パスカルは、デカルト的合理主義を批判しながら、それでも、人間の「考える」という能力に一縷の望みを見出そうとしました。

『パンセ』から、有名な一節を抜粋します。

「人間は自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である。

これを押しつぶすのに、宇宙全体が武装するには及ばない。一滴の水がればこれを殺すに十分だ。

だが宇宙が人間を押しつぶしても、人間は自分を殺すものよりも高貴であろう。

何故なら人間は自分が死ぬことを知っており、宇宙が自分よりも優越していることを知っているからだ。宇宙はそのことを知る由もない。」


さて、現代において、デカルトの物理学説の大部分は通用しないものになっています。

それに対して、パスカルの業績は、現代でも学校で学ばされるぐらい有名なものになっています。

この事から、自然科学の業績では、パスカルの方がデカルトに優っていたといえるでしょう。

しかし、思想面でも、パスカル的思想が合理主義的現代思想の前に立ちはだかるべきだと思います。

デカルトが考えたような直線的な進歩観が前世紀末から修正され始めている現代において、パスカルが改めて見直されるべきでしょう。