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真姫「別れのあとには」
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0001名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:36:53.56ID:8pDqrO06
 3月、別れの季節。

 昔は別れなんて気にしたこともなかった。
 でも一昨年に唯一の友達と離れることで、別れの悲しさを知った。

 去年はまた、大切な人、にこちゃんとの別れを経験した。

 そして今年も――
0002名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:37:28.54ID:8pDqrO06
穂乃果「真姫ちゃん〜」

真姫「穂乃果。遅かったわね」

穂乃果「えへへ、色んな人に捕まっちゃって」

真姫「元生徒会長でμ’sのリーダーだもの、まあ仕方ないわよ」

穂乃果「でも海未ちゃんの方が人気だったよ。後輩の女の子に囲まれちゃってさー」

 目の前で笑っている、私をμ’sに誘ってくれた人。
 1人きりの世界から、外へと導いてくれた大切な人。
0003名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:38:10.00ID:8pDqrO06
真姫「それは穂乃果には無縁そうな世界ね」

穂乃果「えー、そんなことないよ。この前も――」

真姫「海未とことり関係は禁止ね」

穂乃果「ぐっ」

真姫「あら、図星かしら」

穂乃果「うぅ、酷いよ真姫ちゃん〜」

 泣きながら私に抱きついてくる、まるで子どものよう。
 でもそれが可愛らしくて、彼女らしくて、私はそんな姿が大好きで。
0004名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:40:16.50ID:8pDqrO06
真姫「でも大丈夫よ。私はちゃんと貴女のことを愛しているから」

穂乃果「そ、そんなこと言っても誤魔化されないよ」

真姫「あら、失敗したみたいね」

 本音だったのに。

穂乃果「でも真姫ちゃんも冗談なんて言うようになったんだね。何だか感慨深いよ」

真姫「冗談ぐらい以前から言っていた――かしらね?」

穂乃果「どうだろう。でも初めて会った時より、雰囲気がやさしくなったよ」

真姫「穂乃果のおかげよ、感謝してるわ」

穂乃果「またお世辞?」

真姫「ううん。ちゃんと正直な気持ちよ」

穂乃果「素直な真姫ちゃん、珍しいね」

真姫「卒業式だもの。たまにはいいでしょ」

穂乃果「……そうだね」
0005名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:41:19.73ID:8pDqrO06
 今日で穂乃果は卒業して、この学校を去っていく。

 運命的な出会いから、色々な事があった。

穂乃果「送辞、素敵だったよ」

真姫「穂乃果こそ。人には怒られそうではあったけどね」

穂乃果「あはは、海未ちゃんにはさっきお小言言われちゃった」

真姫「私は好きだったわよ。穂乃果らしくて」

穂乃果「そう言ってもらえるとありがたいよ」
0006名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:42:21.72ID:8pDqrO06
 私は穂乃果の後、生徒会長の座を引き継いだ。

 正直に言ってしまえば、その役割をやりたかったわけではない。
 でもどうしても、在校生代表として送辞を贈る立場になりたかったから。

 直接、素直に感謝の言葉を伝えられない私が、代表者という皮を被って伝えられる役目だったから。

 今までのように、後悔するような別れ方は嫌だったから。
0007名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:44:27.94ID:8pDqrO06
真姫「改めて卒業おめでとう、穂乃果」

穂乃果「うん、ありがとう真姫ちゃん」

真姫「出会えてよかった。貴女が居なかったら、きっと私はずっと一人だったから」

穂乃果「穂乃果の方こそ、真姫ちゃんに出会えて良かったよ」

真姫「私も、何か穂乃果の力になれたかしら」

穂乃果「うん、いっぱいあるよ、真姫ちゃんのおかげで出来たこと」
0008名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:45:04.91ID:8pDqrO06
穂乃果「真姫ちゃんがいなかったら、μ’sは曲もないまま、スタートラインにすら立つことができなかった」

穂乃果「花陽ちゃんを引っ張ってきてくれて、結果的に凛ちゃんも入ってくれた」

穂乃果「合宿をしようなんて我儘も聞いてくれたよね。勝手に倒れた時も心配してCDを作ってきてくれて、自分勝手な理由でμ’sを辞めようとしたときも、穂乃果の側に立ってくれた」

穂乃果「考えていけば、いくらでも思いつく。それぐらい、穂乃果にとって真姫ちゃんは大切な人だよ」
0009名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:45:33.27ID:8pDqrO06
真姫「……少し、照れるわね」

穂乃果「真姫ちゃん、顔真っ赤だよ」

真姫「誰のせいよ、誰の」

穂乃果「トマトみたいで可愛いよ」

真姫「あんまり褒められてる気がしないんだけど」

穂乃果「えー、真姫ちゃんトマト好きでしょ?」

真姫「それとこれとは話が別よ」

穂乃果「うーん、そうかな」

真姫「まったく。そんな感じだから海未と違っていまいちモテないのよ」

穂乃果「そう言われると痛いなぁ」

 口ではそう言いながらも、まるで反省した様子はない。
0010名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:47:08.89ID:8pDqrO06
 実際、穂乃果を好きな人はいくらでもいる。彼女がその存在に気づかないのは、幼馴染2人によるガードが固すぎるから。

 まあ本当にたくさんいるかなんて、分からないけどね。
 仕方ないでしょ。好きな相手についてのことは、盲目的に見えちゃうんだから。

穂乃果「さて、お話はこれぐらいにして、そろそろ行こうか」

 時計を見た穂乃果が、笑顔で私に手を指し出す。

 今日はこの後、μ'sのメンバーが集まっての卒業祝いパーティーがあるから。
 
 絵里や希、にこちゃん。卒業していったメンバーも含めて全員が集まる素敵な場所。
 私も楽しみだ、すぐにでも向かいたい。
0011名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:48:10.80ID:8pDqrO06
真姫「待って。もう1つだけいいかしら」

穂乃果「なぁに?」

 でももう一つ、伝えなければいけないことがある。
 
 μ'sに入った時から、ずっと秘めていた気持ち。

真姫「あのね、私ね」

 さっきみたいに冗談に聞こえないように、はっきりと言わなきゃいけない。

真姫「その、あの……」

 心の準備は散々してきた。
 何度も1人で練習した。

 でもいざ彼女を前にすると、言葉が出てこない。
0012名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:48:56.63ID:8pDqrO06
真姫「だから、その……」

 やっぱり私は、素直になれない。

 今回の別れも、結局後悔したまま終わっちゃうのかな。

 今まで以上に、辛い気持ちにならなきゃいけないのかな。

真姫「っ」

 ついに言葉も出なくなる。
 涙が滲み出てくる。嫌だ、こんな風に泣きたくないのに。
0013名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:49:48.04ID:8pDqrO06
穂乃果「落ち着いて、大丈夫だよ」

 そんな私の目に、そっと伸びてくる手。

 穂乃果の、大好きな人の、温かい手。

真姫「い、嫌なの。毎年のように、素直な気持ちを伝えられないまま、大切な人が私の前から居なくなるのが」

 その手に導かれるように出てきたのは、考えていた言葉とはまるで違うもので。

真姫「ずっとそうだった。去年も、にこちゃんに感謝の気持ちを伝えようとしたのに、素直になれずに喧嘩して」

真姫「今年も穂乃果に、伝えたいことがあったのに。どうしても、言葉にできなくて」
0014名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:50:50.88ID:8pDqrO06
 次々とあふれ出す言葉。

 こんなことを言われても困らせるだけなのに。

穂乃果「そっか。辛かったんだね」

 でも穂乃果はそんな私を受け入れてくれて。

穂乃果「大丈夫だよ。穂乃果はずっと、真姫ちゃんが話してくれるまで待っているから」

真姫「でも、もうお別れなのに――」

穂乃果「そうだね、確かに卒業は一つのお別れ」

穂乃果「でもその後、一緒に居たらいけないなんて決まりはないよね」

真姫「!」

 目から鱗。
 そんなこと、考えたこともなかった。
0015名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:51:33.01ID:8pDqrO06
穂乃果「卒業しても、穂乃果はまた音の木坂に遊びに来るよ! 休日には一緒に遊びに行こう!」

穂乃果「何回も会ってれば、きっと真姫ちゃんも素直になれるタイミングがあるよね!」

真姫「なによそれ、いみわかんないわよ」

 環境が変わって今後どうなるか分からないのに。私だって受験生なのに。

穂乃果「うん、やっぱりちょっと素直じゃない方が真姫ちゃんらしくて好きかも」

 穂乃果は笑いながら私の顔を拭う。

 気づけば涙は止まっていた。
0016名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:52:32.43ID:8pDqrO06
穂乃果「さあ、今度こそ行こうか」

 再び差し出される手。
 私はその手をしっかりと取り、握りしめる。

穂乃果「あんまり待たせると、海未ちゃんたちに怒られちゃうよ!」

 走り出す穂乃果。

 その背中に、素直じゃない私はそっと呟く。


真姫「大好きよ、貴女のこと」
0017名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:52:58.44ID:8pDqrO06
おしまい
0018名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2018/02/24(土) 10:53:33.73ID:8pDqrO06
昼前から失礼しました
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