ルビィ「あまあまと」善子「ホロ苦さ」
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2月13日 黒澤家
ルビィ「えっと―――。板チョコと、生クリーム。ココアパウダー。それと苺……」
ルビィ「よぉし……!」
こんにちは。黒澤ルビィです。
今日は今からバレンタインのチョコレート作りに挑戦します……!
ルビィのバレンタインデーと言えば、毎年市販のチョコを買ってマルちゃんと一緒に食べる―――その位のイベントだったんだけど……。
ルビィ「よっちゃん、喜んでくれるかな……」 チョコレートが大好きな善子ちゃんに手作りチョコを作ってあげたいなって思って。
今年初めてルビィはお手製チョコレート作りにチャレンジすることに決めました!
作るのは生クリームが入ったものと、苺をチョコレートでコーティングしたもの。
結構簡単そうだし、これならルビィにも作れるかなって!
上手に出来たらマルちゃんや皆にも振る舞っちゃったりして―――♡
とにかく!頑張って上手に作るんだ!がんばルビィ!
―――――
―――
― 「あれ。チョコ刻んでる時にもう溶けてきちゃってるけどいいのかな……」イクナイ
「あ゛っ!?湯せんのお湯入っちゃった!!」
「うぅ、やり直し……。あんまりチョコ買えてないのに……」
「大さじと小さじ見間違えてた……。お砂糖入れ過ぎたかも。どうしよう……」
「何でこんなにヒビ入って固まっちゃったの……?」
―――――
―――
― ルビィ「…………」
こうして、ルビィの目の前に出来上がった―――ヒビだらけで形もボロボロな生クリームチョコと、ただチョコがまとわりついただけの苺さん―――あんまりにもお粗末な物体。
ルビィ「(全然上手に出来なかった……)」
善子ちゃんの喜んでくれる顔を思い浮かべながら一生懸命作ったけど、完成したものがこんなのなんて……。
ルビィ「あはは。イメージ通りに作るのって難しいんだなぁ……」
ルビィ「……」パク…
ルビィ「しかもちょっと、甘過ぎかも……」 ルビィ「どうしよう……コレ」
途中何度も失敗しちゃって、材料も使い切っちゃった。
時計を見ると短い方の針さんが2時を指しています。バレないようにコンビニまで買いに行ければ―――。
でも、朝までに間に合うかな……それに、お小遣い残ってたっけ……。
そう、半分くらいボーゼンとしながら考えていたら、お母さんが様子を見に来たの。
ルビィの顔と目の前のチョコを交互に見てね、優しい声で「きちんと最後まで出来たのですね。綺麗に包んであげて、今日はもう眠りなさい」って言ってくれて……。
もう何も考えられなくなっちゃって、最後のラッピングを済ませてルビィは眠ったの―――。 翌朝 浦の星
梨子「えっと……バレンタインデーなので、お菓子を作って持ってきたよ///」
ワーイ!!
クッキーズラー!
シャイニー!!!
善子「……」モグモグ
皆が梨子ちゃんの作ったクッキーに突進するのに続いて、善子ちゃんもクッキーを口にします。 善子「梨子!クッキー凄く美味しいわ!流石ね!」
梨子「あ、ありがとう……///」
美味しいと笑顔を浮かべる善子ちゃん。ルビィもお菓子作り上手に出来たら、あんな笑顔を見ることが出来たのかな……。
梨子ちゃんのクッキーをルビィも頂きます。
美味しい、ハズなのに、味がよく分かんない……。 善子「でもヨハネ的にはチョコレートが食べたかったな〜」
ルビィ「――!」
梨子「ごめんね。学校へ持ってきやすい方を優先しちゃった」
善子「ぶー!」
花丸「オラひとくちチョコ持ってきたよ。要る?」
善子「こんなモロお徳用のチョコしか貰えないなんて……。頂くけど!」
花丸「贅沢言わないの。こうしてお菓子を持ち寄って交換こするだけでも楽しいずら」
善子「まーね」モグモグ
善子「むー。でもやっぱり物足りない。チョコ食べたーい!」 ルビィ「……」
ルビィは自分のカバンに目を向けます。
あの中には、一応チョコレートを材料に作られた何かが入ってる……。
でも、無理……。あんなの渡されたって善子ちゃんは喜んでくれない。ドン引きされちゃうかもしれない。嫌われちゃうかもしれない。
ルビィ「(そんなの、ヤダよ……)」
ルビィ「(よっちゃんのこと、喜ばせたかったな……)」
―――――
―――
― 放課後 1年教室
ルビィ「……」ボケー
ルビィ「(結局、渡せなかったなぁ)」
ルビィ「(でも、いいや。あんなの渡されたって、よっちゃん引いちゃうよ。きっと)」
ルビィ「……」
ルビィは、自分に嘘をついています。 ルビィ「(食べて欲しかったなぁ)」
ルビィ「(もっと、上手に作りたかったなぁ……)」
善子ちゃんのことを喜ばせてあげたかっただけなのに、何でこんなに悲しい気持ちになるのかな。
どうしてこんなに胸が痛いのかな。
泣きそうになっちゃうのかな……。
そんな風に考えていた時でした―――。
善子「忘れもn―――あら?ルビィ」ガラッ ルビィ「!?」ビクッ
善子「もう帰ったのだとばかり思っていたわ。どうしたのよ?」スタスタ
ルビィ「あ、えっと、その……」
善子「今日はずっと元気無かったみたいだし―――って、あれ?」
善子「甘い香り。チョコの匂いがする……」
ルビィ「!?!?」ギクリンチョ 善子「……」ジーッ
ルビィのカバンを善子ちゃんは凝視します。
ルビィ「……だめ」
善子「ルービィ♪」コチョコチョ
ルビィ「ひゃあああああんん!!」///
腕を伸ばして視線を遮ったけど、腋の下をくすぐられてあっさりとカバンは善子ちゃんへの元へ行ってしまいました。
だめ。だめだめだめ……。 善子「やっぱり!チョコレート!あなた持ってきていたのね!?」
善子「それ、に―――」
善子「“Dear YOHANE”って……」
ルビィ「あ……」
眠い目を擦りながら、ラッピングをした時に書いたんだっけ。
よっちゃんへのものだって、バレちゃった……。 善子「……」
ルビィ「……」
善子「開けるわね」パカ…
ルビィ「あっ!!待って!だめ!だめええ!!」
善子「……」 ルビィ「う、ううぅぅ……!」
善子「頂くわ」
ルビィ「待って。味の方も……」
善子「……」モグモグ
善子「フフッ。凄く甘いわね」クスッ
ルビィ「う、ふぇ……。あああああん……!!」ポロポロ
ルビィの中で、何かが切れちゃって、涙が溢れてきてしまいました。 善子「ヨハネのためにチョコ、作ってくれたのね」
ルビィ「ごめ、んね……!がんばって作ったんだけど……上手にできなかった……!」
ルビィ「だから、もう渡せなくてもいいやって思って……」
ルビィ「でも、やっぱり食べて欲しくて……!」
ルビィ「よっちゃんに喜んで欲しくて!!」
ルビィ「だけど、こわくて……」
ルビィ「うっ。ううぅぅ……!!」グスグス
善子「……」 善子「確かに、見た目は凄いし」
善子「味も、激甘ね」
善子「でも好きよ。ルビィらしい味。あなたらしいチョコレートじゃない」
ルビィ「無理に食べなくていいよ……美味しくないでしょ……」スン…
善子「……」
せっかく食べてくれた善子ちゃんにルビィはつい投げやりな言葉を言ってしまいます。
そんなルビィに怒ったりする訳でもなく、善子ちゃんは「そうね……」と言って自分のカバンから何かを取り出しました。 ルビィ「缶コーヒー……?」
善子「さっき、何となく買ったの。ブラックよ」
ルビィ「ブラック……」
善子「あなたの甘いチョコを口にして―――」パクッ
善子「―――苦ーいこのコーヒーを頂くの」コクッ
善子「……はぁ。すっごく美味しい♡」
ルビィ「……」
『美味しい』って、言ってくれた……。 善子「あなたも同じように口にしてみなさい。ほら」
ルビィ「ふぇっ?!むぐ!」
喜びに呆けているルビィのお口に、突然善子ちゃんがチョコをねじ込んできました。
唇に指、当たっちゃった……。
善子「コーヒーも」
ルビィ「(こ、コーヒーはっ!!間接キスになっちゃ……///)」
ルビィ「む、むうう!!」グビッ ルビィ「……」コクン
ルビィ「美味しい……♡」
善子「ねっ♪」
ルビィ「(ルビィのヘンテコ甘々チョコが、美味しく食べられるように変身した……。やっぱりよっちゃんは凄いなぁ!)」 善子「―――このチョコレートがルビィだとしたら、ヨハネはこっちの缶コーヒーね」
ルビィ「?」
善子「甘いだけでも、苦いだけでも駄目なのよ。別々の2人が足し算ではなく引き算をすることによって、意外で素敵な美味しさが現れるの」
善子「事実、ヨハネはマリーみたいにブラックコーヒーを嗜んだりしないわ。苦いもん」
善子「でも、今日は美味しく頂けた。ルビィのチョコのおかげでね♡」
ルビィ「よっちゃん……」 ルビィ「でも、やっぱりもう少し綺麗に美味しく作りたかった……」
善子「もぉ……。あなたはこのヨハネのリトルデーモンなのよ!?自信を持ちなさい!」
ルビィ「うん……」
善子「……」ムー
善子「見た目とか、味なんて関係無いわ」
善子「正直言うとヨハネ。バレンタインデーはあんまり好きじゃないの」
ルビィ「えっ」 善子「まず何より聖バレンタインデーよ!?堕天使にとって聖なる催しなんて毒!」
善子「ヨハネの愛する漆黒の甘美が街中に溢れる一方で、あの恋情に浮ついた空気を吸わなければならない苦しみ!」
善子「挙句の果てには自らの手で漆黒の甘美を手にして口にする始末……。ヨハネにチョコを授けてくれる者、ましてや手作りのものを差し出してくれる者など誰一人として居なかったわ……」
善子「だから―――」
善子「あなたがヨハネのために作ってくれたことが嬉しい。嬉しいに決まっているわ」 善子「ありがとね……ルビィ」
ルビィ「うん……」
ルビィ「ありがとう、よっちゃん……」
善子「フフッ♪ おいで、リトルデーモン!一緒に帰りましょう♪」
ルビィ「うんっ!」
―――
――
― トテトテ スタスタ
善子「そうだ。もう一つの方も頂くわね」ガサゴソ
ルビィ「う、うん……」
善子「〜〜!! チョコレートでコーティングされた苺!ヨハネの好物が融合しているわ!」
ルビィ「融合というか、チョコに取り込まれちゃってるけどね……」
善子「イメージとしては、苺の紅い部分を残しつつチョコで包みたかったって所かしら?」
ルビィ「はい……」
善子「見た目としてはそれがベストでしょうけど―――」パクッ
善子「ほら、やっぱり♪ チョコがたっぷりだからどこから食べても美味しいわ♡」
ルビィ「本当?なら、良かった……」ホッ 善子「ルビィも食べてご覧なさい。はいあーん♡」
ルビィ「えっ///」
ルビィ「むぐっ!」
ルビィ「……おいしい♡」
善子「フフフ……♡」ペロッ
そう言って善子ちゃんは指についてしまったチョコレートを舐めとります。
それを見たルビィの心はドキンと音を立てて跳ね上がりました。
ルビィ「……」ドキドキ
ルビィ「(あれ……。ルビィ、何でさっきからこんなにドキドキしてるんだろう)」 善子「それにしてもヨハネ、今だけはとても幸せ」
善子「こうしてヨハネのために尽くしてくれるリトルデーモンが居てくれるんですもの」
ルビィ「……」
ルビィ「(ルビィが頑張ってチョコを作ったのは、ルビィがよっちゃんのリトルデーモンだからなのかな……)」
ルビィ「(何であんなに失敗ばっかりしたのに完成させるまで頑張れたんだろう)」
ルビィ「(何でよっちゃんのために頑張りたいって思えたんだろう)」 善子「……ルビィ?」ズイッ
ルビィ「ふわぁっ!///」ドキッ
不意に善子ちゃんの美人さんなお顔が目の前に来て、素っ頓狂な声をあげてしまいました。
善子「どうしたのよ?変なルビィ♪」クスクス
ルビィ「あぅ……///」 ドキドキが止まらない。
何だろう。何なのこの気持ち。
チョコレートみたいに溶けちゃうような、あま〜くてあったかいような。
だけど、コーヒーみたいにホロ苦くて、胸がキュッと切なくなっちゃうような。
そんな、変な気持ち……。
こんな気持ちになったの、ルビィ初めてで、分かんない……。
そんな理解できない気持ちが胸に湧いているルビィの手を取って、善子ちゃんは「ほら、行くわよ」と歩き始めます。
その後ろ姿に釘付けになりながら、ルビィは坂道を下るのでした。
甘くて、フワフワした足取りで―――。
―終― おまけ
津島家
善子「つじ写真館で買ったヨハネブレンド〜♪」コポコポ
善子「いただきま〜す♡」パクッ
善子「フフ。あま〜〜い♡」
善子「……」ズズッ…
善子「ホッ。おいし♡」
善子「(―――まさか、ルビィからチョコを貰えるなんて思わなかった……)」
善子「えへへ。ヨハネ幸せ♡」
善子「……」
善子「(幸せな甘い気持ちなのに――何かしらね、この切ない気持ちは。コーヒーみたいにちょっと……苦い)」
善子「大好きよ。愛しのリトルデーモン……」
ホロ苦い切なさを胸に、大好きなあの子の顔を思い浮かべて、
善子「ルビィ♡」
そう名前を一言呟くヨハネなのでした。
―おしまい― |c||σ.-σ|| 浦の星女学院には2月中までならバレンタインSSを書いても問題無しと言う校則があるの。
ノξソ>ω<ハ6 YEAH
|c||σ.-σ|| ということで以上です。読んで下さった方、お礼申し上げますわ。失礼しますね。 |c||^.- ^|| |c||^.- ^|| |c||^.- ^|| ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています