【SS】果南 「恋にオちる」 千歌 「それは“悪夢”だよ」
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花丸 「夜空が満点の輝きに満ちるころ、素敵な物語をあなたと」
花丸 「みなさんこんばんはっ、国木田花丸です」
花丸 「さて…みんなはこんな“怖い噂”を聞いたことがあるずらか?」
花丸 「夜、“落ちる夢”を見た時、すぐに眠りから目覚めなければ…」
花丸 「そのまま実際に死んでしまう…」
花丸 「聞いたことない…? 記憶の片隅に残しておくくらいでいいずら」
花丸 「さて、どうしてこんな話をしたかというと。今日はみんなに紹介したいお話があるずら」 2ND-DAY 果南の部屋 9:17
果南 「…………はっ!!」
…まただ。布団の上で全身に汗をかいている。
何か、すごい悪夢を見ていた気がするが、何も覚えていない。
果南 (…あれ、なんで私、裸で寝てるんだ?)
服を着ようと起き上がると、左腕がなにかに引っかかった。…いや、なにかに“掴まれて”いる。 果南 (えっ…隣に誰か…いる?)
布団をめくって現れたその人物に、心臓が口から飛び出るような感覚を覚えた。
…自分と同じく全裸になった梨子が、静かに寝息を立てていた。
果南 (……嘘でしょ……)
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ーー 1ST-DAY 都内のバー 23:00
果南 「今までどこで何してたの!? 心配したんだよ!?」
梨子 「ごめんなさい…しばらく忙しくて連絡取れなくて。なんか、こんだけ年数が経ってから改まって連絡するのも…」
果南 「そんなの気にしなくていいのに…。ほら、座って座って」
梨子 「はい。失礼します」
既にカクテル・グラスを持っていた梨子を向かいに座らせる。
約10年ぶりに再開する梨子は、あの頃よりも随分大人びて見えた。
果南 「あっ、みんなも呼ぼうか。みんな喜ぶよ」
梨子 「あっ…待って!」ガシッ!
携帯を持った手を、梨子に強く握られる。
お酒が回っているからなのか、梨子の手がとても冷たく感じた。 果南 「梨子…?」
梨子 「今日ここに来たのは、果南さんとお話がしたくて…」
果南 「私と?」
梨子 「はい。…再開するなら、果南さんと一番最初に会うって決めてたんです」
果南 「な、なんで私と? 曜とか千歌の方が…」
梨子 「いえ…。果南さんがいいんです」
梨子は顔を火照らせ、俯く。
梨子の手は、私の腕から離そうとしなかった。
果南 (…綺麗な手……。爪の形も、すごく…) 梨子 「…隣、座ってもいいですか」
果南 「……えっ、あぁ、うん、もちろん!」
果南 (ダメダメ、何考えてんの私は。私には千歌が…)
梨子 「…なんだか疲れてます? さっきも机にひとり突っ伏してましたし」
果南 「あぁ…ううん、大丈夫。ちょっと仕事が忙しくてね」
梨子 「そっか…果南さんもすっかり大人になっちゃったんですね」
果南 「そんな、梨子だって十分大人っぽく…」
梨子 「私なんてまだ子供です。果南さんに比べれば」 梨子 「…果南さんの唇、すごく綺麗」
果南 「な、何言い出すのさ急に」
梨子 「果南さんは大人だから、私が知らないことも、いっぱい知ってるんですよね」
梨子 「私が経験したことないことも、果南さんならいっぱい経験してるんですよね」
果南 「わ、私はそんな……むぅっ!?」
突然、唇が塞がれた。梨子の唇に。
梨子のイメージカラーと同じピンク色をしたカクテルに濡らされた梨子の唇が、私の唇に、歯に、舌に触れる。
時々漏れる梨子の吐息が口の中に流れ込み、私の心臓に直接届くような感覚を覚えた。
梨子 「……ぷはっ」
果南 「な、何を急に…!」 梨子 「私、ずぅっと果南さんとこうしたかったんです」
果南 「り、梨子…」
梨子 「やっと、二人きりになれましたね」
果南 「いや、ほら、周りに他のお客さんとかいるし……むぅっ!?」
梨子 「……んっ………はぁっ…。私には、果南さんしか見えませんけど?」
果南 「な、何言って…!」
梨子が唇についた私の唾液の味を確かめるように、舌で自分の唇を舐める。
その仕草に、私はただ、釘付けになっていた。
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ーー 2ND-DAY 果南の部屋 9:18
果南 「あの後、確かしばらく飲んで……」
果南 「だめだ、覚えてない…」
梨子 「ふぁ……おはようございます、果南さん」
果南 「…ッ!! り、梨子…!」
梨子 「…ふふっ、昨日は暗くてよく見えなかったですけど、やっぱり果南さんの肌、綺麗ですね」
果南 「き、昨日…暗くて……!?」
梨子 「…覚えてないんですか? 昨夜のこと」
果南 「いや…曖昧というか…なんというか…」 梨子 「ふふっ、慌ててる果南さん、可愛い」
果南 「か、可愛い…っ!?」
梨子 「…って、あぁ…もうこんな時間。行かないと」
梨子 「ごめんなさい、急に押しかけたのに。予定があるんで、今日は失礼しますね」
果南 「あっ、うん…」
梨子 「…じゃ、また今夜」
私の言葉を待たず、梨子は私の家をあとにした。残された私はというと、ただベッドの上で千歌の絶望し泣きじゃくる姿を思い浮かべては冷や汗を流していた。
果南 「事故…だよね。そうだよ、これは事故…事故なんだから…!! 落ち着け松浦果南!!」
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ーー 戸惑えば戸惑うほど、
それは愛してるということなの。
―アリス・ウォーカー 本日はここまでとさせていただきます
安価協力ありがとうございました
次回の更新も明日を予定しております 2ND-DAY レストラン 12:30
ルビィ 「やっちゃいましたねぇ…」
果南 「やっちゃったよー…」
ルビィは私の顔色を伺いながら、バーニャカウダを美味しそうにつまむ。
野菜をとる時、いちいち薬指にはまっている銀の指輪に光が反射し、いっそう輝いているように見えた。
ルビィ 「にしても梨子ちゃんですか。音信不通になったと思ったらふらっと現れて…」
果南 「そんで私を誘惑するなんて…。なんてたちの悪い」
ルビィ 「受身な言い方ですね。…果南ちゃんも実は乗り気だったとか」
果南 「そんなわけないっ!!」ガシャンッ!
ルビィ 「ひぃっ!?」
果南 「……ごめん」 ルビィ 「まぁ10年も付き合ってれば、1度くらいそんな過ちがあっても仕方ないかも知れませんけど」
ルビィ 「よりによって、結婚の話が出た時にするなんて」
果南 「…曜から聞いたの?」
ルビィ 「えぇ。…やっぱり結婚、嫌なんですか?」
果南 「嫌っていうか…新しい関係になるのが怖くて」
ルビィ 「千歌ちゃんと付き合い始める前にも、同じようなこと言ってましたね」
果南 「昔の話はやめてって…」 ルビィ 「じゃあいっそ、乗り換えるっていうのは?」
果南 「へ?」
ルビィ 「結婚迫られるの嫌なんですよね? それに10年も付き合ってれば、マンネリ化だって…」
果南 「ルビィ、すごいこと言うね…」
ルビィ 「あくまで一つの意見ですよ。果南ちゃんならそんな選択はしないって信じてます」
果南 「ルビィ…」
ルビィ 「でも、梨子ちゃんの気持ちはどうなるんですかね?」
果南 「うっ…それなんだよね…」 ルビィ 「千歌ちゃんと付き合ってるのは、梨子ちゃん知ってるんですよね」
果南 「うん。もしかしたら、その頃からずっと我慢してたのかも…」
ルビィ 「罪な人ですねぇ…果南ちゃん」
果南 「ルビィ、あんた本当変わったよね…」
「ねぇ、この話知ってる? “落ちる夢”の噂」
「えっ? 知らないけど…」
果南 (……落ちる夢、か) 「夢の中で落ちると、現実でも死んじゃうんだって!! 怖くない!?」
「なんだそれ、信じられっかよ…」
果南 (悪夢…昨日のことも…。ダメだ、思い出せない…)
ルビィ 「…果南ちゃん、大丈夫ですか? 顔色悪いですよ?」
果南 「いや、大丈夫…。昨日全然寝れなかったからさ」
ルビィ 「梨子ちゃんを“寝かせなかった”の間違いではなく?」
果南 「違うよっ!!」
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ーー 2ND-DAY 都内のバー 20:12
ダイヤ 「それにしても梨子さんがここに…。全く気付きませんでしたわ」
果南 「やっぱり、会ってなかったんだ」
曜 「大人びてたとはいえ、あまり変わりなかったんでしょ? なら私達もすれ違いでもすればすぐ気づくはずなんだけどなぁ」
鞠莉 「まだ近くにいるかもね…。今度会ったら、絶対電話してよね?」
果南 「うん、覚えとくよ…」
善子 「…はい、ご注文のラムコークです」 鞠莉 「あっ、善子! 今日は出勤してるんだ」
善子 「風邪ひいちゃったから、3日ほどお休みもらってたの。今日からまた怒涛の連勤よ」
曜 「勿体無いなぁ。昨日いれば、すごいものが見れたのに」
善子 「すごいもの?」
ダイヤ 「果南さんの浮気現場ですわ」
果南 「ちょっ…!!」
善子 「えっ…果南浮気してんの!!? 千歌と結婚の話も出てたんじゃ…」
果南 「こ、声が大きいって!! 誰が聞いてるかわかんないでしょ!」 鞠莉 「しかも浮気相手は、長年音信不通だった梨子って言うんだから、驚きも2倍よね」
善子 「えっ、てことはリリーと会ったの!? いつどこで!?」
ダイヤ 「昨日ここで…らしいですわよ」
善子 「しまった…昨日来ればよかった」
曜 「やっぱり風邪って嘘だったんでしょ」
善子 「マスターに聞こえるでしょ…やめてよ」
善子 「浮気といえば…こんな噂話知ってる?」
善子 「“女の呪い”の話」 ダイヤ 「はぁ…善子さんの好きそうな話ですわね」
善子 「聞きなさいよ!! …なんでも、遊んでばっかいる浮気者を呪い殺すとか殺さないとか」
果南 「な、何それ…女の呪い!?」
善子 「はぁ…ビビるくらいなら最初からしなければいいのに」
果南 「本当最悪だよ……バレたら死ぬ」
鞠莉 「千歌っちはそんなことしないと思うけど」
果南 「違うよ。想像してみなよ、浮気を知った時の千歌の絶望する顔」
曜 「あぁー…それは死にたくなるね」 善子 「それにしても浮気ねぇ。ほんっと最低」
曜 「モットモヒクイ」
果南 「最も低いって言わないで!」
果南 「それに、浮気はもう終わったの。一晩の過ちに過ぎないんだから」
善子 「そういえば知ってる? あのマスターも、昔遊びすぎて、いろんな女の恨み買ったって話」
善子 「ほらあのダサいグラサン。あれで顔隠してるんだって」
果南 「えぇ…あのオジサンが? 嘘でしょ」 鞠莉 「果南もかけといたらー? グラサン」
果南 「かけないよ! …ほら善子、他の客に呼ばれてるよ」
善子 「えっ…あ、はーい!」
曜 「はぁ…こういうとこは気が回るのに」
果南 「う、うるさいっ!」
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ーー 恋をし、同時に賢くあることは不可能なり。
―シルス 2ND-DAY 都内のバー 22:39
ダイヤ 「もうこんな時間ですか。私はそろそろ帰りますがみなさんは…」
果南 「私はまだいいや。明日会社遅いし」
曜 「まぁなんというか、あんまり思い詰めすぎないようにね。それじゃ」
鞠莉 「Ciao!」
果南 (…なんか今、完全にひとりになるのはダメになる気がするんだよな)
カランカラーン
マスター 「いらっしゃいませお嬢さん」
「こんばんはー」
果南 「…っ! こ、この声まさか…!」 梨子 「あっ、やっぱりいましたね。果南さん」
果南 「な、何でここに…っ!」
梨子 「ふふっ、この時間に来れば会えるんですね」
果南 「な、何言って…」
梨子 「心配して来たんですよ? 今日も昨日みたいに、暗い顔してないかなって」
果南 「ご、ごめん。昨日の記憶、あんまり無くてさ」
梨子 「あっ…じゃあ明日、朝ごはん作ってあげますよ! きっと元気になれますよ」
果南 「だ、ダメッ!!」ガシャンッ!
梨子 「えっ…だ、だめ…ですか?」 果南 「だ、ダメっていうかなんというか…!」
果南 「と、とにかくダメだからっ!」
梨子 「ふふっ、照れることないのに」
果南 「て、照れてるとかじゃ…」
果南 (ダメだ…これ以上一緒にいたらまずい!)
梨子 「…あれっ、帰っちゃうんですか?」
果南 「ごめん、明日早いんだ」
梨子 「そう、なんですか…。分かりました、また明日」
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ーー 3RD-DAY 果南の部屋 00:21
果南 (浮気…。はぁ、なんでこんなことに)
果南 (こんなんじゃ千歌に顔向けできないよ…。とにかく、もう梨子にはあまり関わらないようにしなきゃ)
果南 (……はぁ、寝よ………)
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ーー 3RD-DAY 『???』 00:53
果南 「まただ……またここに…っ!!」
果南 「もう…! 何回登ればいいのさっ!!」
また崩れゆくブロックを登り続ける。
途中、何匹もの二足歩行する羊が落ちていくのが見えた。一歩間違えれば、私もああなるのだろうか?
そう思うと恐怖でいっぱいになった。いや、もともと恐怖は感じていたが、それ以上に。
私はまだ、死にたくないから。
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ーー 少年 『やぁ、随分な登りっぷりじゃないか』
なんとか休憩地点…聖堂まで再びたどり着いた私は、次のエリアに進むために入った部屋で、少年のような声と対話していた。
隣の部屋にいるのはわかるが、ぼんやりとシルエットになっていて、顔は見えない。
果南 「いつまでやらされるのさ、こんなこと!」
少年 『君が死ぬまで…かな』
果南 「はぁっ!?」
少年 『現実の世界に、君が死んでしまえばいいと思っている人がいるのさ。ここはそう願われた人物が訪れる場所なのさ』
果南 「そんな…私が誰かに恨まれてるって…。まさか、嘘だよね…」
少年 『さ、次は僕の質問に答えてもらうよ』 【第2問】です。
暗く静かな部屋と、明るく賑やかな部屋。
心が安まるのはどっちですか?
1.暗く静かな部屋
2.明るく賑やかな部屋
安価
>>96 果南 「こっち…かな」
【明るく賑やかな部屋】
少年 『ふぅん、なるほどね』
少年 『じゃあ今回は、もう少しだけ哀れな子羊にこの場所について教えてあげよう』
少年 『ここは全体が巨大な聖堂なのさ。全部で“8つの階層”がある』
少年 『今君は三日目だから、まだたったの第3階層だ』
果南 「そ、それってつまりゴールがあるってこと!?」
少年 『あまり夢を見ない方がいいよ。頂上なんてそうそうたどり着けるものじゃない』
少年 『それより、ほら。行く手から、恐ろしいモノの声が聞こえるよ』 果南 「もしかして、この前みたいな化け物!? あれは一体なんなの!?」
少年 『ここはアンタの夢の中だから、何が出てくるかもアンタ次第さ』
少年 『あと、ここでの記憶は現実には持ち帰らせないからね。…じゃ、準備はいいかい?』
果南 「ちょ、ちょっと待って…!!」
言葉を待たず、部屋はまたロケットのように飛び始める。私はまた、死のゲームのステージに運ばれていった。
ーーーーー
ーーー
ーー 現れたのは昨日までと違う化け物だった。
全裸の女性のような姿をした巨大な化け物。
艶めかしさなどまるで感じないほど、皮膚の所々がまるで古い土器のように乾いてはがれ落ちており、瞳からは狂気を感じる。
化け物から必死で逃げ、ようやく扉にたどり着く。扉を開けると昨日と同じように白い光が溢れ出し、化け物はその光に照らされてバラバラに砕け散った。
果南 「ざ、ざまーみろ!!」
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ーー 【第3階層】
Great escape!!
You survived. 3RD-DAY 果南の部屋 08:21
梨子 「おはようございます、果南さん」
果南 「なんでまたいるのさぁぁっ!!!?」
また悪夢を見ていたような気がする。
いや、今見てるこれも悪夢か?
全裸の梨子が、そこにいる。いや、確かに昨日私はひとりで帰ってきて、ひとりで寝た。
じゃあ…なんで?
果南 「な、なんで梨子がここに?」
梨子 「覚えてない…ですか? 昨日私、無理言って押しかけちゃって…」
果南 「押しかけた…?」
梨子 「果南さん、寂しいかなって…。いや、私が寂しかったんです」 梨子 「でも、今は全然寂しくないです。……昨日、あんなに激しくされたら…」
果南 「は、激しく…!? 私、何かしたっけ?」
梨子 「言わせる気ですか…? もう、果南さんったら…」
そう言って梨子は目を閉じて顔を私に近づける。
果南 「わっ…ちょっ…! ま、待って待って!」
……あぁ…………これは……
マジで、ヤバい。
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ーー 3RD-DAY 喫茶店 12:12
千歌 「……ねぇ」
果南 「な、…何?」
千歌 「ふざけてるの? そのグラサン」
果南 「いや、イメチェンというか…」
千歌 「似合わない。やめて」
果南 「……ごめん」
果南 「…で、話って何?」
千歌 「いや…今日果南ちゃん、一日空いてたよね?」 果南 「うん、空いてるけど」
千歌 「…久々に、デートしない? 夜まで」
果南 「なんだ、それならそうって言えばいいのに」
千歌 「だって果南ちゃん、夜までデートって言うと、たまに嫌そうにするし」
果南 「そ、そうだっけ…?」
千歌 「まぁ…大事な話、もあるんだけど。まずはここらへん散歩でもしよ?」
果南 「うん、分かっ…」
ピリリリリ!!! 千歌 「…? 電話鳴ってるよ?」
果南 「あ、ごめん。出てもいい?」
千歌 「うん、いいよ」
果南 「……はい、もしもし?」
梨子 『もしもし? 果南さん?』
果南 「ぶっふぉぁっ!!?」 梨子 『よかったぁ、出てくれた』
果南 「な、なんで…?」
果南 (おかしいな…梨子って私の新しい連絡先知ってたっけ…?)
千歌 「果南ちゃん、誰から?」
果南 「えっ…あぁ、ちょっと(ま、まずい…)」
梨子 『今近くに来てるんですけど、会えませんか?』
果南 (近く!? …てことは、この辺りに?) 果南 「あ、あのっ! 申し訳ありません、その件は今少々厳しいと言いますか…」
梨子 『…ダメ、ってことですか?』
果南 「も、申し訳ありません! し、失礼しまーす!」
千歌 「……大丈夫?」
果南 「あっ、うん! 会社から。突然出勤しろっていうから、断ったよ」
千歌 「本当!? なんかここ最近果南ちゃん、仕事優先って感じだったから、嬉しい」
果南 「当たり前だよ…私にとっても千歌は特別なんだ」
千歌 「えへへぇ…」 千歌 「じゃ、行こっか」
果南 「あっ、待って! 近くもいいけど、今日は少し遠出してみない?」
千歌 「えっ…なんで?」
果南 「いや、せっかく一日休みなんだからさ! 遠出しないともったいないかなって…」
千歌 「……たしかに。じゃあそうしよ!」
果南 「ふぅ…じゃあ行こうか」
果南 (今この近くにい続けるのはまずいよね…)
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ーー 3RD-DAY 観光スポット 19:27
千歌 「今日は楽しかったねぇ、果南ちゃん」
果南 「うん、私もだよ。千歌」
千歌 「……ねぇ、果南ちゃん」
千歌 「私たち、もう付き合って10年経つんだよね」
果南 「そうだね。…あれから長いよね」
千歌 「私も、回りくどかったのかなって。…本当はもっと早く、自分の言葉で言うべきだったんだよね」
果南 「回りくどい? 何が?」
千歌が自分の鞄を漁り始める。
そして丁寧に、ゆっくりと、小さな箱を取り出した。 千歌 「お母さんがとか美渡姉が、とか…。そんなの関係なかった」
千歌 「私は私の本心で、果南ちゃんと新しい関係になりたい」
千歌 「……だから、受け取って?」
果南 「…………千歌」 本日はここまでとさせていただきます
更新遅れて申し訳ありませんでした。明日も今日くらいの時間の更新を予定しております 時間が止まったような感覚がした。
差し出された指輪を、私はただ見つめていた。
宝石も何もついてないシンプルな指輪だが、宝石があるよりも輝いて見えた。
果南 「千歌、私は……」
抱きしめたい。
ここで千歌のことを抱きしめて、結婚を承諾すれば、全て上手くいく。
だが、ふと、梨子の顔が頭に浮かんだ。
…あれ? そもそも、私はこの状況を素直に喜べていないんじゃないか? 果南 (なんで…すぐにOKの言葉が出ないのさ、私は)
千歌 「果南…ちゃん? 大丈夫…?」
果南 「千歌、私は…」
梨子 「あれっ、果南さん、千歌ちゃん?」
果南 「ッッ!!?!!??」 千歌 「り、梨子ちゃん!?」
千歌は咄嗟に指輪をしまう。
そして瞳を潤わせ、梨子に飛びついた。
梨子 「久しぶり、千歌ちゃん」
千歌 「今までどこに行ってたの!? 本っ当に心配したんだからね!?」
梨子 「ごめんね、本当。色々あって…」
千歌 「でも、無事でよかった。梨子ちゃんにお話したいこと、いっぱいあるんだよ?」
梨子 「うん。私も千歌ちゃんとお話したいこといっぱいあるし、どっかでお食事でも…」
果南 「な、ならさっ!」 果南 「わ、私は先に帰ってるね」
千歌 「え? な、なんで…?」
果南 「へっ!? い、いやぁ、梨子も千歌と2人っきりの方がいいかなぁって…」
梨子 「うーん…たしかにそれもいいですね。果南さんとはこの間、いっぱいお話しましたし」
果南 「梨子っ!」
千歌 「えっ…てことは果南ちゃん、梨子ちゃんととっくに再会してたの!?」
果南 「ち、千歌には言ってなかったね。ごめん…」
千歌 「ひどいよ果南ちゃん! そういうのは早く言ってくれないと!」
果南 「ご、ごめん…」
千歌 「はぁ…まぁこうして再会出来たんだし、いいよ」 梨子 「じゃあ千歌ちゃん、行こっか」
千歌 「うん! …あ、ちょっと待ってて」
千歌 「……返事、待ってるからね」ボソッ
果南 「……っ! う、うん」
千歌 「えへへ、じゃあ、ごめんね。じゃーね」
果南 「うん、ばいばい」
駆け出す千歌と梨子の背中をただ見つめる。
この光景は高校時代にも何回かあったような気がしたが、今はその時とは全く違う感情が、私の中を巡っていた。
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ーー 結婚は邪悪なるも必要なる邪悪なり。
―メナンドロス 3RD-DAY 都内のバー 20:54
『連続怪死事件の続報をお伝えいたします。今朝遺体となって発見されたのは、――さん 〇〇歳。――さん △△歳』
『以上です。続報が入り次第、追ってお伝えいたします』
鞠莉 「Happy marriage!! 果南!」
果南 「ちょっと鞠莉! まだ決まったわけじゃないから…」
曜 「それにしても千歌ちゃんもやるねぇ」
ダイヤ 「えぇ。てっきりプロポーズなら果南さんからかと思っていましたわ」
果南 「はぁ…もうどうしよう…」
善子 「そんなの、OKに決まってるじゃない」 果南 「簡単に言うよ…」
善子 「だって簡単な事じゃない。10年も付き合って、やっと千歌が勇気を出してプロポーズしてくれたんでしょ?」
ダイヤ 「えぇ。断る理由が見当たりませんわ」
曜 「…もしかして、梨子ちゃんのことまだ気にかけてるの?」
果南 「だって……ねぇ…」
鞠莉 「梨子との関わりは一時の過ちじゃなかったの?」
果南 「そうだけど…もうそれじゃ済まないくらいになってるって言うか…」 善子 「何よそれ…」
果南 「だって今朝、言われたんだよ」
梨子 『もしかして果南さん、私のこと嫌いになりました? ……だとしたら私、自分に存在価値を見いだせません』
ダイヤ 「重い……ですわね」
曜 「ていうかいつの間に付き合ってることになってるのさ」
果南 「私が聞きたいよ…」 善子 「はぁ、もうこれは立派な二股ね」
果南 「二股って言わないで! 故意でやってるみたいじゃん!」
ダイヤ 「どちらにせよ、けじめはつけなくてはいけませんよ」
果南 「分かってる…分かってるけどさぁ…」
善子 「…もう1杯、飲んでく?」
果南 「いや、今日はもう帰るよ」
ダイヤ 「あら、珍しいですわね」 果南 「なんか今日は、ひとりでゆっくり考えたくてさ」
果南 (それにここにいたら、また梨子が来ちゃいそうだし…)
曜 「じゃあ私も帰ろうかな。果南ちゃん、送らなくて大丈夫?」
果南 「大丈夫だよ、ありがと」
果南 (結婚…かぁ…。今のままじゃダメなのかな…)
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ーー 4TH-DAY 果南の部屋 00:24
千歌 『私と、結婚してください!!』
梨子 『私、その人か自分のこと殺しちゃいます…』
果南 (はぁ…どうしてこんなことに…)
千歌の差し出した婚約指輪が、ずっと頭から離れなかった。本来喜ぶべきなのに、私は素直に喜べなかった。
こんな私と結婚などして、千歌は幸せなんだろうか。
私は、本当に……
千歌のことを、愛しているんだろうか……
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ーー 4TH-DAY 『???』 00:57
少年 『また来たね』
果南 「また来たねって…あんたが一方的にここに呼んでるんじゃないか」
少年 『仕方ないさ、あんたが先に“ヒトの未来を奪おうとした”んだから』
果南 「ヒトの…未来?」
少年 『あぁ。心当たり、あるだろ?』
果南 「……。」
少年 『さ、今日も質問に答えてもらうよ』 【第3問】です。
実際問題、愛は、お金で買えますか?
1.買える
2.買えない
安価
>>133 【愛はお金で買える】
少年 『ふぅん、なるほどね。だんだん君のことがわかってきたよ』
果南 「こんなこと繰り返して、一体何をさせたいのさ!」
少年 『前も言っただろ。…君がここで落ちて死ねばいいと思っている人がいるのさ』
少年 『…さて、次が第四階層のラストだ。恐ろしいモノの声が聞こえるが、ここを抜ければ半分を過ぎることになる』
少年 『せいぜい頑張りなよ』
少年の声に続いて、指を鳴らしたような音が聞こえる。
そして部屋はまた、ロケットのように飛び始めた。
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ーー 現れたのは巨大な道化師。
すべての指に大きなリングを携え、必死に逃げ惑う私を煽るかのようにくるくると回している。
…そのリングに、見覚えがあった。
果南 「私の夢…だからか。それより、早く逃げなきゃ…!」
必死で逃げていると、途中でとある羊を見かけた。私と同じで逃げ惑っているが、どうやらまだこの登山になれていないらしく、動きはぎこちない。
ショートヘアーの羊 「た、助けて…! 死にたくない…死にたくない…!」 今までも登っている途中にほかの羊と遭遇したことはあったが、無視してきた。
自分には関係ないから。自分の命を守るだけで精一杯だから。
……だがその羊だけは、何故か放っておけなかった。
果南 「はやく! こっちだよ!」
羊 「あ、あなたは…!? 羊…!?」
果南 「いいから! 早く登って!」
扉にたどり着いた。
ひと一人分荷物を抱えた状態だったので、道化師はすぐそこまで迫っていた。 羊 「う、うわぁっ!!? だめだぁ、死ぬっ!」
果南 「大丈夫! 扉を開ければ…!」
扉の奥から白い光が溢れ出す。
道化師の体はみるみる石化していき、遂にはバラバラに砕け散った。
羊 「た、助かったの…? やった!」
果南 「ほら、早く行くよ!」
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ーー 【第4階層】
Great escape!!
You survived. 4TH-DAY 果南の部屋 09:24
果南 「……っ!!」
梨子 「…大丈夫ですか? うなされてましたけど」
果南 「梨子っ…! なんで…昨日は千歌と一緒にいたんじゃ…」
梨子 「果南さんが呼んだんじゃないですか。忘れちゃったんですか?」
果南 「そんな…私が? 嘘でしょ…?」
果南 「と、とりあえず梨子は服を着て…」
その時、家の呼び鈴が鳴った。
この時間…宅配便でもない。考えられるのは…
果南 (千歌…っ!! まずいっ!) 梨子 「……どうしたんですか?」
果南 「梨子っ! ……ちょっと、トイレ入っててくれない?」
梨子 「えっ…なんで…」
果南 「いいから早くッ!」
梨子がしぶしぶトイレに入るのを見届け、玄関へと向かう。
相変わらず、呼び鈴は鳴らされ続けている。
果南 「……なるようにしか、ならないよね…」
ガチャッ
千歌 「遅いっ!!」
果南 「ひぃっ!?」 千歌 「もぅ…もう少し早く出てよ。寒いんだから」
果南 「ご、ごめん」
千歌 「ほらこれ。朝ごはん」
果南 「あ、朝ごはん?」
千歌 「なんか最近、顔色悪かったから。ちゃんと食べてるのか心配で」
果南 「あぁ……ありがと」
千歌 「ううん、いいの。これからは毎日作んなきゃだから、練習も兼ねて…ね」
果南 「ま、毎日…」
千歌 「……意味、分かるよね?」 千歌 「あと、昨日はごめんね。せっかくのデートだったのに」
果南 「ううん。折角の再会だったんだから、いいよ」
千歌 「なんか誰かに呼ばれたとかで、あまり長くは一緒にいられなかったけど、楽しかった。ありがとね果南ちゃん、気遣ってくれて」
千歌 「……そういうとこも、大好きだよ」
果南 「あ、ありがと…」
千歌 「じゃ、私帰るね。ばいばい」
果南 「うん。ばいばい」
千歌 「……返事、いつでもいいからね」 玄関の扉は、重い音を立てて閉められた。
渡された弁当箱を見る。
こんな朝早くだというのに、品目も多く、バランスもよく考えられていた。
トイレの中からしきりに、「まだですかー」と梨子の声がする。
……弁当箱を握る手が震え出す。
結局お弁当は、半分も食べられなかった。
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ーー 本日はここまでとさせていただきます
今回も安価協力ありがとうございました
次回の更新は今夜10時頃を予定しております 猫は9つの命を持ち、女は9匹の猫の命を持つ。
―フラー それからも、悪夢は毎晩続いた。
相変わらず内容は覚えてない…それは梨子のことも同じだ。
私は梨子との時間を思い出せない。
こんな日々、いつまで……
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ーー 7TH-DAY 『???』 00:45
高野 「久しぶり…だな」
果南 「高野さん! よかった、まだ生きてたんですね」
高野 「あぁ。ここも含めて、あと2階層だ」
果南 「私たちならできます。…絶対に」
高野 「あぁ、じゃあ行こうか」 少年 『…友達が出来たみたいだね。哀れな子羊も、群れることを覚えているみたいだ』
果南 「うるさい! …私たちはここまで来たんだ。もう哀れな子羊なんかじゃ…」
少年 『…でも君は、現実での迷いを捨てきれていないだろ? だから毎晩、ここに来るんだ』
少年 『プロポーズの返事、いつ出すんだい?』
果南 「…っ! あんた、どこまで知って…」
少年 『……さ、質問に答えてもらうよ』 【第4問】です。
男女関係なんて、所詮はオスとメスの関係?
1.人はケモノとは違う
2.所詮はケモノだ
安価
>>154 果南ちゃん結構ダーティな回答してるな。こっからどうなる ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています