愛「璃奈ー?」
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愛「…………」
夕飯の買い物のため近所のスーパーに来ていた所……何やら見覚えのある後ろ姿に出くわした。
愛(あれ……璃奈、だよね?)
同じサークルの天王寺璃奈。
……と思しき女の子だった。
フードを目深に被っているけど、パーカーは彼女がいつも着ているやつだし……この下に覗くスカートは虹ヶ咲のやつだし。
チマい背丈もヨチヨチとした足取りも、普段アタシが見ている璃奈に酷似していた。
璃奈「いっきし!」
あ、クシャミした
失礼なこと考えたからだろうか で、クシャミの反動でフードから一瞬見えた彼女の髪
その特徴的な髪色から見ても、どうやら私に背を向けて前を歩くフードガールは天王寺璃奈で間違いないようで……
愛(璃奈も買い物かな……)
何にせよ、話し掛けない選択肢は無いんだけどね
折角会えたんだし、話しながら買い物しよっか 愛「おーい璃奈ー?」
璃奈「…………」ヨチヨチ
愛「……あんら?」
聞こえてないのかな 愛「璃奈ー?」
璃奈「…………」ヨチヨチ
……ちょっと近づく
愛「りなりーん?」
璃奈「…………」ヨチヨチ
……さらに近づく
愛「てんのーじさーん?」
璃奈「…………」ヨチヨチ
……むかっ 愛「オラァッ!」ブワサッ
璃奈「!?!!?!」ビックゥ!
あ、別にキレてはないっスよ?
しかし一昔前のテレビのごとく反応の悪い璃奈に痺れを切らした私は、遂に璃奈へ最大接近し……
その璃奈の頭をスッポリ覆うフードを、力の限り払いのけようとして……
あれ、払いのけられない ……え、なにこのフード固くない?
璃奈「……愛先輩?」
あ、璃奈だ
璃奈「……!!」
璃奈「ち、ちょっ! フード取らないでっ……!」ババッ
そしてようやく私の存在を認めた璃奈は途端に慌てだし……
勢いそのままに、払いのけんとフードを掴む私の手を……逆に払いのけた
あ、何かこれ拒絶されたみたいでショックなんだけど と、ソコまできて分かったけど
愛(あ、音楽聴いてたのね)
後ろ姿では分からなかったこと
璃奈「……何ですか急に」スポスポッ
璃奈は両耳にイヤホンを装着していたのだった
シカトされたわけじゃなかったのね
もし本当にされてたら今夜は立ち直れなかったよ、よかったよかった
璃奈「ちっともよかないんですけど」
璃奈「私、心臓止まるかと思いましたよ」
愛「だよね、ゴメス」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"りんしたいけん"」
愛(そんなのあるんだ) …………
愛「いや、何度か呼び掛けたんだけどね、何か反応無いからシカト案件かと」
璃奈「……先輩を無視なんてしませんよ?」
愛「だよね、璃奈は良い子だもんね」
愛「……でもさ、それ……」
璃奈「?」
愛「いや、そのフード……顔の上半分、完全に隠れてんだけど、危なくない?」
愛「音楽まで聴いてさ……ぶつかるよ?」 璃奈「…………」
璃奈「そうですね。音楽聴くのはやめます」
璃奈「御注意、ありがとうございます」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"ぺこり"」
愛「よろしいよろしい」
愛「……あ、でもフードは譲らないのね」
璃奈「……プライベートでも、なるべく顔は出したくないから」
璃奈「フードの下も……ほら、璃奈ちゃんグラス」
愛「ぐ、グラサンまで……徹底的だなぁ」
璃奈「ボード姿で歩くのもあれだから」 すまん、ちょい出てくる
残ってたらこのスレで
落ちてたらまたいつか 璃奈「愛先輩は……お買い物?」
愛「ん、そーそー。今日はクレアおばさんの出番だよ」
璃奈「クリームシチュー……」
愛「そゆこと」
愛「璃奈も買い物でしょ?」
璃奈「あ、いや。私は食材じゃなくてね……」 …………
愛「おー♪ 普段は食材買うのにしか使わないし、ここの2階は何か新鮮だねー」
璃奈「ほ、本当にいいんですか、付き合ってもらって……」
愛「いーの! 食材はロッカーに入れたし」
愛「私の暇潰しみたいなもんだからさ、荷物持ちくらいやらせてよ♪」
璃奈「あ、ありがとう」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"あめあられ"」
愛「大袈裟だよー」 璃奈が画材を買い求めるとは、なかなか意外なことだった
いろいろと連想して、遂に本格的な似顔絵の描かれた璃奈ちゃんボードでも作るのかな、なんて思ったけど、それも違うらしくて
愛「にしても、璃奈が絵本ねー」
璃奈「意外?」
愛「意外っちゃ意外。でも別に変じゃないよ? かわいくていいじゃん」
璃奈「えへ……」 璃奈はフードの下で(多分)恥ずかしげに笑う。つられて私も
璃奈に聞いた話だと……
その辺の御役所的な繋がりのことは、良く解らないけど、都内にある複数の提携関係にある認可保育園主催で、同じく都内の美術科を有する高校、大学、または都内在住の個人向けに絵本を製作させ、
各々の保育園で園児向けに作品公開するイベントが開催されるらしい。 作品は森の戦士の絵本みたいに、簡単なコピー誌として各保育園へ行き渡り、数週間後に園児たちの投票で最も優秀な作品を選ぶんだとか
最優秀賞に選ばれた作品の製作者には記念盾と賞金が授与されるらしい
璃奈「20万円だって」
愛「にじゅう……! 愛サンもやろっかな」
璃奈「東芸の本職の人達も参加するし、無理じゃないかな……」
愛「そりゃそーだね。棒人間くらいしか書けないし」 …………
画材コーナーに着くと、璃奈は早速、私の持った買い物カゴにポイポイと画材を放り込み始めた
璃奈「新しいスケッチブックに鉛筆一式と、あとクレパスとマッキーと……」
璃奈「あ、ついでに新しいボード帳も買おっかな……」
愛(鉛筆ってこんなに種類あるんだ……)
愛「璃奈って模型得意なのは知ってたけどさ、絵も描けたんだね」
璃奈「璃奈ちゃんボードのあれは走り書きだから」
璃奈「時間掛ければ、ちょっと良いのも描けるよ? えーっと……ほら」
愛「え……うはぁ」
画材を探す片手間でスマホを操作した璃奈は、何かを探すように指をスワイプし、私に見せてきた
映っていたのは、羽化の途中を描いたと思しき、見事な蝉のスケッチだった 蝉は卵から孵ってから死ぬまでの生涯、その殆どの年月を土の中で過ごす
地中で数々の天敵をやり過ごし続け、生殖のために地上に出てきて、そして私達に馴染み深いあの姿に羽化するのだ
璃奈「去年の夏に、吉祥寺の公園で描いたの。日中の羽化は珍しかったから、つい」
璃奈「アプリで描いたやつだから、ちょっと下手だけどね……」
愛「いや……そんなことない」
愛「上手すぎて言葉が……」
璃奈「ほんと? ……うれしい」 愛「でさ、出品するのは、どんな絵本なの」
愛「愛サンの知ってるのだと、シンデレラとかモモタロさんとか……」
愛「あ、"おまえうまそうだな"は映画も見た」
璃奈「私も見たよ」
璃奈「……園児向けだから、あんまり難しいのは描けないよね。私が描いてるのは、魔女に謝りに行くおはなしなの」
愛「…………」
愛「なんて?」
璃奈「魔女に謝りに行く話」 愛「……」
愛「えーと、それは? 思うに? あの……魔女の怒りを買って、何かが奪われて……」
愛「で、それを返して貰うため、みたいな?」
璃奈「うえ」
愛「……璃奈?」 璃奈「…………えーと」
璃奈「そ、そのぉ……////」
愛「えーなんだよう、言い辛いこと?」
璃奈「ち、ちがう」
愛「ネタバレが嫌とか?」
璃奈「そ、そーじゃなくって」
璃奈「…………////」
愛(んー?) 璃奈「え、と……ね。分かった、言うよ」
愛「お、おう」
璃奈「魔女に謝りにいくのはね」
愛「うん」
璃奈「愛を……」
愛「うん」
愛「……へ? わたし?」
璃奈「愛を返して貰うため」
璃奈「です……////」
愛「…………」
愛「ふ、ふーん////」
ちょっと変な空気になった 絵本のあらすじとしては単純で、愛の失われた世界に生まれた花の妖精が、最後の愛を使い果たして自分を助けてくれた老夫妻に恩返しをするため、自分勝手な振る舞いを続ける人間達に怒った魔女へ謝って、老夫妻の分の愛を返して貰いに旅に出る話、らしい
良い話じゃん
店員「ありがとうございましたー」
璃奈「……」ホクホク
愛「結構するんだねー画材って」
璃奈「えへへ……先輩ありがとうございました。助かりました」
愛「いやいや良いんだよ。画材見るのも楽しかったしねー」
愛「絵本、喜んでくれるといいね」
璃奈「頑張ります。璃奈ちゃんボード……"どぅーまいべすと"」 愛「どぅーゆあべすとって感じだね」
愛「完成したら見せてよね。楽しみにしてるから」
璃奈「はいっ」
愛「それで、早く私を取り戻してねっ♪」
璃奈「……」
愛「……忘れて」
璃奈「やだ」クスクス
――――――
――――
―― ――
――――
――――――
夜・天王寺家
璃奈「…………」カキカキ
璃奈「…………」シュッシュッ…カリカリ
璃奈「…………」ペラリ
璃奈「…………」
璃奈「こんなものかな……」 璃奈「…………」
璃奈「へへへ……♪」ボフンッ
璃奈「ふふふふ……」ゴロゴロ
璃奈「愛先輩に褒められた……」
璃奈「んふふふ……」ゴロゴロゴロ
璃奈「…………」
璃奈「……眠い」フアーァ
璃奈「…………」
璃奈(でも、もう少し頑張ろっかな)ペラ その昔、この星は愛の溢れた場所でした
愛は純粋な愛のまま、星に満ちていました
ひとびとは互いを愛し、道を違えれば愛故に叱り、そして許し
ひとびとは神に愛され、熱心に畑を耕し、誰もが慎ましくも、幸せに暮らしていました しかし、ひとびとの争いを自身の糧とする悪魔は、この愛に溢れた優しい世界が大嫌いでした
そこで悪魔は人間の姿に化け、愛を知る人間へと近づき、心無い言葉を掛けます
"お前は決して美しくなどない。連中のお前を誉める言葉は全て嘘っぱちだ"
"お前の妻が貴様を愛している鉦鼓など無い。上辺だけの言葉を信じるのか"
"考えることこそ人間として賢いんだ。疑わないと本当の幸せは無いぞ"
……こうして、愛を知る全ての人の中に、疑いの感情は芽生えてしまいました 疑いの感情とは、まるで魔法のようでした
1人の人間が疑いの感情を向ければ、疑いを受けた者は怒りや憎しみの感情を露わにし……やがて両者から愛は消え失せ、悲しい争いへと発展していく 癌細胞のような速さで世界の果てまで広がった憎しみの心は、やがて世界すらも焼き尽くす大きな戦争へと発展し、その強大な憎しみの心を喰らい、悪魔は更なる力を付けていきました
そして、あるとき
ある国の王は、強すぎる憎しみに煽られ、遂に禁断の力の封印を解こうとします もしも封印が解かれれば、人はおろか、何の罪も無い動物や植物までも殺し尽くしてしまう……忌まわしき呪いの力
これに怒った魔女は、かつて自分と共にあった人間に完全に愛想を尽かし、人間の心のほとんどを吸い上げ、彼らの時間を止めてしまったのです
人間の中に僅かに残されていた愛すらも吸い上げた魔女は、悲しそうな表情で世界の果てに築いた自分の城へと身を隠し……いまも、灰色になってしまった世界を眺めているといいます
それから長い年月は経ち…… ………………
………………
せつ菜「え、ここで終わりですか!?」 一旦ここまで
保守とかよく解らんのだが、したらばの方がいいのかね 虹のss初めて読んだ、おつおつ
とりあえず埋められてない以上はこのままここでやるんでいいと思う
あと25越えれば即死は回避してるから保守はもう大丈夫だよ 何か引っ掛かると思ったら
>>10の後に↓が入ります
愛「……で、その取れないフードは……」
璃奈「別に取れない訳じゃないよ?」
璃奈「でも、風で取れそうになるの嫌だから……ちょっと針金で補給してるの」
愛「け、形状記憶フード?」
璃奈「作るのに苦労した」
璃奈「持ってるパーカーは全部、針金が入ってるよ」フフン
愛(もう目出し帽でも被ればいいのに……) 書きため無いから書き直すこともあるかも
仕事してきます ――――――
――――
――
6日後 虹ヶ咲スクールアイドルサークル部室
愛「っー♪ きゃぷてんでーっぷーぅ♪」
愛「なーぁじゃす、でっぷー」
愛(ふいー、今日の御飯は何にしよっかなーと)テクテク
愛(練習しながら考えよっかねーん)
ガチャリ
愛「ちっすー愛サンでーす」
せつ菜「え、ここで終わりですか!?」
愛「うおっ、なに!?」ビクリ
果林「ん……」
果林「あら、ナイスタイミングね」 愛「なんだどーした? 何が終わりなのさ」オロオロ…
璃奈「あ、愛先輩だ……」パァ
せつ菜「え? あ、愛さんですか。お疲れさまです」
果林「ハーイ愛、璃奈が何かお待ちかねみたいよ?」
せつ菜「ご、ごめんなさい。変なとこ見せまして……」
愛「いや別に気にしちゃいないけど……お待ちかねって何のことさ」
果林「そうよね璃奈? 愛センパイに見せたくて仕方無かったんだよねー?」
璃奈「う……////」
せつ菜「そう! 愛さん見てくださいよこれ!」バッ
せつ菜「璃奈さんが描いたんですって! 本当におもしろいんですよ!」
愛「え……おう」 そういってせつ菜が興奮気味に渡してきたのは……何この紙束
何かカラフルでカワイイ女の子の絵が描かれてて……綺麗だけど
璃奈「こ、この前の絵本だよ……。半分まで完成したから、コピーを持ってきたの」
愛「絵本……、あーこないだのスーパーの時ね!」
愛「え、つってもまだ1週間経たないよね、あれから。もうそんなに出来たんだ。早いねぇ」
璃奈「頑張ったよ。璃奈ちゃんボード……"エヘンぷい"」
果林「愛に早く見て貰いたかったからね」
愛「ほう?」
璃奈「あ、愛先輩だけじゃないもん////」
果林「照れない照れない。愛も嬉しいわよね?」
愛「おうそりゃーね。こんな後輩がいて幸せだ、あたしゃ」ナデナデワシャワシャ
果林「ほらね、照れることないない」
愛「そーそー」ワシャワシャ
璃奈「うううー////」
愛「……フード取ってもいい?」
璃奈「だ、ダメだからね」
愛「ちっ、ダメか」
愛「…………」
愛「そっか……」 ――――――
――――
――
璃奈の持ってきた20枚近いコピー紙
そこに彩られた鮮やかな世界には、しかし人間の愚かしさ、脆さが悲しげに描写され、これから始まる物語の導入部分として、見事なまでに完成されており……素人目にではあるけど、正真正銘、絵本と呼ぶに相応しい出来栄えの作品であった
璃奈「あくまで子ども向けだから、ストーリーはもうちょっと簡単にするけどね」
愛「へーえ凄い……すごいよ、思った以上だ……璃奈ホントに芸術の才能あるねぇ」
せつ菜「そうなんですよ……でも、これからいざっ! ……と思ったらソコが最後のページで……」
せつ菜「これじゃ生殺しも良いトコですよー……」
愛「せつ菜、こーゆーの好きそうだもんねー」
せつ菜「はい、好きです! 絵も信じられないくらい上手いですし……」
せつ菜「もー、続きが気になっちゃいます……勉強に集中出来なくなりそう」
璃奈「照れる」
璃奈「それでね、この後は、灰色の世界に生まれた花の妖精が、ピンチの所を人間の老夫妻に助けられて……」
せつ菜「ちぇーいちぇちぇーい!!」バババッ
愛「うおっ」
璃奈「うわあ」ビクリ せつ菜「はあ……はあ、危ない危ない」
せつ菜「ね、ネタバレはやめてくださいね……楽しみにしたいので」
璃奈「え、……あ、はい。じゃあ出来たら皆の分あげるね?」
せつ菜「是非それで! 日々の楽しみが増えました!」
愛「すっかりファンだねせつ菜……」
果林「あら、私にもくれるの?」
璃奈「……いらない?」
果林「まさか。貰えるなら喜んでいただくわ」
璃奈「楽しみにしててね……」 …………
璃奈「……ねえ愛先輩」コソッ
愛「ん、なあに?」
璃奈「完成したら、愛先輩が一番に見てくれる?」
愛「……ん、どゆこと?」
璃奈「愛先輩に、完成した絵本、一番に見てほしい……」
愛「…………」
愛「……あれま、読者第1号ってこと?」
璃奈「迷惑?」
愛「まーさか、寧ろ愛サン貰っちゃって良いの? そんな大役」
璃奈「うん……ちょっとお世話になったし、絵本のことも最初に話したし……」
愛「名誉だねー。嬉しいじゃん」 璃奈「そ、それに……愛先輩だから」
愛「へ……」
璃奈「愛先輩だから、見てもらいたいっていうのも……あるので」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"りすぺくとゆー"」
愛「……そっ」
愛「そっ……かあ……何か照れるなぁ、へへへ」
璃奈「……エヘヘ」
果林(あらかわいい……面白そうだし暫く黙っておきましょ)
せつ菜「ふたりとも仲良いでムゴッ!?」
果林「空気読みなさい」ボソボソ
せつ菜「むごご……いきできな……」
愛(何いきなり抱き合ってんの、あの2人……) 今度さ、璃奈が描いてるトコ見せてくれる?
え……ちょっと恥ずかしい
邪魔はしないからさ……あ、ってことは璃奈んチに行けるんだね!
あ、あう……
果林「私ね……初めて璃奈を見た時、正直言うと不安だったんだ」
果林「ほら、普段から徹底し過ぎなくらい顔出しNGだし……」
果林「素直だけど、お世辞にも社交的とは言えないしね」
せつ菜「…………」
せつ菜「ええ、本当のトコ言うと私もですよ」 せつ菜「特にあのボード……。ぶっちゃけ、璃奈さんのこと知らない内は、ふざけてるとしか思えなくて……」
せつ菜「これからこの子とやっていくなんて、不安で仕方ありませんでした……」
果林「いわゆる"普通"の感性なら、そう思うのが自然なとこよね」
果林「だから……私としては、愛みたいな子がグループに居てくれて幸いだったと思う」
せつ菜「同意します。ここで一番コミュ力があるのって、他でもない愛さんですもんね」
果林「やっぱり最初は、どうしても璃奈だけ孤立気味で……そこに愛は率先して話し掛けに行ってくれて」
果林「私も私なりに手を焼きそうだなぁって思ってたから、愛が居て大助かりだった」
せつ菜「……私は果林さんだって、グループのまとめ役だと思ってますよ?」
果林「ありがとっ。でも私の方が年上で、しかもそういうキャラで売ってるんだもの。あの時はちょっと自信無くしちゃってたかも」
せつ菜「あんまり思い詰めないでくださいね。……果林さんは果林さんです」
果林「うん、もちろん分かってるわ。ありがとね、せつ菜」 果林「たまにかすみのパンの実験台にされたりしてるけど、今では璃奈もグループの一員として溶け込んでるし」
せつ菜「喜ばしいですね、パンはともかく」
果林「璃奈は元から良い子だけど、愛には特に素直にしていられる」
果林「知ってる? 気付いたら璃奈って、無意識なのか愛に近い方へ段々と寄っていくのよ」
せつ菜「え」
果林「自然と安心出来る方に行っちゃうのよね。見てるこっちが恥ずかしくなるわ」
せつ菜「え、え、初耳なんですが」
果林「本当よ? 今度、璃奈の動き観察してみたら? おもしろいわよ」
せつ菜「……あの、まさか璃奈さんって愛さんのこと……」
果林「……別に変な意味は無いからね? 愛に対して一番、懐いてるって話よ」
せつ菜「あ……そ、そーですよね、ですよねはい。解ってます、ええ」
果林「せつ菜……」アキレ 果林「まあ、いいわ。ほら、愛って見て呉れはチャラそうだけど、そんな性格じゃない?」
果林「だからね……年下のファンも多いのよ。憧れられちゃうのね」
せつ菜「あー、何か分かる気がしますソレ。面倒見良い年下キラーなんですね、愛さん」
せつ菜(たまにお線香みたいな匂いすることあるけど)
果林「そう、料理は出来るし、フランクで付き合い易いし、誰とでも仲良く出来る」
果林(たまにぬか漬けの匂いすることあるけど)
果林「同じお姉さん系統としては、見習いたいとこも多いかも」
せつ菜「ですねー、私も金髪に染めたら御利益ありますかね?」
果林「あら、やってあげよっか?」
せつ菜「じ、冗談ですよぉ……」 せつ菜「ところで果林さん……」
果林「なにかしら」ギュー
せつ菜「いや……いつまで抱き締めるんですか、私のこと」
果林「あら、嫌?」
せつ菜「そろそろ嫌になりそうです……ていうか苦しいです」
果林「…………」ギュギュー
せつ菜「ちょ、何で更に締めるんですか!? 痛いんですけど!」
果林「あったかくてきもちいでちゅ……」
せつ菜「何ですか今の!?」
果林「ぎゅー……せつ菜ぎゅー」ギュムー
せつ菜「たーすーけーてー!」 愛「さっきから何してんの2人とも……ラブなの?」
璃奈「ふぁ……。おめでとうございます」
果林「うん、結婚式には招待するね……私が新郎です」ギュギュー
せつ菜「新婦が苦しんでるんですけど!」グエー
愛「……はあ、冗談は損くらいにしてさぁ、そろそろ放さないと、せつ菜が潰れ……」
<ハイ シュジンコウデース!
愛「ん」
<シュジンコウデース シュジンコウガトオリマース ミチヲアケテクダサーイ!
愛「……あ、歩夢が来たかな」 ガチャン
歩夢「お疲れ様です、遅れてごめんなさい」
愛「やっほー歩夢、遅かったね」
璃奈「歩夢さん……こんにちは」
歩夢「愛ちゃん、璃奈ちゃんもお疲れ様です」
歩夢「……あの、果林さんとせつ菜ちゃんは……何を」
愛「ん……ああ、気にしないでいいよ、ただ婚約しただけだから」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"じゅてーむ"」
せつ菜「ち、ちが」
歩夢「うぇええ!? 何ですかそれ、とっても気になるんですが!」
果林「せつ菜ー、ハネムーンは箱根にしよーね……」
歩夢「意外と近場ですね!」 ガチャン
かすみ「あー恥ずかしかった」
かすみ「歩夢先輩! メガホン使いながら歩くのはやめてくださいって……」
かすみ「あれ……ほ……ど」
果林「あら、かすみも来たわ。お疲れ」ギュー
せつ菜「ぐえええ」ギュムー
愛「おう、かすみもおつか……かすみ?」
かすみ「…………果林先輩」
璃奈(あ、やばいかも)
かすみ「…………」スウウゥ…
歩夢(おや……かすみちゃんの様子が……) かすみ「よく……分かりました」ハイライトオフ
かすみ「先輩は……だれにでもそういうこと、するんですね」
果林「え……かすみ?」
せつ菜「か、果林さ……とにかく放して」
果林「あ、はい」パッ
かすみ「……」
かすみ「……さきに、トレーニングルームに行きます」
かすみ「みなさんも、遅れないでくださいね」
全員「アッハイ……」
かすみ「…………」
ギイイィイ……ガ、チャン……
ガチャン……ガチャン……(※エコー) ……私には事情がよく分からんが……
部屋に入ってきたかすみは、果林とせつ菜がハグしてるのを見た瞬間……
何か能面よりもアレな表情になって……何か……出て行っちゃった
……どゆこと? 額面通りに捉えて良いのこれ
……え、じゃあ、そーゆーこと? ……いや、まさかね? ははは
せつ菜「…………」アタマオサエ
果林「……どうしたの、かすみは」
愛「さ、さあ……どうしたんだろうね、うへ、ははへは」→
果林「どうして目を合わせてくれないのよ愛」
歩夢(……早く練習いきたいな) 璃奈「果林さん……あの、とりあえず……フォローすべきだよ」
果林「あの、話がよく……」
せつ菜「お姉さんキャラで売ってるんでしょ、自分で考えて完璧にフォローしてください」
果林「あのー、せつ菜……怒ってる?」
せつ菜「さ、練習行きましょっか、時間はまだありますけど、早めに行きましょう」
歩夢「あ、そうですね、行きましょう行きましょ」ルンルン
愛「…………」
愛「璃奈、私たちも行こ」
璃奈「うん、今日も練習がんばるビィ」
愛「懐かしいねぇ、そのネタ」
果林「ねえちょっと、ねえ? 待ってよう」 果林「ねえ察するに原因は私なのよね?」
果林「もうプライド捨てていうけど、全く分かんないのよ! 何でかすみが怒ってるのか!」
果林「全然わかんないの! 皆の力が無いと、かすみと仲直りは難しそうなの!」
果林「お姉さん泣きそう!」
果林「ねえちょっと? 誰かー」
果林「…………」
果林「…………」クスン
果林「……道は自分で切り開くしかないのか」
果林「……仕方ないわよね、お姉さんキャラだもん」
果林「…………」
果林「だれかたすけて……」 ――――――
――――
――
うーん……本当は皆には先に練習行ってもらって、璃奈と例の話をつける手筈だったんだけど……この分じゃ、それは帰りまで持ち越しになっちゃうね。
この後は激しい練習が控えているし、無理してでも璃奈と一緒に抜けるべきだったのかな……。
私って意外と優柔不断なのかもね……はあ、情けない。
…………
過ぎた時間を悔やんでも仕方ない。もう練習は始まっちゃうし、今は何も無いことを祈ろう。
今日の練習は、なるべく璃奈の近くに着いていないといけないね……うん。 キリ悪いけどここまで
順当にいけば明後日辺りには終わる
書きためなくてクオリティ低いのは申し訳ないね 日付が変わった辺りで更新
夜勤頼まれたら遅れるかも ――
――――
――――――
トレーニングルーム クールダウン中
璃奈「かすみは果林さんが誰にでも云々……焼きもち云々」
果林「何だ、そんなことだったの。かわいいとこあるわね」
璃奈「……"そんなこと"とか言っちゃダメだよ?」ジトッ
果林「はい……わかってます」シュン…
璃奈「かすみは、普段ああでも、ちょっと果林さんに頼ってるとこ、ありそうだから」
璃奈「だから、あんまりかすみの前で軽薄なことしちゃ、ダメかも。璃奈ちゃんボード……"じぇらすぃー"」
果林「はい……反省してます」
璃奈「ちゃんとフォロー、忘れないでね」
果林「必ずしておくわ……」
璃奈「よろしい。……ふあ……」 愛「はあ……はあ……ふう」
歩夢「お疲れ様です、タオルです。ドリンクもありますよ」バサリ
愛「んぉ、あーありがと歩夢……」ゴシゴシ…
愛(やっぱり……思った通りかもね。練習を見てても、そんな感じがする)
愛(……璃奈は、この6日間)
歩夢「愛ちゃん……練習中、ずっと璃奈ちゃんの方を見てましたね」
愛「! うわー参ったな、歩夢には解っちゃうか」
歩夢「私だけじゃありませんよ、せつ菜ちゃんも……」
せつ菜「…………」チラリ
愛「うぐっ」
歩夢「もしかしたらかすみちゃん、果林さんだって」
かすみ「…………」チラリ
果林「…………」チラリ
歩夢「割と分かりやすかったですよ」 愛「マジか? ……うわーちょっとハズい、璃奈にはバレてないかな」
歩夢「ふふ、さてどうでしょうね」
歩夢「何せ、あのフード練習中も被ってて、璃奈ちゃんの表情とかは殆ど読み取れませんから」
愛「針金で固定してあるらしいよ、あのフード」
歩夢「え、なにそれこわい」
歩夢「…………」ゴクゴク
歩夢「ぬひーぃ、生き返りますぅ」プハァ
愛「おっさんくさっ」 歩夢「璃奈ちゃんに何かあるんですか?」
愛「え」
歩夢「だからあんなにチラチラ見てたんですよね?
歩夢「私達に出来ることがあれば、話してみてほしいな、って」
愛「…………」
歩夢「話しにくいこと?」
愛「……いやその、もしかしたら、私が片付けなきゃいけないことかもしれなくってさ」
愛「私と璃奈の問題ってことね? だから出来るだけ、皆の手を煩わせることは無い方がベストで、ね」
愛「あ、勘違いしないでよ? 別に迷惑だとか」
歩夢「あはは、大丈夫ですよ。皆、愛ちゃんが優しいことは知っています」
歩夢「……本当に、大事な後輩なんですね」
愛「……まあね」
歩夢「分かりましたっ、私も深入りはしませんね」 歩夢「でも困ったときは、遠慮しないで言ってください。微力ながら助けになりますから」
歩夢「窓口は年中無休で開いてますよ♪」
愛「歩夢……」
せつ菜「あ、歩夢さーん、タオルまだあります?」
歩夢「あ、ありますよ。ドリンクもいかがですか」
せつ菜「くださーい……。もー喉が砂漠みたい」ヘトヘト
歩夢「ふふ……では愛ちゃん、また後で」スタスタ
歩夢「がんばってくださいね」
愛「う、うん」 愛(……歩夢、たまにアレだけど、リーダー気質なのは確かだね)
愛「そっか、バレバレか。……本当なら愛サン超カッコ悪いねぇ」
かすみ「少なくとも、バレバレなのは本当です」ヌッ
愛「ッ!? うぉ、うわぁ! カスカスが出たぁ!」
かすみ「な、なんですかその反応……あとカスカスはやめてください」
かすみ「じゃなくて、愛先輩の視線のことは、私も分かってたって話ですよ」
かすみ「寧ろ、あれでチラ見してるつもりだったんですか?」
愛「むう……カスカスにまで言われてしまったぜ」
かすみ「りな子は知りませんけど、やるなら上手くやった方がいいですよ。もう少し」
愛「へーい」 愛「……あのさ、やっぱ気になる? 璃奈のこと」
かすみ「は?」
愛「かすみは璃奈のあれ、気付いてるの?」
かすみ「……何のことを言ってるんですか? 薮から棒に」
愛(あ、かすみは気付いてナイっぽい)
かすみ「…………」
かすみ「もしかして、先輩がりな子を見てたのって、りな子に何かあって」
愛「あーいやいや、違う。分かんないならいいの」
愛「うん、いいの。気にしないどいて」
かすみ「はあ……?」
かすみ「まあ、何でもいいですけど……何かあっても先輩がどうにかするでしょうし」
愛「あ、あはは。そんなに頼りに見えちゃう? 愛サンたら」
かすみ「あなた年下たらしですもん」
愛「年下たらし!?」ガーン
――――――
――――
―― ――
――――
――――――
せつ菜ー……さっきはごめーん
はぁ、もういいですから……今はかすみさんのことに集中してください
はーい……責任重大だわ
歩夢先輩、私にもドリンクちょーだい
え、あ……もう普通のミネラルウォーターしか無い……
璃奈ちゃんボード……"WTF" でもちょーだい
…………
愛「…………」
愛「あのさ、かすみ……」
かすみ「何ですか?」
愛「その、果林は別に」
かすみ「それに関しては」
愛「 」ビクッ かすみ「……それに関しては、果林先輩から話して頂けると思いますので」
かすみ「お心遣いは有難いですが……お気持ちだけ受け取っておきます」
愛「…………お、おう」
かすみ「……」
かすみ「大丈夫です、私も感情で動き過ぎていた自覚はあります」
かすみ「よくよく考えれば、果林先輩のあれは、日常風景ですもんね」
愛「皆、気にしては無いと思うから……だから軽く考えた方がいいよ」
かすみ「はい……お騒がせしてすいませんでした」
愛「いーのいーの」 愛「…………でさ、これ訊いて良いのか分かんないけど」
愛「あのさ……その……好き、なの?」
かすみ「?」
愛「果林のこと、あの、何にも代え難いってゆーか」
愛「そんな感じで……」
かすみ「えー? かすみん、一体なんのことかぁ……」
かすみ「…………」
愛「…………」
かすみ「……ええ、好きですよ、大好きですとも」
かすみ「具体的に言うと、ずっと一緒にいてほしいくらいに。恋愛感情と言っても良いですかね」
愛「!」
愛「そ、そうなんだ……」
かすみ「てゆーか、バレてるの覚悟してるつもりだったんですけど。愛先輩も気付いてなかったんですね?」
愛「し、正直、今日のアレ見て、やっと"もしかしたら"って思い至った次第でして」
かすみ「はー……果林先輩といい愛先輩といい」
かすみ「面倒見良いお姉さんキャラは、鈍くなきゃいけない決まりでもあるんですかねぇ」チクチク
愛「うぐぐ」グサグサ かすみ「はあ……」タメイキ
かすみ「それで、引きましたか?」
愛「ん?」
かすみ「グループの中に、同性愛者……いやかすみは男性もイケますけど」
かすみ「えーっと要するに、マイノリティが居るわけですが」
愛「あー……かすみには嘘吐きたくないから言うけど、若干ね」
かすみ「ええ結構です。正直に言ってくれた方が気が楽ですから」
愛「い、いやでも、これでかすみとの付き合いを改めようとか、そんなつもりは無いからね」
愛「私としては応援するつもりだから。……素敵じゃん? 一途に思う心って」
愛「それが同性でも、素敵さに変わりは無いと、愛サン思うよ」
かすみ「……ありがとうございます。そう言ってくれるだけでも救いです」 愛「……」
愛「……もしかしたら、璃奈がさ」
かすみ「ハイ?」
愛「璃奈がさ、私のために自分を削ってるかもしれないんだ」
かすみ「なんですか急に……ノロケですか?」
愛「ち、違うよ。そんなんじゃない」
愛「確信があるでは無いんだけどさ、状況証拠だけなら幾つかあって……」
愛「そんでしかも、璃奈本人はそれが、自分のためにならないって自覚無くやってる、かもしれなくて」
かすみ「……かすみには何とも」 かすみ「それ、もしかして、りな子の描いた絵本に関係あります?」
愛「え、かすみも知ってたの」
かすみ「ええ、クラスで嬉しそうに何か見てたので……」
かすみ「覗き込んでみたら、綺麗な絵本でしたよ? 悔しいですけど、かすみには出来ない芸当です」
愛「だよね。ストーリーも固まってて、本当に綺麗な絵柄でさ」
愛「…………」
愛「あのさ、かすみ」
かすみ「はい?」 愛「かすみの感覚で構わないんだけど……あの絵本さ」
かすみ「はあ」
愛「セミプロくらいの絵本作家が1から描くとして……あの辺りまで、どんくらい掛かると思う?」
かすみ「……えー、何ですか急に。変な質問しますね」
愛「い、いやぁ、考え込まないでいいよ。かすみの感覚でいいから」ヘラヘラ
かすみ「簡単に言いますねー」
かすみ「…………」ウーン
かすみ「……かすみの主観ですけど、集中して1週間か……」
かすみ「直してる時間も考慮するなら、それ以上は掛かるんじゃないですか?」
愛「……そっか」
愛「やっぱ、そう思うよねぇ」
かすみ「訳分かりませんよ……」
かすみ「そろそろ時間ですし、歩夢先輩達のとこに戻りましょう」
愛「…………そうだね」
――――――
――――
―― ――
――――
――――――
歩夢「よーし、今日はここまでです!」
歩夢「シャワーを浴びたら、皆さん早めに帰るようにしてください!」
全員「ありがとうごさいましたー!」 璃奈「はあ……はあ……疲れた」ヨタヨタ
せつ菜「今日は一段とキツかったですねー……」
歩夢「せつ菜ちゃん、大活躍でしたけど、あのステップからの……」
せつ菜「それは両者の距離感的に……」
璃奈「私とせつ菜じゃ歩幅の違いが……」
…………
かすみ「…………」ハア…ハア…
果林「かすみ」
かすみ「ッ」
果林「……この後、時間ある?」
かすみ「……、……いいですよ」
果林「ありがと」
かすみ「……少し、待ってください。息を整えたいので」ハア…ハア… 練習終わりの、全体的に気の抜けた雰囲気。
しかし、そこの歩夢たち3人は今日の練習を振り返って語らっており…… 一方その反対側では、果林とかすみが……何とも言えない表情を浮かべて、何事かを示し合わせている。
思うに、これから例の件の仲直りに向かうんだろう。 愛(かすみ、いつか想いが叶うと良いね)
"どぅーゆあべすと"
私は内心だけで密かなエールを送り……
……これから私のやるべきことを始める。 愛「はーぁ……」
燻る緊張を抑える意味で、深呼吸をひとつ……
私は、今も語らう歩夢たちへと近づき……
そして 璃奈「璃奈ちゃんボード……"げんきいっぱ
愛「 璃 奈 」
璃奈「ッ!?」
歩夢「……!」
せつ菜「……?」 その小さな肩を叩く
少し大きな声を出したので、3人の間の空気を、ちょっと停滞させたみたいだった
……悪いことしたとは思うけど、璃奈の意識を完全に私へ向けるためだし、まあ……許してほしいかな
かすみ「……果林先輩、行きましょ」
果林「え……ええ」
かすみと果林がトレーニングルームから出て行った……ありがと、かすみ
愛「……? あ、ごめん。声デカ過ぎたかな」
愛「3人とも夢中っぽかったからさ」
愛「……で、璃奈と2人で話があるんだけど……璃奈、借りてもいい?」 璃奈「あ、愛先輩……?」
歩夢「あ、はい……どうぞ。そろそろ私達もシャワー行くつもりでしたので」
せつ菜「すみません。つい話し込んでしまいまして」
愛「あ、謝んないでよぉ……ごめんねーデカイ声だしてー」
せつ菜「は、はあ……」
璃奈「…………」
愛「さ、ちょっと部室にいこ。すぐに終わる話だと思うから」ニコリ
璃奈「……はい」
白々しい演技で誤魔化し、こうして私は、璃奈と2人の時間を得ることに成功した
この予想が外れてくれてるといいと願いつつ……さあ、ちっぽけな戦いといこうかな
――――――
――――
―― ちょいと疲れたんで今日はここまで
明日までに終われるか怪しくなったぞ ――
――――
――――――
ー部室ー
ガララ…カチャン
愛「いやーへへ、ごめんねいきなり時間もらっちゃって」
璃奈「い、いえ……良いんです」フルフル
璃奈「話って何ですか?」
愛「…………うん、話ね」
愛「あるんだよね、勘違いであってほしいけど……話が」
璃奈「……? あ、愛先輩?」
2人以外には誰も居ない夕暮れの部室
夕陽のちょっと眩しい室内で、私から数歩分くらい離れた場所に立つ璃奈
御丁寧に練習着すら顔の上半分を隠すフードの付いたパーカーで……いつものことながら、その素顔は下半分しか窺えない
愛「話、あの絵本に関係したことなんだけどさ……」
璃奈「え、絵本……、が、どうかしたの」
愛「蒸し返すようだけど――――」
愛「……果林がさ、何か、璃奈はどーしても私に見せたがってた、みたいなこと言ってたじゃん?」
璃奈「え」 愛「それつまりさ……璃奈、例の保育園のイベントもそうだけど、その……」
愛「私のため……に、頑張ってくれた。……ってこと、でもあるって認識でいいの?」
璃奈「…………」
璃奈「え、うぇ/////!?」
璃奈「え、えへうええとと、その、えーえと」ワタワタ
愛「ごめん、真面目に訊いてるの」
愛「出来れば、璃奈も真剣に答えてほしいわけ」
璃奈「あ、あう、あう////」
愛「璃奈、答えて」
璃奈「うう……////」プシュー… 愛「どうなの璃奈」
愛「私は別に笑ったりしない……答えて」
璃奈「…………」
璃奈「果林先輩の言ってたことは……間違って、ない」
璃奈「愛先輩だけじゃないって言ったのも嘘じゃないよ。でも――――」
璃奈「本心は、その……愛先輩に……一番、誉めてもらいたかった……」
璃奈「うう////」モジモジ
愛「…………」 愛「うん、そっか」
璃奈「この前スーパーで会った時、絵を誉めてくれて」
璃奈「……それが、とても……とっても嬉しかったの」
愛「うん」
愛「でもどうして……こう言ったらアレだけど、それだけで私のために?」
璃奈「ま、前から、憧れだったからです……あ、愛先輩が////」
…………ちょっと思考が止まる
愛「……あこがれ?」 愛「え――――あ、憧れって////」
璃奈「うん……」
璃奈「私……グループが出来たばかりの頃は、浮いてたでしょ?」
璃奈「顔出しNGだし……璃奈ちゃんボードだし、背も低いし」
愛「い、いま思い返せば、まあね」
愛(確かに浮いてたけど、背が低いのは関係無いんじゃないかなぁ)
璃奈「かすみとは同級生だけどクラスも違うから、知り合ったのは、あの時が初めてだし」
璃奈「……スクールアイドル始めたのは良いけど、これからやっていけるか、不安だった」
璃奈「そんな私の、抱えてた不安を、軽くしてくれたのが……愛先輩」
璃奈「……憶えてる?グループの中で、私に最初に話し掛けてくれたの……愛先輩だったんだよ?」
愛「…………」 ………………
ー回想ー
そうだ
あの時、確かに私は―――
今年の春、結成されたグループの仲間達の顔合わせの時
何か輪の中から外れてる子が居るなーと思って、その小さな女の子
今にして思えば璃奈に話し掛けたんだ
その時から、例の顔の半分が隠れるフードは被っていたし……
何より、自己紹介で彼女の披露した……記念すべき璃奈ちゃんボード1発目の時 璃奈「天王寺璃奈。1年生だよ」
璃奈「顔出しはNGだけど、アイドル頑張る。本当だよ?」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"にっこりん♪"」
……現実的な話、それで引かないメンタル持った人の割合の方が低いと思うわけで で、当時の璃奈は相応の自己紹介を経て相応に孤立気味になり……
愛「ちっすー、あんた天王寺さんだっけ? そんなとこ居ないで、こっち来なよー♪」
璃奈「へ」
助け船を出すつもりで、私は璃奈に話し掛けたんだった
割と軽い気持ちだったけどね、私は
愛「てか本当ちっこいねー? 人形みたいでカワイイじゃんこのー」ワシャワシャ
璃奈「あわわわ」オロオロ
…………………… 璃奈「私……会話も上手い方じゃないから……だから、愛先輩が話し掛けてくれなかったら、今もグループを続けられてたか分からないよ」
璃奈「あの時は、本当にありがとう////」
愛「…………ううん、私が勝手にやったことだから」
璃奈「そこから、かな。一緒に活動してる内に、愛先輩の良いトコ、沢山見えてきて……」
璃奈「私の持ててなかったもの、先輩はイッパイ持ってて」
愛「…………」
璃奈「愛先輩と居るのが一番……でね。だから、その」
璃奈「先輩に誉められたのが、とても……」
璃奈「もっと誉められたい……と、思って―――」
愛「そっか……」 愛(ははは……年下たらし……かぁ)
かすみに言われたこと、余りに的を射てる気がして、つい自嘲気味な笑いが漏れる
……でも、ここまでは良い
私が年下たらしだからと言って、それは私が正しいと思う行いをしてきた果ての結果
たらし、なんていう称号は甚だ不満だけど、後悔なんて抱くはずもない
本題は――――ここから始まるんだ
愛「ありがとうね、璃奈」 愛「自分のやってることが、人にそこまで影響与えてるって、考えたこともなかった」
璃奈「その節は、本当に、お世話になりました」
璃奈「絵本の続き……、先輩のために頑張って描くね」
愛「へへ……」
愛「自惚れっぽいこと言うけど、後輩から慕われるのって、いいもんじゃん」
璃奈「自惚れじゃ、ないよ」
璃奈「愛先輩のことは、本当に尊敬してる」
愛「はは……////」
愛「不束者だけど……これからも愛先輩でいて、良い?」
璃奈「っ、うん! お願いします」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"りすぺくとゆー"」 愛「…………」ニコリ
璃奈「先輩……」ニコリ
……………………
……よし、ここからだ 愛「それでさ璃奈……あの窓のとこを見てほしいんだけど」
と
璃奈「え?……うわあぁッ!?」
不意に的外れな方向を指差し、油断してそちらを振り向いた璃奈。
そこへ素早く駆け寄り、私は璃奈の小さな両肩を強めに掴んで……
ドタンッと――――
足を引っ掛けて璃奈のバランスを崩し……
……机の上に仰向けになるよう
……押し倒した
璃奈「…………」
璃奈「は?」
璃奈「うええ!?/////」カアァァ 人を押し倒すなんて、今までの人生で恐らく初めてだったから、怪我をさせないように上手く出来るか不安なとこもあったけど――――
璃奈は、その高校生にしてはな身長に相応の軽い体重だったので、幸い女の私でも容易に出来た。
愛「……簡単に出来ちゃった」グイ…
愛「軽いんだね、璃奈のカラダ」
璃奈「せせ、せんぱ////、なに、な、な/////」
愛「実は……璃奈にどーしてもやっときたいことがあってさ」
璃奈「あ、あひ/////、ううあわ、わわ////」
愛「ここに来てもらったのも、その方がメインで……」
璃奈「ひひ////、うぉえうい/////」
愛「……璃奈、大丈夫なの? どっか打った?」
璃奈「ひゃひっ!ど、どこっも! 」
愛「……そう」
愛「落ち着いて。深呼吸して」 璃奈「……ふー……ふー」
璃奈「……わたし、なに……されるの?」プルプル
愛「……乱暴して本当ゴメン。でも、どーしても確かめたいんだ」グイ…
愛「フード、悪いけど取らせてもらう」
璃奈「…………」
璃奈「なんて?」
愛「フード、璃奈の、愛サン、取る、いま」
璃奈「……え!?」
璃奈「だ、だめ」バタバタ
愛「答えは訊いてない」 璃奈が抜け出そうとするよりも素早く動く
私は璃奈の細い両手首を掴み、万歳させる格好でような両腕ごと持ち上げ――
そして、その両手首を左手だけで押さえ付け、右手をフードに……
璃奈「あっ」
グイッと
不意に取れる事態を防止する機構が備わっていた所で――
ただの針金程度の補強じゃ人間の故意の力に耐え切れるはずも無い。
璃奈の言っていた通り、細い針金の束を曲げるような抵抗感はあったけど、いとも容易く特製のフードは捲れ上がり、璃奈ちゃんボードではない、天王寺璃奈の素顔が私の前に現れた。
……いや、それはきっと璃奈の素顔だけど、……素顔であって、でも本当の意味での素顔じゃあ、ないんだ。
璃奈「う、ううう……」
愛「やっぱりね……」
愛「璃奈あんた、この1週間近く……どんくらい削ったの?」
愛「睡眠時間」
璃奈の目の下は、隈だらけだった。 深夜番組を見たり、ついゲームをやり込んでしまうノリの夜更かしで出来るような隈ではない
もっと……日課として深夜まで活動していないと、ここまでのものは出来ない。……深い隈
前にも事故で璃奈の素顔を見ちゃったことはあるけど、その時の素顔とは似ても似付かない……ひどい有様だった。
そして……6日間という、高校生の身空で、あの量の絵本を仕上げるには、やや早過ぎる速度
技術があるにしても不自然だった
愛「……そういう、こととしか思えない」
璃奈「ッ!!」ビクッ
愛「おかしいと思ったんだよ……こんな短期間でコピー紙20枚分。しかもあんなクオリティのを仕上げてくるなんて」
愛「今日の璃奈、意識して見ると欠伸が多かったしさ」
璃奈「あ、あの……」
愛「……駄目だよ、いくらやる気があっても、こんな目になっちゃ……」ナデ…
璃奈「うっ……うぇ」グスグス
押し倒した璃奈の、隈だらけの目元を見つめ、その頬を撫でてやると……璃奈はちょっと涙ぐみ始めた ――――――
――――
――
愛「……ごめん、怖かったね。もうしないから」
璃奈の拘束と押し倒す態勢を解き、捲り上げたフードも直してやる
璃奈「え……ぐ」コシコシ
愛「あ……ほら、擦っちゃ駄目だよ。余計にヒドくなるし、バイ菌も入るから」
愛「ほら、おいで……」
立ち上がった璃奈が、涙の堪る目を擦り始めたので、私はポケットからハンカチを取り出し、璃奈の目を柔らかく押さえ、涙を拭ってやった
璃奈「……」
璃奈「ごめんなさい。……先輩に、心配させて」
愛「別に責めてるんじゃない。私のために頑張ってくれたのは凄く嬉しいよ」
愛「そういう気持ち向けられるのも、そういう後輩を持てたのも、誇らしいと思う」
璃奈「うう……」 愛「ただね、私のために"身を削って"まで張り切っちゃうのは……ちょっと違うかな? ってこと」
璃奈「はい……」コクリ
愛「……それで、璃奈が倒れたりなんかしちゃったらさ」
愛「愛する後輩に何かあったら……愛サン、正気じゃいられないよ……」ギュウ…
璃奈「!!」
再び、璃奈の表情はフードの向こうに隠れたけど、落ち込んでいるようなのは明らかだった
だから私は……拙い頼れる先輩の真似事を終えて、未だ緊張冷めやらぬ自分を落ち着かせる意味も込め……
肩を落とす璃奈。その小さなカラダを抱き締めてやった――――
愛「……」ギュウ
はー……、璃奈あったかい。張り詰めた意識がデロデロに解けるようだ 愛「大丈夫。張り切り過ぎなくても、私は璃奈のこと、ちゃんと見てる」ギュウ
璃奈「……うん」
愛「私だけじゃない。皆も、璃奈のことは大事な仲間だと思ってるから」
愛「きっと璃奈が倒れたら、グループの皆も悲しむ」
璃奈「…………」
愛「だから……あんまり頑張り過ぎちゃダメ、だよ?」
愛「私……、どんな璃奈でも大好きだからね?」
璃奈「……ありがとう」
璃奈「…………」
璃奈「……////」ギュウ… こうして、私は……
恥ずかしいけど、自分を慕っていると言ってくれる、掛け替えの無い後輩を手に入れた
同時に、世に生まれてこの方やった経験の全く無い、慕われる先輩としての、後輩への御節介焼きも終えた……
愛(あー疲れた)
こういうこと実際やってみると―――
なんだろうね、ちょっと照れ臭くもあるけど……でも、頭がミントのような清涼感と、意味不明の熱に包まれた気がして
愛(でも、悪くはないじゃん)
と、そう思えもするのだった
…………
――――――
――――
―― ――
――――
――――――
部室前
せつ菜「…………」
歩夢「…………」
歩夢「そういう、ことだったんですね」
せつ菜「確かに璃奈さん、ちょっと欠伸が多いような気がしましたけど」
せつ菜「私、全然そんなとこまでは考え付きませんでしたよ」
歩夢「私もです……」
歩夢(愛ちゃん、だから璃奈ちゃんのこと見てたんだ……)
歩夢「メンバーの体調を察することもロクに出来ないなんて…リーダー失格です……」シュン…
せつ菜「だ、駄目ですよ歩夢さん、思い詰めちゃ」
せつ菜「愛さんは、璃奈さんの事情を私たちより深く知っていたわけですから」
せつ菜「だから、今回の件を歩夢さんとの不手際だなんて考えちゃ、だめ」 歩夢「うん……ありがと、せつ菜ちゃん」
せつ菜「このグループに頑張ってない人なんて居ません。だから――」
せつ菜「歩夢さんも、私達の頑張るリーダーとして、変わらずいてください」
歩夢「……うんっ、ありがとうございます♪」ニコリ
せつ菜「…………」ニコッ せつ菜「…………それにしても」
歩夢「…………うん」
せつ菜「凄いもの、見ちゃいましたね。私達ったら」
歩夢「荷物取りに来たら、愛ちゃんが璃奈ちゃんのこと押し倒してたんだもんね……息止まるかと思ったよ」
せつ菜「…………」(ドアの隙間から覗く)
せつ菜「うわ、また抱き合ってる……」
歩夢「うわー絶景……」
歩夢「じゃなくて……は、はれんちだよぉ……学校なのに」
せつ菜「あれ、愛さん側に、その気は無いみたいですけど」
せつ菜「璃奈さんの方は、どう見ても―――ですよね」
歩夢「あ、せつ菜ちゃんもそう思うんだ」
せつ菜「ええ……しかし、どうにも璃奈さんの方も、自分の気持ちを理解しかねているみたいでして……」
歩夢「そうそう、本当にそうなの。もどかしい仲だよね……」 せつ菜「……これで、このグループ内で2組になった訳ですよね。マイノリティカップルの卵が……」
歩夢「うーん、グループの明日はどっちに……リーダーとして頭が痛いです」
歩夢「…………」
歩夢「あのさ、いっそ私達も付き合っちゃ」
せつ菜「冗談でも」
歩夢「ひっ」ビクッ
せつ菜「やめてくださいね、そういうの」
せつ菜「私はノーマルですから」ゴゴゴ…
歩夢「ご、ごめんなさーい」 ………………
………………
愛「さて」
愛「シャワーの使用可能時間は……まだ大丈夫だね」
璃奈「……あと15分しか無いよ?」
愛「ダイジョブダイジョブ。ダッシュで決めりゃギリギリ間に合うよ」ヘラヘラ
璃奈「璃奈ちゃんのボード……"ジト目"」
愛「ははは」
愛「さ、荷物持って……早く行こ」
璃奈「…………」
璃奈「うんっ♪」
ヤバッコッチキマシタ… カ、カクレテカクレテ
愛(ん……?) >>136を訂正
………………
………………
愛「さーて」
愛「シャワーの使用可能時間は……まだ大丈夫だよね」
璃奈「……あと15分しか無いケド?」
愛「ダイジョブダイジョブ。ダッシュで決めりゃギリギリ間に合うから」ヘラヘラ
璃奈「璃奈ちゃんボード……"ジト目"」ジトー
愛「は、ははは……」
愛「さ、荷物持って……早く行こ」
璃奈「…………」
璃奈「うんっ♪」
ヤバッコッチキマシタ… カ、カクレテカクレテ
愛(ん……?) ガチャリ
愛「…………」キョロキョロ…
シーン……
愛(……気のせい、だよね?)
璃奈「先輩どーしたの?」
愛「ん、いや何でもない。歩夢の声が聞こえた気がしてね」
愛「さ、急ぐとしよ」
璃奈「はーい」
タッタッタ……
ー物陰ー
歩夢「…………」
せつ菜「…………」
歩夢「荷物、取りに行きましょっか」
せつ菜「ですね……」 愛「でさ、委員長の出汁巻きと交換したら、これが不味いのなんの……」スタスタ
璃奈「家庭毎に味は違ってくるって、よく言うもんね……」スタスタ
愛「ははは、思ってた味と違うと不味く感じるから、それかもね」スタスタ
愛「…………」スタスタ
愛(ん?) かすみ「―――! ―――? ―――」アレコレクドクド
果林「〜……。――?」オロオロ
果林「…………。――――♪」
かすみ「!? ……――――!!///////」
果林「 」ビクッ 愛(……果林に、かすみ)
愛(ケンカ……って訳でもないみたいだね。よかった、仲直りできたんだ)
璃奈「かすみ、果林先輩と仲直り出来たんだね……」
愛「みたいだね、これにて一件落着だ」
愛「…………かすかすー!!」
かすみ「!?」ビックゥ! 愛「もうちょっとさぁー!」
愛「果林に対して! 素直になったらいいと思うよー!!」
璃奈「ふふふ……」ニコリ
かすみ「…………」ポカン
果林「…………」ポカン かすみ「…………」
果林「……」アラアラ
かすみ「〜〜〜〜!!!//////」カアァァァ!
カ ス カ ス ハ
ヤ メ テ ク ダ サ イ ー ! !
ク ダ サ イ ー ……
サ イ ー ……
イー ……
愛「へへへ……」
愛「さ、急ご!」タタタ
璃奈「はいっ!」タタタッ 愛「……ま、何にしても、今日は絵本描くのはお休みして、しっかり休息に回すことだね。きっと明日は寝坊するくらい眠れるよー?」スタスタ
璃奈「うん、しっかり休む」テクテク
愛「よろしい」
愛「母さんの御飯食べて、風呂入って、夜は寝る。子どもはそうじゃなくっちゃね」
璃奈「……愛先輩、おじさんみたいだよ?」
愛「うぇっ!? ん、んだとこらー」
璃奈「あははっ♪」 璃奈「んーでも私の家、パパもママもあんまり帰ってこないから……」
愛「あらっ、共働きなの」
璃奈「うん……。だから、ママの御飯は食べられないかなぁ」
愛「へー……両親居ないの、ウチと一緒だ」
璃奈「そうなの?」
愛「うん。ちょっとイロイロあって、おばーちゃんと暮らしてる」
愛「毎日、御飯はおばーちゃんと作ってんの。楽しいよ」
璃奈「へー。いいな……」 愛「璃奈は、普段どんな夕飯作ってんの?」
璃奈「え?」
愛「え?」
愛「…………」
璃奈「…………」
愛「え、だからさ……璃奈は普段、何をおかずに作って御飯食べてるの? って」
璃奈「作ってないよ?」
愛「は?」
璃奈「作ってない。ほとんど店屋物」
愛「…………」ピク 璃奈「それか、コンビニさんで買って来ちゃったりするけど……」
愛「…………」
璃奈「どうしたの愛先輩?」
愛「…………」
愛「泊まりに来な」
璃奈「…………」
璃奈「な、なんて?」
愛「璃奈、泊まる、宮下家、今日」 璃奈「……泊まる……愛先輩の、家」
愛「Correct (そのとおりでございます)」
璃奈「――――――」
璃奈「ヴぇっ!?/////」
璃奈「な、なななん、なんで急に!?////」
愛「ダメ、そんなんじゃだめ、疲れが取れない、駄目」
愛「そんな生活してたら、絵本のことが無くたっていつか倒れてるに決まってる」ギュウ
璃奈「わ!////」
璃奈(て、手……握られたぁ////)
愛「璃奈、週に3日で良い……料理も教えたげるから、覚えるまでは宮下家で御飯食べな、そうしな。璃奈のためだから」
璃奈「そ、そそ、そんなの……そ、そうだ、急に行ったら、おばあさんにも迷惑で……」 愛「…………」スマホポチポチ
トゥルルル…ガチャ
愛「……あ、ばーちゃん?」
愛「悪いんだけど、かくかくしかじかで……」
愛「うん、まるまるがうまうまな訳」
愛「うん……うん」
愛「ありがと……うん、私も」
愛「じゃ、後でね」
愛「…………」
璃奈「…………」 ーシャワー室ー
愛「さて、璃奈の宿泊が決定した所で丁度、シャワー室にも着いたね。ナイスタイミング」
璃奈「璃奈ちゃんボード……"まてやゴルァ"」
璃奈「簡単に決め過ぎだよ……」
愛「なに? ばーちゃんに話したら……」
"若いもんがそんなの言語道断だ"
"遠慮するこたーない、連れてきんしゃい"
愛「って、言ってたよ?」
愛「家主がそう言うんだもん。遠慮は要らないよ」
璃奈「 」チーン
愛「そういうことだから璃奈には、大人しく巣鴨の宮下家まで来る以外の選択肢は無いってこと」
愛「はははっ」ケラケラ 愛「あ……でも、うち狭いからなぁ」
璃奈「だ、だよね!? だから謹んで……」
愛「だから悪いけど、璃奈は私と同じ和室で、私の布団の横に、じーちゃんの布団を敷いて寝てもらうことになるかな……」
璃奈「え……////」
璃奈(つ、つまりそれ、愛先輩の隣で……////)
璃奈(そ、そんなの寝られるわけ……////)
愛「よーし、今日はクレアおばさんのクラムチャウダーといきましょっかね!」
愛「さ、急がないと時間無くなっちゃう。璃奈も脱いで脱いで!」ヌギヌギ
璃奈「…………/////」プルプルプルプル 璃奈「だ、だれか……」
璃奈「だ、だれかたすけてぇ……」ウワーン
※後日、完成した絵本は銀賞を受賞しました 善子「たのしいハンガーこばなし」
※超初期の設定有り 善子「…………」
目が覚めると、既に夕暮れ時だった
今日の分の生放送が終わってから、そのままボーッと椅子に座っていたまでの記憶はあるが――
……どうやら私は椅子に座ったまま、寝落ちていたらしかった
原因に心当たりは有り過ぎる
最近はネトゲ三昧だったし、趣味で始めた生放送も、徐々に軌道に乗り始めて、コーナーの一つである占いや映画レビューの台本を用意するため夜更かしすることも多かったし……
知らない間に疲労が溜まっていたんだと思う
……一つ前のやつでも言った通り、張り切れることが見つかっても、自分を削るまで頑張っちゃ駄目ね
明日は久しぶりに外にでも出て、気分をリフレッシュさせることにしましょ
善子「…………」
まあそれと、私の首が正方向から180度 反対を向いていることは、何の関係も無いんだけど 善子「…………」
わけがわからない
寝違えたにしてはファンタスティック過ぎる寝違え方だ
何せ、首が真反対を向いている
前から自分が不幸だという自覚はあったけど、こんなのハードラックとダンシンしちゃった、なんて気楽に済ませていいものではないと思う
ていうか、自然界の摂理が如何なる酔っ払い方をすれば、こんな事態が発生するんだろう
善子「原因は一体……」
千歌「…………」エヘヘ…
善子「お前か無個性オレンジ」
千歌「ひどいっ!?」ガビン 善子「あんたでしょ原因は。このノリであんたが出てくるってことは、間違いなく原因はあんたなんでしょ」
千歌「ひ、ひどいよ津島さん! わざわざプリント届けてくれたクラスメイトに、そんな言い掛かりを……」
善子「あんたじゃないのね?」
千歌「私だけど……」
善子「プリントの恩を潰して余りある狼藉よこれはぁ!!」グワァ!
千歌「うわぁやめて近寄んないで! いまの津島さん怖すぎる!」 善子「そもそも、何をどうやったら! こんなビックリ仰天な状態になるのよ!」
千歌「津島さん、そんな驚いてなかったじゃん……」
善子「リアクション取り辛すぎて冷静にもなるわ!」
善子「あんた私にどんな改造手術を施したわけ!」
千歌「……津島さんが寝てたから」
善子「私が寝てたから?」
千歌「…………」
千歌「その、頭にハンガーを被せてみた」
善子「は?」 千歌「ほら、ハンガーを頭に被ると頭が勝手に回転するじゃん?」
善子「そうね」
千歌「起きないから暇だなーって、そこの本棚のデッドプール読んでたら……ふとハンガーが目に入って……」
千歌「いつもプリント届けてるし良いよね? って、ちょっとイタズラしてやろー、なんて思っちゃって……」
善子「うん、いつも本当にありがとう。……で?」
千歌「被せたら、津島さんの頭は勝手に回転して……」
千歌「ボキって音が鳴って……」
善子「は?」
千歌「そのまま何回転もして……気付いたら、反対側になって止まりました」
善子「…………」 善子「…………」
千歌「…………」
千歌「えへっ(はぁと」
善子「大概にせぇよ高海千歌ぁぁ!!」グワァ
千歌「ひぃいいい!!?」
善子「ぐえっ!? カラダ動かしづら……っ」ドテッ
千歌「こ、ころんじゃった……」
善子「…………」
善子「いい加減にしなさいよ高海千歌ぁ! そんな適当が通用するとでも思ってんのかぁ!!」
千歌「あ、転んだまま話すんだね」
善子「体の勝手がメチャクチャ過ぎて動かしづらいのよぉぉ!!」ジタバタウネウネ
千歌(うわ……気持ち悪い動き)ヒキ 善子「何よハンガー被ったら首が折れるって!」
善子「フツー可動限界のトコで止まるに決まってんでしょーが!」
千歌「き、きっと、津島さんが堕天使だからだよ。ほら、特別な首の作りで……」
善子「首だけ特別な堕天使なんて、こっちから願い下げよバカァ!!」
千歌「ほ、本当なの! ほら、津島さんの頭!」
善子「え」
千歌「ハンガー、今も被ってるじゃん」
善子「……」ハンガーオンザヘッド
善子「……気付かなかった」
千歌「単なるご都合展開だね」 千歌「でも、それ外せば! きっと頭も元に戻るよ!」
善子「まさか本当に……」
善子「……」
善子「ねえ高海」
千歌「なぁに?」
善子「さっき、何回転も……って言ったわよね」
千歌「うん」
善子「具体的に、何回転くらいしたの」
千歌「…………」
善子「…………」
千歌「えへっ」
善子「アンタもうプリント届けに来ないで」
千歌「 」ガアン
病院に行きました
ハンガーは小原製でした
生放送のカメラはつけっぱでした おわり
善子と千歌を同い年にした意味が無かった
あの針金ハンガーってどこの企業が作ってるんだろう 何か端末の調子が悪いけど>>1です
また何か思い付いたら書くよ 虎太郎「俺と家族となしこと」 梨子「なしこはやめて」
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