千歌「アイス好き?」 [無断転載禁止]©2ch.net
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夏休み目前。浮き足立つ学生達の前に聳え立つ巨大な関門………
そう、期末テストだ。
ここ浦の星女学院でも、夏休み前に学期末考査が行われる。
試験期間は月曜から金曜までの一週間。期間中は学生が勉学に勤しめるよう、部活動は一律休止となる。
試験科目の数は学年や選択によって変わるが、私のクラスでは5日間で計11科目のテストがある。
テストは40点未満で赤点となり、赤点が一つでもあった生徒には夏休み中に追試が行われる。
追試は夏休みを滅ぼす存在であり、学生達にとって大いなる敵である。
そして、やって来た試験当日。
いよいよ、私たちの夏休みを賭けた、一世一代の大勝負の火蓋が切って落とされた。 【テスト初日】
千歌「………ついに、この日がやって来た…」
梨子「ち、千歌ちゃん。そんな戦場に行くような面持ちにならなくても…。
Aqoursのみんなで勉強会もしたんだから、きっと今回の試験も乗り越えられるよ!」
千歌「でも…。心配なことが多すぎて、テストに集中できるか不安なんだよね」
曜「大丈夫だって千歌ちゃん〜!私は勉強会には参加できなかったけど、千歌ちゃんの頑張りは私の耳まで届いてるよ」
梨子「そうそう。自分に自信を持って、一緒に頑張ろう!」
千歌「うん、そうだね…。努力は嘘つかないもんね!私、頑張るよ」
曜「………あ、ねえ。一つ訊きたいことがあるんだけど、いいかな?」
千歌「ん、何〜?」
曜「勉強会ってさ…、ここの教室でしてたの…?」
梨子「ううん、みんなで部室に集まって勉強してたけど…。どうしてそんなことを訊くの?」
曜「あ、いや、何でもない。……よーし、テスト頑張るヨーソロー!」
先生「渡辺さん。もうチャイムは鳴り終わってますよ」
曜「え、先生!いつの間に!?……はーい、すぐに座りますよーっと」
千歌「くすくす。もう、曜ちゃんったら…」
先生「皆さん静かにしてください。今から問題用紙を配りますよー」
試験初日。
この日の2年生の試験科目は、現代文と保健だ。 先生「………テスト終了です。筆記用具を置いて、後ろから解答用紙を回してください」
千歌「…」
今日の試験を終え、クラスの面々は帰りの途に就こうと支度を整えている。
私も他のみんなと同様、勉強用具を鞄に詰め、帰り支度を進めている。
千歌「……菊地先生」
先生「高海さん…。どうかしたの?」
千歌「先生。今日のテスト…、何か変だったよね?」
先生「…っ!」
曜「ん、千歌ちゃん?どうかしたの?」
千歌「曜ちゃんも、何か変だと思わなかった?」
曜「んー、変って何のこと?」
千歌「……テスト中、教室に試験監督の先生が、ずっと二人もいたでしょ。これって普通に考えて、おかしいよね?」
普通(というより今までは)、定期考査の際、教室には試験監督の先生は一人しかいなかった。
しかし、今日の試験では常に先生が二人駐在し、科目担当の先生が見回りに来た時には教室内に教師が三人もいる状態となっていた。 曜「あー確かにそうだね。私も何か変だなぁ、と思ってたんだ」
先生「…」
曜「先生、どうして教室に先生が二人もいたんですか?」
先生「………答えられない」
曜「答えられない…?それって、どういう意味…」
先生「ほら、明日もテストがあるんだから、早く帰りなさい」
千歌「あ、待って!まだ話は…」
曜「ちょ…、うわぁ!」
私たちは尻尾を摘まれた鼠のように、教室の外に投げ出された。
曜「痛っ…。もう、最悪!」
千歌「はぁ。ほんと、女の子の扱い方がわかってないなぁ…」
私たちはぷりぷりと怒りを露わに、しかし次の間にはコロッと気持ちを切り替え、湧き上がる疑問に整理をつけていく。
曜「ねえ。さっきの菊地の態度、明らかにおかしかったよね?あれは絶対、何かヤバイことを隠してるに違いないよ!」
千歌「ヤバイことって?」
曜「例えば…、不倫とか?」
千歌「あはは。曜ちゃんって偶に面白いこと言うよね〜」 千歌「……でも、曜ちゃんの言う通りかもしれないね。
試験監督が二人になったことや、それについて口を割らない菊地さん…。先生は一体、何を隠してるんだろう?」
曜「私も気になるけど…。どうせまともに取り合ってくれないだろうし、先生達が何を隠してるかなんて知る由もないよね…」
千歌「………いや、あるよ。理事長に直接訊きに行けばいいんだ!」
曜「理事長に?」
千歌「うん!理事長なら試験のことや、教師陣のことだって把握してるもん。先生が隠してる秘密だって解るはずだよ!」
曜「理事長って、鞠莉ちゃんのことだよね?今はテスト期間だし、もう家に帰ってるのかな?」
千歌「いや、たぶん鞠莉ちゃんは理事長室にいるはずだよ」
曜「分かるの?」
千歌「うん。間違いない!」
私たちは理事長室へと向かった。 理事長室の前に着くと、彼女はノックもなしにその扉を開け放った。
鞠莉「What!? ……って、千歌と曜じゃない。
部屋に入るときはノックを…、というより今は試験期間なんだから、学生は家に帰って勉強しないとダメじゃない」
千歌「鞠莉ちゃんも学生でしょ。ねえ、試験期間なのに鞠莉ちゃんはこんな所で何やってるの?」
鞠莉「……私は理事長として、やらなければならない仕事がマウンテンロックなのよ。で、千歌達は私に何か用?」
曜「えっと、実は、訊きたいことがあって来たんだ」
鞠莉「訊きたいこと?」
千歌「………今日のテスト中、何故か教室に先生が二人もいたんだ。勿論鞠莉ちゃんも、そのことは知ってるよね?」
鞠莉「ええ…。私がその先生達を配置したんだもの」
千歌「どうしてそんな処置をしたのか、教えてもらえますか?」
鞠莉「………」
鞠莉ちゃんの顔からいつもの朗らかな笑顔は消え、神妙な面持ちで私たちを見詰めた。
鞠莉「……いいわ。二人のことを信じて、特別に話してあげる。
ほら、そこのソファに掛けてちょうだい」
「他言無用よ?」と、彼女は付け加えた。 『こ] [の」[テ」 『ス』[ト] 「で]『カ」 [ン』[ニ] 『ン]「グ』『を] 『す][る』 [。』
鞠莉ちゃんから渡されたのは、得体の知れない怪文書だった。
それは、ルーズリーフに、新聞紙から切り抜いた文字を貼り付けたものだった。
曜「カンニングだって…!?何これ、まるで犯行予告みたいだ…」
鞠莉「先週の金曜日の放課後に、その『チーティング予告』は届いたわ。どうやら、この部屋の扉の下にある隙間から差し込まれたみたいなのよ」
私は扉の方に視線を送った。
扉と床の間には1センチ弱の空間が存在し、そこに厚さ1ミリ未満の紙を通すのが容易であることは見て取れた。
曜「あー…。あの隙間から、この紙を滑らせて室内に入れたんだね」
鞠莉「わざわざ犯行予告みたく文字を継ぎ接ぎした予告状を送ってくるなんて、犯人はとても洒落た人物ね。
それに、理事長である私に直接、チーティングを予告してくるなんて…。もう、最高にシャイニーじゃない!」
鞠莉ちゃんは皮肉めいた口調で吐き捨てた。
千歌「カンニング…。そっか、試験監督の先生が二人もいたのは、カンニングを防ぐためだったんだね!」
鞠莉「そうよ。まあどうせ悪戯だとは思うけれど、少しでも可能性がある限り徹底的に対処しなければならないの。
浦の星の理事長として、チーティングなんて絶対に起こさせないわ!」
千歌「ちなみに、警察には被害届は出したの?」
鞠莉「いいえ、今後も出す気はないわ。できればあまり大事にはせず、内密に処理したいもの」
私が「チーティングって何?」と訊くと、鞠莉ちゃんは「カンニングのことよ」と答えた。
どうやら、カンニングは英語でcheating(チーティング)と言うらしい。
チーティングの意味は…
カンニング、不正行為、いんちき、詐欺、自分の利益のために欺くこと、…etc。 曜「…」
鞠莉「何か考え込んでるみたいね、曜」
曜「思ったんだけどさ…。先生を二人に増やしても、100%カンニングを防ぐことはできないよね。
私はそういうことに詳しくないけど、先生達にも死角はあるし、たぶんカンニングをやろうと思えばできると思うんだ」
鞠莉「そうね…。私も、教師の見張りだけでチーティングを阻止できるとは思っていないわ」
千歌「ってことは、他にもまだ策を用意してあるの?」
鞠莉「Alright!! 先生を増やしたのはブラフ!本当のチーティング対策は、こっちよ!」
そう言って、鞠莉ちゃんは胸元からタブレットを取り出した。
千歌「これは…」
曜「教室の、映像…?あ、善子ちゃんだ」
鞠莉「Yes! 今映ってるのは、一年生クラスの試験中の録画映像よ。
全ての試験教室に監視カメラを設置して、試験中にチーティング行為をしている生徒がいないかチェックできるように録画してあるのよ!」
曜「嘘っ!?教室に監視カメラなんてあったっけ?」
千歌「全然気付かなかったよ…」
鞠莉「カメラは教室の八方から、定点で監視しているわ。
一つのカメラの死角は他のカメラでカバーし、一切の死角を許さない。
名付けて、『完全なる監視網〈パーフェクト・ウォッチング〉』よー!」
曜「な、なんだってー!?」
鞠莉「この監視網の中チーティングなんてしようものなら、バッチリと、その一部始終がカメラに収まることになるわ♪」 千歌「なるほど…。この監視網があれば、カンニングが行われてもすぐに対応できるから、犯人を現行犯逮捕できるんだね!」
鞠莉「Umm…。残念ながら、それはできないわ」
曜「えっ、どうして?」
鞠莉「この監視網は、死角もなく完璧よ?ただ…テスト中に、この監視映像を見張れる人間がいないのよ。
能力的にも、人数的にも、ね」
千歌「そっか。映像の監視に先生達を回したら、教室で監督する人がいなくなっちゃうんだね」
曜「そうなの?一人1クラス分のカメラ映像を監視すれば何とかなりそうな気もするけど」
鞠莉「人の集中力はそこまで高くないわ。一つのクラスを隈なく監視するためには、最低でも三人は欲しいところね」
千歌「でも、この学校の教師の数を鑑みると、それは不可能」
鞠莉「だから、中途半端にカメラ監視に人を回さず、全ての先生を教室に配置しているの。
カメラ映像は、後からじっくりと確認するわ」
曜「な、なるほど…」
鞠莉「それにブラフとはいえ、試験監督を増やすことはチーティング防止に繋がるはずよ。
もし本当にチーティングしようとする輩がいるのなら…、この対応は犯人に効果覿面であること間違いなしだわ!」
鞠莉ちゃんは鼻を高くし、誇らしげだった。 曜「そっかー。色々考えてるんだねー」
千歌「ねー」
鞠莉「……ただ、明日は見張り態勢が、今日よりも緩くなってしまうのよね…」
曜「へー、そうなの?」
千歌「もしかして、明日は非常勤の先生が学校に来ない…とか?」
鞠莉「That right…その通りよ。一応お願いしてはいるのだけれど、無給の仕事の為に学校まで来てくれる人はいないでしょうね」
曜「確か非常勤の先生って、常勤パンダの先生とは仕事とか給料形態が違ってくるんだよね?」
鞠莉「ええ、休み時間でも給料が発生する専任教師とは違い、非常勤講師は一コマ授業をすることでようやく給料が発生するの。
だから、自分の担当する授業がない日に学校に来たって給料は入らないし、わざわざ来てやる必要なんてどこにもないのよ」
千歌「……浦の星は元々、常勤講師の数が少ないからね。非常勤の先生がいない日は、1クラスに二人も試験監督を置く余裕がないんだね」
鞠莉「先月から一年担任の佐藤先生が産休に入ってるし、正直授業経営は教師の人数的にギリギリだったのよね…。
このチーティング予告をきっかけに、非常勤の先生方に頼りきりだった現状が浮き彫りになってしまったわ」
曜「………もしかして犯人は、浦の星の先生不足な現状を改めさせるために、こんな手の込んだ予告状を送ったのかな?」
鞠莉「余計なお世話よ。とにかく、私たちはチーティングが起きないよう、出来得る限りすべての手を打つだけよ」
鞠莉「……さあ、これで話はお終い。二人はもう帰りなさい。私は他の先生方と、録画映像の確認作業に入るから」
千歌「あ…、うん。じゃあね」
曜「また金曜日にね〜」
鞠莉「二人共、帰ったらしっかり勉強するのよ。赤点とって夏休みの練習に来れないなんて、笑い話にもならないんだからね?」
釘を刺され苦笑をもらしながら、私たちは理事長室を後にした。 【テスト二日目】
梨子「おはよう、曜ちゃん。いやぁ今日も内浦は暑いね」
曜「そうかな〜?東京と違ってヒートアイランドにならないし、潮風もあるから結構涼しい土地だと思うんだけどなぁ」
梨子「……それはつまり、私が暑さに対して耐性がない…ってこと?」
曜「平たく言えばね。まあそんな話は置いといて、今日のテストの心配をしようよ。梨子ちゃん、今日のテストの意気込みは?」
梨子「うーん、英語には自信あるから、不安な数IIでやらかさないよう気を付けないとね。
これで赤点なんて取ったら、夏休みは練習に参加できなくなっちゃうし…」
曜「へー。私は逆に、数学が得意で英語が苦手だなぁ。あの月の言語を理解できるなんて、梨子ちゃんはすごいね!」
梨子「それ、褒めてる…?」
曜「"褒める"の最上級だよ!」
梨子「そ、そうなの…。……でも、昨日みたいに先生が教室をうろうろしてたら、リスニングも集中できなくて点数落ちるかも…」
千歌「あ、おはよ〜梨子ちゃん」
梨子「千歌ちゃんおはよう。今日は遅かったね?」
千歌「ちょっとね。……曜ちゃん。やっぱり、非常勤の先生は来てないらしいよ」
曜「そっかー。じゃあ、今日は試験監督が減るんだね」
梨子「何の話…?」
千歌「こっちの話。それより、二人はさっきまで何話してたの?」
曜「今日のテスト頑張ろうねって話」 チャイムが鳴り、試験監督の先生達が教室に入って来た。
先生の数は、昨日と同様二人だった。
一人は教室後方に立ち、もう一人は教室前方、教卓の前に立った。
曜「今日も二人…」
「おい、チャイムは鳴り終わってるぞ、早く座れ。試験配るぞー」
千歌「……先生。暑いので、エアコンをつけてもらってもいいですか?」
「ん?ああ、分かった。窓側の人は窓を閉めてくれ」
エアコンの電源を入れた先生は、テスト用紙を手に、こちらを睨んでくる。
「今から問題用紙を配るが………くれぐれも、カンニングしようだなんて野暮な考えは起こさないようにな。
お前らの浅はかな行動で周りにどれだけの迷惑を掛けるのか、ちゃんと考えろよ」
先生は、問題用紙と解答用紙を配った。
試験開始まで、あと3分。
私は、裏返しになった用紙から透けて見える問題を先読みしようと、紙と睨めっこをしている。
数学は好きな教科だが、今回の期末テストは勉強不足であることを否めず、募った不安が私にこんな行動をさせている。
先生が怪訝な顔で私を睨んでいるような気がするが、たぶん夏の暑さが創り出した幻だろう。 試験開始まで、残り1分を切った。
教室内は試験時に漂う独特の緊張感に包まれ、生徒達のテストへ懸ける情熱が、熱気となって部屋中を満たしている。
………それにしても、今日は暑い。冷房をつけているにもかかわらず、煮立つような暑さが教室を支配している。
汗が頰を伝い、首筋を撫で、シャツに染み込んでいく。
眼前の風景が濁り出し、蜃気楼のように世界が歪んでいく。
「暑いな…。クーラーの温度、下げるか…」
先生がエアコンの操作パネルを覗き込んだのと、ほぼ同時。
千歌「………梨子ちゃんっ!!」
梨子ちゃんが、倒れた。 2年生の試験科目は、数学IIと英語IIだった。
今日の試験終了後。担任が梨子ちゃんの容体を報告しに、教室に上がって来た。
先生「桜内さんは、熱中症と思われる症状で倒れ保健室に運ばれましたが、すぐに回復し、意識もしっかりしているようです」
千歌「あぁ…。よかった…」
先生「それと、桜内さんから伝言を預かってます。
『恥ずかしいから、保健室にお見舞いに来ないでほしい』とのことです」
千歌「………」
曜「先生。一つ訊きたいんですけど、どうしてエアコンの設定が暖房に固定されてたんですか?」
先生「えー、それはですね…。空調の集中管理の設定が、冷房ではなく暖房に切り替わっていたことが原因…、だそうです」
曜「えー?こんな真夏に、誰が暖房なんかにしたんですか?」
先生「それは………なんとも言えません。
……あ、皆さんも熱中症にはくれぐれも気を付けてくださいね。では、また明日元気にお目に掛かりましょう」
先生の話が終わると、私たち二人は一目散に教室を出た。
向かった先は、保健室だ。 梨子「えっ、千歌ちゃんに曜ちゃん!来たの!?
菊地先生に、お見舞いに来ないでって伝言をお願いしてたのに…」
千歌「梨子ちゃん!本当に大丈夫なの!?起きてて平気?」
梨子「う、うん…。立つとまだフラフラするけど、座ってる分には問題ないみたい。心配してくれてありがとう」
千歌「そっか…。梨子ちゃん………ごめんね、私のせいで…」
曜「……もしかして千歌ちゃんは、エアコンをつけるよう言ったのは自分だからって、責任感じてるの…?」
梨子「違う!私が倒れたのは千歌ちゃんのせいなんかじゃない!
千歌ちゃんが言わなくても、あの暑さの中なら、結局は誰かがエアコンをつけるよう言ってたはずだよ!
千歌ちゃんは何も悪くないのよ…」
千歌「ごめん…、ごめんね………」
梨子「だから、千歌ちゃん…。これ以上、悲しい顔をしないで…?」
千歌「うぅ…、ぐすっ………」
曜「いやぁ、思ったより梨子ちゃんが元気そうでよかった。これなら明日には完全復帰できそうだね!」
梨子「うん。二人とも、私のために駆けつけてくれてありがとうね…。
今日のテストは受けられなかったけど…。でも、先生が再試をしてくれるって言ってたから、練習にもすぐに復帰できると思う!」
曜「もう。部活のことより自分の体のことを案じなよ〜」 曜「ねえ、一つ訊きたいんだけど。梨子ちゃん以外にも、熱中症で運ばれて来た人はいた?」
千歌「えっ…、どうして?」
曜「だってさ、集中管理が弄られてたなら、他のクラスも同じように灼熱地獄だったわけでしょ?
だったら、倒れたのは梨子ちゃんだけとはとても思えないよ」
梨子「ええ、そうなの。他のクラスで倒れちゃった生徒が何人か、保健室に運ばれて来ていたそうよ」
曜「その人達はもう帰った後、みたいだね。
ねえ、梨子ちゃんの他には誰が保健室にいたの?」
梨子「え…、どうしてそんなこと訊くの…?」
曜「ほら、他のメンバーは大丈夫だったかなー?と思ってさ。
特に善子ちゃんなんてインドアの申し子だもん。暑さには弱いはずだし、倒れたんじゃないかって心配してるんだ」
梨子「ごめん。カーテンで仕切られてたから、この部屋に誰が居たかまでは分からないの…」
梨子「あ、でもそういえば…。私が寝ている間に、ダイヤさんの声が聴こえたような…」
千歌「ダイヤさんも、熱中症で…?」
梨子「判らないけど…。みんな、心配だね。後でみんなにも、LINEで生存報告してもらいましょう」
「不謹慎だね」…なんて言って笑っていると、保健室に梨子ちゃんのお母さんが迎えに来た。
二言三言交わした後、梨子ちゃんはお母さんに凭れて帰っていった。 私たちは、理事長室に向かった。
Aqoursメンバーの安否が気になり、正直乗り気ではなかったが、だからこそ理事長の元へ向かうべきなのだと感じていた。
「もしかしたら…。……昨日のカンニング予告の件と、今日の暖房騒ぎの件…。この二つには何か、相関があるんじゃないかな…?」
彼女は、さながら幾千もの謎を解き明かしてきた名探偵のように、そう言った。
彼女がホームズならば、私はワトソンになるのだろうか?あ、ハーマイオニー・グレンジャーの演者の名前も確か、ワトソンだったよね。じゃあ、私はエマ・ワトソン…?
そんなバカみたいな妄想を空に浮かべた。私の『味噌の詰まってない脳』では、これ以上深く考えることはできなかった。
だが、一つだけ判ることがある。
もし彼女のいうように、二つの『事件』が繋がっているのであれば…。
暖房騒ぎを起こしたのが例のカンニング予告犯だとしたら、犯人が次に何をしでかすか見当もつかない。
今日のところは大きな被害は出なかったが、もしかしたら、明日には取り返しのつかない事態が起こるかもしれない。
私の道徳心は、それを良しとしなかった。
止めなきゃいけない。犯人を、止めなきゃ…!
………その為には、彼女の協力を煽る他なかった。
私たちは、ノックもせず、理事長室の扉を開け放った。 千歌「………でも、鞠莉ちゃんが無事でよかったよ」
鞠莉「Duh. 教室をサウナ状態にしてもらえて、最高にクールな気分だったわ」
曜「あ、あはは…」
鞠莉「……で、さっきの話に戻るけれど。
千歌達は、チーティング予告と暖房事件は同一犯によるもの、だと言いたいのね?」
千歌「ほら、誰かが熱中症で倒れてクラスがパニックになってる間なら、犯人はカンニングし放題でしょ?」
鞠莉「……確かに千歌の推理だと、うまくいけばチーティングもできるでしょうけど、あまりにも不確定要素が多過ぎるわ。
熱中症で倒れる前にエアコンが切られるかもしれないし、そもそもエアコンの設定が変わってることに気がついて点けない可能性だってあるわ」
千歌「そっかー。……ダメだね。やっぱり、私には推理は向いてないみたい」
曜「大丈夫!今のご時世、推理力よりも閃き力の方が需要あるよ!」
千歌「そうかなぁ?えへへ」
鞠莉「何の話をしてるのやら…」
曜「あ、そうだ鞠莉ちゃん。昨日のカメラの映像はどうだったの?
カンニングしてる人は見つかった?」
鞠莉「何人か先生を集めてカメラを確認したけれど、怪しい生徒は見つけられなかったわ」
曜「ほんとに?袖にスマホを忍ばせてテスト問題を知恵袋に流出してる人はいない?」
鞠莉「今はサマーで半袖だから、スマホを隠すスペースなんてないわ。
………だけど、そうね。もし犯人が教室で、何らかの手段で外部と繋がりチーティングをしていたとしたら、流石の私でもお手上げね…」
曜「でも、鞠莉ちゃん家の力なら電波ジャックとかして、誰が携帯を使ってるかすぐに調べられるでしょ?」
鞠莉「無理言わないで。私はドラえもんじゃないのよ」
曜「そうかな?脹よかなところとか、ドラえもんそっくり…」
鞠莉「Mmm!!」
理事長室は、黄色の閃光に包まれた。
曜「……あ、危なっ!あと少しで眼光に殺されるところだった…!」
身体のことをイジられたのが気に障ったのだろうか。
鞠莉ちゃんは鼻息を荒げ、血走った眼は殺意の熱を帯びている。
私は苦笑を浮かべながら、なんとか興奮している彼女を宥めた。 鞠莉「……チーティング犯が既に行動に移しているのだとしたら…。恐らく、暖房事件の犯人も、そいつなんでしょうね」
曜「え?さっきは違うって言ってなかった?」
鞠莉「違う…とも言い切れないのよ。
まず、暖房の件が故意によるものだとしたら、その犯人は間違いなくチーティング犯ね。
でも、生徒が職員室にある集中管理の操作盤を、先生達の目を掻い潜って弄るのは…、どう考えても不可能なのよ」
千歌「確か、事務室でもエアコンの設定を変えられるよね?犯人はそっちを狙ったんじゃ…」
鞠莉「事務室に居た事務員さんの話では、今日事務室に来た生徒は誰もいなかったそうよ。
だから集中管理を弄った犯人は、事務室ではなく職員室の方でエアコンの設定を変えたんだわ」
曜「?? 職員室も、生徒がこっそり入るのは不可能だったんでしょ?」
鞠莉「そう、不可能よ。でも可能性があるなら、それは職員室よ」
なぞなぞのような、とんちのような。
そんな鞠莉ちゃんの発言に、私たちは混乱させられた。
曜「職員室には、抜け穴があった、ってこと?」
千歌「犯人は、その抜け穴を使って、職員室に浸入した…?」
鞠莉「いいえ…。犯人は、入り口から堂々と入っていったはずだわ」
鞠莉ちゃんは溜めに溜め、それから言葉を紡いだ。
鞠莉「………私はね、この暖房事件の犯人は…、……常勤講師のうちの、誰かだと踏んでいるわ」 私は、鞠莉ちゃんから発せられた言葉に虚を衝かれた。
カンニング犯は生徒だ。…という固定概念に縛られていたため、そんな発想には到底至らなかったからだ。
しかし、先生が犯人…?先生がカンニングを…?
千歌「んー、先生がそんなことをして、何かメリットがあるのかな?」
鞠莉「あるわよ。充分なメリットがね…」
彼女は、親指だけ伸ばした手を、首を切るようにスライドさせた。
鞠莉「犯人の動機は…、恐らく、教師数の足りない浦の星の経営体制へのアンチテーゼ。
そして、理事長である私を追い込んで、理事の座を奪取する…。と、そんなところかしら?」
曜「なにそれ…。そんなの酷いよ!」
鞠莉「今のは私の憶測よ。他の動機だっていくらでも考えられるわ」
千歌「んー…、つまりさ。鞠莉ちゃんの推理では、常勤講師の誰かが犯人で…。
その人がカンニング予告を理事長室に送り、エアコンの集中管理を弄って暖房に変えて、嫌がらせをしたんだね?」
鞠莉「惜しいわね。集中管理を弄ったのは教師の誰か…。
だけど、予告状を出したのは、浦の星の生徒の、『誰か』よ…!」
曜「複数犯、だって…!?」
鞠莉「………折角だもの。今から私の、推理をお披露目するわ」
そう言って椅子から立ち上がり、理事長室を周り歩きながら、彼女の推理ショーは始まった。 鞠莉「この一連の事件…。チーティング予告と暖房事件の犯人は、同一犯であり、複数犯よ」
鞠莉「事件は、例の予告状から始まった…。この学校に通う学生の誰かが、理事長である私にチーティング予告をしたのよ」
鞠莉「それがただの悪戯だったのか、それともチーティングが起きないよう監視態勢を強めて欲しいという密書だったのか、それは判らない」
鞠莉「だけど…。その予告状を悪用しようと企む、大人がいた。それは、この学校の教師の誰かよ!」
鞠莉「教師は、予告状を出した生徒に心当たりがあった。もしかしたら、その教師にしか分からない暗号のようなものが、予告状にあったのかもしれないわね」
鞠莉「そして、教師は生徒に話を持ち掛けた。
『うひひ…!我の先生という立場を使って、主のチーティングを手助けしてやるさかい…!』と」
曜「キャラがブレッブレだよ」
鞠莉「……迎えたテスト初日。この日は非常勤講師も含め、教室の監視態勢が厳重だったから、犯人達は様子見したのね」
鞠莉「そして二日目、つまり今日。犯人達はついに動き出したわ…!」
鞠莉「まず、教師が職員室の集中管理の設定を弄り、冷房から暖房に切り替えた!」
鞠莉「その結果、犯人達の目論見通り、試験教室は灼熱に見舞われたわ。
次々に倒れていく生徒達。赤に染まる教室。響き渡る狂者の嘲笑…!」
曜「脚色しすぎ」
鞠莉「………熱中症で倒れる者が現れ、騒然とする教室。その中で、一人ほくそ笑んでいる生徒がいた…」
鞠莉「そう、その生徒こそが、チーティング予告を送った犯人!
その生徒は、暖房騒動が起きることを、生徒の中で唯一知っていた!そして訪れた絶好のチーティングチャンス!」
鞠莉「However, その生徒は共犯の教師から、教室に監視カメラがあることを聞かされていた。
どさくさに紛れてチーティングしたとしても、クラスの中で一人だけ別の行動をしていればすぐにバレてしまう」
鞠莉「だから犯人は、カメラにも映らない方法で、チーティングをしたのよ…!」
曜「その、カメラに映らない方法って…?」
鞠莉「………分からないわ」
曜「…」 ショーが終わると、鞠莉ちゃんは元の席に収まった。
鞠莉「どう、私の推理は?」
曜「筋は通ってる気がしなくもないけど、挙がってる証拠を強引に繋げただけ、というか…」
千歌「犯人と犯行方法の肝心なところが分からないとね…」
鞠莉「……まあ、私の推理なんてどうでもいいのよ。現段階で解っていることは、
犯人は、生徒一人と教師一人である、ということよ」
曜「集中管理の件は、先生以外にはできなかったんだよね。それで先生が犯人確定としても…。
生徒が関わっていたっていう証拠はないよね?予告状も、先生が作ったものかもしれないし」
鞠莉「そうよ、生徒側に犯人がいる証拠はないわ。だけど、生徒の中にも必ず、チーティングを企んでいる犯人がいるはずよ!」
鞠莉ちゃんは語調を強めて叫んだ。
やはりそこには、教育者として、並々ならぬ想いがあるのだろうか。
鞠莉「一応、今日の分の録画映像を確認して、チーティングしてそうな生徒を洗い出しておかないとね…」
曜「私たちのクラスの場合。梨子ちゃんが倒れたのはテスト開始前で、まだみんな試験用紙を裏返したままだったから、カンニングなんてできなかったよ」
千歌「裏返したテストを透かして見てる人はいたかもしれないけどね」
鞠莉「Umm…。そうね、チーティングしている生徒を、一目で見抜ける手があればいいんだけど…」
鞠莉ちゃんは溜め息をつき、項垂れた。
千歌「……それなら、テストを即日採点すればいいんじゃない?
それで、中間と比べて大きく点が伸びてる人がいたら、その人がカンニング犯ってことで!」
鞠莉「Oh,good idea! いいわね、それ!
………で、誰が即日採点なんて過酷な業務を受け持ってくれるのかしら?」
千歌「先生達なら根性で頑張って………いや、やっぱり難しいかな」
鞠莉「そうね。数年前にあった大阪府立高校の入試採点ミス問題と同じことが起きかねないわ」
曜「じゃあさ、模試みたいにテストをマークシートに変えればいいんじゃないかな?
それなら採点もコンピュータでスーッだし!」
鞠莉「Fuckin!! 今からテスト形式を変えたら、教師生徒保護者からクレームの嵐よ!特に教師への負担が大きくなるわ!
菊地先生なんて、2年生の全ての科学系列の授業を持ってるんだから、ジョークでもなく本当にkaroushiしちゃうわ」
曜「………あ、そっか。菊地は科学の先生だったね」
冷たい空気を感じたので、手で後頭部を摩り、戯けた調子で笑ってみせた。 鞠莉「チーティング予告は、もう悪戯では済まない…。
教師が絡み、期末試験を壊しかねない程の荒手に出てきたもの…。
なんとかして、チーティングの方法を看破しないと、理事の座が…」
千歌「あ、そういえばさ、今日もうちのクラスは試験監督の先生が二人いたよね。非常勤講師は来てないはずなのに」
曜「そうそう!私もおかしいと思ったんだよね。先生の数が少ないのに、どうして試験監督の数は削られなかったんだろう?って」
鞠莉「昨日も言ったけれど、試験監督が多ければ、それだけでチーティングの抑止力になってくれるのよ。
学内にいる教師を総動員してでも、監視の目は絶やしてはいけないわ」
千歌「………ちょっと待って。『教師を総動員』ってことは…。
つまり…試験中は、職員室には誰もいなかったってこと…?」
鞠莉「そうよ。教頭や校長だろうと関係なく、試験監督に回したわ。それだけ人が足りていないのよ」
曜「職員室が、無人だって…!?鞠莉ちゃん、大変だ…。事件が根底から覆されちゃったよ!!」
鞠莉「What!? どういうことか説明しなさい!」
曜「いい?今まで難攻不落と思われていた職員室が、無人になっていたとしたら…。
生徒でもバレずに職員室に入れて、エアコンの集中管理をイジイジできちゃうんだぁ!!」
鞠莉「でもそれなら、試験監督の先生の後にクラスに入った生徒が犯人だとすぐにバレるわよ」
曜「あ…。そ、それは…」
千歌「曜ちゃん。ここは私が助け舟を出すよ」
曜「千歌ちゃん!まさか、閃いちゃったの…!?」
千歌「うん!頭に豆電球が生えてきたよ!」
光り輝く頭とともに、再び推理ショーが幕を開けた。 千歌「試験中、職員室はもぬけの殻だった…。これって、結構重要な推理要素だと思うんだ」
千歌「誰でも職員室に入ることができたってことはさ、生徒も職員室に入れたってことなんだよ!」
千歌「生徒が、何のために無人の職員室に入るかといえば…。今までの流れからして、もう判るよね?」
鞠莉「……まさか!」
千歌「そうっ!無人の職員室内では、テスト問題が見放題…つまり、カンニングし放題だったんだよ!」
曜「なっ…!カンニングは教室じゃなく、職員室で起きてたの!?」
鞠莉「………ちょっと待ちなさい。職員室が無人だったのは、試験中よ?生徒が教室を出れば、すぐに連れ戻され…」
曜「いや、連れ戻されない!むしろ教室の外へ運ばれた人達がいたよ!」
鞠莉「暖房騒動で熱中症になり、保健室に運ばれた生徒達…!」
千歌「うん!犯人は暖房騒ぎを利用して教室を出て、みんなが試験を受けてる間に職員室でカンニングをしてたんだよ!」
曜「と、いうことは…」
千歌「犯人は、熱中症のフリをして、試験中に保健室にいた人の中の誰かだ!!」 鞠莉「暖房騒ぎは、教室を出る口実作りの為に起こしたということね…。でも、試験を捨ててまでカンニングするなんて…」
曜「あの、千歌ちゃん。倒れた人を保健室に運んだ人が犯人、ってことはないの?」
千歌「梨子ちゃんは試験監督の先生が運んでたでしょ?他に倒れたって人達もたぶん先生が運んでるから、その心配はないよ」
曜「そ、そっか…」
鞠莉「職員室の鍵は、共犯の教師が開けたままにしておけば問題なく突破できるわね…」
千歌「おお…。私が考えてなかった推理の穴も補完してくれる…。この推理、もしかしてビンゴかな!?」
鞠莉「テスト問題を盗むなら、教師がすれば済む話だけれど…。
確かに、保健室に運ばれた生徒のことは気になるわね。誰が保健室にいたのか、梨子から聞いてない?」
曜「ああ、それは梨子ちゃんに訊いたんだけど…」
梨子『ごめん。カーテンで仕切られてたから、この部屋に誰が居たかまでは分からないの…』
曜「……だってさ」
鞠莉「ああ、もう!なんで肝心なところがいつも空欄なのよ!」
曜「今日の数IIのテストみたいだね。証明問題で、ちょうど判らないところが空欄になってたせいで全然解けなかったよ〜」
千歌「曜ちゃんって数学得意じゃなかった?」
曜「証明は苦手なんだ。なんだろう、理屈っぽいのが性に合わないのかな?」 鞠莉「………とにかく、試験中に保健室に行ってた生徒のことは今日中に調べておくわ。
それと、職員室でテスト問題が盗まれたかどうかもね」
千歌「もし問題がカンニングされてたとしても、今から問題を作り直すのは難しいんだもんね…。大変だ」
鞠莉「明日、容疑者達を集めて取り調べをするわ。
だからもし、職員室でカンニングをされていたとしても、すぐに犯人を割り出して全教科0点と停学処分にするから心配しなくていいわ」
千歌「ひぃ…。何があってもカンニングだけはしないでおこう…」
曜「……あ、そうだ。そういえば梨子ちゃん、こんなことも言ってたっけ」
梨子『あ、でもそういえば…。私が寝ている間に、ダイヤさんの声が聴こえたような…』
鞠莉「ダイヤの声…?」
曜「ダイヤさんも熱中症で倒れちゃったのかな?あ、まさか…!ダイヤさんがカンニング犯…」
鞠莉「そんなわけないでしょ。病人として保健室にいるなら、大声なんて出さないわよ。
それに、ダイヤの声だけ聞こえたということは、ダイヤは誰か病人と話していたんでしょうね」
千歌「それって…」
曜「まさか…」
「ルビィちゃん!?」
示し合わせたわけでもなく、二人同時に同じ考えを浮かべていた。
曜「ルビィちゃんが、テストスティールの容疑者、だって…!?」
そんな疑念を残しながら、二日目は暮れた。 確かこの年にグルーポンおせちもあったっけ
もしそうだったらそこから1ヶ月2ヶ月程度のときに東北の地震があったんだよなあ Aqoursっ娘たちに窃盗犯なぞいないと信じて期待 犯人すぐわかったけど展開予想するなとか言われそうだから黙っとく 【テスト三日目】
曜「もう、三日目か…。早いもんだね」
千歌「いや、まだ三日目だよ。あと7教科も残ってるんだから、気持ちを引き締めていかないと…」
梨子「……おはよう」
曜「あ、梨子ちゃん!はうあーゆー?」
梨子「I'm fine,thank you」
千歌「梨子ちゃん…。ほんとに大丈夫…?」
梨子「うん。昨日念のために病院で診てもらったけれど、軽症だったみたい。
昨日は低血圧も併さって倒れちゃったけど、今日からはもう普通に過ごしてもいいんだって」
千歌「そう…?それならいいけど」
梨子「それより、ルビィちゃんが心配だな。熱中症のせいで、頭がすごく真っ赤に染まってたらしいし」
曜「それは元からだと思うけどなぁ」
千歌「………ねえ、梨子ちゃん。もしかして、鞠莉ちゃんから何か言われてない…?」
梨子「あ…うん。昨日鞠莉ちゃんから連絡が来て、試験後に理事長室へ来るように言われた…けど、どうして知ってるの…?」
千歌「……ごめん」
曜「私も、ごめんね」
梨子「えっ!どうして二人して謝るの!?」
私たちのせいで、梨子ちゃんやルビィちゃんがカンニング犯として疑われているだなんて、とてもじゃないが言えなかった。
予鈴が鳴り、先生達が教室に入って来た。
今日も試験監督は、二人だった。 三日目の今日。
2年生の試験科目は、日本史Bと数Bだった。
試験終了後。私たちは梨子ちゃんと一緒に、理事長室へと向かった。
梨子「でも、本当にいいの?付き添いなんて…。私のために二人の勉強時間が削られるのは忍びないよ」
千歌「いいのいいの!」
曜「どうせ帰っても勉強しないから!」
梨子「…」
私たち三人は、理事長室の前に着いた。
梨子ちゃんは扉を2回ノックし、中からの返事を待って、その扉を開けた。
部屋の中には既に、鞠莉ちゃんが召集した生徒達が集まっていた。
梨子ちゃんを合わせ、全部で四人。そこには、ルビィちゃんの姿もあった。
いつもの特等席に鎮座している鞠莉ちゃんは、私たちの姿を見て少し驚いた表情を見せたが、すぐに無機質な顔に戻った。 鞠莉「……これで全員揃ったわね。では早速、オハナシを始めましょう」
「あ、あの。私、今日この後すぐ、病院に来るよう、言われてて…。だから、早く終わらせて欲しい、というか…」
鞠莉「分かった、じゃあまずはあなたから話を聴くことにするわ。隣の部屋に来て?時間は取らせないわ」
「え…、あ、はい」
恐らく一年生であろう可憐な少女は、鞠莉ちゃん…いや、理事長に連れられ、理事長の奥にあるドアの先に消えていった。
隣の部屋で、どんなオハナシが行われるのか。それは想像に難い。
ただ、彼女のことだから、暴力をちらつかせるようなことはしないだろうと、私はそう信じている。
曜「ルビィちゃん。おはよう」
ルビィ「あ…、おはよう」
梨子「体調はどう?特に変化はない?」
ルビィ「うん…。昨日お医者さんに診察を受けたんだけど、ルビィは熱中症じゃなくて、なんとか性ほにゃほにゃショックらしくて、普段の生活には特に問題はないらしいんだ。あ、でも、しばら
くは運動を控えるよう言われてるから、夏休みになっても練習に参加できるかわからないなあ。あ、でもどちらにせよ再試験があるから、練習に参加できるのはみんなよりも後になっちゃうね」
千歌「……元気そうでよかった」
梨子「私とルビィちゃん以外のメンバーは、みんな何事もなかったみたいね」
曜「まさかあの善子ちゃんが無事とは思わなかったよ。
いつも炎上してるから、慣れてたのかな」
ドアが開き、理事長が顔を覗かせた。
次は3年生の人を隣の部屋へと誘い、またドアは閉じられた。
言葉通り、オハナシにはそんなに時間が掛からないようだ。 理事長室には、梨子ちゃんとルビィちゃんを含めた四人が来賓用のソファに座っている。
梨子「ルビィちゃん。昨日の教科は何だったの?」
ルビィ「えっと…、算数と理科だったよ」
梨子「そっか。私たちは再試験組だから、来週までテストは終わらないけど…、一緒に頑張ろうね」
ルビィ「うん!」
曜「数学だったら私に任せてね!この曜ちゃんが必ず90点を取らせてあげるよ!」
千歌「私は理科…じゃなくて科学なら教えられるよ。ルビィちゃん、勉強頑張ろう!」
ルビィ「わぁ!ありがとう、みんな!」
梨子「………でも、再試験の時も試験監督の先生がたくさんいるのかな…?
テスト中に近くをうろうろされたら、集中が途切れちゃうからやめて欲しいんだけど…」
ルビィ「…? 梨子ちゃんのクラスは、先生が何人も居るの?」
梨子「そうだけど…。1年は違うの?」
ルビィ「うん。一日目は二人もいたけど、それ以外はずっと一人しか先生は居ないよ」
曜「えっ!なんだって!?」
ルビィ「っ!?な、何…?」
曜「あ…。ご、ごめん。びっくりさせちゃったね」
ルビィ「うゅ…」
2,3分程して、再びドアが開いた。
今度は、ルビィちゃんが隣に吸い込まれていった。
オハナシが終わった生徒は、どうやら隣の部屋からそのまま帰されるようで、理事長室には私たち三人だけが残っている。 梨子「ねえ…。鞠莉ちゃんは隣の部屋で、何してるのかな…?」
千歌「それは…」
梨子「ここに呼び出された人達って、昨日保健室に運ばれた人達だよね?
私たちの調子を確認したいならいつでも聞く機会はあったのに、どうしてわざわざ理事長室に集めたりしたんだろう…?」
曜「…」
梨子「もしかして、保健室にいた人達が、何かの事件の容疑者にされてるんじゃ…」
梨子ちゃんの勘は鋭く、私たちは応答に困った。
早く理事長が来てくれないかと願ったが、ルビィちゃんとのオハナシは、前の二人よりも長く続いた。
梨子「ルビィちゃん、遅いね…。大丈夫かな…?」
千歌「大丈夫だよ。たぶんルビィちゃんがいつもの長話をして、鞠莉ちゃんを困惑させてるだけだから」
梨子「でも…」
曜「じゃあさ!待ってる間に手遊びでもしようよ!」
千歌「そうだね!何する?」
曜「いっせーのせ、しよう!」
それから20分が経ち、ようやく鞠莉ちゃんが戻って来た。
梨子「いっせーのせ、1!」
千歌「いっせーのせ、5!」
曜「いやぁ、続くね〜」
鞠莉「……梨子。あなたで最後よ」
梨子「あ、ちょっと待って。すぐに終わるから………いっせーのせ、2!」
千歌「ぐわぁ!?」
梨子ちゃんと鞠莉ちゃんは、隣の部屋へと移動していった。 理事長室は、二人だけになった。
千歌「………曜ちゃんはさ、犯人は誰 だと思う?」
曜「え…?どうしたの、いきなり…」
千歌「まだ、曜ちゃんの推理を聞いてなかったからさ、この事件のことをどう考えてるのかな?って思って」
曜「………私には推理なんてできないよ。ロジカルな思考が苦手なんだ。
推理小説とか読んでても、犯人は探偵が暴くまで分からないし、トリックだって微塵も推理できないもん。
読後の感想は『すごい!』か『やばい!』だし、思考停止で単細胞なんだから、難しいことなんて考えたくないんだよ」
千歌「そう…」
曜「……でもね、これだけは判るよ。
梨子ちゃんもルビィちゃんも…、さっきまでこの部屋にいた人達はみんな、シロだ。犯人なんかじゃない」
千歌「うん。私もそう思うよ」
2分程して、またドアが開かれた。
梨子「二人共。終わったよ」
曜「梨子ちゃん!大丈夫だった?鞠莉ちゃんに胸ぐら掴まれてメリケンサック押し付けられなかった?」
梨子「うん、大丈夫だったよ」
曜「そっかー。よかったー」
鞠莉「曜の私へのイメージはどうなってるのかしら…。一度頭の中を掻っ捌いてあげないとね」 梨子「千歌ちゃん、曜ちゃん。待っててくれてありがとう。用も済んだから帰ろう?」
千歌「あ…、ごめん梨子ちゃん」
曜「私たち、鞠莉ちゃんに用事があるんだ。だから先に帰ってて?」
梨子「……うん、分かった」
梨子ちゃんは部屋の扉に手を掛け、振り向くことなく尋ねた。
梨子「最近、千歌ちゃんと曜ちゃん、ずっと二人でいるよね。二人にしか分からない話ばかりしてるし…。私は、省かれてるの…?」
曜「いやいや、そんなことないって!偶然というか、なんというか…」
梨子「……じゃあ、私に隠してることはないのね?」
曜「そ、それは…」
千歌「梨子ちゃん。ごめん、今はまだ言えないんだ。でも、全て終わったら、今ある隠し事も全部打ち明けるよ。
だから…、その時まで待ってて」
梨子「その時って、いつ…?」
千歌「今週だよ。あと二日。そしたら全部、終わるから」
梨子「……分かった。じゃあ、私は先に帰っておくね」
曜「あ、梨子ちゃん!また明日〜!」
梨子ちゃんは微笑みを残し、その扉の奥へと消えていった。 私たちはソファに腰を下ろし、鞠莉ちゃんは理事長専用の椅子に落ち着いた。
私たちの、いつもの座席だ。
千歌「取り調べはどうだったの?何か分かった?」
鞠莉「いいえ、全く。保健室メンバーは全員、本当に病人だったわ。
それに、保護者が迎えに来るまでは全員保健室からは一歩も出ていないという証言も取れたわ」
曜「つまり…」
鞠莉「あの四人が事件に関わっている証拠は出なかった…。あの子たちはシロよ」
曜「やったー!これで一安心だね!」
鞠莉「犯人はこの中にいると思ってたんだけれど…。そう上手くはいかないわね」
千歌「結局、職員室に入った生徒はいなかったってこと?」
鞠莉「いたかもしれないし、いなかったかもしれない…。
証拠がないからなんとも言えないけど、職員室は鍵が開いていて、誰でも入れる状態だったそうよ」
千歌「え、ほんとに…?」
鞠莉「1限と2限の中休みに、先生がいない時間があったみたいで、その時なら入り放題だったと思うわ。
ただ、職員室には監視カメラも置いてなかったし、先生曰く、テスト用紙も盗まれてないそうなのよ」
曜「当然だよ!犯人の目的は、紙じゃなくて情報を盗むことなんだからさ」
鞠莉「情報って、パソコンに入ってるデータのこと?流石にそこまでのことをする時間はなかったはずよ」
曜「違うよ。きっと犯人は、テスト用紙に書かれた問題の情報を、写真に撮って盗んだんだ!」
鞠莉「……なるほどね。合理的だわ」 鞠莉「もし、テストの情報が盗まれていたとしたら…。不用心にテスト問題を机の上に置いてた、菊地先生の担当科目でしょうね」
曜「菊地か…。あいつのテスト、出題形式がイヤらしいもんね、カンニングしたくなる気持ちは判るよ」
千歌「菊地先生のテストってことは、明日の化学と明後日の物理だね」
鞠莉「あら、よく知ってるわね」
千歌「……両方とも私たちが受けるテストだもん」
鞠莉「それにしても、困ったものね。他の先生方はテスト問題をちゃんと鍵付きの引き出しに入れているというのに、菊地先生は適当に置いていたそうだし。
テスト作りやプライベートのことで多忙だったみたいだけど、その辺のことはしっかりしてもらいたいものね」
曜「………あ、科学で思い出したんだけど、千歌ちゃんって科学系のテストだけやたらと高得点取ってるよね。
昔は全然そんなイメージなかったのに…。いつからあんな点数を取るようになったんだっけ?」
千歌「たぶん、高校に上がってからだよ。自分の得意教科を持っておきたかったんだ」
鞠莉「まさか、カンニング犯は千歌…?」
千歌「…」
曜「いやいや、むしろカンニングした方が点数落ちちゃうよ!」
愛想笑いで誤魔化したが、険悪な空気を換気することはできなかった。 千歌「………鞠莉ちゃん。私たちに何か、隠し事してない?」
鞠莉「What? 何のことカシラ?皆目見当もつかないデースネー」
曜「急にカタコトになったよ!?ちょー怪しい!」
千歌「さっき、ルビィちゃんが言ってたんだ。ルビィちゃんのクラスの試験監督は、初日以降一人しかいなかったって」
曜「私たちのクラスは今日までずっと二人掛かりなのに、どうして1年クラスは一人に戻ってるの!?」
鞠莉「………」
鞠莉ちゃんは大きく息を吐き、革の分厚い理事長椅子から立ち上がった。
そして、来賓用のソファ………私たちと相対する位置に腰を下ろした。
鞠莉「もうバレちゃったみたいだからはっきり言うわね。
私は最初から、あなた達二人のことを、信用なんてしてなかったの」
平然と言い退けた。
彼女は、何の気もなく言い放った。
ショックだった。
生徒の中にカンニングを企む者がいるのに、その生徒の内の二人は信頼しろ、だなんて出来過ぎた話だが、
それでも鞠莉ちゃんは信じてくれたし、私も鞠莉ちゃんを信じていた。
そう思ってた。でも違った。
鞠莉「悪く思わないでね。私にはどうしても、二人を信用できない理由があるのよ」 鞠莉ちゃんは、理事長として、再び向き直った。
鞠莉「じゃあまずは、どうして他のクラスは試験監督の数を減らしたのかを説明するわね。
生徒から苦情があったのよ。『先生が教室をうろうろしててテストに集中できない!』とね」
曜「梨子ちゃんも、同じようなこと言ってた…」
鞠莉「今のが、試験監督を減らした理由。余った教師はカメラ映像の監視に回したわ。
そして次は、二年生のクラスだけ試験監督を減らさなかった理由の説明ね。
これは簡単。私が二年生の中に犯人がいると疑っているからよ」
曜「ど、どうして!2年以外じゃダメなんですか!?」
鞠莉「……実はね、2年の生徒が事件に関わっているという、信頼できる証言があるのよ」
千歌「どうしてそのことを、今まで私たちに教えてくれなかったの?」
鞠莉「二人が、その『2年生』だからよ。
私が二人を信用できなかったのは、この証言があったからなの」
曜「その、証言って…?」
鞠莉「………ここまで来たら、もう教えた方がいいわね」
理事長は、大きく息を吸い込んで、言葉を続けた。 鞠莉「先週の金曜日の放課後。この理事長室に、全ての発端となった、チーティング予告状が投げ入れられたわ」
鞠莉「私はその時、ちょうど部室でやっていたAqoursの勉強会に顔を出していたの」
鞠莉「それから私が理事長室に戻り予告状を見つけたのが、午後6:00。
つまり予告状が入れられたのは、6時以前ということになるわ」
鞠莉「……予告状を受けた私は、残っていた先生方に、6時以前に怪しい生徒を見なかったか、証言を集めた」
鞠莉「そして、二つの証言が出てきた」
鞠莉「証言1。午後5:40頃に、二年生の教室の照明がついていた。
テスト前で、部活等で教室を使用していたわけではないとの裏付けも取ってあるわ」
鞠莉「私はこの証言にあった2年の教室に、2年の担任を持つ先生と足を運んでみたわ」
鞠莉「私たちが向かった時には既に電気は消えていたわ。
だけど、そこで決定的な証拠品を見つけることができた」
鞠莉「それは、教室のゴミ箱に捨てられていた、文字が切り抜かれた新聞紙よ!」
鞠莉「調べてみたけど、予告状に貼られていた切り抜きと、新聞紙に空いた穴は、ぴったりと一致したわ」
曜「ま、待って!それだけで2年生が犯人だなんて決めつけるの!?
他の学年の人が捜査を混乱させるために、わざと2年の教室に証拠を捨てていったのかも!」
鞠莉「……証言はもう一つあるのよ。
2年生が犯人だという、決定的な証言がね!」 鞠莉「証言2。午後5:50分頃、理事長室の前に、一人の生徒が居たそうよ」
鞠莉「その生徒は床に這いつくばり、理事長室の扉の下から、中を覗き込むようにしていたとか」
鞠莉「その不審な様子を見た先生が声を掛けたところ、慌てて逃げ出したそうよ」
鞠莉「顔ははっきりと見えなかったそうだけど、胸元の赤いスカーフは、夕陽に映えてよく見えたらしいわ」
鞠莉「……ほら、二人が着けている、そのスカーフと同じ色よ。2年生が着ける、赤のスカーフ…!」
曜「っ…!」
鞠莉「判ったかしら?私が千歌と曜を信じていなかったのは、この証言があつたから…。
犯人が、2年生だからよ!」
曜「………」
千歌「鞠莉ちゃん。訊いていい?」
鞠莉「いいわよ」
千歌「私たちは、犯人だと思う?」
鞠莉「ええ、まだ容疑者よ」
鞠莉「………犯人が見つかるまではね」
曜「え…?それって…」
鞠莉「私は、二人を信用はしていなかったけど、犯人だと疑った時は一瞬たりともなかったわ」
千歌「鞠莉ちゃん…」 鞠莉「それに、今は二人のことも、信用できると判断したわ」
曜「……どうして?」
鞠莉「千歌と曜は、この事件のことを梨子に秘密にしてくれているんでしょ?
他言せずに、前向きに捜査を手伝ってくれるのだもの。これ以上疑ったって仕方ないじゃない?」
曜「………」
鞠莉「チーティングの本番は、明日から始まる…。
化学と物理のテスト。ここで、チーティングが起きるわ!」
鞠莉「だけどそれまでに、必ず犯人を捕まえてみせる!理事長の名にかけて!」
今日の捜査会議は、これでお開きとなった。
帰る道すがら、私は隣を歩く彼女の横顔を見つめた。
鞠莉ちゃんは頑張ってるみたいだけど、犯人を捕まえることはできないだろうね。
だって、犯人は、私の隣にいるんだから。
鞠莉ちゃんは私たちを、信じてしまったのだから。
私の計画に、気が付かなかったのだから。 【テスト四日目】
この日、カンニングは起きなかった。
そういえば、化学のテストで見回りに来ていた菊地が、やけにそわそわしていた気がする。
テスト後。菊地が疾風のように飛んで帰ったと、誰かから又聞きした。 【テスト最終日】
この日も、カンニングは起きなかった。
何も動きがないまま、テストは終了した。
ただ、少し気になることがあった。
それは、千歌ちゃんがずっと、曇り空だったことだ。 【終業式】
結局、この期末試験ではカンニングは見つからなかった。
あれだけ頑張って来た推理や捜査は、泡沫に消えた。
鞠莉ちゃんは、今回のカンニング予告は悪戯ということにして、事件は不完全燃焼のまま、収まるところに収まった。
夏休み前最後のホームルームは、担任が育休に入ったので、代理の先生が進めていた。 曜「………まだ、終わってない」
千歌「え…?」
曜「答え合わせ…、しよ?」
放課後の教室。
私と千歌ちゃんは、窓側の席に座り、夕陽を眺めた。
千歌「………犯人は、カンニング、失敗しちゃったんだ」
曜「……そっか」
時は流れていく。
曜「………あの紙を理事長室に投げ入れた犯人って、……千歌ちゃん、だよね?」
千歌「……やっぱり気付いてたんだね。流石、曜ちゃんだ」
曜「名探偵に褒めてもらえて、嬉しいよ」
千歌「………ねえ。私って、そんなに魅力ないかな?」
曜「ううん。千歌ちゃんは可愛いよ」
千歌「お世辞でも嬉しいよ。ありがと」 陽が傾き、教室に闇が差す。
千歌「………いつから、私が犯人だって、気付いてたの?」
曜「ずっと、前だよ」
だって、見たんだもん。見てしまったんだもん。
千歌ちゃんが、この教室で、何かを作っているのを。
それを理事長室に、投函しているのを。
陽が落ちる前に、私たちは帰路についた。
夏はまだまだ、これからだ。 千歌は勉強会にいたのにどうやって理事長室に行けたんだ? うーん、色々投げっぱなしかな
だいたいグルだったという教師の話も置き去りだし
まあ、今度は最後まで熟考させるの書いてちょ
乙ソロー! 千歌、常勤講師の誰かと協力して、職員室に先生がいなかった時間帯にその常勤講師に菊地先生のテスト用紙を写メってもらう
曜、前日に菊地先生に不倫の件?をダシにダミーのテスト用紙を机の上に置いておくように指示
千歌、テスト当日に回答がダミーだったことに気付く
曜、菊地先生の不倫を密告
って感じかな
いまいち分からぬ もしくはぶっとんでるけど
千歌と菊地先生が不倫関係で科学のテストをずっとサポート、犯行予告は現経営体制に不満があった菊地先生の提案
曜が菊地先生を脅して?ダミーを用意させる
って感じか?
答えが欲しい・・・ うーん、ここは>>57ぐらいまで一旦戻って真・解明編を書くべきかな?
腕に覚えがあればお願いしたい なんか、なんだろうこの文章の違和感
読みにくいわけじゃないんだけど 千歌はカンニングのために、曜は誰にも知られずに千歌のカンニングを未然に防ぐために奔走したのかな
解答編待ってます >>73
キャラが言わなそうな固い言葉とか皮肉が度々あるからかなーと思った 何か元ネタがあるの?京大カンニング事件は全く関係無さそうだけど 千歌は担任の菊地と不倫関係にある
千歌の科学の成績は菊地による個人指導の賜物
故に千歌の目的はカンニングではなくカンニング騒動を起こすこと
動機は「奥さんよりももっと自分を見て欲しい」
だが実際には菊地は千歌よりも奥さん(1年生担任の佐藤)が出産の為に入院中である病院にすっ飛んで行ってしまう
そのまま育休に入り自分の元へと菊地が帰ってこない事を悟った千歌は曜へ呟くのであった
「………ねえ。私って、そんなに魅力ないかな?」
って感じかな?
わからない点は
勉強会にいたはずの鞠莉が予告状が放り込まれた時間に抜け出していた千歌に気付かないはずがない
曜の計画とは?
くらいかな
おまけにタイトルを邪推すると
千歌「アイス好き?」→千歌「I ススキ ?」
ススキの花言葉は「心が通じる」
つまり
千歌「わたしの心は届きますか?」
じゃないかな? ラブライブ要素無いってことはわかった
せめてもう少し寄せる努力をすればいいのに
頑張ってお話考えたのはわかったがその時点では登場人物はオリキャラでしかない オリキャラでやると誰も読んでくれないからね、仕方ないね 5時40分に教室にいたのと5時50分に理事長室の下を覗き込んでいたのが曜なら辻褄が合う
実際、千歌が犯行予告を作成して、理事長室に投函したのはそれより少し前で、その姿を不審に思った曜が教室の電気を点けて、部屋を確認、その後理事長室を覗き込む
千歌が5時50分までに勉強会に戻ってたとしたら、マリーが千歌を怪しむこともないと思われる ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています