【SS】果南 「恋にオちる」 千歌 「それは“悪夢”だよ」
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花丸 「夜空が満点の輝きに満ちるころ、素敵な物語をあなたと」
花丸 「みなさんこんばんはっ、国木田花丸です」
花丸 「さて…みんなはこんな“怖い噂”を聞いたことがあるずらか?」
花丸 「夜、“落ちる夢”を見た時、すぐに眠りから目覚めなければ…」
花丸 「そのまま実際に死んでしまう…」
花丸 「聞いたことない…? 記憶の片隅に残しておくくらいでいいずら」
花丸 「さて、どうしてこんな話をしたかというと。今日はみんなに紹介したいお話があるずら」 第1問:【結婚は人生の始まりだ】+
第2問:【明るく賑やかな部屋】+
第3問:【愛はお金で買えない】+
第4問:【人はケモノとは違う】+
第5問:【嘘をつく事】+
最終問題:【堅実な生き方】
【エンディング-A に分岐します】 【エンディング-A】
9TH-DAY 都内のバー 12:31
千歌 「……ねぇ、これってどういうこと?」
果南 「…元気そうでよかった、千歌」
千歌 「そういうことじゃなくて」
千歌 「ここのマスターから連絡があったんだよ? “曜ちゃんが大変だから今すぐ来て”って」
果南 「ごめん、嘘なんだそれ」
千歌 「まぁ見ればわかるよ。…よくマスター、浮気者の手伝いなんてしたね」
果南 「うぐっ…」 千歌 「…で? 曜ちゃんもいないし、私は帰るけど」
果南 「待って! …話があるんだ」
千歌 「私にはないよ」
果南 「お願い。……これだけは、聞いてほしい」
千歌 「……はぁ。その真剣な顔、あの時に見せて欲しかったよ」
千歌 「……で、何?」 果南 「全部、幻だったんだ」
千歌 「へ?」
果南 「浮気相手なんて、いなかったんだよ! 浮気そのものが、幻だったんだ」
千歌 「な、何言い出したのいきなり!?」
果南 「信じられなくて当然だと思う。…だけど本当なんだ。混乱してて、浮気したと思い込んでたっていうか」
千歌 「今更そんな言い訳…」
果南 「本当のことなんだよ! …全部私の幻覚だって、マスターとかダイヤ達が教えてくれたんだ」 千歌 「し、信じられるわけないじゃん…」
果南 「分かってる。でも誤解されたまま終わらせたくなかったんだ」
千歌 「……絶対嘘だよ、そんな…」
曜 「嘘じゃないよ、千歌ちゃん」
千歌 「…! 曜ちゃん。それに、ダイヤさんに鞠莉ちゃんも…どうして」 果南 「曜…ダイヤ、鞠莉。ごめん」
鞠莉 「ノンノン、今更水臭いよ果南」
ダイヤ 「本当に世話が焼けますわ」
曜 「まぁ、誰だってこんな話、最初は信じられないよね。まして、語り部が果南ちゃんだもん」
千歌 「ちょっと、どういうこと…!?」
ダイヤ 「果南さんの夢物語の裏付け役…といったところでしょうか」 千歌 「まさか、果南ちゃんの言ってることは本当だって言いたいの?」
曜 「そうだよ」
千歌 「…幾ら積まれたの?」
果南 「賄賂とかしてないって!」
鞠莉 「いくら幼馴染だからって、浮気の手伝いなんてしません」
曜 「そうそう。私たちが協力するってことは、果南ちゃんが潔白ってことだよ」
マスター 「あのー…」 千歌 「マスター!? どうしたんですか、その顔の傷…」
マスター 「い、いやぁ…昨晩ちょいとね。それより、“幻”の話ですが、私からも説明しなくてはいけないことがいくつかありまして…」
千歌 「ど、どういうこと?」
ダイヤ 「実はですね…」
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ーー 果南 「……全部事実なんだ。信じてくれる?」
千歌 「…………うぅ……ひぐっ……」
曜 「千歌ちゃん…だいじょ…」
ダイヤ 「曜さん、行きましょう」
曜 「で、でも…!」
鞠莉 「私たちの役目はここまで、でしょ?」
曜 「……うん」 果南 「でも妄想とはいえ、気持ちは浮気してたのは事実。本当にごめん」
果南 「千歌を不安にさせて、本当にごめん」
千歌 「…本当だよ。本当に怖かったんだよ…」
果南 「もう、千歌は私のことを信用してないって思った。もう二度と、私を信じてもらうことは出来ないって思ってた」
果南 「……でも、“コレ”を見て、それは違うって気付いたんだ」
鞄から、小さな箱を取り出す。
千歌から渡された、婚約指輪だ。 千歌 「これ、私が要らないって言った指輪…」
果南 「…偽物でしょ、これ」
千歌 「……。」
果南 「取り出した時、やけに軽いなって思った。これ、よくリサイクルショップとかにある安物だよね」
千歌 「……気付いたんだ」
果南 「箱は紛れもなく本物だけど、中身は偽物。これを私に渡したってことはつまり…」
果南 「まだ私を、信じてくれてるってこと」 果南 「…まだ持ってるんでしょ? 本物の指輪」
千歌は何も言わなかった。
何も答えず、鞄から別の箱に入った指輪を取り出した。
その指輪は、プロポーズの際に見た時より、いっそう輝いて見えた。
そして指輪には、しっかりと、私と千歌の名前が刻印されてあった。
果南 「…やっぱり。千歌は思い出を大切にする人だもん。せっかくの指輪に、刻印をしないなんて考えられなかったんだ」 千歌 「……何さ。一度私を裏切ったくせに、分かったようなこと言わないでよ…」
果南 「ごめん。…本当にごめん」
千歌 「…そうだよ。私はずっと待ってた。おかしいよね、振ったのはこっちだっていうのに」
果南 「ううん。…千歌らしいよ」
千歌 「何それ…」 果南 「……千歌。その指輪、私に預けてくれない?」
千歌 「へ…?」
果南 「私、ずっと悩んでた。敷かれたレールの上を走るだけの生き方は嫌だって思ってた」
果南 「でも違ったんだ。敷かれたレールの上だとしても、“どうやって進むか”は私の自由なんだって」
果南 「それを気付かせてくれたのは千歌なんだ。…私は、千歌から色々なものをもらった」
果南 「……だから、指輪は私が渡したい」 千歌 「何…言ってるの。果南ちゃん、やっぱりバカだよ」
果南 「勝手なこと言ってるって分かってる。…でも、お願い」
千歌 「………………嫌だ」
果南 「千歌…」
千歌 「だって、指輪は私がはめたいんだもんっ!!」
果南 「……!」 千歌はいつも通りの無邪気な笑顔を見せ、べーっと舌を出した。
思わず涙が溢れ出る。だが私も負けじと笑顔に戻し、指輪を奪い合う。
果南 「何をー! 年下のくせにっ!」
千歌 「嫌だ嫌だ! いっつも果南ちゃんばっかりカッコつけて! 私もたまにはそういうことやりたいんだもーんっ!!」 曜 「……はぁ、心配して損した」
ダイヤ 「すっかり元通りですわね」
鞠莉 「ううん。…元より、ずっと輝いてる」
曜 「本当…相変わらずのバカップルだよね」
ダイヤ 「……お幸せに。果南さん、千歌さん」
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ーー 花丸 「…如何でしたか? また会えたずらね」
花丸 「恐ろしい悪夢からの完全脱出! みなさんの力で、果南ちゃんを導くことが出来たずら」
花丸 「ところでこのお話…みなさんは読むだけではなく、途中でとある価値観を問われ続けていたことに気付きましたか?」
花丸 「秩序に従って、堅実な生き方を望むのか。逆に、刺激に満ちた奔放な生き方を望むのか」
花丸 「果南ちゃんを毎晩苦しませたあの悪夢はもしかすると…」
花丸 「果南ちゃんを本心に向き合わせるための、“大人への階段”だったのかも知れませんね」 花丸 「そしてラスト! 意を決して千歌ちゃんに復縁を迫る果南ちゃん」
花丸 「こんな夢物語を、千歌ちゃんは信じるのか…。ドキドキしながら見たけど…」
花丸 「どうやら、心配はなさそうずら。いつも通りの千歌ちゃんと果南ちゃんの姿が、そこにはありました」
花丸 「こんなお話を信じるなんて、千歌ちゃん、ちょっと優しすぎるような気もするずら」
花丸 「でも果南ちゃんが言ってた、“敷かれたレールの上だとしても、どう進むかは自由”って言葉」
花丸 「あれは紛れもなく果南ちゃんが自分で見つけ出した答えで、それが千歌ちゃんに伝わったのかも」 花丸 「さぁ、みなさんはこの結末、どう感じたずら?」
花丸 「2人とも、このままうまくいくといいんだけど…多分大丈夫だよね」
花丸 「きっとみなさんも気になる…よね? じゃあ、もう少しだけ、お話の続きを見てみることにするずら!」
花丸 「…ふふっ、お話の世界って、本当にいいものずら。それじゃあ、また会いに来てくれる日まで、待ってるずら〜」
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ーー 〜数ヶ月後〜
曜 「えー…それでは、新郎新婦のご入場です。みなさま、拍手でお出迎えください」
溢れんばかりの拍手と歓声に包まれ、式場に千歌と共に足を踏み入れる。
入場曲のピアノを弾いてくれているのは、梨子ではなく鞠莉。…一瞬、ピアノを弾く梨子の姿が鞠莉に重なる。
…もう二度と会えないその人物に、私はなにかつっかかるものを感じていた。
千歌 「……果南ちゃん」 果南 「…? どうしたの、千歌」
千歌 「私今、すっごい幸せ。Aqoursのみんなも来てくれて、私、最高に幸せなんだ」
果南 「Aqoursのみんな……か」
千歌 「……? どうしたの?」
果南 「ううん、なんでもない。私も幸せだよ、千歌」
千歌 「…………うん」
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ーー お色直しのため、一度みんなの元を離れる。
スタイリストの方々は、手馴れた手つきでメイクを施す。私は目を閉じて、完成を待ちわびるだけだ。
梨子 『……果南さん、おめでとうございます』
果南 「…っ!? 梨子…!?」
スタイリスト 「すいません、今振り返らないでいただけますか?」
果南 「あっ……すいません」
梨子 『いいんですよ。…今の私に、果南さんと目を合わせて会話をする資格はありません』 果南 「…なんでわざわざ来たの?」
梨子 『お祝い、どうしてもしたくて。…あーあ、果南さんの結婚式でピアノ弾きたかったな』
果南 「…ありがとう。今こうして千歌と結婚式を挙げられてるのも、梨子のおかげだと思う」
梨子 『…私は邪魔をしたんですよ?』
果南 「梨子がいなくても、結婚はしただろうけど…。こんなスッキリした気持ちで式は挙げられなかった」
梨子 『果南さん……』 果南 「…そうだ、梨子」
梨子 『なんですか?』
果南 「出来るかどうかは分からないけど、やってみて欲しいことがあるんだ」
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ーー 曜 「続きまして、新郎新婦の思い出を、スライドショーで振り返っていきたいと思います」
曜の合図で、鞠莉がプロジェクターを動かす。
ルビィ 「うわぁ、懐かしい! Aqoursだ!」
花丸 「青春ずら…もう戻らない日々ずら…」
善子 「そういうこと言うのやめなさいよ!」 ダイヤ 「…やはりAqoursの“8人”で活動していたあの頃の日々は、忘れられませんわね」
ルビィ 「うん…。……あれ?」
善子 「どうしたのよ、ルビィ」
ルビィ 「いや、スライドショーの音楽、私が用意したものと違うような…」
花丸 「そういえば、ルビィちゃんの用意した音楽はオルゴールだったずら」
善子 「…………? どう考えてもピアノの音色じゃない、これ」
ダイヤ 「それにこれ、録音ではありませんね。生音のような気がするのですが…」 果南 「……梨子、できたんだね」
千歌 「…なんだか、懐かしい曲だね」
果南 「千歌…この曲覚えてるの?」
『想いよひとつになれ』
…梨子が作曲した曲だ。だが私以外の誰も、この曲を覚えていない。梨子が存在しないこの世界では、この曲すらも存在していないことになっている。
千歌 「ううん。初めて聴くはずなんだけど…。なんだか、暖かい」 果南 「…ある人が、私たちをお祝いするために作った曲なんだって」
千歌 「ある人…? 鞠莉ちゃんとか?」
果南 「ううん。…きっと、千歌は覚えてない人」
千歌 「……どういうこと?」
果南 「今はわからなくてもいい。…いつか思い出したら、私に教えてね」
千歌 「…分かった。覚えとく」 曲が終わる頃は、スライドショーもちょうど最後の写真を表示し終えたところだった。
式場にある、ピアノの方に目をやる。
梨子は静かに立ち上がり、式場にいるみんな…そして私と千歌に向けて礼をする。
拍手は鳴り止まないが、おそらくその拍手はスライドショーに向けられたもので、梨子に向けられたものではない。
……梨子が見えているのは、私だけだから。 私はただ一人、梨子に向けて拍手をする。
梨子はにっこりと笑い、徐々にその姿を薄くしていき、最後には完全に消えてしまった。
千歌 「……果南ちゃん?」
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ーー 式が終わり、私と千歌は二次会に向かうためそれぞれ着替えをしていた。
華やかな衣装を脱いでも、自分が夢の中にいるような感覚は消えなかった。
この幸せな感覚は、いつまで残るのだろう。
「あの…少しいいですか?」
果南 「はいはい、どうしたんですか?」
「いえ、先ほど式場の片付けをしていたところ、ピアノの上に手紙が…」
千歌 「手紙?」 千歌が手紙を受け取る。
名前が書いていなかったので差出人は不明だが、私にはそれが誰からのものか察しがついた。
果南 「……読みなよ、千歌」
千歌 「えっ、うん…」
手紙を広げ、千歌はじっくりと手紙を読み進める。…次第に千歌の瞳に涙が浮かび始め、ついに零れた。 果南 「……千歌、誰から?」
千歌 「……分からない。分からないけど、なんだろう、この気持ち。すっごく嬉しいんだ」
果南 「……何が書いてあったの?」
千歌 「結婚、おめでとうって。この人が誰かっていうヒントは書かれてなかったけど、最初から最後まで、全部私たちを祝福する言葉だった」
果南 「……そっか」
突然、千歌が手紙を持ったまま抱きついてきた。微かに震える手を撫で、優しく抱きしめた。 千歌 「私……凄く嬉しい。こんなにたくさんの人に祝福されて、すごく幸せ」
果南 「…それは私も同じ。千歌、私と結婚してくれて、ありがとう」
千歌 「私も、ありがとう。夢みたいな時間だった。…今もだけど」
顔をあげ、千歌は私の目を見つめる。
…何も言わず、瞳を閉じてキスをした。
千歌 「…………愛してるよ、果南ちゃん」 これにて完結となります
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます
みなさんのレス、大変励みになりました。感想などもしございましたら、是非よろしくお願いします 乙!毎日更新してくれてありがとう
思い出せないけど暖かいってところ、神無月の巫女のラストを思い出したわ 乙!
とても楽しく読ませてもらいました。
梨子ENDが素敵すぎる。 毎晩の楽しみにさせてもらっていました、とても良かったです 乙でした。毎日楽しみに読んでました!
梨子味があっていいな〜 >>423
こいつBエンドの果南ちゃんやな?
なにはともあれ
完走おつ! 果南ちゃんなら2人まとめて幸せにできるんじゃないかなん? ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています