そして、こうしたソクラテスと愚者の双方における生き方の違いや、肉体的快楽と精神的快楽の違いに見られるように、
ミルは、幸福や快楽には、その質において大きな違いがあると考えたということになるのです。

そして、こうしたミルにおける質的快楽主義のことを分かりやすく示すための例えとして用いられたのが、
「満足な豚であるより、不満足な人間である方が良い。満足な愚者であるより、不満足なソクラテスである方が良い。」
という言葉であると考えられることになるのですが、
こうしたミルの質的快楽主義の例示における論理展開の真ん中の部分を取り去って、頭と末尾の部分をくっつけて簡略化した言葉が、

「満足な豚より不満足なソクラテス」という形で語られることが多い格言ということになります。