玄関で靴を履き替えていると――すごい勢いで走り寄ってくる足音が、背後から聞こえました。

「ダイヤちゃーんっ!!」

振り返ると、この時間にはあまりにも意外な――曜ちゃんの顔が、目の前にあった。

「おっとと――勢いあまり過ぎちゃった♪」

いつも始業ギリギリに教室に駆け込んでくる遅刻魔の曜が、こんな時間に学校に来るなんて――。

「いったいどうしたの?始業まではまだ30分以上あるのに――」

「いや〜、みんなのチョコを楽しみにしてたら、早起きしちゃって!」

曜ちゃんはへらへら笑って、わたくしに向けて両方の手のひらを差し出してきました。

「ってことで――ダイヤちゃん、チョコちょうだい♡」

まあ――そんなことだろうと、思ったわ。

半分呆れながらも、鞄の中のチョコに手をかけたところで――。

あることを懸念して、曜に声をかけました。

「曜ちゃん、あなた――チョコは持っているのよね?」

「え?」