梨子「さようならは言わないで」
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善子「リリー、好きよ」
梨子「も、もう一回言ってくれる…?」
善子「だから、リリーの事が好きって言ってるの」
梨子「そ、それは友達的な意味で…?それとも、恋愛的な意味で…?」
善子「い、言わせないでちょうだい!恥ずかしいんだから!」
梨子「ふふっ、ごめんなさい」
善子「だから、私とお付き合いしてちょうだい」
梨子「喜んで//」
私達は、恋人になった。 書き溜めなしかな?
とりあえず24まで保守してからにしないと落ちますわよ 善子「よろしくね!!リリー!」
梨子「こちらこそよろしくね、よっちゃん」
その日はそれだけを言って、お互いに家へと帰った。 なにかの本で読んだ一文がある。
『よろしくには必ずさよなら、終わりがある』
まだ付き合い初めて1日はおろか、1時間もたっていないのに、なぜかその言葉を思い出した。
昔、それについて深く考えた事がある。その『お別れ』は単なる破局なのか。
それとも、片方の寿命が尽き、『お別れ』するのか。
それ以外の事はあの頃の私には思い浮かばなくて、今の私にも分からない。
今、なぜその言葉を思い出したのかは分からないけれど、忘れてはいけないとおもった。 次の日の朝は、空がとても晴れて見えた。それは天気が良かったとかではなく、今の気持ちが空に映ったのだろう。
今朝は心が軽い。心が踊っている。
私はお隣の千歌ちゃんにおはようとだけ挨拶を済ませ、足早に学校へと向かった。
梨子「あら、よっちゃん。おはよう」
善子「お、おはよう!リリー!」
梨子「通学路で会うなんて珍しいね。通学路は違うはずなのに」
善子「ま、待ってたのよ!言わせないで!」 梨子「ふふっ嬉しい。一緒に行きましょうか」
善子「い、言われなくてもそうするわよ!」
梨子「あら、何を恥ずかしがっているの?」フフッ
善子「う、うるさい!!」
梨子「もー、よっちゃんは可愛いなぁ」
善子「///」
いつも通りの教室。千歌ちゃんと曜ちゃんと楽しく話して、授業は真面目に受けて。そしていつものように放課後の部活へ行く。
でも今日は、いつもより部活が楽しみです。だってよっちゃんに会えるから-。
千歌「梨子ちゃん、曜ちゃん!部活行こ!!」
千歌「ってあれれ、梨子ちゃんは?」
曜「さっき、足早に部室に行ったよ。一緒に行こうって言ったんだけど」
千歌「むむっ!これは事件のかおり!」
曜「事件!!もしかして!」
千歌「私たちも早く行こう!」 見慣れた部室。静かな空間。でも、私の鼓動がドクドクと聞こえます。
だって今、恋人のよっちゃんと2人きりだから。
善子「ねぇリリー」
梨子「なに?よっちゃん」
善子「私たち恋人よね」
梨子「そうね。昨日から」
善子「だったらさ、恋人らしい事してみない…?」
梨子「恋人らしい事?たとえば?」
善子「て、てをつなぐとか…///」ボソ
梨子「なんて?聞こえなかったよ」
善子「て、手を繋ぎたいの///」
梨子「ここ、部室だよ?それに、人だって来るかもしれないし」
善子「そんなの関係ないわ!見せつけてやりましょ!」 梨子「もう、よっちゃんは我が儘さんね。」
梨子「でも、いいよ。手、繋ご?」
そう言って手を差し出すと、よっちゃんの柔らかくてプニプニとした手の感触が伝わってきた。
千歌「よ、曜ちゃん!り、梨子ちゃん達、手繋いでる!!」
曜「も、もしかしてあの2人!」
千歌・曜「付き合ってる!?」
千歌「ど、どうしよう曜ちゃん!真実かどうか聞きに行く!?」
曜「だ、だめだよ!千歌ちゃん!まずはヨーソローしてからヨーソローしないと!」
千歌「何言ってるか分からないよ曜ちゃん!」 梨子「2人とも何してるの?」
千歌・曜「あ…」
梨子「実は私たち、付き合っているんです」
花丸「善子ちゃん、大人になったズラね」
善子「ヨハネ!」
ルビィ「あはは、私は応援するよ、2人の事」
ダイヤ「わたくしも応援しますわ。アイドルたるもの恋愛はダメと言いたいところですが…」
ダイヤ「お二人が決めたのであれば、わたくしは何も言いません。タダ!惚気が過ぎて、練習に集中できないなんて事がないように!!」 果南「もちろん私も応援するよ」
鞠莉「もちろん私もよ。」
梨子「あ、ありがとうみんな!」
善子「私からも、ありがとうみんな」
ダイヤ「さて!お話も終わった事ですし練習ですわ!」
ダイヤ「そこのお二人は惚気が過ぎないように!」
梨子・善子「はい!」 .
梨子「いつまでもこんな何気ない日々が続けばいいのに」
善子「当然どうしたの?リリー」
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、私たちが付き合い初めてから一週間がたった。
お互い特に変わった事はなく、毎日幸せに過ごしている。
そして今は、よっちゃんが私の家に来たいと言うので一緒に学校から向かっているところだ。
梨子「ふとそう思ったの」
善子「へんなリリーね」
善子「でも、確かにそう思うわ。いつまでも幸せな日々が続くとは言えないもの」
梨子「それは私たちが別れるって意味かな?」
善子「ち、違うわよ!私たちが別れるわけないじゃない!」 梨子「ふふっ、冗談よ冗談」
善子「付き合ってから分かった事があるわ」
梨子「何を?」
善子「リリーってイジワルが好きよね」
梨子「そんな事無いわよ」
善子「いいえ、あるわ!それも楽しそうに!」 梨子「そんな事ないよー」
善子「いいえあるわ!堕天使センサーに強く反応しているわ!」
ブー ブー
梨子「メールが来たみたい。よっちゃんごめん、ちょっと待って」
善子「うん」
梨子「よっちゃんごめんね、行こっか」
善子「ねぇリリー、携帯のそのストラップて」
梨子「これ?この前雑貨屋さんに行った時に一目惚れしちゃったの!」
梨子「悪魔ちゃん😈のストラップ!」
善子「私もそれ持ってるわよ」
梨子「本当に!?お揃いね!」 ブチ
梨子「ああ!」
善子「!?」
善子「ど、どうしたの、リリー!」
梨子「ストラップがポケットにしまった拍子に千切れちゃった」
梨子「ついこの前買ったばかりなのにー」
善子「変ね。最近買ったものがそんな直ぐに千切れるかしら」
善子「これはもしかして!闇の力が!」
梨子「もーそんな訳ないでしょー」
梨子「でも、残念だなぁ。初めての善子ちゃんとのお揃いだったのに…」
善子「リリー…。」
善子「そうよ!私が直してあげる!」 善子ちゃん呼びの時や、よっちゃん呼びの時がありますが、気にしないでください。こちらのミスです。
申し訳ない 梨子「よっちゃんって手先器用だっけ?」
善子「愛の力があればなんだってできるものよ」
梨子「ふふっ、そっか。優しいのね、よっちゃんわ」
善子「恋人のためだもの。これが普通よ」
ポツポツ
ザーザー
梨子「わっ!雨が降ってきたわね」
善子「リリー、急ぐわよ!」 .
善子「な、なんとかついたわね」
梨子「もうビチョビチョだよー」
梨子「よっちゃん、お風呂沸かすから入っていって」
善子「ありがとう。お言葉に甘えるわね」
善子「でも、どうして突然雨なんか…」
梨子「今日の天気は晴れだったのにね」
善子「はっ!また悪魔の力が…」
梨子「でも本当に悪魔の力かもね。ストラップが千切れて雨も降るんだもの」
善子「リ、リリー怖い事言わないでよ!」 梨子「なによ、よっちゃんが言ったんじゃない」
善子「そ、それでもよ!怖いものは怖いの!」
梨子「ふふっ。じゃあ、私は風呂を沸かしてくるから、部屋で待ってて」
善子「わかったわ」
善子「リリー、お風呂ありがとう。気持ちよかったわ」
梨子「いえいえ。じゃあ次は私が入ってくるわね」
梨子「適当にくつろいでおいてちょうだい」 ガチャ
善子「リリーの部屋…」
善子「少しくらい見てもバチは当たらないわよね?」
善子「よっちゃんとやりたい事リスト?」
『デートしたい』
『沢山お喋りしたい』
『他のことも色々!』
.
.
.
『ずっと一緒にいたい』
.
.
.
善子「私もよ、リリー」 善子「リリー、私が願いを叶えてあげる!」
...
梨子「よっちゃん、おまたせ」
善子「おかえり、リリー」
梨子「ところでよっちゃん」
善子「どうしたの?」
梨子「悪魔さんのストラップ、どこかに落としてしまったみたいなの」
善子「何してるのよー。でも参ったわね、この雨の中じゃ探しようがないわ」
梨子「もうあれは諦めるよ」
善子「リリーはそれでいいの?」
梨子「ええ、また新しいのを買うわね」
善子「そう…」
...
雨も止み、よっちゃんが帰ったあと、私は『よっちゃんとやりたい事リスト』に新しい願いを書いた。
『よっちゃんとプレゼント交換』
けどなぜだろう。また、昔読んだ本の一文を思い出す。
『全ての願いを叶えることは神でなければできない。全ては無理でも、一つを切り捨て、二つ叶えたり、二つを切り捨て、一つを叶える事はできる。』
ああ、なぜ今この言葉を思い出すのだろう。 ...
それから1ヶ月がたった。やはり、楽しい時間はあっという間に過ぎる。
そして、今日はよっちゃんとの初デートがある。なので、早起きをしてお洒落をして、待ち合わせの沼津駅の前で相手が来るのを待つ。
この相手を待つ時間も、ドキドキとして、とても楽しい。
善子「リリー、ごめんね。待った?」
梨子「ううん、さっき来たところだよ」
善子「ほんとに?ならいいけど」
梨子「それじゃあさっそく行きましょう!」
善子「どこへ行くの?」
梨子「ふっふっふ…。計画は立ててあるわ」 善子「じゃあ今日は私をエスコートしてちょうだい?」
梨子「まかせて!」
それからの時間は、人生で一番楽しいと言っても過言ではないほど充実した時間だった。
沢山お喋りをして、お互いにあーんをして食べさせあったり、そして---
善子「リリー、私からのプレゼントよ。受け取ってちょうだい」
そう言ってよっちゃんから手渡されたものは、可愛い悪魔さんのストラップだった。恐らく、以前無くしてしまったストラップを考慮しての事であろう。
梨子「ありがとう、よっちゃん」
善子「こ、これを見る度に私の事を思い出してね///」
梨子「もちろんだよ!よっちゃん!ありがとう!!」
梨子「私からはこれ!」 善子「これは、熊さんのストラップ…?」
梨子「そうだよ。よっちゃん、カバンに何も付けてないから、何かないかなと思って」
善子「ありがとう。大切にするわね」
善子「でもなんで熊さん?」
梨子「うっ、特に意味はないの…」
梨子「一目見てこれだ!ってやつを選んだの」
善子「前の悪魔のストラップも一目惚れとか言ってたわね」
梨子「そういえばそうだったね」
梨子「けど、私の目に狂いはないわ!」
善子「ありがとう、梨子」
善子「本当に、ありがとう…」
梨子「もー、どうしたの?よっちゃん」
善子「…うぅん、なんでもない」
善子「さ、もう日も暮れちゃったし帰りましょう」 梨子「あ、その前に」
善子「どうしたの?」
梨子「公園寄っていかない?もう少しお喋りがしたいの」
善子「いいわよ行きましょう」
そう言って私たちは並んで歩き始めた。
ポツポツ
ザーザー
梨子「雨、降ってきたね」
善子「リリーは傘持ってる?」
梨子「持ってないよ。よっちゃんは?」
善子「私も持ってないわ」
梨子「大変ね」
善子「大変よ」 梨子「もう公園は諦めましょうか」
善子「リリーはそれでいいの?」
梨子「仕方ないじゃない。風邪を引いても困るし」
善子「ねぇリリー」
梨子「どうしたの?」
善子「今日はありがとうね」
梨子「変なよっちゃん。うん、こちらこそありがとう」
善子「じゃ帰りましょう。バス停まで送るわ」
梨子「一人でも大丈夫よ」
善子「いいの、私がそうしたいと思ったから」
梨子「ならお言葉に甘えるわね」 雨の中を二人寄り添って歩く。傘も何もないので、雨には当たりっぱなしだけれど、繋ぎあった手からよっちゃんの体温が伝わってくるので、少し体はポカポカしている。
やがて、人気のない通りから、車の多い大通りへと道が開けると、なぜか震えが止まらなくなった。
寒さによる震えではない。もっと何か別の震え。
それに気付いたよっちゃんが、私の手を強く握ってくれたので、その小さな手に、心を委ねることにした。
梨子「よっちゃん、この手を離さないでね」
善子「安心しなさい、離さないわ」
梨子「ありがとう」 梨子「さっきから私、震えが止まらないの」
善子「分かってる…」
梨子「寒さなんかじゃない、もっと恐ろしい何か」
善子「大丈夫よ、私がいる。梨子の震えが止まるまで、ずっと傍にいてあげる」
梨子「ねぇ、よっちゃ------
その先の言葉を発する事は許されなかった。なぜなら、恋人の張り上げた声に遮られたから。
.
「梨子ッッ!!!!」
.
その耳を劈くような悲鳴が聞こえた刹那、私の身体は何かに押されたように後ろに倒された。 それに反する形で、よっちゃんの身体は前に倒れ−−−−
バン
何が起きたのかは私には分からなかった。ただ刹那の意識の中で見たものは、猛スピードで迫ってくる車と、その車を前に私を庇ったよっちゃんの姿だった。
.
.
.
「よっちゃん…?」
「よっちゃん!よっちゃん!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
.
.
.
私はどうしたらいいのか分からなかった。ただただ悲鳴をあげ、泣き叫ぶことしかできなかった。
途切れる意識の中で、私が見たもの。水溜りに横たわる熊さんのストラップ。私がよっちゃんにプレゼントしたもの。
ああ、あの日無くした悪魔のストラップも、こうして水溜りの中に横たわっていたのかな。
.
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.
. .
.
.
.
.
梨子「ッッ!!」
何かに弾かれたように、私は飛び起きた。
いつもの見慣れた部屋、天井、ベッド、私の部屋だ。
梨子「夢……?」
そうだ、あれは夢だ。悪い夢だ。
あれ?でも昨日は何をしていたっけ?
何も分からない。思い出せない。
お も い だ し た く な い
そうだお母さんに聞こう。そして、これは夢だって言ってもらおう。
梨子「お母さん!!!」
梨子母「梨子…!あなた、もう大丈夫なの?」
梨子「ねぇ、お母さん。善子ちゃん今どこにいるか分かル?」
梨子母「梨子…、あのね、善子ちゃんは…。」
梨子「やめて、聞きたくない」 梨子母「梨子…。あのね…」
梨子「やめてっ!!!!」
梨子母「梨子……。」
梨子「どうして…。どうして…。」
そして私は、何もかも忘れようとリビングを飛び出し、自分の部屋に戻り、布団を被って外の世界を遮断した。
震えが止まらなかった。
.
.
. 夢を見た。真っ白の部屋に一人ポツリと座る私。
ただ、ひたすらに震える私。
ただ、ひたすらに泣く私。
夢を見た。
.
. ピンポーン
一つのインターホンの音で、私の目は覚めた。
お母さんが出てくれるだろうと思っていたが、何度も鳴らされるので、仕方なく私が出ることにした。
ガチャ
梨子「…はい」
千歌「梨子ちゃん…」
梨子「何しに来たの」
千歌「大丈夫かなと思って…」
梨子「あなたには大丈夫に見えるの?」
千歌「いや…そういう訳じゃ…」
梨子「今は誰かとお喋りできる気分じゃないの」
梨子「帰って」
千歌「梨子ちゃ
梨子「帰って!!!!」
千歌「ごめん…。またね」
ガチャ
梨子「わたし、さいていだ」 その日はもう誰とも話す事はなく、深い眠りについた。
.
朝が来た。いつもと変わらない朝。ただ違うのは、空が曇って見えることだけ。
よっちゃんごめんね。私が公園に行こうなんて言わなければ。私がデートに誘わなければ。私がよっちゃんと出会っていなかったら。わたしが産まれてこなければ。
よっちゃんが死んだのは私のせい。
『よろしくには必ずさよなら、終わりがある』
今ならこの言葉の意味が分かる。
『全ての願いを叶える事は神でなければできない。全ては無理でも、一つを切り捨て、二つを叶えたり、二つを切り捨て、一つを叶える事はできる。』
この言葉の意味も。
でも、何か。何かを忘れている気がするの。
その何かは、今の私には思い出せない。
.
.
. >>33
まずうちさ、屋上あんだけど、焼いてかない? 朝が来た。今日は雨が降っているようだ。
昨日は学校を休んでしまったので、今日は行こうと思い、ベッドから起きて学校の支度をはじめた。
教科書、筆箱、お財布、携帯、よっちゃんがくれたストラップをカバンに詰め、パジャマを乱雑に脱ぎ捨て、制服を着た。
部屋を出て、階段をおり、朝ご飯も食べずに家を出て、傘をさし、鉛のように重たい足を懸命に動かし、歩き始めた。
しばらく歩くと、いつもよっちゃんが待ってくれていた場所についた。
けれど、そこによっちゃんはいなかった。
もうよっちゃんはいないんだ。
.
. 学校についても、特に気が晴れることはなかった。
千歌ちゃんと曜ちゃんは私を元気付けようと、沢山話しかけてきた。その多くの話題の中に、よっちゃんの話題がなかったのは、二人の優しさであろう。
授業もろくに頭に入らず、休み時間も一人ぼーとして、昼食も食べず。
気が付けば、時計の針は放課後である事を示していた。
部活には行かずにこのまま帰ってしまおう。そう思ったのに、自然と足は部室へと向かっていた。
少しくらい、顔を見せておこう。そう思った。
.
.
.
雨はまだ、降っていた。
.
.
. ガチャ
千歌「あ、梨子ちゃん」
曜「ヨーソロー!梨子ちゃん!」
梨子「他のみんなは来ていないの?」
千歌「うん。花丸ちゃんが図書委員のお仕事でルビィちゃんがその手伝い」
曜「3年生はみんな生徒会のお手伝い」
梨子「そうなんだ」
千歌「梨子ちゃんお昼食べてなかったよね?大丈夫?」
梨子「大丈夫」
曜「授業もぼーとしてたみたいだけど、私のノート写す?」
梨子「大丈夫」 千歌「ところで、今日の練習どうしようか」
曜「この雨の中じゃできないよね?」
千歌「うーん…。最近雨多いなあ」
曜「ほんとにね」
千歌「私雨は嫌いだなあ」
千歌「梨子ちゃんはどう思う?」
梨子「どう思うって何を?」
千歌「雨が好きか嫌いか」
梨子「そんなの……」
嫌いに決まってるじゃない。だってよっちゃんは雨の日にいなくなったんだよ。
曜「まあまあ、千歌ちゃん。今は練習の事を考えよう」 千歌「う、うん。そうだね」
どうしてあなた達は平然としていられるの?私には分からない。
ガチャ
ルビィ「こんにちは」
花丸「こんにちはずらー」
千歌「ルビィちゃん、花丸ちゃん、こんにちは」
曜「ヨーソロー」
梨子「…こんにちは」 ルビィ「今日、お姉ちゃん達は来れないってさ」
千歌「分かった。ありがとう、ルビィちゃん」
そう言っていつもの1年生組の席へと座るルビィちゃん、花丸ちゃんの隣に、よっちゃんはいなかった。
梨子「ねぇ」
梨子「どうしてあなた達はそんなに平然としていられるの?」
梨子「同じグループのメンバーがいなくなったんだよ?」
梨子「どうして…!」 梨子「私にはわからないよ!!!」
梨子「あなた達は何も思わないの!?」
千歌「梨子ちゃん、違うの…」
梨子「違わないでしょ!!何が違うって言うの!?」
千歌「梨子ちゃん!!!!」
梨子「っ!」 千歌「みんなだって悲しいよ!」
千歌「昨日までは普通に話していた子が突然死んだって言われるんだよ!?」
千歌「それでも…!一番辛い思いをしてるのは梨子ちゃんだって…」
千歌「梨子ちゃんの前では悲しい雰囲気を出さないようにしよって決めて!」
梨子「っ」
梨子「ごめん…。今日は帰るね…」
.
.
.
.
みんなだって辛いはずなのに、私はその優しさに気付かずに、強く当たってしまった。
みんなは私が帰るのを、何も言わず静かに見送ってくれた。
その優しさが私には辛かった。
でも、嬉しくもあった。
.
.
.
. 夢を見た。白い部屋に一人座り、私が震えているだけの夢。
その部屋には私以外には誰もいない。
私以外に何もない。
その部屋で、ただ私は震えていた。
.
.
.
. 千歌ちゃんとの衝突から、1週間がたった。
私はあれから学校には行っておらず、部屋のカーテンを閉め、引きこもっている。
何もしないと、一日はとても長く感じて、その分のよっちゃんの事を考える時間が増えた。感覚的な話だけれど。
.
.
.
.
夢を見た。
この前と同じ白い部屋で震える夢。
ただその日の夢で、私はひとりぼっちでは無かった。 私はもう一人と話をした。
梨子「あなたは誰?」
「秘密よ。それはあなたが見つけるの」
梨子「見つける…?あなたを?」
「そうよ」
梨子「よく分からないわ。あなたの事もこの部屋も」
「今はそれでいいの」 梨子「そう…」
「何か辛い事でもあったの?」
梨子「うん…」
「私に教えてくれない?何があったのか」
梨子「………」
「少しは楽になると思うわ」
梨子「………」
私は今まであったことを全て話した。
「それは辛かったわね」
梨子「私、人の死の事なんて考えた事がなくて、初めて直面した死が恋人の死で」
梨子「どうしたらいいのか分からなくて、恋人の死を受け入れれるほど私は強くなくて」 「だからお友達に強く当たってしまったのね」
梨子「はい…」
「でも、私も同じだと思う」
梨子「へ?」
「私も、もし恋人が死んだら、私が代わりに死ねばよかったって後悔すると思う」
「たとえ、残された人が苦しんだとしてもね。私はそういう人間なの」
梨子「あなたは一体…?」 「それは秘密って言ってるでしょ」
梨子「なぜかあなたの顔が見えないの」
梨子「声も変に聞こえるの」
「あなたが逃げているうちは分からないでしょうね」
「自分勝手な話だけど」
梨子「逃げる…?自分勝手…?」
梨子「本当に変な人ね」 「ふふっ、前も言われたわ」
梨子「だれに?」
「それも秘密よ」
梨子「なによ、もう」
梨子「……もう一つ話を聞いてもらっていい?」
「えぇ、いいわよ」
梨子「私ね、あの日から震えが止まらないの。今も震えてる」
梨子「それは、寒いとかじゃなくて、何かがなくなるのを恐れている感じなの」
梨子「こうやって震えていると、また何かを失ってしまいそうで怖いの」 「大丈夫よ。震えがおさまるまで、私が手を握ってあげる」
「離したりなんかしないわ」
梨子「なんか懐かしい気分。よっちゃんにもそんな事言われた」
梨子「でも、ありがとう。少し落ち着いた気がする」
「聞いて、梨子」
梨子「何かな?」
「これだけは覚えておいてほしいの」
その人に言われた言葉は、私の心をに深く焼き付いた。
.
.
.
夢が覚めた。 その日の空は晴れていた。
その日も学校には行かずに、家で考えごとをして、一日を終えようとした。
私はカーテンを開けた。
そして、隣に住む千歌ちゃんの部屋に向かって語りかけた。
梨子「千歌ちゃん、いる?」
千歌「梨子ちゃん…。どうしたの?」
梨子「私ね、考えたの」
梨子「いつまでもくよくよしてちゃダメなんだ、前を向かないとダメなんだ」 梨子「もちろん、よっちゃんの事は生涯忘れない」
梨子「でも、いつまでも過去に縋らずに、よっちゃんが私に託してくれた未来を見なきゃダメなんだって」
千歌「梨子ちゃん…」
梨子「今はこう言っても、すぐに割り切れる訳じゃないけど、よっちゃんのためにも生きないと」
梨子「それにね、亡くなった人は人の心の中で生き続けるの」
梨子「私はそう思う」 梨子「よっちゃんが教えてくれたの。いつまでも閉じこもっていちゃだめだ。前を見なさいって」
千歌「善子ちゃんが?」
梨子「うん」
梨子「私ね、夢を見たの。何も無い真っ白の部屋に、私がただ一人震える夢」
梨子「でもね、その夢には私だけじゃなくて、もう一人いたの」
梨子「顔も声も分からない人だったけど、不思議と懐かしい感じがして、その言葉にとても勇気付けられた」
梨子「そして昨日、最後の夢を見たの」
.
.
. 夢を見た。
何もない真っ白の部屋で、私が震える夢。
けれどその日は、もう一人いた。
梨子「よっちゃん…?」
善子「久しぶりね、梨子」
梨子「どうしてここに…?」
善子「前からいたわよ。ただ、梨子には見えなかっただけ」
梨子「前から…?」
善子「少し話をしましょう。梨子」
.
.
.
梨子「よっちゃんがいなくなって、どうしたらいいのか分からなくて」
梨子「よっちゃんのいない世界が怖くて」
梨子「でも、こうしてまた会えた」 善子「えぇ、そうね」
梨子「それがとても嬉しいの」
梨子「ねぇ、よっちゃん」
善子「どうしたの?梨子」
梨子「震えがね、止まらないの。またよっちゃんとお別れになるんじゃないかって気がして、とても怖いの」
善子「………」
善子「"よろしく"の最後にはね、必ず終わりがあるの」
善子「だから、今あなたと話をしている私も、いつかはいなくなる」
梨子「やめて…!そんな事聞きたくない!」
善子「だからね、梨子。始まりが"よろしく"なら、必ず終わりの言葉があるの」
梨子「やめて…!もうよっちゃんを失いたくない!」
善子「梨子、聞いて。これが最後の言葉」
梨子「やめて!!!」
梨子「さようならは言わないで!!!」 善子「なんだ、知ってるじゃない。最後の言葉」
梨子「よっちゃん!もう私の前からいなくならないで!」
善子「私があなたの前からいなくなる事はない。だから、震えないで」
梨子「いやだ…いやだよ!よっちゃん!」
善子「ねぇ、梨子。こんな言葉を知ってる?」
『さようならは終わりの言葉であると同時に、思い出の言葉でもある』
善子「だからね、梨子。恐れないで」
善子「わたしがあなたから消える事はない」 善子「だって、あなたの中には沢山の私がいるじゃない」
善子「沢山の…思い出が」
梨子「よっちゃん…」
善子「これで最後よ、梨子。これであなたの夢は覚める」
善子「今までありがとう、そしてこれからも、善子をよろしくね」
.
.
.
善子「さようなら、梨子」
「さようなら、リリー」
.
.
.
梨子「こちらこそ、今までありがとう…」
梨子「私、よっちゃんの事ゼッタイに忘れない…!」
だから
.
.
.
さようなら、よっちゃん。
終わり 初ssでした。
思い付きの見切り発車だったので、展開が急だったりストーリーに変なところがあったかもしれません。
それでも、最後まで見てくださってありがとうございます。 お疲れ様
絶妙な物憂げな雰囲気でとても良かったよ
次回作も頑張ってください! 好きな文章なんでシリアスじゃないのもいつか見たいです ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています