ギリシア語における徳(arete、アレテー)とは、もともと、人間の持つ能力やその優れたあり方、卓越性のことを指す概念であり、

例えば、

ミケランジェロのように優れた彫像を作り上げることができる人物は、彫刻家としての徳を持った人であり、

優れた政治家のように、言論によって人々を説得する技術に秀でた人物は、政治家としての徳を持った人、または、弁論術の徳を持った人であると考えられることになります。

しかし、

ここでソクラテスが言っている徳とは、そうした人間が有する能力や技術の全般についての徳(アレテー)のことを指しているわけではなく、

人間が有するあらゆる徳のうちでも、特に、魂の善さを実現するのに関わる能力と卓越性を持った徳について語っていると考えられることになります。