にこ「私を変える、穂乃果の声」 [無断転載禁止]©2ch.net
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……その夏は暑かった。
タッタッタッタッタ…
穂乃果「…にこちゃ〜〜〜ん」
にこ「遅いっ!!」
――私とにこちゃんがつきあい始めてから、初めての夏休みが訪れた。 穂乃果「ご、ごめん…ちゃんと起きようとしたんだけど雪穂がぁ…」ハァハァ
にこ「言い訳無用!」
穂乃果「だってぇ〜!!」
私がにこちゃんに告白したのは、高校三年生に進級してからの二ヶ月後。
しとしとと降る雨の日のことだった。 私はにこちゃんのことが好き。
μ's時代から…あるいは、その前から。
アイドルに真摯に向けるその想いに、私は憧れ、尊敬の念を抱いていた。
そんな想いをずっと胸に秘めたまま、にこちゃんは音ノ木坂を卒業。
告白できないまま、できずに終わってしまった自分の恋を嘆いていたのだけれど…。
希ちゃんという恋のキューピットが、私たちを再び引き合わせてくれた。 穂乃果「時間は…?」
にこ「まだ大丈夫よ。余裕あるから」
穂乃果「へ?」
にこ「…こんなこともあろうかと、最初から遅めの上映時間のを予約してたの」
穂乃果「さ、さすがにこちゃん…!」
にこ「ふふん」
穂乃果「あ、あれ?でも喜んで良いのかなぁ…」
にこ「…ほら、これ飲みなさい」
穂乃果「わぁ、ありがとぉ〜♪」
にこ「こんな暑い日に猛ダッシュして、熱中症になっても知らないわよ」
穂乃果「大丈夫だよぉ〜」ゴクゴク
にこ「あんたの大丈夫は信用ならないのよ…」
穂乃果「ええー…」ゴクゴク にこ「…落ち着いたかしら?」
穂乃果「…ふぅー。うん!」
にこ「そ。…さ、行くわよ」ギュ
穂乃果「ん…」ドキ
にこちゃんに掴まれ、私の手の平は徐々に熱を帯びていく。
にこ「…」
やっぱりにこちゃんはカッコイイ。
言葉はつっけんどんでも、優しさが端々に滲み出る。
にこちゃんは、いつでもどんな時でも、私のことを引っ張っていってくれる憧れの先輩。
そして、大好きな私の恋人。 穂乃果「…///」トコトコ
にこ「…」スタスタ
にこちゃんはいつも厳しい顔をして、中々笑顔を見せてはくれない。
みんなといる時はバカやったりして、楽しそうな表情を沢山見せてくれていたけれど…。
こうやって二人きりの時は、必要以上に笑うことはしない。
何故なんだろう…?
私と一緒に居ても、楽しくないのかな…?
にこ「…?」クル
穂乃果「っ///」ビクッ
にこ「…ちょっと早かった?」
穂乃果「あ、う…そ、そんなことは、ないけど…///」
にこ「そう?」 それでもにこちゃんは、私のことを第一に気遣ってくれたりする。
少しでも不安なことがあれば、声をかけてくれる。
…心配する必要は無い、のかなぁ。
私はまだまだ、にこちゃんのことをよく知らない。
μ'sとして一緒にやってきたけれど、μ'sとしてのにこちゃんはまた別のにこちゃんだ。
こうやって一人の女性として見るにこちゃんは、まるで別人。
でもやっぱり。
私はにこちゃんのことがもっと知りたい。
このカッコ良くて、優しい、私の大好きな先輩のことを…。
*
……その夏は暑かった。
タッタッタッタッタ…
穂乃果「…にこちゃ〜〜〜ん」
にこ「遅いっ!!」
私と穂乃果がつきあい始めてから、初めての夏休みが訪れた。
穂乃果「雪穂ったら酷いんだよっ!絶対今日は遅刻しちゃダメだから、ちゃんと起こしてって言ったのにっ!」
にこ「起きないアンタが悪いんでしょ」
穂乃果「うぐっ、それはそうだけど…でもぉ!」
にこ「大体、高校三年にもなって妹に起こして貰うってどうなのよ…」
穂乃果「だって起きれないんだもん…」
穂乃果に告白されたのは、私が専門学校へ入学してから二ヶ月後。
しとしとと降る雨の日のことだった。
――にこちゃんのことが大好きですっ!!
突然の穂乃果の告白に、私は酷く同様した。
…何故?
それはそうだろう。
お互い、同じ女性同士なのだ。
急になんの脈絡もなく告白されたら、誰だって驚くものだ。
私の一体どこが好きだったのか…?
穂乃果は私の、アイドルへのひたむきな情熱が〜等と、普段使い馴れない言葉を交えながら私の好きなところを熱く語ってくれたが…。
ピンと来ていないのが正直なところだ。
確かに私のアイドルになりたいという欲求は、未だ抑え続けられることが無い故に、私は専門の道を選んだ。
だからといって、それが私の魅力になるかどうかと問われると、首を捻らざる終えない。
ならば何故、穂乃果の告白に返事をしたのか?
…単純な話だ。
私も穂乃果のことが好きだからだ――。
穂乃果「今日はどんな映画見るの?」ワクワク
にこ「このアクション映画よ」
穂乃果「あれ?にこちゃんにしては珍しーね」
にこ「そーう?でもあんた好きでしょ」
穂乃果「あ…うん、まぁ恋愛物なんかよりは…」アハハ
にこ「開始10分で寝ちゃうからね」
穂乃果「そ、それはぁ…」
にこ「だからこういう激しそうな方がいいでしょ」
穂乃果「う、うん…///」
にこ「それに、このヒロイン役の芝居も気になってたのよねー。アイドルといえど、こういうところも学んでおかなきゃね」
穂乃果「…///」 穂乃果は可愛い。
私がどんな強引とも取れるような行動をしても、ちょこちょこと小動物のように後をついて来る。
無理難題を投げ掛けても、呻き声を上げながら食い付いてくる。
私のどんな些細な変化にも、一喜一憂してくれる。
…そんな穂乃果が、たまらなく愛おしい。
にこ「…」クル
穂乃果「っ///」
にこ「…」
穂乃果「…♪」エヘヘ
――何故穂乃果は、私のことが好きなんだろう。
私には穂乃果のようなカリスマ性は無い。
μ'sを結成し、みんなを束ねて目的を成就させることができるような力は無い。
その点に置いて、私は一度挫折し、逃げている。
…そんなしっぽを巻いて逃げ出した私の手を掴み、引っ張り上げ。
そして同じステージ上に立たせてくれて、私に輝きを持たせてくれた穂乃果に、感謝し、尊敬していた。
そう、私には穂乃果の告白を断る理由もない。
私の、憧れの形なのだから。
だからこそ、私は穂乃果にコンプレックスを抱いてしまうのだ。
*
希「お、穂乃果ちゃん」
穂乃果「あ、希ちゃん〜!」フリフリ
穂乃果「今日も巫女さんのバイト?」
希「そうやよー♪ 毎日働かな、ご飯食べられへんからなー」
穂乃果「えぇ!? 希ちゃん、そんなにお金に困ってるの…?」アセアセ
穂乃果「いつでも穂乃果の家、来て良いよ…?」
希「あははっ、冗談やよー♪」
希「さすがに仕送りしてもらってるから、ご飯に困ることはないかなー」
穂乃果「も、もう、希ちゃーん! 本気で心配しちゃったじゃんー!」
希「ごめんごめん♪」
穂乃果「ふーんっ!」 希「そんな怒らんといてよー。それより、今日はどしたん?」
穂乃果「あ、そうだった…お参りしに来たんだよっ!」
希「お参り?」
穂乃果「うんっ! えへへ…」
希「…ははーん、さてはにこっちやろー?」
穂乃果「な、なんで分かるのっ!?///」
希「ふふ…穂乃果ちゃんは純情やな―♪ そんな恋する乙女の顔してたら、えりちやって分かると思うでー?」
穂乃果「そ、そうかな…って、なんで絵里ちゃんが出てくるの…?」
希「気にせんでええよー♪」
パンパン!
穂乃果「…にこちゃんと、もっと仲良くなれますよーにっ!」
希「…」
穂乃果「…」ムムム
希「…」クス
希「…にこっちはこんなに穂乃果ちゃんに想ってもらえて、幸せやね」
穂乃果「そう…だといいな…///」
希「幸せに決まっとるよー」
希「…特ににこっちは、幸せに慣れてないから――」
穂乃果「え…?」
希「…んーん、なんでもない」
穂乃果「?」
希「それより穂乃果ちゃん、にこっちとデートの約束あるん?」
穂乃果「え、あ、あるけど…///」
希「ウチも連れてってー♪」
穂乃果「なんで希ちゃんを!? ダメだよーっ!」
希「ええやんー! ウチも混ぜてーっ♪」
穂乃果「だめだめだめだめーっ!」
*
希「あ、にこっちやん」
にこ「ん…希」
にこ「今日も巫女のバイト?」
希「そうなんよー。毎日働かな−、お家賃払えんからなぁ」
にこ「何言ってんのよ。あんた仕送りしてもらってるでしょ」
希「てへ、バレちゃった♪」
にこ(可愛い)
希「あ、今可愛いって思ってくれたやろー?」
にこ「はぁ!?///」 希「もー、嫌やわー、にこっちったらー♪」
にこ「だ、誰もそんなこと思ってないわよ!」
希「またまたー♪ でもそーいうんは、穂乃果ちゃんに言ってあげてなー」
にこ「…なんでそこで穂乃果が出てくるのよ///」
希「えー? だってにこっち達付き合ってるやろー♪ 折角穂乃果ちゃんに想われてるんやから、穂乃果ちゃんに返してあげなあかんよー」
にこ「…」
希「あ、あれ? も、もしかして、もー別れてしもたん…?」
にこ「…バカ、違うわよ。そんなことないわよ」
希「良かったぁー…。もー、びっくりさせんといてよー」
にこ「あんたが勝手に驚いてるだけじゃない」
希「そんな反応されたら誰だってそう思うわー」
にこ「…そう、かしら」 希「んー? …穂乃果ちゃんと何かあったん?」
にこ「別に、何も無いわよ」
希「本当ー?」
にこ「…」
希「…もう、二人のことは心配になるなー」
にこ「何よそれ…?」
希「仮にも、ウチは二人をくっつけた張本人なんやから、何かあったら困るんよー」
にこ「…ありがと」
希「いーえ♪」
にこ「…」
にこ「…本当に、なんでもないんだけどさ」
希「うん?」
にこ「私なんかといて、穂乃果は楽しいのかしらね――」
*
こんな私の傍にいて、穂乃果は楽しい――?
こんな私の傍にいて、穂乃果は幸せ――?
私は考えてしまう。
穂乃果の輝きが無ければ、一生陽の光を浴びることの無かったかもしれない私だ。
ずっと、あの音ノ木坂の部室で、暗く、燻っていた二年間。
輝きたくても、輝けなかった辛い時代。
…私には、今でもその記憶が脳を巡り、暗鬱な気分で支配される。
そんなどうしようもない人間の傍にいて、穂乃果は迷惑では無いのか…?
そう思えばそう思うほど、卑屈に、自分が惨めになっていく。
何もできない。
何も成し遂げることの出来なくなった自分が、嫌になる。
――すぐ傍に、穂乃果がいなくなったから。
μ'sというグループはもう終わってしまったのだ。
私の心の支えであったμ'sのリーダー、高坂穂乃果はいなくなった。
…だから、今この道に立っているのは、私一人。
矢澤にこ、ただ一人なのだ。
でもそれは当たり前。
乗り越えなければいけない試練。
私は、私だけの力で、輝かなければいけない。
『…もう結構です。ありがとうございました。次の方――』
――でも、届かない。
あの輝きに、手が届かない。
穂乃果『…そっか』
穂乃果『…ううん、でも全然まだまだこれからだよっ! にこちゃんだったらオーディションに受かるって!』
彼女の笑顔が眩しい。…眩しすぎる。
私は穂乃果になれない…。
私は穂乃果になりたい。
穂乃果が羨ましい。
穂乃果が欲しい。
穂乃果が…っ!!
穂乃果『にーこちゃん…っ!』
…。
…なんで。
…なんで穂乃果は、こんな私のことを好きでいてくれるの?
私は穂乃果になりたいのに、いつだって、貴方は遠い――。
*
ことり「にこちゃんとはどこまで行ったのー?」
穂乃果「ぶっ!!」
海未「なっ…穂乃果!食べてるものを急に吹き出すんじゃありません!」
穂乃果「い、いや、だってー!今のはことりちゃんが…っ!」
ことり「ねぇねぇー♪穂乃果ちゃん教えてよぉー♪」ユサユサ
穂乃果「ど、どどど、どこまでって…///」 海未「ことり、穂乃果に悪いですよ」
ことり「だってぇー、知りたいよー」
穂乃果「そ、そんなこと言われても…」
ことり「久しぶりに三人で集まったんだしー、みんなの近況報告は大事でしょ?」
海未「いつもLINEでやりとりしていますが…」
穂乃果「そ、そうだよそうだよ!」
ことり「それとは別だよぉ。特に穂乃果ちゃん、にこちゃんのことになるとすぐに話題変えちゃうしー」
穂乃果「うぅ…///」 ことり「毎日デートとかしてるのぉ?」
穂乃果「こ、ことりちゃん…///」
ことり「手とかずっと繋いじゃったり…♡」
穂乃果「い、いや…///」
ことり「勿論、恋人繋ぎだよねっ!」
穂乃果「その…///」
ことり「キスとかは、まだかなぁ…?」
穂乃果「ことりちゃんっ!///」
ことり「いやーん!にこちゃんとのキスなんてー♡」
穂乃果「〜〜///」
ことり「それとも、もうベッドの上まで…♡」
穂乃果「ないないないっ!そんなとこまでいってないーっ!!///」 海未「…ことり。さすがにやりすぎですよ」
ことり「…はぁ〜い」
穂乃果「ほっ…」
海未「…まぁでも、その件に関しては私も気になっていました」
穂乃果「海未ちゃんまでっ!?」
ことり「ほらほらぁ♪」
海未「最近、受験勉強が疎かになっていますからね穂乃果は。どういうお付き合いをしているのか、しっかりと聞き出しておきたいです」
ことり「あ、あはは…」
穂乃果「海未ちゃん…」 海未「冗談などではありませんよ?」
海未「…仮にも、ちゃんと人とお付き合いするという話なのであれば、相手が不真面目に生活を送っていて良いはずがありませんよ」
穂乃果「ん…」
ことり「…?」
海未「特に、にこは今アイドルを目指して頑張っているのでしょう?」
穂乃果「…そう、だね」
海未「だったら、穂乃果も浮かれてばかりいないで、受験勉強しないといけないんじゃありませんか?」
穂乃果「…」
穂乃果「…うん」
穂乃果「海未ちゃんの言うとおりだね」 穂乃果「穂乃果…」
穂乃果「頑張っているにこちゃんのことが好きなんだもん」
穂乃果「どんな辛いときでも、ずっとアイドルの夢を変わらず持ち続けて…」
穂乃果「叶えようと努力し続けるにこちゃんのことが…」
穂乃果「大好きだったから…」
穂乃果「――告白したんだもん」
海未「…」
穂乃果「…///」
ことり「…〜〜穂乃果ちゃん可愛いぃ♪」
穂乃果「へ?」
ことり「一途な穂乃果ちゃん可愛いよぉ〜!!」ギュー
穂乃果「ちょ、ちょっとことりちゃんっ!?」
海未「はぁ。…その想いがあるなら、貴方もにこに負けないように頑張らないといけないでしょう」
穂乃果「そ、そうだけど…!」
海未「それでは、明日から私がつきっきりで始めますよ、いいですね?」
穂乃果「えぇー!?」
ことり「穂乃果ちゃ〜ん♡」
穂乃果「う、海未ちゃん! 今はそんなことより助けてよぉ〜!!」
海未「明日からとなると綿密に計画を立てないといけませんね…」
ことり「穂乃果ちゃ〜〜〜ん♡」
穂乃果「二人ともーーっ!!」
*
prrrrrr……
prrrrrr……
にこ「…」
prrrrrr……
prrrrrr……
プッ
穂乃果『も、もしもし…にこちゃん?』
にこ「穂乃果、今大丈夫?」
穂乃果『あ、う、うん! 大丈夫だよっ!』
にこ「…? そう、それなら良かったわ」
穂乃果『そ、それで? 今日はどうしたのー?』
にこ「あ、うん。明日なんだけどさ…暇かしら?」
穂乃果『あ、明日?』
にこ「ちょっと急で悪いんだけど…」
穂乃果『え、えーと、うーんと…』 にこ「あ…なんか用事あった?」
穂乃果『いや、その…あるようなないような…』
にこ「…? 何よそれ、はっきりしなさいよ」
穂乃果『…ぇー!?……だってぇー……』ガヤガヤ
にこ「…誰かいるの?」
穂乃果『え!? あー、いや、その…海未ちゃんとことりちゃんが…』
にこ「ああ、なるほど…」
穂乃果『ちょ、ちょっとダメだよー! 穂乃果が電話してるんだからーっ!』
にこ「賑やかね…」
穂乃果『も、もう…』 にこ「…それで、明日はダメなの? 大丈夫なの?」
穂乃果『だ、大丈夫だよっ! うん、大丈夫!』ホノカッ!
にこ「…海未の怒鳴る声が聞こえるんだけど」
穂乃果『う、ウミってだれー? 穂乃果知らないよー?』
にこ「はぁ…。まぁいいけど、程々にしときなさいよ」
穂乃果『うぅ…知らない人の強烈な睨みを背中に感じるよぉ…』 にこ「…それじゃ、明日いつも通りにね」
穂乃果『うん、分かったよ〜』
にこ「それじゃね」
穂乃果『また明日ー♪』
にこ「…」
『ホノカチャン、ニコチャントノデートイイナァ…モーコトリチャーン!?』
ピッ
にこ「…」
私なんかの傍にいて、本当に穂乃果は――。
*
にこ「…」
タッタッタッタッタッ…
穂乃果「…にこちゃ〜〜〜ん!!」
にこ「遅いっ!!」
穂乃果「ご、ごめーん…!」ハァハァ
にこ「なんであんたは毎度毎度遅刻してくんのよ…」 穂乃果「今日は違うんだよぉ…!」
穂乃果「海未ちゃんが朝から勉強ですっ! って言って押しかけてくるからぁ…!」
にこ「はぁ…? 何よそれ…」
穂乃果「昼間はデートするんだったら、代わりに勉強は朝やりましょうって…無茶だよぉ〜」
にこ「…もしかして、今日の用事って…」
穂乃果「…あ、うん」
穂乃果「本当は、海未ちゃんが勉強教えてくれるって話だったんだけど…」アハハ
にこ「…別に、無理しなくても良かったのに」
穂乃果「あ、ううん! 無理なんかしてないよ! 全然! にこちゃんとの約束の方が大事だもん!!」
にこ「…そう///」 穂乃果「…勿論、勉強も大事なんだけどさ」
穂乃果「今は…この夏休みは、にこちゃんとの時間を大切にしたい、かな///」
にこ「…ありがと///」
穂乃果「ううん…///」
ギュ…
穂乃果「エヘヘ…にこちゃんの手、暖かいね///」
にこ「…熱いぐらいだけど、ね///」
トコトコ…
穂乃果「…それで、今日はどこ行くの?」
にこ「うんとね、特にどこ行くって訳でも無いんだけどさ…」
穂乃果「?」
にこ「ちょっと付き合って欲しい場所があるの」
穂乃果「付き合って欲しい場所…?」
にこ「うん」
穂乃果「…」
トコトコ…
穂乃果(…にこちゃん、相変わらず厳しい顔)
穂乃果(…)
穂乃果(…でも、手の平から…優しさは伝わってくる///)
穂乃果(…///)ギュー
にこ「…?」
トコトコ…
穂乃果(どこに行くんだろう…)
穂乃果(この道…)
穂乃果(いつも通ってる道だけど…)
穂乃果(…あれ?)
穂乃果(この階段を登って…)
穂乃果(もしかして…) にこ「着いたわ」
穂乃果「…」
にこ「ここよ」
穂乃果「…ここって、音ノ木坂…?」
にこ「そ」
穂乃果「…どうして?」
にこ「ちょっとね…」トコトコ
穂乃果「あっ、にこちゃん…」
*
ガチャ
穂乃果「…誰もいない、ね」
トコトコ…
にこ「…変わらないわね、この部室は」
穂乃果「にこちゃんの荷物が無くなったから、結構すっきりしたけどね」
にこ「そうね…」
穂乃果「…?」 にこ「今日は部活は?」
穂乃果「休みじゃないかな。今日は木曜日だもんね」
にこ「…そ」
穂乃果(…あれ、でもにこちゃんが決めた休みの日だし、知らない訳…)
にこ「…よいしょっと」ギシ
穂乃果「…」
にこ「…穂乃果も座ったら?」
穂乃果「へ? あ、う、うん…」ギシ
にこ「…」
穂乃果「…」
ミーンミーンミーンミーン
ジジジジジジジ
穂乃果(…にこちゃん、どうしたんだろ?)
穂乃果(なんか、物思いにふけってる感じ…)
穂乃果(声、かけ辛いな…)
にこ「…」
穂乃果「…」
にこ「…懐かしいわよね」
穂乃果「え…?」 にこ「ここで、みんなで活動してた頃が…」
穂乃果「…う、うん。そうだね…」
にこ「スクールアイドルμ's…」
にこ「今となっては、遠い過去の出来事のようだわ」
穂乃果「…あはは、まだ一年しか経ってないのにね」
にこ「本当よね。たったの一年しか、経ってないのよね」
穂乃果「…」 にこ「それぐらいに、あの一年は、私の中で大きかった…」
穂乃果「…それは穂乃果も一緒だよ」
にこ「そうね…。μ'sのリーダーとして、走ってきたんだもんね。当然よね」
穂乃果「うん…」
にこ「みんなで、走り抜いたわね…どこまでも、どこまでも…」
穂乃果「…」
にこ「――でもね、私はそこから進めていない気がするの」
穂乃果「え…?」 にこ「…」
穂乃果「…」
ミーンミーンミーンミーン
ジジジジジジジ
にこ「…私は去年の自分から、何も成長していない」
にこ「何をやっても、あの時の自分を超えることができない」
にこ「どう足掻いても、μ'sの自分を払拭できない」
にこ「卒業して、自分一人だけになって、改めて実感した」
にこ「私は一人じゃ、何もできない」
穂乃果「…」
にこ「それはそうよね?」
にこ「私は、穂乃果というμ'sの支柱に支えられて、あの日々を過ごしてきた」
にこ「穂乃果がいたからこそ、輝くことができた」
穂乃果「そんな…っ」 にこ「それってつまりさ、私は去年一年間…何も成長していなかったってことじゃない」
にこ「穂乃果が声かけてくれるまで、ずっとこの部室で燻っていた時と何も変わることは無い」
にこ「だから、穂乃果がいなくなったらそれが元に戻るのは必然で…」
にこ「何もできなくなるのは当たり前なんじゃ無いかって…!」
穂乃果「そんなことないよ…っ!」
にこ「そんなことあるわよっ!」
にこ「だって、現に、私は!」
にこ「何も成果を出せていないッ!!」
穂乃果「――っ」
にこ「音ノ木坂を卒業して…スクールアイドルという枠を抜けてアイドルを目指し始めてから――」
にこ「まだ、たったの五ヶ月間しか経ってない…」
にこ「けれど、この間にも努力は沢山したわ…!」
にこ「その道の専門学校に入って勉強する傍らで、片っ端からオーディションだって受けた!」
にこ「色んなところに、自分の足で出向いて、挑戦し続けてきたのよっ!」
にこ「――でもダメなの」
にこ「まるで、歯が立たないの…っ」 にこ「自惚れていたわけじゃない」
にこ「μ'sという奇跡の中にいて、慢心していた訳でもない…!」
にこ「だけれど…あの場所から放り出された私はあまりにも…!」
にこ「弱くて…脆くて…!」
にこ「自分がどんどんちっぽけなものになっていくのよ…!」
にこ「μ'sにいた時の矢澤にこは、μ'sであるからこそ輝いていた…!」
にこ「誰も、矢澤にこを見てくれない!」
にこ「必要とはしていない…!」
穂乃果「にこちゃんっ!!」
にこ「私は穂乃果になりたい――」
穂乃果「え…?」
にこ「μ'sを作ることのできた穂乃果に…!」
にこ「全ての時を動かすことのできた穂乃果に…私はなりたかった…!」
にこ「穂乃果…っ!」
穂乃果「にこちゃん…?」
にこ「穂乃果…っ! 大好きなのよ…っ!」
穂乃果「――」
にこ「あなたが…っ!」
にこ「私には足りないものを持っている穂乃果のことが…っ!」
にこ「私は、穂乃果になりたいの…ッ!!」
穂乃果「…」
にこ「うぅ…ッ!」
にこ「穂乃果がいないとダメなのよ…っ!」
にこ「穂乃果が傍にいなければ…私は何も変わることができない…っ!」
にこ「こんなに頑張っているつもりなのに…っ!」
にこ「こんなに努力している筈なのに…っ!」
にこ「私一人じゃ、何も変えることができないのよ…っ!」
にこ「穂乃果…っ!穂乃果ぁ…ッ!!」
穂乃果「にこちゃんッ!!」ダキ
にこ「――っ!?」
穂乃果「――っ」
にこ「――」
ミーンミーンミーンミーン
ジジジジジジ
穂乃果「…無理しないんでいいんだよ」
にこ「…っ」
穂乃果「穂乃果がいないとダメ…?」
穂乃果「…そんなことないよ、にこちゃんは頑張ってるもん」
穂乃果「穂乃果がいなくちゃ輝けない…?」
穂乃果「穂乃果だって、一人なんかじゃμ'sを成功できなかったよ…」 穂乃果「…μ'sは、みんながいて、みんなが頑張って成功したグループなんだよ」
穂乃果「穂乃果一人がどうこうしたって、全然凄くないグループなんだよ…」
穂乃果「だから、にこちゃんが一人になって、何もできなくなったって嘆く必要ないんだよ…」
穂乃果「みんな、そうなんだから…」
にこ「穂乃果…っ」
穂乃果「でもね、穂乃果は…」
穂乃果「そんなにこちゃんの、ひたむきに努力してる姿が…好きなんだよ…///」
穂乃果「無理だとしても、辛くても、変わらずに努力するにこちゃんのことが…」
穂乃果「穂乃果の憧れなの…」 穂乃果「穂乃果は…自分勝手に、我が侭にみんなを引っ張っていって、それでなんとかする力はあるかもしれないけど…」
穂乃果「一人で輝こうとする力は無いよ」
穂乃果「…だから、にこちゃんが羨ましい」
にこ「そんなこと…っ」
穂乃果「にこちゃんは、穂乃果のことが羨ましい?」
穂乃果「にこちゃんは、穂乃果になりたい?」
にこ「…っ」 穂乃果「…そんなの無理だよね。他人になるのなんて、絶対に無理」
穂乃果「例えなれたとしても、結果は同じだよ」
穂乃果「穂乃果には、にこちゃんみたいに努力する力は無いと思うし…」
にこ「そんなこと…」
穂乃果「にこちゃん…」
穂乃果「あのね、穂乃果…思うんだ」
穂乃果「…にこちゃんはいつも一人で頑張ってる」
穂乃果「穂乃果に無理を見せないように、いつも強くいようとする…」
にこ「…」
穂乃果「でも…」
穂乃果「もっと、弱くても良いと思うんだ」
穂乃果「にこちゃんはもっと、人に甘えて良いんだよ」
穂乃果「もっと他人を、頼っても良いと思うの」
穂乃果「一人で頑張ることも大事だと思うけど…それだけじゃないよ」
穂乃果「穂乃果が、海未ちゃんに勉強を見てもらえるように…」
穂乃果「他人が支えてあげられることもあるんだよ」
穂乃果「にこちゃんは、私にもっと弱音を吐いてくれて良いと思うんだ」
穂乃果「そんなことで、にこちゃんの強さが無くなる訳じゃ無い」
穂乃果「弱音を吐くにこちゃんのことを、私は支えてあげられる」
穂乃果「きっとそれだけで、にこちゃんはもっと輝けると思う」
穂乃果「甘えるのは、決して悪いことじゃないよ」
穂乃果「大事な大事な、人と人との繋がり」
にこ「…」 穂乃果「…なんて、偉そうなこと言っちゃったけど…///」
穂乃果「ね、にこちゃん?」
穂乃果「穂乃果たち、付き合ってるんだよ?」
にこ「…そう、ね」 穂乃果「…もっと、穂乃果に甘えてくれていいんだよ?」
穂乃果「にこちゃんの苦しみも、悲しみも、それだけじゃない」
穂乃果「楽しさも、嬉しさも、全部全部、受け止めてあげられるから…」
穂乃果「むしろ、にこちゃんの全てを受け入れたいから…」
穂乃果「だから、にこちゃんに告白したんだよ?」
穂乃果「ね――?」
にこ「…」
ああ…穂乃果…。
なんで私は、こんなに想われているんだろう。
なんで私は、こんなに幸せなんだろう。
私は一人で頑張ってきたのに。
いつだって、一人でなんとかしようとしてきたのに。
穂乃果が。
…すぐ傍に穂乃果がいてくれる。
肩肘を張って、無理をしていた私の心を、穂乃果の声が解きほぐしていく。
穂乃果の声に、私の心は――。
にこ「穂乃果…」ギュ…
穂乃果「にこちゃん…」
…ガチャ
ほのにこ「!?」
凛「…かよちんはうっかりやさんだにゃ〜」
花陽「凛ちゃんごめんね、お休みの日にこんなところまで付き合って貰っちゃって…」
凛「別にいいよー…って」
花陽「…? 凛ちゃん…?」
花陽「っ!?」
穂乃果「――」
にこ「――」
凛「…なんで穂乃果ちゃんとにこちゃんがいるのー? しかもそんなところで二人で抱き合って…」
穂乃果「あ…う…」
にこ「こ、これは…」
凛「卒業してるのに勝手に入ってきたらダメだよーにこちゃんー」
花陽「あ…あ…あ…///」
凛「かよちん?」
花陽「ふ、ふ…不潔ですっ!にこちゃんッ!!」
穂乃果「ち、違うよっ!?」
にこ「誤解よ花陽ッ!?」
凛「不潔ー?」
花陽「アイドルを目指しているにこちゃんが、人気のない部室で二人きりでいかがわしいことをしてるなんて言語道断ですぅ!抱擁や、き、キキキスくらいならまだしもっ!今の明らかにこれからお互いの服を脱がし…」
*
カナカナカナカナ…
穂乃果「…///」
にこ「…///」
穂乃果「あ、あはは…誤魔化すのに、大分苦労しちゃったね…」
にこ「…誤魔化せてないわよ。もう手遅れよ」
穂乃果「あぅぅ…」
にこ「あんた、二学期から噂されること覚悟しなさいよ…」
穂乃果「えぇー…///」
にこ「私は卒業していて良かったわ…」
穂乃果「…///」
穂乃果「…まぁでも、いっかな♪」
穂乃果「にこちゃんのこと好きなのは、変わらないし///」
にこ「…///」
カナカナカナカナ…
にこ「ここに、この部室に来れば…今の私に足りないものが見つかるんじゃ無いかと思ったんだけど…」
穂乃果「…見つかった?」
にこ「こんなところに来る必要も無かったかもね」
穂乃果「?」
にこ「…すぐ傍に、答えがあったんだから」
穂乃果「…えへへ///」
にこ「…」クス にこ「…私は、ここを卒業した後…何もできない自分が不安になった」
にこ「そんな中、希を仲介したとはいえ…穂乃果が私に声をかけてくれた」
にこ「…不安の最中にいる私のことを、好きと言ってくれた」
穂乃果「うん…」
にこ「それが、どれほど嬉しかったか」
にこ「どれほど、支えになったか…」
穂乃果「うん…っ」
にこ「きっと、穂乃果がいれば…私はまた輝ける」
にこ「また、走り出すことができる」
にこ「…例え転んだとしても」
にこ「その時は、穂乃果に甘えても良いのよね…?」
穂乃果「うん…!」
にこ「…ありがとう、こんな私を好きになってくれて」ニコ
穂乃果「…///」
穂乃果「…」
にこ「…」
チュ…
やっと、笑ってくれた。
私に向かって、私の心に、優しく微笑んでくれた。
きっと、それはにこちゃんの本心。
ようやく、にこちゃんに私の声が届いたんだ。
にこちゃん、大好きだよ――。
*
希「あ、穂乃果ちゃん」
穂乃果「希ちゃん〜♪」フリフリ
穂乃果「今日も巫女さんのバイトー?」
希「そうやよー♪毎日毎日張りきらな−、借金返せへんもんー」
穂乃果「えぇ!? 借金!?」
穂乃果「…だ、誰に!? 穂乃果…あんまり持ってないけど、貸してあげようか…?」ハラハラ
希「あっははっ! うーそやってー、借金なんかこの年である訳ないやろー?」
穂乃果「もー!! 希ちゃーん!? 何度も何度も騙さないでよーっ!!」
希「だってー、慌てふためく穂乃果ちゃんが可愛いんやもーん♪」
穂乃果「可愛くないよーっ!///」 希「それよりー、にこっちとはどうだったんー?」
穂乃果「へ?」
希「花陽ちゃんから聞いたでー? 音ノ木坂の部室でやーらしいことしてたんやろー?」キシシ
穂乃果「も、もう広まってる…って、違うよ!? やらしいことなんてしないよーっ!!」
希「またまたぁー、誤魔化さんでもええよー♪」
穂乃果「誤解! 誤解なんだってばーっ!!」
希「あははっ! 分かっとるよー♪」
希「もー、ホント穂乃果ちゃん可愛ええなぁー♪」
穂乃果「うぅ…からかわれてる…」 希「でーも、にこっちといい雰囲気になれたんは本当なんやろー?」
穂乃果「あ…その…」
穂乃果「う、うん…///」
希「…」クス
穂乃果「ここでのお参りが聞いたのかな…?前より仲良くなれた気がするよ♪」
希「当たり前やん? ウチの神社でお参りしてくれた穂乃果ちゃんの願いが、適わないはずないやんー♪」
穂乃果「…ありがと、希ちゃん♪」
希「…ふふ、その調子で、これからもにこっちのことよろしくな♪」
穂乃果「うん!」
穂乃果「どんな壁が立ち塞がっても、穂乃果たちなら大丈夫!!」
*
希「あ、にこっちー♪」
にこ「ん、希」
にこ「今日も巫女のバイトー?」
希「そうやよー。毎日働かんと、えりちを養っていけんからなー」
にこ「は?」
希「えりち大食らいやからなー、二食分はかかるんよー。辛いわー」
にこ「…え、ホント?」
希「いや、嘘やってー! どしたんにこっちー? いつもみたいにツッコんでよー」
にこ「いや微妙に分かり辛いしっ! 本当にそんな関係でもおかしくないでしょあんたら!」
希「えー、まぁそれは想像に任せるけどなー♪」
にこ「…///」 希「にこっちこそ、穂乃果ちゃんといい関係になったんやろー?」
にこ「は!?」
希「あ、いい反応やわー♪ それでこそにこっちやん♪」
にこ「まさか、花陽のやつ…」
希「バッチリ連絡きたでー♪」
にこ(…穂乃果、ご愁傷様)
希「何々、偉い急展開やんー?」
にこ「…そんな、あんたの思い描くような関係にはなってないわよ///」
希「えー? 部室でくんずほぐれつなことしてたんちゃうんー?」
にこ「してないっ!!///」
希「なんやー、つまらんなー」
にこ「全く…///」 希「…」クス
希「――でも、こないだよりいい顔しとるでにこっち?」
にこ「――」
希「その調子なら、これからも頑張れるやない?」
にこ「…そうね」
にこ「どんな壁が立ち塞がっても、私たちなら大丈夫!!」
そう、どんなことが起きても大丈夫。
穂乃果の声があれば、私はどこまでも強くなれるのだから――。
終わり。 穂乃果ちゃんの無垢なところをにこちゃんは最大限に引き出してくれる ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています