真姫「天使の貴方」花陽「悪魔な貴方」
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無心を装いたくて夜空を見上げながら私は星の丘へ向かっていた。今なら…全てをあの星空が吸い上げてくれそう…。
こんなにも綺麗なのに手の届かない星々。こんなにもたくさんあるのにどれ1つとして私を救ってはくれない星々。 夜空はあんなに綺麗に星で敷き詰められてるのに、私の心は、頭は、全ては、からっぽ。
もう、私の内容は何かで敷き詰められることなんてないのかしら。自分で全てを投げ出しておきながら、都合がいいこと言ってるのかしら。 星と対比の睨めっこ。
…ねぇ、そんな高いところから呑気に私を見下ろして、いいご身分ね? 首元も疲れ、果てしなくちっぽけな自分が情けなくも感じ、私は顔を上に向けていたのを視界と共に前方へ戻した。
気付けば丘はすぐそこだった。
それと同時に、向こう側から誰かが私と同じように丘の方へ向かってきているのが見えた。少し遠目だけど、外見の特徴は何となく掴むことが出来た。 巻かれている綺麗な栗色の髪。そして正面からでもチラリと覗くきめ細やかで繊細な、小振りだけど真っ白な無垢な羽。
そして距離が近付くにつれ、見覚えのあるあの顔。
それは……。 「……!!ま、真姫ちゃん…!?っ、ごほっごほっ!はぁ、はぁ…」
「は、な…よ…?」
「はぁ、はぁ…真姫ちゃん…っ、真姫、ちゃん…!」
「…どういう…こと…?」 「真姫ちゃん…っ、真姫ちゃん…っ!会えて…良かった……!ごほっ…はぁ…」
「な、なんで…?どうして……」
「あのね…っ、やっぱり私、怖い…!はぁ、はぁ…1人のまま、ごほっ…死にたく…ない…っ」
「…っ…!」 「…真姫ちゃんの…傍に……はぁ、はぁ…ごほっ…、居たい…っ!」
「…花…陽…っ」
「また、困らせちゃって…ごめんなさい…ごほっ…!わがままで…はぁ…ごめん…なさい…!!」
「…………」
「はぁ、はぁ……あ…わ、私……っ…」
私は花陽の手を取り、来た方向へ踵を返して歩き始める。少し強引に彼女の手を引きながら。 「っ!まっ、き、ちゃ…!」
「行くわよ」
「ごほっ…え、なっ…どうして…!」
「……っ、私だって…!!」 「…?はぁ、はぁ…」
「私も…花陽が…!貴方が居ないと駄目なの…!!」
「はぁっ…ん、え…?」
「はち切れそうでたまらなかった!貴方がいなくなって、自分が自分じゃなくなって怖かった…!」
「……!」 「…わがままなのは私もよ……行きずりでこんなことして…最後まで…自分勝手……」
「…え、へへ…私は…真姫ちゃんの…そういうところが、好き…だよ…」
「…っ、花陽……」
「…ごほっ、ごほっ…!」 「…私が貴方を治す。末期だなんて関係ない。私には…魔法医学がある」
「…!真姫…ちゃん…ごほっ…」
「…酷でしょうけど…走れる?」
「…っ、う、うん…!がんばる、よ…!」 「ごめんなさい…でも、2人でこの領域を出ましょう。悪魔の手も天使の手もかからないどこか…遠くへ…!」
「はぁ、はぁ…うん…っ!」
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__ 「夜は街も静まってて、警戒も抜け目が出来るはず…どこか合間を縫って領域外に出られるところは…」
「はぁ、はぁ……」
「…!花陽……」
「んっ…ごほっ…!はぁっ…」 「ちょっと止まるわよ」
「…ん…どう、したの…?」
「…おぶるから、私の背中乗りなさい」
「そ、そんな…!悪いよ…っ!」 「いいのよ。このまま体力を消耗し続けていよいよ貴方が手遅れになるくらいだったらこんなの…!」
「……っ」
「…私じゃ頼りにならないかしら…」
「…ううん…ごほっ…それじゃあ、失礼…するね」 「えぇ、任せなさい」
「…ありがとう」
「…私からした提案なんだから」
「えへへ…こほっ…真姫ちゃん…暖かい…」
「…//…っ、い、行くわよ」
…… 「はっ、はっ……」
「ごめん…ね…?ごほっ、重く…ない…?」
「今の貴方が重いと思う?紙みたいに…軽いわよ」
「…ごめんね……ありがとう…けほっけほっ…」 「謝らなくていいってば」
「……うん」
「…すぐに私が貴方の体調も体重も元通りにしてあげるんだから」
「ごほっ…体重は…そんなに戻らなくても…いいかなぁ」 「何言ってるのよ。私は…その…前の包容力に満ちた花陽も嫌いじゃないし…むしろ、好きなんだから…」
「えへへ…嬉しいね…」
「…気を強く持つのよ」
「ごほ、ごほっ…うん…っ」 「……」
「…ごほっ…私はね…真姫ちゃんさえいれば…何でも…けほっけほっ…乗り越えられる…気がするんだ」
「…私もよ」
「…とっても…心強いな…」 「花陽だけは…絶対に手放してやらないんだから」
「…//…花陽…とっても…幸せ……」
「これからもっと幸せになるのよ」
「…うん…っ、ごほっ…。これって……」
「……?」 「駆け落ちっていうのかな…?」
「なっ…//」
「お家の本で読んだことあるんだ…けほっ…身分の違う…人間さん同士が…こほっ…2人で…逃げちゃうんだ…」
「……」 「でも…こほっ…本の中のその人間さん達は…幸せそうだった…」
「…人間…架空の生き物、ね…」
「う、うん…ごほっ、ごほっ…」
「…私達はそれを現実で成功させるのよ」
「…!そう…だね…っ」 「私は…貴方となら…どこへ行っても寂しくない気がするの…」
「…うん…花陽がずっと…側に、いるからね…」
「…えぇ」
…… 「はっ、はっ……」
「ごほっ、ごほっ…大丈夫…?真姫、ちゃん…」
「全然…平気よ…!」
「……ごほっ…うぅ…」 「…ねぇ、花陽。星が綺麗よ?」
「え…?わぁ…本当…だ…!」
「私、ここまでのを見たのは初めてよ」
「…私も、初めて…こほっ…」 「…これも運命、なのかもしれないわね…」
「…お星様達も…ごほっ…お見送りしてくれてるのかもね…」
「ふふっ…本当に…空から降り出して来そうなほど」
「こほっこほっ…それもそれで…ロマンチックだね…っ」 「私達への…最高の手向け…」
「…今が1番…けほっ…幸せ…」
「そんなこと言ってられないわよ…っ、これからもっと色々見せてあげるんだから…!」
「えへへ…ごほっ…!真姫ちゃんをもっと…見ていたいな…」 「っ、もう…//…!!ほら…っ!」
「え…?」
「街の外れが見えてきたわっ!」
「ほ、本当だ…!こほっ…これ、が……」 「…この先を進めば大きな海が見えて、それを更に越えれば、きっと……!」
「けほっ…真姫ちゃんと…私だけの…新しい行き先が……」
「…飛ぶわ」
「だ、だったら私も…っ!」 「いいのよ、貴方を乗せたままでも行ける。今の私なら幾らでも無茶出来るわ」
「で、でも私が乗ったままだと、ごほっ…!翼の邪魔に…!」
「言ったでしょ?貴方を離したくない。この状態のままの方が私は…頑張れる」
「真姫ちゃん…」 「だから…安心しなさい…」
「…うん…っ、信じるよ…!」
「…ありがとう。じゃあ少し翼を広げて…−−−」
パァン…!! 「…っ!?」
「え…、何…?」
「痛っ…つっ…!!」
「…っ真姫ちゃん肩から血が…!!」
(…っ、こ、れは…銃…痕…!!) 読んでる時ずっと鏡面の波が脳内BGMとして流れてるわ 「真姫ちゃん…!ごほっごほっ…!大丈…夫…!?」
「まだ…何とか…平気よ…っ、でも……見つかった…!?」
「そ、ん…な…!!ごほっ…!どこ…から…!?」 パキュン…!
「う…っ!!」
「真姫ちゃん!!!」
(まずい、わ…!どこから狙ってるのか分からない、けど…私の方に的を絞ってる…!花陽が既に消耗していて…私より機動性のないのが見透かされてる…!!) 「っ!!」
「はな、よ…!?」
「どこにいるかわからないけどやめて!!げほっごほっ!!撃つなら真姫ちゃんじゃなくて…私に…して…!!!」
「やめなさい、花陽…!!私の上から…どきなさい…!!」 「だめだよ、真姫ちゃん…」
「え…?」
「真姫ちゃんにはまだ未来の…希望が…あるんだから…逃げて…生き延びて、ね…?」
「…っ、嫌よ…、そんなの無理よ…!!駄目よ…!!どいて花陽…っ!!!」 「あのね…私ね…?」
「っ、やめて…!お願い…っ!!どいて…!!」
「真姫ちゃんの…こと…」
「どきなさい花陽!!!!」
パンッ… 「うぁっ…」
「…っ!!!!」
「ぁ…ぅっ…ごほっ…げほっ…」
「花陽…っ!!!」 「…あの…ね…まき…ちゃん…」
「花陽…!!…はなよ…っ!!!」
「あ…い……し…………」
「はな、よ…?ねぇ、花陽…!!」
「…………」 「…辞めて……行かないで……」
「…………」
「私1人じゃ駄目なのよ……貴方だってそうなんでしょう…?」
「…………」
「私は1人じゃ……この涙も止められないのよ…!!」
「…………」 「…いいわよ……私を撃ちなさい……。どうせまだこそこそと狙いを定めているんでしょう」
「今更…こんなに疲れ切ってまで…彼女のいない世界なんて…もう嫌よ……」
「私達…一瞬だけでも…肉体だけでも…一緒よ…?花陽……」
「…暖かい……天使は冷たくなんか…ないじゃない……」 パキュッ…!
「んぅっ…!!がはっ、ごほっ…!!」
「…………はな…よ…?き…こ…える…?……」 「……わた…し…も……あ…い……し………て………」
「…………」
「…………」
__________ 「ふむ…近くに寄って見ても、やっぱりまだ若かった天使と悪魔の様ですね」
「私達と同じか、年下さんって感じがするね」
「その割には中々手こずりました。魔弾を何発撃ったか……」
「自分と同じ天使さんの方は私が1発で仕留めちゃったっ」
「あれは横取りですよ…ずるいです…」
「ちゅんちゅんっ♪」
「もう…」 「でも、すごいねこの子達…最期まで手を繋いでるよ」
「…それほど覚悟した上での逃避行だったというわけですか」
「だけど天使と悪魔のカップルは私達だけでいいもんね」
「カ、カップルって…//そ、それに、あまりそういうことを大声では…!」
「えへへ、つい…」 「…それでは…折角なので、この御二方の天使の羽と悪魔の翼だけ頂いていきますか」
「そうだねっ……あ、羽とか翼といえばこんな言い伝え知ってる?」
「一体どういう?」
「あのね、羽を取られた天使さんと翼を取られた悪魔さんは人間さんに生まれ変わるんだって!」 「…人間とはあの人間ですか?」
「うん!あの人間さん」
「…ありえません」
「えぇ〜そうかなぁ?」
「そもそも人間というものは我々が想像で生み出した架空の生き物なんですから…」
「そうだけど…でも、ロマンチックだと思わない?」 「私は浪漫主義ではないので」
「そういう話じゃないよ〜っ」
「さぁ、羽も翼も獲れたので行きますよ」
「も〜待ってよ〜けち〜現実主義さんめ〜」
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………… __________
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__
とある丘。
「あら…?わ、私……」
「あっ…あの…こんにちは」 「…っ、ヴェェ…!」
「あ、もしかして御用があってここに…?そうなると私、お邪魔でしょうか…?」
「…っ!そ、そんなことはないわ。用事があるとかそういうわけではないの…」
「そ、そうでしたか…よかった」
「…貴方こそ、どうしてここに?」 「私は…分からないんです…。自分がどうしてここにいるのかが…」
「えっ…その、私も同じ、なんだけど…」
「え…そうなんですか?」
「え、えぇ…」
「……」 「…その、今だけでも一緒して…いい、かしら…?」
「…!はい、私は全然構わないですよ」
「じゃあ…隣失礼するわね」
「はい…」
「……」
「……」 「青い空…とても綺麗ね」
「はい…雲ひとつなくて…何だか、解放感が…」
「あら、奇遇ね私もよ」
「ほ、本当ですか?」
「えぇ。それに何だか、落ち着く様な感覚も……」 「わ、私もです…!」
「ほ、本当…?」
「はいっ…!」
「……」
「……」
「…ふふっ」
「えへへ…」 「私は真姫、貴方は?」
「…花陽です」
「花陽…何だか…懐かしい響き…素敵な名前ね」
「ま、真姫さんこそ…大好きで懐かしいです!」
「な、何よそれ…//…あと、敬語も使わなくていいわよ。私もそうなんだし、何よりこそばゆいわ」
「…分かった、真姫ちゃんっ」 _____
2人だけの世界、彼女達がようやく真に愛し合えるのはそう遠くない未来。 おしまいです。
長々細々とすみません。
正直締め方にめっちゃ悩みました。
保守して下さった方々、最後までお付き合い下さった方々ありがとうございました。
ちなみに序盤に出てきたアルタイルとバテン・カイトスはそれぞれまきぱなの誕生星なのです ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています