ことり「意地悪な台詞もひとつもとても愛しい」 [無断転載禁止]©2ch.net
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誰もいない被服室でことりは一人作業をしていました。
一台のミシンの前に座り、周りに大量の布の壁を作ってみんなの衣装を作っています。
ちょっとしたお城みたいだね。もっと可愛い感じのお城がよかったけれど、今はそんな暇はないのです。
今年のハロウィンイベントのために大忙し。学校内でライブをやることになったのです。
だから休んでなんていられません。曲も歌詞も出来上がっているので、衣装も早く仕上げないと。
うんと可愛い衣装を作って大成功させなくちゃ。
「ふぅ……」 ちょっと一息。水筒を手に取り中のミルクティーで喉を潤します。
優しい甘さがじんわりと身体に染みていく感じがして、そこで初めて自分が疲れているのだと自覚しました。
首を一周回してみるとコキッと軽い音が鳴ります。肩も凝っているようです。
でも疲れに負けてはいられません。腕を真上に伸ばして足先までぐーっと伸ばします。
「よし!」
気合いを入れ直してまたミシンを進ませます。
チクチクチクチク…… ミシンの奏でる音が被服室に木霊します。みんなは今頃何をしているでしょうか。
踊りを決めているのかもしれません。歌の練習をしているのかもしれません。
ミシンを止めると広がる静寂。遠くで微かに運動部の声がします。
誰か来てくれないかな。 胸の端っこにモヤモヤが現れます。衣装を作るのは少し難しい部分もあるので、誰かに手伝いをお願いすることはあまりできません。
みんなは私の作業の邪魔にならないようにと、訪れるのを憚っているのかもしれません。
それでも話し相手がほしい、そんな時があるのです。手伝ってくれなくてもいい、ただ隣でたわいもない話をするだけでいいのです。
これは幼い頃からずっと3人でいたせいでしょうか。うるさいまでのことは好みませんが、賑やかなのは逆に落ち着くのです。 入り口のドアをいつまでも見つめても誰も来てはくれないでしょう。
諦めかけたその時、控えめなノックの音が響きました。
「どうぞ」
慌てて作業をやっているふりをして返事をしました。
ゆっくりと開いたドアの隙間から現れたのはツインテールの可愛い先輩。
衣装作りが間に合いそうにないときは文句を言いながらも手伝ってくれる彼女。
優しいのにその優しさを相手に伝えるのが恥ずかしいのかな。
恥ずかしさを紛らわすためにつっけんどんな態度をとってしまうけれど、不器用さんなだけなんです。 スレタイミス
ことり「意地悪な台詞のひとつもとても愛しい」 です 正直GLAYの歌詞で百合ss書かれるのはちょっと…… 彼女は私のところまでつかつかと近づいてくると、ふんの鼻を鳴らしました。これが合図なのです。
「目のとこ隈できてるわよ。ファンデで隠してるつもりかもしれないけどバレバレなのよ。アンタもアイドルなんだから気をつけなさいよね!」
一見にこちゃんが私に意地悪いことをしているように聞こえるかもしれないけれど、これは違うのです。
お説教と言えばわかりやすいかな。 よく昔いけないことをしてお母さんに怒られた時と同じなのです。
小さな頃は怒られたことを怖いなって思うだけでしたが、それは愛情の裏返しなのだと大きくなって知りました。
私のことを心配したり大事に思ったりしていなければ、お母さんは怒ったりなんかしません。
にこちゃんもお母さんと同じなのです。私のこと、μ'sのことを大切に思っているからこそちゃんと怒ってくれるのです。 つらつらと紡がれる彼女の優しさの滲んだ言葉が寒くなっていた心をそっと包み込みます。
湯たんぽのようにぽかぽかじんわり温度がしみていって、眠たくなってきます。
「……て、ことり聞いてる⁉」
「聞いてるよぉ……ごめんねぇ、にこちゃん」
ふにゃふにゃした声を返せばにこちゃんはジトーっとした目で睨んできます。
彼女こそ可愛いお顔が台無しです。 「にこちゃんは優しいねぇ」
「散々言われた後にそんなこと言うのはアンタと希だけよ」
残念、照れてくれるかなと踏んでいたのですが失敗だったようです。
それに希ちゃんと一緒だと言われたのがちょっと気になります。
彼女の魅力に気づいている人が他にもいるなんて妬いちゃいます。
「とにかく手伝ってあげるからちゃっちゃと終わらせなさいよね!」 にこちゃんは私の隣の席に腰を下ろすと布を手に取り縫い始めてしまいました。
やっぱりにこちゃんは優しいです。前置きがないと素直に優しさを与えられない不器用なところがすごく魅力的です。
その横顔をこっそり盗み見ながら作業を再開させます。
何も会話はなかったけれど、二人が生み出す音が混ざり合って心地よさに包まれました。 作業も無事終わり帰り際、彼女はおもむろにバックの中を漁り始めました。
お目当てのものを引っ張り出すと、私の手の上にちょこんと乗せてくれました。
可愛いラッピングがされたクッキー。
お化けカボチャの形に抜いてあるそれはとても美味しそうです。
「ほら、来週ハロウィンでしょ。でもライブでお菓子なんて作っていられないからその前払いよ」 これで凛あたりにイタズラされなくてすむわねー、にこちゃんはとっても自慢げにそう言いました。
嬉しいけれど、にこちゃんはやっぱりズルいのです。
凛ちゃんの話が出てきたってことはこのクッキーをみんなにもあげているってことだよね。
わかってるよ。にこちゃんがことりにだけ特別にクッキーを作ってくれたんじゃないってことぐらい。
でもね、ちょっと期待しちゃったんです。
ことりにだけ作ってくれたのかなって思っちゃったりしてね。 自信ありげに少しだけ持ち上げられた顎の先をじーっと見つめていたらにこちゃんは思い出したようにこっちを振り向きました。
「アンタのだけ量多くしてあるから、穂乃果に見つかる前に減らしときなさいよ」
そして何事もなかったように私の前を歩いていってしまうのです。
やっぱりさ、不意打ちはよくないんじゃないかなぁ。
そういうところがズルいんです。 勝手に落ち込んで嬉しがっていることりが馬鹿みたいだよね。
でも、そんなこともどうでもよくなってしまうぐらい嬉しくてしょうがないのです。
その背中にすぐついていけるほどことりは丈夫なハートを持っていないから、その場で顔を覆って深い溜息をつくしかないのです。 「ことり、どうかした?」
今振り返らないでほしいです。空気を読んでください。
「な、なんでもないよ〜?」
彼女の瞳みたいに真っ赤に染まった顔を手で仰いで冷ましてみるけど、誤魔化しきれていないかもしれません。
にこちゃんが鈍いことを祈るばかりです。
彼女は首を傾げましたが、そのまま何も聞かずに歩き始めました。
私は慌ててその背中に追いつきます。 私のその小さくて大きな背中に誓いました。
ハロウィンの日にとっておきのイタズラをして、ズルいにこちゃんの余裕を奪っちゃうんです! おつ
やざーさんこういうの似合うね
ハロウィン編楽しみにしてるわ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています