ルビィ「帰去来」 [無断転載禁止]©2ch.net
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へリポートを出て大きなホテルを見廻しても果南さんはいない。ホテルの前の岬、といっても、シーズン外、草木と噴水一台、淋しい広場に私と鞠莉さんとが鞄をさげてしょんぼり立った。
「来た! 来たわ!」鞠莉さんは絶叫した。
髪の長い女が、笑いながら町の方からやって来た。果南さんである。果南さんは、私の姿を見ても、一向におどろかない。ようこそ、などと言っている。闊達なものだった。
「これはマリーの責任ですからね。」鞠莉さんは、むしろちょっと得意そうな口調で言った。「あとは万事、よろしく。」
「承知、承知。」スーツ姿の果南さんは女傑のようであった。 果南さんのお家へ案内された。知らせを聞いて、小母さんがヨチヨチやって来た。十年、小母さんは小さいお婆さんになっていた。私の前に坐って、私の顔を眺めて、やたらに涙を流していた。この人は、私の小さい時から、頑強に私を支持してくれていた。 その淡島という島から、ほんの1kmも離れていない内浦長浜というところに、私の生れた家が在った。淡島からフェリーで三分くらい駿河湾を渡り30分ほど歩くと、私の生まれた家に着くのだ。おひる頃、果南さんと鞠莉さんと私と三人、フェリーで内浦長浜に向った。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています