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穂乃果「雨の日のお楽しみ」 [無断転載禁止]©2ch.net
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2017/06/14(水) 21:46:56.33ID:NZJVfqMR
ID:fkgsnyJr の代行
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2017/06/14(水) 21:47:48.06ID:fkgsnyJr
穂乃果「あれ、雨が降ってる…」


これはまだ、穂乃果達が1年生の時のお話です。


穂乃果「海未ちゃん見て!雨が降ってるよ…」


今日最後の授業が終わって、ふと窓の外を眺めたらしとしと雨が降っていた。
朝はあんなに晴れていたのに…
天気予報を見ていない穂乃果はついつい、近くの席の海未ちゃんに話しかけます。
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2017/06/14(水) 21:49:26.74ID:fkgsnyJr
海未「今日は午後から雨の予報でしたからね。……その様子だと傘、持ってきていないのですか?」


海未ちゃんの言う通り。
穂乃果は今日、傘を持ってきていません。


穂乃果「えへへ…持ってきてないよ…どうしよう」

海未「仕方ないですね…。今日の部活はミーティングのみなので少し待っていて貰えますか?」

穂乃果「傘、入れてくれるの?!やったー!」

海未「ただ、大きな傘ではないので多少濡れてしまうかもですが…」

穂乃果「そんなの全然いいよ!ありがとう海未ちゃん」
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2017/06/14(水) 21:50:07.65ID:fkgsnyJr
そんなこんなでわいわいしていると、廊下にことりちゃんの姿を見つけました。
ちなみにことりちゃんとはクラスが違います。
2年生では同じクラスになれたらいいな。
ことりちゃんはうちのクラスを覗いて誰かを探しているみたい。
あ、目が合った。
ことりちゃんが手招きをします。
探していたのは穂乃果だったみたいです。


穂乃果「ことりちゃん、どうしたの?」

ことり「あのね、今日保健委員会があるみたいで…一緒に帰れないから、先に帰ってて貰えるかな?」


ごめんね、と続けたことりちゃんに穂乃果は分かった!と返しました。
そう言えばうちのクラスの保健委員の子も委員会があるって言ってたな。
ちょっぴり忙しそうなことりちゃんとお別れして、海未ちゃんの元へ戻ります。
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2017/06/14(水) 21:52:34.40ID:fkgsnyJr
海未「何の用だったのですか?」

穂乃果「ことりちゃん、今日は委員会で一緒に帰れないんだって」

海未「そうですか…ことりも忙しそうですね」


海未ちゃんは少しだけ眉をへの字にして笑いました。
穂乃果も同じような表情で大変そうだね、と返しました。
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2017/06/14(水) 21:53:45.52ID:fkgsnyJr
海未「では、少し弓道場の方へ行ってきます」

穂乃果「うん!穂乃果は正面玄関のところで待ってるねー!」


傘をさして歩き出した海未ちゃんの背中を見送って、今から少しの間は穂乃果のひとりぼっちタイムです。
思い返せば、海未ちゃんは弓道部に入っていて、最近は一緒に帰れていません。
ことりちゃんも、たまーにこういう委員会とか、当番とかが回ってきて帰れない時があります。
穂乃果は委員会にも部活にも入っていないのでいっつも暇です。
放課後はすぐ帰ります。
…その分、寄り道をいっぱいしちゃうけど。
3人でいつも一緒にいるようで実はそれぞれ違う時間を過ごしているみたいです。
当たり前のはずなんだけど、なんだか不思議。


穂乃果「……もっと、みんなで一緒に何かしたいな」


なんてね。
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2017/06/14(水) 21:55:10.95ID:fkgsnyJr
海未「では、穂乃果も部活に入っては?」

穂乃果「わっ、海未ちゃん!」


ビックリ。
さっきは穂乃果の前を歩いて行ったのに今度は後ろから海未ちゃんが現れました。


海未「お待たせしました。職員室に部室の鍵を返して来たのでこちらから出てきました」


ちなみにうちの高校は土足なので靴を履き替える必要がありません。
正面玄関以外から教室に入ってもそのまま歩き回れるので楽です。
雨の日はちょっとだけ、廊下が泥っぽくなったりしちゃうけど……


海未「では、帰りましょうか」


海未ちゃんが傘を開くと、さっき付いたばかりの雨粒がポーンと飛びます。
左寄りに傘の下に入って、海未ちゃんは少しこっちを見ます。
入って、という事かな。
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2017/06/14(水) 21:56:21.43ID:fkgsnyJr
穂乃果「お邪魔しま〜す」


穂乃果が傘に入ると、海未ちゃんはゆっくり歩き始めました。
海未ちゃんに合わせて穂乃果も歩きます。
本人も言っていたけど、海未ちゃんの傘はそんなに大きくはないです。
だから少しだけ肩が濡れちゃいます。
でも、これぐらいは平気。


海未「それで、穂乃果は部活に入ってみてはどうですか?」


校門から出たところで、海未ちゃんの声が傘の中に響きます。
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2017/06/14(水) 21:57:03.22ID:fkgsnyJr
穂乃果「うーん……でも、穂乃果に向いてる部活無かったし…」


丁度1ヶ月程前まであっていた部活動体験の事を思い出します。
音の木坂は生徒数がそんなに多くないので、部活の種類も限られています。
運動部はメジャーなバレー、バスケ、テニス…そして海未ちゃんが入ってる弓道。
文化部は美術と茶道なんかもあったような。
ことりちゃんと一緒に色々回ってみたけれど、結局ピンとくるものは無くて入らずに体験期間は終わりました。

…それに、穂乃果はみんなと、
海未ちゃんやことりちゃんと何かをしたいんです。

似たようなニュアンスで海未ちゃんに伝えます。


海未「では、ことりと2人で弓道部に来てみますか?」

穂乃果「うーん…それも悪くはないんだけど……」


思い描くものと、何かが違う気がする。
そう思います。


海未「難しいですね」

穂乃果「うーん」
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2017/06/14(水) 21:57:57.07ID:fkgsnyJr
海未ちゃんと穂乃果の声が傘の中でこだまします。
なんだかいつもより綺麗に聞こえてドキドキ。
そういえば、どこかで聞いた話だと雨の日の傘の中で聞く声は一番綺麗に聞こえる様です。
反響?がいいとか。
難しくて理由まではよく分からないけれど。


穂乃果「そうだ、海未ちゃん、歌おう!」

海未「歌、ですか?唐突ですね」


首を傾げる海未ちゃん。
だってだって、せっかく海未ちゃんの一番綺麗な声を聴けるんだもの。
どうせならお客さんは穂乃果だけの、海未ちゃんのソロライブの開催です。
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2017/06/14(水) 21:58:34.57ID:fkgsnyJr
海未「穂乃果も一緒に歌ってくれるならいいですよ」

穂乃果「えー!」

海未「だって……は、恥ずかしいじゃなですか。公道で歌いながら歩くなんて…。だいたい、なぜ私に歌を…?」


穂乃果「海未ちゃんの一番綺麗な声を聞きたいから!」


海未「一番綺麗な声?」


ここで物知り穂乃果は教えてあげます。
海未ちゃんはなるほど……と頷きました。


海未「少しだけ、ですからね?」


海未ちゃんは少し照れながらそう言うと、ワンフレーズだけ歌ってくれました。
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2017/06/14(水) 21:59:17.10ID:fkgsnyJr
穂乃果「ブラボー!海未ちゃん!!じゃあ、今度は穂乃果の番だね!」

海未「ふふ、では聞かせてください」


優しく笑う海未ちゃんに、穂乃果は元気よく歌います。
ワンフレーズだけじゃなくて、フルで!
穂乃果があまりにも楽しそうに歌うので、海未ちゃんも途中から一緒に歌ってくれました。
デュエットってやつです!

ランラン、ルンルン♪
楽しくなって何曲も歌ったところで、穂乃果のお家…穂むらが見えてきました。


穂乃果「歌ってたらあっという間に着いちゃったね〜」

海未「ふふ、そうですね」


恥ずかしがってた海未ちゃんも、なんだか楽しそうに笑っています。
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2017/06/14(水) 22:00:04.31ID:fkgsnyJr
傘からほむらの軒下へ移った所で海未ちゃんとお別れです。


穂乃果「海未ちゃん、また明日!」

海未「はい。明日も雨の予報ですから、傘を忘れないようにしてくださいね」


しっかり者の海未ちゃんはそう言って帰っていきました。


穂乃果「明日も雨、かぁ……」


この時の穂乃果はちょっと悪戯っぽく笑ってみました。
明日も傘を忘れたら、今度はことりちゃんの傘に入れてもらえるんじゃないかな、って。
そうしたら、ことりちゃんに歌をいっぱい歌ってもらいます。
もちろん、穂乃果もいっぱい歌って……最後は2人で……


穂乃果「2人、じゃなくて3人で、は我儘かなぁ……」


ちょっと独り言を呟いた時です。
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2017/06/14(水) 22:00:42.60ID:fkgsnyJr
ほのぱぱ「…………」

穂乃果「あ、お父さん!」


大きな傘を差したお父さんが帰ってきました。
多分、お得意さんの所へ出前に行ってきたんだと思います。


穂乃果「おかえり!穂乃果も丁度帰ってきた所なんだ」

ほのぱぱ「…………」

穂乃果「あはは…そうそう。傘忘れちゃって…海未ちゃんに送ってもらったんだ」

ほのぱぱ「…………」

穂乃果「え?海未ちゃんとすれ違った?……ふふ、海未ちゃん、機嫌よかったでしょ?」


軒下でちょっとお話して、お父さんが傘を閉じます。
お父さんが使う傘はとっても大きな傘。
2人でなら余裕で…なんなら、3人入れそうです。


穂乃果「あ!」


穂乃果、今日はよく閃きます。


穂乃果「お父さん、明日その傘借りていい?」
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2017/06/14(水) 22:00:50.34ID:+aHfZ63p
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2017/06/14(水) 22:01:16.56ID:fkgsnyJr
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..


穂乃果「んー…今日も雨だね」

海未「傘はちゃんと持ってきましたか?」

穂乃果「うん!もちろんだよ!」


1日の最後の授業が終わって海未ちゃんとお話。
昨日と同じような流れです。
廊下にことりちゃんの姿を見つけました。
今日は委員会じゃないので一緒に帰る予定です。
海未ちゃんは部活の道具を持っています。
今日は普通に部活があるみたいです。

海未「それでは、私は部活なので」

穂乃果「うん!」

ことり「穂乃果ちゃーん」

穂乃果「はいはーい!今行くよー!」


海未ちゃんとは一旦サヨナラです。
そして穂乃果はことりちゃんに重要なお話。
賛成してもらえるといいな。


ことり「穂乃果ちゃん?」
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2017/06/14(水) 22:01:55.52ID:fkgsnyJr
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..


時計の針は6時半を指しています。
もう夏服の季節だけれど、今日は雨なので薄暗いです。

そんな中、弓道場から人影がチラホラ。
海未ちゃんの姿も見つけました。


穂乃果「海未ちゃーーん!!」

海未「穂乃果?!ことり?!」


おーい!と、ことりちゃんと呼びかけるとビックリしたような海未ちゃんがこっちに走って来ました。


穂乃果「お疲れ海未ちゃん!」

海未「あ、ありがとうございます。…2人はまだ帰っていなかったのですか?」

ことり「うん。海未ちゃんを待ってたんだよぉ」


海未ちゃんは目をぱちぱちして穂乃果達を見つめます。
あんまり見れない、レアな海未ちゃんです。
ことりちゃんと顔を合わせてちょっとだけニヤニヤしちゃいました。
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2017/06/14(水) 22:02:53.53ID:fkgsnyJr
穂乃果「今日は雨だから、どうしても3人で帰りたかったんだ」

海未「?」

ことり「穂乃果ちゃん、今日、大きな傘を持ってきてるんだよ!3人で入れるくらいの」


既に穂乃果の傘の中に入っていたことりちゃんが左側にズレます。
穂乃果は真ん中で傘の柄を握っているので、右側にスペースが出来ました。
海未ちゃんのスペースです。


穂乃果「ささ!海未ちゃんも入って入って〜」

海未「えっ!しかし、私は傘を持ってきていますよ?」

ことり「ことりも持ってきてるけど、いいの!」


穂乃果とことりちゃんに押されて海未ちゃんも傘の下に入りました。
3人だとちょっとギリギリだけど、くっつけるので全然構いません。
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2017/06/14(水) 22:04:57.77ID:fkgsnyJr
穂乃果「それじゃあ、アカペラ歌唱会を始めよー!」

ことり「いぇーい♡」

海未「……もしかして、それをやるために私を、待っていたのですか?」

穂乃果「そうだよ!」


昨日、2人で歌ったのがとっても楽しくて、いいなって感じたから。
3人でやりたいなって思ったんです。

海未ちゃんは少しだけ困ったように笑いました。
これは諦めたってやつです。
穂乃果のアカペラ大会に参加が決まりました。


穂乃果「じゃあ、トップバッターは海未ちゃんだね!」

海未「へっ?!」

ことり「わーい♪楽しみだなぁ」
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2017/06/14(水) 22:11:21.05ID:fkgsnyJr
こうやって3人で歌をいっぱい歌いながら、笑って。
久々にみんなで帰りました。


穂乃果「あはは!楽しいね!」

ことり「そうだね♡」

海未「すこし、恥ずかしいですがね」

穂乃果「まあ、海未ちゃんもノリノリだけどね」


3人で帰る雨の日。
傘があるから出来るアカペラ歌唱会。


穂乃果「あ、そろそろ家に着いちゃう…」


穂むらの看板が見えて、穂乃果は少しだけ悲しい気持ちになりました。
3人の時間はこれで終わりになってしまいます。
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2017/06/14(水) 22:16:50.33ID:fkgsnyJr
海未「では、この辺りでお別れですね」


海未ちゃんが自分の傘の準備を始めます。
本当はもう少しこの大きな傘の中に三人でいたいです。


ことり「楽しかったね!もう終わっちゃうのが残念です…」


ことりちゃんが言います。
穂乃果も同じ気持ちです。


ことり「また次の雨の時も歌いたいね♡」

海未「もう暫くは晴れの予報ですが…たまになら、また集まるのも悪くないですね」


そっか、また次があるもんね。
穂乃果は笑顔で大きな傘を閉じました。
2人は小さな傘の中に。


穂乃果「じゃあね〜2人とも!また明日!」


ことり「うん!」

海未「ごきげんよう」


2人の小さな傘がどんどん奥へと消えて行きました。
でも、穂乃果は大丈夫です。


次の雨の日もきっと3人で。



穂乃果「明日も雨にならないかな〜」



ちょっとだけ空の神様にお願いしました。


おしまい
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