)グイ

善子「っと! 危ない」フラッ

善子「……」ハァ

善子(さすがに下着は干しておけないわね……)

鏡「……」

善子「きゃっ、誰っ!?」ビクッ

鏡「……」

善子「鏡か」フゥ

善子「……」ガサゴソ

善子(この水着もすっかり馴染んできたわね)

善子(最初は一人で脱ぎ着できなかったけれど……)スッ

スルッ

善子(慣れれば簡単なものだわ)

シュルッ

善子(帽子を被って)グイ

善子(ゴーグルもつけて)キュッ

鏡「……」

善子(こうして見ると本当に選手になった気分)クルッ

鏡「……」クルッ

善子(曜さんみたいに泳げたら気持ちいいでしょうね)

鏡「……」

善子(このまま教われば私も泳げるようになるかしら……)

鏡「善子ちゃん」

善子「何よ」
0388名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:41:20.48ID:Cn1blU3f
鏡「『鏡が喋った!』って驚かないんだね」

善子「赤ちゃんじゃないんだから……」

鏡「……」

善子「着替えなら見ての通り終わってるわ。わざわざ来なくてもよかったのに」

「その水着、似合ってるよ」

善子「え? あぁ、うん。最初は脱ぎ着しにくいって思ったけど泳ぐのにはいい感じだわ」

「曜がくれたの?」

善子「ん? 自分でくれたのに忘れるって……」クルッ

「あれ? もしかして曜だと思った?」

善子「またあなたなの? いい加減しつこいわね……」

「声で気づかないなんて、曜が聞いたら泣くよ」

善子「帽子とゴーグルのせいで聞こえづらいのよ。仕方ないわ」

「そっか。言われてみればそうだ」アハハ

善子「練習はいいの?」

「えっと……うん、それよりもさ」

善子「……?」

「水泳、本気でやってみる気ない?」

善子「は?」

「ほら、ヨハネちゃんって絶対筋がいいし……興味もありそうだし、どうかなって」

善子「……」

「曜なんかに教わるよりずっと上手くなるよ」

善子「曜さんのこと悪く言わないで」

「あぁ、そういう意味じゃないよ。ちゃんとプロのコーチに教わった方がいいって意味」

善子「……」

「ヨハネちゃん、全然運動してないでしょ? 水泳なら運動不足の人でも体を傷めにくいし……」
0389名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:42:57.23ID:Cn1blU3f
善子「……やっぱり私太った?」プニ

「え? ごめん、この前会ったときと同じかな」

善子「あ、いえこっちの話よ」カァアア

「間違ってもダイエットなんてしちゃダメだよ。今だって痩せすぎなくらいなんだから」

善子「痩せすぎってことはないわよ。見ての通り……筋肉がないだけで」

「そう。水泳なら全身にバランスよく筋肉が付くし、無理せず自然と体力も付くからヨハネちゃんにピッタリだと思う」

善子「通信教育の漫画みたいなことを言うのね」

「まあ、急に決めろなんて言わないよ。もし興味があったらどうかなって話」

善子「私、選手になんてなれないわよ?」

「ヨハネちゃん、選手になりたいの? それはそれで歓迎するけど……」

善子「え? 選手に誘ってるのかと思ったわ」

「まさか。いきなりあんな厳しい練習したら水泳なんて嫌いになっちゃうよ」

善子「そんなに厳しい?」

「まあね。特に私みたいに強化選手にもなるとね……」

善子「……」

「たまにね、もう水泳なんてやめちゃいたくもなるんだ」アハハ

善子「そう……」

「明後日、ここで水泳教室の無料体験やってるからさ。水着と帽子とゴーグルさえあれば本当に無料だからぜひ!」

善子「え? そうね、無料なら来てみようかしら……」

「うん! 待ってるからね」ノシ

善子「ええ」ノシ

「それじゃ、私は行かないと」タッ
0390名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:43:28.80ID:Cn1blU3f
善子「……」

善子(水泳かぁ……。学校の授業では楽しいなんて思ったことなかったけれど)

善子(ちょっとやってみるのもいいかも……)

善子(日曜日ね、どうせ曜さんと来るなら曜さんも一緒に)

善子(……)

善子(曜さんはバリバリ泳げるから対象外かしら?)フフッ

……

……

 夜

 善子の家 リビング

善子「ただいまー」

善子ママ「あら、お帰り。どう? 練習の方は」

善子「まあまあってところね。もう少しで泳げるようになりそう」

善子ママ「え? 曜ちゃんのことよ」

善子「あぁ、うん。曜さんは……相変わらずいいペースでタイムを縮めてるわ。明日、本当に勝てちゃうかも」

善子ママ「そう……」

善子「相手も本気で勝負してくれるといいんだけど」

善子ママ「相手の子って……確か全日本強化選手に選ばれてる子よね」

善子「そうよ。よく知ってるじゃない」

善子ママ「中学の時、曜ちゃんに次いでいつも準優勝していたから」

善子「でも曜さんに勝ったことは一度もないって言ってたわ」

善子ママ「……」

善子「何よ。今回は負けるかもしれないって? そんなの私だって分かってるわ」

善子ママ「善子、どうしてこんなことするのよ……」

善子「決まってるでしょ? 曜さんにもう一度水泳をやってもらうためよ」
0391名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:44:58.20ID:Cn1blU3f
善子ママ「ねぇ、前にも言ったけれど……それは本当に曜ちゃんが望んだことなの?」

善子「な、何よ。そんなの本人じゃなきゃ分からないわ。曜さんですら迷ってるみたいだし」

善子ママ「……」

善子「だから明日、本気で勝負をしてもらうのよ。勝っても負けても、曜さんはもう逃げられないわ」

善子「水泳をやるのかどうか……ううん、やりたいのかどうかがはっきりするはず」

善子「って、もう曜さんの中では答えが出てるかもしれないわね」

善子ママ「答え?」

善子「私があんな無茶なお願いしたのに、練習してる曜さんはいつになく真剣な顔して、それでも楽しそうで……」

善子「やっぱり曜さんは水泳をやるべきなのよ」

善子ママ「……」

善子「あ、それとね。今度の日曜日に水泳教室の無料体験があるらしいの。曜さんと参加してみてもいい?」

善子ママ「え? いいけど……」

善子「一応未成年だから保護者に申込み書を書いてもらわないといけないのよ。ここ、サインしてくれるかしら」サッ

善子ママ「水泳、やりたいの?」

善子「教室に通わせてだなんて言わないわよ。お金もかかることだし」

善子ママ「ううん。善子はやりたいの?」

善子「興味はあるわ」

善子ママ「そう。それじゃ私も見に行こうかしらね」
0392名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:45:25.72ID:Cn1blU3f
善子「え? ママは来なくていいってば」

善子ママ「そういうわけにはいかないわよ。もし入会するとなったら詳しい話を聞かないといけないもの」

善子「まだ決まったわけじゃ」

善子ママ「それに、善子が泳ぐところを見てみたいから」

善子「……」

善子ママ「ここにサインをすればいいのね?」

善子「ええ。お願い」

善子ママ「……」カキカキ

善子ママ「はい」つ

善子「ありがと。もう一枚書いてもらってもいいかしら」

善子ママ「どうして?」

善子「こっちは曜さんの分よ」

善子ママ「曜ちゃんのも私が書くの?」

善子「大人なら親じゃなくてもいいのよ」

善子ママ「うーん……。曜ちゃんからお母さんにお願いするべきじゃないかしら」

善子「……」

善子ママ「善子が曜ちゃんの名前を勝手に使って申し込まないとも限らないし」

善子「そんなことしないわよ」

善子ママ「本当?」

善子「本当よ」
0393名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:45:52.47ID:Cn1blU3f
善子ママ「じゃあ信じるわ。明日出すには今日書かないと間に合わないものね」カキカキ

善子「ありがと、ママ」

……

……

 次の日 土曜日

 プール前

善子「ったく遅いわね……」イライラ

善子「まさか逃げたんじゃないでしょうね?」

「おはよう、ヨハネちゃん。今日も練習?」

善子「え? 曜さんを待ってるのよ。あなたも今日は本気でお願いね」

「……」

善子「何よ、本気出さなくても勝てちゃう?」

「いや……」

善子「だとしても本気でやって。そうじゃないと意味がないわ」

「……」

善子「勝ったら曜さんが何でも言うこと聞くって約束よ。本気でやってよね」

「ヨハネちゃん……酷いことするね」

善子「……? あなたも何か知ってるの?」

「知ってるも何も……」

善子「曜さん、昔のこと何にも教えてくれないのよ。ママは何か知ってるみたいだったけど……」
0394名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:46:20.70ID:Cn1blU3f
「……」

善子「ねぇ、一体何があったのよ? 曜さんが水泳やめたことと何か関係があるんでしょう?」

「ヨハネちゃん、ごめん。もう行かなきゃ」タッ

善子「あっ、ちょっと! 待ってってば!」

タッタッ

善子「とにかく本気でやってよね! じゃないと言うことなんて聞かないから!」

善子「……」

善子「何なのよもう」

……

 プールサイド

曜「お待たせ! 寝坊しちゃったよ」タッタッ

善子「あ、やっと来たわ。ビビって逃げたのかと思った」

曜「まさかぁ」アハハ

「準備体操とウォーミングアップが終わったら声かけて。それまで練習してるから」

曜「う、うん……」

善子「忙しいのに無理言ってごめんなさい。助かるわ」

「えへへ」

曜「……」

善子「何ぼーっとしてるのよ。準備体操して始めるわよ」

曜「そ、そうだよね。ストレッチ手伝ってくれる?」
0395名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:46:48.00ID:Cn1blU3f
善子「もちろん」

曜「……」

善子「ほら、シャキッとしなさい!」

曜「負けても嫌いにならないって約束だよね」

善子「ならないわよ。本気でやって負けたならね」

曜「うん……」

善子「言っとくけど、私にバレないように程よく手を抜こうなんてやめてよ。曜さんの嘘なんてお見通しなんだから」

曜「分かってるよ」

善子「大丈夫、私が見てる限りかなりいい感じに仕上がってるわ。自信を持って」ポンポン

曜「……」

善子「……」

……

……

「準備はいい?」

曜「い、いつでも」

善子「頑張って。応援してるわ」

「確認しておくね。勝負は五十メートルプールを折り返しで百メートル。約束どおりハンデはなし」

曜「うん」

善子「二人とも、本気でやってよね。手を抜いたら本当に怒るから」

「こわ……」
0396名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:47:15.47ID:Cn1blU3f
曜「スタートの合図は……善子ちゃん、お願いしてもいい?」

善子「え? でも何も持ってないわよ」

「号砲の代わりに手を叩いてくれればいいよ」

善子「それならいいわ」

曜「すぅ……はぁ……」

善子「曜さん、緊張してるの? さっきから深呼吸ばっかりしてるわね」

曜「別に」

「頑張りなよ、恋人の前なんだから」

善子「そ、そうよ。負けたらタダじゃおかないわよ」

曜「すぅ……」

善子「じゃあいくわよ……」スッ

善子「位置について、用意……」

善子「……」パンッ

曜「……」

「……」

善子「聞こえなかった? もう一度やらせて」

善子「用意……」スッ

パンッ!

曜「っ!」ピョンッ

「……」ピョンッ
0397名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:47:47.56ID:Cn1blU3f
ザバッ

曜「はぁっ……」バシャ バシャ

「ふっ……」バシャ バシャ

善子(ふぅ……これでようやく)

曜「……」バシャ バシャ

「はっ……」バシャ バシャ

善子(中々いいペースね。ちょっと遅れてるけど、曜さんもついていけてるわ)

曜(速い……っ)バシャ バシャ

(嘘……ここまでついてくるなんて)バシャ バシャ

曜(負けられないよ……絶対に)バシャ バシャ

(本気出さないとヤバいかも……)バシャ バシャ

善子(もうすぐ折り返しね。ちゃんと二人とも真面目に勝負してくれてるみたい)

(ここまでは私の勝ち……このままいけば)クルッ

曜(まだ勝てる……!)クルッ

善子(残り半分ね。曜さんはここから追い上げられるかしら)

(悪いね、本気出さないとヨハネちゃんに怒られちゃう)バシャ バシャ

曜(……)バシャ バシャ

善子「ん? 曜さん……」

「くっ……」バシャ バシャ

曜「……」バシャ バシャ
0398名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:48:14.56ID:Cn1blU3f
善子「これなら勝てるかも……?」

「はぁっ……」バシャ バシャ

曜「……」バシャ バシャ

善子「頑張って! 曜さんなら勝てるわ!!」

(負けてっ……たまるか……!)バシャ バシャ

曜「……」バシャ バシャ

善子「もう少し! もう少しよ!!」

(こんなやつに! 私が!!)バシャ バシャ

曜「……」バシャ バシャ

善子「抜いた! やったわ曜さん!!」

曜「……っ!」ピトッ

「くそっ……!」ピトッ

善子「やったじゃない! 曜さん! まさか勝つなんて思わなかったわ!」ピョンピョンッ

曜「……」

「折り返してからは私も本気だったんだけど……まさか本当に負けるなんて」ハァ

善子「でも驚いたわ。折り返しから一度も息をしないなんて! すごい肺活量ね」

「えっ? まさか本当に……」

曜「勝ったよ……。善子ちゃん、約束通り……」フラッ

善子「ええ! 何でも言うこと聞いてあげるわ!」

「ヨハネちゃん、曜の様子が変だ」
0399名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:48:41.56ID:Cn1blU3f
曜「真っ暗で……何も」

善子「え……?」

曜「……」ザブッ

「曜! どうしたの!? ヨハネちゃん、手伝って!」グイ

善子「曜さん? どうしたのよ、そんなに嬉しいの……?」

曜「」

「これは……マズいかも」ザバッ

善子「しっかりしなさいよ。いくら嬉しいからって気絶しなくても」グイ

「医務室へ運ぼう。手伝ってくれるよね?」

善子「え? ええ……」

……

 医務室

曜「」グッタリ

先生「どうしたの? 顔色が悪いわよ……」

善子「ちょっと気絶してるだけよ。すぐ目覚めるわ」

「先生、過換気は放っておけば治るよね?」

先生「過換気? ええ、大丈夫よ」

善子「かかんき? 何よそれ」

「曜、泳ぐ前に深呼吸してた……」

善子「してたわね。緊張してたんでしょう」
0400名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:49:19.20ID:Cn1blU3f
先生「一応、状況を聞かせてくれる?」

「……」

善子「曜さんはこの人と百メートルの勝負をしたのよ。勝った方は負けた方に何でもお願いできるの」

先生「そう」

善子「最初は体半分くらい遅れてて負けそうだったんだけど……後半からどんどん追い上げて行って」

善子「ゴール前で抜いたの! カッコよかったわ……」ウットリ

先生「……」

「私も本気で泳いでたからずっと見てたわけじゃないんだけど……折り返した後の曜、たぶん一度も息してなかったと思う」

先生「五十メートルを息継ぎなしで? 本当なの?」

善子「本当よ! 普通ならあり得ないでしょうね。でも曜さんはできたの!」

先生「まさかその途中で溺れて……」

善子「いいえ! 曜さんは泳ぎきったわ。その後も私と話したし……」

「……」

善子「その後急にフラフラし始めて気を失っちゃったみたいなの。でも曜さんが気を失うなんてよくあることだから」

「よくあるんだ……」

善子「嬉しすぎるとね、つい」フフッ

先生「じゃあ……溺れたわけではないのね?」

善子「ええ。一瞬水に沈んだけどすぐ助けてもらったから」

「はい。すぐ引き上げたので溺れてはいない……はずです」
0401名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:49:52.06ID:Cn1blU3f
善子「それはそうと、あなた敬語も話せるのね。ぶっきらぼうな喋り方しかできないのかと思ったわ」

「先生にはいつもお世話になってるから……」

先生「……」

善子「ねぇ、曜さんもいい加減に起きなさいよ」ユサユサ

曜「」ユサユサ

先生「ちょっといい?」スッ

善子「ええ。でもたぶんすぐ起きると思うわよ」

先生「……」スッ

曜「」

先生「瞳孔が開いてる……」スッ

「せ、先生……やっぱり救急車呼びますか?」

善子「いいってば! あなたすぐ救急車呼びたがるのね」

先生「そうね……一応呼びましょうか。ただの過換気だといいんだけど」

ガチャッ

善子ママ「はぁっ……」ゼェゼェ

善子「あ、ママ。心配して来てくれたの?」

「せ、先生!?」ガタッ

先生「何?」

「あ、いえ……こっちの先生です」

善子ママ「私が車で連れて行くわ。救急車呼ぶより早いでしょ」ハァハァ
0402名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:50:20.68ID:Cn1blU3f
「私が運びます!」グイ

先生「大丈夫? 私も手伝うわね……」グイ

善子「ちょ、ちょっと! どうしたのよ? 曜さんは溺れてないし窒息もしてないわよ」

善子ママ「善子! 曜ちゃんはね……!」

「先生、急いで!」

先生「ええ」

善子ママ「車! こっちよ!」

善子「……」

ガチャッ バタンッ!

善子「……」

善子「いや、大げさだってば」

善子「息もしてたし心臓も動いてたし、溺れてすらいないのよ?」

善子「……」

タッ

……

……

 沼津総合病院

ピッ ピッ……

曜「……」

「……」
0403名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:50:49.14ID:Cn1blU3f
善子ママ「本当によかったわ……命に別状がなくて」ホッ

「ごめんなさい、先生」

善子ママ「あなたは悪くないわ。曜ちゃんと勝負しただけだもの」

「やっぱり私……手加減してあげた方がよかったんでしょうか」

善子ママ「それじゃ曜ちゃん怒るんじゃないかしら」

「ヨハネちゃんに殺されちゃうかな」

善子ママ「ヨハネ?」

「あぁ、先生の娘……」

善子ママ「善子と知り合いなの?」

「よしこ? そういえば曜もヨハネちゃんのことよしこって呼んでたような」

善子ママ「まあ、あの子がそう言ったならそれでいいわよ」

「……」

善子ママ「どういう経緯だったのか聞いても?」

「経緯も何も、私は曜と勝負しただけだよ」

善子ママ「でしょうね。でも善子が絡んでるのは知ってるのよ。その辺り、何か聞いてない?」

「私が勝ったら、曜が何でも言うことを聞いてくれるって言った」

善子ママ「曜ちゃんが?」

「うん。すごい自信があるみたいな口ぶりだった……」

善子ママ「そう……。あなたは現役の選手で、曜ちゃんは一年もプールを離れていたのに」

「でも曜の手、震えてたよ」
0404名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:51:56.21ID:Cn1blU3f
善子ママ「そうなの?」

「きっとヨハネちゃんの前でカッコつけたかったんだと思う。それかヨハネちゃんに言わされたか」

善子ママ「……」

「でも、私だって今更曜にお願いしたいことなんてないよ。そうだね……ジュース一本おごらせるくらいかな」アハハ

善子ママ「曜ちゃん、どうしてもあなたに勝ちたかったのね」

「私も驚いたよ。たったの一週間であそこまでタイムを縮めてくるなんて」

善子ママ「昨日は学校を休んでまで練習してたって聞いたわ」

「えっ……」

善子ママ「……」

「これだけ泳げるならもう一度やればいいのに」ボソッ

善子ママ「……あなたも知っているでしょう?」

「あ……当たり前だよ」

善子ママ「曜ちゃんはまた同じことをしたのよ」

「……」

善子ママ「過換気の怖さはあなたも知っての通り。過度な深呼吸で血中酸素濃度を高めて」

善子ママ「呼吸の回数を減らせるから……その分タイムを縮められるわ」

「まさか一度もしないなんて思わなかったよ。あのときだって何回かはしてたはず」
0405名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:53:35.58ID:Cn1blU3f
善子ママ「血液がアルカリ性になって、呼吸中枢は呼吸を止める。呼吸が止まればすぐに大脳皮質は酸欠になるわね」

善子ママ「普通はそこで酸素を欲しくなって、呼吸中枢とのせめぎ合いで過呼吸になるんだけど」

善子ママ「曜ちゃんはどういうわけか最後まで呼吸を止め続けた。その上全力で泳ぎ続けるなんて」

「そんなことできるわけない。呼吸なんて止めたくても止め続けられないし……無理に止めれば手足が痺れて動かなくなるよ」

善子ママ「でも曜ちゃんはやったのよ」

「私だって見てないから分かんないよ。私やヨハネちゃんが気づかなかっただけで一度や二度はしたんじゃないの」

善子ママ「私は上の観客席から見ていたわ。半分を過ぎてからは曜ちゃん、本当にただの一度も息継ぎをしなかった」

「……マジ?」

善子ママ「マジよ。大マジ。だから慌てて医務室まで走っていったの」

「……」

善子ママ「過換気で死ぬ人はいないわ。溺れない限りはね」

「溺れてない」

善子ママ「ええ。だから大事には至らないとは分かっていたつもりよ」

「曜はよく気を失うってヨハネちゃんが言ってたけど、本当?」

善子ママ「そんなわけないでしょう。善子がそんなこと言ったの?」
0406名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:54:52.84ID:Cn1blU3f
「うん。だから心配しなくていいって」

善子ママ「それはたぶん……善子が曜ちゃんを気絶させているのね」

「気絶させるってまさか……」

善子ママ「無理をさせすぎたときよ」

「あぁ、そういうこと。ヨハネちゃんが日常的に気絶させてるのかと思った」

善子ママ「え?」

「何でもない」

善子ママ「そう……」

(首を締めてたなんて言えないよなぁ……)ハァ

善子ママ「あの時は自己ベストを更新するため。今回は……あなたに勝つためよ」

「……」

善子ママ「過換気は普通はしばらく休めば回復するけれど、曜ちゃんはちょっとやり過ぎたわね」

「あの時……曜がゴール目前で溺れかけたとき、私も見てたんだ」

善子ママ「その時もあなたが助けてくれたって聞いたわ」

「まあね。それで曜は、もう水泳をやめるって言った」
0407名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:55:27.86ID:Cn1blU3f
善子ママ「私も……後から聞いたのだけれど、自分の限界を感じたって言っていたらしいわね」

「ここまでやっても世界記録に届かないならやめるって」

「バカだよ曜は。そのときのまだ子どもの体でどうやって大人の出したタイムに勝てると思ったんだか」

善子ママ「自分の中身の成長に体がついていかなかった……いえ、曜ちゃんが背伸びをしすぎたのかしら」

「それだけ曜は期待されてた。最年少でオリンピックに出られるって言われてたくらいだし」

善子ママ「ええ」

「私は曜を止めなきゃいけなかったのに」

善子ママ「……」

「ヨハネちゃんを見てて思ったの。昔の私みたいだなって」

「曜の泳いでる姿が好きで、頑張ってる姿が好きで」

「それを応援してあげたくて……」

「曜のことが大好きだった」

善子ママ「そうよね……。私も気づいていたわ。あなたは曜ちゃんのことが好きだった」

「あの時の曜は……本当はあんたのために頑張ってたんだよね」

善子ママ「そんなことないわよ。私も期待はしていたけれど……」
0408名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:55:54.89ID:Cn1blU3f
「あんたに認めてほしくて曜は……」

善子ママ「世界記録を目指してるって聞いたとき、私は『曜ちゃんならきっとできるわ』って言ったわ。でもそれは今すぐにって意味じゃなくて」

「曜は今すぐにだと思ったみたいだよ」

善子ママ「そんな無茶なこと言うわけないじゃない」

「そうすれば大人として見てくれると思った」

善子ママ「……嘘よね?」

「本当だよ」

善子ママ「そ、そんなの……私は聞いてない」

「気づいてたんだよね?」

善子ママ「本当に知らないわよ!」

「何で気づいてやらなかったんだよ!! あんたは曜と付き合ってただろ!!?」バンッ

善子ママ「っ……」ビクッ

「あんたのせいだからな!! あんたさえいなけりゃ曜は……今ごろ私と一緒に強化選手に選ばれてた!」

善子ママ「……」

「まだ知らないふりすんのかよ」

善子ママ「本当に……知らなかったのよ」

「いいよもう。あんたはやっぱりクソババアだ」
0409名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:56:26.11ID:Cn1blU3f
ガラッ

善子ママ「……」

善子「クソババアですって?」

「よ、ヨハネちゃん……」

善子「またママのことババアって言ったわね?」ガシッ

「あぐっ……」

善子ママ「善子、やめなさい」

善子「今すぐ土下座して謝りなさい。じゃないと殺すわよ」グイッ

「ぐぁ……」

善子ママ「善子!」ガシッ

善子「放して! こいつはママのこと二度もババアって言った!」ググッ

善子ママ「やめなさい! 本当に死んじゃうわよ!!」グイッ

「く、苦し……」

善子「曜さんはもっと苦かったのよ!! あんたのせいで!!!」

善子ママ「いい加減にしなさい!!」ブンッ

パーン!

善子「ひっ……」ドサッ

「げっほ! おえっ……」ゼェゼェ

善子ママ「曜ちゃんが私に好意を持っていたのは気づいていたわ。先生としてじゃなく……一人の女性として」

善子ママ「あのとき私がきちんと返事してあげれば……」

善子「仕方ないじゃない。ママは先生、曜さんは生徒。付き合うなんて絶対に許されないわ」
0410名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:56:55.70ID:Cn1blU3f
「……」

善子ママ「私がはっきり断れてさえいれば……こんなことにはならなかったのよね?」

善子「えっ……? 曜さんはママに断られたって」

「こいつは断ってなんかない。曜の気持ちを知ってて……あえて返事をしなかったんだ」

善子ママ「……」

「私は見てたんだからな。あんたが曜にキスされて嬉しそうにしてるのを」

善子「っ……」

「曜に耳元で『好きです』って言われて『私も』って言うのを!!」

善子ママ「それは変な意味なんかじゃなくて……っ! 曜ちゃんが誤解しただけよ!」

「誤解するって分かってたくせに! 曜はそういうやつだろ!?」

善子「……」

善子ママ「……」

「あんたも曜のこと好きだったんだよな? それとも……曜に好かれる自分が好きだっただけか」

「どっちにしろ最低の教師だよ」

善子「あんたねぇ……! それ以上ママの悪口言うと本当に」ガシッ

善子ママ「善子、やめて」

善子「でも!」

善子ママ「全部本当のことだから……」

善子「……」パッ

「げほっ……。ヨハネちゃんもだよ」
0411名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:57:21.61ID:Cn1blU3f
善子「私が何をしたって言うのよ」

「曜はヨハネちゃんのことが大好きなんだよ。そんなの見てれば誰だって分かる」

善子「ええ、そうよ。ママの代わりみたいで腹立たしいけれど」

善子ママ「そんなことないわよ。善子のことは本当の本当に好きなんだわ」

善子「それ、ママが言う?」ジロッ

善子ママ「あ……いえ」

「ヨハネちゃん、自分のためなら曜は何でもしてくれるって知ってたんだよね?」

善子「そ、それは……」

「だから私と勝負しろなんて言ったんだよね。曜にもう一度水泳をやらせたくて」

善子「どうしてそのことを……。曜さんが言ったの?」

「……やっぱりね。そんなことだろうと思った」

善子「くっ……言わされたのね私」

「これでも私、現役の全日本強化選手だよ? 一年もブランクがある曜になんて勝ち目がないじゃん」

善子「でも曜さんは勝ったわ」

「そうだけど! 勝ち目がないって思わなかったの? ヨハネちゃんって本当にバカ??」

善子「うるさいわね! 勝てたんだからいいじゃない」
0412名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:57:48.80ID:Cn1blU3f
「私だって最初から本気を出していれば……」

「ううん、負けたのは認めるよ。後半は私も本気だったし」

善子「そうよ。あなたは本気で曜さんに負けたの」

「曜ならどんな勝ち方でもするって……ヨハネちゃんなら分かったんじゃないの」

善子「……」

「曜は好きな人のためなら何でもするよ。自分が死んだって構わないって……本気で思ってる」

「それはあのときも同じ」

善子ママ「……」

「だから私は止めなきゃいけなかった」

善子「手加減ってそういうことだったのね」

「え?」

善子「トイレでの独り言。全部聞いてたわ」

「あ、あぁ……ヨハネちゃん隣にいたんだっけ」

善子「ええ。恋人の前で負けるなんて可哀想だから手加減してあげようって……」

「そっか……聞かれてたか」アハハ

善子「そんなの私が喜ぶと思う?」

「ヨハネちゃんのためじゃないよ」

善子「し、知ってるわよ。あなたは曜さんが無茶をするって分かってたからわざと負けようとした」

「……まあね」

善子「だったら何で負けなかったの」
0413名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:58:50.50ID:Cn1blU3f
「ヨハネちゃんがそれ言うの? 本気でやらなかったら怒るって今朝も言ってきたよね」

善子「……」

「いや、それでも私は負けなきゃいけなかった。或いはこんな勝負自体するべきじゃなかったよね」

善子「そうよ。私が本気で勝負するようにお願いした。曜さんにもあなたにも」

善子ママ「善子は知らなかったのよね。あの時のことなんて何も」

善子「……」

「ヨハネちゃんが知らないってこと、私は分かってた。教えてあげればよかったかな」

「いや、私が言うことじゃないか……」

善子「聞いていたとしても、たぶんやらせたわね」

善子ママ「……」

善子「この勝負は曜さんにとって必要なことだったの。今でも私はそう思ってるわ」

「後悔してないの?」

善子「曜さんに苦しい思いさせたのは本当に悪かったと思ってる……。それでも、これ以上逃げ続ける曜さんを見たくなかった」

善子ママ「そう……。曜ちゃんはあれからずっと逃げていたのね」

善子「ママだって気づいていたでしょう? 本当は心のどこかで水泳を諦めきれずにいた」

善子「だから進路だって未だに決められないでいたのよ」
0414名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:59:17.92ID:Cn1blU3f
善子ママ「曜ちゃんなら、それでも推薦を受けると思っていたわ」

「推薦? 何のこと?」

善子「曜さんにもスポーツ推薦の話が来ていたのよ。あなたと同じ大学からね」

「う、嘘だろ? 曜はとっくに水泳なんてやめてる……大学だって知らないわけがない」

善子ママ「大学へ進んで、そこでまた水泳をやるのもいいと思ったわ。もうあの時みたいに子どもじゃないもの、曜ちゃんだって同じことは繰り返さないと……思ってた」

善子「……」

善子ママ「もちろん、私が勝手に思ってたわけじゃないわ。曜ちゃんのお母さんがそう言ってきたのよ」

善子「曜さんのママが?」

善子ママ「進路の相談、何度も受けてたから」

「……」

善子ママ「今回、曜ちゃんが善子に水泳を教えてくれるって聞いたとき……私もいいきっかけだと思った。口では言わなかったけれど、きっと水泳をまたやってくれるって期待していたのよ」

善子「ママ……」

善子ママ「善子があなたと勝負させようとしていたのも……理由が分かっていたから止めなかった」

善子ママ「今の曜ちゃんなら、無理をしたりしないだろうって……」
0415名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 19:59:45.32ID:Cn1blU3f
「あの時みたいに?」

善子ママ「ええ」

善子「でも私がまたやらせたのね」

善子ママ「善子はあの時のこと知らないって、私だってそんなこと分かっていたわ! 曜ちゃんが自分から話すわけないし……」

「私だって分かってたよ。でも止めなかった」

善子「……」

善子ママ「善子に全部丸投げしていたのよ」

善子「それはママたちのせいじゃないわ。曜さんが自分で考えることよ」

善子「それに……やめようって言う曜さんを焚き付けたのは私」

「曜がやめようって?」

善子「ダジャレじゃないわよ」

「そんなの分かってるから……」ハァ

善子「ごめんなさい」

「いいよ、続けて」

善子「一昨日、曜さんがいつになく弱気だった……。勝てるわけないって泣いていたわ」

「泣いてた?」
0416名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 20:00:12.60ID:Cn1blU3f
善子「ええ。あのとき、私は曜さんがただ甘えているだけだと思って、嫌がる曜さんを無理やり焚き付けたの」

善子ママ「……」

善子「そうよ……。あのとき、曜さんは本当に嫌だったんだわ。だから私をトイレに閉じ込めたりもして」

善子「なのに私、全然分かってあげられなくて……」グスッ

「ヨハネちゃん」ギュ

善子「全部私のせいじゃない!! 私が曜さんをこんな目に合わせたんだわ!」

「それは違うよ。ヨハネちゃんは昔のことなんて知らなかったんだから」

善子「違わないわよ! 昔のことは知らなかった? 関係ないわ!」

善子「曜さんの気持ちを無視して、無理やり勝負させて……」

善子「ママにも言われてたのに、それでも聞かなくて」

善子ママ「……」

善子「曜さんは水泳をやりたいはずだって勝手に思い込んで」

善子「こんな辛い目に遭わせて……」スッ

曜「……」

善子「ごめんなさい……。私が悪かったわ」
0417名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 20:00:40.03ID:Cn1blU3f
善子ママ「……」

「……」

善子「私って最低よね……」グスッ

「そんなことないよ。ヨハネちゃんなりに曜のことを考えてしたんだから」

善子「そうじゃないわ……。こんなときでも私は自分のことしか考えてないの」

善子ママ「……」

善子「曜さんに嫌われたくないって……。目が覚めて私のこと嫌いになってたらどうしようって」

善子「そうなったら私、本当にどうしたら……」ポロポロ

「ならないよ」

善子「そんなの分からないじゃない!」

善子ママ「ならないわね」

善子「どうして!? どうしてそう言い切れるのよ!」

善子ママ「私のこと、まだ嫌いになっていないでしょう?」

善子「っ……」

「二股かよ。最低だね」
0418名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 20:01:11.25ID:Cn1blU3f
善子ママ「今でも曜ちゃんは私のことも好きでいてくれてるわ。もちろん、いちばんは善子だけどね?」

善子「そ、それはそうかも知れないけど……」

「曜もバカだよね。こんなことしてまで勝って、ヨハネちゃんが喜ぶとでも思ったの?」

善子「私……たぶんここ数年でいちばん喜んだわ。何も知らずにバカみたいに」

善子ママ「プールサイドで飛び跳ねてたものね」

善子「そうよ。そのくらい嬉しかったもの」

「そっか……」

善子「でも曜さんは私以上にバカね」

「間違いないね」

善子「私なんかを好きになるから悪いのよ」

善子ママ「もう嫌いになったかも?」

善子「うっ……」グスッ

善子ママ「冗談よ」フフッ

「いや、ここでその冗談はキツくない……?」

善子ママ「とりあえず、曜ちゃんはこのまま安静にしておくしかないわ。お医者様も特段何ともないって仰ってたから……」

善子「私、今日はここにいる」

「まさか目が覚めるまでずっといるつもり?」
0419名無しで叶える物語(たこやき)
垢版 |
2018/03/25(日) 20:01:38.29ID:Cn1blU3f
善子「ええ。もちろんよ」

善子ママ「……こう言い出したら善子は聞かないから」ハァ

「……じゃあ、曜のことお願い。何かあったら私にも連絡くれると嬉しいな」

善子「ええ」

善子ママ「曜ちゃんのお母さんには私から連絡しておくわ。遅いって怒られるかもしれないけれど……」

「はい」つ

善子「え?」

「連絡先。ヨハネちゃんのも教えてくれる?」

善子「お、教えるわけないでしょう!?」

「えー」

善子「曜さんの連絡先は知ってるわよね? 起きたら連絡させるから」

「そっか。じゃあそれで」

善子「あなたが助けてくれたって、ちゃんと伝えておくわ」

「いいよ、ヨハネちゃんが助けたことにしても」

善子「それは私が納得行かない」
0420名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 20:02:05.80ID:Cn1blU3f
「私が命の恩人って知ったら今度こそ私のこと好きになるかもよ?」

善子「ないわよ」

「絶対に?」

善子「ない……と思うわ。私のことを嫌いになっていなければね」

「あはは。じゃあ私は行くけど……」

善子「ええ。気をつけてね」ノシ

「……」

善子ママ「どうしたの? 帰りも私が送ってあげるわよ」

「ヨハネちゃんから私に手を振ってくれるなんて……夢かな」

善子「あっ……これは別にそういう意味じゃないわ! 普通に友だちとして振っただけよ!」

「友だち? 友だちって言った!?」

善子「言ってない!」

「これは曜が聞いてたらヤキモチ妬いたかもなぁ」

善子「曜さんは妬かないわよ。たぶんニヤニヤしながら見てるわ」

善子ママ「あぁ……きっとそうでしょうね」
0421名無しで叶える物語(たこやき)
垢版 |
2018/03/25(日) 20:02:32.47ID:Cn1blU3f
善子「とにかく、今日はありがと。ママもね」

善子ママ「ううん。私はタクシーをしただけよ」

「げっ。運賃はツケといてくれる?」

善子ママ「じゃあね。この子送ったら着替えを持ってくるから……それまでは上着を羽織って待ってて」

善子「あ、うん……。そういえば水着のままだったわ」

善子ママ「それじゃ、曜ちゃんのこと頼むわよ」

善子「ええ」

ガラッ

ストッ

善子「……」

曜「……」

善子「曜さん」ユサユサ

曜「……」ユサユサ

善子「本当に寝てるの? 寝たふりしてない?」ペチペチ

曜「……」
0422名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 20:02:59.38ID:Cn1blU3f
善子「よく眠っているわね。まるで赤ちゃんみたいに……」

曜「……」

善子「おやすみなさい。着替えは起きてからでいいわよね?」

曜「……」

善子「それと……」スッ

チュッ

曜「……」

善子「私のこと、好きでいてよね……」

……

……


水泳教室編 終わり
0423名無しで叶える物語(たこやき)
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2018/03/25(日) 20:43:42.97ID:Cn1blU3f
今回もおしっこ要素は少なめでした
次回はシリアスなしでもう少し入れていきます

あと曜ちゃんは無事です
ご心配なく
0425名無しで叶える物語(庭)
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2018/03/26(月) 01:39:45.48ID:ckD6ucOS
おつ
不穏な感じでハラハラしたわ
日曜だとルビまるとのダブルブッキングの可能性があるのも気になる…
0438名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2018/03/28(水) 00:38:58.32ID:WUrWhvq4
!!!!!!
0445名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2018/03/28(水) 13:07:33.05ID:gz8WlxQ8
0449名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/28(水) 20:33:49.62ID:gz8WlxQ8
0454名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/29(木) 09:56:21.35ID:/YWGQeNM
きついwww
0464名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2018/03/30(金) 08:11:51.48ID:Eab8Myxb
は?w
0466名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/30(金) 09:08:08.27ID:Eab8Myxb
0470名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/30(金) 20:44:35.88ID:EYdFcISQ
0473名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/30(金) 22:52:02.78ID:EYdFcISQ
0480名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/31(土) 15:36:08.85ID:W/YYkmNB
めちゃくちゃすぎて竹から笹生える
0482名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/03/31(土) 16:22:28.62ID:W/YYkmNB
0513名無しで叶える物語(笑)
垢版 |
2018/04/04(水) 19:57:59.61ID:1KJ/xLyH
善子ママのおっぱいの張りはどんなもんなんだろう
さすがに少し緩んでるのかな
0529名無しで叶える物語(やわらか銀行)
垢版 |
2018/04/06(金) 22:39:54.17ID:xmFfiCGr
0544名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2018/04/09(月) 19:14:14.33ID:aqe17wmh
立て直してくれるし区切りが良いとこなら
あまり保守の意味はないかもしれんね
0545名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2018/04/10(火) 00:47:56.54ID:xGJq7B1B
1です
保守していただいてありがとうございます
もうしばらくかかりそうなので落としてくださっても結構です

今週末には投下できると思います
立てられなかったらどこかで代行をお願いする予定です
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