花丸「小悪魔な君と変わらぬ想い」
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マルは怒っています。
本当なら嬉しいはずの誕生日なのに怒りに満ち溢れています。
それはなぜか。
函館に行ってからというものルビィちゃんは理亞ちゃんのことばかり。
口を開けば理亞ちゃん、時々善子ちゃん、稀にマル。
今だって。 ルビィ「理亞ちゃん、決勝見に来るって!」
スマホの画面を見ながら嬉しそうにはしゃぐルビィちゃん。
善子「当然よ。彼女もまた私のリトルデーモンなのだから」
ルビィ「あはは、ないない」
善子「え」
ルビィ「早く会いたいなぁ〜。ね、花丸ちゃん」
急に振られ反応に戸惑う。
花丸「う、うん。楽しみずら」
嘘じゃない。理亞ちゃんのことはマルも好きだし、善子ちゃんみたいにからかいがいのある子だと思っている。
でも、二人が会うのはあまりいい気分はしない。 中学生の時、図書室でルビィちゃんと出会ってからずっと一緒で、似た者同士で、この先も二人で――そう思っていたのに。
同じ妹で、スクールアイドルが大好きで、どこか放っとけない彼女。
顔を合わせた二人を見ているとまるで『上書き』されたみたいにマルは置いてけぼり。
醜い嫉妬。マルだってよくわかってる。
それでも、今日くらい我儘が言いたかった。 三月四日。マルの誕生日。
ラブライブの決勝を目前に控え、練習に熱が入るこの時期にも関わらず
部室で誕生日パーティーをしてくれる運びになった。
毎年、二人で過ごして来た誕生日は終わりを迎え、賑やかな誕生日が部室で待っている。
楽しみなはずなのに、嬉しいはずなのに、素直に喜べない。 ルビィ「お手洗い行ってくるね」
一足早く昼食を終えたルビィちゃんが席を立つ。
考えに耽けていたマルの箸はあまり進まず、半分近く残っていた。
善子「珍しいわね」
対面の善子ちゃんがマルの弁当箱を見ながら言う。
善子「なんか考え事でもしてたの?」
花丸「べ、別に」
理亞ちゃんに嫉妬してるなんて言えないし、適当にお茶を濁してお弁当に手を付ける。
善子「理亞でしょ」
花丸「ごふっ」
思わず口の中の白米を吹き出しそうになった。 花丸「な、なんで……」
言い逃れ出来ない状況なので素直に聞き返すことに。
善子「だってアンタ、ルビィが理亞の名前出してからすっごい不機嫌そうな顔してたわよ?」
花丸「えっ」
善子「自覚なしとは重症ね」
花丸「善子ちゃんには言われたくないずら」
善子「どういう意味よそれ!」
まさか顔に出てたなんて。ルビィちゃんに気付かれてなきゃいいけど……。 善子「毎日毎日、昨日は理亞ちゃんと〜って、ずら丸からしたら面白くないわよね」
花丸「……」
見抜かれてる。あの善子ちゃんに。なんか癪に障る。
花丸「ルビィちゃん……気付いてるかな?」
善子「ルビィだし気付いてないんじゃない? アレ、わざとやってるなら相当な小悪魔ね」
花丸「小悪魔……」
魅惑的で悪戯好きの一見純粋無垢にも見える女性を指す言葉。本人には怒られるかもしれないけどお似合いだと思った。
善子「まぁ誕生日なんだし、正直に言ったら? 今日は他の女の話しないでって」
花丸「……そんなこと言えるわけないずら。マルは善子ちゃんと違って重い女じゃないから」
善子「どっちの意味よそれ!」
大袈裟に突っ込みをする善子ちゃんを尻目にまた考えに耽る。 携帯電話に貼ってある『ずっと友達だよ』と書かれた写真が思い浮かんだ。
四月から沼津の高校に通うことになる。同じクラスになるとは限らない。
新しい学校、新しい人間関係、新しい友達。
目まぐるしく変わる環境の中でマル達は変わらずにいられるのかな。
今もまだ『そう』思ってくれてるのかな。
嫉妬に不安が混ざり押し潰されそうになる。
まさしく重い女だった。 キーンコーンカーンコーン。
一日の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
ルビィ「ルビィ、先行ってるね」
そう言って、足早に教室を後にするルビィちゃん。
善子「サプライズのサの字もない誕生日ね」
隣の善子ちゃんが呆れた顔で言う。
花丸「善子ちゃんは行かなくていいの?」
善子「私はアンタの足止め役だから」
花丸「サの字くらいほしかったずら……」
果南ちゃんの誕生日パーティーの時、次は花丸ちゃんだね! と宣言された時点でサプライズとは程遠い。
善子「本当はルビィと二人きりが良かった?」
足止め役が無神経なことを言い出した。 花丸「……普通そういうことは口にしないものずら」
善子「誕生日に不満そうな顔してるアンタが悪いんでしょ」
善子「大体ねぇ、ずっと一緒にいるんだからちょっとくらい他の子に夢中になったっていいじゃない」
花丸「……この先も一緒にいられるとは限らないずら」
そう言うと、善子ちゃんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔でマルを見つめた。 善子「ずら丸も思ったより面倒くさい性格してるのね」
花丸「善子ちゃん程じゃないよ」
善子「フッ、まぁいいわ。足止めはこれくらいにして……ずら丸、これ図書室に返しておいて」
鼻で笑った後、本を手渡される。
花丸「なんでマルが……」
善子「図書委員でしょ。それに私もクラッカーの準備したいし」
花丸「クラッカーの宣言なんて聞いたことないよ……」
部室で八本のクラッカーが待ち受けること知り、ちょっと怖くなる。
逆に心の準備が出来ていいかも。そんなことを考えながら図書室に向かう。 図書室。
そこはマルにとって特別な場所でAqoursに加入する前はいつも図書室で本を読んでいた。
もしあの時、ルビィちゃんの背中を押さなかったら今も二人で図書室にいたのかな。
みんなとも仲良くなることなく、理亞ちゃんとも会わず、変わらない二人だけの世界でずっと――。
パーン!
図書室の扉を開けるとまだ心構えの出来ていない音が耳に響いた。
ぼとっ。反射的に本を手放し両耳を塞ぐ。
ルビィ「へへーん。驚いた? 花丸ちゃん!」
目の前にいたのは小悪魔の笑みを浮かべるルビィちゃんだった。 花丸「吃驚したに決まってるずら! どうしてルビィちゃんが……」
ルビィ「花丸ちゃんを驚かそうと思って善子ちゃんに頼んでたんだー」
あの堕天使……全部わかってて……。
ルビィ「あ、もちろん。驚かすだけが目的じゃないよ」
机に置いてあったお洒落な紙袋を手に取り彼女は笑う。
ルビィ「花丸ちゃん、お誕生日おめでとう。みんなの前じゃ恥ずかしくて渡せないから」
花丸「あ、ありがとう……一体何が入って……」
ルビィ「ふふふ。開けてみて?」 受付に二人並んで腰を下ろす。以前はよくこうしていたのに随分昔のことの様に思える。
テープ止めを剥がし、中の小箱を取り出す。
お洒落だったり流行りに疎いマルでもこれが何かすぐわかった。
指輪だ。
箱を開け確かめる。
花丸「ピンキーリング……」
ルビィ「よかった。花丸ちゃん知ってて」
花丸「マルだって一応女の子だよ」
ルビィ「一応なんだ」 ピンキーリングくらいマルだって知ってる。
小指にはめる幸せを呼ぶ指輪。
右手と左手でその意味が変わることも。
ルビィ「これね。実はルビィとお揃いで……」
照れ臭そうに――何かを伝えるように――『右手』の小指を見せてきた。 ルビィ「ほ、ほら! 沼津の学校に行ったら同じクラスになれるかわからないでしょ?」
ルビィ「だからどうしても、お揃いの身に付けられる物を渡したいなぁと思ってて……」
ルビィ「ちょっと重いと思うけど……よかったら付けてほしいな」
顔を赤くして微笑むルビィちゃんは小悪魔なんかじゃなかった。
花丸「重くないよ……嬉しい……とっても……」
言葉では言い表せない程嬉しかった。ルビィちゃんも同じだった。同じ気持ちだった。
小指で光るピンキーリングがその証。だからマルも――そっと右手の小指にはめる。
ルビィ「そうだ。やっと渡せたから聞くけど」
花丸「ん?」
ルビィ「花丸ちゃん妬いてた?」
花丸「焼くって?」
ルビィ「ルビィが理亞ちゃんの話すると『いつも』不機嫌そうにしてたよね?」
花丸「なっ!?」
ルビィ「あ、やっぱり。ふふっ」
花丸「ルビィちゃん……性格悪いずら……」
ルビィ「花丸ちゃんだって善子ちゃんと会ってから善子ちゃん善子ちゃんって」
花丸「だってそれは幼馴染で……」
ルビィ「だーかーら」
ルビィ「これでおあいこだよ?」
その笑顔はやはり、小悪魔だった。 一日遅れだけど花丸ちゃん誕生日おめでとう! ありがとうございました。 >>23
お前は死ね
鼻クソ無能ブス
他人の人生潰してやるスクールアイドルはたのしいか? >>28
突然キレてて草
ぶっぶに親でも殺されたんか 読みたいと思ってたものがピンポイントで投下される幸せな世界
いいぞ…るびまるいいぞ… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています