女子大生海未「穂乃果。セックスを前提に結婚してください」穂乃果「いやだ」2 [無断転載禁止]©2ch.net
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
私が穂乃果の部屋に"お泊り"を始めてから、幾日が過ぎていた。
世界から隔絶されたこの場所は、とても長閑で、デモもテロもない平和な場所だった。
しかしながら、ここの空気は私には息苦しかった。
私はこれ以上、この場所に居ることに堪えられなくなっていた。
穂乃果「海未ちゃん。もう、帰っちゃうの…?」
海未「あまり長居をすると、穂乃果も迷惑でしょう。それに、私には帰る場所がありますし、そこに戻ることにします」
穂乃果「そっか…。海未ちゃんとはまたしばらく、お別れになっちゃうんだね…」
海未「仕方ありませんよ。私たちは、それぞれ別々の道に進んだのですから」
穂乃果「……じゃあさ、また冬休みにでも遊びにおいでよ。たぶんその頃には雪が降り積もって、綺麗な雪景色が見られると思うよ」
海未「ええ、そうさせてもらいます。今から冬が待ち遠しいですね」
穂乃果「うん、そうだね。私はいつも退屈してるからさ、海未ちゃんが来てくれるだけで嬉しいよ。それと…はい、これ」
海未「これは………手紙、ですか?」
穂乃果「それをことりちゃんに届けて欲しいな。メッセンジャー海未ちゃん、よろしくね!」
海未「はい、頼まれました」 穂乃果「………あ、ごめん。引き止めちゃったね。もう行ってくれて構わないよ」
海未「………」
穂乃果「海未ちゃん…?」
海未「……あの、穂乃果。かつて私と交わした約束、まだ覚えていますか…?」
穂乃果「え、約束…?」
海未「ほら、あれですよ。結婚の…」
穂乃果「………ふふっ、もちろん覚えてるよ!」
「大学を卒業したら、セックスを前提に結婚しようね!」
こうして私たちは別れ、また元の世界へと戻った。
それぞれの想いを胸に抱えて。 #33
この日も、私は一人きりの部屋で静かに目を覚ました。
部屋の中は茹だるような暑さが漂い、蒸し風呂のようだった。私は身体を起こし、窓を開けた。
外にいる雄蝉達は、私に見られていることにも気づかず、ただ一心に鳴き続けていた。
私はシャワーを浴び、汗を流した。
それから普段着に着変え、濡れた髪の上にタオルを置き、冷えたビールを呷りながらテレビを甲子園実況のチャンネルに合わせた。
試合は大阪の学園が優勢なようで、一回終了の時点で既に4点差をつけていた。
この点差を覆すのは無理だろうと思いながら、私はタオルで髪を拭いた。
携帯に不在着信が入っていることに気づいたのは、ちょうど三回表が始まった頃だった。
その不在着信の送り主は、『園田』と表示されていた。つまり、父からの電話だった。
電話が掛けられて来たのは今から9日前。ちょうど、私が京都にいる間に掛けられていたようだ。
父から電話が掛かってきたことに動揺した私は、思わずその不在着信に掛け直してしまった。 流れてくる呼出音。
私は慌てて電話を切ろうとしたが、時既に遅し。
電話口から聴こえてきたのは、懐かしい、父の声だった。
『はい、園田です』
海未「っ…」
『………もしもし、どちら様ですか?』
海未「………」
海未「お久しぶりです…。……お父様」 この日。
勘当され、ずっと絶縁状態となっていた父と、約一年半ぶりの再会を果たした。
朝、間違えて父からの電話に掛け直してしまった後の話。
私は父が怖くて、声を聴くのも恐ろしくて、すぐに電話を切ってしまおうと思っていた。
しかし、いざその声を聴くと、そんな思いはどこかへと飛んで行った。
眼を閉じると、父と過ごした18年の記憶が溢れ出してきた。
厳しくも、いつも愛情を持って接してくれた父。そんな父が作ってくれた炒飯が、私は大好きだった。
父が時折見せる優しい笑顔が、私は大好きだった。
そして、父と仲違いし、勘当され、それを受け入れている自分が嫌になった。
このままではいけないと、強く思った。
海未「………あの、お父様…」
『……なんだ?』
海未「っ…」
私は、父親に全力でぶつかった。 「………母さんに会いに来るのはいつ以来だ?」
海未「亡くなってからは、初めてです…」
「……そうか」
電話の後、私は実家に向かった。
家の前には、一台の車が停まっていた。その車の中で、父は不機嫌そうな表情を浮かべながら、私を待っていた。
父も、久しぶりに会う私をどんな顔で迎えればいいのか分からず、眉間にしわを寄せて怒ったような顔をしていた。
それを見て、私は思わず笑ってしまった。
父はやはり、不自然な表情で、助手席に乗るよう催促した。
お盆だということもあり、墓地には、生きた人間の姿が多く見受けられた。
私は父の後に付き、亡き母の眠る墓まで来た。
私たちは墓石に水を掛けた。
父はぶつぶつと何かを呟いていた。きっと、母と他愛もない話をしていたのだろう。
私たちは花を添え、線香をあげ、静かに手を合わせた。
言葉数少なく、まだ距離感を掴めていない不器用な私と父を見て、母が微笑んでいるような…、そんな気がした。 帰りの車中、父は突然に口を開いた。
「……母さんは、何て言っていた?」
海未「……私が『お久しぶりです』と言うと、お母様も『お久しぶりです』と、返してくれました」
「そうか…。よかったな」
海未「はい」
会話が途絶えると、車内は驚くほどに静まり返った。
私は会話を続けた。
海未「あの…、お父様」
「……どうした?」
海未「これは、先程の電話の時にも伝えましたが、もう一度言わせてください」
海未「………母が亡くなってから今まで、お父様に散々迷惑を掛けてしまい、すみませんでした」
「………」
海未「母が亡くなり、私だけでなくお父様も傷心していたのに、私はその気も知らず、自分勝手で我が儘な態度をとってしまいました」
海未「『お母様はまだ生きているんだ』と…」
海未「そんな妄想に取り憑かれ、母が死んでいないように振る舞い、周囲にどれだけの迷惑を掛けたことでしょうか…」
海未「お父様…。本当に、すみませんでした…」
「……海未はもう大学生になり、大人になったつもりでいるかもしれないが、私にとってはまだまだ子どもだ」
「子どもなんだから、好きなだけ親に迷惑を掛けなさい」
海未「お父様…」
「……私もあの時はどうかしていた。心が狭くなってしまい、お前の想いに耳を傾けてやることができなかった。本当にすまない」
海未「………」
私は何も言い返さなかった。 夏休みの国道は渋滞を起こし、私たちは道の途中で立往生していた。
海未「お父様…。変なことを言ってもいいですか?」
「変なこと?」
海未「……もしかしたら、お母様はまだこの世にいるのではないか…と、時々思うんです」
海未「あ、私はちゃんと、母が死んだという現実は受け止めていますよ」
海未「……それでもやはり、母は姿を変え、私に会いに来てくれているのではないかと思わずにはいられないんです」
「………」
海未「……いえ、そんなはずがありませんよね。忘れてください」
「………母さんは、私の所にもよく会いに来た」
海未「え…?」
「あの人のせいで、生と死というものが、時折判らなくなる」
停滞する車の群れは、少しずつ、前に進んでいた。
「……海未。これからはどうするつもりだ?」
海未「……まだ、あの寮に居させてください。あそこには私にとって、大切な思い出があるんです」
「そうか。……うちの門はいつでも開けておくから、好きな時に帰ってこい」
海未「ふふ、ありがとうございます」
車が勢いよく流れ始めた。
私たちはようやく、渋滞の中を抜け出した。 父は、私を寮の前まで送ってくれた。
海未「わざわざ送ってくださり、ありがとうございました」
「ああ」
海未「あ、お父様。12月に、私の友達が出演するコンサートがあるんです」
海未「友達から、家族の方と一緒に来て欲しいと誘われていて…。よかったら、一緒に観に行きませんか?」
父は少し驚いた様子だったが、すぐに私の大好きな優しい顔になり、コクリと頷いた。
私は父の車が見えなくなるまで、手を振り続けた。
それから部屋に戻り、テレビを付けた。
私が朝観ていた試合は、両者9点で同点のまま、延長十三回に突入していた。
外では、蝉が頻りに鳴いていた。 乙
ことりちゃんへの手紙には何が書いてあるのか気になるw #34
夏休みも終盤に差し掛かり、蝉の声も日に日に衰えてきたこの頃。
私は朝早くから、ことりに呼び出されていた。
ことりの家の前でインターホンを押し、待つこと5分。ことりは現れた。
ことり「海未ちゃん。おはよう」
海未「おはようございます。あの、今日私をここに呼び出して、一体どうしたんですか?」
ことり「……今日、私はこれから、フランスに出るの」
海未「別れの挨拶、ですか…」
ことり「それもあるけど…。私には、日本を発つ前にやっておきたいことがいくつかあるんだ」
そう言うと、ことりは手に持っていた大きな紙袋を私に差し出した。
ことり「その紙袋に入っているのは、今年の水コンで海未ちゃんが着る衣装だよ」
海未「えっ…!まさか、ことりの手作りですか…?」
ことり「うん、そのまさかだよ」
海未「ことり、ありがとうございます。パッと見ただけで露出の多さが窺える衣装ですね」
ことり「私は、海未ちゃんがこの衣装を着ている姿を見ることができないけど…。でも、遠くの国から応援してるよ」
海未「……はい。嬉しいです、とっても…」 ことり「………海未ちゃんは、本当に水コンに出場するの…?」
海未「え?どうしてまたそんなことを…」
ことり「だってさ…。海未ちゃんから、やる気を感じられないんだもん。『いざとなったら逃げてもいい』なんて、そんなズルいこと考えてない?」
海未「そんなことありません!……ただ、実感が湧かないんです。私があのステージに立っている姿が、想像つかないんです」
ことり「……でも、海未ちゃんはやるって決めたんだよね?だったら逃げちゃダメだよ」
ことり「私が作った衣装、絶対に無駄にはしないでね」
海未「は、はい…」
ことり「………大丈夫だよ。海未ちゃんには、絵里ちゃんが付いてるんだもん」
ことり「二人は今回、ライバルという形になるけど…。それでも、困った時はお互いを支え合える良き好敵手になれると思うな」
海未「そうでした…。絵里が側にいるじゃないですか。あんなにも頼れる先輩が側にいて、何を恐れることがあるのですか」
ことり「二人なら、きっとイベントを盛り上げられるよ!頑張ってね!」
海未「ええ、任せてください!パリまで届くような歓声を起こしてみせます!」 腕時計を確認したことりは、そこで話を切り上げた。
ことり「ごめん、もう行かなきゃ。便の時間に間に合わなくなっちゃう」
海未「はい。早く行ってください」
ことりは帽子を被り、キャリーバッグを引き、枕を脇に抱え、私に背を向け走り出した。
海未「……あ、ことり!」
ことり「な、何っ!?」
海未「これ、穂乃果からの手紙です」
ことり「穂乃果ちゃんから…?」
ことりは枕を器用に脇に挟みながら、手紙を受け取った。
海未「穂乃果はあなたに会いたがっていましたよ。もし冬休みにでも日本に帰って来れるのなら、どうか穂乃果に会ってあげてください」
ことり「………」
ことり「ごめんね、穂乃果ちゃん…。私、もう穂乃果ちゃんには会えないと思う…」
海未「どういうことですか…?」
ことり「……向こうに行ったら、留学期間が終わるまで私は帰ってこないよ。もう余所見はしないって、決めたから…」
ことり「この1年は絶対に、日本には戻らない。これは私の決意だから、もう揺らいだりしないよ」
海未「そうですか…。穂乃果だけでなく私も、ことりとはしばらく会えなくなるんですね…」
ことり「………でも、海未ちゃんならいつかまた会えるよ」
ことりはそう言い残して、私の前を立ち去った。
結局、穂乃果がことりに宛てた手紙には何が書かれていたのか。
その後、ことりが返事を書き、ことりと穂乃果の間に繋がりができたのか。
私には知る由もなかった。 やべえ引き込まれる
時間かかってもいいから是非自分に合ったペースで更新してくれ #35
凛「あっ、来た来た!海未ちゃん〜」
海未「お待たせしました。……って、凛!何ですかその格好は!」
凛「何って、浴衣だよ。花火を観に行くんだから、浴衣は必要装備でしょ?」
海未「ですが…肌の露出が多過ぎませんか?スクフェス衣装じゃないのですから、もっと肌を隠してください」
凛「でも海未ちゃんはこういう露出ファッションの子が好きなんでしょ?」
海未「確かにそうですが………いや違いますよ!何言わせるんですか!」
私は凛に服を着替えるよう言ったが、凛は断固として譲らなかった。
結局、凛はこの服装のまま出掛けることになった。
この日は東京で、花火大会があった。
私と凛は、東京の空に打ち上がる夢幻の花火を観るために、待ち合わせをしていた。
凛「今から向かう"特等席"からは、綺麗な花火が観られるんだよ!私しか知らない絶景スポットなんだから!」
私は凛と並んで歩いた。
道端にいる男共の視線は凛に集まり、凛が厭らしい目で見られる度に嫌な気分になった。
私は、凛の手を引いて走り出した。 凛「………次の角を左に。それからまっすぐ行って…」
海未「……ここ、凛の家ですよね…?何故ここに来たのですか…?」
凛「それはね、ここが"特等席"だからだよ!」
凛はドヤ顔でそう言った。
私は、凛の家の中にお邪魔した。
緊張して、家の中に入ってからずっと嫌な汗が止まらなかったが、凛はそんなことなど露知らず、どんどん先へと進んで行った。
海未「あの、先にご両親の方にご挨拶をしておきたいのですが」
凛「あー、今日はどっちもお出掛けしてるよ。だから今、我が家は私と海未ちゃんだけだね」
海未「え…」
緊張収まらぬまま、私は凛に連れられ、ベランダへと誘われた。 凛「ジュースとお茶とコーヒー、どれがいい?」
海未「……お酒はありますか?」
凛「私はまだ18だよ?未成年に飲酒させて、イカガワシイことでもする気?」
海未「冗談ですよ。ジュースかお茶でお願いします」
凛「コーヒーは無し、ね。オッケー分かった、適当に繕ってくるからちょっと待っててね〜」
そう言うと、凛は浴衣の裾をフリフリしながらリビングの方へ消えていった。
ベランダには、白い椅子が一つ置かれていた。
私はその椅子に座り、ベランダからの景色を眺めた。
周囲には家々が建ち並び、少し離れて、高層マンションがずらりと一列に並んでいた。
凛はこの場所を"特等席"と言っていたが、私はその言葉に疑心を抱いていた。ここから花火が観られるとはとても思えなかった。
少し待つと、凛が戻ってきた。
凛「はい、海未ちゃん。麦茶だよ」
海未「ありがとうございます」
私は立ち上がり、凛に椅子に座るよう言葉掛けた。
凛は微笑み、一言礼を述べてから、その白い椅子に座った。 海未「まだ花火は上がっていないみたいですね」
凛「打ち上がったら空気を破るような音が聴こえるから、いやでもわかると思うよ」
私は麦茶を一口啜った。
凛の方を見ると、凛は麦茶に口を付けず、俯いていた。
凛「………海未ちゃん。かよちんが新潟に行っちゃったの、知ってるよね?」
海未「ええ。花陽は確か、高校を卒業してから向こうに移ったんですよね」
凛「うん。それで、向こうに移ってからも私たち、ちょくちょくメールとか電話で交流を続けてるんだ」
凛「あ、別に大した話なんてしてないよ?日常会話、世間話とか、何気ない会話をしてるだけ」
凛「それでも、やっぱり楽しいんだよね。かよちんがトラクター暴走させて民家に突っ込んだ話とか、そんな下らない話でもすごく盛り上がれるんだ」
海未「凛と花陽は、本当に仲がいいんですね」
凛「うん、仲がいいと言うか、たぶんお互いに好きだったんだよ。"like"じゃなくて"love"の方ね。私はかよちんを愛してたんだよ」
凛「Hしたいなぁとか、めちゃくちゃに犯れたいなぁとか、そんな最低なことを考えるぐらい恋に溺れてたんだよ」
海未「……もしかして二人は、恋仲、なのですか…」
凛「どうだろう?分かんないよ…」
凛は、麦茶の入ったグラスの縁を、指でなぞりながら呟いた。 凛「私とかよちんが離れ離れになってから、もう4ヶ月も経つんだよ」
凛「その4ヶ月間、私は一回も、かよちんに会いたいと思わなかったんだ。今だってそうだもん、欠片すらないよ」
海未「メールや電話で相手の声を聞くことができるので、会えない寂しさも払拭されているのでは?」
凛「確かにそうだね。でもさ、会えなくて寂しいと思う気持ちと、会いたいと思う感情は別物だよ」
凛「本当に好きな相手だったら、例え寂しさを紛らわせても、会いたいと思う気持ちは隠せないんじゃないかな?」
海未「しかし凛は、花陽に会おうとは思わないのですね…」
凛は指でグラスをなぞるのをやめ、グラスの側面を両手で握った。
凛「ねえ………好きって、なんだろう?」
海未「………」
私は一歩近づき、腰を屈め、凛にキスをした。
向こうの空で、花火が打ち上がった。 凛は自分に何が起こっているのかしばらく理解できず、呆然と、硬直していた。
凛「…っ!」
私がキスをしてから十数秒後、ようやく現状を理解できた凛は、足をジタバタさせ、なんとかこの状況から抜け出そうと抵抗を始めた。
手に持っていたグラスが傾き、入っていた麦茶が溢れ、浴衣に染みを作った。
足掻く凛は、口を塞がれながらも言葉で何かを訴えようとし、必死の抵抗を見せた。
凛「っ………」
しかし、徐々に抵抗する力も弱くなっていった。
そして凛は目を閉じ、体を委ねた。
打ち上がった花火の光は、高層マンション群の間を抜け、私の目に飛び込んできた。
細い隙間から出てきたはずの光は、その隙間の幅の何倍にも、大きく見えた。
私たちのキスは、およそ1分半に及んだ。 唇が離れた後も、私たちは目を離さなかった。
凛はまだ理解が追いついていないようで、何かを言おうとして口を開けては、またすぐに口を噤んでいた。
私は、凛が気持ちの整理をつけるまで、花火を観ていることにした。
凛「………ねえ」
私は凛の方に見向いた。
すると、凛は目に涙を蓄えながら、こちらを見ていた。
凛「………どういう、つもりなの…?」
海未「……『好き』という気持ちを表すには、『キス』が一番効果的だと思ったんです」
凛「……それも、冗談なの…?」
海未「いいえ。私は凛のことが好きですよ」
凛「…」
凛が黙り込んでから再び口を開くまで、長い時間が掛かった。
凛「………私には、かよちんがいるから…。一人残して、私だけなんて…」
海未「………」
凛はそうやって、誰かに言い訳をしているように聞こえた。 凛と別れ、寮に戻ってから、私は指で唇をなぞってみた。
まだ唇には、その温もりが残っているような気がした。
カレンダーは、8月の終わりを告げていた。もうすぐ9月になる。
9月には新学期が始まり、そして、水コンまで残り2ヶ月を切ってしまう。
水コンのことを考えると、憂鬱な気持ちになった。
そんな時は、ことりと絵里のことを考えるようにしていた。
ことりは私の為に、衣装を作ってくれた。
絵里は私と競う為に、頑張ってい自分磨きをしている頃だろう。
私は二人の姿を想像して、自らを奮い立たせた。
『まだ水コンまでは2ヶ月もある。それまでに仕上げればいい』
私は悪魔の囁きに心奪われ、この日はそのまま横になった。 本当何が起こるか先が読めないな
それがこのssの楽しいところだけど ことりにキス出来なかったこと、会いたいという気持ち・・・もう海未は穂乃果への愛が無くなった? 穂乃果に会いに行って数日一緒に過ごして何かしら心境の変化があったのか
でも気持ちがなくなったわけではないと思うけど…
絵里海未凛がそれぞれの想い人が遠くに行って取り残された同じ境遇な感じするから
海未が凛にキスしたのは去年の水コンの時絵里が海未にキスしなさいって言ったのと似た感情だったりするのかな
そういえば女性が水滴の付いたグラスを撫でるのは誘ってるサインってどっかで見たことあるなぁ #37-b
三つの競技を終え、いよいよファイナリストが発表された。
にこ『………果たして、第68回音ノ水女子大学ミス・コンテスト、決勝ステージに進出する二人は誰なのでしょうか…!?』
にこ『それでは発表します!まず、一人目は………はいドラムロール!』
英玲奈『トゥルルルルルルルルル…ジャン!』
にこ『エントリーNo.2!佐々木ぃ!!』
Foooooooo!!!
にこ『そして!もう一人の、決勝進出者は………はいドラムロール!』
英玲奈『トゥルルルルルルルルル…ジャン!』
にこ『エントリーNo.5!園田海未ぃ!!』
Wooooooooooooo!!!
にこ『えー、今から10分間のインターバルを置き、その後、ファイナリスト2名による決勝ステージを行います!』
にこ『みんな楽しみに待っててね〜♪』
あんじゅ『で、決勝は何の競技で戦うのかしら?』
にこ『はい!今回、決勝で競ってもらうもの、それは………はいドラムロール!』
英玲奈『トゥ、トゥル………くっ!舌が攣りそうだ…!』
ツバサ『情けないわね、私が変わるわ。twrrrrrrrrrrrr…』
英玲奈『何っ!?私よりも巧いだと…っ!』
にこ『………決勝戦では料理対決をしてもらいます。お二方、すぐに準備に取り掛かってください〜』 海未「料理対決…。私は、何を作れば…」
「おい、園田」
海未「あ、去年の水コンで絵里に敗れ、準優勝だった方!どうかされましたか?」
「……なあ、どうして絢瀬は来ないんだ。去年、二人で交わしたあの約束を、忘れたって言うのか…!?」
海未「………」
「くそっ!なんでだよおおお!私は再びあいつと同じステージに立てる日を夢見て、今日まで自分磨きを続けてきたというのに!」
海未「……すみません」
「どうしてお前が謝るんだ…。はぁ、もういい」
「園田。私は料理の腕には覚えがある。ここにライバルはいないが、私は全力で優勝を狙わせてもらう。……だからお前も頑張れよ」
海未「はい」
それだけ言うと、控え室に戻っていった。
凛「あ、海未ちゃん!」
海未「凛!何故、舞台裏にいるのですか…!?」
凛「えへへ、来ちゃった」
海未「答えになってませんよ…」 凛「海未ちゃん。衣装、似合ってるよ」
海未「あ、ありがとうございます…。ことりが私のために遺してくれた、オーダーメイドの衣装ですからね」
凛「決勝戦、料理バトルみたいだけど、海未ちゃんって料理できるの?」
海未「昔は母の手伝いで台所に立つことはありましたから、それなりには。だけど、大学に入ってからは一度も包丁に触れていません…」
凛「じゃあ私が料理のコツを教えてあげるよ!まずは猫の手!というかずっと猫の手!これさえできれば何とかなるなる!」
海未「ふふふ、ありがとうございます。期待に添えるよう頑張りますね」
海未「………あ。もう時間のようです。では、私は行きますね」
凛「あっ、海未ちゃん!」
凛は私の手を取り、ギュッと握り締めた。
凛「絵里ちゃんがいなくて、海未ちゃん、ステージの上で寂しい想いしてるかもしれないけど…」
凛「でも、私がいるから。客席で応援してるから!忘れないでね」
海未「……ああ、凛は私を励ましに来てくれたんですね」
海未「大丈夫ですよ。私は、全力を尽くします」
私は凛の手を解き、ステージへと駆け上がった。 にこ『さあ、お待たせしました!これより決勝戦を行います!両者、ステージの方へお上がりください!』
海未「………」
にこ『えー、ステージ上には調理台を二人分設置し、ガス・IHコンロやオーブンに電子レンジ、各種調理器具なども取り揃えております』
にこ『作っていただく料理は自由です!食材や調味料等は冷蔵庫に入っているので、その中の物を使って美味しい料理を完成させてください!』
にこ『えー、審査方法なのですが、完成した順に料理を提供し、それを審査員の方々に実食してもらい、審査をしていただきます』
にこ『自分の得意料理を作るもよし!審査員が好きな料理を狙って作るのもよし!お好きに料理をしてください!』
ツバサ『私はハンバーグが食べたいわ』
あんじゅ『私は今フレンチの気分ね』
英玲奈『では、私はイタリアンで』
にこ『審査員の好みは見事にバラバラです。統一感なし!でもそこがA-RISEのいいところ!』
にこ『果たして、どんな料理が出てくるのでしょうか?制限時間は30分!調理、開始ぃ!!』
英玲奈『ゴーン(銅鑼の音)』 にこ『まずは両者、冷蔵庫に入っている食材を物色しています!』
海未「卵に海鮮類、野菜と…。あ、ご飯もありますね」
にこ『おっと、既に海未選手は食材を選び終えたようです。調理器具選びに移っております』
海未「まな板、包丁、ボウル、そして………」
にこ『なんと海未選手!巨大な中華鍋を調理台に運んだ!』
にこ『炒飯だ!海未選手は中華料理の定番、炒飯を作ろうとしています!』
ツバサ『あー、炒飯が食べたい。お腹空いた〜』
あんじゅ『チャイニーズも悪くないわね。お腹空いた…』
英玲奈『炒飯か。炒飯が美味い店は繁盛すると言われるように、料理の上手さの指標とされる一品だ』
英玲奈『果たして、海未はどこまで炒飯を料理できるのか、見ものだな。それにしても腹が減った』
にこ『おや?佐々木選手、海未選手の方を見てから調理器具を取りました』
にこ『こちらも中華鍋だー!こ、これはまさか、麻婆豆腐を作るつもりか!?なんと、中華に中華をぶつけてきた!』
にこ『この勝負、一体どうなっちゃうにこぉ!?』 海未「相手は麻婆ですか…。いや、今は自分のことに集中しましょう」
にこ『海未選手は冷凍ご飯をレンジに入れ、ボウルに卵を割り入れ、掻き混ぜています』
英玲奈『鍋で炒める前にご飯を温めているところがポイントだな。ご飯が炊きたてのように温かいかどうかで、出来上がりは段違いだ』
にこ『そして、佐々木選手も順調に作業を進めています!』
あんじゅ『佐々木ちゃんもご飯を温めてるわね。炭水化物ばっかり』
にこ『海未選手、ここでようやく包丁の出番のようです。まな板の上に食材を乗せて…』
にこ『おっと!海未選手、猫の手で観客席に可愛らしくポージング!魅せることを忘れないアイドル魂、今ここに!』
ツバサ『審査は料理の味で決めるけれど、今のパフォーマンスはポイントに加味したいわ。海未ちゃん、+1億点』
にこ『ちょっと。贔屓目はダメにこよ〜』 にこ『………残り時間1分!両者、最後の追い込みに入った!』
海未「中華はスピード。中華はスピード…」
にこ『豪快に鍋を振るう!振り上げられた米達はスポットライトに照らされ、金色に輝いている!美味しそう!』
にこ『おや?どうやらこちらは…』
「できたわ!」
にこ『佐々木選手、調理完了!そして制限時間は後20秒!海未選手、間に合うのか!?』
海未「天を舞え…黄金に煌めけ、我が血肉よ!」
にこ『残り10秒!9!8!7!…』
海未「………できました!」
にこ『海未選手も完成しました!これより、審査員による実食です!』
英玲奈『実食っ!』
あんじゅ『英玲奈は石橋貴明が好きなのね』 参考画像
http://imgur.com/5ELiNFm
にこ『では、先に調理を終えた佐々木選手の麻婆豆腐から食べていただきます!』
「こちら、四川麻婆豆腐です。ご飯も用意していますので、ご一緒に召し上がり下さい」
ツバサ『やっと、お昼ごはんが食べられる…!』
あんじゅ『料理審査があると聞いていたからお昼を抜いてきたけど、空腹で気が狂いそうだったのよね…』
英玲奈『よし。食べるぞ…!』
ツバサ『あーんっ。………っ!?』
英玲奈『う、美味い!なんだこの美味さは!』
あんじゅ『豆腐と味噌が絡み合って、舌の上で溶けていくわ…!やだ、なにこれ…♡』
ツバサ『美味しいわよ、これ!四川風なのにそこまで辛くないから、日本人の舌によく合う!』
「その通り!四川料理の麻婆豆腐はとにかく辛い。だから日本人の好みに合うよう調節したわ」
「この麻婆に名前をつけるなら…。そう、和風四川麻婆よ!」
ツバサ『ご飯があるのもポイント高いわよ!日本人は米が好きだもの!』
英玲奈『は、箸が止まらない…っ!鎮まれ、私の右手っ…!』
あんじゅ『あ…。もう完食しちゃったわ』
にこ『審査員、全員完食!そして大絶賛!佐々木選手にはかなりの高評価が期待できそうです!』 参考画像
http://imgur.com/F4KJBpl
にこ『さて、お次は海未選手が作った炒飯の審査です!』
海未「おあがりよ」
英玲奈『な、なんだこれは!?米が輝いているぞ!!』
ツバサ『まるで芸術品ね。いつまでも眺めていたくなるわ』
あんじゅ『素敵なカ・タ・チ♡魚介の色がいいアクセントになっているわね。食べちゃいたくなるわ♡』
にこ『早く食べてください〜』
ツバサ『あ〜………んむっ。うんうん、美味しい』
英玲奈『見た目からでも分かったが、パラパラとしていて食感は最高だな。ファーストタッチが全然違う』
あんじゅ『あむっ……あむっ…』
海未「父がよく作ってくれた炒飯を基に、この炒飯を作りました。特徴は何と言ってもこのパラパラ感!」
海未「ポイントは2つ。まず、温かいご飯と卵をボウルで混ぜ込み、馴染ませます。鍋に入れてから混ぜると卵がダマになってしまうからです」
海未「次に、卵を混ぜたご飯を中華鍋に入れた後、強火にし、豪快に振り上げます。多少こぼれても気にせず、振り続けることが大事です」
海未「柔と剛。この二つを併せ持つこの炒飯は…。まさに、米と卵の巴投げです!」
にこ『ちょっと意味が分かりませんね。おや、どうやら審査が終わったようですね。間も無く結果発表です!』 にこ『ついに、今年の水の女王が決まります…』
にこ『第68回音ノ水女子大学ミス・コンテスト!』
にこ『栄えある優勝は………はいドラムロール!』
英玲奈『twrrrrrrrrrrrr…』
ツバサ『明らかに巧くなっている…!?』
にこ『………エントリーNo.2!佐々木ぃぃぃ!!!』
Wooooooooooooooooooo!!!!!
にこ『佐々木さん。どうぞ前の方へ!』
にこ『優勝した佐々木さんに今、水の女王の証である、ティアラが贈られます』
ツバサ「おめでとう。同じUTXの出身として、心から祝福させてもらうわ」
「……ありがとう」
にこ『残念ながら優勝を逃した園田さんにも、大きな拍手を!』
Hooooooooo!!
海未「………」 凛「えーと、えーと………あ、海未ちゃ…」
「………まさか、麻婆で審査員が全員満腹になって、炒飯の味が判らなくなってるとはな」
「普通は審査できるように腹を残しておくものだろ。まったく、いい加減な審査員達だ」
海未「いえ、そんなの関係ありません。ただ私の力量不足だっただけですよ」
「……そうか。園田がそう言うなら、私もこれ以上は言わねえ。ありがたく勝ちは貰っておく」
「だけど…。お前の炒飯、美味かったよ」
海未「ありがとうございます」
「………どうしてだろうな。念願の優勝を果たしたっていうのに、心がスッキリしないんだ」
「この一年間、ずっと体のどこかに何かがつっかえたままなんだ」
「たぶん、私はこの先一生、このつっかえと共に生きていくんだろうな」
海未「………」
彼女が立ち去る姿を、私は見届けた。
凛「……ねえ、海未ちゃん」
海未「なんですか?」
凛「……よく頑張ったよ。お疲れさま」
私は凛と共に、キャンパスを後にした。
寮に戻った私は、自分の郵便受けの中を見た。
そこに何も入っていないことを確認し、部屋へと戻った。
準優勝のタスキを机に放り投げ、私はベッドにダイブした。
それから眠りに就くまで、それほど時間は掛からなかった。 #36
それは10月中旬のこと。
絵里の誕生日から、ちょうど七日前の話。
その日、私はふと、絵里の誕生日が近づいていることを思い出した。
絵里には日頃からお世話になっていることもあり、その感謝の想いを伝えるためにも、絵里の誕生を祝おうと思い立った。
まず私は絵里に電話を掛けた。
今年も絵里の誕生会が開かれるのかを本人に確認するためだ。
しかし、絵里は電話に出なかった。
私は、そういえばいつ以来か、絵里と電話で会話をしていなかったことに気づいた。
電話を諦めた私は、絵里にメールを送ることにした。
しかし、何度メールを送っても、エラーメッセージが表示されるばかりだった。
私は絵里のメールアドレスが正しいことを確認し、メールを送り直した。
しかし結局、メールを送ることはできなかった。
私は連絡のつかない絵里のことが心配になり、絵里の家に行こうと思い立ち、部屋を飛び出した。
私が部屋の扉を勢いよく開けると、その衝撃で、扉の隙間に挟まれていた手紙がぽとりと落ちた。
手紙は白い封書に包まれていたが、私はそれが手紙であるとすぐにわかった。
私はその手紙を拾いあげた。
宛名はどこにも書かれていなかったが、右下の隅の方に、『from Eli』と黒インクで書かれていた。
私は封を解き、手紙を開いた。 海未へ。
私はある、重大な決断をしました。
そのことを我が後輩である海未に伝えるために、こうやって筆を執った次第です。
こうして手紙での報告となってしまい、本当にごめんなさい
#1
私は音ノ水を辞めることにしました。
そして私は、希の元へ行くことにしました。
音ノ水を退学し、希が待つユニバース大学へ行きます。
唐突な話で海未も戸惑っていることでしょう。ですが、これは既に決まったことです。もう誰にも止められません。
#2
ここ、ユニバース大学はとても素晴らしい所です。海未にもこの感動を伝えてあげたいです。
海や山や森などの広大な自然に囲まれ、神秘的な遺跡群や芸術的な建造物が建ち並ぶこの場所には、総てがあります。
ここに居るだけで、心が解き放たれ、許されたような気分になれます。
私は今、幸せです。
#3
水コン、私は参加できません。ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
私は海未のこと、応援しています。頑張ってください。
私の分まで、頑張ってください。
海未ならきっと、優勝できると思います。
#4
私のこと、怒ってますか?ごめんなさい 海未「…」
読後、私は部屋の中に戻り、手紙を破り捨てた。
それから、携帯に入っている彼女の連絡先を削除し、ベッドの上に寝転んだ。
私は手紙のことを考えた。
手紙は、扉の隙間に挟まれていた。手紙を挟んだのは絵里なのだろうか。
絵里からの手紙に書かれてあった字は、穂乃果からの手紙に書かれていた字とよく似ていた。手書きの文字がここまで似ることなどあり得るのだろうか。
私は絵里のことを考えた。
絵里は前に、希から定期的に手紙が送られてくると言っていた。その手紙の中には、何が書かれていたのだろう。
手紙を挟んだのが絵里本人ならば、彼女はまだ旅立つ前なのだろうか。
いや、絵里はもういない。手紙の内容から見るに、絵里は既に旅立った後だろう。
私はもう、絵里と話すことはできないのだ。
私は仰向けに寝転びながら、意識の世界で、絵里を犯した。
絵里は私に犯されている間、表情一つ変えなかった。
私はようやく、絵里が遺したメッセージに気づくことができた。 登場人物みんなどっかおかしいな
タチの悪いアンジャッシュを見てるような歪みを感じる 急展開すぎて見逃してたかと思ったわ
希と絵里の現状が本当謎 穂乃果といい希といいエリチといい
洗脳されてるみたいで怖い 絵里ちゃんに一体何があったのか…
手紙の文字がヒント? 話の持って行き方から何から色々うまくて惹き込まれる。
手紙こええ 妄想だけど無表情で自分に犯される絵里を見て何かに気付いたのか?
というか絵里もそういう対象として見てはいたんだな もっと園田が狂ったように穂乃果を求めるタイプのSSだと思って開いたら迷宮に迷い混んだでござる… #38
季節はいつの間にか、冬になっていた。
朝、私は毛布にくるまりながら部屋の中を跳ね回り、テレビを付けた。
気象予報士は、『今年もホワイトクリスマスは期待できない』と嘆いていた。
私は毛布を身体に巻いたまま朝食を済ませ、身支度を整えた。
迎えが来たのは、正午前のこと。
海未「おはようございます。お父様」
「海未。おはよう」
海未「……では、行きましょうか」
「ああ」
私たちは寮を出た。
父は私の服装を見て、「寒くないか?」と尋ねた。
私は父の腕に抱きつき、「寒くありません」と答えた。
しかし、私が寒さに弱いことを知っている父は、自分が着ていたコートを私に被せてくれた。
私は父のコートに身を包み、手を繋いで歩いた。 私たちはレストランで昼食をとり、近くの公園を二人で散歩した。
取り留めもない話を交わしていると、コンサート開演の時間が近づいてきたので、私たちはコンサートホールに向かった。
コートを預け、会場へと足を踏み入れた。
海未「14:00から開演なので、もうすぐですね」
「今日のコンサートに、海未の友達が出演するんだったな?」
海未「はい。パンフレットによると、順番は一番最後のようですね。トリを任されるとは、真姫はやはりすごいです」
間も無く、コンサートが開演した。
演奏者がステージに現れ、椅子に座り、高さを調整してから座り直し、楽譜を広げ、客席に視線を飛ばした。
弾き奏でられた曲は"Hedwig's Theme"だった。
私が小学生の頃、両親に連れられやって来た映画館で観た『ハリーポッターと賢者の石』。
その記憶が、この曲によって呼び起こされた。
演奏終了後、客席からは絶え間ない拍手が送られた。
参考動画
https://youtu.be/GTXBLyp7_Dw 海未「お父様は、クラシックなどお聴きになりますか?」
「普段はあまり聴くことはないな」
海未「そうですか。私は曲の勉強のために、一時期聴き込んでいたので、知識は程々にありますよ」
「そうか。だが、海未達の曲でクラシック調だったものなどあっただろうか?」
海未「……まあ、作曲は私ではなかったので…」
開演から1時間。
いよいよ、このコンサートのトリとなる、真姫の演奏が始まろうとしていた。
海未「………」
しかし、いつまで経っても、真姫は現れなかった。
「何かあったのか?」
海未「わかりません…」
しばらくして、ピアノサークルの部長を名乗る人がステージに立ち、他の部員との連弾を始めた。
会場はどよめいたが、次第に曲に聴き入り、また静まり返った。
連弾が終わると、サークル部員が礼をし、それでコンサートは終わった。 コンサート終了後、観客の波に乗って、私たちも会場外へと出た。
海未「すみません…。一番観て欲しかった演目が、中止になってしまつたようで」
「仕方あるまい。その友達にも、何か出演できないような事情があったんだろう」
海未「事情…」
「だが、海未の友達に何かあったと思うと心配だな。連絡がつくなら、その事情を聞いてみたらどうだ?」
私は頷き、真姫に電話を掛けた。
電話は繋がらなかった。
私はメールを送ろうとした。
しかし送れなかった。
私は父親と別れ、寮へと戻った。 #39
海未へ。
私はこの町から、私たちの思い出の場所から、離れることにしました。
海未がこの手紙を読んでいる頃には、きっともう、私はいないでしょう。
なので最期に、この手紙をあなたに託します。
私が狂ったのは12月の頭のことでした。いえ、もっと前から狂っていました。
例えば、アナログ時計が狂ったとして、その原因は何なのかと考えた時に、まず何を思い浮かべますか?
ゼンマイがおかしいのか、はたまた電池の消耗か。
何にせよ、時計屋さんに行けばその原因は解ります。「あ、この時計はゼンマイが壊れているんだな」と、いったように。
でも、私の場合、私が狂った原因なんて、果たして誰が解明してくれますか?
時計屋さんは何も答えてはくれません。お医者さんもまた、俯いたまま、両手を挙げて降参してしまうのです。
私は何がおかしいのでしょうか。頭?体?心?それとも外的な何か?
自分のことは自分が一番理解しているなんてこと、絶対にあり得ません。かつて医者を目指した人間として、それはよくわかります。
しかし、私以外に私を理解している人がいないのも、どうしようもない現実なんです。
だから、私は私が辿って着た変遷を淡々と連ねてみることにします。
そうしたらきっと、私が狂った原因が解るかもしれません。いや、解らないくても構いません。
それでも、書き連ねるしかないのです。 大学に入学した
サークルに入った
友達ができた
友達の薦めでピアノの講師を始めた
生徒は可愛い女の子だった
その子はピアノが上手だった
私はその子の音色に聴き惚れた
ダメだった
その子は狂っていた
その子は私に迫ってきた
一度だけキスをした
私は生徒と教師の関係で居たかった
でもその子は肉体関係を求めてきた
私は拒んだ
本当に?
知らない
私はその子に何をした?
知らない知らない知らない
何度も殴った?
何度も抱き合った?
わからない
でもね、これだけはわかるよ
私も既に、狂っていたんだ。
ねえ、私はどうして、狂ったの? 海未「………」
手紙はそこで終わっていた。
私がこの手紙を見つけたのは、クリスマスから数日後のこと。
白い封書に入った手紙は、ポツンと、私の部屋の机の上に置かれていた。
『まき』とだけ書かれた差出人の欄は、ひどく汚れていた。
読み終えた後、私はそれを封書ごと破り捨てた。
私は、先日に、真姫の両親から電話が掛かってきていたことを思い出した。
真姫の父親は「真姫を知らないか?」と、切羽詰まった声色で尋ねてきた。
この手紙を読む前の私は、「知らない」と答えた。
真姫の両親は、「そうか…」と、私がそう答えるのを予感していたように、気の抜けた声を漏らした。
話によると、真姫がいなくなったのは、クリスマスイブのこと。
その日、家を出たきり連絡のつかなくなった真姫を心配し、何か出掛け先の手掛かりでもないかと、真姫の部屋に入ったそうだ。
部屋の扉を開けた両親は、驚いた。
部屋の中にはアルコールの臭いが充満し、床には大量の空き缶が転がっていたからだ。 今度はまきちゃんまで…
てっきりくると思ってたが37-aは欠番なのか 今残ってるのは海未と凛とにこだけ?
おっ見覚えのあるコンビ 真姫ちゃんは生徒の押しに負けて手出しちゃったのかな この手紙を読んだ貴方
どうか真相を解き明かしてください
それだけが私の希やんね じゃあ手紙遺した二人はもう…
各学年で親友の喪失に耐えられない子と立ち直れる子で対比されてるのかな 絵里はミスコン前真姫は発表会前に失踪…それぞれどこに行っちゃったんだろう
絵里は去年のミスコンで優勝したけど結局希には振り向いて貰えなくて出場する意味見失ったとかかな
真姫は教え子に手を出した罪悪感でピアノに向きあうのが怖くなったとか
絵里の手紙に遺されたメッセージってのがいくら考えてもわからない そうか春樹ワールドだったか納得
とらえようのない狂気と支離滅裂さの正体が一気にわかって興醒めちゃった >>146
じゃあ黙って消えてろカス
2chの1レスまで自己顕示してんじゃねえ ノルウェイの森読んだの20年くらい前だから内容良く覚えてないわ
元ネタ通りなら真姫は生き残れるな #41
冬休みが明ける前日。
どこからか、電話が掛かってきた。
海未「もしもし…?」
『あ、もしもし!海未ちゃん〜!』
海未「えっ…」
私は聴き覚えのあるその声に、思わずたじろいだ。
海未「……希、ですか…?」
『そうそう、ちゃんと覚えててくれたんやね。海未ちゃんは偉いなぁ』
海未「忘れるわけないじゃないですか!高校の頃から変わらず快活な声で…、ほんと、希は全然変わっていませんね」
『あはは!よく言われるなぁ、そのセリフ』
海未「……で、今まで全く連絡のつかなかった希は、今どこにいるんですか?」
『さあ、どこだろうね?』
海未「私に訊かないでくださいよ。答えはあなたが持っているんでしょう」
『そうやね。じゃあ今うちは、駅前にいます!海未ちゃんの家の前にいます!海未ちゃんの部屋の前に…』
海未「希はいつも、そうやって都合の悪い話を茶化すんですから」
『冗談冗談!そんなカッカせんといてよ〜』 『ねえ海未ちゃん。大学の方はどない?』
海未「まあ、ぼちぼちと言ったところですね」
『そっかそっか。好きな人はできた?』
海未「ええ。大学に入る前から想いを寄せていましたが」
『へー。それってもしかして…』
海未「穂の…
『凛ちゃんのことやろ!』
海未「………何故ここで凛の名前が出て来るんですか?私が好きなのは…」
『なあ、海未ちゃん。もう惚けるのはやめにしよう?』
海未「さっきから、何を言ってるんですか…」
『海未ちゃんは凛ちゃんのことが好き。海未ちゃんも、ほんとは分かってるんでしょ?』
海未「いや、ですから!私は穂乃果のことが…」
『……穂乃果ちゃんを言い訳に使うの、見苦しいよ。そんなん、穂乃果ちゃんが可哀想や』
海未「っ!」
『海未ちゃん。そろそろ、素直になってもいいんよ…?』
海未「………」 海未「……どうして、私の想い人は凛だと思ったのですか?」
『そんなん、見てたらわかるよ。凛ちゃんと話す時だけ、いつも鼻の下伸ばしてたし』
海未「伸ばしてません!それだけは断言します!」
『あとほら、そこの机の上にあるラーメン消しゴム。それ、凛ちゃんからのプレゼントだよね。好きな子からのプレゼントだから大事そうに保管してるんでしょ?』
海未「え…?どうして、希は私の部屋にある物の配置を知ってるんですか…?」
『さて、なんでやろう?』
海未「……希!あなた今、どこにいるんですか!?」
『あはは、うちは海未ちゃんのすぐ傍にいるよ』
海未「すぐ傍に…?」
私は部屋中を見回した。
しかし、もちろんそこに希の姿などなかった。
『話を戻すけど、海未ちゃんは本当の気持ちに気付いてるはずだよ』
海未「……私には、よく分かりません…。私は穂乃果ではなく、凛のことが好きなのですか…?」
『答えは海未ちゃんが持ってるんでしょ?うちは答えを出してはあげられないんよ』
海未「私の、好きな人…」
『ふふ、またいつか、その答えを聞かせてな』
そこで通話は途絶えた。 #EFBE
穂乃果「……久しぶりっ!海未ちゃん」
海未「ご無沙汰しております、穂乃果」
穂乃果「どう?冬の京都っていうのも、また乙なものでしょ」
海未「そうですね。京都という町は四季折々、様々な顔を見せてくれます」
穂乃果「ほら、今日は穂乃果が京都を案内してあげるから、ちゃんと付いて来てよ!」
海未「あ、待ってくださいよ!穂乃果〜!」 穂乃果「海未ちゃん。着いたよ!」
海未「……ここは?」
穂乃果「見てわからない?法隆寺だよ!」
海未「法隆寺…?今日は京都の観光をするのではなかったのですか?」
穂乃果「もう、何言ってるのさ海未ちゃん〜。ここは京都だよ」
海未「ですが、法隆寺は確か奈良にあったはずです」
穂乃果「あはは。今日の海未ちゃんは面白いこと言うね!法隆寺は京都にある寺院だよ」
海未「え…?」
海未「……ああ、そうでしたね。私が間違っていました。すみません」
穂乃果「謝らなくてもいいよ。それより、ここも過ぎちゃったし、次の場所に行こう!」 穂乃果「海未ちゃんー!早く早く〜!」
海未「穂乃果は歩く速度が速すぎますよ…」
穂乃果「ねえ、見て見て!足下を川が流れてるよ!」
海未「わぁ、綺麗ですね…。こんな絶景、今まで一度も観たことありません!」
穂乃果「この川、どこまで流れてるんだと思う?」
海未「海まで、ですかね?」
穂乃果「そうかもね。でも、たぶん、果てなんてないと思うよ」
海未「果てがない?つまり、この川はグルグルと周っているということですか?」
穂乃果「本当のところは分からないけどね。そういうことは誰かが足で調べないとはっきりしないから」
海未「では、誰が調べるんですか?」
穂乃果「誰かだよ。少なくとも、私じゃないだろうね」 穂乃果「………はい、到着!ここからは、夜の闇に輝く摩天楼が見られるんだ」
海未「これが100万ドルの夜景ですか…。すごいです、圧倒されてしまいますね」
穂乃果「綺麗だよね…。ほんと、嫌になるくらい輝いてる…」
穂乃果「でも、この輝きはいつまでも続かない。……一つ、また一つ。光が消えていく」
穂乃果「もうすぐ12時だ…」
海未「……穂乃果?」
穂乃果「ありがとう、海未ちゃん…。私もう、いかなきゃ…」
海未「っ…」
海未「……『いかないで』と言えば、あなたは離れないでいてくれますか?」
穂乃果「ごめんね…。でも、そう思ってもらえて、すごく嬉しいよ」
穂乃果「私の人生、無駄じゃなかったんだって実感できた。もう思い残すことは何もないや」
穂乃果「……いや、心残りはまだあったね」
穂乃果は晴れない表情で、壁に背を預けた。
穂乃果「………結局、海未ちゃんは最期の最後まで、『好き』って言ってくれなかったね…」
海未「………はい」
穂乃果「それに…。海未ちゃんとの約束、守れなかった…」
穂乃果「他にも、まだまだやりたいことがあったよ…。私の人生、後悔でいっぱいだ………」
私は何も言わず、穂乃果を抱き締めた。
吹きつける微風に飛ばされてしまわないよう、強く強く、抱き締めた。
穂乃果の肌から伝わってくる感触は、とても硬く、とても冷たかった。
数日後。私の元に、穂乃果の訃報を報せる手紙が届いた。 乙
もう終わるのか…わからないことだらけだ
希の電話や穂乃果と会ったのは現実なのかな カプ目当てで見てた訳じゃないけどほのうみに見せ掛けてうみりんになるんか ドロドロ演出のためなら嫌だけどそういう趣旨のssじゃないと思うが気になる人は気になるのか
擁護するなら途中から気持ちは凛に向いてても穂乃果の最期までは恋人であり続けたから、凛にキスしたとはいえ誠意は感じるし当て馬的な要素もないと思う
はっきりとは書かれてないけど穂乃果はおそらく精神的な病だし、海未自身も母親の死で一時期おかしくなってた
夏に会いに行ったときの感じだと一緒にいるだけで辛くて仕方なかったと思うよ ええええ
最初はスレタイだけ見て何気なく開いたスレだったけど思えば大変なところに迷い込んだものだ… #
私は東京を離れ、新潟に行き着いた。
無人の駅で降り、宛てもなく歩くことにした。
あれからどれぐらいの時間が経ったのだろう。
廃人になった私は、何日も何日も、痩せ細った体で彷徨い続けている。
穂乃果の訃報が届いた後、私は深い悲しみに閉ざされ、涙を流した。
母が亡くなった時にも流さなかった涙が溢れてきた。
穂乃果が死んだ。
その現実はあまりにも辛く、私を苦しめた。
泣いて、泣いて、泣いた。
いつしか涙は枯れ、乾いた部屋には私の嗚咽だけが残った。
私は、この部屋から、この町から、この世界から逃げたくなった。
そして、部屋を飛び出した。 私は田園の中を、ただただ歩き続けた。
どこに行き着くわけでもなく、何かから逃げるように、歩き続けた。
陽に当てられ身体は火照り、疲れで足元が覚束ず、空腹に襲われ意識が朦朧としていた。
私は、田園の中で倒れた。
周りを囲う背の高い稲達は、風が通る度に大きく靡いている。
薄れゆく意識の中で、そんな光景だけが目に映った。
誰かが、私を見下ろしている………
逆光でその姿を捉えることはできなかったが、確かに、そこには誰かが居た。
その人は倒れた私の側まで寄ると、その場で屈み込み、私の頰を撫でた。
「………久しぶりだね、海未ちゃん」
そこで私の意識は途絶えた。 目が覚めると、私はどこかの家の部屋で寝ていた。
すぐに身体を起こし、辺りを見回す。
しかし、この家の中には人っ子一人いないようだった。
私は畳の上を這いずり、外へと繋がるベランダに出た。
ベランダからは、一面に広がる稲畑が眺められた。恐らくこの家の主は、稲作を生業にしている人なのだろう。
私は改めて、部屋の中を見回してみた。
ちゃぶ台の上には麦茶とおにぎりが置かれていた。
私は、少し緩くなった麦茶を喉に流し込み、炊きたてホカホカのおにぎりを頬張った。
実に、一週間ぶりの摂食だった。
食器を台所に置き、私はその家を立ち去った。
ちゃぶ台の上に、詩を残して。 #
新潟から帰った私は、寄り道せず真っ直ぐアパートへと戻った。
部屋に入り、靴を脱ぎ、クーラーをつけ、ベッドに腰を下ろした。
私が道具を確認していると、部屋の呼び鈴が鳴った。
私は膝に手をつき、体勢を前に倒し、掛け声と共に立ち上がった。
部屋の扉を開けると、そこには旧友の姿があった。
ことり「ボンジュール!海未ちゃん」
海未「ことり…。お久しぶりです、もういつ以来でしょうか…?」
ことり「さあね?それより海未ちゃん。はい、これお土産ね」
海未「ありがとうございます」
そのお土産は、凱旋門にエッフェル塔が突き刺さった、奇抜なデザインのチョコレートだった。 私はことりを部屋に通した。
私はベッドに座り、ことりはソファに座った。
ことり「……手紙、読んだよ。大体のことは把握できた」
海未「そうですか。……しかし、まさかことりが、私を訪ねに来るとは思いませんでした」
ことり「ずっと、話してなかったからね。たまにはこうやって会っておかないと、私たちいつか、永遠に会えなくなっちゃう」
海未「……そうですね」
ことりは私の横に座った。
ことり「私たち三人ってさ、どうして出会ったんだと思う?」
海未「ただの巡り合わせですよ」
ことり「なるほどね。でもさ、出会った後、私たちはずっと一緒だった。学校でも休みの日でもいつでも」
ことり「まるで、私たちを糸が繋いでるみたいだね」
ことり「………いや、鎖かな。幼馴染で、腐れ縁。私たちは鎖で繋がれて、離れられないよう捕らえられていたのかも」
海未「それだけ、私たちが親密であったということですよ」
ことり「………私たちはたぶん、近すぎたんだよ。だから、みんなダメになっちゃったんだ…」
ことり「私は鎖を断ち、大空へと飛び去ったけど…。海未ちゃんはずっと、鎖に繋がれたままだったんだよね」
海未「そう、なりますね」
ことり「ねえ、どうして生きてるの?」
海未「………私にとって鎖は、足枷ではないんです」
海未「今までは三人で結ばれて、歩き辛かったですけど…。でも、鎖が一つが断たれたことで、私たちは二人三脚で歩き出すことができました」
ことり「……そっか。海未ちゃんはほんと、強いね」 海未「ことり。よければ今日は泊まっていきませんか?ホテルに予約してあるのなら、無理にとは言いませんが」
ことり「うん、お言葉に甘えさせてもらうね。というより、元からそのつもりで来てるから」
海未「ふふふ。では、夕ご飯の支度をするので手伝ってください」
私たちは二人で夕食を作り、食べた。
そして寝た。
私たちは服を脱ぎ、全裸になってからベッドに倒れ、キスをした。
ことりのはとても柔らかく、蕩けるような感触だった。
先端は次第に硬くなり、指で摘まむと、ことりの体は大きく反応した。
私がことりの汗を舐め取る度に、ことりは甘い声を漏らした。
身体は火照り、熱を帯びていた。
私たちは汗が止まらなくなっていた。なので、お互いの汗を舐め合った。
私たちは犬のように、お互いがお互いを貪り合った。
舌が当たることで、私の中の何かが昂ぶっていくのを感じた。
私は指で、ことりの中を掻き混ぜた。
ことりは甘い声を出しながらベッドの上で仰け反り、5回、痙攣を起こした。
私たちは抱き合った。抱くことで、お互いの存在を確かめ合った。 ことり「……じゃあ、私は向こうに帰るね」
海未「はい。お気をつけて」
ことり「………」
ことりは俯きながら呟いた。
ことり「……もし、私が鎖を断っていなかったら…。私たちの関係は、どうなってたんだろう…?」
海未「たらればの話はやめましょう。キリがありません」
ことり「うん、そうだよね。私も、今を生きることにするよ」
海未「ええ。また元気な姿をお見せしてくださいね」
ことり「……バイバイ、海未ちゃん」
海未「さようなら。ことり」
ことりは、元いた場所に帰っていった。
私はその跡を見送った。 #
『……もしもし、海未ちゃん?』
海未「凛…ですか。どうかしましたか?」
『どうかしたもこうもないよ!ずっと連絡も寄越さずに、一体今まで何をしてたの?』
海未「すみません…。こちらも少しバタバタとしていまして」
『ふーん。まあ忙しいのは分かるけどね。でもさ、それでも連絡ぐらいしてくれたっていいでしょ?』
『こっちから電話しても全然出ないし、あんまり私に心配かけないでよね。分かった?』
海未「……はい」
『ねえ、今どこにいるの?』
海未「………」
「ここはどこ…?」 え?終わり?・・・え?
解説下さい・・・
今度は海未がどこか別世界へ来ちゃったって事? どこだっけ?って簡単に言えないくらい怖いんですけど
どうなったんこれ おつ
読んでておもしろいと感じたし雰囲気は凄く好きだけど内容は全く理解できなかった
どこまでが現実でどこまでが妄想なのかとか
えりまきは結局どうなったのかとか
希はなぜ絵里に会おうとしなかったのかとか
花陽と会って海未がアパートに戻った理由はなんなのかとか
想像力を働かせろって作品なのかな
37-aと40が飛んでるけど何か理由が隠されてるのかな
ノルウェイの森に似てるらしいけど読めば何かしらわかるんだろうか… ???どういうこと?
ユニバース大学って何か関係あったの?
まきちゃんって結局どうなった?
海未ちゃんは誰のことが好きなの?
でなんでこの状況になったの?
質問たくさんしてすみません こ、ここで終わり?!
とりあえず、まずはお疲れ様でした
これって解説いただけるのかな?
もしいただけるなら欲しいし、空白の章の補填?も欲しいな
頭が追いつかないことばかりだ 実は何も考えておらず思いつきで書いていって収拾つかなくなって丸投げオチ? 自分なりの解釈で伏線回収しつつ
キャラクターのその後も想像しつつ
続きを書いてみたいのですが乗っ取りいいですか? >>201
いずれ、主が続き出してくれるから我慢しとけ >>200
の割にはオチが絶妙だな
続きに期待だな >>201
後日談的な物があるかもしれんし、エタならまだしも>>1がそこで終わりにしたなら余計なことするな 海未ちゃんは穂乃果ちゃんが死んで良かったって思ってるって事?鎖の一つって穂乃果ちゃんの事よね? 絶った鎖はことりのことでほのうみはまだ鎖で繋がれてるんじゃないかと思ったけどそれだとちょっとおかしいかな?
最後凛ちゃんと海未ちゃんは付き合ってるのかね 面白かったけど全く理解できなかった
序盤あれほど穂乃果に拘った海未が終盤には凛やことりと体の関係を持ったこともいきなり出て来た希の意味もわからないことだらけだ 全然的外れかもしれないけど
ユニバース大学=死んで地球と一体化的な意味だったのかな
森での希の写真が海未の知ってる姿と寸分違わないってのは最期に会ったときから時間が進んでない
つまりとっくに希はこの世にいなくて写真と手紙だけが時間差で絵里の元に送られてたとか
その事に気付いて自分もユニバース大学に行く=後追い自殺ってことで
表情が変わらないのはすでにこの世にいないと気付いたからで遺したメッセージは遺言って意味なのか
希の電話は妄想だと思うけど絵里や真姫の手紙を海未の部屋まで持ってきたのは誰なんだ
ほのかからの手紙は郵便受けに入ってたみたいだけど
穂乃果の日記はとても字がかける状態じゃなかったこと現してたとするなら誰かが代筆しててその字が絵里の手紙ともそっくりだったんだよな
あるいは手紙は海未が全部自分で書いてたとか
母親の死を受け入れられなかった時みたいに一時的な記憶喪失になっててその前に記憶整理のために自分で書き残してたとか
考えれば考えるほどわからなくなるな
ワガママだけどやっぱり解説は欲しいかもしれない
EFBEはビートルズのノルウェイの森のコード進行とか?海未が読んでた小説はたぶんそうだし意図的に意識して書いてるってことなのか
だとしたらやっぱりみんな自殺なのかな
雪穂や亜里沙がどうなったのかも気になる ノルウェイの森読んだことないんだけど
どれくらい似てるの?
読んだことある人教えて 「ここはどこ…?」
待って言わないで わかってる… 夢で見た
…夢オチ? >>212
・彼女が精神病で京都の山奥の施設で療養
・その間に大学の活発で明るい性格の女の子と仲良くなって意識しだす
・彼女のルームメイトは過去にピアノを教えていて教え子に手を出して精神を病む
・彼女が死ぬ。傷心してボロボロになるまで一人旅
・彼女の元ルームメイトとヤケS○X
・僕はどこにいるのだ?で終わる
思い出したのでこんだけ
前半は結構オリジナル路線だったけど後半の流れは大体一緒 >>212
全体的にわけのわからないところ
作者やハルキスト的には作中のメタファーとか色々読み取れよってことなんだけど
読み終えた後でそんな気もおきない虚脱感
こういう話はその場で独特の雰囲気だけを楽しむものと割り切ってる >>214
そこまで一緒ならもう完全にそれやな
そうなるともう完結したんや 当時のファッションサブカル層の必携書だったなノルウェイの森
解説とか求めるのは野暮ってもの
あ、ssは面白かったです >>217
当時は考察とかされまくったんだろうな
今ってそういう作品流行らんよね
解説求めるのは違ったか
絵里は結局自殺なのか希を探しにいっただけなのか
理由はやっぱりみんな自分の近くから去っていくのが寂しくてなのかな
口では応援してたことりの留学もそうだし亜里沙が雪穂と一緒に遠くの大学に行くことも
誕生日の直前にってのは祝ってもらったら余計寂しくなるからなのか祝ってもらえないかもと不安になったからなのか
遺されたメッセージってのだけがいくら考えてもわからない 春樹ワールドで主人公の行動がよく分からなかったりやたらセックスしたり
周りの人間が唐突に居なくなったりするのは全部仕様だから 1です
#40が抜けてるのはミスです…
元々は#40で穂乃果に会って、#41で希と電話、#42で訃報という流れだったけど直前で順番入れ替えた
その際に#の数字を変え忘れてただけです、すみません 40はミスってことは37aは意図的に隠されてるのね 本当は50話まで想定してたけど忙しくなったので何話か省略してる
元ネタはノルウェイの森なので大方のストーリーはそちらを読んでもらえれば
省略しすぎて訳わかんないので軽く解説
・どこか遠くにいく(逝く)→死んでる
・電話やメール(電波バリ3)が繋がらない→死んでる
・手紙の文字が同じ→海未の自演
・手紙がいつの間にか部屋に→海未の自演
・希が絵里に送った手紙→絵里の自演
新潟に行った海未が花陽と会うのは、穂乃果が死んでから数十年後で
ことりとヤルのも数十年後の話(一応伏線張ったつもりだったけど判りづらかったね)
後書きはしないので質問があるなら受け付ける 写真は絵里が合成で作ってたのか
希が死んだ理由と絵里があのタイミングで後を追った理由が知りたい あと絵里が遺したメッセージがなんなのかも
連投ごめん 穂乃果の訃報が届いてから新潟行って花陽に会って、でもその間に数十年経ってるってどういう事?
どこかで死んだのかと思ったけど生きてるはず?のことりちゃんとヤッてるし… 希が死んでた事は絵里以外知らなかった?
同じように絵里が死んだこと佐々木は知らなかったみたいだし真姫の両親は真姫の死を知らなかったっぽいけど
海未だけは知ってるってのは最期に挨拶かなんかしに来てその時の言葉を手紙として自演で書いてた?
海未が死なずにすんだのは凛がいたからで絵里が死んだのは海未に拒否されたから?
読み返してるとどんどん疑問わいてくる
もっと考えまとめてから質問すればよかった >>226
元ネタ通り自殺
絵里は希(妄想)と誕生会を開くため後追い
メッセージは手紙云々のこと
>>228
穂乃果が亡くなるとこまでが現在海未の回想で、新潟に行ったところからは現在の話
廃人(俳人)になった海未は数十年前に亡くなった穂乃果のことを思い出しながら新潟散歩、助けてくれた花陽に詩のお返し
学生寮じゃなくアパートに帰ってる→既に大学を卒業してる >>229
海未が母の死を認めなかったように他の人も死を見て見ぬ振りしてる
でも海未は母の死を認識したので死に近づいた…云々
つまり死はいつも傍にいたってこと 海未ちゃんが自分で書いた手紙だったのか…
月日の流れやμ'sのみんなが生き生き(死んでるけど)してて最後まで不思議で面白かった!更新を待ちわびる毎日は楽しかったです!
村上春樹自体読んだことないけどこういう不思議な世界に興味を持ったから読んでみるよ >>230>>231
あ〜…向こうで誕生日会ってことか、その発想がなぜか出てこなかった
希の手紙が絵里の自演って事に気付いて穂乃果と絵里の手紙もうすうす自分の自演だって理解しつつあったってことかな
みんな狂ってるって誰かが書いてたけどそれが正解だったか
色々スッキリした、解説してくれてどうもありがとう 絵里が小さいのは騎士団長殺しのミニ騎士団長的なあれかと思った 絵里が縮んだのは、まだストーリーの方向が決まってない頃に考えてた話の伏線みたいなもの
回収するタイミングなくしちゃって放置してた
要するに本編とは関係ない小ネタなので気にしないで 数十年後って・・・理事長と海未母のセックスみたいなもんかよ
オエッ ハルキは死ぬほど嫌いなのにμ'sに置き換えただけでスッと心に響く 割と最初の頃から追って見てたけど面白かった。
元ネタが村上春樹だとは思わなかったし、元ネタの方を知らないからなんともいえんけど終始不気味な雰囲気のSSだった。
>>1的には村上春樹はノルウェイの森で何を表現したかったんだと思う?
そして、これをμVsでやった意図は?純粋な興味での質問 ノルウェイの森はあくまで元ネタで、ストーリーをそのままなぞった訳じゃないないってこと?
友人(穂乃果)自殺→友人の彼女(ことり)施設へ→面会へ行く→施設入所中のピアノ講師(真姫)とも知り合いになる
→ことり大洪水で海未とSEX→ことり自殺→真姫が社会復帰すると挨拶に来てSEX
って流れだったと記憶してるんだけど。 凛(後輩)と結ばれるのと絵里(先輩の彼女)が自殺するのは共通してるのか ちなみにだけど、
小説に出てくる人物のレイコさんを文字ったのがk子さんです
個人的に一番好きな登場人物(熟女趣味とかではない) のぞみってなんで何で死んだの?
あとまきちゃんの狂って死んだ理由は?
返答お願いします >>239
村上春樹が表現したかったもの…?
あえて言うなら生と死、かな
主人公の周りの人達が次々と消えていって、主人公は死について考えざるを得なくなる
そして死を恐れ、生を実感するためにセックスしまくってたのかな…
正直深く理解できてないからよくわからん、特に直子の性事情関連はいまだに答えが出ない
μ'sでやった理由は、単純にこの小説の世界観に惚れ込んだのと、
卒業してから徐々にメンバーと会う機会が減って、みんな一人で生きていくようになるんだろうなという妄想をノルウェイの森に当てたというだけのこと 面白かったよ
よかったらオリジナル展開でも書いてみて >>240
大体そんな感じ
施設に行ってる間に、寮のかしこい先輩(絵里)に女を口説いてヤル方法を学び、あとドイツ語の授業が同じのボーイッシュな後輩(凛)と出会う
>>243
希に関してはご想像にお任せする
真姫は…信じてた生徒に裏切られて穢され、耐えられなくなって、酒に溺れて現実逃避したってところかな オリジナルかはわからないけどまた秋にでも別のSS書く予定
これを教訓に今度はちゃんと書き溜めてからにする 本当に乙
ハルキって村松治樹しか知らんけどよかったよ 西川遥輝なら知ってるんだが
それはともかく、元ネタは読んだことなかったけど悪くなかった 前スレ700あたりのkさんの突撃隊っぽいのと京都療養で気がついたかな にこ凛の二人もどこか狂ってたっけ?
希の死は認識してなさそうだったけど でも前スレで穂乃果と花陽には元気かと言ってるけど、希を言及してない辺りにこは希の死を認識はしてるのか 海未が大学だと認識してるだけで実際にいたのは施設ってことなのか ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています